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出会う感情の名は、
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1: 1 ◆b.qRGRPvDc:2011/10/16(日) 19:19:06 ID:f4A63ChN1o
男「あれ?何してたんだっけ?…なんで此処に居たんだっけ?」

住宅街の路地にポツリと立つ青年。見たところ、学生のようだ。

辺りを見渡しても、まるで自分以外の人間が魔法にでも掛けられたかのように姿を見せない。

灰色に染まった空は雨を降らせてパタパタと音を立てながらアスファルトを濡らしていく。

男「うわ!財布の中身散乱してるし!お札が濡れる!」

散乱しているお金を慌てて掻き集め、乱暴に財布に押し込んだ。


106:
◆b.qRGRPvDc:2011/11/2(水) 22:41:04 ID:VDnJeC4e6A
雨の中、傘も持たずに青年は家を飛び出した。階段を駈け降り、少女の居た場所へと向かう。

踏み締めたアスファルトからパシャパシャと水しぶきが上がる。
ズボンの裾が濡れる事も構わず、青年は走った。

男「…居ない」

肩で息をしながら辺りを見回したが、少女の姿は疎か、人の気配すらない。
相変わらず人気のない路地で一人、へなへなとその場にしゃがみこんで頭を掻き毟った。

男「あー、もう!何処に居るんだよ幽霊さんも、めぐも!」
107:
◆b.qRGRPvDc:2011/11/2(水) 23:02:17 ID:VDnJeC4e6A
少女「めぐは此処には居ないよ」

男「ぎゃーっ!」

突然聞こえた背後からの声に、青年は体を跳ねさせた。
恐る恐る振り返ると、耳を押さえた少女が眉を寄せながら青年を見下ろしていた。少女は昨日と何ら変わりない格好で其処に居た。

少女「うるさいよ」

男「す、すみません幽霊さん…」

少女「本当に幽霊って呼ぶんだね」

男「じゃあ、女の子だから霊子さん」

少女はげんなりとした表情で頭を押さえた。
108:
◆b.qRGRPvDc:2011/11/2(水) 23:24:58 ID:VDnJeC4e6A
少女「で?」

少女は首を傾げて青年に話の先を促した。

少女「私に何か用?」

男「あ、はい。その、めぐの事なんですけど…」

ああ、と頷いて少女は踵を返した。スカートの裾がふわりと風に揺れる。

少女「彼女の事なら知らないよ。第一、私から逃げたんだから知るわけがないでしょ」

ひらひらと手を振りながらその場から離れて行く少女を、青年は追い掛けた。

男「待ってくれよ!あいつ“居なくならないで”って言ったんだよ。だったら、居なくなるのはあいつじゃないだろ?」
109:
◆b.qRGRPvDc:2011/11/2(水) 23:57:28 ID:VDnJeC4e6A
少女は足を止めて青年に向き直った。

少女「じゃあ、居なくなるのは誰なのさ」

男「それは……誰だ?」

相変わらずの仏頂面で青年を見上げて溜息を吐く。その動作は至極面倒そうなもので、青年はたじろいだ。

少女「…君は鈍いのか鋭いのかどっちなんだい」

男「へ?」

少女「“めぐ”を一番知っているのは君だと思うけど。それに、私が知る限りは彼女は此処と君の家しか知らない筈だよ」

男「此処と、俺の家…?」
110:
◆b.qRGRPvDc:2011/11/3(木) 00:17:50 ID:VDnJeC4e6A
青年が気が付いた時にはもう少女の姿は何処にも見当たらなかった。呆然と立ち尽くす青年に、雨は降り注ぎ続ける。

青年のズボンはすっかり色が変わってしまっていた。

男「霊子さんが知らなくて俺とめぐは知ってる場所…?」

青年はぼんやりと路地を見つめる。雨具姿のめぐが楽しそうにくるくると回る姿が見えた気がした。

男「一つしかない、か」
111:
◆b.qRGRPvDc:2011/11/3(木) 00:28:59 ID:VDnJeC4e6A
青年は再び走った。バシャバシャと水音を立てて、めぐが居るであろう場所に向かった。

二人で肩を並べた場所。
幸せだったと、手放したくないと言ってくれた場所へ。

息を切らして、ただ、真っ直ぐに。


――真っ直ぐに、めぐを求めた。


男「めぐ!!」
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