男「あれ?何してたんだっけ?…なんで此処に居たんだっけ?」
住宅街の路地にポツリと立つ青年。見たところ、学生のようだ。
辺りを見渡しても、まるで自分以外の人間が魔法にでも掛けられたかのように姿を見せない。
灰色に染まった空は雨を降らせてパタパタと音を立てながらアスファルトを濡らしていく。
男「うわ!財布の中身散乱してるし!お札が濡れる!」
散乱しているお金を慌てて掻き集め、乱暴に財布に押し込んだ。
268: 昔語り ◆b.qRGRPvDc:2011/11/25(金) 19:44:10 ID:EDI.LmcnKs
ある日、幼馴染みの少年は妹に「姉に恋をしている」と告白します。この時、妹は初めて少年に恋心を抱いていた事を知り、同時に失恋した事を知りました。
その日の夜、妹は夜空を見ながら悲しみに打ち拉がれていました。姉に悟られてはいけないと、屋敷の外へと出ていきました。
其処に通り掛かった村人の一人が声を掛けます。涙を流す妹の美しさに心奪われた村人は、妹と体を重ねてしまいました。
その行為の意味を知らない妹に、村人は愛し合う事だと教えました。家族から無きものとして扱われ、愛される事を知らない妹は大層喜びました。そうして、夜になると屋敷の外へ出ては村人と体を重ねる行為を繰り返していました。
269: 昔語り ◆b.qRGRPvDc:2011/11/25(金) 20:11:23 ID:LHyhIHFJ5Y
姉は妹の変化に気付いていました。夜にこっそりと妹の部屋に食べ物を持って行く事を日課としていた姉ですが、夜になると妹の姿がない事をずっと疑問に思っていました。
ある日、姉は幼馴染みの少年に妹の事を相談しました。幼馴染みの少年から語られたのは、信じがたい事ばかりでした。
「男性の村人達の間では、妹の事が噂になっている」「愛していると囁けば妹は喜んで股を開く」と。
270: 昔語り ◆b.qRGRPvDc:2011/11/25(金) 20:50:15 ID:EDI.LmcnKs
妹の噂を耳にした姉は、半信半疑のまま妹の後を付けました。そして目にしたのは、見た事もない妹の姿。月明かりに照らされ、艶々しく腰を揺らしている妹の姿でした。
妹の腰に回された村人の手。犬のように荒い息遣い。激しく繰り返される律動。
そのどれもが姉には気味が悪く、吐き気がする程に忌々しく思えました。妹が去り、行為の余韻に浸る村人を、姉は無きものにしました。
271: 昔語り ◆b.qRGRPvDc:2011/11/25(金) 21:02:23 ID:LHyhIHFJ5Y
敷居の高い家の気品高き姉に瓜二つの妹。それを求める村人は後を絶ちませんでした。妹は村人達のその行為を愛し合う事だと錯覚し、屋敷の外に出ては腰を揺らしていました。
姉はもう何人もの村人を無きものにしたのか覚えていませんでした。妹の体に触れる手が、息が、存在が許せませんでした。
「妹の味方は私だけ」「妹を愛しているのは私だけ」「私が妹を助けてあげる」
月明かりに照らされた姉の顔は狂気に満ちていました。
272: 昔語り ◆b.qRGRPvDc:2011/11/25(金) 21:22:30 ID:EDI.LmcnKs
一方、妹は気付いていました。村人達が求めているのは自分ではなく、姉と同じ容姿をしている自分だという事。
両親が愛しているのは、少年が愛しているのは、村人達が求めているのは、全て姉だという事を。
「私達が双子じゃなければ」「この家に生まれていなければ」「姉さえ居なければ」
部屋で一人佇む妹の顔には、もはや表情などはありませんでした。
273: 昔語り ◆b.qRGRPvDc:2011/11/25(金) 21:31:19 ID:EDI.LmcnKs
そして二人は対峙しました。
映し鏡のようによく似た二人は互いに微笑みあい、見つめあいました。しかしもう、其処には昔のように仲の良い姉妹の姿はありませんでした。
「お願い、死んでくれる?」
そう口にしたのは姉か、妹か。もしかするとその両方だったのかもしれません。
274: 昔語り ◆b.qRGRPvDc:2011/11/25(金) 21:59:06 ID:EDI.LmcnKs
虫の知らせというものでしょうか。幼馴染みの少年は妹の部屋へと足を運びました。
薄暗い部屋の中に姉妹は居ました。しかし、その片割れは無惨な姿で息絶えていました。
「私達は一つで生まれてくるべきだったの」「けれど、もう大丈夫」「一つになれたもの」
ケタケタと笑う少女の目からは涙が流れ、それが薄気味悪さを彷彿とさせていました。
275: 昔語り ◆b.qRGRPvDc:2011/11/25(金) 22:21:05 ID:LHyhIHFJ5Y
少年は恐怖と悲しみで涙を流し、少女を責めました。「愛していたのに」少年のその言葉は少女の心臓を抉り、苦しませました。
「貴方が愛していたのは私?それともこっち?」
気が付けば、少年の目の前に少女の顔がありました。宝石のように美しかった瞳は濁り、透き通るように白かった肌は色を失っていました。
其処にはもう、愛していた少女の姿は何処にもありませんでした。「君じゃない」そう口にすると同時に、少年は無きものとなりました。
276: 昔語り ◆b.qRGRPvDc:2011/11/25(金) 22:41:16 ID:LHyhIHFJ5Y
少女は父に問いました。母に問いました。祖母に、祖父に問いました。そして、自分に問いました。
「私は私を愛しているの?」
答えは明白でありました。少女はケタケタと笑い、自らを無きものにしたのでした。
屋敷には無惨な死体が転がっていました。愛し方を知らない姉と、愛され方を知らない妹──二人の少女の亡骸は寄り添うように眠っていました。
「双子は災いをもたらす」村人達は口々に言い、屋敷は廃墟と化しました。
277: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/25(金) 22:46:36 ID:EDI.LmcnKs
以上がめぐの元になった過去の話となります。姉妹の魂は一つになり、愛を失いました。
めぐを純真無垢な少女として書き上げたのは、この姉妹と正反対の人間として生まれ変わる為です。
歪んだ愛し方しか出来なかった姉→真っ直ぐに愛する
愛される事を錯覚していた妹→人の温もりを知る
姉妹の魂は罪を背負い“めぐ”が生まれました。読んで頂いた方には分かって頂けるかとは思いますが、姉妹とめぐは別物と受け取って頂いて結構です。
長々と暗い話になってしまいましたが、此処まで読んで頂いてありがとうございました!
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