2chまとめサイトモバイル

女「ハローハロー。誰かいませんか?どうぞ」

Facebook Twitter LINE はてなブックマーク
Part11
189 :名無しさん@おーぷん :2015/09/14(月)10:05:28 ID:WLA
リン「ここから離れた方がいい」
リンが静かに言った。私は壊れたおもちゃのようにガクガクと何度も頷いた。
リン「立てるか。ほら」
差し伸べられたリンの手を取ろうと、力を振り絞って起き上がる。
「ひゅーひゅー」
その視界のはじに、なにかが。
リン「…」
「お姉ちゃんたち、らぶらぶー」
女「ひ、…」
白い霞のような少年が、街灯の上で足をぶらぶらさせていた。
女「リ、リィイイイイン!!!」
またしても私はリンに抱きつく。細い腰に手を回し、顔をうずめた。
リン「…」
一方、リンは瞳孔さえ開いているものの、鋼の理性を取り戻したようで。
リン「…誰だ、お前」
霞む少年を睨みつけ、言った。
「あはは」
「らぶらぶ。ひゅー」
リン「…クリアか?」
「さあどうでしょう。そのお姉ちゃんとチューしてくれたら教えてあげる」
リン「殺すぞ」
重い一言だった。 およそ子どもにかけているとは思えない、ドスの効いた声。

190 :名無しさん@おーぷん :2015/09/14(月)10:13:29 ID:WLA
「あはは、こわーい」
少年は街灯の上に立つと、くすくす笑った。
リン「降りて来い!屋敷で不愉快な演出してたのもお前だな」
リンが吠える。しかし少年は愉快そうに笑うだけだった。
「怒ってる怒ってるぅ」
女「…ち、ちょっと」
ようやく回復した私も、リンの加勢をすることにした。
女「あなた、…誰なの?ねえ、降りてきてよ」
「んふふ」
少年は首を傾けてこちらを見た。 …愛らしい少年だった。
年は、10歳前後か。ぼんやりと透けて、白い。
正確には、露出した肌の部分が白い。 身に着けているセーラータイプのシャツなどには、滲んだ青色が確認できる。
「降りてきてよぅ」
少年はウェーブのかかった髪を揺らしながら、歌うように言った。
私をまねして、からかってる。
女「ちょ…」
「知りたかったら、捕まえてごらんよ」
ふわ、とバレエダンサーのような見事な一回転をすると
「きゃははっ」
少年は煙のように消えた。 
女「…」
リン「…」
しばし、呆然。

191 :名無しさん@おーぷん :2015/09/14(月)10:18:49 ID:WLA
女「…今の、何」
リン「分からん」
女「見たこと、ある?」
リン「無い。クリアにしても異常すぎる。ほぼ人間の形をしているし、発声も滑らかだし、意識もある」
リン「第一。…質感だ。クリアだと流動性のある液体質な体をしているが、あいつは違う。煙のようだ」
女「ま、まさかさ、幽霊…なんじゃ」
リン「…」
リンはさっきまで少年のいた街灯を睨み、喉を振るわせた。
リン「…俺はそういう、非科学的なものは信じない」
女「でも、…でもあれ」
リン「とにかく、捕まえるぞ。あいつが何者であれ、一発食らわせないと気がすまない」
女「え!?」
主旨がズレている気がする。
リン「ほら、グズグズするな!行くぞ」
リンは腰を捻って私を振り払い、駆け出した。
女「ちょ、待ってよお!」
まだ少し震える足をいなして、私も彼の揺れる後ろ髪を追いかけた。

192 :名無しさん@おーぷん :2015/09/14(月)10:25:04 ID:WLA
…ああ。
特筆すべきだろうか。この半日を。
私達は、あの忌々しい少年(?)を探して、日が沈むまで遊園地を駆け回った。
しかし。
リン「…」
女「…」
夕暮れ時。オレンジ色の日が山の間に沈もうとしている、今。
リン「…疲れた」
女「ね…」
私達は、満身創痍でベンチに伸びている。
リン「くそ、…あいつ。一体何処に」
女「分かんないよ…」
あの少年は、二度と私達の前に姿を現さなかった。
全エリアを駆け回った私達が、今彼を見つけたとしても、…また逃げられるだけだろう。
女「足が痛い…」
リン「だから言っただろ。…そんな歩きづらそうな靴」
女「機能的なほうだってば」
リン「…」
ぐったり。このオノマトペが今世界で一番似合うのは、きっと私達だ。

193 :名無しさん@おーぷん :2015/09/14(月)10:29:06 ID:WLA
女「もう、…どうする?リン」
リン「これ以上の活動は危険だ」
リンは額に腕を乗せ、溜息混じりに言った。
女「車まで帰る?」
リン「そうしよう。今のところクリアは確認できていないが、夜に出るかもしれない」
女「…そだね」
よっこらせ、と立ち上がる。
リンは彼らしくなく背を少し丸め、遊園地の階段を下りていった。
女「…明日、どうする?」
リン「探す」
女「だよねえ…」
ゾンビのようなスピードで駐車場に入り、車の座席へと体を投げ出す。
女「あー…」
このまま、永遠に眠れそうな気がした。
リン「…計画を練ろう。このままじゃジリ貧だ」
女「はー、い」
明日の寝坊は、多分確実。


194 :名無しさん@おーぷん :2015/09/14(月)10:35:59 ID:WLA
月が昇り、私達は昼と同じようにカップ麺で夕食を済ませた。
お風呂に入りたかったが、生憎こんな所にシャワーなど無く。
女性としての威厳を全て奪われたような気分で、私は駐車場で伸びをした。
リン「はい」
リンが蒸しタオルを投げて寄越す。
リン「これで我慢しろ。風呂は、今日は無理」
女「はーい…」
抵抗する気力も無く、車を挟んで見えないように体を拭いた。
リンがくれた無香の消臭剤だけ、体に降りかける。
女「…ええと、大丈夫?」
リン「なにが」
女「におい」
リン「どうでもいい」
女「あ、そう…」
トイレの水道で髪をがしゃがしゃ洗ってきたリンは、不思議と何の匂いもしなかった。
男の子特有の、あの、汗の匂いもない。 
女「…ねむ」
リン「だな」

195 :名無しさん@おーぷん :2015/09/14(月)10:40:37 ID:WLA
計画をたてよう、と提案したリンだが、彼の目の下にはクマが浮き出ていた。
女「…もうさ、休まない?」
リン「…そうだな」
その言葉を待っていたというように、リンは座席に身を投げ出した。
リン「…寝る。おやすみ」
毛布にすっぽりと覆われ、私に背を向ける。
女「おやすみ、リン」
私も毛布を抱え、目を閉じた。
眠りは、一瞬で私の体を飲み込んだ。
目の前が、暗くなる。
「ふふ」
「やっぱりなー」
声が聞こえる。
いたずらっこのような、可愛らしい声が。
「ねえねえ、おねえちゃーん。おーきて」
頬に何かが触れた。 棒のようなもの。 私の頬を、つんつん突付く。
女「…ん、ぅ」
「おーきーてーってば」
女「…!?」ガバッ
「おはよお」
目の前に、あの煙の少年がいた。

196 :名無しさん@おーぷん :2015/09/14(月)10:45:53 ID:WLA
女「ひ、…」
「おっと、ちょっと待って。しーだよ。しー」
悲鳴をあげようとした私の口を、温度の無い手が覆う。
「…あの人寝てるから。起こさないでよね」
女「ー、…っ」
「そんなに怖がらないで。ね、大丈夫。なーんにもしなよ」
少年はふわふわした髪を揺らし、にこりと笑った。
女「…な、んで。…ここに?」
「えへへ。…しー。ね、外に出てくれない?」
女「…嫌だ」
「えー。…じゃあ、イタズラするよ」
零れそうな大きな目が、きゅっと細められた。
女「…」
嫌な予感がする。
「いいのかなー?」
女「だ、…駄目。分かった、だから落ち着いて」
「うん。じゃあ、僕の言うこと聞いてくれるよね?」
女「…」コクコク
「静かに車から出て」
女「…」
身長にドアを開け、なるべく静かに閉めた。

197 :名無しさん@おーぷん :2015/09/14(月)10:50:42 ID:WLA
悲しいかな、リンは死人のように身を堅くし、泥のような眠りを貪っている。
女(気づけよぅ…)
「はい、よくできました」
少年は嬉しそうに私の腕に絡み付いてきた。
女「…あなた、本当に…。何なの?」
「ふふ」
少年が一歩先へ踏み出し、手招きする。
「ついておいで。一緒に来れたら、教えてあげる」
女「…」
向かう先は、遊園地。
どうしよう。…リンを置いて、一人で?
女「…駄目。危ないよ。知ってるでしょ、透明なアレが出るの」
「お姉ちゃんなら、大丈夫でしょう?」
女「!」
くすくす、くすくす。イタズラっぽい目で笑う少年。
「ほら、置いていっちゃうよ」
女「…」
武器なら、いつでもポケットに忍ばせている。言いつけどおり。
女「…分かった」
私は少年に手をひかれるまま、夜の遊園地へと足を向けた。

198 :名無しさん@おーぷん :2015/09/14(月)10:55:22 ID:WLA
「ええと、改めてこんばんは」
少年は遊園地のオブジェの前で、ぺこりと礼をした。
「僕の名前はコマリ。お姉ちゃんは?」
女「…女」
コマリ「ふうん。あの怖い顔したお兄ちゃんは?」
女「彼はリン。一緒に旅をしてるの」
コマリ「へええ」
コマリ、という少年の目がまたきらりと輝いた。
コマリ「かれし?」
女「断じて違います」
コマリ「えー、でもさあ。抱き合ったり一緒に寝たりしてたじゃん。そういうの、コイビトっていうんだよ」
女「…違うの。あれは不可抗力というか、しかたなく」
コマリ「なんだ。つまんないのー」
女(…とんだおませさんだな)
コマリ「ね、女たちって、人間だよね?生きてるの?」
女「そ、そうだよ。当たり前じゃん」
コマリ「…ふうーん。そうなんだー。やっぱりか」

199 :名無しさん@おーぷん :2015/09/14(月)11:01:55 ID:WLA
コマリはふわふわと宙を漂い、私を観察した。
コマリ「あの病気に、かからなかったんだね」
女「…うん」
コマリ「そっかー。ラッキーだね」
女「そうかな」
私の髪をなでたり、足を触ったり、無邪気ながらに接してくるコマリ。
彼は、一体。
女「ねえ、コマリ。…あなたは、人間?」
コマリ「えー」
コマリはくすくすと笑った。
コマリ「人間。そうだね、前はそうだったよ」
女「今は、…違うの?」
コマリ「うん。だって僕、死んだもん」
女「…」
じゃあ、じゃあ。やっぱり彼は。
コマリ「僕、…ユウレイってやつなのかも」
女「そ、…う」
コマリ「怖い?」
女「ううん」
コマリの笑みは、太陽に似ていた。最初は戦いたものの、今ではただの子どもに見える。
コマリ「…じゃあ、女。僕の話、聞いてくれない?」
女「話?」
コマリ「うん。ずっとずっと、誰かに言いたかったけど言えなかったことがあるんだ」

200 :名無しさん@おーぷん :2015/09/14(月)11:06:56 ID:WLA
女「…いいよ」
コマリ「ほんと?やったあ」
コマリは私の手を取ると、ベンチに座らせた。
コマリ「ええとね、長くなるけどいい?」
女「うん」
コマリ「…えーとね、僕、ママと一緒にここにいたんだ」
コマリの目が伏せられた。そのまま、無邪気さを孕んだ声で語りだす。
コマリの、記憶。
彼にまだ、実体があったころの話だ。

201 :名無しさん@おーぷん :2015/09/14(月)11:12:11 ID:WLA
僕ね、あの日ママとここにいたんだ。
ママは、ここのせきにんしゃ、だったんだよ。
だからあの日も、避難するより早くここの「せきゅりてぃー」を、…ええと
…うーん。難しいから、よく分かんない。けど、とにかくお仕事でここにいたの。
え?そうだよ。僕も一緒にいた。
遊園地のてんけん?が終わったら、お爺ちゃん家に避難することになってたの。
お昼なのに、お客さんいなくてね。
社長さんと、ママと、僕と、あと従業員の人が2人くらいしかいなかった。
僕はスタッフルーム、っていうところで、お菓子を食べながらママのお仕事が終わるの待ってたんだ。
あ、鍵、かかってた?
…そっか。
うーん、分かんない。鍵、どこかな?
まあ、いいから聞いて。
それでね

202 :名無しさん@おーぷん :2015/09/14(月)11:17:44 ID:WLA
ママが皆とお仕事して、お昼の1時くらいには終わったみたいで。
「コマリー、お待たせ。行こう」
ってママが言ったの。
社長さんが来てね、僕の頭なでて、
「また会おうな、コマリ。落ち着いたら、また皆で焼肉食べに行こう」
って言ってくれた。
社長さんね、うふふ。ママのこと、好きなんだよ。
パパとママがりこんしたときも、ママのこと慰めてくれたの。
僕ね、前のパパ嫌いだったよ。すぐ怒るもん。けど、社長さんがパパだったら、…嬉しいかも。
ええと、それでね。
社長さんと一緒に、駐車場まで行ったの。
車に乗ったんだけど、そこでママが「あ!」って言った。
社長さんとごにょごにょ話してね、それで、僕に
「コマリ、ちょっと忘れ物をしたの。社長さんととりに行くから、待ってて」
僕、うんって返事した。
ママは社長さんと走って、遊園地に戻っていった。
でね、夕方になっても戻ってこなかったの。

ショートストーリーの人気記事

神様「神様だっ!」 神使「神力ゼロですが・・・」

神様の秘密とは?神様が叶えたかったこととは?笑いあり、涙ありの神ss。日常系アニメが好きな方におすすめ!

妹「マニュアルで恋します!」

同僚女「おーい、おとこ。起きろ、起きろー」

魔法使い「メラしか使えない」

彡(゚)(゚)「お、居酒屋やんけ。入ったろ」

彡(゚)(゚)「もう春やなぁ。酒でも飲むか」

犬娘「魔王になるっ!」

彡(゚)(゚)「寒いなぁ。志衛でお酒のんで暖まるンゴ」

のび太(31)「いらっしゃいませ。」

彡(゚)(゚)「志衛でお酒を飲むんやで」