男「あれ?何してたんだっけ?…なんで此処に居たんだっけ?」
住宅街の路地にポツリと立つ青年。見たところ、学生のようだ。
辺りを見渡しても、まるで自分以外の人間が魔法にでも掛けられたかのように姿を見せない。
灰色に染まった空は雨を降らせてパタパタと音を立てながらアスファルトを濡らしていく。
男「うわ!財布の中身散乱してるし!お札が濡れる!」
散乱しているお金を慌てて掻き集め、乱暴に財布に押し込んだ。
529: ◆b.qRGRPvDc:2012/1/10(火) 00:34:24 ID:ABTOoL.Ipw
中途半端ですが、此処までとさせて頂きます。あと二、三回の投下で完結予定です(`・ω・´)
それから、いらないお世話かもしれませんが番外編を纏めてみました。私の下らない独り言や頂いた支援は含まない、本編の部分のみです。
>>287-297 >>303-305 >>308-316
>>323-334 >>341-344 >>350-355
>>360-366 >>372-378 >>384-387
>>390-403 >>407-414 >>419-423
>>427-430 >>435-443 >>447-456
>>461-472 >>476-484 >>489-493
>>497-502 >>510-517 >>522-528
今日も読んで下さった皆さんに、最大級のありがとうを!ラストに向かってゴーゴー!
530: 名無しさん@読者の声:2012/1/11(水) 08:23:26 ID:jowajketls
うわーーノエルーー!
支援!超支援!
1さんの真面目で丁寧なとこ、自分は大好きです
531: 名無しさん@読者の声:2012/1/11(水) 19:06:41 ID:xhhM9QiWvs
CCC
532: 番外編 ◆b.qRGRPvDc:2012/1/11(水) 21:33:58 ID:MRSrxwshJs
弟「ノエル、どうして…駄目だよ、そんなの嫌だ」
ノエルは穏やかな笑みを浮かべ、ゆるゆると首を横に振った。
運命に逆らってでも、姉を死なせてなるものか。例えそれが、自分という存在をなくしてしまうのだとしても。
ノエルの真っ直ぐで、決して揺るがない決意だった。
ノエル「言ったでしょう?君も、君のお姉さんも、沢山の人に愛されている。その中に、私も含まれているんだよ」
533: 番外編 ◆b.qRGRPvDc:2012/1/11(水) 22:03:14 ID:7sLdf6eHp.
語り掛けるノエルの体は光の粒に変わり、流れ続けた。少しずつ、少しずつ、ノエルの存在が消えてゆく。
あれ程にまで焦がれていた救いが、今となっては馬鹿馬鹿しくも思える。そんなものに縋らずとも、ノエルはこんなに満たされていた。
ノエル「……めぐに、謝らなくてはいけないね」
ノエルの視線が、手首に落とされる。
今のノエルを見て、めぐは何と言うのだろう。救いの道は開けたというのに、馬鹿な奴だと笑うのだろうか。よくやったと、褒めてくれるだろうか。
小さく鳴らした鈴の音に、ノエルは微笑んで頷いた。
534: 番外編 ◆b.qRGRPvDc:2012/1/11(水) 22:26:24 ID:MRSrxwshJs
ノエル「君に出会えて、私は十分に救われた」
弟「ノエル、ノエル…!嫌だ、消えないでよ」
ノエル「友達だと言ってくれて、“ノエル”と名付けてくれて、本当に嬉しかったよ」
ありがとう、と涙を流すノエルの表情に、以前の仏頂面は見る影もない。弟の前に立っているのは、艶めかしく輝く黒髪が眩しい、美しい少女だった。
弟「ノエル…」
ノエル「弟くん、私を見付けてくれて、ありがとう」
そうしてノエルは唇に弧を描いたまま、いつものように弟に言う。さあ、良い子は帰る時間だ、と。
535: 番外編 ◆b.qRGRPvDc:2012/1/11(水) 22:51:08 ID:MRSrxwshJs
ノエルの身体は今にも消えてしまいそうな程に色を失い、サラサラと流れ続けている。
弟は堪らずノエルを抱き締めた。その存在を確かめるように、しっかり腕の中に捕まえた。
ノエル「悲しむ事はないよ。私という存在は、君の記憶と共に消えるんだ。元に戻るだけさ」
弟「嫌だ!忘れない!忘れたくない!」
ふと、ノエルの手が弟をがっちりと掴んだ。
ノエル「もしも、ほんの少しでも私の欠片を残す事が許されるのなら…」
536: 番外編 ◆b.qRGRPvDc:2012/1/11(水) 23:23:22 ID:7sLdf6eHp.
涙に濡れるノエルの顔が、抱き締めた身体が、光となって消えてゆく。流れる涙をも黄金色に輝かせ、ノエルは声を上げた。
ノエル「どうか君だけは、君だけは私を──‥」
チリン、と鈴の音だけを残し、ノエルの声は途絶えた。僅かに残った光の粒が惜しむように弟の頬を掠め、何処かへ消えた。
弟「───…ノエル」
537: ◆b.qRGRPvDc:2012/1/11(水) 23:32:45 ID:7sLdf6eHp.
今回は此処までとさせて頂きます。いよいよ>>505さんが導いて下さったラストが迫って参りました!
>>530
支援ありがとうございます!
ノエルーー!!
こんなにも皆さんからの書き込みでノエルの名を呼んで頂けるなんて、本当に嬉しいです。泣いてもいいでしょうか?
真面目で丁寧…恐らく、本当の私をご覧になったら驚かれる事でしょうね。私も530さん大好きです(´;ω;`)
>>531
支援ありがとうございます!
このSSを書き始めて早三ヶ月。沢山の支援を頂けて本当に幸せでした。長々と続いてしまいましたが、もう少しだけお付き合い下さい(´・ω・`)
538: 505:2012/1/12(木) 07:16:05 ID:YTr0jUTa5.
(;Д;)ノシ ここだ!!ここまで来い!!
全員へ
っハッピーエンドと幸せ
539: 名無しさん@読者の声:2012/1/12(木) 10:29:40 ID:rGeVyfef4c
最後の支援になりそうだな
>>1にも、登場人物全員も幸あれ!!
540: 名無しさん@読者の声:2012/1/12(木) 20:21:33 ID:IldJR.WcpI
このSS大好きだよ
もう終わると思うと本当に辛い…
皆幸せになれ!(;ω;)っCCCCC
541: 番外編 ◆b.qRGRPvDc:2012/1/13(金) 17:47:48 ID:TxKS0SpfWQ
*
弟「姉ちゃーん、これ何処に置けばいいの?」
ずっしりと、見るからに重量のありそうな段ボールを両手で抱え、弟が問う。その後ろで、かつてのクラスメイトである友が、息を切らせて壁に寄り掛かっていた。
女「はいはーい!ごめんねぇ、こっちに持って来てくれるかな」
真新しい壁紙に、まだ下ろしたてのように綺麗なフローリングの室内。その奥からひょっこりと顔を出した姉が、二人に向かって手招きをした。
542: 番外編 ◆b.qRGRPvDc:2012/1/13(金) 17:55:32 ID:p0f38hIIa.
友「うひぃー…弟、俺もう駄目。腰がやられそう」
弟「お前の体力の無さにはガッカリだよ、友」
酷い!と悲痛の叫びを上げる友の声を背に、弟はせっせと姉の居る部屋へ荷物を運んだ。
どさり。
段ボールを床に置いた弟は、腰に手を当て身体を反らせる。友にああは言ったものの、重い荷物を持つのは腰にくるものだ。
543: 番外編 ◆b.qRGRPvDc:2012/1/13(金) 18:15:01 ID:TxKS0SpfWQ
女「ありがとー!弟くん達が手伝ってくれて、本当助かる。自分達で引っ越しって結構大変──」
弟「姉ちゃん、走っちゃ駄目でしょ」
小走りで駆け寄る姉を、溜息混じりに弟が制止する。今となっては随分と目立つ、小さな命を宿したお腹を擦りながら、ちぇっと姉が口を尖らせた。
女「でも、転びそうになったら弟くん、抱き抱えてくれよね?」
当然、とでも言うように上目遣いの姉が笑う。
544: ◆b.qRGRPvDc:2012/1/13(金) 18:18:51 ID:p0f38hIIa.
姉ちゃんの台詞ミス…orz
×抱き抱えてくれよね?
○抱き抱えてくれるよね?
545: 番外編 ◆b.qRGRPvDc:2012/1/13(金) 18:33:00 ID:TxKS0SpfWQ
弟「はぁ…頭痛くなってきた」
弟は苦笑しながら、子供のような笑顔で笑う姉を見下ろした。
これでも一度三途の川を渡りかけているのだから、放っておきたくともそうはいかない。
奇跡のような復活劇から数年が経ち、弟は青年へ、姉はすっかり大人の女性へと成長を遂げた。姉に至っては男との長い交際の末に幸せを掴み、母親になろうとしている。
安定期に入ってからも悪阻が続いた姉は、予定日まで残すところ後二ヶ月程になってようやく落ち着き、それからひと月。繰り下げてきた引っ越しを慌ただしく始め、弟と友は手伝いに駆り出されたのだった。
546: 番外編 ◆b.qRGRPvDc:2012/1/13(金) 18:47:56 ID:TxKS0SpfWQ
弟「……折角助かった命なんだから、もっと大事にしなよ」
女「そうね、また弟くんが気絶しながら泣いちゃうと困るし」
じと、と弟が姉を睨むと、逃げるように段ボールから小物類を取り出し、整理し始めた。
弟「人が覚えてないのをいい事に、いつまでも引っ張るなよな」
また一つ、弟の口から溜め息が洩れる。
547: 番外編 ◆b.qRGRPvDc:2012/1/13(金) 19:07:37 ID:TxKS0SpfWQ
姉が危篤状態に陥ったあの晩の事を、弟は全く覚えてはいなかった。病室を出され、気が付いた時には見慣れない天井が其処にはあった。
幼い子供には余りにもショックが大きかったのだろう。気を失った弟は引き付けを起こし、眠りながら涙を流していたのだと、目が覚めた時に母親に説明された。
何か、大事な事を忘れている気がする。そうは思えど、やはり何も思い出す事はなかった。
それから数年、事ある毎に話題にされては笑われる事に、弟はほとほと困り果てていた。
弟「まったく…小学生の時の話を何度も持ち出されちゃ堪ったもんじゃないよ」
548: 番外編 ◆b.qRGRPvDc:2012/1/13(金) 19:21:26 ID:p0f38hIIa.
女「はいはい……あ、」
弟の様子を気にも止めていない様子の姉は、段ボールの中から一冊のアルバムを取り出して手を止めた。
桃色の刺繍が施されたアルバムの表紙には、真新しい赤ん坊のワッペンが縫い付けられている。穏やかな母親の表情を浮かべて、まだ見ぬ我が子の成長に胸を膨らませていた。
女「沢山思い出作ろうね、めぐちゃん」
「……めぐちゃん?」
首を傾げる弟に、お腹に手を添えた姉がにこやかに頷いた。
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