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出会う感情の名は、
[8] -25 -50 

1:1 ◆b.qRGRPvDc:2011/10/16(日) 19:19:06 ID:f4A63ChN1o
男「あれ?何してたんだっけ?…なんで此処に居たんだっけ?」

住宅街の路地にポツリと立つ青年。見たところ、学生のようだ。

辺りを見渡しても、まるで自分以外の人間が魔法にでも掛けられたかのように姿を見せない。

灰色に染まった空は雨を降らせてパタパタと音を立てながらアスファルトを濡らしていく。

男「うわ!財布の中身散乱してるし!お札が濡れる!」

散乱しているお金を慌てて掻き集め、乱暴に財布に押し込んだ。


2:名無しさん@読者の声:2011/10/16(日) 19:21:06 ID:ipJaufw0BE
2げと
3:1 ◆b.qRGRPvDc:2011/10/16(日) 19:21:12 ID:f4A63ChN1o
初SSです。

スローペースな更新になるかもしれませんが、最後まで頑張るので見守ってやって下さると嬉しいです。
4:名無しさん@読者の声:2011/10/16(日) 19:22:27 ID:YjnNasUwp2
>>2
おめでとうございます!


男「伯母さーん、居ないの?おーい」

男「…応答なし、か」

人気のない路地に無機質なインターホンの音だけが響く。五度程繰り返されて、その音は止んだ。

男「帰ろう…多分帰ろうとしてたんだろうし」

男「ボケるにはまだ早すぎるだろうに、自分が何をしようとしてたか全く思い出せん。どうしたものか……ん?」

暫く歩いて男の足は止まった。

男(――人…?)
5:1 ◆b.qRGRPvDc:2011/10/16(日) 19:24:39 ID:f4A63ChN1o
少し先に人影が見えた。

ボサボサな黒い髪に白いシャツ、黒いズボン。電柱に寄りかかり、うなだれるような姿勢で座り込んでいる。

一見男性の様な装いのその人物は、近づくにつれて小さく子供のように見えた。

男(こ、これはまさか…!)

男(ショタっ子というやつか!!)

新境地へ足を踏み入れようとする青年の足取りは軽いものだった。
その軽快なステップはすぐ先に居る人物の耳へと容易く届いた。

?「…?」

男「あ、れ?…おにゃのこ?」

?「!!」
6:1 ◆b.qRGRPvDc:2011/10/16(日) 19:25:56 ID:YjnNasUwp2
少年だと思っていたその人物は、男の子と呼ぶには愛らしく、何処か丸みをおびていた。

少女は顔を上げて青年の顔を見るなり目を見開いて驚愕した。目元まで伸びた前髪がはらりと乱れ、大きな黒目がちの瞳がゆらゆらと揺れる。

少女「なん、で…」

男「へ?」

やがてその表情はくしゃりと歪み、悲しみに濡れた。

男「あ、あのー…?」

少女「……」

男「どうかしました?俺の顔に何かついてます?」

少女「…っ……いや、何でもない、…ですよ」

男(もしかしてフラグが立ったか?しかもよく見たら可愛えええええ!)

男(危うく秘密の花園…いや、秘密の菊門に足を踏み入れかけたなんて口が裂けても言えん!)
7:1 ◆b.qRGRPvDc:2011/10/16(日) 19:30:26 ID:YjnNasUwp2
青年は自分の邪念を振り払うように首を左右に振ると、コホンと咳払いをしてみせた。

男「こんなところで何をしてるんですか?何かあったんですか?」

腰を屈めて少女の顔を覗き込みながら首を傾げた。それが、青年の精一杯の紳士たる態度であった。

少女「……人を、」

男「ん?」

少女「…人を待ってる、ですよ」

言い終えると少女は青年から視線を外した。

男「人って、友達か何かかな。だったら携帯で連絡取ってみたらどうですか?」

男「ほら、雨降ってるし、あなたびしょ濡れですよ?」

少女「……」

男「風邪、引きますよ」

少女「……」

男「えっと…」

少女「……」

男「あの〜…聞いてます…?」

少女「……」

男(会話が続かん…!ヘルプ!誰かヘルプ!)

二人の間に沈黙が流れる。人気のない路地には雨の音だけ。
8:1 ◆b.qRGRPvDc:2011/10/16(日) 19:42:23 ID:f4A63ChN1o
青年はその場を立ち去ろうとしたが、足が動かなかった。少女が気に掛かって仕方なかったのだ。

初めて会ったばかりのこの少女が何となく気になった。単なる好奇心からか、少女を哀れんでなのかは分からないが、放っては行けなかった。

雨に濡れたシャツが肌色を映していても不思議と昂ぶるものは感じていない。青年にそういう趣味がない、というのではなく、ただ傍に居てやりたいような気分だった。

青年には“これ”が何なのか、全く検討もつかなかった。
9: ◆b.qRGRPvDc:2011/10/16(日) 19:43:56 ID:f4A63ChN1o
今日の更新は此処までとさせて頂きます。

初SS、頑張るぞー!
10:名無しさん@読者の声:2011/10/16(日) 19:56:43 ID:.yw9LayCwY
頑張れ!
紫煙
11: ◆b.qRGRPvDc:2011/10/17(月) 14:17:37 ID:TSKjRXSWvs
>>10
支援ありがとうございます!
嬉しいです(´;ω;`)
12:名無しさん@読者の声:2011/10/17(月) 16:50:58 ID:rPlSdEWnTI
支援だ!
支援だ支援だ!
13: ◆b.qRGRPvDc:2011/10/17(月) 17:51:47 ID:/e/5EDbjfE
>>12
うわあああありがとうございます(´;ω;`)


男「あー、その人、いつ来るんですか?待ち合わせ?」

少女「……」

男「お友達とか?」

少女「違う!…ます」

少女は顔を上げたが、またすぐに下を向いた。膝を抱えて俯く少女の頬は僅かに紅潮しているように見えた。

少女「大切…大切な…人」

男「大切な人?」

少女「うん。」

慌てて「はい」と言い直す少女を見て、青年は思わず口元が緩んだ。喉をクックッと鳴らしながら少女に言った。

男「苦手なら使わなくていいですよ、敬語」

ありがとう、と小さな声で言った少女の頬は紅潮していた。青年は満足気に「いいえ」と返して少女の頭をくしゃりと撫でた。
14: ◆b.qRGRPvDc:2011/10/17(月) 18:01:58 ID:/e/5EDbjfE
五階建てのワンルームマンションの一室に二人は居た。エレベーターも付いておらず外観こそ所々にひび割れが生じて古いものの、部屋の内装は綺麗なものだ。

六畳程のそう広くはない部屋に家具というものは殆どない。テレビの代わりにデスクトップのパソコンが一台と小さなテーブル、ぽつんと寂しくベッドが置かれていた。

少女「ただいま」

男「それを言うなら“おじゃまします”でしょうに。クレ●ンし●ちゃんもビックリだよ」

少女「クレ…何?」

男「おい、おい、マジかよ、おい!」
15: ◆b.qRGRPvDc:2011/10/17(月) 18:04:08 ID:2I5OaXgH26
男「とりあえず、ちょっと待ってて下さいね」

青年は小走りに部屋の奥に入って行くと、再び少女の元に戻った。その手には青年の物と思われる部屋着が握られている。

男「そのままじゃ風邪引きますから。俺のだから大きいかもしれないけど着替えです。あっちが風呂場なんで寒かったらシャワー浴びて下さい」

少女「ありがと」

少女がドアの向こうに消えて青年はふと我に帰った。

男「……ちょっと待て。これ何てエロゲ?セクロスフラグびんびんじゃねぇか!」

そうは思えどやはり昂ぶるものはなく、折角の機会をと小さな自分自身に小さく舌打ちをした。

男(さて、連れて来たはいいものの…名前も分からないしなぁ…)
16: ◆b.qRGRPvDc:2011/10/17(月) 18:11:17 ID:2I5OaXgH26
誰を待っているかという質問にも、貴方は誰かという質問にも少女は答えなかった。このご時世に携帯電話も持っておらず、待ち人の連絡先も知らないのだと少女は言った。

いつから待っていたのかという質問にも、首を傾げるだけ。ただ、一つの質問にははっきりと答えた。


男『その人、貴方が待ってる事は知ってるんですか?』

少女『……』

男『はぁ…本当に来るんですか、その人は』

少女『来るよ!今はまだ気付いていないかもしれないけれど、必ず来る』

男『気付いていない…?』

少女『……』
17: ◆b.qRGRPvDc:2011/10/17(月) 18:14:38 ID:/e/5EDbjfE
このままでは埒が空かないと、青年は雨が止むまで家に来ないかと提案した。
幸い青年の住むマンションは二人の居る場所の目と鼻の先。ベランダからは丁度この場所を見る事が出来た。

少女は迷う素振りを見せたが、苛立ちを覚えた青年は少女の手を取り歩き出した。
18: ◆b.qRGRPvDc:2011/10/17(月) 18:18:59 ID:/e/5EDbjfE
男『いつ来るかも分からない奴の為に風邪引くんですか、あんたは!』

男『俺は男と言います。これでもう知らない奴じゃないでしょう?』

男『大体こんな所で女の子1人でずっと待たせるなんてその人は何やってんだか!』

男『連絡先も教えずに待たせるなんて!』

信じられない、などとぶつぶつと言いながら歩く青年に手を引かれながら、呆気にとられていた少女も目を細めて笑った。

少女『……おせっかい』

少女の擦れた声は、青年の耳には届いていなかった。
19: ◆b.qRGRPvDc:2011/10/17(月) 18:20:30 ID:2I5OaXgH26
短いですが一先ず此処までの更新とさせて頂きます。

支援して下さった方、本当に感謝感謝です(´;ω;`)
20: ◆b.qRGRPvDc:2011/10/18(火) 01:17:56 ID:2I5OaXgH26
男「遅い!」

胡坐をかいている青年の眉間には深々と皺が刻まれている。シャワーを浴びればいいと提案したものの、一向に少女が風呂場から出て来ないのだ。

よく女性は風呂が長いとは聞くが、これ程までとは予想だにしていなかった。

男「あの〜…」

ドアの向こうに居るであろう少女に声を掛けてみる。返事はない。

男「な、何かありました?」

やはり返事はない。耳を澄ましてみても、シャワーの音どころか物音一つ聞こえない。
21: ◆b.qRGRPvDc:2011/10/18(火) 01:29:06 ID:/e/5EDbjfE
男「まさか、風呂場で倒れてたり……だだだだ大丈夫です、くぁっ!?」

勢いよく開けた先、脱衣場に少女の姿はあった。青年が渡した部屋着の袖部分に頭を突っ込んで藻掻いている。

青年は慌てて少女に背を向け、脱衣場を後にした。

男「ごめんあさいでしたあくぁwせdrftgyふじこlp」

少女「男、男、」

男「は!?はひひいいぃい!」

少女「タスケテ」

男「フヒ?」

少女「頭、出せない」

男「……」

青年は無言で振り返った。袖に頭を通そうと藻掻く少女の姿は何とも滑稽で、色気というものは皆無だった。
22: ◆b.qRGRPvDc:2011/10/18(火) 01:39:01 ID:2I5OaXgH26
青年は本来出すべき場所に少女のそれをあてがってやった。すぐにスポン!と少女の顔は現れた。

少女「ぷふぅ〜…。あ、そうだ。苦手なら、」

男「はい?」

少女「苦手なら使わなくていいですよ、敬語」

サイズの合わない服を着ているからか、悪たれた笑顔で青年の真似をして見せた少女はとても幼く見える。

やっと見れた少女の笑顔の愛らしさと羞恥心が相まって、青年の頬は紅く染まった。

男「…ありがとう」

頭を掻きながら俯く青年に向かって「いいえ」と満足気に返した。
23: ◆b.qRGRPvDc:2011/10/18(火) 18:15:58 ID:TUIybGqP9g
男「ブッフォ…!!ちょ、何やってんの!やめ…や、止めなさい!」

青年の顔に水しぶきが飛んでくる。少女は青年の制止も聞かず、頭を左右に振り回している。
最後に体を小刻みに震わせると、自分の手の甲をペロペロと舐めてみせた。

男(まるで猫だな…“めぐ”みたいだ)


青年は“めぐ”を思い出していた。

めぐと青年もまた、あの路地で出会った。雨の中、静かに佇んで青年を見つめていた黒猫、それが“めぐ”だった。

首輪もされていない黒猫は野良猫と呼ぶには汚れておらず、何処か凛としているように見えた。

ただ真っ直ぐに、青年を見つめていた。

男『迷子か?早くお家に帰らないと風邪引くぞ』

青年がその場を去っても黒猫は其処に居た。ベランダから路地を覗いてみても、まるで此方を見ているようだった。
24: ◆b.qRGRPvDc:2011/10/18(火) 18:25:20 ID:TUIybGqP9g
男『……マジか。まだ居るぞあいつ』

明朝、ベランダから路地を覗いた青年は、思わずそう呟いた。

雨の中、相も変わらず黒猫は其処に居た。微動だにせず、じっと青年を見つめていた。

男『ずっと居たのか…?なんか、こっち見てるような…』

まさか、と首を左右に振る。自分はあの猫を知らない。ましてや、猫を飼った事もない。

男『……』

暫くベランダ越しに黒猫を見ていた青年だったが、一つ息を吐くと上着を手に、マンションを後にした。
25: ◆b.qRGRPvDc:2011/10/18(火) 18:34:49 ID:YT6kaGM87g
男『おーい。お前、迷子か?』

青年は黒猫の前に屈んだ。
自分の傘に黒猫を入れてやると、そっと撫でてみせた。
黒猫はゴロゴロと音を鳴らして気持ち良さそうに目を細めている。

男『誰か待ってんのか?』

黒猫は何も言わず、じっと青年を見つめている。

男『……お前、家に来るか。この電柱に貼り紙しといてやるから、飼い主さんもきっと現れるよ』

青年の声に応えるように、黒猫は一言だけ鳴いた。

男『我ながらアレだな。
知ってるか?こういうの、“おせっかい”って言うんだ』
26:名無しさん@読者の声:2011/10/18(火) 18:43:39 ID:0xGhRsTZCU
鳥肌たったCCCC
27: ◆b.qRGRPvDc:2011/10/19(水) 19:33:03 ID:2cyvJuLH8k
>>26
こんな稚拙な文章で鳥肌なんて嬉しくて涙がちょちょ切れです。
支援ありがとうございます!



それから幾日も時が過ぎた。
青年は黒猫を“めぐ”と名付け、その首には鈴の着いた赤い首輪をつけてやった。

青年には両親が居ない。幼い頃に両親は離婚。母親と暮らしていたが、病気で呆気なく逝ってしまった。
近所に住む伯母が度々面倒を見に来てくれているが、伯母にも家庭があるので甘えるのも気が引ける。

他人に気を遣い甘える事知らない。気が付けば青年は孤独であった。
テレビもないこの家で、パソコンに向かっている時だけは誰にも気も遣わず時間が経つのも忘れられた。
28: ◆b.qRGRPvDc:2011/10/19(水) 19:35:43 ID:2cyvJuLH8k
そんな青年もめぐが現れた事で随分と変わった。毎日自分を出迎えてくれる鈴の音。話し掛ける相手がいるだけでこんなにも自分が明るくなれる事に青年自身も驚いていた。

月日はあっという間に流れ、電柱に貼られた迷い猫の貼り紙も随分と色褪せていた。
29: ◆b.qRGRPvDc:2011/10/19(水) 19:56:49 ID:2cyvJuLH8k

――‐‥

??『君って馬鹿なの?ルール違反でしょ、それ』

?『でも、あの人がボクを見付けたんだ。傍に居るだけで何も話してないし…』

誰かの話し声がする。
女の子の高い声。

??『そんなの言い訳にならないよ。消えたいの?』

?『……』

夢でも見ているのだろうか。
それにしてはやけに鮮明な夢だ。

??『失くしたものを見付けて、送り届けるのが私達の使命じゃないの。呆れるね、まったく』

?『…本当に、送り届けなきゃいけないのかな』

??『は?君さっきから何言ってんの。毒されてるんじゃないの。』

何の話をしているのだろうか。
全く話が読めない。
30: ◆b.qRGRPvDc:2011/10/19(水) 20:04:24 ID:Q7VdjOx2wM
??『生まれ変わるんだよ、私達は。やり直せるんだ』

?『…そう、だね』

??『私は失くしたものを見付ける。自分の罪も、きっと』

?『……うん』

失くしたもの?罪?
すぐ其処で誰かが話しているのに、目が重くて開かない。

??『傍に居てはいけないよ。このままじゃ君も消える事になる。共倒れだね』

?『消える…傍に居たら、消えちゃうの…?』

??『忠告はしといてあげたよ。…めぐ、か。良い名前を貰ったね』

――めぐ…?

男『め、ぐ…?』
31:名無しさん@読者の声:2011/10/21(金) 10:37:27 ID:p80KbTGG36
更新まだかな支援
32:名無しさん@読者の声:2011/10/21(金) 18:20:01 ID:yCl96nADP2
うわあ面白い!
本当にこれからが楽しみな構成…期待ですw
つC
33: ◆b.qRGRPvDc:2011/10/21(金) 23:28:18 ID:KRJJSQkUy.
>>31
遅くなってしまってすみません…!支援ありがとうございます!
これから少しですが投下したいと思います(`・ω・´)

>>32
あああ嬉しすぎる(´;ω;`)
ラストだけはもう出来上がっているので、それに向けて突っ走るのみです。

本当にありがとうございます!期待に応えられるように頑張ります!


男「支援だってさ!」

少女「しえん…?」

男「えーと…つまり、頑張ってねーって」

少女「…?頑張ってね〜」

男「俺達が言うんじゃなくて…まぁいいや…」
34: ◆b.qRGRPvDc:2011/10/21(金) 23:31:24 ID:PfVrPL84Ws
男「――そうだ、あの時、俺…」

少女「?」

少女は手の甲をペロリと舐めて首を傾げた。青年は何かを思い出した素振りで眉間に手を当てて目を閉じている。

男「あ、いや。俺、気付いたらあの路地で立ってたんだ。自分が何をしようとしていたか思い出せなくて」

少女「……」
35: ◆b.qRGRPvDc:2011/10/21(金) 23:37:53 ID:PfVrPL84Ws
男「寝ている時に誰かの話し声がした気がして、目が覚めて、誰も居なかったんだけど、いや、あれは夢だったんだから当たり前か。

じゃなくて、めぐが…めぐって、俺が飼ってたというか拾って保護してたんだけど…」

少女の瞳がゆらゆらと揺れる。何かを言いたげに揺れる瞳を伏せると、グッと唇を噛み締めた。
36: ◆b.qRGRPvDc:2011/10/21(金) 23:56:52 ID:PfVrPL84Ws
青年の脳裏に過る光景。
月明かりにほんのりと照らされた黒猫の姿と、鈴の音。

男「…めぐがベランダから飛び降りたんだ。それで、急いで下に降りたんだけどめぐは居なくて、それで」

少女「……」

男「あの路地に、首輪が落ちてた。あの日も今日みたいに雨が降っていて」

少女はギュッと目を閉じ、顔を伏せた。その体は小刻みに震えている。
青年は、はっと目を開けて、
37: ◆b.qRGRPvDc:2011/10/22(土) 00:10:36 ID:KRJJSQkUy.
男「……どうしたんだっけ?あれ?」

少女がきょとんとした顔で青年を見た。青年もまた、少女と同じ表情で少女を見ていた。

男「めぐ、何処に行ったんだろう…」

少女「此処に居るよ。めぐは、此処に居る」

ゆらゆらと揺れる少女の瞳からはポロポロと涙が溢れだしていた。
涙で濡れた顔を上げて、真っ直ぐに青年を見つめた。

少女「めぐは、此処に居るよ」
38: ◆b.qRGRPvDc:2011/10/22(土) 00:13:37 ID:PfVrPL84Ws
書き溜めが尽きてしまいそうなので今回は此処までとさせて頂きます。

毎度毎度、少ない投下ですみません…orz
39: ◆b.qRGRPvDc:2011/10/22(土) 17:16:39 ID:VxWkJSWhZ2
男「……は、」

二人の間に流れた暫くの沈黙。それを破ったのは青年だった。

男「はは、何言ってんの。めぐは猫だぞ、猫!からかわないでくれよー」

青年は脱衣場からバスタオルを取ると、その涙を隠すように少女の頭を覆った。
わしゃわしゃとまだ水の滴る少女の髪を拭いてやりながら笑った。

確かに出会った状況も似ている。
あの路地で雨の中、誰かを待っていた黒猫と少女。青年が連れて帰って、こうしてバスタオルで拭いてやった。めぐは大層嫌がったものである。

少女「う〜!」

男「あ、こら!暴れるな!」

少女「うぅ〜!!」

そうだ、めぐの奴も風呂が嫌いだった。バスタオルで拭く時は決まって腕をすり抜けて逃げていた。

そんな事を青年が思っていた時だった。
40: ◆b.qRGRPvDc:2011/10/22(土) 17:24:26 ID:VxWkJSWhZ2
少女「う…うにゃーっ!!」

男「あ、おいこら待て!めぐ!…っ!」

重なった状況と思い出に浸っていた所為で、思わず口から出た名前。
青年自身も驚いて、慌てて口元を押さえた。

男「ごめん、つい…猫と同じ扱いをしてしまった」

少女「どうして?ボクはめぐだよ」

少女はそんな青年の素振りを気にも止めず、頭を左右に振り回した。

男「いや、だからね…」

少女「男がそう呼ぶならボクはめぐ。それに、」

男「え?」

少女「あんたと呼ばれるよりはいいと思うんだ」

バツの悪い顔をして「ごめん…」と言う青年に対して、少女は満足気にニンマリと笑った。

少女は“めぐ”になった。
41: ◆b.qRGRPvDc:2011/10/23(日) 23:44:41 ID:XoCiYgLVhw
青年は頬を紅潮させながらコホンと一つ咳払いをして、

男「では、改めましてめぐさん。とりあえず、髪乾かしておいで。びしょびしょだ」

めぐ「乾かす…?」

男「ドライヤーだよ、ドライヤー」

青年の口から発された単語にめぐは怪訝な目で見つめた。その表情を見て青年もまた、怪訝な目でめぐを見つめる。

青年は一人納得したように頷くとめぐの手を引いて洗面台の前に立たせた。
42: ◆b.qRGRPvDc:2011/10/23(日) 23:57:46 ID:jDEa9QqT6g
男「今回は特別に俺がやってあげますよ、お客様」

めぐ「おきゃくさま?」

男「そ。お持て成しって事で」

「安いお持て成しだけど」と苦笑いする青年を余所にめぐは存外嬉しそうに笑みを浮かべた。

めぐ「おきゃくさま。おもてなし。おきゃくさ、みゃっ!?」

青年がドライヤーのスイッチを入れると、めぐの表情は一変し毛を逆立てて飛び跳ねた。何か恐ろしいものを見るような目でじりじりと後退して行く。
43: ◆b.qRGRPvDc:2011/10/24(月) 00:03:45 ID:jDEa9QqT6g
男「どうした?」

めぐ「それ、いらない…」

男「ん?それって、これ?」

青年がドライヤーを傾けてめぐに向ける。温風を直に受けて、めぐは叫び声を上げてベッドの上へと飛び乗った。

ふうふうと息を荒げ、肩を上げて凄んでみせたが青年は動じない。
そればかりか、青年の表情はどこか楽しげであった。
44: ◆b.qRGRPvDc:2011/10/24(月) 00:07:05 ID:XoCiYgLVhw
男「フフン…猫の“めぐ”もよくそうやって抗ったものよ」

めぐ「いらないったらいらない!」

男「ええい!黙れお客様!無料サービスでございますーっ!」

めぐ「ぎにゃああぁあああぁぁ!!」

めぐの断末魔のような叫びと青年の笑い声がワンルームに谺する。

それから数分間の格闘の末、青年の前にはぐったりとしためぐの姿があった。
45: ◆b.qRGRPvDc:2011/10/24(月) 00:14:11 ID:jDEa9QqT6g
男「サラサラふわふわの仕上がり。完璧!」

めぐ「うぅ…ボク、おきゃくさま嫌いだ…」

男「そうかそうか」

青年はベッドに突っ伏して頬を膨らませるめぐを横目に、まだほんのりと暖かいその髪を指で梳くように撫でてやった。

暫く唸っていためぐだったが、次第に瞼が重くなっていくのを感じていた。温かくて優しい手の感触を感じながら、やがてめぐの視界は真っ暗になった。
46: ◆b.qRGRPvDc:2011/10/24(月) 00:22:37 ID:jDEa9QqT6g
男「…寝ちゃったよ。しかも見ず知らずの俺のベッドで、勝手に。誰も泊まってけなんて言ってないのに」

溜息を吐いた青年の口元は、その言葉に反して弧を描いていた。

すやすやと寝息を立てて眠るめぐは、あどけない少女の顔をしている。その寝顔を見ながら、そっと布団を掛けてやった。


男「……君は誰なの?何処から来たの?あの場所で、誰を待っていたの?」

男「もしかして、本当に“めぐ”だったりして…?」

一息吐いて、青年はクスリと笑った。音を立てないように静かに立ち上がると、電気のスイッチに手を掛けて「なんて、そんなわけないな」と呟いた。

男「おやすみ、めぐ」

青年の声と同時に、部屋の灯りは消えた。
47: ◆b.qRGRPvDc:2011/10/24(月) 00:25:25 ID:XoCiYgLVhw
今回の更新は此処までです。
用事があるので明日は更新出来ないかもしれません(´・ω・`)

自己満足すぎて読んでくれている方が居るか分かりませんが…
48:名無しさん@読者の声:2011/10/24(月) 00:29:44 ID:yKtndiNjVY
読んでますよ!
っCCC
49:名無しさん@読者の声:2011/10/24(月) 20:29:53 ID:ymANbHLWcQ
ここにも読者がっCCC
50:名無しさん@読者の声:2011/10/24(月) 20:46:10 ID:F4BvMARXc6
つC
51: ◆b.qRGRPvDc:2011/10/26(水) 20:08:47 ID:nL.3mzOnnk
>>48-50
ふおおぉ…ありがとうございます(´;ω;`)
あれ、嬉しすぎて目から汁が…



男「めぐ、支援だぞ!」

めぐ「しえん…?」

男「見てますよーって」

男(どうせまた復唱だろうな)

めぐ「…ストーカーか?」

男「何処で覚えたのそんな言葉!!」


男「練習したのやるぞ?せーの!」

男&めぐ「ありがとー!」
52: ◆b.qRGRPvDc:2011/10/26(水) 20:11:54 ID:iUqifnsgnc
男「…何だこの状態は」

目を覚ました青年は開口一番に言った。

ベッドを占領している筈のめぐは床で寝ている青年の大きく開かれた両足の間に居た。上半身を青年の下腹部に預け、気持ち良さそうにすやすやと寝息を立てている。

男(くっ…!可愛い寝顔しやがって…ほっぺたに噛みつきたい!!)

めぐ「う、ん…」

男「っ!?!?」

頭をもぞもぞと動かしながら鼻から三回程息を吸い込むと再び寝息を立て始めた。
その口元はニンマリと弧を描き、何かを食べているかのようにモグモグと動いている。

青年はめぐの髪をさらりと指で梳くと、起こさないようになるべくゆっくりと下敷きになっている体をずらした。
53: ◆b.qRGRPvDc:2011/10/26(水) 20:21:11 ID:iUqifnsgnc
男「…相も変わらずの天の御恵みだこと」

カーテンを開けた先の空模様を見て、青年は苦笑した。
灰色の空からは“相も変わらずの天の御恵み”が降り続いていた。

路地に視線を落としてみるが誰の姿も見当たらない。どうやら、待ち人は来ていないらしい。

男「……?あれ?ホッとしてないか、俺」

めぐ「んぅー…おと、こぉ?」

男「あ、ごめん。起こした?」

めぐ「ん、だいじょぶ」

クァ、と一つ欠伸をすると眠い目を擦りながら体を起こした。
54: ◆b.qRGRPvDc:2011/10/26(水) 20:33:12 ID:nL.3mzOnnk
***


男「到着、と」

二人は丘の上にある公園に居た。
散歩と称して外出をしたものの、特に行くあてもなかったのだ。

男(しかし、まあ…元気なこった)

陽気に駆け回るめぐには雨具が着させられている。傘を持たせてもすぐに放り投げ、傘の意味は皆無に等しかった。
55: ◆b.qRGRPvDc:2011/10/26(水) 20:36:02 ID:iUqifnsgnc
めぐ「男、これ何?」

男「ん?ああ、望遠鏡だよ。覗いてみるか?」

丘の上の公園には展望台が設けられている。
まだ幼い頃、母に連れられてこの公園に来た時の青年の反応もめぐと同じものだった。

めぐ「男!家見付けた!男の家見付けたよ!」

幼かった自分がめぐと重なって見える。

男「あんまりはしゃいだら台から落ちるぞー」

――母もこんな気持ちだったのだろうか。

男「めぐ、楽しいか?」

めぐ「うん!!」

幼い少年と母親の影が二人と重なってぼんやりと消えていった。
56: ◆b.qRGRPvDc:2011/10/26(水) 20:44:28 ID:iUqifnsgnc
男「めぐ、危ないから止めなさいって!落ちたらどうすんだ!」

青年の制止も聞かず、めぐはせっせと木に登っていた。慣れた手つきで頭上の枝を掴んでは上へ上へと登って行く。

青年はその姿をおろおろとしながら見ているだけだった。

男「危ないって!めーぐ!」

めぐ「男もおいでよ。ぼーえんきょで見るよりずっといいよ」

男「無理!絶っっっ対無理!」

めぐ「木登り怖いの?」

男「怖いよ!雨降ってんだぞ!うっかり滑って落ちちゃったりするかもしれないだろ!危ない!」

めぐは枝の上に立つと青年を見下ろして笑顔で「大丈夫だよ」と言った。
その笑みはどこか自嘲じみていたが、下から見上げる青年にはその表情までは見えなかった。
57: ◆b.qRGRPvDc:2011/10/26(水) 21:11:52 ID:iUqifnsgnc
男「うぅ…何故こんな事に」

木の枝に手を掛けながら青年はぼやく。ミシミシと枝の音聞こえる度に「ヒィ…!」や「アカーン!」などと情けない悲鳴をあげている。

その様を見て、めぐは楽しそうにクスクスと笑った。

めぐ「男、楽しいか?」

めぐの一言で青年の顔がみるみると赤く染まっていく。めぐの言動が先程の自分のそれを真似たものだとすぐに気付いたからだ。

小刻みに震わせた手をめぐの足元にある枝に掛けると、力任せに体を持ち上げた。

男「…っ楽しいわけ!ある、かーっ!!」
58: ◆b.qRGRPvDc:2011/10/26(水) 22:03:10 ID:nL.3mzOnnk
やっとのことで辿り着いためぐの隣で、青年はゼイゼイと息を切らせた。

無数に重なる木の葉の隙間から滴る雫がぽつりぽつりと二人に落ちる。その度にめぐが頭を左右に振るので、青年はバランスを崩さないように木の幹をしっかりと抱き締めて離さなかった。

男(あああぁ…俺高い所苦手なのにあばばばばば)

めぐ「ねぇねぇ、ほら見て!ずーっと向こうまで見えるね!」

男「ふぇ〜?……おお!!」

めぐの指差す先に目をやると、展望台から見る景色よりも随分と綺麗に思えた。

男「これが達成感というやつですね…!」

めぐ「たっせーかんというやつですね〜」

男「繰り返さなくていいから」
59: ◆b.qRGRPvDc:2011/10/26(水) 22:31:48 ID:nL.3mzOnnk
今回は此処までとさせて頂きます。支援して下さった方、本当にありがとうございます愛してます(´;ω;`)

二人の物語も後半戦に突入です。と言ってもそんなに長くはならないと思いますが…
もう少しお付き合い頂けると嬉しいです!
60:名無しさん@読者の声:2011/10/27(木) 12:51:16 ID:PhXpzQBaE2
なんだか切なくなるよ〜CCCC
その内イラスト描いてもいいですか?
61: ◆b.qRGRPvDc:2011/10/27(木) 23:24:57 ID:JR4yEITmE.
>>60
支援ありがとうございます!
ちゃんとハッピーエンド(私の中では)で終わる予定なので温かく見守ってやって下さい。

描いて頂けるなら喜んで!嬉しすぎて踊り狂います(*´・ω・`*)
62: ◆b.qRGRPvDc:2011/10/27(木) 23:32:47 ID:VxWkJSWhZ2
男(しかしまぁ…随分とはしゃいじゃって。昨日とはえらい違いだな)

漠然と広がる景色を見ながら、昨日のめぐを思い出す。

男「何だか濃い一日だった…」

めぐ「?」

男「ああ、いや。ただの独り言」
63: ◆b.qRGRPvDc:2011/10/27(木) 23:34:06 ID:VxWkJSWhZ2
暫く両足をぶらつかせながらはしゃいでいためぐだったが、一点を見つめるとその動きをピタリと止めた。

めぐの瞳がゆらゆらと揺れる。
青年がめぐの視線を辿ると、その先にはあの路地が見えた。

男「………」

訊きたい事は沢山ある。しかし、知ってしまうと別れが訪れるような気がして何も訊ねる事ができなかった。

青年は木の幹から手を離すと、その手でめぐの頭をポンポンと叩いた。
64: ◆b.qRGRPvDc:2011/10/27(木) 23:45:21 ID:VxWkJSWhZ2
めぐ「お、男…あの、ね」

男「あー、えーっと…そうだ、」
青年がめぐの言葉を遮る。
あまりにも白々しいその態度に、出鼻をくじかれためぐは首を傾げた。

男「あのさ、前に話しただろ?猫のめぐ。あいつと出会った時も、こんな風に雨降ってたんだよな」

めぐ「…うん」

男「あいつも雨の中ずっとあそこに居てさ。なんか、放っておけなくて連れて帰っちゃってさ」

めぐ「……」

男「あいつと出会ったのも、めぐと同じ場所だったんだ」
65: ◆b.qRGRPvDc:2011/10/27(木) 23:56:13 ID:JR4yEITmE.
二人の視線は静かに路地に流れた。

灰色の空の下、降り続ける雨に濡れる景色の中には未だに人の気配は感じられない。
肉眼で確認する事は出来ないが、あの路地にも人は居ないのだろう。

男「……何もしてやれなかったけど、めぐは幸せだったのかな」

ぽつりと呟く青年の肩にめぐは頭を預けた。少し強ばった青年の体は、風に揺れるめぐの髪に触れる度にその姿勢を崩していく。

やがて青年の表情から緊張の色が消えて、上目遣いのめぐと視線がぶつかった。
66: ◆b.qRGRPvDc:2011/10/28(金) 00:09:50 ID:JR4yEITmE.
めぐ「しあわせ…だったよ。めぐは、幸せだった」

男「…うん、そうだといいな」

めぐ「…だけど、そうじゃないかもしれない」

男「え?」

めぐ「とても暖かかったから。男の手が、とても暖かかったから。手放したくないと思ってしまった」

男「……」

青年は不思議な気持ちだった。
隣に座っている少女と共に過ごした黒猫は全く異なる存在である事は分かっているのに、まるで“めぐ”がそう言ってくれているようだった。
67: ◆b.qRGRPvDc:2011/10/28(金) 00:12:57 ID:VxWkJSWhZ2
二人の間に緩やかな沈黙が流れる。初めて会った時のような緊張感はなく、静かに寄り添っていた。

男「よし、帰るか!」

めぐ「うん」

青年は木の幹に手を掛けると、ゆっくりと下に向けて体をずらして動きを止めた。

男「……めぐちゃん」

めぐ「うん?」

男「コワイタスケテシンジャウ」

めぐ「……」
68: ◆b.qRGRPvDc:2011/10/28(金) 00:17:25 ID:VxWkJSWhZ2
今回の投下はこれにて終了です。

書き溜めが…底を突いた…orz
頑張ります。おやすみなさい。
69:名無しさん@読者の声:2011/10/28(金) 01:03:45 ID:f79T6dgeUQ
支援だ
70:60:2011/10/28(金) 01:43:37 ID:eKKdJuU0ww
許可してくださり有難うございます!!イラストスレに投稿しました!!
そしてつC
71: ◆b.qRGRPvDc:2011/10/28(金) 14:54:38 ID:H0rKvEN9d2
>>69
支援ありがとうございます!

男「ありがtごじゃmやべー咬んだ」

少女「日本語もまともに話せないなら喋らない方がいいと思うよ」
めぐ「激しく同意する」キリッ

男「」



>>70
拝見させて頂きました!そしてめぐの可愛さに興奮…!!
めぐがあんなに可愛い奴だとは…(*´д`*)ハァハァ

皆さんにも是非>>70さんの絵を見て頂きたいです!


男「……めぐたん」ゴクリ

少女「止めろ変態」

めぐ「」ビクビク

男「めぐたんhshs」ハァハァ

少女「もう駄目だこいつ」
72: ◆b.qRGRPvDc:2011/10/28(金) 22:21:10 ID:H0rKvEN9d2

***


男「〜♪」

鼻歌混じりに青年は歩き、そのテンポに合わせてめぐが歩いた。
時折くるくると回ってみせ、その度にパシャリと水の音が立つ。

物寂しい路地に二人のメロディーだけが響いていた。


めぐ「…っ」

二人が出会った場所、あの電柱の前で、ふと、めぐが足を止めた。

男「?めぐ?どうした?」

めぐ「……」

男「めぐ…?」

青年が前方に目をやると、電柱の陰に黒いワンピースを着た少女が一人、此方を見て立っていた。

その目はめぐに向けられており、憤慨しているように見える。

少女「…本当に懲りないね、君」
73: ◆b.qRGRPvDc:2011/10/28(金) 22:30:23 ID:aaFLsViIeI
少女の黒目がちなその瞳はどこかめぐに似ている。年はめぐと同じくらいだろうか。

幼い少女の眉間には皺が寄っていた。

男「な、なんか怒ってるけど…知り合い?」

青年がめぐに耳打ちをすると、少女は目を見開いて青年を見つめた。

少女「……驚いた、私まで分かるんだね。これは例外…いや、今の状態ならあり得ない事ではない?」

「いや、でも私は…」顔を顰めてぶつぶつと呟く少女を見て、青年は思わず笑った。
74: ◆b.qRGRPvDc:2011/10/28(金) 22:44:21 ID:H0rKvEN9d2
男「驚いたって、幽霊じゃあるまいし」

クスクスと笑う青年を目の前に、少女の表情は変わらない。

腕を組んでフンと鼻を鳴らすと、半ば投げ遣りな態度で青年に言った。

少女「そう見えるなら幽霊とでも呼ぶといいよ。名前なんて私は貰っていないからね」

男「え?どういう意味…」

少女は先程と同じ目をめぐに向ける。めぐはピクリと体を揺らすと、口を結んで俯いた。

青年はそんな二人を怪訝な目で交互に見る。めぐと少女の関係は分からないが、二人の間に流れる空気の重圧は感じていた。
75: ◆b.qRGRPvDc:2011/10/28(金) 22:57:37 ID:H0rKvEN9d2
男「あのー…二人はお友達?もしかして、めぐの待ち人って…」

少女「その質問に関してはどちらに対しても答えはNOだね」

少女は横目で青年を見やると溜め息を吐いた。

少女「…骨折り損のくたびれ儲けどころじゃないね。何の為にこれと一緒に居るんだい、めぐ?」

男「こ、これ!?これ呼ばわり!?」
76: ◆b.qRGRPvDc:2011/10/28(金) 23:06:20 ID:aaFLsViIeI
少女の問い掛けにめぐは口を結んだまま答えないでいた。俯いためぐの髪からは雫が滴り、雨具のフードで隠れてその表情は伺えない。

ただ、少女がその態度に苛立ちを覚えている事だけは青年にも明白だった。

少女「ねぇ、そこの君」

男「は、はい…?」

少女「君は本当に何も聞かされていないの?」

男「何もって、何が……」

チラリとめぐに目をやる。
俯いためぐの拳は固く握り締められ、小刻みに震えていた。
77: ◆b.qRGRPvDc:2011/10/28(金) 23:17:35 ID:aaFLsViIeI
少しですが今日はこれで投下終了です。支援して下さった方ありがとうございます!


少女「書き溜めがまた尽きたらしいよ」

男「変な所で止めやがって…気まずい事この上ないわ!」

少女「気まずいのは君じゃなくてめぐじゃない?」

めぐ「……ッチ」

男&少女「え…?」

めぐ「早く書けや>>1!!」

男&少女(キャラ違くね!?)



頑張ります。頑張りますとも(´;ω;`)
78:名無しさん@読者の声:2011/10/29(土) 01:17:34 ID:sRkUVeeHaQ
続きが気になる…支援支援!!

質問なんですがめぐだけ名前があるのには何か意味があるのだろうか?
79: ◆b.qRGRPvDc:2011/10/29(土) 18:39:22 ID:Xski3LoVrI
>>78
着眼点が鋭いですね(`・ω・´;)物語も終盤なのでお答えします!

実は、男の名前は何でもよかったので考えませんでしたが“めぐ”という名前を男がつけたというところに意味があります。

最終的にはお話の中で説明するつもりなんですが、はたして上手く伝わるのか…
無事に完結した際に少し後書き的な感じで言い訳をするかもしれませんw


支援して下さって本当にありがとうございます!夜に少しだけ投下します
80: ◆b.qRGRPvDc:2011/10/29(土) 20:03:31 ID:unZ8/kGbD.
少女「どうやら彼女は君に絆されてしまったみたいだね」

男「さっきから何を言って…」

少女はやれやれと首を振ると青年越しにめぐを覗いて、

少女「説明、してやらないのかい?」

めぐ「……」

微かに揺れためぐからは動揺の色が伺えた。

重い空気の中、雨は降り続ける。その音が酷く耳障りで醜悪なものに聞こえるのは恐らく全員であると、それぞれの表情から読み取れた。
81: ◆b.qRGRPvDc:2011/10/29(土) 20:12:02 ID:Xski3LoVrI
少女「…傍に居てはいけない」

男(あれ、この台詞何処かで…?)

少女「このままじゃ君も消える事になる」

青年の脳裏に走馬灯のような映像が浮かぶ。それは酷くノイズが入っており、正確なものではない。
ズキンズキンと青年の頭が痛む。


――思い出せるのは、月明かりにほんのりと照らされた黒猫の姿と、鈴の音。


男「め、ぐ…?」
82:名無しさん@読者の声:2011/10/29(土) 23:10:03 ID:sRkUVeeHaQ
つC

ハッピーエンドなんだよな…?めぐにはどうか幸せになってほしい!
83: ◆b.qRGRPvDc:2011/10/30(日) 21:20:37 ID:GF3XScfD5.
>>82
めぐ「しえんありがとー!」

男「ちゃんとお礼が言えるようになりましたよ!」ドヤ

少女「なに当り前の事でドヤ顔してんの。消えたいの?」

男&めぐ「」



めぐにとっての幸せは「現状のまま」男と過ごす事なので、幸せという点ではどうなんでしょう。私にも分からないのです(´・ω・`)

すみません、あまり喋りすぎるのもよくないですねwハッピーエンドのつもりなので見守ってやって下さい!
84: ◆b.qRGRPvDc:2011/10/30(日) 21:28:50 ID:GF3XScfD5.
男「おわっ!?」

少女「…っ…ちょっと!」

青年の声に弾かれるようにして、めぐは地面を蹴った。青年の腕を掴み、まるで逃げるように駆け出す。

状況が掴めないまま、もたつく足で青年も走った。

少女「もう時間がないんだよ?本当は自分でも気付いているんでしょう!?」

走り去る二人に向けて少女は叫んだ。段々と小さくなっていく二人の後ろ姿を見ながら小さく舌打ちをする。

少女「…馬鹿だね、本当に」

少女は降り続ける雨に掌をかざして灰色の空を仰いだ。

少女「君達が見ている世界はこんなにも寂しいのに…」
85: ◆b.qRGRPvDc:2011/10/30(日) 21:45:11 ID:GF3XScfD5.

――‐‥


男「…っちょ、めぐっ!どうしたんだよ…!!」

青年はめぐに引かれるままに走っていた。めぐの足は青年のマンションへと真っ直ぐに向かい、階段を上りはじめる。

五階建てと言えど階段を駆け上がるのは存外辛いもので、青年はすぐにヒィヒィと息を切らせた。

男「め、めぐちゃ…お兄ちゃん疲れちゃっ……うぉお!?」

玄関のドアを開けてすぐに青年の視界は反転した。
めぐの体重で胸が圧迫されている。首の後ろに手を回して、ギュッと青年にしがみ付いた。

男(どうしよう…息苦しすぎてオェッて言っちゃいそうだなんて言えないんだぜ…)
86: ◆b.qRGRPvDc:2011/10/30(日) 21:59:28 ID:m.R0NSndc6
男「おーい、何とか言ってくれよぉー…」

どのくらいこうしているのだろうか。依然として二人は同じ体制のままでいた。青年の呼吸はもう十分整っている。

何も言わずにただしがみ付くだけのめぐに、青年は逐一質問を投げ掛けた。

あの少女は誰か、あの少女とめぐの関係は何か、何故あの少女はめぐの名前を知っていたのか、少女の言葉の意味は、何故逃げたのか、何を隠しているのか―。

そのどれもにめぐは答える事はなく、固く口を結んで青年の首元に顔を埋めていた。
困り果てた青年はただめぐの頭をポンポンと叩きながら彼女の反応を待つのみだった。
87: ◆b.qRGRPvDc:2011/10/31(月) 20:52:20 ID:KtFJ47OitU
男「―‥という訳で俺の初恋は終了したわけだ。甘酸っぱいよなー…って、あれ?」

独り言のように思い出話をしていた青年は、めぐの息遣いの変化に気付いた。
先程までとは違って随分と深く呼吸をしている。首元に回された腕の力も弱まっているように思えた。

男「………寝てやがる!聞いてよ俺の初恋話!」

凡そ一定のリズムを保ってめぐの肩が上下する。
青年が体を起こすと、めぐはずるずると滑り落ちた。
88: ◆b.qRGRPvDc:2011/10/31(月) 21:05:19 ID:7TQFjl8JpQ
男「大した事してないのに汗掻いた…」

めぐに布団を掛けて青年は呟いた。額にはじんわりと汗が滲んでいる。

いくら雨具とはいえ、寝ている間に着ているものを脱がせるという行為は青年にとっては苦悶する事だった。

後ろめたい気持ちを振り払うように、青年は自分の頭にシャワーを浴びせた。
89: ◆b.qRGRPvDc:2011/10/31(月) 21:27:33 ID:7TQFjl8JpQ
男「ふぃー、気持ち良かった」

暖まった青年の頬は赤みを帯びている。満足気に顔を綻ばせながらその頬を両手で二度叩いた。

ベットに目をやると昨夜のように寝息を立てているめぐの姿があった。その寝顔を見つめる青年の目は慈愛に満ちているようだった。

青年の手がめぐの髪にそっと触れた時、めぐの唇が微かに動いた。

めぐ「……ぃ……で…」

男「ん…?」
90: ◆b.qRGRPvDc:2011/10/31(月) 22:01:08 ID:KtFJ47OitU
めぐ「ごめ…なさ……居なくならないで…」

男「めぐ…?」

めぐの頬には涙が伝い、擦れた声で何度も同じ言葉を繰り返している。

青年の指先がめぐの涙に触れる。
親指を滑らせて涙を拭ってやると、めぐはまた寝息を立て始めた。
91:名無しさん@読者の声:2011/10/31(月) 23:40:32 ID:JO97BXhrO.
めぐ…(´;ω;)っCCC
92:名無しさん@読者の声:2011/11/1(火) 02:01:27 ID:DupF7GDfog
めぐぅう…(ρ_;)
全力で支援!
93: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/1(火) 21:10:53 ID:IYtf.Fifp2
>>91-92
支援ありがとうございます。
あー嬉しい(´;ω;`)


めぐ「しえんありがとー!」

少女「馬鹿の一つ覚えだね」フン

めぐ「むー。じゃあお手本見せて!」

少女「…初めまして、今晩は。この度はこのような稚拙な物語にご支援下さってありがとうございます。登場人物を代表して心よりお礼を申し上げry」←早口

めぐ「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!」アワアワ
94: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/1(火) 21:19:46 ID:IYtf.Fifp2
男「……」

青年の指がめぐの頬を滑る。めぐはきっと背後のカーテンの向こう側、あの路地に現れるであろう人物を思っているのだろう。

もしも、待ち人が現れたら。

男「居なくなる…のか」

青年はベッドの脇に手を掛けて体を持ち上げる。ギシリと軋んだ音がやけに耳についた。
95: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/1(火) 21:30:13 ID:IYtf.Fifp2
男「ん?」

立ち上がろうとした青年の服が何かに引っ掛かったように引き付けられた。

そちらに目線をやると、青年の服を掴むめぐの手があった。

男「電気消すだけだよ。って、あれは俺に言ってるわけじゃないわな」

青年は苦笑しながらそっとめぐの手を掴んだ。服から離そうと引っ張ってみるとめぐの手にグッと力が込められた。
96:もうすぐ100だ! ◆b.qRGRPvDc:2011/11/1(火) 21:51:24 ID:CE5FKk9tr6
めぐ「おと、こ…」

男「え?はい?俺?」

一度だけ、めぐは確かに青年の名を呼んだ。

それに続く言葉はいくら待っても発される事はなかったが、青年は服を握り締めるめぐの手を離す事が出来なかった。
97: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/1(火) 22:02:06 ID:CE5FKk9tr6
男「……めぐ、俺は―」

何かを言い掛けた青年だったが、続ける言葉が見当たらない。口に出してはいけないような気がして、それ以上は何も言えなかった。

そのままベッドの横に腰を下ろして、めぐの手に自身の手を重ねた。

男「おやすみ、めぐ」

めぐの寝息を子守唄に、青年も眠りに就いた。
98: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/1(火) 22:33:59 ID:IYtf.Fifp2
男「――めぐ!」

青年の声がワンルームに響き渡る。めぐからの返事はない。

青年が目を覚ますとその肩には昨晩、自分が掛けてやった布団が掛かっていた。重ねた筈の手は解かれ、其処にめぐの姿はない。

開け放たれたベランダから入り込む風がカーテンを揺らしている。

男「まさか、な…」

青年の喉がゴクリと波打つ。震える手でカーテンを握り締めると、勢い良く開け放った。
99: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/1(火) 22:59:50 ID:CE5FKk9tr6
男「……なんだ、居ないじゃん」

カーテンの向こう側に広がる景色を見て、青年は安堵の息を洩らした。

ベランダから見える景色は相変わらず灰色の空と、降りしきる雨のみだった。昨日見た景色と何も変わっていない。当然、あの路地にも人は見当たらなかった。

男(何処行ったんだよ、あいつ)
100:祝!100レス目! ◆b.qRGRPvDc:2011/11/1(火) 23:19:45 ID:CE5FKk9tr6
思考を巡らせても、めぐの行き先の検討がつかない。青年の中にあるめぐの情報は、どれも行き先を示すものではなかった。

男「……俺、めぐの事何も知らないじゃん」

はあ、と溜息一つ、頭を抱えて項垂れた。しんと静まり返る部屋の中、喪失感に苛まれる。

男「様子、おかしかったもんな…昨日……昨日?」

青年ははっと顔を上げると立ち上がった。

男「そうだ!昨日のあの子なら!」
101: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/1(火) 23:27:27 ID:CE5FKk9tr6
今日の更新は此処までとさせて頂きます。

支援して下さった方、このスレを開いて下さった方、読んで下さっている方、本当にありがとうございます!お陰さまで100まで続きました!

だらだらと続いていますが、もう少しお付き合い下さいませ(´・ω・`)
102:名無しさん@読者の声:2011/11/1(火) 23:37:12 ID:JLU0toeGlQ
めぐは俺の嫁!!
つCCCCC
103:名無しさん@読者の声:2011/11/1(火) 23:38:24 ID:emIXT3i.Lo
じゃあ少女は俺が貰ってくよ

C
104:名無しさん@読者の声:2011/11/2(水) 08:15:16 ID:R4AFrbnJ1A
熱烈支援(`・ω・´)っC
105: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/2(水) 18:28:36 ID:4LZl.mGheA
>>102
めぐ「おれのよめー!」
男「嫁…だと…?だが断る!!」
少女「めぐは君の嫁でもないし拒否権は君にはないけど?」
男「」
少女「泣かないでよ気持ち悪い」


>>103
少女「趣味が悪いね」
男「顔が赤いぞ?」ニヤニヤ
めぐ「赤いぞー!」
少女「君達うるさいよ。消えたいの?」ピキピキ
男&めぐ「」
少女「…一応、礼は言っておくよ」
男(こいつ、ツンデレか…!!)


>>104
男「支援ありがとう!ところで、君は俺を嫁にm「いらないでしょ」
少女「需要ないんだよ、君」
男「辛すぎる!誰か俺を好きになって!!」



支援ありがとうございます!本当に励みになります(´;∀;`)

また後で投下しにきます。
106: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/2(水) 22:41:04 ID:VDnJeC4e6A
雨の中、傘も持たずに青年は家を飛び出した。階段を駈け降り、少女の居た場所へと向かう。

踏み締めたアスファルトからパシャパシャと水しぶきが上がる。
ズボンの裾が濡れる事も構わず、青年は走った。

男「…居ない」

肩で息をしながら辺りを見回したが、少女の姿は疎か、人の気配すらない。
相変わらず人気のない路地で一人、へなへなとその場にしゃがみこんで頭を掻き毟った。

男「あー、もう!何処に居るんだよ幽霊さんも、めぐも!」
107: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/2(水) 23:02:17 ID:VDnJeC4e6A
少女「めぐは此処には居ないよ」

男「ぎゃーっ!」

突然聞こえた背後からの声に、青年は体を跳ねさせた。
恐る恐る振り返ると、耳を押さえた少女が眉を寄せながら青年を見下ろしていた。少女は昨日と何ら変わりない格好で其処に居た。

少女「うるさいよ」

男「す、すみません幽霊さん…」

少女「本当に幽霊って呼ぶんだね」

男「じゃあ、女の子だから霊子さん」

少女はげんなりとした表情で頭を押さえた。
108: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/2(水) 23:24:58 ID:VDnJeC4e6A
少女「で?」

少女は首を傾げて青年に話の先を促した。

少女「私に何か用?」

男「あ、はい。その、めぐの事なんですけど…」

ああ、と頷いて少女は踵を返した。スカートの裾がふわりと風に揺れる。

少女「彼女の事なら知らないよ。第一、私から逃げたんだから知るわけがないでしょ」

ひらひらと手を振りながらその場から離れて行く少女を、青年は追い掛けた。

男「待ってくれよ!あいつ“居なくならないで”って言ったんだよ。だったら、居なくなるのはあいつじゃないだろ?」
109: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/2(水) 23:57:28 ID:VDnJeC4e6A
少女は足を止めて青年に向き直った。

少女「じゃあ、居なくなるのは誰なのさ」

男「それは……誰だ?」

相変わらずの仏頂面で青年を見上げて溜息を吐く。その動作は至極面倒そうなもので、青年はたじろいだ。

少女「…君は鈍いのか鋭いのかどっちなんだい」

男「へ?」

少女「“めぐ”を一番知っているのは君だと思うけど。それに、私が知る限りは彼女は此処と君の家しか知らない筈だよ」

男「此処と、俺の家…?」
110: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/3(木) 00:17:50 ID:VDnJeC4e6A
青年が気が付いた時にはもう少女の姿は何処にも見当たらなかった。呆然と立ち尽くす青年に、雨は降り注ぎ続ける。

青年のズボンはすっかり色が変わってしまっていた。

男「霊子さんが知らなくて俺とめぐは知ってる場所…?」

青年はぼんやりと路地を見つめる。雨具姿のめぐが楽しそうにくるくると回る姿が見えた気がした。

男「一つしかない、か」
111: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/3(木) 00:28:59 ID:VDnJeC4e6A
青年は再び走った。バシャバシャと水音を立てて、めぐが居るであろう場所に向かった。

二人で肩を並べた場所。
幸せだったと、手放したくないと言ってくれた場所へ。

息を切らして、ただ、真っ直ぐに。


――真っ直ぐに、めぐを求めた。


男「めぐ!!」
112: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/3(木) 00:32:17 ID:BlrKqtJxIg
これにて今日の投下は終了とさせて頂きます。

いつも支援して下さってありがとうございます!
113:名無しさん@読者の声:2011/11/3(木) 00:48:45 ID:aTgMsJ/gf2
この1区切るの上手すぎるぜ…気になって眠れん!支援支援!
114:名無しさん@読者の声:2011/11/3(木) 08:04:56 ID:EG7w1yMPRs
つC
115: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/4(金) 23:03:49 ID:e9xZwMYK/.
体調不良の為、今日はお休みします。昨日も投下出来ず申し訳ありませんorz

支援して下さってありがとうございます。レスは明日に必ずさせて頂きます
116:名無しさん@読者の声:2011/11/5(土) 09:55:02 ID:7qWZnYTPBM
>>115
体調はいかがですか?
天候も気温も変化の大きい時期ですものね。
ゆっくり休まれてくださいね。

117: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/5(土) 21:42:36 ID:gMBCdlvBpY
>>113-114
支援ありがとうございます!

めぐ「支援ありがとうございます」
少女「そうそう、お礼はそうやって言うんだよ」
男「調教されとる…」gkbr


>>116
暖かいお言葉ありがとうございます…急性胃腸炎に掛かってしまって2日程ですっかりトイレと仲良しになりましたorz
体調管理もしっかりしないといけませんね。お気遣い本当にありがとうございます(´ω`)
118: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/5(土) 21:44:30 ID:gMBCdlvBpY
丘の上にある公園、二人で寄り添った木にめぐは居た。あの時と同じように木の枝に一人、腰掛けていた。

めぐ「男…」

男「何黙って居なくなってんだ、馬鹿…!」

青年は膝に手をついて呼吸をしながらめぐを見上げた。肩は大きく上下して、酸素を吸い込む度に咳き込んだ。
119:名無しさん@読者の声:2011/11/5(土) 21:52:21 ID:EG7w1yMPRs
体調は大丈夫?
無理だけはしないように(`・ω・)キリッ

っCCCCCC
120: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/5(土) 21:59:56 ID:abfFXIg/oE
男「待ってる奴が居るんだろ?居なくならないでほしいんだろ?なんであそこに居ないんだよ」

めぐはぴくりと体を揺らした。黒めがちな瞳に睫毛が掛かる。

ぎゅっと胸が、締め付けられる。

男「何を隠してんのか知らないけどさぁ…」

青年はゆっくりと体を起こし、真っ直ぐにめぐを見つめた。

男「お前と一緒に居たいんだよ、俺は」
121: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/5(土) 22:06:17 ID:abfFXIg/oE
>>119
ありがとうございます…!
まだ少しトイレと仲良くはしていますが、点滴のお陰で大分距離を置けるようになりました!
恐るべし急性胃腸炎…119さんも気を付けて下さいね(`・ω・´)キリッ


めぐ「トイレと仲良しってどういう意味?」
男「え?それは、えーと…(下品すぎて言えねぇ…!!)」
少女「出るもん出してるだけだよ」
1「言わないでえぇえぇぇ!!」
122: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/5(土) 22:12:04 ID:gMBCdlvBpY
まさか、とめぐは顔を上げる。青年の真っ直ぐな視線とぶつかって思わず唇を噛み締めた。

男「お前が何処の誰なのかとか、俺に何を隠してるのかなんてもうどうだっていい。俺は“めぐ”と一緒に居たいんだよ!」

青年の瞳からは涙が零れていた。
人前でこんなに泣くなんて何年ぶりだろうか。震える喉をグッと堪えた。
123: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/5(土) 22:25:07 ID:abfFXIg/oE
男「お前はどうなんだよ、めぐ!」

めぐ「ボクは……」

めぐの肩が小刻みに震える。瞳は大きくゆらゆらと揺れ、やがて大粒の涙を溢れさせた。

雨に混ざってめぐの涙が落ちる。

めぐ「一緒に、居たい…男と一緒に居たい!」
124: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/5(土) 22:50:06 ID:gMBCdlvBpY
めぐはわんわんと噎び泣いた。自分の行動が自らの存在意義を無にする事を理解していた。

それでも、この気持ちを抑える事が出来なかった。

男「めぐ、おいで」

青年が手を広げる。

男「…帰ろう、一緒に」

青年の言葉と同時にめぐの腰が浮く。とめどなく溢れる涙で顔を濡らして、青年の胸に飛び込んだ。

青年はめぐを腕の中に受け止めると、勢い良く後ろに倒れこんだ。

男「…ぐっ……!!」

男(頭強打した痛い泣いちゃう格好付けるんじゃなかった!!!)
125: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/5(土) 23:15:00 ID:gMBCdlvBpY
めぐ(男、ごめんね…ごめんなさい、ごめんなさい…)

青年の暖かい腕の中で、めぐは思い続けた。


もう少しだけ、傍に居させて、と。
許されない事なのは分かっている。少女の忠告も理解はしている。

青年と過ごす時間は、意味のない事なのだと。いずれ自分という存在は消え失せて、もう二度と青年とこうする事も出来なくなるのだと。

めぐは、理解していた。
126: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/5(土) 23:18:35 ID:abfFXIg/oE
少しですが今日の投下は此処までとさせて頂きます。

支援して下さった方、体を気遣って下さった方、皆さん本当にありがとうございます。大好きです(*´・ω・`*)
127:名無しさん@読者の声:2011/11/6(日) 00:12:34 ID:8UfovPMLHI
くそっ男かっこいい…(´;_;)っC

1さん無理は禁物ですぞ!ゆっくり休んで早く良くなってね!
128: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/6(日) 19:40:45 ID:U7KJ6HZvos
>>127
お気遣い感謝です(´;ω;`)
お粥や豆腐ばかり食べていますが、胃に優しいものは少し味気ないですね。うどんに大分救われていますw

男はお節介でとても良い奴です。子供の頃から捨て猫等を放っておけず、しょっちゅう家に連れて帰っていたという無駄な裏設定があります。彼の母親もまた然り。
だから母親亡き今も、大好きだった妹の息子の面倒を伯母が見てくれる。彼が学生でいられる理由がそれです。
すみません、語りすぎてしまいましたw格好良くないけど、良い奴。それが男という人間です。


男「イケメンの俺から礼を言おう。支援ありがとう」キリッ
少女「……(蔑むような目)」
男「分かってるからそんな目で見ないで…」
少女「何も言ってないのに何故泣くんだい鬱陶しい気持ち悪い」
男「」
129: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/6(日) 21:04:00 ID:dhwnfalxmU



あれから幾日も時間が流れた。

めぐは青年の家での生活にもすっかり慣れ、苦手とするドライヤーも我慢出来るようになっていた。

少女もあの日から姿を現す事はなく、二人は穏やかに過ごしていた。

ゲームをしたり、青年の思い出話をただひたすらに聞いたり、公園の木に二人、肩を並べて座ったり。

幸せな時間が二人を包み込む。いつまでもこんな日が続けば良い――そう思っていた。
130: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/6(日) 21:23:09 ID:U7KJ6HZvos
浴槽に張られたお湯をチャプチャプと弄ぶ音がする。手の平で掬ったお湯は隙間からいとも容易く零れていく。

男「ちゃんと十秒数えてから出るんだぞー」

めぐ「わかってるもん!いーち、にーい…」

ドアの向こうから聞こえる青年の声に返事をして、めぐは指折り数え始めた。

めぐ「…じゅう!」
131: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/6(日) 21:57:36 ID:U7KJ6HZvos
浴槽に手を掛けて体を起こす。激しく波打つお湯の粒が弾けてめぐの顔に何滴か当たった。

ゆらゆらと揺れる水面。覗き込んでみても其処にめぐの姿はない。無機質な電球の灯りだけが水面で揺れている。指先でそっと灯りに触れると円を描いてその形を崩した。

めぐ「……もう、時間がないね」

自嘲じみた笑顔で水面を見つめる。電球の灯りが頷くように揺れていた。
132: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/6(日) 22:15:03 ID:U7KJ6HZvos
めぐ「うぅーうぅー…」

男「はいはい、もう少しの辛抱だから」

不愉快な轟音と温風がめぐを襲う。随分と慣れはしたものの、やはり好きになる事は出来なかった。

ああ、なんでドライヤーなんてものが生まれてしまったのか。毎度の事ながら、めぐは心の中で小さく舌打ちをした。

男「はい、終わり。お疲れさまでした」

めぐ「お疲れさまでした…」
133: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/6(日) 22:34:42 ID:dhwnfalxmU
男「サラサラふわふわ!完璧!」

めぐ「完璧ー!」

青年がめぐの髪を梳かしながら弄ぶ。その表情は口角を上げて至極満足そうなものだった。
めぐもドライヤーからの解放感から、嬉しそうに声を上げた。

男「ほれ、もういいぞ」

めぐ「わーい!お疲れさまでしたよー!」

青年の手がポンとめぐの頭に触れた。めぐは洗面台の前から離れると、そのままベッドに飛び乗って突っ伏した。
134: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/6(日) 22:55:58 ID:U7KJ6HZvos
男「布団に飛び込むなっていつも言ってるだろうに…」

めぐ「だって!お布団気持ちいいんだもん!」

青年は布団に突っ伏したまま足をバタつかせるめぐの後ろ姿を苦笑しながら見下ろした。

男「はいはい、良い子はさっさと寝なさい」

めぐ「はーい」

眉を下げて笑うめぐの表情は青年が押した電気のスイッチ音と同時に暗闇に消えた。
135: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/6(日) 23:18:44 ID:dhwnfalxmU
客人だからとめぐにベッドを譲っていた青年だったが、何度別に寝ても青年が目を覚ますとめぐは青年に寄り添うように眠っていた。
何の為に固い床で我慢しているのか―そんな疑問は二人でベッドで眠るという選択で容易に解決した。

“そういう関係”でないのは分かっているが、だからこそあまり密着するのも憚られる。青年はいつも気を遣ってベッドの脇に寄っていた。

しかし、この状況は青年にとってもあんまりだった。

男「……めぐちゃん。そんなに寄って来られたら落ちちゃうんですけど、俺」

ベッドに横になる青年に、めぐはぴったりと密着していた。
136: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/6(日) 23:42:36 ID:dhwnfalxmU
めぐ「…男、あのね」

男「ん?」

布が擦れる音がする。暗闇の中でめぐはうつ伏せの態勢を取った。

めぐ「“トモダオレ”ってどういう意味?」

男「読んで字の如く、だな。共に倒れる事だよ。助け合ったりした結果、二人共駄目になっちゃうって感じかな」

めぐ「二人共…」

男「うん。それがどうかした?」

青年はチラリと横目でめぐを見た。表情までは見えないが、小さな頭を枕に埋めている姿がぼんやりと見えた。
137: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/7(月) 00:11:13 ID:dhwnfalxmU
男「めぐ?何かあったのか?」

めぐ「な、何でもない!」

青年の声と同時にめぐははっと顔を上げた。慌てて仰向けに態勢を変えると、顔だけを青年に向けて笑った。

めぐ「おやすみなさい、男」

男「…ん。おやすみ、めぐ」
138: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/7(月) 00:14:37 ID:dhwnfalxmU
もう少し投下したかったのですが寝てしまいそうなのでこれにて終了とさせて頂きます!

読者スレで此処の名前が出ているのを発見してニヤニヤが止まらない1です。幸せな気持ちのまま眠りに就きたいと思います(*´∀`*)

支援して下さった方、ありがとうございます!おやすみなさい
139:名無しさん@読者の声:2011/11/7(月) 01:18:37 ID:/c1i8FH/0g
めぐどうしたぁぁぁ(;ω;)っC

勝手にSS絵スレでリクエストしてしまったけどよかったかなぁ…勝手な事してごめん!
140: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/7(月) 17:38:21 ID:e5rqslqDyc
>>139
支援ありがとうございます!
拝見させて頂きました。印象に残ったというのは私としては凄く嬉しいですよ!リクエストして頂けた事もとてもとても嬉しかったです(´ω`)
絵スレの1さんのご迷惑でなければ私からもお願いしたい程ですw139さんもよかったら…(チラッチラッ



めぐ「支援ありがとー!あのね、ボクね「セェェェイ!」
男「ネタバレ駄目絶対!!」
めぐ「…小せぇ男だな」ボソッ
男「…え?何?」
めぐ「ううん、何でもないよ」ニコ
141: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/7(月) 17:41:18 ID:e5rqslqDyc
少し相談をば…

本編とは全く関係のないネタのようなものがあるんですが、本編を少し投下してネタを投下してもいいでしょうか?

さっさと本編終わらせんかい!
という意見がありましたら言ってやって下さい(`・ω・´)

また夜に投下しに来ます!
142: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/7(月) 21:06:02 ID:mqN6SPO.86
深く呼吸を繰り返す音が暗闇の中、一つ聞こえる。もう一人はどうやら眠っていないらしい。

布が擦れる音がして、小さな人影が起き上がった。

めぐ「……」

体を起こしためぐは黙って青年を見つめていた。視界がぼやけて青年の顔がよく見えない。

めぐは涙を流していた。
143: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/7(月) 21:22:28 ID:mqN6SPO.86
青年の髪に、瞼に、頬にと触れる。どれも暖かく、めぐにとって心地好いものだった。

めぐ「…っく、うぅ……」

静かにしなければ青年が目を覚ましてしまう、そう思ってはいるものの、溢れるものが止まらない。
しゃくり上げそうになるのを堪えて青年の頬をそっと撫でた。

めぐ「ご、めんね、ごめっ…男には、居なくならないでほしいから…」
144: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/7(月) 21:43:04 ID:mqN6SPO.86
めぐの両手が青年の頬を包み込む。小さな人影がゆっくりと動き、重なって行く。

めぐの唇がそっと青年の唇に触れた。

それは、とても短い口付けだった。

めぐ「…さようなら、男」

窓を開けて振り返る。青年は今だにすやすやと寝息を立てていた。

小さな人影がパタパタとはためくカーテンの向こう側に消える。外の雨はもう、小雨になっていた。
145: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/7(月) 22:12:35 ID:mqN6SPO.86
男「……はぁ…」

青年は一人、身を捩った。寝返りを打とうとした際に意識がはっきりとしてしまった。

目を閉じていても瞼からオレンジ色が映る。もう朝なのだろうか。どれくらい自分が眠っていたのかも分からないでいた。

夢を見た気がする。内容は覚えてはいないけれど、何だか寂しい気分になるのはその所為かもしれない。

目を開けなくても、青年には分かった。

男「なんでまた居なくなるんだよ、めぐ…」
146: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/7(月) 22:40:42 ID:e5rqslqDyc
手の甲を瞼に押しあてる。自然と口からは溜め息が洩れた。

『傍に居てはいけない』

『このままじゃ君も消える事になる』

少女の声が青年の脳内で谺する。黒目がちな瞳が青年を捕えた。

男「…っ!」

走馬灯のような映像が流れる。あの時のように青年の頭がズキン、ズキンと痛んだ。
147: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/7(月) 23:01:04 ID:e5rqslqDyc
砂嵐のようなものに交ざって人影が二つ、動いている。

『…本当に、送り届けないといけないのかな』

『傍に居たら、消えちゃうの…?』

ノイズ交じりに女の子の声が聞こえる。やがて砂嵐は無くなり、女の子の顔がはっきりと浮かんだ。

『…さようなら、男』

月明かりに浮かぶ黒猫と重なって見えた、一人の少女の姿。

それは紛れもなく、

男「……めぐ…なんで………」
148: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/7(月) 23:08:00 ID:e5rqslqDyc
今日は此処までとさせて頂きます。今週中に完結出来る、かな?

>>141のしょうもない発言は忘れて下さいw完結して需要があれば投下したいと思います(`・ω・´)

それから私信になりますが>>139さん!絵スレの1さんが素晴らしい絵を描いて下さいました!!
もう涙ちょちょ切れです。リクエストして下さってありがとうございました(´;ω;`)
149:139:2011/11/8(火) 00:34:42 ID:lc8RQVBUOw
見ました!!あれはヤバイ泣ける(;ω;)

SSで泣いちゃったの初めてだったんだぜwwこちらこそ素晴らしいSSを書いてくれて有難う

今日の展開もヤバイっすw名無しに戻って期待してます!!っCCCCCCCC
150:名無しさん@読者の声:2011/11/8(火) 23:48:55 ID:KjMJHnHQms
っC
151: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/9(水) 21:00:48 ID:xoGBRqKnAA
>>149
支援ありがとうございます!
こんな稚拙なもので涙して頂けたというだけで、私が泣いてしまいそうです(´;ω;`)

読んでくれてありがとうございます。期待に応えられるように全力で頑張ります!


>>150
支援ありがとうございます!
沢山あるSSの中でこのスレを開いて下さって、本当に(´;ω;`)



男「支援ありがとう!1も喜んでおる!」
少女「何だい、その喋り方は」
男「特に意味はないのである!」エッヘン
少女「だったら止めた方がいいよ。気持ち悪いから」
男「霊子さんって俺の扱い酷くない!?」
152: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/9(水) 21:03:09 ID:mYM8Ym1HnU
夢で見た不思議な光景、あの声はめぐのものだった。

同じ場所、あの路地に居た少女と黒猫は、雨の中同じ“誰か”を待っていたのだろうか。青年は頭を抱えて俯いた。

カーテンの向こうを見るのが怖い。何かを知るのが怖かった。

――それでも。

男「…何も知らないまま居なくなられるのは、もう嫌だ」
153: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/9(水) 21:21:29 ID:mYM8Ym1HnU
青年は震える手を抑えるようにぎゅっと握った。空気を吸い込むと、喉がヒュッと渇いた音を洩らす。

一度目を閉じて、ゆっくりと開く。

男「霊子さん、居るんだろ?」

シンと静まり返るワンルームを見渡して、

男「霊子さん!頼むよ!!」

少女「うるさい」

男「ヒッ…!!」

青年の背後に少女は居た。

二度目と言えど、青年の体は大きく跳ねる。声が出そうになるのを辛うじて堪えて、ゴクリと唾を飲み込んだ。
154: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/9(水) 21:44:05 ID:mYM8Ym1HnU
少女「あのねぇ…」

少女はポリポリと頭を掻きながら青年を見た。眉間には深々と皺が刻まれている。

少女「子飼いじゃあるまいし、呼べばすぐ来ると思わないでくれるかな。私にだってすべき事はあるんだから」

それと、と付け足して少女は自分の胸を叩く。

少女「私の呼び名!変な呼び名付けないでくれるかい?」

男「ごめんなさい、霊子さん」

シュンと肩を竦める青年から目を逸らして、やり場のない感情を舌打ちで弾いた。
155: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/9(水) 22:05:43 ID:mYM8Ym1HnU
男「あの、来てくれてありがとう」

少女「勘違いしないでね。別に、君の為じゃないから」

少女の目が泳ぐ。それを見た青年はクスリと微笑んだ。

男「分かってるよ。めぐの為だろ?」

少女「それも違うね。私達は友達でも何でもない」

男「でも、来てくれた」

少女「君が煩く私を呼んだからだよ!」

青年は目を細めて笑った。
頬を紅潮させて顔を逸らす少女がとても愛らしく見える。いつもの仏頂面は見る影もなく、幼さを垣間見せていた。
156: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/9(水) 22:28:27 ID:mYM8Ym1HnU
少女「…君が知りたいのは、」

振り返った少女の目は真っ直ぐに青年を捕らえていた。
風にはためくカーテンが二人の会話を邪魔するようにパタパタと音を立てている。

少女「君が知りたいのは、彼女の事だね」

青年の目の色が変わる。口をグッと引き締めて少女の言葉を待った。
少しの間を開けて、少女は重い口を開いた。

少女「めぐというものは存在しないし、してはいけない。本来出会うべきじゃなかったんだよ、君と彼女は」
157: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/9(水) 22:53:03 ID:VCHgmReH86
少女「…幽霊というのも強ち間違いじゃないんだ。元は人間だったからね、私も彼女も」

男「元は…?」

少女「……」

青年は眉を顰めた。

少女の話があまりにも現実味がなさすぎて理解が出来ない。まるで、安っぽいファンタジー小説を読んでいるようだった。
158: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/9(水) 23:14:44 ID:gdsRLqBUn.
男「存在しないって、してるじゃないか。触れる事だって出来る」

少女「…っ君は!君は、目に見える事が全てなのか?私達は存在しない!ただの空っぽな何かなんだよ」

肩に触れる青年の手から逃げるように、少女は自分自身の肩を抱いた。力をこめられた指先は白くなっている。
青年は少女に掛ける言葉を見付けられずにいた。

少女は荒くなった呼吸を整えて冷静さを取り戻すと、静かに語りだした。
159: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/9(水) 23:33:05 ID:VCHgmReH86
少女「簡単な話だよ。私達は罪を犯し、その代償としてこうしてる」

男「罪って…何を」

少女「…さぁね、記憶なんて何処かに忘れて来たんだろう。気が付いた時には、自分が何者かなんて覚えちゃいなかった」

男「それは、めぐも…?」

少女は無言で頷いた。

青年は出会ったばかりのめぐを思い出した。貴方は誰か―その質問に答えなかった訳が、何となく分かった気がする。

手のひらがじんわりと熱くなって、初めて自分の手に力が入っている事に気付いた。
160: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/9(水) 23:35:41 ID:gdsRLqBUn.
今日の投下は此処までとさせて頂きます。終わりが見えてきた…!

何だか突然寒くなりましたね。皆さんも体調には気を付けて下さいね(´・ω・`)
161:名無しさん@読者の声:2011/11/10(木) 02:44:05 ID:dfKDROSnzQ
いっぱいあげるからめぐと男を幸せにしてあげてCCCCCCCCCCCC
162: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/10(木) 23:31:38 ID:A8T..sH7VM
>>161
沢山ありがとうございます(*`・ω・pCq)キャッチ
前にも他の方に支援を頂いた際にも答えさせて頂いたのですが、めぐにとっての幸せは“現状のまま”男と一緒に居る事なんですね。

救いようのない物語にするつもりはないので欝展開ではない、とだけは断言致します!
こうして色んな方に幸せを願って頂けるめぐは、とても幸せ者ですね。本当にありがとうございます(*´ω`*)




男「支援サンクスだぜ!」
少女「…自分のキャラに迷っているんだね」
男「そ、そんな事ないんだぜ!」
少女「可哀想に」クスッ
男「そんな事…ないんだぜ…」
めぐ「男、可哀想…」
男「もうやだこいつら」グスン
163: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/10(木) 23:40:22 ID:A8T..sH7VM
少女は語り続けた。


――過去に何らかの罪を犯した私達は死後、死者となる事は許されなかった。真っ白い空間に私は居て、これからすべき事を知った。

私達は、こうして“生まれた”。

死期が訪れた人を送り届ける。
それが罪人である私達の償いであり、存在意義なんだそうだ。人は天使や死神と呼んだりするけれど、実際そんなものは居ない。

送り届ける。ただ、それだけの役割なんだよ。
164: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/11(金) 00:23:12 ID:L9VHa.zPfY
人だった頃の自分の事は覚えていない。自分が犯した罪も、分からない。この容姿だって、私であって私じゃない。

そして、本来人に見えるものでもない。君のような人は初めてだったよ。私も、彼女も。

彼女が犯したタブーは、君という人間に出会い、共に過ごしてしまった事。君と触れ合い、存在してしまった事。

それから――
165: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/11(金) 00:51:11 ID:A8T..sH7VM
少女は頭を左右に振ると言葉を紡ぐのを止めた。

少女「…これは、私が語るべき事ではないね」

青年は全身がドクンと脈打つのを感じた。こんなにも現実味のない話を信じる人は居ないだろう。そう思えるのに、目の前の少女の瞳が真実だと語り掛けている。

男「俺が……俺が、めぐの存在意義を奪ったのか?俺が一緒に居たいって言ったから?俺がめぐと出会ってしまったから?」

少女「それは違う。彼女は私の忠告を無視してまで“めぐ”である事を選んだんだよ」
166: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/11(金) 00:56:40 ID:A8T..sH7VM
投下しながら何度も意識を手放してしまう…(´-ω-`)

時間掛かりすぎな上に少ない投下ですが、此処までとさせて頂きます。

おやすみなさい。
167: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/11(金) 20:19:54 ID:VCHgmReH86
少女は風にはためくカーテンに目をやった。

雨の音は殆ど聞こえない。少女は終わりが近付いている事を悟った。

少女「彼女は全てを忘れて“誰か”になるよりも、“めぐ”のまま消滅する事を選んだ。君と過ごした時間をなかった事にはしたくなかったんだろうね」

男「しょう、めつ?待てよ、なんで…意味分かんねぇよ!!」

少女「私達は死者になる事も許されない、罪人なんだよ。罪を償わなければ消滅するのは当然でしょう」
168: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/11(金) 20:45:56 ID:VCHgmReH86
青年の脳裏に焼き付いた、めぐの姿。思い出の中のめぐは罪人などではない、無垢な少女だった。

雨の中、誰かを待ち続けていた少女。雨に濡れる事も厭わず、悲しみに歪んだ表情で青年を見つめた。

「此処に居る」と泣いていた。
めぐと呼ぶと嬉しそうに笑った。

公園で無邪気にはしゃいでいた。
時折寂しそうな表情をして、手放したくないと言ってくれた。


一緒に居たいと、泣いてくれた。


この腕の中に飛び込んで来たのは、この腕が受け止めたのは、


存在しない空っぽの何かではなく、めぐという一人の少女だった。
169: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/11(金) 21:12:13 ID:gdsRLqBUn.
男「…消滅なんかされてたまるかよ」

共に過ごした確かな存在、それを否定する事など青年には出来なかった。

青年の中にふつふつと沸き上がる感情は、今にも弾けそうだった。

男「霊子さん、霊子さん達が償いから解放される方法はないの?」

少女はピクリと眉を動かして得意気に答えた。

少女「あるよ」
170: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/11(金) 21:38:13 ID:VCHgmReH86
少女「私達は過去に罪を犯し、その中で大切な何かを失ったんだ」

男「大切な、何か…」

少女「失くしたものを見付けるまで償いは続く」

男「見付かったら…?」

少女の口元が弧を描く。
その表情はまるでサンタのプレゼントを待つ子供のように、キラキラとしていた。

少女「他の死者と同じように、再び人として生きられる。もう一度やり直せるんだ」
171: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/11(金) 21:58:48 ID:gdsRLqBUn.
『生まれ変わるんだよ、私達は。やり直せるんだ』

夢の中の少女が青年に語り掛けてくる。

『私は失くしたものを見付ける。自分の罪も』

夢の中の少女は、はっきりとそう言った。


男「…そっか、あの声は霊子さんだったんだな」

少女「何がだい」

男「いや、こっちの話」

少女の今までの行動は全て、めぐを助ける為のものだったのだろう。

自分にも、自分にも何か出来るのであれば――。
172: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/11(金) 22:17:11 ID:VCHgmReH86
男「めぐが消えるなんて俺は嫌だ」

少女「そうかい」

男「でも、どうすれば…」

頭を捻る青年を余所に、少女は嘲笑するように小さく笑った。
その目は諦めの色を帯びている。

少女「役目を果たせばいいだけだよ。なのに彼女はそれを拒絶した」

男「役目を、果たす…」
173: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/11(金) 22:40:59 ID:gdsRLqBUn.
少女が語った罪人としての役割、その言葉の意味を青年は考えていた。

『死期が訪れた人を送り届ける』
雨の中、めぐは誰かを待ち続けた。その“誰か”を送り届ければ、あるいは――。

男「ちょっと待てよ……送り届けられるのは、誰だ…?」

少女「…私は彼女ではないから、それを君に教える義務はないよ」

でも、と付け足して少女は真っ直ぐに青年を見つめた。

少女の黒い瞳の奥は、今にも青年を吸い込んでしまいそうな程に暗闇が広がっていた。

少女「本当は、気付いているんでしょう?」
174: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/11(金) 22:44:58 ID:gdsRLqBUn.
今日は此処までとさせて頂きます。書いていてなんですが、もうすぐ終わると思うと寂しいですね。

読んで下さってありがとうございます!
175:名無しさん@読者の声:2011/11/12(土) 00:27:29 ID:avPVj.d99o
この展開はまさか…いや、ハッピーエンドを信じてる!支援だ!


パンツ脱いどいた方がいい?
176:名無しさん@読者の声:2011/11/12(土) 14:35:11 ID:vs1J6Bpbok
>>175
お前まだ脱いでなかったの?
177: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/12(土) 21:01:32 ID:mqN6SPO.86
>>175
支援ありがとうございます!
欝展開ではないのですが、皆さんに納得して頂けるかは分かりません。ただ、このお話を書き始めた時から全て決めていたので、突き進むのみです(`・ω・´)

パンツは履いておいて下さいw

めぐ「パンツ脱ぐの?」
男「少なくともめぐは脱がなくていいから!」
少女「果たして下着という概念が私達にあるのかね」
男「ジーザス」


>>176
その発言からするとまさか…ゴクリ
いや、パンツは履いて下さいw


少女「パンツ脱ぐのかい?」
めぐ「脱がなくていいって男が言ってたよ」
少女「私は言われてないよ」
めぐ「じゃあ脱g「セェェェェェイ!」
男「幼女のノーパンティ駄目絶対!」
178: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/12(土) 21:03:32 ID:mqN6SPO.86
下げるつもりが上げてしまった…すみません(´・ω・`)
諸事情により今日は更新出来ないと思います。

今週中に終わるかもなどとほざいておいてすみません……orz
179: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/13(日) 18:38:53 ID:dMYhP7SHjI
男「…何、を…っ…!?」

突如、青年を襲った耳鳴りと雑音。耳を押さえてもその音は鳴り止まず、頭をガンガンと刺激した。

立っている事もままならず足元をふらつかせる。目の前の少女が激しく歪んで、青年は思わず目を閉じた。


──誰かの泣き声が聞こえる。


?『どうして、どうして…!あの子を返して!!』

─泣かないで。

?『無理矢理にでもこの家に居させれば…こんな事にならなかったかもしれないのに…!』

─そうじゃない。

?『私の所為だ……息子のように思っていたのに…!!』

─貴方の所為じゃ、ないよ。
180: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/13(日) 19:37:21 ID:awCAHkK9I.
男「…っう、」

脳裏で巻き戻されていく青年の記憶。頭の中で沢山の声が響いている。それは大きく鳴り響くと、すぐに止まった。

はっと目を開けると目の前に広がる光景。青年は住宅街の路地にポツリと立っていた。

男「何、だよ……」

頭を押さえてその場に蹲る。
降り続けていた雨は、止んでいた。
181: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/13(日) 20:12:31 ID:awCAHkK9I.
男「…俺、が…?」

ふらふらと青年は立ち上がった。
目の前には先程と変わらず少女の姿があった。フローリングの床がギシリと音を立てて軋む。

男「はは、は…なんだ…」

住み慣れている筈のワンルームにはベッドも、何もなかった。カーテン代わりにぶら下げられている半透明のビニールだけが、風にはためいている。
182: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/13(日) 20:54:49 ID:awCAHkK9I.
全身に走った衝撃、反転する視界、散乱した財布の中身、雨の降る住宅街の路地─それらが青年の脳裏で交差する。

青年は全てを思い出し、そして理解した。

男「居なくなんのは…、俺だ…」

少女「……」

男「俺、なんだ……」
183: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/13(日) 21:18:06 ID:awCAHkK9I.



雨の中、静かに佇んでいた黒猫が待っていたのは、一人の青年。
自分の存在に気付く筈のないその人物は、とても暖かい手の持ち主だった。

人と触れ合うのは初めてだった。
ただの好奇心だった。

黒猫は、いつしか青年を失う事を受け入れられなくなっていた。そして、運命に抗った。

いつか失う命──黒猫はそれをただ守りたかった。


184: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/13(日) 21:38:31 ID:awCAHkK9I.
青年の元を去った黒猫は、自らを犠牲にする事で青年を助けようとした。

それなのに、

それなのに──。


『なん、で…』


守りたかったものが、目の前に立っている。

あの時と同じように、暖かい手で受け止めてくれる。


『一緒に、居たい…男と一緒に居たい!』


抑えきれない気持ちが爆発してしまった。

ああ、この人を失いたくない。
手放したくない。




貴方を、忘れてしまいたくない──




185: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/13(日) 21:43:03 ID:awCAHkK9I.
今日の投下は此処までとさせて頂きます。

ちょっと少女の出番が多過ぎるかな…大丈夫かな…(´・ω・`)
186:名無しさん@読者の声:2011/11/13(日) 23:23:29 ID:/c1i8FH/0g
多すぎないよ(`・ω・´)つCCCCC
少女たん可愛いよ少女たん
187:名無しさん@読者の声:2011/11/14(月) 00:54:17 ID:avPVj.d99o
感情さんランクインおめでとう!
愛してるうううう
188:名無しさん@読者の声:2011/11/14(月) 08:19:41 ID:jXFPpZf.mk
CおCめCでCとCうC
めぐも男も少女も1も愛してるよ
189: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/14(月) 18:15:03 ID:S9pHaiYRfY
>>186
支援ありがとうございます!
メインはめぐと男の筈なのにこれでいいものかと思っていましたが、大事な所なので端折る事も出来ず悩んでいました。
でもその一言で救われました。ありがとうございます(´;ω;`)

少女「少女…たん?」
男「いいじゃないか少女たん…って顔赤っ!」
少女「う、うるさいよ」プイッ
男「186さんごめんね。照れてやがるわ」


>>187-188
支援とコメントありがとうございます!どうしましょう、6位だなんて。ランキングとは無縁だと思っていたのでお二方の書き込みを見て知りました。手が震える…

皆さんが予想をされている所も見ていました。その予想の中に入れて頂いていた事やこのSSを好きだと言って下さった事、ランキングに入る事が出来た事、どれも凄く有難くて嬉しい事です。
ですが、皆さんの反応を見ていると素直に喜べない部分も本心としてあります。とても複雑な心境ですが、皆さんが応援して下さっている事は本当に本当に嬉しいです!言葉に表せられないくらいに!

このSSに投票して下さった皆さん、本当にありがとうございます。私も皆さんの事が大好きです。
これからも頑張りますので見守ってやって下さい(`・ω・´)
190: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/14(月) 18:21:27 ID:OdAcFveXkI
>>189の最後を訂正

このSSに投票して下さった皆さん、支援して下さっている皆さん、読んで下さっている皆さん、です。馬鹿野郎、私。

また夜に投下しに来ます(`・ω・´)
191: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/14(月) 21:44:54 ID:OdAcFveXkI



青年は風にはためくビニールに目をやった。


光を洩らす半透明の向こう側から、車が走る音が聞こえる。何処かで犬が鳴いている。

いつの間にか、魔法は解けてしまっていた。

男「…俺が送り届けられれば、」

ピクリと少女が顔を上げる。

男「めぐは、助かるのか…?」

少女「……」

少女を見つめる青年の目はまるで懇願する子供のように熱を帯びていた。

妄言などではない、真実を語る目をしていた。


192: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/14(月) 22:04:21 ID:S9pHaiYRfY
少女「消えずには済むんじゃない」

少女は視線を下に外すと、ぶっきらぼうに答えてみせた。

安堵の吐息が聞こえてくる。少女の前にはきっと、顔を綻ばせる青年の姿があるのだろう。

男「…天国、行けんのかな」

少女は舌打ちをして青年に向き直った。

少女「何を夢見ているのか知らないけれど、天国なんてものはないよ」

少女の胸がチクチクと痛む。自らが仕向けた事なのに、何故こんなにも胸が痛むのだろうか。


193: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/14(月) 22:32:43 ID:OdAcFveXkI

少女「君という魂は消滅して、また次の世の命となって生まれる」

男「生まれ変わる、か」

少女「随分と素直に受け入れるんだね」

男「ははっ、そうだな」

怪訝そうに見上げる少女を前に、青年は笑ってみせた。

男「思い出しちゃったもんはしょうがないよ。うん。俺、死んじゃったんだもんな」

少女「……」


194: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/14(月) 23:13:05 ID:S9pHaiYRfY

青年の顔から笑みが消えていく。
深い溜め息を吐いて伏せられた睫毛を揺らせた。

男「…下らない人生だった。いつ死んでもいいなんて思ってたけど、なんでこんなに辛いんだろうな」

少女「それは……知っているからでしょう?」

唇を噛み締める少女の手に力が込められた。ギュッと強く握られたワンピースの裾が皺を寄せる。

少女「君を思って、女性がずっと泣いているのが私には聞こえる。…その人の温もりを、君は知っているからでしょう?」


195: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/15(火) 00:00:02 ID:OdAcFveXkI

男「伯母さん…ごめん……」

少女「聞こえる筈ないでしょ」

男「分かってるよ。霊子さんって本当にズバッと言うよね」

少女「いけないかい?」

悪びれる事もなく首を傾げる少女に苦笑気味に笑みを零した。

男「届かなくても伝えたかったんだよ」

「ふーん」と頷きながら少女は青年を見上げる。青年の視線はカーテンの向こう側に向けられていた。


196: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/15(火) 00:04:09 ID:OdAcFveXkI
少しですが今日は此処までとさせて頂きます。

次で少女の出番は終わりにしますです(`・ω・´)

このスレを開いて下さった皆さん、本当にいつもありがとうございます!おやすみなさい
197:名無しさん@読者の声:2011/11/15(火) 08:34:32 ID:CzTxzhHXm6
少女たんとさよならやだあああああ(´;ω;`)
支援支援支援
198: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/15(火) 20:16:31 ID:XtSlSMN0tE
>>197
支援ありがとうございます!
少女は二人を動かす為の大事な登場人物でした。彼女のぶっきらぼうな性格と物言いが気に入って頂けるとは思いもよらず、正直驚いておりますw
男という人間に出会って変わったのは、めぐよりも少女だったのかもしれません。

ああ、なんでこう語りすぎてしまうんでしょうか。語るのは完結してからにすべきですね。本当にすみません…orz

本当にありがとうございます。もう少し、お付き合い下さい(*´・ω・`*)
199: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/15(火) 20:18:39 ID:XtSlSMN0tE

青年が何を思っているのかなど、少女には容易に予想出来た。

少女「……行くのかい?」

男「なんか、霊子さんには頼りっぱなしだったな」

少女「…馬鹿二人じゃ少しも話が先に進まないからね」

少女はフンと鳴らして口元を緩ませた。伏し目がちになりそうなのを堪えて、出来るだけ悪たれてみせた。

青年が笑みを零す。その吐息が合図だったかのように、少女の瞳はゆらゆらと揺れた。


200: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/15(火) 20:41:06 ID:XtSlSMN0tE

男「霊子さん…?」

少女の手がギュッと強く青年の手を握り締める。
青年の手を握りながら、少女は言った。

少女「すまない…」

男「え?」

少女「すまない…!君は、君は私達とは違う。救いがあるから…」

青年は二度程瞬きをしてクスクスと笑った。

少女はきょとんと首を傾げたが、青年の喉はクックッと震えている。


201: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/15(火) 21:09:44 ID:XtSlSMN0tE

青年はコホンと咳払いをして踏ん反り返ってみせた。
眉を寄せて少女を見下ろすと、少女はますます首を傾げた。

男「君さっきから何言ってんの。毒されてるんじゃないの」

少女の眉がピクリと動く。

男「どうやら君は俺に絆されてしまったみたいだね」

フンと鼻を鳴らして笑みを浮かべる青年を前に、ポカンと口を開けていた少女にも笑みが零れる。

少女「君みたいな鈍い子に諭されるとはね。どうやらその通りらしい」


202: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/15(火) 21:34:45 ID:XtSlSMN0tE

頭に何かの重みを感じて、少女の体が強ばった。青年の手の平が少女の頭に乗っている。
ポン、ポン、と凡そ一定のリズムで青年の手が少女の頭を優しく叩いた。

少女「………」

少女は体の力を抜くとゆっくりと目を閉じた。

胸の辺りがじわりと暖かくなるのを感じる。これが人の温もりなのだろうか。


男「ありがとう」


青年の手が頭から離れると、少女は目を開いた。青年の姿は何処にもなく、ワンルームはシンと静まり返っていた。


203: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/15(火) 22:31:50 ID:XtSlSMN0tE

少女「…ありがとう、男くん」

ワンルームに一人佇む少女がポツリと呟いた。青年からの返事がある筈もなく、虚無感に苛まれる。

ごそごそとワンピースのポケットを漁って、手の平を見つめた。

少女「返しそびれちゃったね…」

チリン、と鈴の音が鳴った。
赤い首輪を握り締めると、少女はワンルームから姿を消した。


204: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/15(火) 22:39:55 ID:VrA.sR3qFU
今日の投下は此処までとさせて頂きます。

さようなら、少女たんw
205: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/15(火) 22:46:22 ID:VrA.sR3qFU
おぅふ…知らない間に200越えていました(`・ω・´;)

此処まで来れたのも皆さんのお陰です。本当に本当にありがとうございます。
206:名無しさん@読者の声:2011/11/16(水) 01:57:47 ID:8suo7e3v.U
すでに泣きそうな私ガイルCCCCCC
207: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/16(水) 18:02:43 ID:89gvyHE3LQ
>>206
支援ありがとうございます!
そんな事を言って頂けるなんて…私が泣きそうです。いや、泣きます。泣いちゃいます。嬉しいです、嬉しすぎです。
ありがとうございます(´;ω;`)


男「支援ありがとう…うぅっ」グスッ
少女「何故君が泣くんだい」
男「だってさ…だってさ…」
男「俺超格好良くない?格好良すぎじゃない?」グスグス
少女「駄目だこいつ」
208: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/16(水) 21:48:05 ID:adMUXkgFVg




一軒の平屋の前に青年は居た。膝に手を付き、深々と頭を下げている。その表情は垂れ下がる髪に隠れて伺う事は出来ない。

家の中からは女性の泣き声が聞こえてくる。啜り泣くようなその声は、時折何かを言いながら息を詰まらせていた。

男「……ごめん」

青年が擦れた声で呟く。垂れ下がる髪が小刻みに揺れた。


209: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/16(水) 22:08:07 ID:89gvyHE3LQ

女性の泣き声は止まない。きっと、青年の声が彼女に届く事はないのだろう。言葉を交わす事でさえ、もう──。

それでも、

男「ごめん…ごめんな……親不孝者で、ごめん……!」

この思いを声に出さずにはいられなかった。

男「…ありがとう、ございました」

少しの間を置いて、青年の頭が勢いをつけて上げられた。


210: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/16(水) 22:32:48 ID:adMUXkgFVg

一歩踏み出す度に青年の頭に思い出が蘇る。


伯母さんの作るご飯は毎回味が薄かったな。

熱が出た時は泊まっていくなんて、子供みたいに駄々を捏ねて看病してくれたっけ。

伯父さんと喧嘩した時は二人して伯母さんに正座させられたなあ。

母さんが亡くなった時は、息が出来なくなるくらい抱き締めてくれた。

俺が死んで、伯母さんは誰に抱き締めてもらったんだろうか。


振り返らずとも鮮明に浮かぶ暖かかった家族。青年は後ろ髪を引かれる思いで一歩、また一歩と前に進む。

青年の唇が震える。込み上げる悲しみを振り切るように、パシッと両手で頬を叩いて自身の頭を切り替えた。


211: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/16(水) 23:38:26 ID:adMUXkgFVg

男「此処で俺の人生が終わって、此処で始まったんだな、…なんて」

住宅街の路地にポツリと立つ青年。何処か清々しく、迷いのない表情をしている。

空を仰いで目を閉じると、賑やかな日常の音が聞こえてくる。もう青年の耳を塞ぐものは何もない。

男「………」

暫く歩いて青年の足は止まった。

男「お待たせ、めぐ」


212: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/16(水) 23:44:20 ID:adMUXkgFVg
今日は此処までとさせて頂きます。

どうでもいい事ですが、“赤い首輪をした黒猫”は我が家の猫さんがそのままモデルだったりします。雨の日に一匹でガクガクブルブルしていた子猫を放っておけずに連れて帰ってしまいました。

母が。

というちょっとした裏話です。
読んで下さった方、本当にありがとうございます(`・ω・´)
213:名無しさん@読者の声:2011/11/17(木) 19:09:54 ID:dfKDROSnzQ
猫ちゃんぅp!
めぐ幸せになあれ
つC
1にはこれを
つ胃に優しい食べ物
214: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/17(木) 22:30:03 ID:BlrKqtJxIg
>>213
支援ありがとうございます!

このSSが皆さんの目に触れて、めぐの幸せを願って頂ける事が最早幸せだと思います、本当に。
自己満足と言えど、どれだけ綴って彼らを動かしていても読んで下さる方が居てこそ生かされるんですよね。皆さんのお陰で、めぐ達は生きています(生者じゃないのに生きているという表現は可笑しいかもしれませんがw)

胃に優しい食べ物まで…!
お陰様で胃腸も元気です!ありがとうございます!

また長々とすみません…
感謝の気持ちを伝えたい一心なのです(´・ω・`)


めぐ「本当にありがとー!」
男「そんな213さんに俺からプレゼントだ!」つhttp://h2.upup.be/lwiWU2YtEu
めぐ「1の猫だー」
男「もっと可愛いのなかったのかってツッコミはノーサンキュー!」
215: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/17(木) 22:54:57 ID:BlrKqtJxIg

少し先に人影が見えた。

毎日梳かしてやった髪は以前と同じボサボサ頭に戻っていた。
出会った時と何一つ変わらない装いで電柱に寄りかかり、うなだれるような姿勢で座り込んでいる。

男「めぐ…」

あの時足を踏み入れたのは浅はかな新境地などではなく、魔法に掛けられた時間のない世界だったのか──そんな下らない考えが、自然と青年の顔を綻ばせた。

めぐ「…?」

あの時と同じように、めぐが顔を向ける。

めぐ「!!」


216: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/17(木) 23:13:26 ID:BlrKqtJxIg

めぐは目を見開いて驚愕していた。目元まで伸びた前髪がはらりと乱れ、大きな黒目がちの瞳がゆらゆらと揺れている。

めぐ「なん、で…」

くしゃりと歪ませ、悲しみに濡れるその顔が、青年の胸を締め付ける。

男「こんなところで何をしてるんですか?何かあったんですか?」

腰を屈めてめぐの顔を覗き込みながら首を傾げた。
青年の表情は以前のそれとは違っていた。眉は下がり、切なさに目を細めている。


217: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/17(木) 23:49:15 ID:BlrKqtJxIg

めぐ「男、どうして…なんで…?」

男「思い出したんだ、全部。あの日何があったのか、どうして此処に居たのか」

運命に抗えず目の当たりにした光景がめぐの唇を震わせて、カチカチと歯を鳴らす。

ただの鉄の塊が青年に衝突する。そんなものが容易く青年の命を奪ってしまった。
ほんの少し前まで自分を抱き上げてくれた温かい手は、もう誰も触れる事は出来ない。優しく自分を呼んでくれた声は、もう誰の耳にも届かない。

めぐ「ごめんなさい、ごめんなさいっ…ボクが悪いんだ、ボクが……」


218: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/18(金) 00:12:18 ID:BlrKqtJxIg

男「…めぐ、」

今にも溢れ出してしまいそうな程に溜まった涙が、めぐの瞳を大きく揺らした。

男「もう、いいんだ」

めぐ「…っ」

青年の手がめぐの頭をくしゃりと撫でたのと同時に、めぐは頭を垂れて肩を震わせた。

男「もういいんだよ、めぐ…」

めぐ「…く、っう…うぅ…うああああぁっ…わあああああん!」

青年の言葉が引き金となって、めぐは声を上げて噎び泣いた。顔を上に向けてしゃくり上げるめぐの泣き声は、迷子の子供のようだった。


219: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/18(金) 00:14:30 ID:BlrKqtJxIg
今日は此処までとさせて頂きます。
少ない投下ですみません(´・ω・`)
220: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/18(金) 22:15:23 ID:r517UsUXT6

男「黙ってるのも辛かったよな、ごめんな」

めぐは左右に首を振った。

めぐ「違う、ボクがいけなかったんだ」

ギュッ、とめぐの手に力が入る。
自分を見つめる青年の目が優しすぎて、それが余計に胸を締め付ける。青年の優しさは今のめぐにとってはとても辛いものだった。

めぐ「…男と、一緒に居たかったの。男に居なくならないでほしかったの。ボクの心の中に、閉じ込めていたかったの。ボクがいけなか…ッ……」

めぐは言葉が体の衝撃に遮られた。青年の体温がめぐを包み込んでいる。

気が付けば、青年の腕の中にめぐは居た。


221: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/18(金) 22:23:31 ID:r517UsUXT6
>>220

×めぐは言葉が体の衝撃に〜
〇めぐの言葉が体の衝撃に〜

すみません…(´・ω・`)
222: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/18(金) 22:57:30 ID:JPOJYwW2Gc

男「だからって自分一人だけ消えようとすんな、馬鹿」

めぐの目が大きく開かれる。
青年には何も話していないのに、何故そんな事を口走るのだろうか。

男「俺が一緒に居たいって言ったんだ。タブーを犯してるのは、俺も同じな筈だろ?」

青年の胸からめぐの顔が勢い良く離れた。青年の腕を掴む手は小刻みに震え、何故と言わんばかりに瞳が揺れる。


223: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/18(金) 23:37:12 ID:r517UsUXT6

男「霊子さんが教えてくれたんだ。めぐや霊子さんの事、…その役割も、全部」

めぐ「れいこ、さん…?」

めぐがきょとんと首を傾げる。
そういえば、霊子さんと呼ぶに至った経緯をめぐは知らないのだと青年は苦笑した。

男「あー…ほら、前に会った女の子。俺が勝手にそう呼んでるだけなんだけど」

めぐ「……」


224: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/19(土) 00:03:59 ID:r517UsUXT6

めぐは怪訝そうに眉を寄せた。

ルールを破る事を嫌っていた筈の少女の行動が理解出来なかった。

男「前にめぐが居なくなった時も霊子さんが助けてくれた」

めぐ「え…?」

男「友達でも何でもないって言ってたけどさ、きっとそうじゃない。…めぐに消えないでほしかったんだよ、あの子も」


225: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/19(土) 00:36:50 ID:r517UsUXT6

めぐは表情を歪ませた。

刺のある物言いも、眉間に寄せられた皺も、憎しみのないものだったと分かっていた。いつも逃げてばかりだった自分の後ろ姿を、少女はどんな思いで見つめていたのだろうか。

めぐ「ボクはあの子から逃げてたのに…」

男「めぐ」

青年の手はしっかりとめぐの肩を掴んでいる。グッと力を込められた熱い手の感触に、めぐは思わずはっと青年の顔を見た。


226: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/19(土) 00:57:00 ID:JPOJYwW2Gc

青年の瞳は真っ直ぐにめぐだけを見つめていた。

男「俺も、めぐに消えてほしくない。俺には救いがあるんだろ?だから……」

青年は苦しそうに表情を歪ませた。震える唇を堪えて、弧を描く。

垂れ下がる眉を寄せながら、青年は微笑んでみせた。

男「だから、俺を送って下さい」


227: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/19(土) 01:03:10 ID:JPOJYwW2Gc
少ないですが今日は此処までとさせて頂きます。

もうすぐ完結なのに今更ですが、ちゃんと説明出来ているか不安です。大丈夫でしょうか…?

読んで下さってありがとうございます!ラストに向かって一直線!
228:名無しさん@読者の声:2011/11/19(土) 01:11:01 ID:GZrvr4lBv2
説明出来すぎてて毎回胸が苦しいわ(´;ω;)
なんでこんなに切ないの!!男もめぐも少女もなんでこんなに悲しい出会いなの!!
1なんかこれでもくらえCCCCCCCCCCCCC
229: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/19(土) 19:48:24 ID:crm30tAqEA
>>228
支援ありがとうございます!
くらいました…C);ω;`)

そのように受け取って頂けて、ちゃんと伝えられているのだと思うと本当に嬉しいです。

めぐにとっても少女にとっても、男に出会った事が全ての始まりでした。悲しい物語にするつもりはないのですが、どうにも暗いお話になってしまいますね…。
全てはこの題名と失くしたものの為に構成されています。もう答えは出ているようなものですが、最後まで見守って頂けると幸いです。

登場人物を思って胸を痛めて下さって本当にありがとうございます。頑張ります(`・ω・´)
230: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/20(日) 21:44:09 ID:Z9KqQjIU/k

めぐ「………っ」

真っ直ぐな青年の瞳から逃げるように、めぐは唇を噛み締めて俯いた。

この期に及んでもなお、青年を消したくない自分が居る。忘れてしまいたくない自分が居る。

青年が傍に居るだけで全てが満たされた気がした。罪の償いなど忘れてしまう程に、めぐの胸は温もりで満たされていた。

彼が消えずに済むのなら、自分が消えてしまう事さえ厭わないと思えた。


この気持ちを何と呼ぶのか、めぐには分からなかった──。


231: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/20(日) 22:21:52 ID:HMJYUJcabU

男「めぐ」

めぐは左右に首を振っている。
手で耳を塞いで、青年の声を聞こうとしない。

男「めぐ!」

めぐ「……!」

青年はめぐの手を掴むと声を荒げた。
めぐの黒目がちな瞳には、今にも泣き出しそうな青年が映り込んでいる。


232: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/20(日) 23:03:21 ID:pIgPmzpxL2

男「──好きだよ、めぐ。お前の事が好きだ」

めぐははっと息を飲んだ。
溢れ出す感情は、もう青年を止める事が出来ない。

男「…輪廻転生なんて信じてなかったけど、まためぐに会えるなら信じれる」

めぐ「男……」

男「何度生まれ変わっても、待ってるから。必ずめぐを見付けてみせるから。だから…」


233: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/20(日) 23:31:06 ID:pIgPmzpxL2

めぐ「…ボクも、ボクも絶対に男を見付けるっ…」

めぐの両手が瞼に押しあてられる。
押し付けられた両の手はめぐの涙を止める事は出来ず、その隙間から溢れ出させた。

めぐ「ボクが見付けてみせるから…!!」

男「めぐ…」

青年の手がそっとめぐのそれに触れた。解かれた手がめぐの涙に濡れた表情を露にする。

その刹那、めぐの唇に柔らかいものが触れた。温かくて柔らかいそれは、青年の唇。

ゆっくりと閉じられためぐの瞳から、涙が止まる事はなかった。


234: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/20(日) 23:36:35 ID:HMJYUJcabU
今日は此処までとさせて頂きます。

余談なんですが、私はこのSSを書くにあたって紙に流れをざざっと殴り書きしてからある程度文章を作って手直ししつつ投下、という面倒な事をしています。

が、

その流れを殴り書きした紙を何処かにやってしまい、家族に見付かっていないかハラハラしている所存ですwそして、書き溜めしようにもいまいち納得がいかない感じの仕上がりな気がして。

なので少ない投下ばかりで本当にすみません。明日で終わるかもしれませんので、宜しくお願いします(`・ω・´)
235:名無しさん@読者の声:2011/11/20(日) 23:41:31 ID:2eHZTFNahs
乙です!

しかしいい所で焦らすなw
236:名無しさん@読者の声:2011/11/21(月) 08:08:05 ID:t/3Pct9RoE
だから矛盾せずに回収してけるんだな。1の意識レベルの高さに脱帽だわ。好きです結婚して下さい。

つC
つ婚約指輪
237: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/21(月) 18:41:53 ID:zp0bIVJqTM
>>235
ありがとうございます!

いい所で焦らせてますか?
と言っても私にはその意図はなく、書き溜めてキリの良い所まで投稿しているだけなのです(`・ω・´)ドヤァ

めぐ「乙って何?」
男「お疲れさまって事だな」
めぐ「男は何でも知ってるね、凄いねー」ニコニコ
少女「君が無知なだけだよ」
めぐ「」イラッ


>>236
支援ありがとうございます!

意識レベルというか、ただの性格と言いますか…直感的ではないのだと思います、私の場合はw
書き溜めがないからこその予想外な展開も素晴らしいものがあると思いますし、実際私が好きなSSの作者様で書き溜めをしていない方もいらっしゃいますし(´ω`)

矛盾せずに回収出来ているというのは本当に嬉しいです!それなりに疑問に思われていた事が少なからず解消されていると思うと、それはもう…!

ちょ、最後の一文wそんな事を言って頂けて嬉しいやら照れ臭いやら…(*´・ω・`*)
238: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/21(月) 20:55:55 ID:owdFNQ5OBY

めぐ「何だろう、この気持ち…胸が凄くぽかぽかするの」

男「…?」

めぐは自身の胸に手を当てて首を傾げた。ずっと前からあったような懐かしい温もりを感じる。

めぐ「前にも男にしたんだ、これ。男が寝てる時に、ちゅって」

男「えぇ!?」

顔を真っ赤に染めた青年は思わず口元を押さえた。

めぐ「その時は凄く苦しくてぎゅってなった。でも、今は凄くぽかぽかするの」

めぐの頬がほんのりとピンク色に染まる。胸の奥にある確かな温もりが、解放してくれとめぐにせがんでいる。


239: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/21(月) 21:29:02 ID:owdFNQ5OBY

めぐ「男、だいすき。ボクも男がだいすきだよ。だけど、このぽかぽかしたのはだいすきよりも、もっと…」

男「もっと?」

めぐ「男といると苦しくてあったかいの。なんでかなあ?だいすきと、何が違うのかなあ?」

首を傾げるめぐを前に、男の頬は紅潮する。ああ、と頷いて照れ臭そうに頭を掻くと、視線を横へと外した。

男「あー…うん、アレだ。“愛してる”って言うんだ、こういう時は」


240: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/21(月) 21:48:49 ID:zp0bIVJqTM

めぐ「あい、してる…?」

怪訝の色に曇るめぐの目は開かれ、潤んだ瞳に反射するようにゆっくりと輝きを取り戻していく。
パズルのピースが嵌るように、めぐの中で確かになっていくそれは、まさにめぐが探しているものだった。

めぐ「あいしてる…あいしてる!男、あいしてる!!」

男「うん…?え?」

青年の頭に浮かぶクエスチョンマークを弾くように、めぐは“愛してる”を繰り返した。


241: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/21(月) 22:09:11 ID:owdFNQ5OBY

めぐ「見付けたんだ、やっと分かった!男、愛してるなんだよ!」

男「な、何が?」

頬の熱も冷めぬまま青年は困惑した。

めぐ「ボクの“失くしたもの”は、愛だ。誰かに愛されるという事、それと─」


青年の目の前にはめぐの笑顔があった。今まで見た事のない、はにかんだ笑顔。

めぐ自身の胸に手を当てて、青年を見つめた。



めぐ「──誰かを愛するという事」




242: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/21(月) 22:12:15 ID:zp0bIVJqTM
×めぐ自身の胸に手を〜
〇めぐは自身の胸に手を〜

畜生、畜生…!すみません(´;ω;`)
243: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/21(月) 22:30:13 ID:owdFNQ5OBY

男「……はは、何だ。そうだったのか」

呆然としていた青年の口元は次第に緩み、笑みを零した。

きょとんと首を傾げためぐに、青年は続ける。

男「めぐ、お前の本当の名前は“めぐみ”だ。“愛”と書いて、めぐみ。母親が俺につけようとしてた名前なんだ」

残念ながら生まれたのは男だったけど、と青年は苦笑した。

男「俺が最初にお前に与えたのは、愛(めぐみ)…お前の名前だよ」


244: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/21(月) 22:48:40 ID:zp0bIVJqTM

めぐ「…あったんだ」

輝きを取り戻しためぐの瞳からは涙が流れている。頬を伝う涙はポロポロと零れ落ち、アスファルトの上で細かく弾けた。

めぐ「最初から、こんなに近くにあったんだ。ボクは愛を貰ってた」

空から降る雨はなく、アスファルトはめぐの涙で色を変えていく。
青年がその涙に触れようと手を伸ばすと、何か温かいものを感じた。


245: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/21(月) 23:04:28 ID:owdFNQ5OBY

男「何、だ…これ…?」

気が付けば黄金色の粒が二人を包み始めていた。温かく優しいその光の粒が触れる度に、二人の体は色を失って消えていく。

めぐ「さよなら、だね」

男「…また会えるんだよな、俺達」

めぐ「きっと、いつかまた会える。何度でも見付けてみせるよ」

男「だったら…さよならは取り消しだ」

青年の揺れる瞳の中で、半透明のめぐがふわりと笑う。
溢れ出る涙でさえ黄金色の光の粒が飲み込んでいる。


246: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/21(月) 23:28:07 ID:owdFNQ5OBY

めぐ「男、」

男「ん?」

めぐ「出会ってくれて、ありがとう」

男「……此方こそ」

めぐは眉を下げて微笑むと、ゆっくりと立ち上がり青年に向かって手を差し出す。

めぐ「お迎えです」

めぐの差し出された手に、男の手が重なった。

言葉に出さなくても伝わってくる。

互いの手が、その熱が、愛していると叫んでいた。


247: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/21(月) 23:32:12 ID:owdFNQ5OBY




   「──ありがとう」





黄金色の光の粒が二人を包み込み、やがて消えた。





248: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/21(月) 23:56:15 ID:zp0bIVJqTM


────‐‥


チリン、と鈴の音が鳴る。

黒いワンピースを着た少女は一人、住宅街の路地を歩いていた。その手首には鈴の着いた赤いものが着けられている。少女が歩く度に、その鈴はチリンと音を鳴らした。

少し先の電柱を見て、少女は目を細めた。電柱の下には幾つもの弔いの花束が供えられている。


249: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/22(火) 00:01:12 ID:zp0bIVJqTM

少女は電柱の前に屈むと、小さな花を一輪、そこに置いた。

少女「私は君を忘れないよ、めぐ。君という存在は確かに此処に在った」

足元の小さな花が頷くように揺れている。少しの間少女は目を閉じて、立ち上がった。

少女「……私も、いつか君達に会えるだろうか」

少女は笑顔で空を仰いだ。

晴れ渡る空は暖かい風を吹かせている。二人を濡らす冷たい雨は、もう降っていない。


250: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/22(火) 00:02:39 ID:zp0bIVJqTM



──出会う感情の名は、愛。


  大切に思う、暖かい感情。




 「出会う感情の名は、」fin.




251:名無しさん@読者の声:2011/11/22(火) 00:08:21 ID:YXeodUQ.WM
お疲れ様でした!お疲れ様でした!
素敵な物語をありがとうございました!!
252:名無しさん@読者の声:2011/11/22(火) 00:13:53 ID:3i.S8VEdTg
はい、泣いた。もう号泣。アリスでも泣くまでいかずにすんだのに、もう涙が止まらん。
1さんあんた最高です。素敵な物語を本当に有難うございました。


できれば番外編で少女たんの話を…頼む!
253: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/22(火) 00:25:17 ID:owdFNQ5OBY
いやー…終わってしまいました。思った以上に長くなってしまいました。何と言うか、終わるのが寂しくて寂しくてw

前に質問スレでお答えした通り、この物語はポルノグラフィティの「ヴォイス」という歌を聴いて閃いたものでした。その際に二曲ある、と言ったのを覚えていて下さっている方が居られるかは分かりませんが、此処で発表したいと思います。
もう一曲は、同じくポルノグラフィティの「愛が呼ぶほうへ」でした。もう一曲を言ってしまうとネタバレになると言ったのは、曲名でお察し頂けたかと思います。
>>79でお答えした名前の件も、上に同じです。

だらだらと稚拙な物語にお付き合い頂いて本当にありがとうございました!読者スレで話題に出して頂けた事、めぐ達を描いて頂けた事、ランキングに入れた事、どれも嬉しくて涙がちょちょ切れましたw

長ったらしい後書きですみません。本当に本当にありがとうございました。
254: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/22(火) 00:39:29 ID:owdFNQ5OBY
>>251
ありがとうございます、ありがとうございます!
読んで頂けただけで感無量なのに、そんな事まで言って頂いて…(´;ω;`)

めぐ「さよなら、だね」
男「おい、止めろ」


>>252
なななな何ですって!?涙して頂けるなんて……よせよ、泣けるじゃねぇか!!
どのSSも素晴らしく、素敵な物語ばかりです。その中でもあのSSは一際目を引き、沢山の方の心を掴みましたよね。私は泣いちゃいましたw
強者な252さんに泣いて頂けて光栄です。本当にありがとうございます!
少女の話とめぐの過去(過去の話はあまりにも欝なので書くつもりはないのですが)も少しは頭にあるのですが、まだ形にもしていないので番外編については少し考えたいと思います(´ω`)


めぐ「泣かないで〜」
男「泣かないで〜」
少女「泣かないで」
男「羞〇心か!」ビシッ
少女「…やらせておいて」チッ

(舘ひ〇しよりこれが先に頭に浮かんでしまいましたw)
255:名無しさん@読者の声:2011/11/22(火) 01:41:49 ID:3i.S8VEdTg
ポルノグラフィティか、納得です

俺は!番外編を!希望する!
256:名無しさん@読者の声:2011/11/22(火) 09:46:40 ID:DupF7GDfog
うん。もっと評価されていいと思うんだこのSSは。

全てを知って読み返すと胸が痛い。

お疲れ様でした(;_;)
257: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/22(火) 23:19:26 ID:JPOJYwW2Gc
>>255
納得して頂けるとは…!
歌詞の内容を全て使ったわけではないのですが、物語の構成を考える上で凄く助けられました。ポルノグラフィティに感謝(`・ω・´)

だが断…らない、かもです。
今、少し少女の話を考えています。ちゃんと頭の中で纏まれば番外編として投下しようかと思っています。ので、保管庫か削除の依頼はもう少し待とうと思います。


>>256
あわわわありがとうございます!そう言って頂けるだけで感無量です(´;ω;`)

読み返して頂けた、と受け取ってもいいのでしょうか?
至らない点が沢山あったとは思いますが、256さんに読み返して頂けるようなものが書けたと思うと…泣ける(´;ω;`)

本当にありがとうございました!
258:名無しさん@読者の声:2011/11/23(水) 01:00:58 ID:JLU0toeGlQ
削除だけは許さんぞ(`;д;´)

SSとしてではなくてもいいから
個人的には過去の話も聞きたいです

1にこれあげるから
つ私の愛
259:名無しさん@読者の声:2011/11/23(水) 08:13:28 ID:nUErM70S8M
わー!出遅れた!1さん完結おめでとうございます!!素敵な物語を、感動をありがとう!

こんな切なくて愛しくなるSSに出会ったのは初めてでした。めぐ達はきっとまた出会える。そう信じています!心から乙でした!!



番外編とめぐの過去…出来るなら自分も読みたいなーチラッチラッ
260: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/24(木) 21:47:24 ID:VCHgmReH86
>>258
了解です!終了次第、保管庫で依頼させて頂きます(`;ω;´)
そして258さんの愛はしかと受け止めさせて頂きました!

ありがとうございます。ご厚意に甘えて私の語りという形でめぐの過去について書かせて頂こうと思います。ひっそりとsageで書こうと思うので、sageでのレスですみませんorz

気付いて頂けてるでしょうか…?


>>259
此方こそ最後までお付き合い頂いて本当に本当にありがとうございます!

わー…そんな事を言って頂いていいんでしょうか。何だか胸がいっぱいです。
この物語を始めた当初、二人の出会いや失くしたもの、そして別れまでの流れは決まっていました。もっと早く終わらせる事も出来たと思うのですが、長引かせてしまった部分も多少はあったと思います。

それを最後まで見守って頂けた事、登場人物の幸せを願ってくれた事、全てに感謝です(´;ω;`)



番外編はまだ思案中ですが、まずはめぐの過去をひっそりと投下させて頂きます!
261: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/24(木) 22:00:17 ID:gdsRLqBUn.

めぐの過去と罪、愛を失くした経緯をこっそり語ろうと思います。
上で言った通り、欝展開なのでご注意下さい。そして、ただの私の語りです。




とある村では昔から「双子は災いをもたらす」と言い伝えられており、後に生まれたものは処分されていました。
時代は流れ、いつしかその言い伝えは風化していきましたが、ある一族は違っていました。

その一族は代々その村で生まれ育ち、村の中でも敷居の高い所謂お金持ち。その一族に、双子の姉妹が生まれてしまいました。


262: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/24(木) 22:16:45 ID:VCHgmReH86

言い伝えを重んじている一族ですが、既にない風習に則って処分をするのは体裁が悪いと考え、処分をしない代わりに“無きもの”として扱いました。
知識を与えず、食事もろくにとらせず、父とも母とも呼ばせず、屋敷の奥の部屋へと押し込めていました。

もうなくなった筈の風習、信じられていない筈の言い伝え。
しかし、妹を見る村人の目は差別的でした。関わりたくない、というのが本音でしょうか。表向きは姉妹分け隔てなく接し、妹とは距離を置く。知識のない妹にもそれくらいは理解出来ていました。

妹が空も明るい内に外に出る事は殆どなく、奥の部屋でただ時間が経っていくだけの毎日でした。


263:昔語り ◆b.qRGRPvDc:2011/11/24(木) 22:43:55 ID:gdsRLqBUn.

しかし、姉と幼馴染みの少年は違いました。妹の部屋に遊びに来ては、学校での事や友達の事、近所の噂話、色んな事を話していました。

姉妹は容姿こそよく似ているものの、姉は教養も人望もありました。そんな姉が味方でいてくれる──それが妹にとってどれ程の救いになっていたのかは、はかり知れません。

月日は流れ、姉妹は美しく成長していました。まだ幼さは残るものの、体は随分と女性へと近付いていました。


264:名無しさん@読者の声:2011/11/25(金) 10:31:10 ID:avPVj.d99o
更新キタ!!
265:264:2011/11/25(金) 10:32:43 ID:8UfovPMLHI
すまん上げてしまった…
266:名無しさん@読者の声:2011/11/25(金) 18:43:43 ID:Py8UtXDd7U
ひなみざわ
267: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/25(金) 19:34:58 ID:EDI.LmcnKs
>>264-265
大丈夫ですよ、気になさらないで下さい(´ω`)

SSとして書いていないというのと、救いのない鬱展開というので、私の書き込みは下げているだけなので、皆さんの書き込みに関しては強要するつもりはありません。
見に来て下さってありがとうございます!感謝です!


>>266
ひなみざわ…ググってみたのですが、ひぐらしの鳴く頃にでしょうか?もしかして、内容が似てるものがあるのでしょうか?

興味はあるのですがどれから手を出すのが正解なのかも分からないのでまだ見た事も読んだ事もないのです(´・ω・`)

これは私のオリジナルであり、ひぐらしの鳴く頃にとは一切関係しておりません。と一応宣言させて頂きます。読んで下さってありがとうございます!感謝です!
268:昔語り ◆b.qRGRPvDc:2011/11/25(金) 19:44:10 ID:EDI.LmcnKs

ある日、幼馴染みの少年は妹に「姉に恋をしている」と告白します。この時、妹は初めて少年に恋心を抱いていた事を知り、同時に失恋した事を知りました。

その日の夜、妹は夜空を見ながら悲しみに打ち拉がれていました。姉に悟られてはいけないと、屋敷の外へと出ていきました。
其処に通り掛かった村人の一人が声を掛けます。涙を流す妹の美しさに心奪われた村人は、妹と体を重ねてしまいました。

その行為の意味を知らない妹に、村人は愛し合う事だと教えました。家族から無きものとして扱われ、愛される事を知らない妹は大層喜びました。そうして、夜になると屋敷の外へ出ては村人と体を重ねる行為を繰り返していました。


269:昔語り ◆b.qRGRPvDc:2011/11/25(金) 20:11:23 ID:LHyhIHFJ5Y

姉は妹の変化に気付いていました。夜にこっそりと妹の部屋に食べ物を持って行く事を日課としていた姉ですが、夜になると妹の姿がない事をずっと疑問に思っていました。

ある日、姉は幼馴染みの少年に妹の事を相談しました。幼馴染みの少年から語られたのは、信じがたい事ばかりでした。

「男性の村人達の間では、妹の事が噂になっている」「愛していると囁けば妹は喜んで股を開く」と。


270:昔語り ◆b.qRGRPvDc:2011/11/25(金) 20:50:15 ID:EDI.LmcnKs

妹の噂を耳にした姉は、半信半疑のまま妹の後を付けました。そして目にしたのは、見た事もない妹の姿。月明かりに照らされ、艶々しく腰を揺らしている妹の姿でした。

妹の腰に回された村人の手。犬のように荒い息遣い。激しく繰り返される律動。

そのどれもが姉には気味が悪く、吐き気がする程に忌々しく思えました。妹が去り、行為の余韻に浸る村人を、姉は無きものにしました。


271:昔語り ◆b.qRGRPvDc:2011/11/25(金) 21:02:23 ID:LHyhIHFJ5Y

敷居の高い家の気品高き姉に瓜二つの妹。それを求める村人は後を絶ちませんでした。妹は村人達のその行為を愛し合う事だと錯覚し、屋敷の外に出ては腰を揺らしていました。

姉はもう何人もの村人を無きものにしたのか覚えていませんでした。妹の体に触れる手が、息が、存在が許せませんでした。

「妹の味方は私だけ」「妹を愛しているのは私だけ」「私が妹を助けてあげる」

月明かりに照らされた姉の顔は狂気に満ちていました。


272:昔語り ◆b.qRGRPvDc:2011/11/25(金) 21:22:30 ID:EDI.LmcnKs

一方、妹は気付いていました。村人達が求めているのは自分ではなく、姉と同じ容姿をしている自分だという事。

両親が愛しているのは、少年が愛しているのは、村人達が求めているのは、全て姉だという事を。

「私達が双子じゃなければ」「この家に生まれていなければ」「姉さえ居なければ」

部屋で一人佇む妹の顔には、もはや表情などはありませんでした。


273:昔語り ◆b.qRGRPvDc:2011/11/25(金) 21:31:19 ID:EDI.LmcnKs

そして二人は対峙しました。
映し鏡のようによく似た二人は互いに微笑みあい、見つめあいました。しかしもう、其処には昔のように仲の良い姉妹の姿はありませんでした。

「お願い、死んでくれる?」

そう口にしたのは姉か、妹か。もしかするとその両方だったのかもしれません。


274:昔語り ◆b.qRGRPvDc:2011/11/25(金) 21:59:06 ID:EDI.LmcnKs

虫の知らせというものでしょうか。幼馴染みの少年は妹の部屋へと足を運びました。
薄暗い部屋の中に姉妹は居ました。しかし、その片割れは無惨な姿で息絶えていました。

「私達は一つで生まれてくるべきだったの」「けれど、もう大丈夫」「一つになれたもの」

ケタケタと笑う少女の目からは涙が流れ、それが薄気味悪さを彷彿とさせていました。


275:昔語り ◆b.qRGRPvDc:2011/11/25(金) 22:21:05 ID:LHyhIHFJ5Y

少年は恐怖と悲しみで涙を流し、少女を責めました。「愛していたのに」少年のその言葉は少女の心臓を抉り、苦しませました。

「貴方が愛していたのは私?それともこっち?」

気が付けば、少年の目の前に少女の顔がありました。宝石のように美しかった瞳は濁り、透き通るように白かった肌は色を失っていました。

其処にはもう、愛していた少女の姿は何処にもありませんでした。「君じゃない」そう口にすると同時に、少年は無きものとなりました。


276:昔語り ◆b.qRGRPvDc:2011/11/25(金) 22:41:16 ID:LHyhIHFJ5Y

少女は父に問いました。母に問いました。祖母に、祖父に問いました。そして、自分に問いました。

「私は私を愛しているの?」

答えは明白でありました。少女はケタケタと笑い、自らを無きものにしたのでした。

屋敷には無惨な死体が転がっていました。愛し方を知らない姉と、愛され方を知らない妹──二人の少女の亡骸は寄り添うように眠っていました。

「双子は災いをもたらす」村人達は口々に言い、屋敷は廃墟と化しました。


277: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/25(金) 22:46:36 ID:EDI.LmcnKs

以上がめぐの元になった過去の話となります。姉妹の魂は一つになり、愛を失いました。
めぐを純真無垢な少女として書き上げたのは、この姉妹と正反対の人間として生まれ変わる為です。

歪んだ愛し方しか出来なかった姉→真っ直ぐに愛する
愛される事を錯覚していた妹→人の温もりを知る

姉妹の魂は罪を背負い“めぐ”が生まれました。読んで頂いた方には分かって頂けるかとは思いますが、姉妹とめぐは別物と受け取って頂いて結構です。

長々と暗い話になってしまいましたが、此処まで読んで頂いてありがとうございました!


278:名無しさん@読者の声:2011/11/26(土) 07:55:26 ID:9T2uppugkA
素晴らしいとしか言いようがないな…秀逸すぎるCCCCC
279:名無しさん@読者の声:2011/11/26(土) 21:41:50 ID:ixQO7s5Doc
>>278
わー、ありがとうございます!ありがとうございます!
そんなに褒めて頂いていいのでしょうか。とても嬉しいのですが、同時に凄く恐縮してしまいます。何とも肝っ玉の小さい人間ですみませんorz

278さんに呆れられないように精進して参ります(`・ω・´)
本当にありがとうございました!
280: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/26(土) 21:45:50 ID:S2cKUGff36
>>279
酉忘れてました…orz
281:名無しさん@読者の声:2011/11/27(日) 00:58:17 ID:iCdVdLGuIU
感情さんランクインおめでとう!
過去も書いてくれて有難うございました。ここまで作り込まれたSSには初めて出会った!
番外編無理しなくていいからね。とりあえず言いたいのは愛してるって事だw
282: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/27(日) 17:53:27 ID:0qRAev2QxY
>>281
5位…!5位です…!
投票期間終了一週間程前に完結して、今度こそランクインはないと思っていました。一度ならず、二度もランクイン出来るなんて。

281さん含め、皆さんのお陰です。何だか本当に胸がいっぱいで、こんなに幸せ者でよいものかと。
本当に本当にありがとうございました!

それから、番外編の件です。
本編を書いている間から、もしも皆さんから「少女はあの後どうなった?」と質問されたら軽く説明させて頂けるくらいには頭にあった事なのです。
と言っても中身のない外枠だけだったのですが。嬉しい事に番外編を希望して頂き、ここ数日考えていたのですが、大分構成も練れてきたので今週中に投下を開始出来るかと思います(`・ω・´)

期待に応えられるかは分かりませんが、頑張ります!待って下さっている方、(居られるか不安ですが…)もう少しお待ち下さい。

それでは、長々と失礼致しました!
283:名無しさん@読者の声:2011/11/28(月) 00:13:47 ID:iIheZSRL/E
ランキング5位おめでとう(;∇;)/~~
更新待ってます!いつまでも待ってます!wktkが止まらない!
284: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/28(月) 01:28:30 ID:YqGi4onR3Y
>>283
わー、ありがとうございます(´;ω;`)
ランクインしただけでも大変嬉しい事ですが、こうして皆さんにレスを頂ける事も涙が出そうになるくらい嬉しいです…!

待っていて下さる方がいるなんて感無量です。筆が進むのが遅い私ですが、明日(日付が変わったから今日が正しいですねw)の夜に少しでも投下出来れば、と思います。待っていて下さってありがとうございます!
285:名無しさん@読者の声:2011/11/28(月) 07:43:20 ID:h5GFkWL7Hk
俺も待ってるよー!!
286: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/28(月) 19:00:52 ID:As22E0pO8E
>>285
待っていて下さる方が此処にも…!今なら空も飛べるような気がします(`;ω;´)

予告通り、今夜投下出来そうなのでまた後で投下しに来ます。285さんの書き込みが嬉しくてテンションが上がってしまいましたw
ありがとうございます!


※皆さまへのお知らせ

投下する前に誤解を招くといけないので少し説明させて頂きたいのですが、今回の番外編に男という人物を登場させる予定なのですが本編の男と番外編の男は全くの別人となります。

やはりややこしいでしょうか?
名前を付けた方がいいのか悩みましたが、本編が名前を付けないままの進行だった為、番外編も同じスタンスでいこうと考えた結果です。

混乱させてしまうかもしれませんが「本編の男と番外編の男は同一ではない」というのを頭に入れて読んで下さい。ややこしくて申し訳ありません…(´・ω・`)
287:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/11/28(月) 20:44:08 ID:As22E0pO8E

「──お迎えです」

まだ小さな手が老婆の前にそっと差し出される。皺塗れの細い手が小さな手に触れ、光の粒に包まれて消えていった。

「お婆ちゃん!お婆ちゃ…わあああぁああぁ…っ!!」

消えていった老婆の家族であろう数名が、老婆の亡骸に覆い被さって噎び泣いている。
その泣き声を背に、少女は黒いワンピースを風に揺らしてその場を去った。


288:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/11/28(月) 21:05:56 ID:As22E0pO8E

少女「……何人目、だったかな」

溜め息混じりに自らの手を見つめる。手首に付けられた鈴の付いた赤い首輪がチリン、と音を鳴らした。

あれからどれ程の人間を送り届けたのか、少女にはもう分からなかった。

少女「君達に会えるのは、まだ先になりそうだね」

誰に言うでもなく、少女は空を仰いだ。緩やかな雲の流れが、ゆっくりと、しかし確実に時は過ぎているのだと実感させる。


──少女にはまだ、救いの手は差し伸べられていない。


289:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/11/28(月) 21:37:12 ID:As22E0pO8E



病室の窓際にあるベッドで一人の少女が半身を起こし、外を眺めている。
紙の上に鉛筆を滑らせ、一心不乱に何かを描く。他に物音はせず、鉛筆が滑る音と溜め息だけが病室に響いていた。

「姉ちゃん、またそんな事して。こないだみたいに風邪引いて大変な事になったらどうすんの」

「わ、弟くん…!?」

姉と呼ばれたその少女は慌てて布団の中へと体を滑らせると「ごめんごめん」とバツが悪そうに笑った。


290:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/11/28(月) 21:55:23 ID:As22E0pO8E

弟「で?今日は何描いてたの?」

弟がひょいと持ち上げた紙には、窓から見える景色と同じものが描かれている。しかし、その景色の中には生物の姿は一切見られず、何とも物寂しい光景が広がっている。

弟「…僕は絵なんか描けないから分かんないけど、こういうのって感情に左右されるもんなのかな」
女「…?何が?」

首を傾げてきょとんとする姉に見せるように絵を向けて、弟の手がピラピラと紙を揺らした。


291:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/11/28(月) 22:16:03 ID:As22E0pO8E

弟「これ。寂しい寂しいってオーラ出まくり。誰かさんに会いたくて堪らないんだろうけどさ」

女「…っな、」

頬を紅潮させた姉がニヤニヤと笑う弟の手から紙を奪い去った。
弟はまるで降参のポーズをとるように両手を顔の横で広げてみせた。

女「か、からかわないでよー…そんなんじゃ、ないんだから」

握り締められた姉の手に力が入り、渇いた音と共に紙が皺を寄せた。
姉の視線はしょんぼりと下を向き、姉弟の間には気まずい沈黙が流れた。


292:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/11/28(月) 22:39:26 ID:As22E0pO8E

弟「あの、ごめ…」

女「寂しいのは本当だけど、」

弟の言葉を遮るようにして姉が顔を上げた。細い腕を持ち上げて弟の頭をよしよし、と撫でる。

女「弟くんが毎日会いに来てくれるから、今は寂しくないよ?」

弟「…何それ、ブラコンかよ」

弟の頬が気恥ずかしさから桃色に染まる。フイと視線を逸らした先に、学生服のズボンと革靴が見えた。

弟「あ、」

男「今日は。お邪魔だった?」

女「男くん…!」


293:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/11/28(月) 22:55:39 ID:As22E0pO8E

学生服に身を包んだ男がひらひらと手を振って病室に足を踏み入れた。

少し緩めたネクタイに白いワイシャツが男の笑顔をより一層爽やかなものにする。その笑顔を見て、姉の表情は嬉しさを隠しきれないでいた。

弟「…お熱いことで」

女「ん?弟くん、何か言った?」

ぼそりと呟いた弟の嫌味ともとれる声は姉には届かず、代わりに嬉々とした笑顔が首を傾げた。


294:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/11/28(月) 23:18:02 ID:qL3BUknhLU

弟「何でもないよ。僕、友達と約束してるからもう行くね。母さん、夜に着替え持ってくるって言ってたよ」

パイプ椅子から腰を上げると、姉の返事も待たずに出口へと向かい、

弟「男さん、またね!」

笑顔で手を振り病室を後にした。
男は弟に手を振りながら横目で姉に振り返った。

男「弟くん、本当いい子だよね」

女「小学生とは思えないくらい生意気だけどね」

姉は鉛筆をコロコロと弄んで、少し照れた様子で笑った。

女「でも、自慢の弟なの」


295:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/11/28(月) 23:38:48 ID:As22E0pO8E



弟「ちょっと、あんた」

弟は病院の敷地内にある木の下で、睨むように上を見上げた。その木は姉が入院している病棟と隣接するように立っている。

木の上からの返事は返って来ず、木の葉が風に揺れてサラサラと音を鳴らした。

弟「あんただよ、あんた。聞こえてんだろ?」

チリン、と鈴の音が鳴る。
振り返った少女は、信じられないと言わんばかりに二度三度と瞬きを繰り返した。


296:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/11/29(火) 00:04:35 ID:As22E0pO8E

弟「人の姉ちゃんの病室じろじろ覗き見て何なわけ?バレてないとでも思ってんの?」

ワンピースの裾を握った少女の手が微かに震え、動揺の色を見せる。
病室の方にチラリと視線を投げて至極面倒そうに舌打ちを零した。
少女「…関わらない方がいいよ」

弟「は?」

少女「聞こえなかったのかい?私に関わらない方がいい。君には関係のない事だよ」


297:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/11/29(火) 00:30:50 ID:As22E0pO8E

少女は言い終えると弟が立つ位置とは逆方向に、木の上からふわりと飛び降りた。

弟「お、おいっ!」

急いで木の裏に回り込んだが、少女の姿は何処にも見当たらない。
困惑しながら辺りを見渡しても、弟は少女の姿を確認する事は出来なかった。

弟「何だよアイツ…逃げんの早すぎ」


298: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/29(火) 00:36:24 ID:qL3BUknhLU
今日は此処までとさせて頂きます。

待っていて下さった方には感謝の気持ちでいっぱいです。過去の話や今回の番外編を妄想で終わらせずに、こうして機会を与えて下さった皆さんに深く感謝致します。

本当にありがとうございます!
299:名無しさん@読者の声:2011/11/29(火) 01:17:12 ID:dfKDROSnzQ
安心のクオリティー!支援するしかないやろ!
300:名無しさん@読者の声:2011/11/29(火) 08:24:39 ID:t3o.gKfTxg
弟と少女たんツンツンコンビじゃね(`CωC´)?
301:名無しさん@読者の声:2011/11/29(火) 19:34:54 ID:iCdVdLGuIU
番外編キタ―!!
CCCCCC
302: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/30(水) 00:15:25 ID:JlaWwk8fx.
>>299
支援ありがとうございます!
クオリティは決して高くはありませんが、そう言って頂けるととても救われます。もっとスキルアップせねばとは思うのですが(´・ω・`)
ホンマにありがとうございます。めっちゃ嬉しいです。頑張りますんで応援したって下さい!(関西弁返ししてみましたw)

少女「見守ってあげるといいよ」
弟「上から目線とか何様?あ、支援ありがとう」ニコ
少女「」イラッ


>>300
支援ありがとうございます!そして300ゲットおめでとうございます!
確かに二人共ツンツンしていますよねw少女は基本的に上からものを言う子で、弟は生意気で強がりです。でも、二人共悪い子ではないつもりです。

少女「これと一緒にしないでよ」
弟「僕の台詞取んなよ」
少女「は?」
弟「は?」
女「ふふ、似た者同士だね」
少女&弟「全然似てない!」


>>301
読みに来て下さってありがとうございます!番外編、来ました(`・ω・´)
構成を練りながら思ったのですが、私はどうも可愛げのある子供を書く力が乏しいようですwつんけんした子達ばかりですが、宜しくお願い致します!

弟「つんけんしてないけどね」
少女「まったくその通りだね」
弟「別に愛想くらい振りまけるけどね」ニッコー
少女「…」ニヤ
弟「怖いんですけど」


そして祝300レス突破!
303:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/11/30(水) 00:48:06 ID:JlaWwk8fx.



母「ただいまー」

玄関からドアが開く音と共に母親の声が響き渡る。間もなくしてパタパタとリビングへと足音が近付いてきた。

母「ただいま」

背後から聞こえてくる母親の声に弟はピクリと体を揺らすと、テレビ画面から目線を外す事なく「おかえり」とぶっきらぼうに返した。

我が子の素直になれない性格を理解している母親は、その後頭部を見ながら笑みを零した。


304:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/11/30(水) 01:06:43 ID:Kkh511QEhI

肩から鞄を降ろしながら弟に視線を送った。テレビ画面からは賑やかな笑い声と陽気なBGMが流れている。

母「ご飯ちゃんと食べた?学校のお手紙あったらちゃんと出してね」

優しく問い掛ける母親の声は疲れの色を隠せていない。椅子に腰を降ろすと堪らず「ふぅ…」と息を洩らした。


305:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/11/30(水) 01:16:53 ID:JlaWwk8fx.

横目で伺う弟の視界には、肩を揉みながら首を回している母親の姿があった。

弟「ねぇ、晩ご飯くらい自分でどうにか出来るから無理しなくていいよ。最近疲れてるんじゃない?」

母「子供が生意気な口聞くんじゃありません〜!」

母親は背後から弟の頭をわしゃわしゃと撫で回した。まだ幼い我が子の強がりがやけに胸に染みる。


306:名無しさん@読者の声:2011/11/30(水) 12:27:23 ID:aTgMsJ/gf2
っC
307: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/30(水) 20:03:55 ID:Eil4THsRhI
>>306
支援ありがとうございます!
昨日はうっかり寝てしまいました。そして今日は熱が出るという残念な展開に…(´・ω・`)

弟「支援ありがとう、ごめんね」
少女「私からも礼は言っておくよ」
308:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/11/30(水) 20:06:12 ID:Eil4THsRhI

弟「もう!心配して言ってやってんの、に……!?」

弟の手が振り払うのが先か、母親の腕が弟を包み込んだ。背中から伝わる母親の熱で抱き締められているのだと気付いた弟は、横目で母親を伺った。
母親の体は小さく震えている。

母「……お姉ちゃん、もう駄目かもしれないって」

弟「え…?」

母親の腕にグッと力が入る。
息苦しくなる程強く抱き締めているのというのに、弟は抵抗する事も忘れて呆然としていた。


309:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/11/30(水) 20:24:00 ID:Eil4THsRhI

母「手術するにも、今のままじゃ体力が保たないんだって」

母親の体の震えが背中から伝わる。背後で肩を揺らす母親の腕に、弟の手が重ねられた。

弟は震える喉を堪え、母親の腕から逃れるように立ち上がった。

弟「何、弱気になってんだよ。姉ちゃんはまだ生きてるよ。あんなに元気なんだ、きっと助かるよ」


310:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/11/30(水) 20:49:01 ID:Eil4THsRhI

母「…そうね、ごめんね」

弟の唇がギュッと噛み締められる。涙が出そうになるのを辛うじて堪えて母親に背を向けた。

姉はきっと助かる─そう信じてはいるものの、弱気になっている母親を見ると一抹の不安が過る。

弟「母さんも無理しないでよね。母さんまで倒れたら困るよ。僕、子供なんだから」


311:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/11/30(水) 21:12:45 ID:Eil4THsRhI

「おやすみ」と足早にリビングを後にする弟の後ろ姿を涙を拭って見送った。

母「…こんな時だけ子供ぶって」

母親の唇が弧を描いた。
鼻を啜りながら洗い終わっている食器に手を伸ばし、片付け始めた。


312:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/11/30(水) 21:21:43 ID:Eil4THsRhI



チリン、チリンと鈴の音が鳴り響いている。辺りを見渡しても真っ暗で何も見えず、自分が何処に居るのかも分からない。

鈴の音は段々と大きくなり、背後からその距離を縮めていた。
音の鳴る方に振り返ると、暗闇の中にぼんやりと人影が浮かんでいるのが見えた。

弟「誰…?」

目を凝らしながら恐る恐る近付いて行くと、それはよく見知った人物だった。


313:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/11/30(水) 21:49:07 ID:1TeB1qx0ZM

弟「……姉ちゃん?」

弟の声にピクリと体を揺らし、その人物はゆっくりと顔を上げる。
ふわりと柔らかく微笑むその人は、まさしく姉であった。

弟「姉ちゃん、こんなとこで何してんの?」

声を掛けながら歩み寄るも、二人の距離は一向に縮まらない。何も答えず、距離も縮めず、ただ其処で優しく微笑んでいる。


314:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/11/30(水) 22:13:46 ID:Eil4THsRhI

ふと、誰かが姉の手を取った。
姉の隣には、弟とそう背丈の変わらない少女の姿があった。

弟「あ!お前…!」

姉の隣に立っているのは、病院で見た黒いワンピースの少女だった。

弟の声に一切反応せず、姉の手を引いて歩き始める。姉はそれに抵抗する素振りはなく、弟に背を向けて少女と共に歩きだした。


315:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/11/30(水) 22:36:42 ID:1TeB1qx0ZM

弟「待てよ!何処行くんだよ!」

弟がどれだけ走っても一向に距離は縮まらず、それどころか二人が歩みを進める度に広がっていくばかりだった。

縋るように伸ばされた腕さえも、姉には届かない。


弟「───姉ちゃんっ!!」


316:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/11/30(水) 23:00:21 ID:Eil4THsRhI

大きく見開かれた弟の目には、随分と見慣れた景色が広がっていた。
真っ白な天井、カチカチと鳴る時計の音、外からは小鳥の鳴き声が聞こえる。

弟「……夢かよ。何なんだよ、もう」

母「お母さんが言いたいわよ」

弟「!?」

顔を横に向けると、恐らく起こしに来たのであろう母親が腰を抜かした格好で座り込んでいた。

母「夢に見る程シスコンなのは分かったから、さっさと顔洗ってらっしゃい」

弟「………」


317: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/30(水) 23:05:30 ID:Eil4THsRhI
今日は此処までとさせて頂きます。

全く関係のない話ですが、家政婦のミタで涙が止まりません。涙と鼻水と熱の所為で頭がぼーっとしてしまいましたw

読んで下さってありがとうございます!それではまた。
318:名無しさん@読者の声:2011/12/1(木) 01:28:47 ID:KIYooKWHqg
1さん熱大丈夫?無理しないでね(´・ω・)っC&風邪薬
319:名無しさん@読者の声:2011/12/1(木) 08:02:21 ID:s9b2qli3Ck
つC
つバファリン
つ俺の愛
つ結婚指輪
320: ◆b.qRGRPvDc:2011/12/1(木) 21:00:53 ID:ysrTEcWl9w
>>318
支援ありがとうございます!
そして心優しいご配慮痛み入ります…結構熱が上がってしまいました。中途半端にか弱い体が腹立たしいです。

風邪薬までありがとうございます!318さんの優しさと気合いで治したいと思います(´;ω;`)


>>319
支援ありがとうございます!
バファリンと319さんの愛、しかと受け取りました!しかし、最後w私みたいなのを嫁に貰うと319さんが苦労されるかと思いますのでお、お気持ちだけ…(*´・ω・`*)


すみません、今日は投下はなしです。12月突入で本格的に寒くなりますが、皆さんも風邪には気を付けて下さいね。
321:名無しさん@読者の声:2011/12/2(金) 01:20:42 ID:/NxGZR211E
お大事に
(´・ω・`)っCCC
322: ◆b.qRGRPvDc:2011/12/3(土) 08:24:51 ID:5xkhhm62MI
>>321
支援ありがとうございます!
労りのお言葉まで(つω;`)
さっさと治してやります。やりますとも。しかしとてもしつこいです、風邪さん。321さんもお気を付け下さい…!

少しですが投下させて頂きます。
323:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/12/3(土) 08:25:56 ID:QNbItEn9RQ



弟「今日はツイてないなぁ…」

溜め息混じりに帰路に着く弟の顔は小学生とは思えない程に疲れ切っている。

小学生になって四年が経ち、随分と弟の立ち位置も安定していた。
勉強もそれなりに出来るし、運動神経もそこそこ良い。クラスのしっかり者としてやってきた。それが今日、見事に崩壊したのだった。


324:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/12/3(土) 08:44:40 ID:QNbItEn9RQ

授業中でも窓の外が気になって教師の声は右から左へと流れ、指名された事にすら気付かなかった。慌てて持った教科書は上下が逆さまで、「もういい」という言葉を初めて浴びせられた。

鈴の音が聞こえると教師の制止する声も聞かずに教室を飛び出し、昼休みには黒いワンピースを着た生徒に後ろから掴み掛かって泣かせてしまった。

放課後、「お姉さんが入院していて不安定になるのは分かるけど」という教師の言葉に逆上して「姉ちゃんは死なないよ!」などと怒鳴って学校を飛び出し、今に至る。


325:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/12/3(土) 09:01:15 ID:5xkhhm62MI

弟(たかが夢じゃん…ビビりすぎだよ、僕)

教師に問題児のレッテルを貼られたかもしれないと思うと頭が痛い。少女の事はもう忘れよう、そう自分に言い聞かせた。

弟「…っ!?」

その矢先、また鈴の音が弟の耳を突いた。先程の言葉は一瞬にして消し飛び、反射的に音の鳴る方に顔を向けた。


326:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/12/5(月) 20:16:01 ID:LuxIfDOYRs

「ニャー」と低い声を出して、茶色い縞模様をした猫が弟に向かって威嚇をしている。首輪もなく薄汚れているところを見ると、どうやら野良猫のようだ。

弟「ついに空耳ですか…」

深い溜息を吐きながら肩を落とす。今度こそ忘れようと歩きだしたが、前方に見えた人影に思わず息を呑んだ。

黒いワンピースを翻して歩く黒髪の女の子──間違いなく、あの少女だった。


327:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/12/5(月) 20:50:47 ID:ZuifM71Eps

少女は弟に気付く素振りも見せずに角を曲がって行く。呆然とその姿を見ていた弟が慌てて後を追った時には、もう少女の姿は見当たらなかった。

弟「くっそーまた逃げられた…!」

少女「誰が逃げたって?」

弟「うわーっ!?」

弟が飛び跳ねて振り返る。角を曲がった筈の少女は弟の真後ろで耳を押さえて睨み付けていた。

少女「うるさいよ」

少女の気迫に押され、弟は少しばかり後退った。


328:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/12/5(月) 21:25:10 ID:LuxIfDOYRs

少女「人の忠告を無視するのかい?聞き分けのない子だね」

呆れた、とでも言うように少女が溜息を吐いた。
確かに少女は関わるなと言っていた。しかし、自分とそう変わらない背丈の少女に上からものを言われる筋合いは弟にはない。ムッと口を尖らせて少女に言った。

弟「あ、あんたが僕から逃げるからだろ?」

少女「逃げてなんかいないよ。関わるなと言ったんだ、君を無視するのは当然でしょう?」

怪訝な顔で首を傾げる弟の様子を見て、少女はやれやれと首を振った。


329:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/12/5(月) 21:46:13 ID:ZuifM71Eps

弟「ねぇ、なんで姉ちゃんの病室覗いてたわけ?」

少女の瞳が僅かに揺れた。
眉を寄せて、弟の視線から逃れるように下を向く。

少女「…君には関係のない事だと言ったでしょ。答える義務はないね」

弟「へぇ。用もないのに病院行くんだ、あんた」

少女は弟の挑発的な態度に視線を戻す事もしない。もやもやと煮え切らない思いは、幼い少年を苛立たせるのには十分だった。


330:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/12/5(月) 22:08:36 ID:LuxIfDOYRs

弟「あーもう!何か言ってよ!何なんだよ!」

苛立ちを覚えているのは少女も同じようだった。深々と眉間に皺を寄せて舌を弾くと、聞き分けのない子供に吐き捨てるように言った。

少女「迎えに来たんだよ!だけどまだ時期じゃない、それだけの話だ!」

弟「迎えに……?」

はっとした少女はバツが悪そうに顔を顰めた。


331:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/12/5(月) 22:35:37 ID:ZuifM71Eps

何故言ってしまったのだろうか。目の前の少年とは、関わるべきではないと分かっているのに。苛立っているのは弟に対するものではなく、未だ“彼ら”に追い付けないでいる自分自身への焦りだというのに。

ところが、弟が発したのは少女も予想していない言葉だった。

弟「なぁーんだ」

つい先程まで道端の野良猫のように敵意を剥き出しにして威嚇していた弟は、幾分かトーンの高い少年らしい声でそう言ってのけた。

少女「…?」

少女の丸い大きな目はぱちくりと瞬きを繰り返した。


332:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/12/5(月) 22:48:19 ID:ZuifM71Eps

弟「僕も姉ちゃんが入院してるんだよ。だから、あんたと同じ。そういうのわざわざ人に言い触らしたくないもんね、分かるよ」

警戒心のない少年の笑顔を見せる弟に、少女はそういう事かと納得した。
恐らく弟は、少女も自分のように入院している誰かを見舞っていると誤解をしているのだろう。

少女「…まぁ、そんなところだね」

しかし、少女にはわざわざその誤解を解く理由なんてありはしなかった。


333:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/12/5(月) 23:28:57 ID:LuxIfDOYRs

弟「僕、弟っていうんだ。次見掛けたら覗いてないで声掛けてよ」

少女「……」

宜しく、と弟は手を差し出した。

少女は骨張っていないすらりと細い少年の手をまじまじと見つめ、その手に触れる事を拒んだ。

少女のつむじの辺りには、まだ青年の大きな手の温もりが残っているような感覚がした。その熱が体の奥の方からじわじわと、何かを溢れ出させようとしているのが何故だか堪らなく恐かった。


334:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/12/5(月) 23:54:19 ID:ZuifM71Eps

弟「…?ちょっと、何処行くの?」

少女「…もう、放っておいてくれ」

弟は訝しげな眼差しを少女に送った。

少女はそんな弟から逃げるようにして背を向けて歩きだした。

弟「ち、ちょっと!名前くらい教えてくれてもいいんじゃないの?」

頬を膨らませて声を荒げる弟に、少女は首だけ振り返って言った。

少女「名前なんて、持っていないよ」


335: ◆b.qRGRPvDc:2011/12/6(火) 00:00:04 ID:ZuifM71Eps
今回は此処までとさせて頂きます。

やっと主役二人をちゃんと対面させる事が出来ました。それで思ったのですが、弟と少女のキャラ…被っていませんかね。
見分けつきますでしょうか。心配であります(´・ω・`)

それから、皆さんのお陰で熱が下がりました!ご心配お掛けしてすみません。愛のあるレスをありがとうございました。
336:名無しさん@読者の声:2011/12/6(火) 00:18:38 ID:LVJ0vuQqjo
二人ともツンツンキャラだとは思うけど全然被ってないと思うよ(^ω^)

少女たんかわゆCCC
337:名無しさん@読者の声:2011/12/6(火) 00:21:35 ID:ovkx6JVVlE
少女も弟も魅力的です!

体調崩さないよう自分のペースで頑張ってください!
338:名無しさん@読者の声:2011/12/6(火) 11:22:53 ID:/NxGZR211E
ツンツンコンビ可愛い!弟くれ(*´ω`)つC
339:名無しさん@読者の声:2011/12/6(火) 18:58:51 ID:xInxTUSewQ
お姉ちゃんはもらった〜!

っC
340: ◆b.qRGRPvDc:2011/12/6(火) 20:47:03 ID:VVmn2h4y/A
>>336
支援ありがとうございます!
やはりツンツンしてしまっていますよね。何度頭で二人の姿を描いてみても、二人共がしかめっ面で睨んできてくれます。生みの親なのに…悲しいですw

弟「可愛いってさ」
少女「だから何だい?」
弟「顔、赤いよ」ニヤニヤ


>>337
わー、わー、ありがとうございます。凄く嬉しいです。本当に、嬉しい…(´;ω;`)
キャラクターって、どれだけ脳内で設定していても書き手次第で本当に変わってしまうと思うんですよね。文章で表すならなおのこと。そう言って頂けると本当に嬉しいです!ありがとうございます!
体調管理もしっかりします。お優しい心遣いに感謝!

弟「長いよ」
少女「長いね」
女「確かに長いね」
1「」


>>338
支援ありがとうございます!
そう言って頂けるとツンツンコンビも喜びます。きっと素直にありがとうとは言わないのでしょうけどw

女「だ、駄目ですー!弟くんはあげません!!」ギュウゥゥ
弟「ぐっ…ぐるじいよ姉ぢゃん…」


>>339
支援ありがとうございます!
お姉ちゃん、お気に召しましたでしょうか?ちょっと抜けててふわふわした子ですが、可愛がってやって下さいね(´ω`)

女「え、私339さんのものになっちゃうの?」チラッ
女「凄く嬉しいけど、困ったなぁ…」チラッチラッ
弟&男「……」
341:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/12/6(火) 22:11:43 ID:0LPkSTsaU.

───‥


女「そう、そんな事があったの」

弟「全く礼儀がなってないと思わない?もう、第一印象から最悪だったんだけどね」

風船のように膨らんだ弟の頬は、指で突けば割れてしまいそうな程に張り詰めている。
姉はそうしてやりたい衝動を抑えながら、年相応に愛らしく拗ねた弟を見てクスクスと笑った。


342:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/12/6(火) 22:35:26 ID:0LPkSTsaU.

女「もしかしたら恥ずかしがり屋なのかもしれないよ?次は優しく話し掛けてあげなよ」

弟「それじゃあ僕がいつも優しくないみたいじゃない?」

女「そんな事ないよー!今日の弟くんはまた特別可愛いけど」

弟「…何それ、可愛いかなんて訊いてないんだけど」

りんご色をした弟の頬がフイとそっぽを向く。その様子に、やはり可愛いと姉の細い手は弟の頭を撫でた。


343:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/12/6(火) 23:03:20 ID:VVmn2h4y/A

女「でも嬉しいなあ、弟くんから女の子の話が聞けるなんて」

弟「ちょっと、変な期待しないでよ?」

弟がジト目を向けても、姉は首を傾けて柔らかい笑みを浮かべるだけだった。夢見る少女の姉には何を言っても無駄なのだろう。

弟「…まったく」

弟はいつもこの柔らかな姉の雰囲気に呑まれてペースを乱される。どれだけ大人ぶってみせても無駄だった。

そうして自覚させられる。
自分は無力な子供なのだと。


344:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/12/6(火) 23:56:01 ID:0LPkSTsaU.

女「弟くんの結婚式とか、きっと私泣いちゃうんだろうなー」

『……お姉ちゃん、もう駄目かもしれないって』
目の前で輝かしい未来に胸を膨らませる姉は、母親がそう言われた事を知らないのだろうか。

女「娘さんを僕に下さい!とか言っちゃうのかな。私も言われたいなあ。娘はお前にはやらん!なんて…」

『手術するにも、今のままじゃ体力が保たないんだって』
本当は今すぐにでも大声で泣き喚いて姉の胸に飛び込んでしまいたい。

女「…もう、弟くん聞いてる?」

「お姉ちゃん、死なないで」と、縋りついてしまいたい。だけどそうする事が出来ないのは、やはり子供だからなのだろう。

弟「………」

素直になれない、子供だからなのだろう。

弟「気が早いよ、姉ちゃん」


345: ◆b.qRGRPvDc:2011/12/7(水) 00:01:49 ID:0LPkSTsaU.
少ない投下ですが、今回は此処までとさせて頂きます。

支援レスを下さった方、読んで下さっている方、いつも本当にありがとうございます!

皆様のお気に入りの物語の一つになれますように。おやすみなさい。
346:名無しさん@読者の声:2011/12/7(水) 00:28:43 ID:LVJ0vuQqjo
>>340
姉w可愛いなww
俺はこのSSお気に入りですよ。一番好きなのはめぐだけど皆好きだ!!
347:名無しさん@読者の声:2011/12/7(水) 09:58:25 ID:3EPWydNmto
壁|´・ω・)つCコトッ
壁|ミ サッ
348:名無しさん@読者の声:2011/12/7(水) 12:10:08 ID:TcjuuEWQvQ
大好き支援!
349: ◆b.qRGRPvDc:2011/12/7(水) 22:01:36 ID:.AL642LWkg
>>346
ありがとうございます、ありがとうございます!そう言ってもらえる事が何よりも嬉しいです。
沢山あるSSの中からこのスレを開いて下さった事、めぐや他のキャラクターを愛して下さった事、全てに感謝です。

めぐ「ボクも346さん好きー!」
弟「誰、あんた」
少女「“元”主役だから気にしなくていいよ。“元”だから」
めぐ「」


>>347
支援ありがとうございます!
壁| (*・ω・pCq)ウレシイ…
壁|ミ マッテマッテ!

弟「1がそっちに行ったみたいだよ」
女「347さん逃げてえぇ!」


>>348
支援ありがとうございます!
嬉しいです。ありがとうございます。少女や弟にも段々愛着が湧いてきて、早くもお別れするのが寂しくなってきました。
私も348さんが大好きです(´;ω;`)

女「うーん…1さんじゃなくてSSの事だと思うの」
男「俺も女ちゃんに同感だけど言わないであげようよ」
女「そうだね。348さん、ありがとうございます」ニコニコ
350:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/12/7(水) 22:20:22 ID:8qV65XyEH6

青々とした葉はすっかりと色を変えて散り始めている。弟は窓際で頬杖をついて、ハラハラと舞い散る木の葉を見つめていた。
教室には教師の声とチョークを黒板に滑らせる音が響いているが、そんなものは弟の耳に何一つ入っては来なかった。

友「弟、一緒に帰ろうぜ!」

弟の肩にクラスメイトが触れて、はっと意識が教室に戻された。気が付けば授業どころか“終わりの会”も終わってしまっていた。

弟「…あ、うん、帰ろう」


351:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/12/7(水) 22:44:09 ID:.AL642LWkg

友「方程式難しいよ…。あれ、なんで答えが450円になったのか全然分かんなかった」

クラスメイトが口を尖らせてぼやいた。どうやら算数の授業で出た問題が理解出来なかったらしい。

弟「どんな問題だっけ?ノート見せて」

一日中上の空だった弟は、問題どころか授業の内容ですら曖昧だった。「仕方ないなあ」と、クラスメイトは鞄を地面に置いた。


352:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/12/7(水) 23:10:46 ID:8qV65XyEH6

クラスメイトが鞄を漁ると同じくして、チリン、チリンと鈴の音が聞こえる。鞄に付けられた御守りの鈴が、小刻みに震えて音を鳴らしていた。
その音にふと、少女の姿が頭に過った。放っておいてくれと悲しげに呟いたきり、病院でも少女の姿を見掛けていない。

弟「…次は優しく、か」

友「え?何?」

鞄から算数ノートを取り出したクラスメイトが弟を見上げる。

弟「ごめん、用事思い出した。また明日!」

来た道を戻るようにして弟は走りだした。クラスメイトはその後ろ姿をただ呆然と見送った。

友「明日学校休みなんだけど…まあいっか」


353:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/12/7(水) 23:38:49 ID:.AL642LWkg

弟の細い脚は少女を探して走り続けた。何処の誰かも分からない少女を探しだすのは容易ではない筈なのに、その足を止める術を弟は知らなかった。

何より、会える気がしてならなかった。それだけが弟をただただ走らせた。

弟「ハァっ…ちゃんと言わなきゃ…!」

きっと少女も同じなのだ。言い表わす事の出来ない不安と、無力な自分が怖くてたまらないのだ。そうして人を突き放す。
自分が少女に出来る事は、きっとこれだけなのだと信じて止まなかった。


354:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/12/7(水) 23:57:17 ID:8qV65XyEH6

辺りはすっかり薄暗くなり始め、惜しみながら沈んでいく夕日に弟の焦りは増すばかりだった。

弟「猫…?」

息も絶え絶えな弟の前に、一匹の黒猫が佇んでいた。闇に溶けるような美しい黒が月明かりに艶めかしく輝いている。

もの言わぬ飴色の瞳が誘うように弟を見つめた。
──鈴の音が聞こえる。


355:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/12/8(木) 00:16:16 ID:.AL642LWkg

弟が黒猫の後を追うようにして辿り着いた先は、丘の上にある公園だった。展望台から見える景色は夜空に光る星のようにキラキラと輝いている。

弟「あれ…猫、何処行ったんだ、ろ……」

薄く開かれた弟の瞳が段々と開かれていく。大きく開かれた弟の瞳には朧月のようにぼんやりと少女の姿が映っていた。

少女「君は本当に…懲りない子だねぇ…」


356: ◆b.qRGRPvDc:2011/12/8(木) 00:19:59 ID:.AL642LWkg
今回は此処までとさせて頂きます。

もっとささっと終わらせようと思っていたのですが、思っているよりも長くなってしまいそうです…(´・ω・`)

支援して下さった方、読んで下さった方、ありがとうございました!
357:名無しさん@読者の声:2011/12/8(木) 01:09:59 ID:suIVnJhzas
引き込まれるね。1さんの才能に嫉妬(`・ω・´)つCC
納得行くまで続けてほしいです
358:名無しさん@読者の声:2011/12/8(木) 19:26:27 ID:vYxDVcu0Fo
お姉ちゃんツボりそう(*´д`*)CCCC
359: ◆b.qRGRPvDc:2011/12/8(木) 20:49:10 ID:vWFRRZFXl2
>>357
支援ありがとうございます!
うわわわ、そんな事を言って頂いていいのでしょうか。恐縮です。でも凄く嬉しいです(*´・ω・`*)

納得の行くまで、となるともはや短編小説ではなくなってしまう長さになってしまう予感がするので、自重しつつちゃんと完結させたいと思っています!

弟「お気遣いありがとう」
少女「君は本当に可愛げがないね」
弟「あんたに言われたくない」ベー
女「喧嘩しないのー!」


>>358
支援ありがとうございます!
二人に比べて登場シーンが少ないというのに気に入って頂けるなんて…!きっと姉も喜んでます。枕を抱き締めながらゴロゴロ転がってます。

女「きゃーきゃー」ゴロゴロ
女「どうしようモテ期かも〜!」ゴロゴロ
少女「…止めないのかい?」チラッ
弟「無理です」
360:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/12/8(木) 21:33:37 ID:w/b1EyjZ5M

何時間も自分を探して走り回ったであろう弟の吐息を背後に感じて、少女は振り返る事もせずに言葉を洩らした。
「まあね」と得意気に弟が笑う。

少女「まだ、何かあるのかい?」

弟「あ、うん。えっと…」

少女に促されて弟は口籠もった。
優しく、優しくと姉が背中を押しているような気がした。

弟「…この前は事情も知らずに突っ掛かってごめん。その……友達に、ならない?」


361:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/12/8(木) 21:56:47 ID:vWFRRZFXl2

夜風が二人の頬を優しく撫でた。少女の瞳が月明かりに反射してうるうると光る。
振り返る先には弟の姿があった。間違いなく真っ直ぐに少女を見つめている。

少女「ともだち…?君と私がかい?」

弟「うん」

弟は照れ臭そうに眉を寄せて鼻を撫でた。
少女の手が微かに震える。警鐘にも似た鼓動の音が少女の身体中に響いていた。


362:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/12/8(木) 22:24:58 ID:w/b1EyjZ5M

少女「…馬鹿な事言ってないで早くお家に帰りなよ」

少女のスカートが風に膨らんでくるりと回った。弟に背を向けて手首の鈴を弄ぶ。

弟「あんたは帰らないの?」

少女の黒い髪が弟の心を擽るようにさらさらと風に揺れた。夜風に靡く髪を払う事もせずに少女は答えた。

少女「君は帰るべき場所があるでしょう。早く帰るといいよ」


363:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/12/8(木) 22:54:15 ID:w/b1EyjZ5M

弟には少女に掛ける言葉が思い当たらなかった。というよりも、まだ子供の弟には少女の言動は理解し難いものばかりで、今にも吹き出してしまいそうだったのだ。

少女「…何だい?」

少女は怪訝な顔で横目に弟を見る。

弟「名前もないし帰る家もないって、あんた野良猫みたいだね」

少女「あんなに媚びた声は出せないし、私の声なんて誰にも聞こえやしないよ」


364:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/12/8(木) 23:23:36 ID:w/b1EyjZ5M

野良猫の方がよっぽどマシだと言って少女は睫毛を伏せた。
弟の頭はますます困惑し、首を傾げるしかなかったが、伏せられた長い睫毛が寂しいと語り掛けているように思えてならなかった。

弟「どういう意味…?」

ふと、聞き馴れたメロディが弟の耳を突いた。いつも何処からか流れてくるそのメロディは、児童に帰宅を促す為の「夕焼け小焼け」のメロディだった。
公園の時計に目をやると、時刻は午後六時半を示している。


365:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/12/8(木) 23:43:47 ID:vWFRRZFXl2

弟「うわ、もうこんな時間!?帰らないと!」

弟が身じろぐと鞄の中で筆箱が音を立てて揺れた。そういえば下校の途中だったと、青ざめる。母親にばれたらきっと怒られるに違いない。「こんな時間まで何処で寄り道していたの!」と。

少女「…早く行きな。良い子は帰る時間だよ」

少女に促されて弟はこくこくと頷いた。慌てて坂道を駆け降りる最中、少女に向かって振り返ると声を張った。


366:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/12/9(金) 00:07:56 ID:w/b1EyjZ5M

弟「よく分かんないけどさ、聞こえるよ。僕にはあんたの声、ちゃんと聞こえてるから!」

またねと手を振って弟が走りだす。少女は何も答えなかった。

少女「……」

答えなかったが、走り去る弟の背中に小さく手を振ってみせた。夕焼け小焼けのメロディに乗せて小さくなってゆく弟の背中をぼんやりと一人、見送った。


367: ◆b.qRGRPvDc:2011/12/9(金) 00:18:32 ID:w/b1EyjZ5M
今日は此処までとさせて頂きます。

余談ですが、夕焼け小焼けのメロディは全国的に放送されているみたいですね。地域によって時間帯にばらつきはあるようですが、夏期は凡そ17時、冬期は16時頃から流れるそうです。
私の住む地域も夕方になると何処からともなく夕焼け小焼けが流れてきます。何となく、胸が締め付けられるような切なさを感じる私ですw

私が言いたかったのはそんな事ではなく、上記の事から>>364は有り得ないという事です。間違った認識をさせてしまうような事を書いて申し訳ありませんでした(´・ω・`)
368:名無しさん@読者の声:2011/12/9(金) 01:38:54 ID:cW/o/4ljMA
夕焼け小焼け懐かしいwうちの地域も鳴ってた気がする
弟可愛い紫煙
369:名無しさん@読者の声:2011/12/9(金) 08:23:08 ID:LrqHLtn3N6
真面目だなww
1さんのキャラ好きだわっC
370:名無しさん@読者の声:2011/12/10(土) 00:32:34 ID:fkBVTflO66
(`・ω・´)つC
371: ◆b.qRGRPvDc:2011/12/10(土) 18:08:35 ID:qcDttONIGI
>>368
支援ありがとうございます!
夕焼け小焼けが鳴ると帰らないといけないという幼い頃のイメージの所為か、あれが聞こえると本当に切なくなります。丁度空が夕日に染まる頃だから余計にそう感じるのかもしれませんが(´・ω・`)

女「そうなの、弟くん可愛いの。368さん分かってる〜!」
弟「ちょっと姉ちゃん黙って」


>>369
支援ありがとうございます!
す、す、すすすす…!?いや、あの、全国的に流れているという事だったので、もし夕焼け小焼けが聞こえてきた時に「もう18時半!?」という勘違いをさせてしまってはいけないと思いまして、はい(*´・ω・`*)
実物の私を見たらきっと真面目とは言って頂けないでしょうねw

少女「こんなSSに影響力があるとは到底思えないけどね」
弟「激しく同意」


>>370
支援ありがとうございます!
やはり支援して頂けると嬉しいものですね。Cの記号を見るとテンションが上がります。周りに変に思われるかもしれないので表面上は無表情で画面を凝視しつつ、心の中で小さいおっさんが激しく踊っていますw

少女「私達ではテンションが低すぎて表せられないらしいよ」
弟「どうせ可愛げのない子供ですよ」
372:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/12/10(土) 20:52:16 ID:yvEPXiu.Rw



チリン、チリンと鈴の音が鳴り響いている。辺りを見渡しても真っ暗で何も見えず、自分が何処に居るのかも分からない。ああ、またあの夢かと弟はうなだれた。

背後からの鈴の音に振り返ると、やはり其処には笑みを浮かべる姉の姿があった。どうせまた姉は離れて行くのだと、歩み寄る事さえ諦めていた。
少女が姉の手を取る。前に見た夢と同じように。


373:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/12/10(土) 21:24:09 ID:qcDttONIGI

弟「なんであんたが出てくるの?何処に行くつもりなんだよ」

少女は答える事なく姉の手を引いて歩きだすのだろう。そう思っていた弟の予想に反して、少女は歩みを止めて弟に振り返った。

少女「──────」

弟「え?何…」

微かに動く少女の唇からその言葉を読み取ろうとするが、読唇術の心得などない弟は、ただ目を凝らすしかなかった。


374:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/12/10(土) 21:41:14 ID:yvEPXiu.Rw

弟が薄らと目を開けると、其処にはいつも通りの見慣れた白い天井が見えた。やはり、夢だったのだ。

弟「はぁー……」

分かってはいたが、弟の口からは自然と長い溜息が洩れた。背中にじんわりと掻いた汗がパジャマを肌に張り付けている。
どんよりとした嫌な気持ちを引き剥がすように、体を起こして窓に視線を流した。

弟「…ちゃんと帰ったのかな、あの子」

まだ覚めやらぬ朧気な意識の中、艶めかしく風に揺れる少女の黒髪を思い浮かべていた。


375:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/12/10(土) 22:02:28 ID:yvEPXiu.Rw



男「女ちゃん、少し休んだら?」

女「ん、もうちょっとだけ」

姉はベッドから体を起こし、横に置かれたキャンバスに何かを描いていた。隣で心配そうにしている男を余所に、真剣な眼差しで鉛筆を滑らせている。

女「あっ…」

姉の手から逃れるようにして鉛筆がコロコロと転げ落ちた。すぐに拾い上げようとした姉の指先は小刻みに震え、鉛筆は音を立てて転がるだけだった。


376:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/12/10(土) 22:33:15 ID:qcDttONIGI

男「女ちゃん…?」

訝しげに様子を伺う男に姉は笑顔て振り返った。震える手を押さえ、困ったように眉を寄せて。

女「最近ね、手に力が入らない時があるの」

男「え…?」

表情を強張らせる男とは対照的に、姉は笑みを浮かべたまま手の平に視線を移した。
震えが治まったのを確認すると、ひょいと鉛筆を拾い上げる。


377:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/12/10(土) 22:52:25 ID:qcDttONIGI

女「その内描けなくなっちゃうかもしれないから…だから、」

お願い、と悪戯な笑顔を見せた姉の肩を、男の腕がそっと抱き寄せた。痩せて小さくなった姉の華奢な体は男の腕の中に容易に収まった。

男「大丈夫だよ。大丈夫、大丈夫だから…」

何度も繰り返し、男は言った。心地好い低音が姉の耳を撫でる。姉は縫い付けたように弧を描いていた唇をゆっくりと解き、揺れる瞳を閉じた。


378:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/12/10(土) 23:11:15 ID:yvEPXiu.Rw

女「……突き放せなくて、ごめんね」

力なく寄り掛かる姉の髪の香りが男の鼻を擽った。いとおしそうにその髪に頬を擦り寄せると、穏やかな優しい声色で囁くように言った。

男「女ちゃんに来るなって言われても来るよ、俺は」

女「男くん…」

ドクン、と姉の心臓が大袈裟に音を立てた。それに応えるように男の心臓もドクン、と高鳴る。
姉は表情を綻ばせ、熱が帯びた瞳で男を見つめた。

女「ありがとう」


379: ◆b.qRGRPvDc:2011/12/10(土) 23:18:18 ID:qcDttONIGI
今回は此処までとさせて頂きます。

弟は弟表記なのに何故姉は女なんだ、と疑問に思われる方も居るかもしれないので少し説明を。
男が姉を呼ぶ際、ちゃん付けにしろさん付けにしろ、弟が姉を呼ぶ時の「姉ちゃん」と被るなーと思ったからです。「姉さん」だと「ねえさん」と読んでしまうし「姉ちゃん」だと弟と同じ。ややこしいやないか!と思いまして。

という言い訳でした(´・ω・`)
此処まで読んで下さってありがとうございます。おやすみなさい。
380:名無しさん@読者の声:2011/12/11(日) 00:28:18 ID:0dUz0APGSQ
あぁ…キュンキュンする(*´д`)
キス
381:380:2011/12/11(日) 00:32:07 ID:/NxGZR211E
ごめんなさい誤爆った…
キスするのか!!って言いたかっただけなんだorz

つC
382:名無しさん@読者の声:2011/12/11(日) 08:02:43 ID:px..1hXM1Q
姉かわいいよ姉
全力C
383: ◆b.qRGRPvDc:2011/12/11(日) 23:44:05 ID:r12WCtJTeY
>>380-381
支援ありがとうございます!9m
きゅんきゅんして頂けましたでしょうか?私自身あまり少女漫画を読まない為、女でありながら乙女要素が皆無に等しいのでそれはとても嬉しいです…!

女「私と男くんがそんな事…フヒヒ…デュシュ、デュシュシュジュルジュル」
男「やだこの子怖い…」


>>382
支援ありがとうございます!
あれ、お姉ちゃんが一番好感度が高いのでしょうか。ちょっぴり驚いています。きっとお姉ちゃんの人気に男は焦っている事でしょうねw

男「ちょ、支援は有難いけど女ちゃんは駄目だよ…!」
女「えへへ、駄目らしいです」デレデレ
384:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/12/11(日) 23:47:21 ID:r12WCtJTeY

弟「お二人さん、もういいかな」

女「お、おと、弟くん!?」
男「今日も良い天気だなーっと!」

弟の声に二人の肩は面白い程に跳ね上がった。姉は先程まで鉛筆を滑らせていたそれに慌てて布を被せ、男は窓際に立って白々しく口笛を吹いた。

弟「男さん、今日は曇りだよ?」

晴れやかな満面の笑みを浮かべながら、弟が可愛らしく首を傾げてみせる。男は苦笑して頭を掻くと「まいったな」と眉を下げた。


385:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/12/12(月) 00:11:36 ID:6.GQMZQyxE

母「男くんごめんなさいね、この子シスコンだから嫉妬妬いてるのよ」

弟「何言ってんの。違うから」

弟の頭をポンポンと叩きながら母親が笑う。二人はそれを見て握り拳が入りそうな程にあんぐりと口を開けた。

女「お母さんまで居たの!?」

母「大丈夫よぉ、会話の内容までは聞いたりしてないから」

頬を火照らせた姉は両手で顔を隠して狼狽えた。穴があったら入りたいとはこの事を言うのだろう。


386:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/12/12(月) 00:29:53 ID:6.GQMZQyxE

男「……あの、俺はそろそろ失礼しますね」

上着を手に、いそいそと出口に向かう男が言った。

母「あらあら、邪魔しちゃったかしら」

男「いえ、そんな事は…!また来ます」

さようなら、と頭を下げる。名残惜しそうに様子を伺う姉に「またね」と笑顔で手を振った。
男が去った病室に少しの沈黙が流れた。仕切りなおすように母親がパチンと手を叩いて言った。


387:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/12/12(月) 00:51:05 ID:6.GQMZQyxE

母「さて!じゃあお母さん先生とお話ついでにお花の水入れてくるわね」

女「ああ、うん。行ってらっしゃい」

姉は病室のドアが閉まるのを確認して弟に視線を移した。表面上こそいつも通りにしているものの、椅子に掛けている弟の脚はブラブラと落ち着かない。

女「弟くん、何か良い事あった?」


388:名無しさん@読者の声:2011/12/12(月) 11:58:44 ID:KIYooKWHqg
(´・ω・)っC
389: ◆b.qRGRPvDc:2011/12/12(月) 17:08:55 ID:xkRlVvRAxw
>>388
支援ありがとうございます!
また中途半端な所でうっかり寝てしまっていました…(´・ω・`)
こんな拙作に毎日のように支援が頂けるのはとても光栄な事ですね。皆さんからのレスで私の中の小さいおっさんが踊り狂います(※>>371参照)

女「ピンポーン!1さんの50%は小さいおっさんで構成されています」ニコッ
弟「それもはや小さくないし」



それから、セコムさんにお伺いしたところ12位だったそうで。(しかも読んで下さっている上に好きだと言って頂けました(´;ω;`))本編も完結し、過去や番外編を綴っているだけの作品に投票して頂けた事、とても嬉しく思います。本当にありがとうございます。
番外編が完結次第、この物語は終了となります。それまでもう暫くお付き合い下さると幸いです(`・ω・´)
390:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/12/12(月) 20:21:02 ID:jB4X9WbM8.

ころりと寝返りを打ち、見透かしたように姉が笑う。弟はぴくりと眉を動かして僅かに反応を示したが「別に何も?」と、冷蔵庫から缶ジュースを取り出して飲みはじめた。
コクン、と弟の喉が波打つ。横目でそろりと姉を伺うと、期待に目を輝かせて弟を見ていた。

弟「……何」

女「んー?別にー?」

弟「……」

ニコニコと見つめる姉の視線が痛い。弟は平静を装ってジュースを流し込んだ。


391:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/12/12(月) 20:43:31 ID:xkRlVvRAxw

そういえば、と弟が白々しく切り出すと、姉の目の輝きが一層増した。ベッドから落ちそうになる程ズイ、と身を乗り出し、続く弟の言葉を待った。

弟「……友達になろうって言った。この前話した子に」

女「本当に?」

弟が頭を上下に振った。それを確認した姉は花が綻ぶように笑って声を上げた。


392:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/12/12(月) 21:01:57 ID:jB4X9WbM8.

弟「でもあの子、名前なんてないとか、帰る家はないとか…変な事言うんだよ」

女「ミステリアスな女の子…いいじゃない!」

弟「もう、調子に乗らないの」

興奮して立ち上がろうとする姉の肩を弟が押さえた。姉の起伏の激しさや子供っぽい面は見慣れてはいるが、今日はまたいつにも増して激しい気がする。
誰かに恋をしても姉には相談するべきではないな、と考える弟の口からは自然と溜息が洩れていた。


393:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/12/12(月) 21:21:15 ID:xkRlVvRAxw

女「そうだ、名前がないって言うなら勝手に付けちゃうのはどう?」

弟「…そんな、人をペットみたいに」

駄目駄目、と弟が手を払う。

女「駄目かなぁ。二人だけの呼び名って、特別で素敵だと思ったんだけど……」

むぅ、と唸りながら姉の体がベッドに沈んだ。ふんわりと膨らむ栗色の髪を指先に絡ませて子供のように口を尖らせた。


394:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/12/12(月) 21:40:54 ID:jB4X9WbM8.

女「ねぇ、その子どんな子なの?可愛い?」

弟は姉の指先に絡まる栗色の髪を見つめた。

弟「……とりあえず、姉ちゃんとは真逆だと思うよ。色々と」

女「えぇ〜…?色々って何よう」

首を捻り、まるで難問題を叩きつけられたかのように考え込む姉を前に、弟は楽しげにクスクスと笑った。

弟(特別、か…)


395:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/12/12(月) 22:01:05 ID:xkRlVvRAxw

母「随分楽しそうね。何の話?」

母親の声と共に花の香りが病室に広がる。花瓶に挿された色とりどりの花がゆらゆらと揺れ、その香りが弟の脳を刺激した。

弟「別に何でもない話だよ。僕、先に帰って遊んできていい?」

少女はまたあの公園で一人、街の景色を眺めているのだろうか──何故だか、無性に会いたくなってしまった。


396:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/12/12(月) 22:26:11 ID:xkRlVvRAxw

母「遊びにって今来たところなのに誰と──」

女「いいよいいよ!行ってらっしゃい!」

もう、と溜息混じりに言う母親を遮って姉が早く早くと急かす。弟は自分の心境が見透かされたようで何だか少し気恥ずかしく思えた。
病室を出た弟の脚は自然と早まった。姉の言っていた“特別”を考えると、心が踊る。

少女は少し不思議な空気を纏っていた。何処か近寄りがたいようで、物寂しい瞳をしている。クラスメイトの女の子達にはない美しさに、弟は少なからず好意を抱いていた。


397:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/12/12(月) 22:49:40 ID:jB4X9WbM8.

────‥

弟「…やっぱり此処に居た」

少女「……また君か」

丘の上の公園に、やはり少女の姿はあった。鈴を鳴らして振り返る少女の姿は実に優美で、弟は暫く口を開けて惚けた。

少女「君は本当に、私が見えているんだね…」


398:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/12/12(月) 23:18:12 ID:xkRlVvRAxw

弟「見えるよ、幽霊じゃないんだから」

そう言う弟に、少女はクスリと小さく笑った。

少女「そういえば、前にも君と同じように言った子が居たよ」

弟「そうなの?」

少女はうん、と頷く。手首の鈴を指で撫でて懐かしむように語った。

少女「私に名前がないのをいい事に“霊子さん”だと。鈍いようで鋭くて、真っ直ぐな青年だった」


399:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/12/12(月) 23:39:04 ID:jB4X9WbM8.

今まで見た事のない少女の穏やかな表情は、弟の胸を言い様のない痛みにも似た苦しさに襲わせた。
きっと自分には理解の出来ないものを背負っているのであろう事は、幼い弟にも理解は出来た。

弟「あんた、その人の事が好きなの?」

少女「まさか」

ぷっ、と吹き出して少女は笑った。

少女「あんな子を好きになれるのは、あの子以外には無理だよ」


400:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/12/13(火) 00:08:07 ID:jB4X9WbM8.

少女の指先が優しく鈴を撫でる。
ああ、きっと少女の手首にいつもあるそれは、彼女の言う“あの子”の物だったのだろう。弟は漸く少女の背負っているものが少し見えたような気がして、少し誇らしく思えた。

弟「その子とは遊んだりしないの?あんた、いつも一人だけど」

少女「遊ぶ?私と彼女がかい?」

どうして、と首を傾げる少女に弟も首を傾げて返した。

弟「友達じゃないの?」


401:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/12/13(火) 00:27:48 ID:xkRlVvRAxw

少女「友達、か…」

ふむ、と少女は腕を組んだ。
展望台からの景色を目を細めて見つめた。弟が何処見ているのか視線の先を辿っても、其処には馴れ親しんだ街並が広がっているだけだった。

少女「…そうだったのかもしれないね」

弟「だった、って過去形なんだね」

少女「当然でしょう。あの子はもう居ないんだ。救いの光に包まれて消えてしまったからね」


402:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/12/13(火) 00:42:31 ID:jB4X9WbM8.

弟「消えた?」

少女の言葉の意味に全く理解が出来ない弟は、怪訝な顔をして少女を見た。少女の視線は一点を見つめたまま切なげに揺れている。

少女「もう居ないんだよ、めぐは」

弟「めぐ…その子、めぐって言うんだ」

チリン、と鈴が鳴る。少女はそれに視線を落とすとまた優しく指先で撫でた。

少女「彼がそう呼んでいた。名前を貰ったんだ。……その名と共に、あの子は消えた。幸せそうに彼の手を取って」


403:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/12/13(火) 01:17:08 ID:jB4X9WbM8.

弟はやはり理解する事が出来ず、訝しげな表情のまま首を傾げた。

弟「……死んじゃったの?」

少女「似たようなものかもしれないけれど、違うね。いつか会えると信じているよ、私は」

弟「生きているなら会いに行けばいいのに」

変なの、と眉を寄せる弟に少女は自嘲的な笑みを零した。

少女「……そうだね、君の言う通りだ」


404: ◆b.qRGRPvDc:2011/12/13(火) 01:22:10 ID:jB4X9WbM8.
今回は此処までとさせて頂きます。

寒いし眠いし鼻水垂れるし大変です。おやすみなさい。
405:名無しさん@読者の声:2011/12/13(火) 08:03:54 ID:RmOrKfqhgo
あ〜めぐ〜(;ω;`)
切ないな〜CCC
406: ◆b.qRGRPvDc:2011/12/13(火) 19:28:35 ID:60l9Ui9qZw
>>405
支援ありがとうございます!
めぐ達の名前を少し出してみました。切ないと感じてもらえたなら嬉しいです!
本編では「友達でも何でもない」と言い切っていた少女は男と出会い、そして一人になり、心境の変化が表れました。その変化の表れを表現する為のめぐのお話でした。回りくどい表現しか出来ない自分の頭の弱さが憎いです…orz

めぐ「支援ありがとー!」
弟「“元”主役が乱入するのってどうなの?」
めぐ「いいの!これ限定だもん!」
弟(なんかこの子面倒くさいニオイがする…)
407:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/12/13(火) 21:23:02 ID:60l9Ui9qZw

そうだ、と思い出したように弟が手を合わせた。

弟「あんた、名前がないんだよね?それともレイコって本名?」

少女はフン、と鼻を鳴らして笑った。まさか、他人の口からまたその名を聞くとは思いもよらなかった。ましてや、本名などと勘違いされては堪らない。

少女「よしとくれよ。あれは彼が勝手にそう呼んでいただけだからね。幽霊の霊子だなんて、センスの欠片もない。…君がそう呼びたいのなら好きにすればいいけれど」


408:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/12/13(火) 21:43:09 ID:08nwJEO3J.

弟「じゃあ、一つ提案なんだけどさ」

そう言った弟は耳まで赤く染まり酷く照れた様子だったが、少女は気にも止めず「何だい」と弟の言葉を待った。

弟「…ぼ、僕が勝手に呼ばせてもらっていいかな。その、名前をつけて」

少女は黙ったまま弟を見つめた。笑顔が消えた少女を見て、まずったかと弟に不安が過った。

少女「………好きにすればいい」


409:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/12/13(火) 22:33:35 ID:08nwJEO3J.

ふい、と視線を流した少女の頬はほんのりと桜色に染まった。風に揺れる髪は艶々と眩しく光る。弟はその眩しさに目を細めながら言った。

弟「…ノエル」

少女「…?それが私の名かい?」

弟が控えめに頭を上下に振った。

弟「“聖夜”って意味なんだって。あんたの髪の色に、ぴったりなんじゃないかって思って…」

少女「ノエル、か……」

少女が与えられた名を存外嬉しそうに口にする。ぽっ、と花が一輪開くように弟の中で何かが弾けた。


410:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/12/13(火) 22:58:09 ID:08nwJEO3J.

少女「…良い名だね」

少女の笑顔と共に一輪、また一輪と花が開く。次第に少女の顔が隠れてしまう程、弟の視界は沢山の花で埋め尽くされた。これ程までに美しい笑顔を弟は知らない。
──ああ、綺麗だな。
幼心に、素直にそう思えた。

少女「もう一度、呼んでくれないかな、…私の名を」

弟「…?ノエル…?」

少女「うん、綺麗な名だ」

気に入った、少女はそう言って漸く手に入れた自分の名を、瞳を閉じて噛み締めた。


411:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/12/13(火) 23:22:30 ID:60l9Ui9qZw

ノエル───その名が本来の意味とは違い“誕生”を語源としている事を幼い少年は知らないのだろう。今の自分とは決して相容れない“生”の意味を持つ名前。第三者が聞けば滑稽だと笑うのかもしれない。
それでも、ノエルの胸にはその名がいとおしく響いた。

弟「じゃあ、ノエル…、ノエルはどうして此処に居たの?“めぐ”との思い出の場所?」

ふと、ノエルの瞳が陰る。黒髪を風に靡かせて景色に視線を移した。


412:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/12/13(火) 23:44:23 ID:60l9Ui9qZw

ノエル「どうしてだろうね、私にも分からない。……ただ、此処に来るとあの子の心に少し触れた気がするんだよ」

ノエルの表情は寂しいと嘆いているようでも、思い出を懐かしんでいるようでもあった。
彼女にこんな顔をさせる“めぐ”とは、どれ程までに魅力的だったのだろうか。ノエルの複雑な色をした横顔を、弟はただぼんやりと見ているしかなかった。

ノエル「…おかしいね」

ぽつりと呟いたノエルを、怪訝な顔で弟が横に見た。弟の様子を気にも止めず、ノエルは独り言のように続けた。


413:削除:あぼーん
削除されますた
414:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/12/14(水) 00:13:41 ID:08nwJEO3J.

ノエル「彼女達が居た日々を恋しく思う。関わるべきではないのに君が会いに来てくれた事を嬉しく思う。矛盾しているね…独りは慣れている筈なのに、こんなにも他人を求めている」

弟「ノエ──…」

弟の声を遮るように、数名の子供の笑い声が聞こえてきた。男の子が三人、追い掛けっこのようなものをしながら、この公園へと続く坂道を駆け上がって来ていた。


415: ◆b.qRGRPvDc:2011/12/14(水) 01:00:03 ID:08nwJEO3J.
中途半端ですが今回は此処までとさせて頂きます。

こんな形で龍さんにお世話になる日が来るとは思いもよらず…お疲れのところ申し訳ない事をしました(´・ω・`)

余談ですがノエルの名前にはめぐのような意味合いはありません。単に、彼女にも名前をあげたかったのです。
弟は名前の由来を聖夜と語っていましたが、本当のところは違います。フランス語での黒猫「chat noir」からとって“ノエル”と名付けました。
長々と語ってしまってすみません。此処まで読んで下さってありがとうございました!
416:名無しさん@読者の声:2011/12/14(水) 23:30:57 ID:pt5bQO/7Eg
ノエルちゃんには幸せになってもらいたいぜ!

支援あげ!
417:名無しさん@読者の声:2011/12/15(木) 20:11:58 ID:K2GrIQlEk6
超支援CCC
418: ◆b.qRGRPvDc:2011/12/15(木) 22:14:43 ID:piwV0qFrog
>>416
支援ありがとうございます!
めぐとは違ってノエルは難しい子です。彼女にとっての幸せとは何なのか、私も日々考えています。
ノエルの幸せを願って下さって、そして何より、彼女の名前を呼んで下さってありがとうございます(´;ω;`)

弟「僕の幸せは?」
女「わ、私の幸せも!」
ノエル「」


>>417
支援超ありがとうございます!
小さいおっさんを胸の内に押さえていられなくなってきました。こういう場合はどうすればいいのでしょうか。やはり自分に素直になって踊り狂うべきでしょうか。

弟「支援超ありがと…」
女「照れながら超とかつけちゃう弟くん超可愛くない?ねぇ、超可愛いよね弟くん超ry」
419:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/12/15(木) 22:57:22 ID:Ztizk4nQHk

ノエル「……お喋りは此処までとしようか」

ノエルが子供達を見下ろしながら弟に言う。

弟「でも、」

ノエル「珍しくよく喋ったお陰で疲れたんだよ。もう休ませてくれないかい」

ノエルはワンピースをはためかせて弟に背を向けた。弟は、自分が何者であるかを知らない。出来る事なら知られたくないとも思う。すぐ傍まで来ている子供達の声がノエルを逸らせた。


420:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/12/15(木) 23:21:13 ID:piwV0qFrog

弟「独りじゃないよ、僕が居るじゃない」

無邪気に笑う弟の声に、ノエルの瞳が大きく開かれた。

弟「友達になろうって言ったでしょ」

忘れたの?と弟が問い掛ける。ノエルは弟に振り返ると、ははっ、と息を洩らして笑った。

ノエル「君はいい子だね。君と居ると、とても暖かい気持ちになれる」

弟「何それ、意味分かんない」


421:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/12/15(木) 23:43:43 ID:piwV0qFrog

可愛らしく頬を染める弟に、ノエルは顔が綻ぶ思いだった。胸の辺りがじんわりと暖かくなっていくのを感じる。もしかすると、めぐもこの胸の温もりを感じていたのだろうか。
少し、めぐの行動を理解出来た気がした。

ノエル「また、私に会いに来てくれるかい…?」

弟「──っ…うん、勿論!」

弟はコクコクと何度も首を上下に振った。赤く染まった頬は夕焼けにも劣らない程に熱を持っていた。


422:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/12/16(金) 00:01:21 ID:piwV0qFrog

去って行く弟と入れ違いに、子供達が公園へと足を踏み入れた。相変わらず追い掛けっこのようなものを続け、誰が鬼かも分からないような状態で駆け回っている。
当然、ノエルの姿には誰も気付いていない。

ザザッ、と砂を擦る音がして男の子が転んだ。その場にむくりと起き上がり、わんわんと大声で泣きだした。

ノエル「…っ」

手を差し出そうとするノエルを横切って、子供達が駆け寄る。声を掛けながら男の子を宥めているようだった。


423:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/12/16(金) 00:28:17 ID:piwV0qFrog

擦り剥けた膝が痛いのか、男の子は大粒の涙を零し続けた。パタパタと地面に落ちる涙が砂の上で細かく弾ける。
ノエルは息を呑んでその雫を見つめていた。

何日も前に送り届けた老婆の家族。それらの泣き声が男の子のものと交ざって、ノエルの脳裏で谺する。その所為なのかもしれない。
───あの子もこんな風に泣くのだろうか。
ふと、そんな考えがノエルの心を揺さ振った。

手を繋いで去って行く子供達の影がノエルから遠ざかって行く。何処からか夕焼け小焼けのメロディが流れて、男の子の泣き声を呑み込んだ。
薄らと顔を見せはじめた山吹色の丸い光だけが、ノエルの顔を優しく照らしていた。


424: ◆b.qRGRPvDc:2011/12/16(金) 00:35:33 ID:Ztizk4nQHk
今回は此処までとさせて頂きます。

構成を練り直そうかと思い一日中考えていましたが、頭が破裂した(気がした)だけで一日が終わりました。

読んで下さった皆さんに最大級のありがとうを!おやすみなさい。
425:名無しさん@読者の声:2011/12/16(金) 12:59:23 ID:3EPWydNmto
ノエル…(´・ω・`)

せつないのぅ…(´;ω;`)

頑張れ支援
426: ◆b.qRGRPvDc:2011/12/17(土) 00:23:30 ID:cpVFSsODrA
>>425
支援ありがとうございます!
切ないと感じて頂けたのならとても嬉しいです。そして、ノエルの名を呼んで下さった事が本当に嬉しい…!
構成を練り直すとは言ったものの、やはりラストは決まっているので突っ走ります。頑張ります、ありがとうございます(`・ω・´)

女「支援ありがとう、泣かないで〜」つ□ ティッシュ
ノエル「……ありがとう、425さん」つ□ ハンカチーフ
427:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/12/17(土) 00:26:57 ID:cpVFSsODrA

その日から、二人は度々公園で会うようになった。ノエルはいつも、弟の暮らす街の景色を展望台から眺めて待っていた。
弟の姿を見付けると展望台から小さく手を振るノエル。揺れる黒髪を遠目で確認する度に、坂道を駆け上がる弟の足も早まった。

ノエルはあまり語らない。弟が何かを訊ねても曖昧に受け流す事が殆どだった。それでも弟は構わなかった。口数が少なくとも、彼女の流れる黒髪と、語り掛けてくるような瞳を見るだけで心が落ち着かなくなる。
弟にとって、ノエルと過ごす時間は特別楽しいものだった。


428:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/12/17(土) 00:58:19 ID:5TAj.DeLPQ

だからこそ、時間が過ぎるのが早く感じた。何処からか流れるメロディが弟に帰宅を促し、二人を簡単に引き離してしまう。

弟「このまま時間が止まっちゃえばいいのにね」

すっかりオレンジ色に染まった太陽を見ながら、弟が頬杖を突いてぼやいた。
そうすれば、姉を失うかもしれない心配も不安も必要ないし、ノエルともずっとこうして居られるのに、と。

ぷくっ、と膨れる弟の柔らかな頬を見ながら、ノエルは微笑んだ。


429:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/12/17(土) 01:18:26 ID:5TAj.DeLPQ

ノエル「それはいけないよ。無理な話だ」

弟「分かってるよ、そんな事…」

でも、と付け足して、弟の顔がノエルに真っ直ぐ向けられた。

弟「ノエルはそう思ってくれないの?」

弟の問い掛けに、ノエルの唇は動かない。ノエルは胸の内で何度も首を縦に振り、思っているよ、と繰り返した。
不安げな表情で自分を伺う弟に、答える代わりに微笑んでみせる。弟はその答えに納得していないようだった。


430:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/12/17(土) 01:41:06 ID:cpVFSsODrA

友達になろうと声を掛けたのは弟の方だった。ノエルは何も答えなかったが、何度も顔を合わせる内にいつもの仏頂面は随分と和らいだ。今のように笑うようにもなった。それは、自分を友達だと認めてくれた事であり、特別な存在だという事なのだと思っていたのだ。

ずっと一緒に居られればいい。きっと、ノエルも同じ気持ちでいてくれていると思っていた。

ノエル「……何だい、情けない顔だね」

弟「別に。元からこんな顔だよ」


431: ◆b.qRGRPvDc:2011/12/17(土) 01:43:32 ID:5TAj.DeLPQ
中途半端ですが、今回は此処までとさせて頂きます。

読んで下さった皆さんに、今日も最大級のありがとうを!おやすみなさい。
432:名無しさん@読者の声:2011/12/17(土) 02:33:21 ID:s9b2qli3Ck
もともとこれってリクエストなんだよな
なんかもう素晴らしいわ
ノエルも弟も女も1も幸せになればいい

CCCCC
433:名無しさん@読者の声:2011/12/18(日) 07:52:56 ID:h/ClQokcJU
更新まだかな(^ω^)
支援age
434: ◆b.qRGRPvDc:2011/12/18(日) 18:18:57 ID:NJlVAieoXM
>>432
支援ありがとうございます!
わー、そんなに褒めてもらえると泣いちゃいそう。リクエスト、と言っても>>282でも言った通り、多少は頭にあった話でした。それを形にする機会を頂けたのは私にとってとても嬉しい事で、そんなに褒めて頂けるような事ではないと思っています。とはいえ、嬉しいものは嬉しい(*´・ω・`*)

432さんが望む結果になるかは分かりませんが、番外編も私なりのハッピーエンドで終わらせたいと思っています。頑張ります!

男「あの…俺の幸せは…」ズウゥゥン
母「あら、お母さんの幸せも願ってくれないのかしら…」ズウゥゥン
弟「暗っ!」


>>433
支援ありがとうございます!
更新速度の遅いクソ野郎で本当にすみません。今日も投下出来るかどうか……orz

ノエル「1が駄目な子で本当にすまないね」
女「で、でも、精一杯頑張るから待っててあげてほしいです!」
435:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/12/19(月) 21:52:52 ID:1JnQnU5uNo

口を尖らせた弟がそっぽを向く。夕日に照らされた頬がまた、ぷくっ、と愛らしく膨らんだ。

ノエル「君の時間は、君のものだ。今も、この先の未来も。私には、時間を止めてまで君を縛る事は出来ないよ」

分かるだろう?、とノエルの表情が切なさに歪む。やはり弟は納得がいかず、眉を寄せた。

弟「…僕がそれを望んでいるならいいんじゃないの」

ノエル「そんな事をしたら、君の家族や友達に怒られてしまうよ」


436:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/12/19(月) 22:23:49 ID:1JnQnU5uNo

弟「それはノエルも同じじゃないか」

弟の、無垢な言葉はノエルの胸を抉った。悲しみに淀んだ瞳を伏せて、小さく笑ってみせる事が精一杯だった。

つむじの辺りがじんわりと熱を帯びる。弟のほっそりとした少年の手も、触れればきっと暖かいのだろう。
──触れたい。帰したくない。時間を止めてでも、共に在る事が出来るのなら。

胸の内を吐き出す事が出来れば、ノエルはどれ程楽になれただろうか。それを許さない現実が彼女に追い討ちを掛ける。自分は、こんなにも孤独な存在なのだと。


437:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/12/19(月) 22:59:00 ID:.tkugWG5FI

ノエル「……やっぱり、関わるべきではなかったんだろうね」

弟「なんでそんな事言うんだよ…」

こんな筈ではなかった。ただ少し、ほんの少しだけ、弟と同じ時間を過ごしたいと思っていただけだったのに。
それが、こんなに自分を見失ってしまうとは、ノエル自身も思いもよらなかった。

ノエル「君の大切な時間を奪ってしまった。お姉さんも見舞ってやらなければいけないのに、悪い事をしたね」


438:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/12/19(月) 23:26:35 ID:.tkugWG5FI

弟「そんな事ない!姉ちゃんも調子が良い日が続いてるし、お見舞いなら毎日行ってる。僕が此処に来るのは、ノエルといると楽しいからだよ?」

ノエル「でも、私が……」

弟「ノエルは何も悪くない。そんな風に思わなくていいんだからね」

ノエルがあまりにも悲しそうに瞳を揺らすので、弟は慌てながらそう言った。咄嗟に口をついて出た言葉だったが、それが弟の素直な気持ちだった。


439:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/12/19(月) 23:51:16 ID:1JnQnU5uNo

ノエル「……そうかい。だけど、母親との時間、友達との時間、お姉さんとの時間。君が大切だと感じるものとの時間は、もっと大切にした方がいい」

弟「…うん、分かった」

弟は頭を捻りながら、訝しげな顔で頷いた。

恐らく、ノエルの言葉の意図を弟は理解出来てはいないのだろう。それでもノエルは満足気に唇に弧を描き、うん、と頷いた。


440:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/12/20(火) 00:09:02 ID:.tkugWG5FI

ノエル「そう、いい子だね」

弟「ノエルって時々、おばさん臭い言い方するよね」

ノエル「君こそ。子供のくせに可愛げのない物言いをする」

弟「よく言われる」

少しの間、互いに無言で見つめあって、ぷっ、と吹き出す。どちらからでもなく、クスクスと笑いあった。

ノエル「君はとてもいい子だ。私が保証してあげる」

ノエルの上からの物言いに、腹を立てていた頃が懐かしい。頬を紅潮させた弟は、言い様のない恥ずかしさと照れ臭さで胸がいっぱいになっていた。


441:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/12/20(火) 00:31:54 ID:1JnQnU5uNo

ノエル「ほら、良い子は家に帰る時間だよ」

惜しむように沈む太陽も、気が付けばその姿を山の麓へと潜らせていた。いつものメロディが何処からか響き、別れの時間だと合図する。

弟「あのさ、ノエルは病院には行かないの?」

申し訳なさそうに目を泳がせながら、弟はノエルに訊いた。
理由も聞かずに酷く責め立てて以来、ノエルを病院で見掛けていない事をずっと気に掛けていた。もしかすると自分の所為で来づらくなってしまったのでは、と考えるだけで気が気でなかった。


442:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/12/20(火) 00:51:19 ID:.tkugWG5FI

ノエル「……行くよ。近い内に、必ず」

ノエルのその言葉に、ほっと胸を撫で下ろした。

弟「そっか。じゃあ、病院でもまた会えるね」

嬉々として声を上げる弟の笑顔が眩しい。ノエルは風に揺れる髪を押さえる素振りで、気付かれないよう八の字に下がる眉を隠した。

ノエル「さあ、もう帰りな。あまり遅くなっては母親が心配するでしょう」

弟「うん……じゃあ、またね」


443:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/12/20(火) 01:14:37 ID:.tkugWG5FI

弟は名残惜しそうに何度も振り返り、手を振りながら坂道を駆け降りた。展望台から見送るノエルの影が、ぼんやりと霞んで見える。
背後から照らす丸い月の光はノエルの髪をキラキラと光らせ、その表情を隠した。

弟「またね」

振り返る弟の声に、チリン、と鈴の音が返ってくる。ノエルの影が小さく手を振るのを確認すると、満足気に前を向き、坂道を駆け降りて家路を急いだ。
二人で聴く「夕焼け小焼け」は、これが最後となる事も知らずに。


───その日から、ノエルが展望台で弟を待つ事は、なかった。


444: ◆b.qRGRPvDc:2011/12/20(火) 01:23:42 ID:.tkugWG5FI
今回は此処までとさせて頂きます。

やっと終わりが見えてきました!
番外編のくせに長々と続けやがってカス野郎!とお思いの方も居られるかもしれませんが、申し訳ありません。もう暫くお付き合い下さい(´・ω・`)

今回も読んで下さった方や支援して下さった方へ、最大級のありがとうを!おやすみなさい。
445:名無しさん@読者の声:2011/12/20(火) 01:30:21 ID:48L8DhuMwU
せつない……

弟とノエルに幸あれ!
446: ◆b.qRGRPvDc:2011/12/20(火) 20:01:21 ID:oifCLjfsx6
>>445
おお…ありがとうございます…(´;ω;`)
皆さんがノエルと呼んで下さる度に、私の中のおっさんが喜びの雄叫びを上げています…!

445さんの望む形になるかは分かりませんが、二人の今後を見守って頂けると幸いです。ありがとうございます!頑張ります!

弟「ありがとう、445さん。ノエル見なかった?」
447:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/12/20(火) 21:44:30 ID:N1Rzc090pk

弟は一人、展望台から街の景色を眺めていた。星のように輝いて見えたネオンの明滅が、今はただの単調な電球の灯りでしかない。夜空に色を放つ星の瞬きですら、画用紙に飛び散らせただけの絵の具のように思えた。

ノエルが何処にもいない。ただそれだけで、弟が見る世界はガラリと姿を変えてしまった。

弟「ノエル、ノエル……何処に居るの」

弟はノエルを捜し求めた。木の影から遊具の下、公園の隅々まで。ばったり再会した路地の角、初めて会った病院の木──思い付く限りの場所を見て回った。


448:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/12/20(火) 22:10:44 ID:oifCLjfsx6

道行く人に尋ねてもみたが、姿の見えないノエルの行き先を、一体誰が教えてくれるというのだろう。皆揃って首を横に振るばかりで、ノエルの行き先どころかその足取りを辿る事すら出来ないでいた。

弟「返事をしてよ、ノエル…」

ノエルの居ない世界はこんなにも寂しい。まるで、モノクロのフィルターが掛かっているかのように色がない。
弟の脚は、ノエルを求めて駆け回った。また会いたいと、その一心で───。


449:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/12/20(火) 22:34:34 ID:N1Rzc090pk

しかし、それから幾日が経ってもノエルの姿は何処にもなかった。
鈴の音も聞こえない。街中でスカートをはためかせる女の子を見掛ける度に、胸が苦しくなる。

弟「…もう、会えないのかな」

教室の窓際の席で、弟は深い溜息を吐いた。学校の中に居ては探しに行く事も出来ない。逸る気持ちがそわそわと落ち着かないでいた。

友「弟、一緒に帰ろうぜ!」

クラスメイトが弟の肩に触れる。はっとして振り返る筈の弟は窓の外へ視線を送ったまま、溜息混じりに頷いた。


450:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/12/20(火) 23:40:48 ID:dQdSMz.X2A

友「いきなりテストとか最悪だよな。酸素って空気の何倍なんだっけ?どうやって集めるんだっけ?弟、出来た?」

クラスメイトが口を尖らせてぼやいた。どうやら理科の抜き打ちテストに、手応えを感じられなかったらしい。

弟「酸素は空気の11倍。水上置換法だよ。僕もあんまり自信ないけど」

またまたぁ、とクラスメイトが弟の肩を突く。体に力の入っていない弟は、ふらふらと足を縺れさせた。


451:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/12/21(水) 00:05:30 ID:SRCGK.4MQ6

友「…どうしたんだよ、最近なんかおかしいぞ?」

心配そうに伺うクラスメイトに、弟は何でもない、と首を振った。

話したところでどうなるというのか。何処の誰かも分からない女の子に名前を付けて二人で会っていたなんて、笑い話にされるに決まっている。ましてや、会いたくて堪らないなどと言える筈がない。

弟はやはり首を振り、何でもない、と笑うのだった。


452:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/12/21(水) 00:29:18 ID:dQdSMz.X2A

ふいに鈴の音が耳を突き、弟の心を掻き乱した。クラスメイトの御守りの鈴が揺れている。これがなければ、ノエルともこんな風にはなれなかったかもしれない。
──ああ、ノエルは今頃、何処に居るのだろうか。
そう考えるだけで、弟は胸が締め付けられる思いだった。

友「…あれ?何かあったのかな?」

ふと、クラスメイトが訝しげに前を指差した。路地の隅に何かの塊のようなものが転がり、通行人が避けるようにして歩いている。何人かはその場に佇んでボソボソと何かを言っていた。


453:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/12/21(水) 01:00:44 ID:dQdSMz.X2A

友「弟、見に行こう!」

弟「止めときなよ。絶対ろくなもんじゃないって…」

好奇心旺盛なクラスメイトは、いまいち乗り気でない弟の手をグイグイ引いて先へ進んだ。

友「うわっ…」

苦虫を噛み潰したような顔でクラスメイトが後退った。間隙を縫うようにして弟が覗き込むと、突然視界が真っ暗になった。クラスメイトが目隠しをしたのだ。
視界を覆い隠すその手を解こうとすると、慌てた口調でクラスメイトが言った。


454:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/12/21(水) 01:27:11 ID:SRCGK.4MQ6

友「猫!猫!グロいから絶対見ない方がいい!」

うぇ、とクラスメイトが唸る。その場に佇んでいたであろう数名の哀れむような声も、同時に弟の耳に聞こえてきた。

「可哀想に、車にでも跳ねられたんだろう」
「保健所に連絡してあげようか」

路地の隅に転がっていたのは、猫の死骸だったのだろう。やはり、ろくなものではなかったのだ。
弟は、なるべく視界に入らないようにそろそろとその場を通り過ぎた。


455:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/12/21(水) 01:53:19 ID:dQdSMz.X2A

──チリン、

何処か懐かしく感じる鈴の音に、弟の足は止まった。幾度となく耳にし、焦がれていた音色は、今度ばかりはクラスメイトの御守りの鈴ではない。
がばっ、と振り返り、踵を返して来た道を戻った。クラスメイトが慌てて弟の名を呼んだが、弟の足は止まらない。

弟「…っう、」

人集りの間隙から見えたのは茶色の縞模様をした、いつぞやの野良猫だった。車にでも跳ねられたのだろう、その亡骸は血に塗れて横たえている。


456:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/12/21(水) 02:15:02 ID:SRCGK.4MQ6

弟「あ…」

弟の目が大きく見開かれた。見覚えのある猫の亡骸を目の当たりにしたからではない。その亡骸の前で揺れる黒いワンピースが、間違いなくノエルだと確信したからだった。

弟「ノエ───」

友「もー…見ない方がいいって言ったのに……って、オイ!」

踏み出された弟の一歩を、後を追ってきたクラスメイトの声が遮った。肩に置かれたクラスメイトの手をするりと抜けて、弟はノエルの元へと足を踏み出した。


457:名無しさん@読者の声:2011/12/23(金) 02:27:16 ID:xpJaCVvKg2
忙しいのかな?
支援あげ!
458: ◆b.qRGRPvDc:2011/12/24(土) 23:23:47 ID:JNYBj0Z0wc
>>457
支援ありがとうございます!
更新が滞ってしまってすみません。私生活が忙しく、なかなか来られませんでした…orz

女「本当にごめんなさい!支援ありがとう〜!」
弟「ちゃんと更新するように僕がお説教しとくね」
ノエル「私も叱っておくよ」
459:名無しさん@読者の声:2011/12/25(日) 08:35:44 ID:px..1hXM1Q
リアル優先でいいんだからね!
いや、待てよクリスマス…リア充か?

っC
っ愛
460: ◆b.qRGRPvDc:2011/12/25(日) 19:21:49 ID:7ZF8K9v94o
>>459
支援ありがとうございます!そしてお優しい心遣い、痛み入ります(´;ω;`)

上記で言い訳をした忙しさとクリスマスリア充は、全く関係ありません。しかし、忙しいという事はリアルが充実しているという事。即ち、私はリア充という事でいいんでしょうか(`・ω・´)キリッ?

弟「支援ありがとう、メリークリスマス」
女「サンタさんは来なかったけど、459さんの愛をプレゼントとして貰っちゃいます!」
男「」ガーン
461:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/12/25(日) 21:01:19 ID:JiCQdQcUTY

疎らになっていく人の影から、ちらちらとノエルの姿が見え隠れする。すぐにでもノエルの傍に駆け寄って声を掛けたい、そう思っていた筈の弟の足は止まってしまっていた。

「電話したら来てくれるって」
「そう、よかったわ。いつまでもこんなものがあったらおっかないものね…」

ノエルは猫の前に腰を下ろし、何かを語り掛けていた。血塗れの猫に臆する事なく、少女が近寄り声を掛ける。弟ですら思わず足を止めたこの状況を、周りの大人達は気にも留めていない。
こんなにも奇妙な状況があるのだろうか。弟は、言いようのない複雑な思いでその様子を伺った。


462:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/12/25(日) 21:34:06 ID:JiCQdQcUTY

ノエルの白い手が横たわる猫の亡骸に、そっと触れる。労るように猫の体躯を滑るその手には、まだ乾ききらない血の赤は一滴も付いていない。

弟(ノエル…?一体、何を……)

ノエルの異常な行動に弟は息を呑んだ。気味が悪いとさえ思えるその姿は、寧ろ神々しく弟の目に映った。

ノエル「お迎えだよ。さあ、行こうか」

ぼそぼそと語り掛ける中、その言葉だけがはっきりと弟の耳を突いた。身を乗り出すように覗き込んだ弟は、驚きに目を見開いた。


463:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/12/25(日) 21:55:12 ID:JiCQdQcUTY

ノエルが手を滑らせた場所から、黄金色の光の粒が溢れた。その光は猫の亡骸を包み込み、サラサラと流れるように消えてゆく。
キラキラと美しい輝きに、弟も目を眩ませた。

弟「ノエル……」

前に立っていた女性が一人、弟の声に気付いて怪訝な顔で振り返った。こんなにもまばゆい明滅に、目を細める事もしていない。
弟は胸がざわめくのを感じた。

──何だか、酷く嫌な予感がする。


464:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/12/25(日) 22:17:04 ID:JiCQdQcUTY

弟「ノエル、ノエル…っ」

友「本当にどうしたんだよ。何かあんの?」

ふらふらと、覚束ない足取りで人集りに近付いて行く弟を制止したのは、やはりクラスメイトだった。振り返った弟は、今にも泣き出しそうな顔で瞳を揺らしている。

弟「友にはあれが見えないの?」

友「あれ?…って、どれ?猫の死体なら、もう…」

弟「違うよ!!」


465:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/12/25(日) 22:41:30 ID:JiCQdQcUTY

弟が声を荒げると、周りの視線が一斉に集中した。じわりと嫌な汗が手の平に滲むのを感じる。
振り返る大人達と、クラスメイトの表情を見れば分かる。弟の予感は的中した。

誰にも、あの光は見えていない。

友「なあ、どうしちゃったんだよー…怖い事言うなよなー」

弟「…なんで!其処に居るじゃないか!猫が光って…」


466:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/12/25(日) 22:59:20 ID:JiCQdQcUTY

しん、と静まり返る路地に、ノエルの姿は何処にもない。先程と何ら変わりのない猫の亡骸が其処にはあった。濡れた血はすっかり固まり、茶色く変化している。

弟「あ、れ…?ノエル…ノエルは、」

きょろきょろと辺りを見回す弟の肩に、ポン、とクラスメイトの手が乗せられた。小さく溜め息を吐きながら苦笑するその表情は、呆れたと言っているようにも見える。

友「何もないってば。本当に疲れてんじゃない?」


467:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/12/25(日) 23:27:31 ID:JiCQdQcUTY

そんな筈はない。確かにこの目で見たのだ。あんなに焦がれていた彼女の姿を、その鈴の音を、間違える筈がない。
馬鹿にするように笑うクラスメイトに、弟は下唇を噛んだ。

友「──じゃあ、またな!」

弟「うん、またね」

クラスメイトと別れてからも、弟はモヤモヤと煮え切らないでいた。
会いたいと願う気持ちが、ノエルの幻覚を見させたとでも言うのだろうか。そうだとするのならば、クラスメイトが言うように、何処かおかしいのかもしれない。


468:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/12/25(日) 23:47:09 ID:7ZF8K9v94o

自宅のドアがいつもよりも重く感じる。キィ、と耳障りな音を立てながらドアが開かれた。

弟「……ただいま」

薄暗い家の中を伺いながら、リビングのドアを開ける。玄関の鍵は開いていたのに、母親の姿は何処にもない。
テーブルの上には、中身が出されていない状態のままのレジ袋が無造作に置かれていた。

弟「おかしいな、今日は休みだって言ってたのに…」

ぼんやりとリビングを見渡すと、電話機の留守番電話のボタンが忙しなく点滅しているのが見えた。
鞄をソファの上に下ろし、何の躊躇いもなくそのボタンに人差し指を添えて、ピッ、と押した。


469: ◆b.qRGRPvDc:2011/12/25(日) 23:54:00 ID:7ZF8K9v94o
今回は此処までとさせて頂きます。

今日はクリスマスですね。皆さんの所にはサンタさんは来てくれたでしょうか?
私の所には来てくれませんでした。ちょうど弟くんの歳の時に、サンタさんはもう来ないのだと悟った私です。ちょっと遅いのでしょうか(´・ω・`)

それでは、おやすみなさい。
470:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/12/26(月) 23:06:22 ID:wVQmzr2KFI

電話機から流れてくる声に、その内容に、弟は戦慄した。母親が慌てふためいた様子で、すぐに病院に来いと促している。

母親『お姉ちゃんの容態が急変したって…!ああ、どうしよう…とにかく早く!早くね!神様…!』

どくん、どくん、と心臓が激しく脈打つ。
──落ち着け、落ち着け、大丈夫だ。そう自分に言い聞かせるも、震える足は止まらない。

『消去するには、3を──…』

感情の籠もらない無機質な音声が電話機から流れている。最後まで聞く事もせず、弟は家を飛び出した。


471:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/12/26(月) 23:25:19 ID:wVQmzr2KFI

────‐‥


弟「…っ姉ちゃんは!?」

男「弟くん……。今は、何とか持ち堪えて…」

肩で息をしながら、弟が病室に駆け込んだ。連絡を受けて来たのであろう男が、力なくベッドに頭を伏せて言葉を詰まらせる。

弟「……母さんは?」

男「先生に呼ばれて、話をしに行ったよ」

そう、と小さく返事を返して男の隣に腰掛ける。男は小刻みに肩を震わせて姉の手を握っていた。
弟は何の感情も沸いてこない、不思議な感覚に捉われていた。いやに冷静でいられる自分が怖い。


472:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/12/26(月) 23:48:25 ID:suwcKOoNSM

ベッドに横たわる姉は、眠っているだけのように穏やかな顔をしている。いつもの姉だ。その体に無数に絡み付く白いチューブと、口を覆った半透明のマスクさえなければ、いつもの姉だった。
見慣れた部屋に白いベッドと、見慣れない機械に命を繋がれている姉。その妙な違和感が、弟を冷静にさせたのかもしれない。

一定のリズムで心電図が刻む電子音が、病室に響き渡る。横に一直線に流れるラインが音に合わせて上に尖り、姉の心臓は確かに動いているのだとを教えてくれていた。
──生きている。
ふう、と一息、弟はパイプ椅子に背中を預けた。


473:名無しさん@読者の声:2011/12/27(火) 07:51:00 ID:TcjuuEWQvQ
支援だ支援!
お姉ちゃん頑張れ(´;д;`)
474:名無しさん@読者の声:2011/12/28(水) 13:38:47 ID:vYxDVcu0Fo
CCCCC
475: ◆b.qRGRPvDc:2011/12/28(水) 21:55:05 ID:qcDttONIGI
>>473
支援ありがとうございます!
お姉ちゃん、頑張ってます。医療関係は全くの無知なので矛盾が生じるかもしれませんが、生暖かく見守って下さると幸いです。

母「もっと応援してあげて!」ブワッ
男「さあ、皆で!お姉ちゃん頑張れ!お姉ちゃん頑張れ!」ブワッ
弟「温度差激しすぎて風邪引くわ」


>>474
支援ありがとうございます!
もう少しで番外編も終わります。めぐやノエル、番外編で生まれた弟や姉達とも、もうすぐお別れです(´;ω;`)

めぐ「読んでくれてありがとー!」
男(元祖)「俺が居た事も忘れないでね!?お願いしますよ!?」
476:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/12/29(木) 20:21:13 ID:AXHvj7glAs

弟「ねぇ、男さん。前から気になってたけど、あれって何なの?」

弟は、部屋の隅を指差した。布を被せられた四角い形をした何かは、以前姉を見舞った際に慌てて隠していた物だった。

男は伏せていた顔をのろのろと上げると、鼻を啜りながら、ああ、と声を洩らした。

男「絵を描いてたんだよ」

弟「それは分かるけど」

そんな事はどうでもいい、と言わんばかりに弟は眉を寄せた。あれが絵である事は、いくら小学生と言えど理解は出来る。
何故、隠しているのか。弟が問いたいのはそこだった。


477:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/12/29(木) 20:50:41 ID:i20aHeWQRM

男「最近よく夢を見るんだって。いつ描けなくなるようになるか分からないから、自分が感じたものを残しておきたいんだって言ってた」

男の手が弟の頭にポン、と優しく乗る。姉とは違う大きな手の重さが、じわりと目頭を熱くさせた。
ぐっと口を結んで、溢れ出てしまいそうな感情をしまい込んだ。

弟「…無理するからこんな事になるんだよ。馬鹿な姉ちゃん」

ははっ、と男が笑みを零す。

男「弟くんに怒られるって怯えながら描いてたよ」

だからかな。そう言うと、男は笑みを浮かべたまま、布に覆われたキャンバスに視線を流した。


478:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/12/29(木) 21:08:41 ID:i20aHeWQRM

男「恥ずかしいから、って俺もあんまり見せてもらえなかったんだ」

弟「見せてもらったところで、じゃない?姉ちゃんの見る夢なんてきっと、理解不能だと思う」

夢見る乙女な姉の事だ、どうせあの布の向こうには不思議の国が広がっているに違いない。
兎が羽根を生やして飛んでいたり、可愛らしいリボンをあしらった三つ編みのライオン、飴を舐めている牙のない狼──姉の見る夢なんて、そんなものなのだろう。

男も同じような想像をしたのだろうか。二人で目を合わせて、ぷっ、と吹き出した。


479:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/12/29(木) 21:36:40 ID:i20aHeWQRM

母「弟、来たのね」

タイミングを見計らったように、母親が病室に戻った。後ろには、白衣を纏った医師の姿が見える。
折角の和やかな雰囲気がぶち壊しだ。弟は小さく眉を寄せた。

母「弟にはまだ難しくて分からないかもしれないけど…」

母親が小さく会釈をすると、背後の医師がコホン、と偉そうに咳払いをした。視界の隅で男が姿勢を正すのが見える。それに釣られるように、弟の背筋もピンと伸びた。


480:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/12/29(木) 22:01:16 ID:AXHvj7glAs

────‐‥

母「お母さん起きてるから、ちょっと寝てなさい」

弟は、ふるふると左右に首を振った。相変わらず部屋の中には心電図の電子音が鳴り響き、姉の鼓動を伝えている。

母「男くんも」

男「いえ、俺は…」

医師からの説明はどれも難しく、弟には理解の出来ない単語ばかりが並べられていた。先に説明を受けた筈の母親や、隣に座る男の反応で大体の予想は付いたが、未だピンとこないでいる。
それでも何処かざわめく胸が、弟の意識を電子音に集中させた。


481:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/12/29(木) 22:26:19 ID:AXHvj7glAs

医師が語るには、夕方に危篤状態に陥ってから、気の許せない状態だという。心電図が一直線に描くラインが尖る事がなくなった時、恐らく姉は死ぬのだ。画面の隅に記される数字の意味が分からなくとも、それくらいは弟にだって理解が出来る。
類いのドラマのワンシーンで、よくある事だ。そんな場面は何度も見てきた。それが、目の前で起こるかもしれないなど、いまいち現実味を感じられない。

弟「姉ちゃん、早く起きてよ…」

擦れた声が弟の口から洩れる。姉が返事を返す事はなく、代わりに母親の途切れ途切れな鼻息が聞こえてきた。
いつまで夢を見ているつもりなのか。そう問いたくなる程、姉は穏やかな顔で眠っていた。


482:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/12/29(木) 22:56:42 ID:i20aHeWQRM

ピッ、ピッ──心電図が刻む音以外、物音さえも聞こえてこないような深夜、それは突然やってきた。三人の顔にも疲れの様子が見えた頃だった。それまで一定のリズムで音を鳴らしていた心電図が、突然に慌ただしく鳴りだした。

男「女ちゃん、駄目だよ!頑張れ!まだ駄目だ!」

弟「姉ちゃんっ」

枕元のナースコールを母親が慌てて押した。震える手を押さえ、何度もそのボタンを押す。親指が白くなるまで力を籠めて、祈るように握り締めた。

母「先生ぇ…誰か、早くっ!」


483:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/12/29(木) 23:18:24 ID:i20aHeWQRM

間もなくして、医師が数名の看護士を連れて病室に入ってきた。アラームのような警鐘が、ひっきりなしに弟の耳を突く。
ふと、姉が目を開けたかと思えば、大きく息を吸い込んで再びその目を固く閉ざした。

───怖い。
ただ、それだけが弟の脳を支配した。耳を塞いで後退る。この場から逃げ出したい──その願いが通じたのか、看護士が病室から出るようにと、三人を促した。

心電図のラインが真っ直ぐに横に伸び、姉の心停止を告げている。規則的な音は一切途絶え、金切り声のような耳障りな単音を響かせた。


484:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/12/29(木) 23:45:49 ID:i20aHeWQRM

「蘇生措置を行いますので、ご家族の方は病室の外で──」

看護士の声は、心電図から鳴り響く不愉快な音に掻き消された。三人は呆然としたまま病室の外に出され、祈る事だけを強いられた。

母「女!女ちゃん…っ」

男「ああ、ああぁ……」

母親と男は、全身の力が抜けたようにその場に崩れ落ちた。その横で、弟はただぼんやりと、閉じてゆく病室のドアを見つめていた。

慌ただしく声を上げる医師の後ろ姿を最後に、病室のドアは閉められ、弟の目の前は真っ暗になった。


485: ◆b.qRGRPvDc:2011/12/29(木) 23:51:57 ID:i20aHeWQRM
今回は此処までとさせて頂きます。今年中に終わらせられれば、と思っていたのですが、どうやらそれは無理そうです(´・ω・`)

それにしても質問スレでの瞬殺はやられたなー…という、独り言。
しかし、簡単にバレるという事は、私の特徴を覚えて下さっているという事で、それはそれで嬉しかったり(*´∀`*)

読んで下さった方、支援して下さった方、このスレを開いて下さった方に最大級のありがとうを!
486:名無しさん@読者の声:2011/12/30(金) 09:44:22 ID:0wEUMZPqbc
うわああああああ(´;Д;`)
姉ちゃんCCCCC
487:名無しさん@読者の声:2011/12/30(金) 12:27:44 ID:35K7yLKyUg
姉ちゃん…
1さんほんと焦らすの上手いよだいすきぃぃぃ(´;ω;`)つCCCCCCCC
488: ◆b.qRGRPvDc:2012/1/1(日) 00:22:43 ID:fY6mpR/54c
>>486
支援ありがとうございます!
お姉ちゃん、やってしまいました。ちゃんと緊迫感を醸し出せたのか不安でしたが、やってしまいました。

女「呼んだー?」ヒョコ
弟「いやいやいや、出てきちゃ駄目でしょうが」


>>487
支援ありがとうございます!
わー、ありがとうございます私も487さん大好きです(*´・ω・`*)
う、上手く焦らせましたか?2011年最後の更新があんな展開ですみません!

ノエル「沢山Cをありがとう」
弟「だからSSとの温度差…!」



そして、明けましておめでとうございます!昨年は本当にお世話になりました。
ランキングにも入る事が出来、絵スレで描いて頂いたり(全て保存余裕です!)読者スレや他のスレで話題に出して頂いたり、どれも涙がちょちょ切れる思いでした。

このSSを書き始めて二ヶ月以上…まさかこんなにも続ける事が出来るとは思ってもみませんでした。これも、読んで下さる皆さん、支援をして下さる皆さんのお陰です(*`・ω・´*)

このスレを開いて下さった皆さんに、最大級のありがとうを!今年も宜しくお願いします!
489:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2012/1/2(月) 00:29:34 ID:4bhoiYs27A

弟「あれ、停電……?」

この暗闇は、精神的なものではない。弟の目の前が、本当に真っ暗になったのだ。辺りを見渡しても、自分が何処に居るのかさえ分からないこの状況は、以前に見た夢とよく似ている。

弟「また夢…?まさか、」

ぎゅっ、と力を籠めてつねった手の甲がピリリと痛む。最近の夢は、痛覚まで再現出来るのか。弟は手の甲を擦りながら、馬鹿げた自分の考えに苦笑した。


490:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2012/1/2(月) 10:48:35 ID:lEgxtJc4yk

弟「男さん、何処?…母さん?」

しん、と静まり返る空間に、二人の気配は感じない。手探りで探してみても空を切るばかりで、何も触れる事はなかった。
眠った覚えは、ない。母親と男と三人で、確かに病室の外へ出た筈だった。しかし、あまりにも酷似しているこの状況に、口に出さずにはいられなかった。

弟「……姉、ちゃん…居るの?」

弟の問い掛けに、姉の返事は返ってこない。
何を考えているのだろうか。姉は病室のベッドの上で、生死の境を彷徨っているというのに。
弟は肩を落とすと、緊張で強張る顔を両手で覆った。


491:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2012/1/2(月) 18:54:59 ID:CO20nL.cqw

チリン、チリン、と弾くような鈴の音が、突如として弟の耳を突いた。
背後に何かの気配を感じる。弟の喉が、ゴクリと波打った。これ程までに心地好い音を、聞き間違える筈がない。夢の中で聞いた鈴の音は、やはり彼女がいつも鳴らしていた音と同じものだった。

震える口元に手を添え、暖めるような素振りで深く息を吐く。
どうか、これが夢でありますように。そう心の中で祈りながら、彼女の名を呼んだ。

弟「───ノエル…?」


492:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2012/1/2(月) 19:29:46 ID:Iihr5bPMRg

恐る恐る弟が振り返った先に居たのは、一匹の黒猫だった。暗闇の中、その闇に溶けるような艶めかしく輝く黒。その輝きは心を擽られた、あの黒髪に何処か似ている。

弟「この猫、前に…」

弟は、その猫を知っていた。ノエルを追い求め、駆け回っていた時に出会った黒猫だった。
黒猫の飴色の瞳が弟を捕える。何かを訴えるように、うるうると瞳を揺らして。

弟「…っ、何…?」

その刹那、眩しい光が目の奥に集まり、弟は思わず手を翳した。


493:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2012/1/2(月) 20:01:02 ID:Iihr5bPMRg

まばゆい光が弟の視界を霞ませる。キラキラと眩しいその光に、弟は薄らと目を開ける事がやっとだった。
黒猫が光に包まれ、みるみる姿を変えてゆく。やがて、それは人の形を成し、その姿を現した。

弟「…っ…なん、で……」

まだ朧気な視界の中、サラサラと揺れる黒髪は、月明かりに照らされたように輝いて見える。段々とはっきりとしてくる視界が、目の前の人物の輪郭を明瞭とさせた。

弟「ノエル……」

どうか、これが夢でありますように。やはり、弟はそう願わずにはいられなかった。


494: ◆b.qRGRPvDc:2012/1/2(月) 20:02:54 ID:Iihr5bPMRg
短いですが、今回は此処までとさせて頂きます。

親戚の集まりで従妹が離してくれません…(´・ω・`)
495:名無しさん@読者の声:2012/1/4(水) 16:51:13 ID:UjCotXF3.6
1さんあけましておめでとう!このSSのキャラ全員に私の愛を!!

っCCCCC
496: ◆b.qRGRPvDc:2012/1/4(水) 21:08:56 ID:l.vCnJsXL6
>>495
明けましておめでとうございます。今年初の支援、ありがとうございます!嬉しいです(*´・ω・`*)

もう少しで終わってしまいますが、登場人物共々今年も宜しくお願い致します!

めぐ「あけめでー!」

元祖男「それを言うならあけおめです」

ノエル「495さんが全員にと言ってくれたからね」

弟「まさかの全員集合だよ」

母「私もいいのかしら///」

女「いいのいいの!全員なんだから!」

男「意外と少ないもんだね」

めぐ「じゃあ皆でいくよー!せーのっ」

全員「今年もよろしくー!」

⊃愛⊂ ギュッ
497:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2012/1/4(水) 21:22:18 ID:DJX01rDP6M

ノエル「…やあ、久しぶりだね」

弟の前に立っているのは、紛れもなくノエルだった。艶々と眩しく光る黒髪に、語り掛けるような黒目がちな瞳。そのどれもが弟にはいとおしく、とても苦しい。

ノエル「いつかこんな日が来るんじゃないかと、ずっと思っていたよ」

ノエルの瞳が、ゆらゆらと揺れる。

ノエル「もう、君とはお別れだ」


498:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2012/1/4(水) 21:53:04 ID:6umHgByXfw

弟「これは夢、なんだよね?僕はまた夢を見てるんだよね?」

顔を歪めながら、弟がノエルに問う。──そうだと言ってほしい。そうでなければ彼女は一体、何者だというのだろう。

僅かに唇を震わせたノエルから、表情が消える。弟の願いも虚しく、その首は左右にふるふると揺れた。

ノエル「……夢じゃないよ。悪いけど、もう時間がないんだ」


499:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2012/1/4(水) 22:47:23 ID:IZ/YJxW.FM

弟「ノエルは、猫なの?」

弟は、おずおずとノエルを見ながら言った。足元から髪の先まで、先程までの黒猫の面影は、今のノエルには感じられない。

ぷっ、とノエルが笑った。きょとんと首を傾げる弟が、やけに幼く見える。

ノエル「緊迫感というものを知らないのかい、君は」

恥ずかしさから、弟が顔を真っ赤にして取り乱した。

弟「だ、だって!だって、目の前で、ノエルが…」


500:祝!500レス! ◆b.qRGRPvDc:2012/1/4(水) 23:19:07 ID:jsJ4QOAmCk

愛らしく染まる頬に、ノエルは顔が綻ぶ思いがした。じわりと暖かくなる、胸の辺りが擽ったい。
久しぶりに感じる温もりに、ノエルの胸は締め付けられる。

ノエル「そうだね…“あれ”も私だよ」

だけど。そう言って、ノエルの表情が陰った。伏せられた睫毛が寂しげに揺れる。

ノエル「私は……存在してはいけないものだから」


501:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2012/1/4(水) 23:55:31 ID:Hwuqpvf2x2

消え入りそうな声で紡いだ言葉は、弟の心臓を激しく脈打たせた。

弟「どういう、意味…」

ノエル「前に、めぐの事を一度話したね。彼女も私と同じ、存在してはいけないものだったんだよ」

弟「待ってよ。めぐとはまた会えるって、ノエル言ってたじゃないか。意味が分からないよ。だって、ノエルは存在してる」

弟の揺れる瞳の中に、ノエルは自身の姿を見た。丸い瞳の中に、確かに捕えられている。
まだあどけなさの残る弟の顔が、柔らかく、しかし切なげに微笑んだ。


502:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2012/1/5(木) 00:18:32 ID:Iq5y0MHOi2

弟「ほら、存在してるよ」

ノエルの手を、弟の両手が優しく包み込んだ。初めて触れ合う肌の感触に、ノエルの胸の底から、じわりじわりと何かが込み上げてくる。

ノエル「本当に君は、あの子と同じような事を言う」

自分というものが何かを知れば、弟は何と思うのだろうか。ノエルの手が弟の温もりから、するりと離れる。弟の目を見る事も出来ない。

ノエル「君の大切なものを、奪ってしまう私を許しておくれ……」


503: ◆b.qRGRPvDc:2012/1/5(木) 00:27:27 ID:WXjkvrjhD.
今回は此処までとさせて頂きます。

以前、最後の締め方を悩んでいると雑談スレで話していたのを見て下さった方、或いは覚えて下さっている方はおられるでしょうか?
実は、展開は決まっているのですが、物語の締め方が頭に二つありまして。まだ悩んでいる私です。

そこで、雑談スレでもあったように皆さんのお力をお借りしようかと…(´・ω・`)
>>505(ゴーゴー!)の安価を踏んだ方に、「1,最初に思い付いた締め方」か、「2,後に思い付いた締め方」かを決めて頂きたいと思います。

他人任せにすんな!という喝を入れて下さっても構いません。宜しくお願い致します…!
504:名無しさん@読者の声:2012/1/5(木) 07:54:48 ID:R/pXqWMDcs
ゴーゴワロタw
ハッピーエンドで頼む!

超支援そして加速(`・ω・´)
505:名無しさん@読者の声:2012/1/5(木) 21:04:25 ID:2sJHKm0DGg
ハッピーエンド願い高らかと2を表明する
506:名無しさん@読者の声:2012/1/6(金) 07:50:50 ID:dQzi.35icA
ハッピーエンド!ハッピーエンド!
ノエルは幸せにならないと駄目なんだからね(´;Д;)っCCC
507: ◆b.qRGRPvDc:2012/1/6(金) 18:30:44 ID:jsJ4QOAmCk
>>504
支援と加速、ありがとうございます!しかし掲示板に入れない時間が何時間も続くという…(´ω`;)
優柔不断な私のお尻を叩いて頂く、というのも含めて無理矢理な語呂合わせで行きました!笑って頂けて光栄です(笑)


>>505
ありがとうございます!ありがとうございます!正直、誰も安価踏んでくれなかったらどうしようかと不安になったりしていたので、凄く嬉しいです(*´・ω・`*)
私としてはハッピーエンドのつもりなのですが、505さんの納得のいく終わらせ方が出来るかどうか…高らかに2でゴーゴー!


>>506
支援ありがとうございます!
ノエルの幸せを願って頂ける事が、既に幸せだと思っています。幸せな奴です、ノエルめ(`・ω・´)
上でも言った通り、ハッピーエンドのつもりです。が、皆さんにとってもハッピーエンドだと思って頂けるといいな…(*´・ω・`*)
508:名無しさん@読者の声:2012/1/6(金) 18:53:26 ID:xhhM9QiWvs
支援!
弟もお姉ちゃんも幸せになってほしい!
509: ◆b.qRGRPvDc:2012/1/7(土) 15:42:46 ID:GLdkpQmdpQ
>>508
支援ありがとうございます!
姉弟の幸せを願って下さる方がいらっしゃるとは…感無量です。皆それぞれ、今となっては愛着が沸いてしまいました。
皆さんがこうして各々の幸せを願って下さり、少しでも後味のいい終わらせ方をしたいと考えた結果、>>503に至ったわけであります(`・ω・´)

もう、本当に本当にありがとうございます!書いててよかった…!構成も練り直したので、ラストに向かってゴーゴーあるのみ!

それでは、長くなってしまいましたが>>502の続きです。
510:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2012/1/7(土) 15:48:40 ID:GLdkpQmdpQ

弟「それって、姉ちゃんの事?」

どうして、とノエルの瞳は大きく揺れた。何かを悟ったような弟の表情は、先程までの幼さは感じられない。

弟「夢で見たんだ。ノエルが姉ちゃんを連れて行く夢……ノエルは一体、何なの?姉ちゃんを何処へ連れて行くの?」

弟の瞳に悲しみの色が宿る。ああ、もう駄目だとノエルの眉が下がった。

やはり、関わってはいけなかったのだ。幼い少年を巻き込むには、あまりに酷な話だ。何故、彼と出会ってしまったのだろう。
──何故、こんなにも胸が苦しいのだろう。

ノエル「…もう、君に隠す必要はないね」


511:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2012/1/7(土) 16:04:45 ID:GLdkpQmdpQ

震える喉を堪えながら、ノエルは重い口を開いた。自分というものの在り方、その存在の意味。
まだ子供の弟に理解が出来るとは到底思えなかったが、それでもノエルは語り続けた。

めぐのように、誰かの心に刻み込む事ができるのなら。
それが許されるのならば、私は──

弟はもう、以前のように笑い掛けてはくれないのだろう。それでも、ノエルに立ち止まる事は許されない。
胸の内を吐き出す度に、支えていた何かが軽くなるのを感じた。喪失感にも似たそれは、ノエルの心を軽くすると共に大きな風穴を開けてゆく。


512:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2012/1/7(土) 16:36:05 ID:2BGOPg1qkI

ノエル「──これで分かったろう。私達は関わるべきでは、なかったんだ」

今更嘆いても、もう遅い。頭を垂らすノエルの鈴が、チリリと小さく音を鳴らした。

ノエル「君と共に在りたいだなんて、願ってはいけなかった。私は君とは違う。それなのに…」

ノエルが背負った罪は、こんなにも重くて辛い。解放される事を望んでも、救いの手は未だ差し伸べられる事はなかった。


513:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2012/1/7(土) 16:53:24 ID:2BGOPg1qkI

ひとしきり黙って話を聞いていた弟が口を開いた。

弟「何だかノエル、天使みたいだね。それとも死神?僕、そういうの見た事ないんだけど、浮いたりしないんだね」

無邪気に笑いながら言う弟に、ノエルは呆気にとられた。
いや、これが普通の反応なのかもしれない。こんな馬鹿げた与太話のようなものを、理解出来たとて信じる方がどうかしている。
しかし、弟のその笑顔はノエルの胸をきつくきつく締め付けた。


514:CCC:2012/1/7(土) 16:56:31 ID:Au6HIlLMLw
リアルタイム遭遇記念!
スルーしていいからねm(_ _)m

大好きです(;∀;)
515:⊃C⊂ムギュッ ◆b.qRGRPvDc:2012/1/7(土) 17:12:07 ID:GLdkpQmdpQ

ノエル「信じられないかもしれないけれど、私はもう、君に嘘は吐きたくないんだ……」

そう言ったきり黙り込んだノエルの手を、再び弟の両手が優しく包み込んだ。

弟「信じるよ…。僕、学校の帰りに見たんだ。血だらけの猫の死体と、それに話し掛けるノエル。誰にも見えてないみたいだったけど、猫が光ってた」

弟の手の中で、ノエルの右手がピクリと動く。囁くように自分の名を呼ぶ声に顔を上げると、弟は柔らかく微笑んでいた。
そして、またノエルに言う。抱き締めるような優しい声で、信じてるよ、と。


516:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2012/1/7(土) 17:47:38 ID:GLdkpQmdpQ

ノエル「……連れて行くなと言わないんだね、お姉さんの事を」

そう言ったノエルに向かって、弟は思いがけず首を傾げた。

弟「どうして?姉ちゃんが死ぬのは病気の所為じゃないか。ノエルが姉ちゃんを殺すわけじゃないでしょ?それに──」

しかし、その表情は瞬く間に崩れ落ち、悲しみに濡れた。力をなくした両手はいとも容易くノエルを手放して、ぶらりとだらしなく垂れ下がった。

弟「それに……そうしなきゃ、ノエルは消えちゃうんでしょ…?」


517:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2012/1/7(土) 18:18:57 ID:GLdkpQmdpQ

ノエルは息を呑んで弟を見つめた。
──泣いている。
大声で泣き喚くわけでも、声を殺して啜り泣くわけでもなく、弟の瞳からは、ただただ涙が溢れ出ていた。

弟「言えないよ……姉ちゃんもノエルも、僕の大切な人なんだ。二人共大好きだよ。これ以上、何を言えばいいの…!」

キラキラと、硝子玉のように透明に輝く雫に、吸い寄せられるように手を伸ばす。
初めて見る、自分に向けて流される涙の美しさ。これ程までに暖かく、眩しい輝きをノエルは知らない。


518: ◆b.qRGRPvDc:2012/1/7(土) 18:27:18 ID:GLdkpQmdpQ
今回は此処までとさせて頂きます。

>>514
支援ありがとうございます!
スルーなんて出来るわけがない!大好きだと言って頂けて、凄く凄くとても大変めっちゃ超凄く嬉しいです(´;ω;`)

めぐ「いただき!」⊃C⊂ギュッ
弟「ありがとう」⊃C⊂ギュッ
ノエル「…」⊃C⊂ギュッ
519:名無しさん@読者の声:2012/1/7(土) 20:56:32 ID:IldJR.WcpI
切ないのう(´;ω;)
めぐに っ愛
ノエルにも っ愛
1さんには っCCC
520:505:2012/1/7(土) 22:42:13 ID:udzvBynfb.
ゴールまで突っ走れ!!
めぐへ
っ愛
元祖男へ
っめぐ
ノエルへ
っ幸せ
1へ
っCCCCCCCCCCCCC
521: ◆b.qRGRPvDc:2012/1/9(月) 21:03:03 ID:VXXsBaixik
>>519
支援ありがとうございます!
切なくなって頂けるなんて凄く凄く嬉しいです。今回の番外編は自分なりに切なさを詰め込んだので、一番の褒め言葉(*`・ω・´*)

めぐ「わーい!ありがとー!」⊃愛⊂ ムギュムギュ
ノエル「私に…?……ありがとう」⊃愛⊂ キュ
1「キェェェェ!嬉じい゙い゙い゙」⊃C⊂ ギュウゥゥ


>>520
支援ありがとうございます!
505さんだったのですね!貴方が導いて下さったゴールが近付いてきました。突っ走ります!ゴーゴー!

めぐ「ぽかぽかするー」⊃愛⊂ ムギュムギュ
元祖男「ぬおおおめぐうううう!ぺろぺろもぐもぐ」⊃めぐ⊂ ハァハァ
ノエル「君は優しい子だね」⊃幸せ⊂ キュ
1「キェェェェ!キェェェェ!ゴーゴー!」⊃C⊂ ギュウゥゥ


番外編でのランキング入り、とても嬉しくて泣いてしまいそうでした。読んで下さっている方、支援して下さっている方、投票して下さっている方、本当にありがとうございます!ありがとうでは足りないくらい、私の胸はいっぱいです。

それから、雑談スレで話題になっていた件です。私のSSにも嬉しい事に支援を下さる方がいらっしゃるので、他人事ではないと認識しました。
私は皆さん一人一人にレスを返したい、という気持ちでいます。素直にただ嬉しくて、纏めて「ありがとう」というだけでは私の気が済まないというのが殆どの理由です。ですが、不快に思われる方もいらっしゃるのを知り、その理由にとても納得させられました。

もう少しで完結となりますが、支援や支援レスで画面が埋まるような事にはならないように、また、それ(支援レスetc)が気にならないくらい皆さんに入り込んで頂けるように頑張りたいと思います!
今作に限らず、また書く機会があれば次回作も、これを肝に銘じて精進したいと思います。


長々と申し訳ありません。
>>517からの続きです。
522:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2012/1/9(月) 21:11:42 ID:VXXsBaixik

弟の涙は頬を伝い落ち、ノエルの指先で弾ける。暖かい雫を指先で受け止めて、ノエルは満たされてゆくような、不思議な感覚に捕われていた。
言葉にならない、不思議な感覚。

ノエル「泣かないでおくれ…」

そう言うのがやっとだった。
ノエルの右手が弟の柔らかい頬に触れる。弟は照れ臭そうに身を捩ると、ノエルがしたように右手を伸ばし、頬に触れた。涙に濡れた顔で、それでもノエルに微笑み掛ける。

弟「……ノエルこそ」


523:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2012/1/9(月) 21:32:57 ID:ABTOoL.Ipw

弟は一体、何を言っているのだろう。ノエルは訝しげに眉を寄せて首を傾げた。

弟の親指が、ノエルの頬を優しく撫でる。それはまるで、流れる涙を拭うように。

ノエル「私、が…?泣いていると言うのかい」

自身の頬に触れるノエルの手が震えた。指先に触れた暖かい何かが、ノエルの頬を濡らしている。

ノエル「涙……私の、涙……」


524:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2012/1/9(月) 22:01:56 ID:VXXsBaixik

ノエルの心の奥底で、ポトリ、ポトリと雫が零れ落ちては波紋を描く。幾重にも重なって流れる波は身体中に広がり、ノエルの全てを包み込んでいった。

───満たされる。

その感覚に支配されたノエルの瞳は大きく揺れて、留まる事を知らない。

失ったものを取り戻す感覚。心が、全てが洗い流される。何かが弾けて溢れ出すようであり、穏やかに流れる川のようでもある。言い様のない感覚がノエルを包み込む。
満たされる。満たされてゆく。
ノエルの瞳から、涙が溢れて止まらない。


525:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2012/1/9(月) 22:29:22 ID:ABTOoL.Ipw

ノエル「こんなものを失くしていたのかい、私は。……こんなにも、身近にあったものを」

弟「ノエル?どうしたの?」

心配そうに、上目遣いで弟が訊ねる。

ノエル「…さっき、君は言ってくれたね。私もお姉さんも、大好きだと」

ノエルは震える唇で弧を描くと、弟にふんわり抱き付いた。


526:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2012/1/9(月) 22:55:16 ID:ABTOoL.Ipw

ノエル「私も君が好きだ。君も、君のお姉さんも……大好きだ」

自分とそう変わらない、まだ少年の細い肩をノエルは強く抱き締めた。弟を、その温もりを求めるように、強く、強く。

弟「な、何?ノエル、苦しいよ」

そうだ、苦しいのだ。満たされる体が、心が、こんなにも苦しいと叫んでいる。

ノエル「君も、君のお姉さんも沢山の人に愛されている。君達をずっと見てきて、よく分かったよ」

ノエルの中の迷いが、確かな決意へと変わってゆく。きっと、それはノエルがずっと持っていた思い。後悔の念など、ありはしなかった。


527:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2012/1/9(月) 23:30:34 ID:ABTOoL.Ipw

弟「…ッ……ノエル!ノエル!」

ふいに弟が声を上げた。肩を強張らせて、ノエルの名を呼ぶ。

ノエル「ああ、そうかい。もしかすると、神様は本当に居るのかもしれないね」

何でもお見通しだ。そう言ってノエルは笑う。動揺の色を隠しきれない弟とは対照に、随分と落ち着いた口振りだった。
ノエルの体は薄らと霞み、溶けるように光の粒が溢れ出してはサラサラと流れていた。


528:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2012/1/10(火) 00:08:46 ID:VXXsBaixik

ノエル「……彼女の手を取るのは私ではなく、君だ」

ノエルはゆっくりと体を離し、弟の背後を指差した。

ノエル「君なんだよ」

促されるままに振り返る、その視線の先に姉の姿があった。病室で最後に見た姿が嘘のように、ふわりと優しく微笑んでいる。

弟「姉、ちゃ……」

姉に向かって手を伸ばし、歩み寄ろうとした弟の足が止まった。
ノエルの使命は何だった。死に逝くものを、姉を連れて行く事ではなかったのか。そうしなければ、ノエルは──。


529: ◆b.qRGRPvDc:2012/1/10(火) 00:34:24 ID:ABTOoL.Ipw
中途半端ですが、此処までとさせて頂きます。あと二、三回の投下で完結予定です(`・ω・´)

それから、いらないお世話かもしれませんが番外編を纏めてみました。私の下らない独り言や頂いた支援は含まない、本編の部分のみです。


>>287-297 >>303-305 >>308-316
>>323-334 >>341-344 >>350-355
>>360-366 >>372-378 >>384-387
>>390-403 >>407-414 >>419-423
>>427-430 >>435-443 >>447-456
>>461-472 >>476-484 >>489-493
>>497-502 >>510-517 >>522-528

今日も読んで下さった皆さんに、最大級のありがとうを!ラストに向かってゴーゴー!
530:名無しさん@読者の声:2012/1/11(水) 08:23:26 ID:jowajketls
うわーーノエルーー!
支援!超支援!
1さんの真面目で丁寧なとこ、自分は大好きです
531:名無しさん@読者の声:2012/1/11(水) 19:06:41 ID:xhhM9QiWvs
CCC
532:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2012/1/11(水) 21:33:58 ID:MRSrxwshJs

弟「ノエル、どうして…駄目だよ、そんなの嫌だ」

ノエルは穏やかな笑みを浮かべ、ゆるゆると首を横に振った。
運命に逆らってでも、姉を死なせてなるものか。例えそれが、自分という存在をなくしてしまうのだとしても。
ノエルの真っ直ぐで、決して揺るがない決意だった。

ノエル「言ったでしょう?君も、君のお姉さんも、沢山の人に愛されている。その中に、私も含まれているんだよ」


533:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2012/1/11(水) 22:03:14 ID:7sLdf6eHp.

語り掛けるノエルの体は光の粒に変わり、流れ続けた。少しずつ、少しずつ、ノエルの存在が消えてゆく。
あれ程にまで焦がれていた救いが、今となっては馬鹿馬鹿しくも思える。そんなものに縋らずとも、ノエルはこんなに満たされていた。

ノエル「……めぐに、謝らなくてはいけないね」

ノエルの視線が、手首に落とされる。
今のノエルを見て、めぐは何と言うのだろう。救いの道は開けたというのに、馬鹿な奴だと笑うのだろうか。よくやったと、褒めてくれるだろうか。
小さく鳴らした鈴の音に、ノエルは微笑んで頷いた。


534:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2012/1/11(水) 22:26:24 ID:MRSrxwshJs

ノエル「君に出会えて、私は十分に救われた」

弟「ノエル、ノエル…!嫌だ、消えないでよ」

ノエル「友達だと言ってくれて、“ノエル”と名付けてくれて、本当に嬉しかったよ」

ありがとう、と涙を流すノエルの表情に、以前の仏頂面は見る影もない。弟の前に立っているのは、艶めかしく輝く黒髪が眩しい、美しい少女だった。

弟「ノエル…」

ノエル「弟くん、私を見付けてくれて、ありがとう」

そうしてノエルは唇に弧を描いたまま、いつものように弟に言う。さあ、良い子は帰る時間だ、と。


535:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2012/1/11(水) 22:51:08 ID:MRSrxwshJs

ノエルの身体は今にも消えてしまいそうな程に色を失い、サラサラと流れ続けている。
弟は堪らずノエルを抱き締めた。その存在を確かめるように、しっかり腕の中に捕まえた。

ノエル「悲しむ事はないよ。私という存在は、君の記憶と共に消えるんだ。元に戻るだけさ」

弟「嫌だ!忘れない!忘れたくない!」

ふと、ノエルの手が弟をがっちりと掴んだ。

ノエル「もしも、ほんの少しでも私の欠片を残す事が許されるのなら…」


536:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2012/1/11(水) 23:23:22 ID:7sLdf6eHp.

涙に濡れるノエルの顔が、抱き締めた身体が、光となって消えてゆく。流れる涙をも黄金色に輝かせ、ノエルは声を上げた。

ノエル「どうか君だけは、君だけは私を──‥」

チリン、と鈴の音だけを残し、ノエルの声は途絶えた。僅かに残った光の粒が惜しむように弟の頬を掠め、何処かへ消えた。


弟「───…ノエル」


537: ◆b.qRGRPvDc:2012/1/11(水) 23:32:45 ID:7sLdf6eHp.
今回は此処までとさせて頂きます。いよいよ>>505さんが導いて下さったラストが迫って参りました!

>>530
支援ありがとうございます!
ノエルーー!!
こんなにも皆さんからの書き込みでノエルの名を呼んで頂けるなんて、本当に嬉しいです。泣いてもいいでしょうか?

真面目で丁寧…恐らく、本当の私をご覧になったら驚かれる事でしょうね。私も530さん大好きです(´;ω;`)


>>531
支援ありがとうございます!
このSSを書き始めて早三ヶ月。沢山の支援を頂けて本当に幸せでした。長々と続いてしまいましたが、もう少しだけお付き合い下さい(´・ω・`)
538:505:2012/1/12(木) 07:16:05 ID:YTr0jUTa5.
(;Д;)ノシ ここだ!!ここまで来い!!
全員へ
っハッピーエンドと幸せ
539:名無しさん@読者の声:2012/1/12(木) 10:29:40 ID:rGeVyfef4c
最後の支援になりそうだな

>>1にも、登場人物全員も幸あれ!!

540:名無しさん@読者の声:2012/1/12(木) 20:21:33 ID:IldJR.WcpI
このSS大好きだよ
もう終わると思うと本当に辛い…
皆幸せになれ!(;ω;)っCCCCC
541:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2012/1/13(金) 17:47:48 ID:TxKS0SpfWQ




弟「姉ちゃーん、これ何処に置けばいいの?」

ずっしりと、見るからに重量のありそうな段ボールを両手で抱え、弟が問う。その後ろで、かつてのクラスメイトである友が、息を切らせて壁に寄り掛かっていた。

女「はいはーい!ごめんねぇ、こっちに持って来てくれるかな」

真新しい壁紙に、まだ下ろしたてのように綺麗なフローリングの室内。その奥からひょっこりと顔を出した姉が、二人に向かって手招きをした。


542:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2012/1/13(金) 17:55:32 ID:p0f38hIIa.

友「うひぃー…弟、俺もう駄目。腰がやられそう」

弟「お前の体力の無さにはガッカリだよ、友」

酷い!と悲痛の叫びを上げる友の声を背に、弟はせっせと姉の居る部屋へ荷物を運んだ。

どさり。
段ボールを床に置いた弟は、腰に手を当て身体を反らせる。友にああは言ったものの、重い荷物を持つのは腰にくるものだ。


543:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2012/1/13(金) 18:15:01 ID:TxKS0SpfWQ

女「ありがとー!弟くん達が手伝ってくれて、本当助かる。自分達で引っ越しって結構大変──」

弟「姉ちゃん、走っちゃ駄目でしょ」

小走りで駆け寄る姉を、溜息混じりに弟が制止する。今となっては随分と目立つ、小さな命を宿したお腹を擦りながら、ちぇっと姉が口を尖らせた。

女「でも、転びそうになったら弟くん、抱き抱えてくれよね?」

当然、とでも言うように上目遣いの姉が笑う。


544: ◆b.qRGRPvDc:2012/1/13(金) 18:18:51 ID:p0f38hIIa.

姉ちゃんの台詞ミス…orz

×抱き抱えてくれよね?
○抱き抱えてくれるよね?


545:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2012/1/13(金) 18:33:00 ID:TxKS0SpfWQ

弟「はぁ…頭痛くなってきた」

弟は苦笑しながら、子供のような笑顔で笑う姉を見下ろした。
これでも一度三途の川を渡りかけているのだから、放っておきたくともそうはいかない。

奇跡のような復活劇から数年が経ち、弟は青年へ、姉はすっかり大人の女性へと成長を遂げた。姉に至っては男との長い交際の末に幸せを掴み、母親になろうとしている。
安定期に入ってからも悪阻が続いた姉は、予定日まで残すところ後二ヶ月程になってようやく落ち着き、それからひと月。繰り下げてきた引っ越しを慌ただしく始め、弟と友は手伝いに駆り出されたのだった。


546:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2012/1/13(金) 18:47:56 ID:TxKS0SpfWQ

弟「……折角助かった命なんだから、もっと大事にしなよ」

女「そうね、また弟くんが気絶しながら泣いちゃうと困るし」

じと、と弟が姉を睨むと、逃げるように段ボールから小物類を取り出し、整理し始めた。

弟「人が覚えてないのをいい事に、いつまでも引っ張るなよな」

また一つ、弟の口から溜め息が洩れる。


547:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2012/1/13(金) 19:07:37 ID:TxKS0SpfWQ

姉が危篤状態に陥ったあの晩の事を、弟は全く覚えてはいなかった。病室を出され、気が付いた時には見慣れない天井が其処にはあった。
幼い子供には余りにもショックが大きかったのだろう。気を失った弟は引き付けを起こし、眠りながら涙を流していたのだと、目が覚めた時に母親に説明された。

何か、大事な事を忘れている気がする。そうは思えど、やはり何も思い出す事はなかった。
それから数年、事ある毎に話題にされては笑われる事に、弟はほとほと困り果てていた。

弟「まったく…小学生の時の話を何度も持ち出されちゃ堪ったもんじゃないよ」


548:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2012/1/13(金) 19:21:26 ID:p0f38hIIa.

女「はいはい……あ、」

弟の様子を気にも止めていない様子の姉は、段ボールの中から一冊のアルバムを取り出して手を止めた。
桃色の刺繍が施されたアルバムの表紙には、真新しい赤ん坊のワッペンが縫い付けられている。穏やかな母親の表情を浮かべて、まだ見ぬ我が子の成長に胸を膨らませていた。

女「沢山思い出作ろうね、めぐちゃん」

「……めぐちゃん?」

首を傾げる弟に、お腹に手を添えた姉がにこやかに頷いた。


549:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2012/1/13(金) 19:39:47 ID:TxKS0SpfWQ

女「この子の名前、もう決めてあるの。愛と書いて、めぐみ。沢山の愛に囲まれて、この子は生きていくのよ」

素敵でしょう。そう言って笑う姉は、昔も今も変わらず“夢見る乙女”の顔をしていた。

弟「……いい名前だとは思うけど、男が産まれたらどうすんの」

女「その心配は無用よ、弟くん!この子は女の子って、ほぼ確定してるんだから。知ってる?最近のエコー写真って凄いのよ」

胸を反らした姉が、ちっちっ、と偉そうに指を振った。


550:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2012/1/13(金) 19:50:57 ID:TxKS0SpfWQ

男「女の子は男の子と違って判断が難しいって言ってるのに、女ちゃん全然聞いてくれないんだよ」

苦笑しながら、荷物を持った男が部屋に入る。その手に持たれた荷物に、弟の視線は釘付けになった。布を被せられた、四角いもの。厚みからすると、昔から絵を描く事を趣味としている、姉が描いた絵なのだろうか。

何故だか胸がざわざわと騒ぎだす。廊下から助けを呼ぶ友の声が聞こえるのも構わず、弟の心はその布の向こう側への興味で一杯だった。


551:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2012/1/13(金) 20:10:29 ID:p0f38hIIa.

ふと、何処からか流れるメロディが室内に居る弟達の耳を突いた。随分と聞き慣れたメロディは、弟の胸を強く鷲掴む。どうしてだか、今日は泣きたくなる程に切なく感じた。

男「大変だ、急がないと夜になる!弟くん、手伝って貰っている身で悪いけど荷物だけでも急いで中に入れよう」

バタバタと慌ただしく、男の足音が遠ざかってゆく。弟は生返事をして、壁に立て掛けられた四角いものを凝視した。


552:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2012/1/13(金) 20:30:15 ID:TxKS0SpfWQ

女「これが気になるの?」

弟の様子に気が付いた姉が、重たそうにお腹を抱えながら横に立った。返事のない弟に首を傾げながら、結び目を解いて布に手を掛ける。

女「入院中に描いたものなんだけど、実はよく覚えてないし不思議なのよね。描いてた事自体は覚えてるのに、誰がモデルなのかも分からないし…」

するする、と布が擦れる音と共に、キャンバスに描かれた絵が露になった。
其処へ描かれた人物を目にして、弟の心臓は激しく脈打ち、戦慄した。


553:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2012/1/13(金) 20:52:06 ID:p0f38hIIa.

キャンバスに描かれていたのは、一人の少女だった。青みがかった紫色の花畑の中、ワンピースを着たロングヘアーの少女の姿。
さらさらと流れるような黒髪と黒目がちな瞳は、まるで其処に居るかのように輝きを放ち、弟に語り掛けているようだった。

女「男くんも知らないって言うの。誰かにあげる気にもなれなくてさ……弟くん、何か知らない?」

弟は暫く絵の中の少女を見つめ、小さく首を横に振った。

弟「……知らない。入院中は姉ちゃん、こそこそ描いてたしね」


554:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2012/1/13(金) 21:12:16 ID:TxKS0SpfWQ

女「だ、だって、弟くん怒るんだもん。毎日叱られてたら、こそこそしたくもなるっていうか…」

ゴニョゴニョと姉がぼやく声を聞き流しながら、弟はキャンバスから視線を外す事が出来ないでいた。
見覚えのない少女の筈なのに、何処かで会った事があるような気がする。胸を締め付けられるような、痛みにも似た感覚。

何処かで感じた事がある。何かを忘れている。
──この少女は一体、誰なのだろう。


555:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2012/1/13(金) 21:38:12 ID:p0f38hIIa.

ふと、少女の足元に広がる青紫色の花に目を奪われた。美しい青みがかった紫が、少女を包み込むようにキャンバスに敷き詰められている。

弟「姉ちゃん、この花は何?」

女「ああ、この花なら分かるわよ。とても切ない花なの」

姉が得意げに腕組みをして、ふふん、と鼻を鳴らしてみせた。

女「この花はね、勿忘草って言うのよ。花言葉が三つあるの」

へえ、と頷きながら、吸い寄せられるようにキャンバスに手を伸ばす。その瞬間、弟の頬を暖かい風が優しく掠めた。
ふわり、ふわり、と風に乗せられ、何処からか声が聞こえた気がする。


556:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2012/1/13(金) 21:41:38 ID:p0f38hIIa.

「この花の花言葉はね、」


 ──私に関わらない方がいい。


「“真実の友情”、」


 ──ともだち…?


「“誠の愛”、」


 ──私も君が好きだ。


「それから……」



557:番外編 ◆b.qRGRPvDc:2012/1/13(金) 21:42:33 ID:TxKS0SpfWQ



 ──どうか君だけは、
    君だけは私を──‥





  「“私を忘れないで”」






   ‐番外編 fin.‐



558: ◆b.qRGRPvDc:2012/1/13(金) 21:49:39 ID:TxKS0SpfWQ
>>538
最後の支援ありがとうございます!505さーん(´;ω;`)
安価の後も支援を下さり、本当にありがとうございました。505さんや皆さんが導いて下さらなければ、また違った終わり方になっていたのかもしれません。
本当に本当に、感謝です…!


>>539
最後の支援ありがとうございます!ご名答でございます。終わりました。終わってしまいました。
登場人物全員でも十分嬉しいというのに、私の幸せまで(´;ω;`)
ありがとうございます!私は今、とても幸せです!


>>540
最後の支援ありがとうございます!
ちょw泣いちゃうwwやめww
540さんのように好きだと言って頂ける物語になった事を、本当に嬉しく思います。長かったけれど、書いてよかったと心の底から思えます。本当に、本っっっ当にありがとうございました!
559: ◆b.qRGRPvDc:2012/1/13(金) 22:18:45 ID:TxKS0SpfWQ
はい、終わりです。
三ヶ月間、ずっとこのSSの事ばかりを考えていました。皆さんが他のスレで話題にして下さって、一人で飛び跳ねる程喜んでいました。絵スレでめぐ達を描いて頂いて、直ぐ様保存しては携帯画面を見てニヤニヤしていました。(現在進行形)ランキングに入る事が出来て、ぶっちゃけちょっと泣きました。

本当に思い出が沢山詰まったスレになりました。過去話や番外編まで書かせて頂き、もう何も思い残す事はありません。
沢山支援レスも頂きました。皆さんからのレスがなければ、過去話や番外編を書く事はなかったと思います。皆さんからのご支援でこの物語は出来たのだと、本当に感謝の気持ちでいっぱいです。

思い残す事はないと言いつつ寂しいのが本音ですが、これで終わりにしたいと思います。読んで下さった皆さん、支援して下さった皆さん、投票して下さった皆さん、絵を描いて下さった皆さん、話題に出して下さった皆さん、全てに最大級のありがとうを!
ひーん(´;ω;`)
560:名無しさん@読者の声:2012/1/13(金) 22:23:29 ID:soDP2i/fRs
ブラヴォーーー!!!!!
涙で画面が見えないぜ(´;ω;`)

1さんもめぐもノエルも元祖男も弟も姉ちゃんも男も母も友も皆大好き愛してる!!

私からも最大級のありがとうを!!!!
561:名無しさん@読者の声:2012/1/13(金) 22:29:32 ID:xhhM9QiWvs
完結祝いに絵スレにぅpしたのでよかったら見て下さい(`;д;´)
562:505:2012/1/13(金) 23:05:58 ID:2sJHKm0DGg
(;Д;)>>1乙!!泣かせてくれるじゃないか…これは俺からの最後の皆へのプレゼントだ!!>>1も含め受け取ってくれ!!
っ感謝
っこの上ない幸せ
563:名無しさん@読者の声:2012/1/14(土) 08:32:36 ID:R/pXqWMDcs
乙でした!
感動がヤバい。。
大好きでした(;∇;)/~~
564: ◆b.qRGRPvDc:2012/1/14(土) 18:03:44 ID:mTdLBohn9A
>>560
わーん、ありがとうございます嬉しいです(´;ω;`)
全員に愛を下さってありがとうございます!こうして見ると、意外と人数居たんですね。私も560さん大好き愛してます。
最大級のありがとうを560さんに!


>>561
見ました保存しました可愛い可愛いぺろぺろちゅっちゅっ
絵スレの方で改めてお礼を言わせて頂きますね。此処までお付き合い下さって本当にありがとうございました!


>>562
505さん…(´;ω;`)
505さんからの書き込みはとても励みになりました。勿論、支援レスを下さった皆さんの書き込みも嬉しかったのですが。本当に最後まで見守って下さってありがとうございました。
最後のプレゼント、確と受け取らせて頂きました。私からも505さんにプレゼントです…!
っ最大級の感謝
っ木綿のハンカチーフ


>>563
ありがとうございました!ありがとうございました!(´;ω;`)
感動して頂けてよかった…!大好きと思って頂けてよかった…!
幸せです。あれ、電車の中なのに目から変な汁出てくる(笑)



保管庫依頼はちゃんとしますので、もう少しお待ち下さい。
565: ◆b.qRGRPvDc:2012/1/14(土) 20:28:16 ID:LDvZZ1bmmI

*本編まとめ

>>4-8 >>13-18 >>20-25 >>27-30
>>34-46 >>52-58 >>62-67 >>72-76
>>80-81 >>84-90 >>94-100
>>106-111 >>118 >>120
>>122-125 >>129-137 >>142-147
>>152-159 >>163-165 >>167-173
>>179-184 >>191-195 >>199-203
>>208-211 >>215-218 >>220-226
>>230-233 >>238-250


*昔語り(※鬱展開です)

>>261-263 >>268-277


*番外編まとめ

>>287-297 >>303-305 >>308-316
>>323-334 >>341-344 >>350-355
>>360-366 >>372-378 >>384-387
>>390-403 >>407-414 >>419-423
>>427-430 >>435-443 >>447-456
>>461-472 >>476-484 >>489-493
>>497-502 >>510-517 >>522-528
>>532-536 >>541-557


566: ◆b.qRGRPvDc:2012/1/14(土) 20:32:04 ID:LDvZZ1bmmI

皆さんに描いて頂いた当SSのキャラクター達です(*´・ω・`*)


*めぐ
http://g2.upup.be/JO8C6EgzQx


*ノエル
http://g2.upup.be/MPGI8XS6ZZ


*コラボ
http://g2.upup.be/1I0Qqfw3DF


ありがとうございました!


567:名無しさん@読者の声:2012/1/15(日) 07:54:06 ID:shbbaigoeE
乙!!素敵な物語をありがとう
また>>1さんのssが読める日を楽しみにしてるよ!!
568: ◆b.qRGRPvDc:2012/1/15(日) 18:08:31 ID:EvSMlPAsZI
>>567
長々とお付き合い下さってありがとうございました(*´・ω・`*)
また書く機会がありましたら567さんに読んで頂ける事を願って、一先ずさようならです。
本当に本当に感謝です!
569:505:2012/1/15(日) 18:22:57 ID:UQPjzjChP2
では>>1のSSを読める日を楽しみにしながら安価に備えとく。
木綿のハンカチーフと最大級の感謝、しかと受け取った!!
570: ◆b.qRGRPvDc:2012/1/16(月) 17:10:49 ID:a4WFwEAFUY
>>569
まだレスを下さる方がいらっしゃるとは、何だか凄く嬉しいです。しかも505さん…!ありがとうございます(*´・ω・`*)
それは、つまり安価をしろと仰っていると受け取っても?安価をする際は505さんを召喚すべく祈祷するとしますね!また私を導いて下さる事を願って……。
571:名無しさん@読者の声:2012/1/17(火) 15:08:45 ID:HUEmhT2JEg
ついに保管庫か…
まとめ入りすればいいのに(´;ω;`)
572:真・スレッドストッパー:停止
停止しますた。ニヤリ・・・( ̄ー ̄)
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