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出会う感情の名は、
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1: 1 ◆b.qRGRPvDc:2011/10/16(日) 19:19:06 ID:f4A63ChN1o
男「あれ?何してたんだっけ?…なんで此処に居たんだっけ?」

住宅街の路地にポツリと立つ青年。見たところ、学生のようだ。

辺りを見渡しても、まるで自分以外の人間が魔法にでも掛けられたかのように姿を見せない。

灰色に染まった空は雨を降らせてパタパタと音を立てながらアスファルトを濡らしていく。

男「うわ!財布の中身散乱してるし!お札が濡れる!」

散乱しているお金を慌てて掻き集め、乱暴に財布に押し込んだ。


323: 番外編
◆b.qRGRPvDc:2011/12/3(土) 08:25:56 ID:QNbItEn9RQ



弟「今日はツイてないなぁ…」

溜め息混じりに帰路に着く弟の顔は小学生とは思えない程に疲れ切っている。

小学生になって四年が経ち、随分と弟の立ち位置も安定していた。
勉強もそれなりに出来るし、運動神経もそこそこ良い。クラスのしっかり者としてやってきた。それが今日、見事に崩壊したのだった。


324: 番外編
◆b.qRGRPvDc:2011/12/3(土) 08:44:40 ID:QNbItEn9RQ

授業中でも窓の外が気になって教師の声は右から左へと流れ、指名された事にすら気付かなかった。慌てて持った教科書は上下が逆さまで、「もういい」という言葉を初めて浴びせられた。

鈴の音が聞こえると教師の制止する声も聞かずに教室を飛び出し、昼休みには黒いワンピースを着た生徒に後ろから掴み掛かって泣かせてしまった。

放課後、「お姉さんが入院していて不安定になるのは分かるけど」という教師の言葉に逆上して「姉ちゃんは死なないよ!」などと怒鳴って学校を飛び出し、今に至る。


325: 番外編
◆b.qRGRPvDc:2011/12/3(土) 09:01:15 ID:5xkhhm62MI

弟(たかが夢じゃん…ビビりすぎだよ、僕)

教師に問題児のレッテルを貼られたかもしれないと思うと頭が痛い。少女の事はもう忘れよう、そう自分に言い聞かせた。

弟「…っ!?」

その矢先、また鈴の音が弟の耳を突いた。先程の言葉は一瞬にして消し飛び、反射的に音の鳴る方に顔を向けた。


326: 番外編
◆b.qRGRPvDc:2011/12/5(月) 20:16:01 ID:LuxIfDOYRs

「ニャー」と低い声を出して、茶色い縞模様をした猫が弟に向かって威嚇をしている。首輪もなく薄汚れているところを見ると、どうやら野良猫のようだ。

弟「ついに空耳ですか…」

深い溜息を吐きながら肩を落とす。今度こそ忘れようと歩きだしたが、前方に見えた人影に思わず息を呑んだ。

黒いワンピースを翻して歩く黒髪の女の子──間違いなく、あの少女だった。


327: 番外編
◆b.qRGRPvDc:2011/12/5(月) 20:50:47 ID:ZuifM71Eps

少女は弟に気付く素振りも見せずに角を曲がって行く。呆然とその姿を見ていた弟が慌てて後を追った時には、もう少女の姿は見当たらなかった。

弟「くっそーまた逃げられた…!」

少女「誰が逃げたって?」

弟「うわーっ!?」

弟が飛び跳ねて振り返る。角を曲がった筈の少女は弟の真後ろで耳を押さえて睨み付けていた。

少女「うるさいよ」

少女の気迫に押され、弟は少しばかり後退った。


328: 番外編
◆b.qRGRPvDc:2011/12/5(月) 21:25:10 ID:LuxIfDOYRs

少女「人の忠告を無視するのかい?聞き分けのない子だね」

呆れた、とでも言うように少女が溜息を吐いた。
確かに少女は関わるなと言っていた。しかし、自分とそう変わらない背丈の少女に上からものを言われる筋合いは弟にはない。ムッと口を尖らせて少女に言った。

弟「あ、あんたが僕から逃げるからだろ?」

少女「逃げてなんかいないよ。関わるなと言ったんだ、君を無視するのは当然でしょう?」

怪訝な顔で首を傾げる弟の様子を見て、少女はやれやれと首を振った。


329: 番外編
◆b.qRGRPvDc:2011/12/5(月) 21:46:13 ID:ZuifM71Eps

弟「ねぇ、なんで姉ちゃんの病室覗いてたわけ?」

少女の瞳が僅かに揺れた。
眉を寄せて、弟の視線から逃れるように下を向く。

少女「…君には関係のない事だと言ったでしょ。答える義務はないね」

弟「へぇ。用もないのに病院行くんだ、あんた」

少女は弟の挑発的な態度に視線を戻す事もしない。もやもやと煮え切らない思いは、幼い少年を苛立たせるのには十分だった。


330: 番外編
◆b.qRGRPvDc:2011/12/5(月) 22:08:36 ID:LuxIfDOYRs

弟「あーもう!何か言ってよ!何なんだよ!」

苛立ちを覚えているのは少女も同じようだった。深々と眉間に皺を寄せて舌を弾くと、聞き分けのない子供に吐き捨てるように言った。

少女「迎えに来たんだよ!だけどまだ時期じゃない、それだけの話だ!」

弟「迎えに……?」

はっとした少女はバツが悪そうに顔を顰めた。


331: 番外編
◆b.qRGRPvDc:2011/12/5(月) 22:35:37 ID:ZuifM71Eps

何故言ってしまったのだろうか。目の前の少年とは、関わるべきではないと分かっているのに。苛立っているのは弟に対するものではなく、未だ“彼ら”に追い付けないでいる自分自身への焦りだというのに。

ところが、弟が発したのは少女も予想していない言葉だった。

弟「なぁーんだ」

つい先程まで道端の野良猫のように敵意を剥き出しにして威嚇していた弟は、幾分かトーンの高い少年らしい声でそう言ってのけた。

少女「…?」

少女の丸い大きな目はぱちくりと瞬きを繰り返した。


332: 番外編
◆b.qRGRPvDc:2011/12/5(月) 22:48:19 ID:ZuifM71Eps

弟「僕も姉ちゃんが入院してるんだよ。だから、あんたと同じ。そういうのわざわざ人に言い触らしたくないもんね、分かるよ」

警戒心のない少年の笑顔を見せる弟に、少女はそういう事かと納得した。
恐らく弟は、少女も自分のように入院している誰かを見舞っていると誤解をしているのだろう。

少女「…まぁ、そんなところだね」

しかし、少女にはわざわざその誤解を解く理由なんてありはしなかった。


333: 番外編
◆b.qRGRPvDc:2011/12/5(月) 23:28:57 ID:LuxIfDOYRs

弟「僕、弟っていうんだ。次見掛けたら覗いてないで声掛けてよ」

少女「……」

宜しく、と弟は手を差し出した。

少女は骨張っていないすらりと細い少年の手をまじまじと見つめ、その手に触れる事を拒んだ。

少女のつむじの辺りには、まだ青年の大きな手の温もりが残っているような感覚がした。その熱が体の奥の方からじわじわと、何かを溢れ出させようとしているのが何故だか堪らなく恐かった。


334: 番外編
◆b.qRGRPvDc:2011/12/5(月) 23:54:19 ID:ZuifM71Eps

弟「…?ちょっと、何処行くの?」

少女「…もう、放っておいてくれ」

弟は訝しげな眼差しを少女に送った。

少女はそんな弟から逃げるようにして背を向けて歩きだした。

弟「ち、ちょっと!名前くらい教えてくれてもいいんじゃないの?」

頬を膨らませて声を荒げる弟に、少女は首だけ振り返って言った。

少女「名前なんて、持っていないよ」


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