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魔王「世界の半分はやらぬが、淫魔の国をくれてやろう」
Part12


832 : ◆1UOAiS.xYWtC :2011/12/02(金) 03:55:40.13 ID:PQnaktxSo
堕女神の部屋の前
勇者「……本当に、見張りがいるな?」
隣女王「はい。信頼の置ける衛兵です」
勇者「ふむ。……おい、異常はないか?」
衛兵「はい。物音一つしませんでした」
勇者「なら結構。……入るぞ?」
二回、ドアを叩く。
返事はない。
勇者「……寝てるのか?入るぞ?」
もう一度ノックする。
またしても、返事はない。
ドアノブを捻り、中へ入る。

833 : ◆1UOAiS.xYWtC :2011/12/02(金) 04:02:38.98 ID:PQnaktxSo
女王を伴い、室内へ。
部屋に異常はなく、彼女も、ベッドの上で規則正しく寝息を立てている。
勇者「……おい、起きないか。おい?」
堕女神「う………?」
隣女王「堕女神さん、お体の具合でも悪いのでしょうか?」
堕女神「…じょ、女王陛下……?も、申し訳ありません、ただいま……!」
布団を跳ね飛ばし、体を起こす。
彼女のいつものドレスはベッドの上に畳んで置かれ、彼女は下着姿で眠っていたようだ。
勇者「…慌ててないか?何かあったのか?」
堕女神「………い、いえ……別に……」
勇者「話すんだ」
堕女神「本当に、……何でもないのです」
勇者「…話せ。これは頼みだ。……何が、あったんだ?」

834 : ◆1UOAiS.xYWtC :2011/12/02(金) 04:09:13.27 ID:PQnaktxSo
堕女神「……実は」
勇者「ああ」
堕女神「昨夜、浴場で…会った淫魔達が、この部屋に。……そして……私、を……」
勇者「…本当なのか?」
隣女王「何かの間違いではありませんか?彼女らは、お二方の滞在中は罰則として地下牢にいる筈です」
堕女神「いえ。……その証拠に縄の痕が………?」
勇者「そんなの、ないぞ?」
堕女神「え?」
隣女王「……もしかして」
勇者「何だ?」

835 : ◆1UOAiS.xYWtC :2011/12/02(金) 04:15:20.79 ID:PQnaktxSo
隣女王「考えられるのは……『夢』です」
堕女神「私が……淫夢を見たと?」
勇者「ああ、そうか。お前は、『夢』に入り込まれたんだ」
堕女神「……!」
勇者「忘れてた、って顔だな。……覚醒してたなら、それぐらいの力はある筈だ」
隣女王「…それでも、彼女らは一介の淫魔ですよ?…堕女神さんほどの力の方の夢になんて」
勇者「…俺が身をもって知ったんだよ。この国の淫魔は、そういうのに長けてるんだ。……女王も含めて」
堕女神「……夢、だった」
隣女王「………後ほど、彼女らに話を糺します」
勇者「それで、いったいどんな夢を見たんだ?」
堕女神「…………」

836 : ◆1UOAiS.xYWtC :2011/12/02(金) 04:38:00.86 ID:PQnaktxSo
朝食中
隣女王「……申し訳ありません。やはり、彼女らでした」
勇者「……予想通り?」
隣女王「はい。三人とも淫魔として覚醒していました」
勇者「……まるでサキュバスみたいな事をする」
隣女王「いえ、サキュバスですから」
堕女神「陛下、早く帰りましょう。……身の危険を感じて、仕方がありません」
勇者「ああ、分かった。食事を終えたら、すぐに帰ろう。転移は使えるな?」
隣女王「誠に申し訳ありませんでした。彼女らは、どうにも力を使ってみたくて仕方がなかったようです」
勇者「新しい玩具をもらったら、そうなるか」

837 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) :2011/12/02(金) 04:39:56.46 ID:5XLCmEESO
子供こえー

844 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) :2011/12/02(金) 09:25:52.42 ID:OxPDDGKyo
子供なのに覚醒して強すぎwwww

845 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) :2011/12/02(金) 13:53:36.50 ID:Skhfxl/IO
この国こえー

848 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) :2011/12/02(金) 22:19:12.35 ID:Epl+VJpao
女王とのセックルも夢だったのか!!?

849 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) :2011/12/02(金) 23:48:55.60 ID:OSxedTSAo
>>848
え?

850 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(チベット自治区) :2011/12/03(土) 00:30:27.68 ID:ZnpueCyK0
>>848
なんだと…?

851 : ◆1UOAiS.xYWtC :2011/12/03(土) 00:38:18.76 ID:QgmEsVeko
隣女王「ふふ……気付かなかったんですか?……一日目の朝から、貴方は私の夢の中だったんですよ」
隣女王「逃がしませんよ、………永遠に」
隣女王「ほら。……もっと、愛し合いましょう?」
魔王「世界の半分はやらぬが、淫魔の国をくれてやろう」


852 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) :2011/12/03(土) 00:39:07.91 ID:uiC6rdEOo
おいwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
おい

854 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) :2011/12/03(土) 00:39:58.30 ID:EA4PSjm+o
おい

855 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) :2011/12/03(土) 00:42:23.94 ID:BD+gU6BYo
おい

858 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(富山県) :2011/12/03(土) 00:55:07.17 ID:/WHBEo/yo
スレの8割使ってのまさかの夢オチwwwwwwwwwwwwwwwwwwww

856 : ◆1UOAiS.xYWtC :2011/12/03(土) 00:43:28.34 ID:QgmEsVeko
流れがもったいなかったので、つい
それでは本編始めますがペース遅いです

859 : ◆1UOAiS.xYWtC :2011/12/03(土) 01:12:04.63 ID:QgmEsVeko
勇者「それにしても、一体どんな夢だったんだ?」
堕女神「…言えません」
勇者「言いたくないならいいけど。全く、どういう国なんだ」
隣女王「お詫びのし様もありません……」
勇者「……アレコレと恩に着せるつもりは無いが、仇で返される謂れは、もっと無いな」
隣女王「………」
堕女神「へ、陛下。どうか……お平らかに」
勇者「分かっている。嬲りたい訳じゃない。……ただ、どうしても収まらなかっただけだ」
隣女王「…申し訳、ございません」
勇者「………力の使い方を、きちんと教えてやってくれ。淫魔の本能が抑えられないのは分かっているつもりだ」
隣女王「……」
勇者「それでも、違えてはいけない領分があるという事を。……頼む」
隣女王「……はい」

860 : ◆1UOAiS.xYWtC :2011/12/03(土) 01:29:32.71 ID:QgmEsVeko
食後
勇者「さて、……帰ろうか、堕女神」
堕女神「はい」
隣女王「この度の御恩、決して忘れません」
勇者「もう、オークが襲ってきても大丈夫だろ?」
隣女王「そう願います」
勇者「まぁ、駄目でもいいさ。いつでも助けに来る。……『勇者』である限り」
隣女王「……勿体無きお言葉」
勇者「さぁ、行こうか」
堕女神「はい、陛下」

862 : ◆1UOAiS.xYWtC :2011/12/03(土) 01:52:28.16 ID:QgmEsVeko
淫魔の国 玉座の間
勇者「……おー、流石に早いな」
堕女神「…ようやく、帰って来れましたね」
勇者「なんだか、酷く久しぶりな気がする」
堕女神「同感です」
勇者「……とりあえず、部屋で休みたい」
堕女神「はい。その前に、サキュバス達に会いに行っては?」
勇者「それもそうだな。何処にいる?」
堕女神「今は昼前ですから……恐らく、庭園に」
勇者「分かった、ありがとう。お前は休まなくて大丈夫か」
堕女神「お気遣いなく。私は問題ありません」
勇者「…そうか。それじゃ」

863 : ◆1UOAiS.xYWtC :2011/12/03(土) 02:22:15.14 ID:QgmEsVeko
庭園
勇者「……ここに、いるのか?」
サキュバスA「……陛下?」
勇者「何してるんだ」
サキュバスA「見ての通りですわ。……薔薇の手入れを」
勇者「お前達の仕事だったのか?」
サキュバスA「ええ、まぁ」
勇者「……普段、何してるんだ?」
サキュバスA「そうですわね。…庭の手入れ、城内の掃除、厨房の手伝い……それと、陛下の」
勇者「ほう」
サキュバスA「……ん?」クンクン

864 : ◆1UOAiS.xYWtC :2011/12/03(土) 02:26:24.05 ID:QgmEsVeko
勇者「どうかしたのか?」
サキュバスA「……ひょっとして、隣国に行きませんでしたか?」
勇者「ん、ああ……それが?」
サキュバスA「……生還、心よりお喜びいたします」
勇者「あ?」
サキュバスA「よくあの国に行って、生きて帰って来れましたこと」
勇者「話が見えない」
サキュバスA「……あの国で夜を過ごすと、生きては帰れないのです。特に殿方は」
勇者「…………そこまで言われてるのか?」
サキュバスA「……ダー○シュ○イダーが壊れるレベルですわ」
勇者「誰だよ」
サキュバスA「さぁ?」

865 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) :2011/12/03(土) 02:39:07.33 ID:CxqBJavz0
そんなヤバイ国だったのか

866 : ◆1UOAiS.xYWtC :2011/12/03(土) 02:41:33.83 ID:QgmEsVeko
勇者「………」
サキュバスA「私達はただ度を超えて淫乱なだけですが、彼女らは男を文字通り殺しますからね」
勇者「…よく帰ってこれたなぁ、俺」
サキュバスA「『サキュバス』の剣呑なイメージの六割ぐらいは彼女らが担っています」
勇者「……あの外見で?」
サキュバスA「あの外見で」
勇者「聞けば聞くほど、妙な種族だ」
サキュバスA「私達でもドン引きしますよ」
勇者「さっきから酷い言い様だな」
サキュバスA「自分でも不思議ですわ」

868 : ◆1UOAiS.xYWtC :2011/12/03(土) 03:10:06.84 ID:QgmEsVeko
勇者「それで、サキュバスBは?」
サキュバスA「あら、私とでは退屈でしたか?」
勇者「絡むなよ」
サキュバスA「ふふ。…あの子は、確かあちらで剪定を」
勇者「ああ、ありがとう」
サキュバスA「………?」
勇者「…どうした?」
サキュバスA「……あ、い、いえ……今、陛下が……」
勇者「俺が?」
サキュバスA「…一瞬、消えたように見えてしまって。……気のせいですわ」
勇者「…消えた?」

869 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(九州) :2011/12/03(土) 03:17:35.81 ID:XlJli1GAO
いよいよついに

870 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(愛知県) :2011/12/03(土) 03:22:17.21 ID:dCnHIuOSo
とうとうか

871 : ◆1UOAiS.xYWtC :2011/12/03(土) 03:30:07.40 ID:QgmEsVeko
勇者「……変な事を言う奴だな」
サキュバスB「あ、陛下!」
勇者「お」
サキュバスB「お帰りなさい。…どうしたんですか?」
勇者「いや、別に。……それより何だ、酷く汚れてるな」
サキュバスB「え、あ……さっき、木から落ちちゃって」
勇者「飛べるんだろ?」
サキュバスB「あ……。そ、そうでしたね……えへへ……」
勇者「……こっちに来い」
サキュバスB「…え?」
勇者「(……こいつ、こんなに可愛かったか)」
サキュバスB「陛下、何を……えっ!?」

872 : ◆1UOAiS.xYWtC :2011/12/03(土) 03:53:51.51 ID:QgmEsVeko
勇者「………」ギュッ
サキュバスB「へ、へいか……?」
勇者「…いい匂いがする」
サキュバスB「…………!」
勇者「……しばらく、こうさせてくれないか」
サキュバスB「…は…はい……」
そのまま、時間にして十分前後。
勇者は、彼女を抱き締めていた。
ふわりと漂う花の香り。
さらさらとした髪の手触り。
背中に回した手から伝わる、確かな鼓動。
何故だろう。
彼女が、いや。
『淫魔』の体の温もりが、酷く切ないものに思えてきた。

873 : ◆1UOAiS.xYWtC :2011/12/03(土) 04:18:45.12 ID:QgmEsVeko
勇者「……今夜は、お前とA二人で来い」
サキュバスB「え?」
勇者「…嫌ならいい」
サキュバスB「いえ、そんな事……」
勇者「済まないな」
サキュバスB「?」
勇者「……いや、自分でも分からない」
サキュバスB「……陛下、いったいどうなさったんです?」
勇者「……今夜、話すよ」
そう言って、勇者は体を離していく。
表情はどこか哀しげで、それでいて、揺らがない決意を感じさせる。

920 : ◆1UOAiS.xYWtC :2011/12/05(月) 00:00:19.75 ID:lDlhPoeEo
勇者「…ちょっと訊きたいが」
サキュバスB「はい、なんですか?」
勇者「俺……消えて、ないよな?」
サキュバスB「…質問の意味が……」
勇者「いや、分からないならそれでいいんだ」
サキュバスB「はぁ……?」
勇者「じゃあ、また夜にな」
サキュバスB「はい、陛下」
勇者は、自室へと帰って行く。
言わんとする事を理解できない淫魔は、呆けたような、それでいて熱を帯びた視線を向けて見送った。

921 : ◆1UOAiS.xYWtC :2011/12/05(月) 00:18:21.85 ID:lDlhPoeEo
勇者「………さて、と」
自室に入り、鍵を閉める。
いつの間にか「我が家」と同じ居心地を感じていた、『淫魔の王』の部屋。
山羊の頭が象られた飾りのついたベッドに、腰を下ろす。
勇者「…見ているんだろ?魔王」
魔王「ああ、見ているとも。……あそこで精気を吸われて殺されていれば、我も手間が省けたものを」
勇者「ふざけるな。俺は戻る。戻って貴様を、『魔王』を倒す」
魔王「さて、そこだ。……我を倒して、いったい何になる?」
勇者「…少なくとも、世界は貴様の脅威から救われる」
魔王「その後は?」
勇者「………そうだな。きっと俺の国と隣の国は、また戦争を始めるな」
魔王「ククク、中々に現実を見る勇者もいたものだ」

922 : ◆1UOAiS.xYWtC :2011/12/05(月) 00:32:52.57 ID:lDlhPoeEo
勇者「『世界を救った勇者』だからって、きっと贅沢な暮らしもさせてもらえないだろうな」
魔王「大方、貴様を祭り上げて戦争にでも駆り出すのだろう?……人間というものは、全く以って救いがたいぞ」
勇者「……それでも俺は、『世界』を救う」
魔王「滅私……いや、殉教者ではないか。それはそうとだ。この世界の『王』の正体は分かったかな?」
勇者「俺なりの答えには辿り着いたさ」
魔王「それは重畳。……いや、流石は『勇者』かな?クク……」
勇者「一つ答えろ」
魔王「ほう?」
勇者「南方のオークを追い立てたのは貴様か?」
魔王「……きっかけは作ったな。オークほど扱いやすい手駒もそう無いのでね」

923 : ◆1UOAiS.xYWtC :2011/12/05(月) 00:58:27.22 ID:lDlhPoeEo
勇者「…目的は何だ?」
魔王「強いて言えば、貴様のための演出、といったところだ」
勇者「何だと?」
魔王「なに、身体が鈍るだろうと思ってな。ほぐすには手頃だったろう?」
勇者「………それだけの、ために」
魔王「奢侈と色欲に溺れ、感覚を鈍らせた勇者と戦うのも面白くあるまい」
勇者「貴様!」
魔王「怒りは、こちらへ戻って来た時のために取っておくが良い。……さて、我はもう貴様とは話さん。あと一日なのだからな」
勇者「魔王……!」
魔王「今日と明日。悔いの残らぬように過ごす事だ。……いや、貴様の選択次第では戻って来れるがな?」
勇者「………」
魔王「ではな。貴様の答えを楽しみに待つとしようか」

924 : ◆1UOAiS.xYWtC :2011/12/05(月) 01:33:33.63 ID:lDlhPoeEo
それきり、魔王の声は聞こえなくなった。
見てはいるだろうから、余計に居心地が悪い。
窓から、外を覗き込む。
眼下の庭園から、城下町、そして遠くの山までを一望できる。
空は広く青く、流れる雲が表情を加えていた。
深く、深く息を吸い込む。
日が高くなり、緩んだ空気があたたかく肺を満たす。
下を見れば、サキュバス二人をはじめとして、数人の園丁が庭を整えていた。
薔薇の棘を落とし、伸びた枝を切り、仕事をこなしている。
サキュバスAは危なげなく、洗練された物腰で薔薇の手入れをしていた。
サキュバスBは少し外れた庭園迷路に手を入れているようだが、迷わないかが心配でもある。
見ているだけで、楽しかった。
時折視線に気付いた使用人が一礼を送り、すぐに仕事に戻る。
満ち足りていた。
園丁の一人一人にいたるまで、心底美しかった。
外見の麗しいのは、疑う余地もない。
魔王が言ったように、人界には望めないほどの美女ばかりだ。

926 : ◆1UOAiS.xYWtC :2011/12/05(月) 01:47:58.16 ID:lDlhPoeEo
美しいと思えたのは、見た目だけではない。
彼女らは、確かに生きていた。
庭を整え、厨房で腕を奮い、自らの職務を全うし、それでいながら澱んでいない。
その『活きる』姿が、美しいのだ。
―――魔王を倒せたら、世界がこんな風になればいいのに
その一文が、心を横切る。
誰もが平和に生活を送り、子供らの成長を見届け、夜には暖かい食卓があり、日々を『活きる』世界。
だが、望めない。
勇者の故郷とその隣国は、既に情報戦を開始していた。
互いの領地に斥候兵を送り、土地に浸透した間諜が本国へ早馬を送る。
彼らは、既に人同士で殺し合う準備を進めていた。
『勇者』が救ったあとの世界で、また、互いを殺し合う手はずを整えていた。