男「あれ?何してたんだっけ?…なんで此処に居たんだっけ?」
住宅街の路地にポツリと立つ青年。見たところ、学生のようだ。
辺りを見渡しても、まるで自分以外の人間が魔法にでも掛けられたかのように姿を見せない。
灰色に染まった空は雨を降らせてパタパタと音を立てながらアスファルトを濡らしていく。
男「うわ!財布の中身散乱してるし!お札が濡れる!」
散乱しているお金を慌てて掻き集め、乱暴に財布に押し込んだ。
230: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/20(日) 21:44:09 ID:Z9KqQjIU/k
めぐ「………っ」
真っ直ぐな青年の瞳から逃げるように、めぐは唇を噛み締めて俯いた。
この期に及んでもなお、青年を消したくない自分が居る。忘れてしまいたくない自分が居る。
青年が傍に居るだけで全てが満たされた気がした。罪の償いなど忘れてしまう程に、めぐの胸は温もりで満たされていた。
彼が消えずに済むのなら、自分が消えてしまう事さえ厭わないと思えた。
この気持ちを何と呼ぶのか、めぐには分からなかった──。
231: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/20(日) 22:21:52 ID:HMJYUJcabU
男「めぐ」
めぐは左右に首を振っている。
手で耳を塞いで、青年の声を聞こうとしない。
男「めぐ!」
めぐ「……!」
青年はめぐの手を掴むと声を荒げた。
めぐの黒目がちな瞳には、今にも泣き出しそうな青年が映り込んでいる。
232: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/20(日) 23:03:21 ID:pIgPmzpxL2
男「──好きだよ、めぐ。お前の事が好きだ」
めぐははっと息を飲んだ。
溢れ出す感情は、もう青年を止める事が出来ない。
男「…輪廻転生なんて信じてなかったけど、まためぐに会えるなら信じれる」
めぐ「男……」
男「何度生まれ変わっても、待ってるから。必ずめぐを見付けてみせるから。だから…」
233: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/20(日) 23:31:06 ID:pIgPmzpxL2
めぐ「…ボクも、ボクも絶対に男を見付けるっ…」
めぐの両手が瞼に押しあてられる。
押し付けられた両の手はめぐの涙を止める事は出来ず、その隙間から溢れ出させた。
めぐ「ボクが見付けてみせるから…!!」
男「めぐ…」
青年の手がそっとめぐのそれに触れた。解かれた手がめぐの涙に濡れた表情を露にする。
その刹那、めぐの唇に柔らかいものが触れた。温かくて柔らかいそれは、青年の唇。
ゆっくりと閉じられためぐの瞳から、涙が止まる事はなかった。
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