男「あれ?何してたんだっけ?…なんで此処に居たんだっけ?」
住宅街の路地にポツリと立つ青年。見たところ、学生のようだ。
辺りを見渡しても、まるで自分以外の人間が魔法にでも掛けられたかのように姿を見せない。
灰色に染まった空は雨を降らせてパタパタと音を立てながらアスファルトを濡らしていく。
男「うわ!財布の中身散乱してるし!お札が濡れる!」
散乱しているお金を慌てて掻き集め、乱暴に財布に押し込んだ。
341: 番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/12/6(火) 22:11:43 ID:0LPkSTsaU.
───‥
女「そう、そんな事があったの」
弟「全く礼儀がなってないと思わない?もう、第一印象から最悪だったんだけどね」
風船のように膨らんだ弟の頬は、指で突けば割れてしまいそうな程に張り詰めている。
姉はそうしてやりたい衝動を抑えながら、年相応に愛らしく拗ねた弟を見てクスクスと笑った。
342: 番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/12/6(火) 22:35:26 ID:0LPkSTsaU.
女「もしかしたら恥ずかしがり屋なのかもしれないよ?次は優しく話し掛けてあげなよ」
弟「それじゃあ僕がいつも優しくないみたいじゃない?」
女「そんな事ないよー!今日の弟くんはまた特別可愛いけど」
弟「…何それ、可愛いかなんて訊いてないんだけど」
りんご色をした弟の頬がフイとそっぽを向く。その様子に、やはり可愛いと姉の細い手は弟の頭を撫でた。
343: 番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/12/6(火) 23:03:20 ID:VVmn2h4y/A
女「でも嬉しいなあ、弟くんから女の子の話が聞けるなんて」
弟「ちょっと、変な期待しないでよ?」
弟がジト目を向けても、姉は首を傾けて柔らかい笑みを浮かべるだけだった。夢見る少女の姉には何を言っても無駄なのだろう。
弟「…まったく」
弟はいつもこの柔らかな姉の雰囲気に呑まれてペースを乱される。どれだけ大人ぶってみせても無駄だった。
そうして自覚させられる。
自分は無力な子供なのだと。
344: 番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/12/6(火) 23:56:01 ID:0LPkSTsaU.
女「弟くんの結婚式とか、きっと私泣いちゃうんだろうなー」
『……お姉ちゃん、もう駄目かもしれないって』
目の前で輝かしい未来に胸を膨らませる姉は、母親がそう言われた事を知らないのだろうか。
女「娘さんを僕に下さい!とか言っちゃうのかな。私も言われたいなあ。娘はお前にはやらん!なんて…」
『手術するにも、今のままじゃ体力が保たないんだって』
本当は今すぐにでも大声で泣き喚いて姉の胸に飛び込んでしまいたい。
女「…もう、弟くん聞いてる?」
「お姉ちゃん、死なないで」と、縋りついてしまいたい。だけどそうする事が出来ないのは、やはり子供だからなのだろう。
弟「………」
素直になれない、子供だからなのだろう。
弟「気が早いよ、姉ちゃん」
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