男「あれ?何してたんだっけ?…なんで此処に居たんだっけ?」
住宅街の路地にポツリと立つ青年。見たところ、学生のようだ。
辺りを見渡しても、まるで自分以外の人間が魔法にでも掛けられたかのように姿を見せない。
灰色に染まった空は雨を降らせてパタパタと音を立てながらアスファルトを濡らしていく。
男「うわ!財布の中身散乱してるし!お札が濡れる!」
散乱しているお金を慌てて掻き集め、乱暴に財布に押し込んだ。
384: 番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/12/11(日) 23:47:21 ID:r12WCtJTeY
弟「お二人さん、もういいかな」
女「お、おと、弟くん!?」
男「今日も良い天気だなーっと!」
弟の声に二人の肩は面白い程に跳ね上がった。姉は先程まで鉛筆を滑らせていたそれに慌てて布を被せ、男は窓際に立って白々しく口笛を吹いた。
弟「男さん、今日は曇りだよ?」
晴れやかな満面の笑みを浮かべながら、弟が可愛らしく首を傾げてみせる。男は苦笑して頭を掻くと「まいったな」と眉を下げた。
385: 番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/12/12(月) 00:11:36 ID:6.GQMZQyxE
母「男くんごめんなさいね、この子シスコンだから嫉妬妬いてるのよ」
弟「何言ってんの。違うから」
弟の頭をポンポンと叩きながら母親が笑う。二人はそれを見て握り拳が入りそうな程にあんぐりと口を開けた。
女「お母さんまで居たの!?」
母「大丈夫よぉ、会話の内容までは聞いたりしてないから」
頬を火照らせた姉は両手で顔を隠して狼狽えた。穴があったら入りたいとはこの事を言うのだろう。
386: 番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/12/12(月) 00:29:53 ID:6.GQMZQyxE
男「……あの、俺はそろそろ失礼しますね」
上着を手に、いそいそと出口に向かう男が言った。
母「あらあら、邪魔しちゃったかしら」
男「いえ、そんな事は…!また来ます」
さようなら、と頭を下げる。名残惜しそうに様子を伺う姉に「またね」と笑顔で手を振った。
男が去った病室に少しの沈黙が流れた。仕切りなおすように母親がパチンと手を叩いて言った。
387: 番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/12/12(月) 00:51:05 ID:6.GQMZQyxE
母「さて!じゃあお母さん先生とお話ついでにお花の水入れてくるわね」
女「ああ、うん。行ってらっしゃい」
姉は病室のドアが閉まるのを確認して弟に視線を移した。表面上こそいつも通りにしているものの、椅子に掛けている弟の脚はブラブラと落ち着かない。
女「弟くん、何か良い事あった?」
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