男「あれ?何してたんだっけ?…なんで此処に居たんだっけ?」
住宅街の路地にポツリと立つ青年。見たところ、学生のようだ。
辺りを見渡しても、まるで自分以外の人間が魔法にでも掛けられたかのように姿を見せない。
灰色に染まった空は雨を降らせてパタパタと音を立てながらアスファルトを濡らしていく。
男「うわ!財布の中身散乱してるし!お札が濡れる!」
散乱しているお金を慌てて掻き集め、乱暴に財布に押し込んだ。
220: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/18(金) 22:15:23 ID:r517UsUXT6
男「黙ってるのも辛かったよな、ごめんな」
めぐは左右に首を振った。
めぐ「違う、ボクがいけなかったんだ」
ギュッ、とめぐの手に力が入る。
自分を見つめる青年の目が優しすぎて、それが余計に胸を締め付ける。青年の優しさは今のめぐにとってはとても辛いものだった。
めぐ「…男と、一緒に居たかったの。男に居なくならないでほしかったの。ボクの心の中に、閉じ込めていたかったの。ボクがいけなか…ッ……」
めぐは言葉が体の衝撃に遮られた。青年の体温がめぐを包み込んでいる。
気が付けば、青年の腕の中にめぐは居た。
221: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/18(金) 22:23:31 ID:r517UsUXT6
>>220
×めぐは言葉が体の衝撃に〜
〇めぐの言葉が体の衝撃に〜
すみません…(´・ω・`)
222: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/18(金) 22:57:30 ID:JPOJYwW2Gc
男「だからって自分一人だけ消えようとすんな、馬鹿」
めぐの目が大きく開かれる。
青年には何も話していないのに、何故そんな事を口走るのだろうか。
男「俺が一緒に居たいって言ったんだ。タブーを犯してるのは、俺も同じな筈だろ?」
青年の胸からめぐの顔が勢い良く離れた。青年の腕を掴む手は小刻みに震え、何故と言わんばかりに瞳が揺れる。
223: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/18(金) 23:37:12 ID:r517UsUXT6
男「霊子さんが教えてくれたんだ。めぐや霊子さんの事、…その役割も、全部」
めぐ「れいこ、さん…?」
めぐがきょとんと首を傾げる。
そういえば、霊子さんと呼ぶに至った経緯をめぐは知らないのだと青年は苦笑した。
男「あー…ほら、前に会った女の子。俺が勝手にそう呼んでるだけなんだけど」
めぐ「……」
224: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/19(土) 00:03:59 ID:r517UsUXT6
めぐは怪訝そうに眉を寄せた。
ルールを破る事を嫌っていた筈の少女の行動が理解出来なかった。
男「前にめぐが居なくなった時も霊子さんが助けてくれた」
めぐ「え…?」
男「友達でも何でもないって言ってたけどさ、きっとそうじゃない。…めぐに消えないでほしかったんだよ、あの子も」
225: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/19(土) 00:36:50 ID:r517UsUXT6
めぐは表情を歪ませた。
刺のある物言いも、眉間に寄せられた皺も、憎しみのないものだったと分かっていた。いつも逃げてばかりだった自分の後ろ姿を、少女はどんな思いで見つめていたのだろうか。
めぐ「ボクはあの子から逃げてたのに…」
男「めぐ」
青年の手はしっかりとめぐの肩を掴んでいる。グッと力を込められた熱い手の感触に、めぐは思わずはっと青年の顔を見た。
226: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/19(土) 00:57:00 ID:JPOJYwW2Gc
青年の瞳は真っ直ぐにめぐだけを見つめていた。
男「俺も、めぐに消えてほしくない。俺には救いがあるんだろ?だから……」
青年は苦しそうに表情を歪ませた。震える唇を堪えて、弧を描く。
垂れ下がる眉を寄せながら、青年は微笑んでみせた。
男「だから、俺を送って下さい」
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