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出会う感情の名は、
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1: 1 ◆b.qRGRPvDc:2011/10/16(日) 19:19:06 ID:f4A63ChN1o
男「あれ?何してたんだっけ?…なんで此処に居たんだっけ?」

住宅街の路地にポツリと立つ青年。見たところ、学生のようだ。

辺りを見渡しても、まるで自分以外の人間が魔法にでも掛けられたかのように姿を見せない。

灰色に染まった空は雨を降らせてパタパタと音を立てながらアスファルトを濡らしていく。

男「うわ!財布の中身散乱してるし!お札が濡れる!」

散乱しているお金を慌てて掻き集め、乱暴に財布に押し込んだ。


72:
◆b.qRGRPvDc:2011/10/28(金) 22:21:10 ID:H0rKvEN9d2

***


男「〜♪」

鼻歌混じりに青年は歩き、そのテンポに合わせてめぐが歩いた。
時折くるくると回ってみせ、その度にパシャリと水の音が立つ。

物寂しい路地に二人のメロディーだけが響いていた。


めぐ「…っ」

二人が出会った場所、あの電柱の前で、ふと、めぐが足を止めた。

男「?めぐ?どうした?」

めぐ「……」

男「めぐ…?」

青年が前方に目をやると、電柱の陰に黒いワンピースを着た少女が一人、此方を見て立っていた。

その目はめぐに向けられており、憤慨しているように見える。

少女「…本当に懲りないね、君」
73:
◆b.qRGRPvDc:2011/10/28(金) 22:30:23 ID:aaFLsViIeI
少女の黒目がちなその瞳はどこかめぐに似ている。年はめぐと同じくらいだろうか。

幼い少女の眉間には皺が寄っていた。

男「な、なんか怒ってるけど…知り合い?」

青年がめぐに耳打ちをすると、少女は目を見開いて青年を見つめた。

少女「……驚いた、私まで分かるんだね。これは例外…いや、今の状態ならあり得ない事ではない?」

「いや、でも私は…」顔を顰めてぶつぶつと呟く少女を見て、青年は思わず笑った。
74:
◆b.qRGRPvDc:2011/10/28(金) 22:44:21 ID:H0rKvEN9d2
男「驚いたって、幽霊じゃあるまいし」

クスクスと笑う青年を目の前に、少女の表情は変わらない。

腕を組んでフンと鼻を鳴らすと、半ば投げ遣りな態度で青年に言った。

少女「そう見えるなら幽霊とでも呼ぶといいよ。名前なんて私は貰っていないからね」

男「え?どういう意味…」

少女は先程と同じ目をめぐに向ける。めぐはピクリと体を揺らすと、口を結んで俯いた。

青年はそんな二人を怪訝な目で交互に見る。めぐと少女の関係は分からないが、二人の間に流れる空気の重圧は感じていた。
75:
◆b.qRGRPvDc:2011/10/28(金) 22:57:37 ID:H0rKvEN9d2
男「あのー…二人はお友達?もしかして、めぐの待ち人って…」

少女「その質問に関してはどちらに対しても答えはNOだね」

少女は横目で青年を見やると溜め息を吐いた。

少女「…骨折り損のくたびれ儲けどころじゃないね。何の為にこれと一緒に居るんだい、めぐ?」

男「こ、これ!?これ呼ばわり!?」
76:
◆b.qRGRPvDc:2011/10/28(金) 23:06:20 ID:aaFLsViIeI
少女の問い掛けにめぐは口を結んだまま答えないでいた。俯いためぐの髪からは雫が滴り、雨具のフードで隠れてその表情は伺えない。

ただ、少女がその態度に苛立ちを覚えている事だけは青年にも明白だった。

少女「ねぇ、そこの君」

男「は、はい…?」

少女「君は本当に何も聞かされていないの?」

男「何もって、何が……」

チラリとめぐに目をやる。
俯いためぐの拳は固く握り締められ、小刻みに震えていた。
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