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出会う感情の名は、
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1: 1 ◆b.qRGRPvDc:2011/10/16(日) 19:19:06 ID:f4A63ChN1o
男「あれ?何してたんだっけ?…なんで此処に居たんだっけ?」

住宅街の路地にポツリと立つ青年。見たところ、学生のようだ。

辺りを見渡しても、まるで自分以外の人間が魔法にでも掛けられたかのように姿を見せない。

灰色に染まった空は雨を降らせてパタパタと音を立てながらアスファルトを濡らしていく。

男「うわ!財布の中身散乱してるし!お札が濡れる!」

散乱しているお金を慌てて掻き集め、乱暴に財布に押し込んだ。


419: 番外編
◆b.qRGRPvDc:2011/12/15(木) 22:57:22 ID:Ztizk4nQHk

ノエル「……お喋りは此処までとしようか」

ノエルが子供達を見下ろしながら弟に言う。

弟「でも、」

ノエル「珍しくよく喋ったお陰で疲れたんだよ。もう休ませてくれないかい」

ノエルはワンピースをはためかせて弟に背を向けた。弟は、自分が何者であるかを知らない。出来る事なら知られたくないとも思う。すぐ傍まで来ている子供達の声がノエルを逸らせた。


420: 番外編
◆b.qRGRPvDc:2011/12/15(木) 23:21:13 ID:piwV0qFrog

弟「独りじゃないよ、僕が居るじゃない」

無邪気に笑う弟の声に、ノエルの瞳が大きく開かれた。

弟「友達になろうって言ったでしょ」

忘れたの?と弟が問い掛ける。ノエルは弟に振り返ると、ははっ、と息を洩らして笑った。

ノエル「君はいい子だね。君と居ると、とても暖かい気持ちになれる」

弟「何それ、意味分かんない」


421: 番外編
◆b.qRGRPvDc:2011/12/15(木) 23:43:43 ID:piwV0qFrog

可愛らしく頬を染める弟に、ノエルは顔が綻ぶ思いだった。胸の辺りがじんわりと暖かくなっていくのを感じる。もしかすると、めぐもこの胸の温もりを感じていたのだろうか。
少し、めぐの行動を理解出来た気がした。

ノエル「また、私に会いに来てくれるかい…?」

弟「──っ…うん、勿論!」

弟はコクコクと何度も首を上下に振った。赤く染まった頬は夕焼けにも劣らない程に熱を持っていた。


422: 番外編
◆b.qRGRPvDc:2011/12/16(金) 00:01:21 ID:piwV0qFrog

去って行く弟と入れ違いに、子供達が公園へと足を踏み入れた。相変わらず追い掛けっこのようなものを続け、誰が鬼かも分からないような状態で駆け回っている。
当然、ノエルの姿には誰も気付いていない。

ザザッ、と砂を擦る音がして男の子が転んだ。その場にむくりと起き上がり、わんわんと大声で泣きだした。

ノエル「…っ」

手を差し出そうとするノエルを横切って、子供達が駆け寄る。声を掛けながら男の子を宥めているようだった。


423: 番外編
◆b.qRGRPvDc:2011/12/16(金) 00:28:17 ID:piwV0qFrog

擦り剥けた膝が痛いのか、男の子は大粒の涙を零し続けた。パタパタと地面に落ちる涙が砂の上で細かく弾ける。
ノエルは息を呑んでその雫を見つめていた。

何日も前に送り届けた老婆の家族。それらの泣き声が男の子のものと交ざって、ノエルの脳裏で谺する。その所為なのかもしれない。
───あの子もこんな風に泣くのだろうか。
ふと、そんな考えがノエルの心を揺さ振った。

手を繋いで去って行く子供達の影がノエルから遠ざかって行く。何処からか夕焼け小焼けのメロディが流れて、男の子の泣き声を呑み込んだ。
薄らと顔を見せはじめた山吹色の丸い光だけが、ノエルの顔を優しく照らしていた。


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