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出会う感情の名は、
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1: 1 ◆b.qRGRPvDc:2011/10/16(日) 19:19:06 ID:f4A63ChN1o
男「あれ?何してたんだっけ?…なんで此処に居たんだっけ?」

住宅街の路地にポツリと立つ青年。見たところ、学生のようだ。

辺りを見渡しても、まるで自分以外の人間が魔法にでも掛けられたかのように姿を見せない。

灰色に染まった空は雨を降らせてパタパタと音を立てながらアスファルトを濡らしていく。

男「うわ!財布の中身散乱してるし!お札が濡れる!」

散乱しているお金を慌てて掻き集め、乱暴に財布に押し込んだ。


13:
◆b.qRGRPvDc:2011/10/17(月) 17:51:47 ID:/e/5EDbjfE
>>12
うわあああありがとうございます(´;ω;`)


男「あー、その人、いつ来るんですか?待ち合わせ?」

少女「……」

男「お友達とか?」

少女「違う!…ます」

少女は顔を上げたが、またすぐに下を向いた。膝を抱えて俯く少女の頬は僅かに紅潮しているように見えた。

少女「大切…大切な…人」

男「大切な人?」

少女「うん。」

慌てて「はい」と言い直す少女を見て、青年は思わず口元が緩んだ。喉をクックッと鳴らしながら少女に言った。

男「苦手なら使わなくていいですよ、敬語」

ありがとう、と小さな声で言った少女の頬は紅潮していた。青年は満足気に「いいえ」と返して少女の頭をくしゃりと撫でた。
14:
◆b.qRGRPvDc:2011/10/17(月) 18:01:58 ID:/e/5EDbjfE
五階建てのワンルームマンションの一室に二人は居た。エレベーターも付いておらず外観こそ所々にひび割れが生じて古いものの、部屋の内装は綺麗なものだ。

六畳程のそう広くはない部屋に家具というものは殆どない。テレビの代わりにデスクトップのパソコンが一台と小さなテーブル、ぽつんと寂しくベッドが置かれていた。

少女「ただいま」

男「それを言うなら“おじゃまします”でしょうに。クレ●ンし●ちゃんもビックリだよ」

少女「クレ…何?」

男「おい、おい、マジかよ、おい!」
15:
◆b.qRGRPvDc:2011/10/17(月) 18:04:08 ID:2I5OaXgH26
男「とりあえず、ちょっと待ってて下さいね」

青年は小走りに部屋の奥に入って行くと、再び少女の元に戻った。その手には青年の物と思われる部屋着が握られている。

男「そのままじゃ風邪引きますから。俺のだから大きいかもしれないけど着替えです。あっちが風呂場なんで寒かったらシャワー浴びて下さい」

少女「ありがと」

少女がドアの向こうに消えて青年はふと我に帰った。

男「……ちょっと待て。これ何てエロゲ?セクロスフラグびんびんじゃねぇか!」

そうは思えどやはり昂ぶるものはなく、折角の機会をと小さな自分自身に小さく舌打ちをした。

男(さて、連れて来たはいいものの…名前も分からないしなぁ…)
16:
◆b.qRGRPvDc:2011/10/17(月) 18:11:17 ID:2I5OaXgH26
誰を待っているかという質問にも、貴方は誰かという質問にも少女は答えなかった。このご時世に携帯電話も持っておらず、待ち人の連絡先も知らないのだと少女は言った。

いつから待っていたのかという質問にも、首を傾げるだけ。ただ、一つの質問にははっきりと答えた。


男『その人、貴方が待ってる事は知ってるんですか?』

少女『……』

男『はぁ…本当に来るんですか、その人は』

少女『来るよ!今はまだ気付いていないかもしれないけれど、必ず来る』

男『気付いていない…?』

少女『……』
17:
◆b.qRGRPvDc:2011/10/17(月) 18:14:38 ID:/e/5EDbjfE
このままでは埒が空かないと、青年は雨が止むまで家に来ないかと提案した。
幸い青年の住むマンションは二人の居る場所の目と鼻の先。ベランダからは丁度この場所を見る事が出来た。

少女は迷う素振りを見せたが、苛立ちを覚えた青年は少女の手を取り歩き出した。
18:
◆b.qRGRPvDc:2011/10/17(月) 18:18:59 ID:/e/5EDbjfE
男『いつ来るかも分からない奴の為に風邪引くんですか、あんたは!』

男『俺は男と言います。これでもう知らない奴じゃないでしょう?』

男『大体こんな所で女の子1人でずっと待たせるなんてその人は何やってんだか!』

男『連絡先も教えずに待たせるなんて!』

信じられない、などとぶつぶつと言いながら歩く青年に手を引かれながら、呆気にとられていた少女も目を細めて笑った。

少女『……おせっかい』

少女の擦れた声は、青年の耳には届いていなかった。
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