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魔王「世界の半分はやらぬが、淫魔の国をくれてやろう」
Part13


927 : ◆1UOAiS.xYWtC :2011/12/05(月) 02:06:50.35 ID:lDlhPoeEo
旅の途中、『魔法使い』が病に倒れ、『戦士』と『僧侶』とともに薬草を採りに行った。
冗談のような体躯を持つ氷の巨人を打ち倒し、間一髪のところで魔法使いの命は助かった。
ある古城では、『僧侶』が吸血鬼に浚われてしまった。
吸血鬼が彼女の首筋へ歯を立てる寸前に間に合い、その吸血鬼は灰と化した。
またある時は、『戦士』と『勇者』が領主に囚われてしまった。
処刑される前日、内通者を得た魔法使いと僧侶に救出され、領主に取り付いた魔物を倒す事ができた。
数え上げる事も億劫なほどの、命の危険。
野営すれば山賊に襲われ、海に出れば巨大な怪魚が姿を現した。
命がいくつあっても足りないほどの旅の末、魔王を倒せたとしてもあるのは戦乱。
強く精悍な『勇者』の頬を、
涙が一筋流れ落ちる。
ひどく虚しく、そしてどこまでも哀しい。
窓から離れ、椅子に腰掛ける。
誰もが『勇者』の勝利を信じ、応援していた。
二人の国王は、勇者が勝つ事を計算に入れた上で、『戦争』の計画を立てていた。
自分は、いったい。
何のために、戦ってきたのだろう。

928 : ◆1UOAiS.xYWtC :2011/12/05(月) 02:31:34.76 ID:lDlhPoeEo
勇者「…………ああ、もう」
落ち込んでいくしかない思考に区切りをつけ、立ち上がる。
魔王だけのせいではないが、どうにも暗く、唾液が苦くなるようだ。
勇者「どっちにせよ、引き返せないんだ」
旅の最中、出会った人々の顔を思い浮かべる。
渋い顔をしていたが、襲ってきた怪魚を倒してから、勇者の為に船を使わせてくれるようになった船長。
コボルトの被害に悩んでいた、ある村の長。
ダンジョンの奥深くから助け出した、エルフの娘。
勇者の生まれた国の、この世界の住人と比べても見劣りしないほど美しい姫君。
何の解決にもなりはしないが、ネジを締めなおす事はできた。
部屋を出て、どこへともなく歩いていく。
気の赴くまま、城内を散策しようと。

929 : ◆1UOAiS.xYWtC :2011/12/05(月) 02:57:52.66 ID:lDlhPoeEo
見て回ると、やはり淫魔の国の城と言うにふさわしい。
男女の交合の絵画が、廊下を彩っている。
その中には、『神』と『人』との交わりを描くものもあった。
どれも悪趣味ではなく、芸術作品として完成されていた。
それこそ、芸術に対し造詣が深くない勇者さえ、魅入ってしまうほど。
勇者「……ふーむ」
一つの絵画が目に留まった。
描かれているのは、豪華な寝台に寝そべる若い男に這い寄る淫魔。
その淫魔は、どうにも見覚えがあった。
勇者「これって……どう見ても……」
すぐに、その正体は分かった。
絵の中の淫魔は、サキュバスAに似ているのだ。
蒼い肌も、上質のアメジストのような瞳も、ねじれて天を向いた角も。
いや、これは本人と言っても良い。

930 : ◆1UOAiS.xYWtC :2011/12/05(月) 03:28:02.61 ID:lDlhPoeEo
サキュバスA「……気になります?」
勇者「うぉっ!?」
いきなり後ろからかけられた声に、驚いてしまう。
すぐに後ろを振り返り――そしてすぐ、絵画と見比べた。
サキュバスA「…これ、確かに描かれてるのは私ですよ。あの第二皇子は、中々に精力に溢れていました」
勇者「……ちなみに訊くが、これはいつの事だ?」
サキュバスA「今から……1039年前ですね」
勇者「相変わらずケタが凄いな」
サキュバスA「この時は、ただ彼の童貞を奪っただけですよ」
勇者「ただ、で済ますあたり更に凄いな」
サキュバスA「まぁ、いい思い出ですよ。……それはそうと、厨房に行ってみては?」

931 : ◆1UOAiS.xYWtC :2011/12/05(月) 03:46:54.75 ID:lDlhPoeEo
勇者「何か面白いものでもあるのか?」
サキュバスA「ええ。……くれぐれも、見つからないように?」
勇者「何なんだ?」
サキュバスA「行けば分かりますわ。…ふふ」
勇者「……そこまで言うなら」
サキュバスA「きっと驚きますよ」
勇者「堕女神が、『おいしくなぁれ』とでも唱えながら仕込みをしてるのか?」
サキュバスA「…………」
勇者「おい」
サキュバスA「…そういう日もありましたね、確か」
勇者「何か、どんどんイメージが崩れていく」
サキュバスA「い、いえ。……ともかく、行ってみてください」
勇者「……分かった」

932 : ◆1UOAiS.xYWtC :2011/12/05(月) 04:11:03.74 ID:lDlhPoeEo
物陰から、厨房を覗き込む。
広い厨房の中には、堕女神と、手伝いが二人ほど。
堕女神は大鍋の前から離れず、火加減を見ながら、ときおり灰汁を掬っているようだ。
堕女神「……もう少し、塩……?」
言って、塩を一つまみ投入する。
かき混ぜ、小皿にスープを取る。
左手で小皿を口元に運び、啜りこんだ。
堕女神「…良いでしょう」
得心がいったか、大鍋をかき混ぜながら小皿を置く。
見ていれば、たまに唇に指先を当て、俯いていた。
何日か前の朝食の時にも、その様子は見かけた
彼女の癖なのか、それとも、つい最近になってからなのか。
それは、勇者には分からない。
堕女神「……『美味しい』と、言ってくださるでしょうか」
灰汁を掬いながら、一人呟く。
その様子を見て、勇者は顔を引っ込め、厨房から離れて行った。

936 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(栃木県) :2011/12/05(月) 04:17:36.83 ID:Kk1PVjVno
堕女神可愛すぎわろた

941 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(長屋) :2011/12/05(月) 12:37:28.79 ID:HX1GTn1Ho
うん、やっぱり面白い
みんな可愛い。勇者がんばれ。

943 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) :2011/12/05(月) 13:03:14.33 ID:i3YEN86DO
堕女神が可愛すぎて生きてるのが辛い

944 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(鹿児島県) :2011/12/05(月) 18:18:19.71 ID:xswfdChe0
堕女神が可愛すぎて生きる希望を見つけた

945 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) :2011/12/05(月) 18:24:31.03 ID:urRTHHTQo
堕女神が可愛すぎて生きていく理由が見つかった

963 : ◆1UOAiS.xYWtC :2011/12/06(火) 01:12:12.56 ID:H3OHunjxo
勇者「…………………」
サキュバスA「あら、陛下。ご覧になられましたか?」
勇者「……ああ」
サキュバスA「いかがでした?」
勇者「もう、何つーの。『お前誰だ』って感じ」
サキュバスA「可愛いでしょう?……陛下も罪なヒトですわね、本当に」
勇者「別に怒らないけど、お前は本当にアレだな、言葉遣いから何から」
サキュバスA「私をそうさせたのは陛下ですわ」
勇者「それも俺のせいか?」
サキュバスA「ええ」
勇者「即答かよ」
サキュバスA「しおらしく振舞うのもわざとらしいでしょう?」

964 : ◆1UOAiS.xYWtC :2011/12/06(火) 01:26:57.92 ID:H3OHunjxo
勇者「自由な奴だな。初日とは大違いだ」
サキュバスA「初日……?」
勇者「ああ、いやこっちの話」
サキュバスA「?」
勇者「ともかく、五日前とは全然違うぞお前」
サキュバスA「というより、これが素ですので」
勇者「なぜ演じるのを止めたんだ?」
サキュバスA「……今の陛下なら、受け入れてくれると思いましたので」
勇者「…何だって?」
サキュバスA「何故でしょうね。自分でもよく判りませんわ」
勇者「………まぁ、続きは今夜だな」
サキュバスA「さてと、そろそろお昼ですわね。……それでは、失礼致します」

965 : ◆1UOAiS.xYWtC :2011/12/06(火) 01:59:43.13 ID:H3OHunjxo
勇者「…何だと言うんだ」
メイド「陛下、こちらにいらしたのですか?」
勇者「何だ、どうした?」
メイド「はい。お食事の準備が整いましたのでお呼びに」
勇者「分かった、すぐ行くよ」
メイド「沐浴の準備も済んでおりますので、いつでもどうぞ」
勇者「ありがとう。……やっぱり、我が家が一番、か」

966 : ◆1UOAiS.xYWtC :2011/12/06(火) 02:17:20.25 ID:H3OHunjxo
食事中
勇者「……なぁ」
堕女神「はい、何でしょう」
勇者「見すぎ」
堕女神「…失礼しました」
勇者「………」ズズ
堕女神「お味はいかがでしょうか」
勇者「美味いよ。視察のはずが色々と回るはめになったけど、これが一番だな」
堕女神「勿体無きお言葉です」
勇者「それだけか?」
堕女神「と、申されますと?」
勇者「……スープを火にかけながら、『おいしくなぁれ☆』って」
堕女神「そんな事は言ってません」

967 : ◆1UOAiS.xYWtC :2011/12/06(火) 02:36:56.89 ID:H3OHunjxo
勇者「……言ってないのか、残念」
堕女神「私はどういう位置付けなんですか」
勇者「それはともかく、さっきから口元が緩んでるな」
堕女神「………いえ」
勇者「今さら引き結んでも手遅れだ」
堕女神「…………」
勇者「話を変えるが、この後何か予定は入ってるのか?」
堕女神「いえ。予定では今頃南方の砦の視察から帰る途中ですので。今日は、体をお休めください」
勇者「…言葉に甘えるよ。流石に、色々と堪えた」
堕女神「お食事が済みましたら、体を清めて、少し眠るがよろしいかと」

968 : ◆1UOAiS.xYWtC :2011/12/06(火) 02:55:46.20 ID:H3OHunjxo
勇者「そうするかな。……さて、ご馳走様」
堕女神「……残さず、食べて下さるのですね」
勇者「…?」
堕女神「私の作ったものを、残さずに」
勇者「当たり前だろ?」
堕女神「あの時、褒めて下さいましたね」
勇者「それが?」
堕女神「………貴方は、『誰』ですか?」
喉の奥、うなじから上の辺りが重く、震えた。
突飛すぎる。
そのきっかけも、言葉も、全てが予想外すぎる。
彼女の料理を褒め、そして残さず平らげた。
それが―――彼女には、違和感だったと。

969 : ◆1UOAiS.xYWtC :2011/12/06(火) 03:21:35.02 ID:H3OHunjxo
勇者「質問の意味が、分からない……な」
堕女神「あまりにも、違いすぎるのです」
勇者「え…?」
堕女神「隣国に対しての措置。私に対しての態度。……何もかもが」
勇者「…………」
堕女神「……差し出がましい事とは存じますが、どうかお答えを。……貴方は、『誰』なのですか?」
勇者「……俺、は」
堕女神「…はい」
勇者「上手くは説明できない。明日の夜、部屋に来てくれ。……そこでなら、全てを話せる」
堕女神「明日?」
勇者「……ああ。明日が、俺が『ここ』にいられる、最後の日だ」
堕女神「……分かりました」

972 : ◆1UOAiS.xYWtC :2011/12/06(火) 03:49:36.79 ID:H3OHunjxo
勇者「『俺』が嫌いか?」
堕女神「…………」
勇者「まぁ、いい。それも、明日だ」
堕女神「はい」
勇者「……だが、信じてくれ。お前の料理は、本当に美味かったんだ」
堕女神「そう……申されても」
勇者「今までに食べたどんなものよりも、美味かった。『勇者』をもてなす為の晩餐じゃない。
    誰かが、心を込めて作ってくれる料理。……美味かった」
堕女神「……」
勇者「それじゃあ、な。……少し休んだら、風呂に入って少し眠るよ」

973 : ◆1UOAiS.xYWtC :2011/12/06(火) 04:28:18.53 ID:H3OHunjxo
少しの休息の後、勇者は浴場へ向かった。
二回目だというのに、不釣合いに広い浴場は、馴染んだ我が家の風呂そのものだった。
湯煙の中、適温に保たれた湯に体を沈める。
肌から染み入るような、体表から毒素が抜けるような、何とも言えない至福の時。
一瞬の至福の時を超えると、重苦しく、斧刃のように心に圧し掛かる事実。
明日の夜に眠り、目が覚めると自分は消えている。
魔王の前に、対峙する事になる。
それを今さら恐れたりはしない。
魔王を倒すという気概は、微塵も薄れていない。
だが、失われる。
この世界の、全てを。
堕女神の料理を味わえない。
サキュバス達との交合の快楽も。
この素晴らしく満たされた時間の、全てが。


魔王「世界の半分はやらぬが、淫魔の国をくれてやろう」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1323147951/

1 : ◆1UOAiS.xYWtC :2011/12/06(火) 14:05:52.02 ID:H3OHunjxo
前スレ
ttp://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1321385276/
登場人物

勇者:文字通り。魔王城でスレタイな事態になって、七日間のお試し体験中。現在六日目。

堕女神:淫魔の国の王の身の回りの世話をしている。態度が硬いが、実はキス魔。料理も得意な元・”愛”の女神。

サキュバスA:おちょくるような態度を取るお姉さんタイプのサキュバス。実はMの20942歳。

サキュバスB:精神年齢低めのサキュバス。王にガチ惚れしてて色々悩む。3418歳。

隣女王:隣国の淫魔を統べる女王。幼い姿のまま成長しない特性を持つ、褐色銀髪ついでに貧乳の15歳。真面目だが本性は……

魔王:勇者の動向を全て見ている。正直、さっさと快楽に溺れて堕ちてくれないかと思ってる。

オーク:レイプ要員。空気も読める。

ローパー:触手要員。ちょっとだけ芸もできる。
注意
・>>1は遅筆です。書き溜めもろくにできないのでご了承下さい
・見て下さった日にエロ成分が無くてもご容赦を

39 : ◆1UOAiS.xYWtC :2011/12/07(水) 03:35:17.46 ID:5snW6QyYo
勇者「一ヶ月って言えば良かったな」
冗談めかして、鼻で笑いながら漏らす。
無論、本気ではない。
ただ、あまりに短くて。
せっかく、あの堕ちた女神も柔らかい態度を見せるようになったのに。
サキュバス達とも、気のおけない付き合いができるようになったのに。
この世界を取り巻く環境と、力関係が理解できてきたのに。
それが、あまりに惜しい。
勇者「はぁ……」
大きな溜め息が、誰もいない浴場に響く。
一人ではあまりにも広い。
勇者「上がろう、どうにも今日は落ちるな。……少し、寝よう」
水面を波立たせて、立ち上がる。
その時、踏み締めた床の感覚が消えた。
鼻の奥から頭痛が昇って来て、それが頭頂に達するのを感じた途端、視界が歪んだ。
次に感じたのは、したたかに左肩を強打する痛みと、床の冷たさ。
最後に――少しずつ、暗転していく世界。

42 : ◆1UOAiS.xYWtC :2011/12/07(水) 03:52:26.66 ID:5snW6QyYo
誰かの、声が聞こえた。
無意識下の幻聴なのか、それとも、本当に誰かが語りかけてくるのか。
無造作に広がる茫漠とした韻律が、”こより”を作るかのように徐々にはっきりとしてくる。
???「――起きてください」
勇者「誰、だ」
???「私を、お忘れですか?……『勇者』よ」
勇者「…お前は」
???「貴方に力を授け――いえ、目覚めさせた存在」
勇者「……『女神』だな。堕ちていない方の」
???「………」
勇者「これは、夢か?……今度は、一体何を押し付けてくるんだ?」

45 : ◆1UOAiS.xYWtC :2011/12/07(水) 04:22:12.53 ID:5snW6QyYo
女神「……ごめんなさい」
勇者「…謝る前に、何に対してなのか言ってくれよ」
女神「貴方を……『勇者』にしてしまった事に」
勇者「それの何が負い目だ?」
女神「魔王の災いを止める為に、私は正しい事をしたと思っています。……『勇者』を覚醒させるしかなかったのですから」
勇者「……謝りたいのはそれじゃない、か」
女神「『勇者』でなければいけなかったのです。古来より、『魔王』は『勇者』に打ち倒される。その因縁は、私とて抗えません」
勇者「……………」
女神「絶対の真理なのです。『魔王から逃げる事ができない』のと同じように」
勇者「……ふん」
女神「……?」
勇者「今言ったそれは、違うんだ。俺は、旅の中でそれを知った」
女神「え?」

46 : ◆1UOAiS.xYWtC :2011/12/07(水) 04:37:45.80 ID:5snW6QyYo
勇者「魔王が怖くて逃げようとして、それでも逃げられずに殺されてしまう人も、確かにいるさ」
女神「……」
勇者「…でも、そうじゃなかった人達もいっぱいいた。無名の兵士だったり、叩き上げの十人隊長だったり、あるいは『父親』だったり」
女神「と、言いますと……?」
勇者「目の前に、世界を恐怖に陥れる『魔王』。一度逃してしまえば、次に姿を見られるのはいつなのか。
    そもそも、命があるうちに対峙する事ができるのか分からない。そして、今自分は生きて目の前にいる」
女神「…………」
勇者「…逃げる事など考えられなくなる人がいる。ここで倒せば、それで世界は救われる。
    ――だから、考えるんだ。『魔王から、逃げるわけにはいかない』って」
女神「それは……無謀に過ぎます」
勇者「分からないよ。貴女には。……ともかく、『魔王から逃げられない』は、魔王の言葉じゃない。俺達の、人間の言葉なんだ」

48 : ◆1UOAiS.xYWtC :2011/12/07(水) 04:51:42.83 ID:5snW6QyYo
女神「……つまり?」
勇者「血を引く勇者の末裔ではなくても、『魔王』と戦う事はできるんだ。岩に刺さった剣を抜けなくても、雷電の剣撃を扱えなくても」
女神「……ですが……」
勇者「上手く言えないが。……『勇者』は、任命されるものじゃない。自分で『勇者』になるんだ」
女神「………」
勇者「ある若い新兵が、魔王に一太刀を浴びせ、血を流させるのを見た事がある。……彼は死んでしまったけれど、
    その時は紛れも無く……『勇者』だったよ」
女神「そんな……非現実的な」
勇者「心配しなくていい。それでも俺は、魔王を倒す。……だから、もう。『勇者』を任ずる必要は、無いんだ」
女神「…初めて、です。そのような言葉を頂いたのは」
勇者「そうか。ともかく、世界は……貴女達が思うより、『大丈夫』なんだって事を俺は言いたいんだ」
女神「……ごめんなさい。あなたの人生を、奪ってしまって」