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女「ハローハロー。誰かいませんか?どうぞ」

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Part15
245 :名無しさん@おーぷん :2015/09/14(月)16:21:47 ID:1mE
女「…」
私は、しばらくその場にたたずんでいた。
ただ、コマリの消えた助手席を見ていた。
リン「おい」
リンが肩を叩く。
女「…ん?」
リン「これ」
リンが、どこで摘んできたのか黄色い花を私に差し出してきた。
女「…コマリに?」
リン「ああ」
可愛らしい花弁を風揺らす花を、2本。
私とリンの手が助手席に置いた。
さようなら、コマリ。
私とリンは、日が昇りきるまで、リンの消えたあとを見つめていた。
そして
車に戻って少しだけ仮眠を取り、私達は遊園地をあとにした。

246 :名無しさん@おーぷん :2015/09/14(月)16:22:45 ID:1mE
>>245
リンの消えたあとじゃない…コマリだ…

247 :名無しさん@おーぷん :2015/09/14(月)16:23:23 ID:1mE
とにかく遊園地編終了です。お付き合いどうも。

248 :名無しさん@おーぷん :2015/09/14(月)16:25:47 ID:hJm

結末がどうなるのか楽しみ

249 :名無しさん@おーぷん :2015/09/14(月)16:56:31 ID:irI
お疲れさま


250 : :2015/09/14(月)21:55:30 ID:MWg
アニメ化決定

251 :名無しさん@おーぷん :2015/09/15(火)21:43:02 ID:3YH
マダァ-? (・∀・ )っ/凵⌒☆

252 :名無しさん@おーぷん :2015/09/16(水)02:29:53 ID:SiT
期待

253 :名無しさん@おーぷん :2015/09/16(水)14:01:26 ID:FZE
「ハローハロー。続きはまだですか?どうぞ」

255 :名無しさん@おーぷん :2015/09/16(水)20:13:23 ID:ePK
女「…」
リン「…」
私達は、無言で山道を走った。
何も言えなかった。
悲しい、とか、寂しいとか、…この感情につく名前が思いつかない。
リンは、どう思っているのだろうか。
彼は今、何を考えて運転をしているのだろうか。
女「…」
その横顔は、いつもより白く見えた。
リン「なあ」
女「あ、…なに?」
リン「お前今、何考えてる」
女「…」
リン「どう思った」
女「分かんない。…悲しい。けど、…良かったなって思う」
リン「良かった?」
女「だってコマリは、もう一人ぼっちじゃないでしょ」

256 :名無しさん@おーぷん :2015/09/16(水)20:23:07 ID:ePK
リン「そうだな」
女「…リンは?」
リン「概ねお前と一緒だな」
リン「それより一つ、気になったことがある」
出たよ。
感傷に浸るということを知らないのか、この男の子は。
リン「あいつの遺体についてだ」
女「ああ。…綺麗だったね」
リン「損傷が全く無かった。俺たちが来る1秒前に死んだといわれても驚かない程度に」
女「確かに」
そうだ。コマリ、って呼んだら、あの可愛い声で「はあい」って返事して起きそうなほど。
リン「…首の痣。あれは潜伏感染の証だ」
女「そうだね」
リン「俺は、…それが何か関係してるんじゃないかって思ってる」
女「でも、感染しちゃったら頭が破裂するんじゃないの?」
リン「潜伏感染の例を見たことがあるか?」
女「ない…」
リン「なら、わかんないだろ。ああやって死体が綺麗なまま残るのかもしれない」
女「死体はまあ、百歩譲って分かるとしてさぁ。あの煙みたいな霊体…みたいなのは?」
リン「知らん。分からん」
女「っていうか、こんな話すべきじゃないよね?もっとこう、じーんとすべきじゃない?」
リン「はあ?…いや、もういいだろ」
女「リンって、…切り替え早いよね。あ、悪い意味でだよ」

257 :名無しさん@おーぷん :2015/09/16(水)20:27:49 ID:ePK
私が精一杯の毒をこめた言葉に、リンが片頬を歪ませた。
リン「俺はあいつが嫌いだったからな」
女「…そうなの?」
リン「ああいう甘ったれは、苦手だ。いなくなって清々してる」
女「…ふうん」
そういうことにしておこう。
彼がコマリを抱いた時の、あの優しげな声や表情とか。
彼がコマリに手向けた、あの花の美しさとか。
…言ったら、怒るんだろうな。彼は。
リン「何笑ってる」
女「ううん。…リンってさあ、いい人だよね」
リン「はあ?」
女「何でもない」
じろりとこちらを睨んできたリンの視線をかいくぐるように、窓の外に目を向けた。
コマリの今際の言葉どおり、リンは山を下り、海に向かっている。

258 :名無しさん@おーぷん :2015/09/16(水)20:32:38 ID:ePK
女「ねえ、リン」
リン「ん」
女「…コマリと何を話してたの?」
リン「は?」
女「いや、いきなりコマリに協力しだしたり、別れ際だって何かこしょこしょ話してたじゃない」
リン「…」
リンがサイドミラーに目を向けた。
リン「たいしたことじゃない」
女「…彼って?」
リン「知らない」
リンがハンドルを切る。私の体は慣性に従い、ゆるく揺れた。
女「生存者?」
リン「…多分」
女「歯切れ悪くない?ねえ、何か秘密にしてるでしょ」
リン「本当に知らない。ただあいつは、生きた人間が海に向かったと言っていたんだ」
女「それが条件だったの」
リン「ああ」
…本当かなあ。
かなり、怪しい気がする。
女(なーんか)
リンは私に、何か隠している気がするのだ。
でも、追求しすぎるのはいけない気がした。
女(ま、…会って一週間も経ってない人に、軽々しく何でも言えない、か)
少し、…いや、なんでもない。

259 :名無しさん@おーぷん :2015/09/16(水)20:37:29 ID:ePK
少し停まろう。
正午の少し前、リンが呟いた。
女「ん、どうかした?」
リン「少し休みたい」
確かに。リンの一日は、ほぼ外を走り回るか、運転するかだ。
女「ごめんね、運転ばっかりさせて」
リン「しょうがない。お前にハンドル任せたら生命の危険だからな」
女「返す言葉もないけど…」
リン「涼しくなってきたな」
リンがついに、道路わきに車を停めた。
狭い道だが、対向車などあるはずもないので気にしなくていい。
リン「…なあ、川だぞ」
リンが私の座る助手席の窓を、顎で示した。
女「えっ」
身を乗り出すと、さらさらと音を立てる木の葉の隙間から、清い流れが見えた。
女「ほんとだ!!」
リン「よし、降りよう」
リンが珍しく、瞳に輝きを湛えている。
女「うんっ」

260 :名無しさん@おーぷん :2015/09/16(水)20:43:19 ID:ePK
女「つめたーーー!」
ばしゃばしゃと音を立てて浅瀬に入る。
飛び散った水の冷たさは、成る程、もう秋だ。
リン「転ぶなよ」
リンが裾をまくりながら言った。 失礼にもほどがある。
女「大丈夫ですからー。…リンも、ほらっ」
お返しに手を引っ張ると、リンはつんのめりながら川に入った。
リン「うわっ」
女「冷たいでしょ」
リン「いきなり引っ張るな。転ぶだろ」
リンはぎこちなく腰を曲げ、水を掬った。
美しい透明さだった。清水は光を屈折させ、リンの手のひらを爽やかに潤す。
リン「綺麗な川だな」
女「ここ、近くにキャンプ場とかもあったんだよね。もっと上流に行けば、滝もあるよ」
へえ、と呟いたリンに、そろそろと近づく。
冷たい水を掬って、そーっと
リン「おい」
女「げ」
振り返ったリンが、じとりと私を睨んだ。
女「えへへ」
リン「小学生みたいなことをするな」

261 :名無しさん@おーぷん :2015/09/16(水)20:48:12 ID:ePK
女「いやー、水っていいよね」
ぱしゃぱしゃと子どものようにはしゃいで跳ね上げる私。
リン「…寒い。もういい」
体を冷やすだけ冷やすと、さっさとタオルで足を拭くリン。
女「水着とかあればなー」
リン「風邪引くだろ、この冷たさじゃ」
女「でもこんな綺麗な川、泳がなきゃ損じゃん」
リン「…川遊びがしたいなら、もっと他に適役なのがあるぞ」
え、と振り向く。
玉石が転がる川瀬に腰を下ろしていたリンが、にやっと笑った。
リン「というわけで、今日の晩飯を取れ」
手渡されたのは、釣竿と網。
女「…こんなのあったんだ」
リン「勿論だ。たまには出来合いの食品以外のものをとらないとな」
女「でも私、釣りしたことない」
リン「知るか。とにかく自分が釣った分だけが食える、というルールの下やる」
暴君かこいつは。
女「と…取れなかったら、分けてく」
リン「やだね」
女「嘘ぉ」

262 :名無しさん@おーぷん :2015/09/16(水)20:57:24 ID:ePK
身の丈ほどの釣竿と、網を持ったまま呆然とする。
リンはさっさと場所を吟味しにかかった。
女「ちょ、っとー」
リン「なんだ」
女「やり方がわからないんだけど」
現代っ子め、とでも言いたげな目でリンはこちらを見た。
やれやれとこちらに近づいてくる。
リン「本当にやったことないのか?」
女「うん。全然分かんない」
リンは溜息をつき、釣竿を手に取った。
リン「餌をつける。針で指切るなよ。あと、返しが付いてるから服につけるな」
リン「…で、投げる。糸を張って、魚がかかるまで待つ」
女「魚がかかったら、どうするの?」
リン「引っ張る。終わり」
女「えー?」
リン「えー、じゃない。ほら、さっさと振れ」
女「ま、待ってよ。まだポイント決めてない」
リン「あっそ」
女「…絶対リンよりいっぱい取ってやる」
リン「ふうん」

264 :名無しさん@おーぷん :2015/09/16(水)21:00:25 ID:ePK
砂利の上を歩き、魚のいそうなポイントを探す。
上流なので川の流れはそこそこに速い。
女(…いんのかな、魚)
やがて目視じゃ何も確認できないと知った私は、川の中央にある大きな石まで移動した。
女「よ、っと」
ぬるぬるした苔を踏まないよう、慎重に足場を決める。
リン「そこでいいのか」
女「リン、こっちは私のテリトリーだから来ないでよね」
リン「はいはい」
びゅ、と軽い音がして、リンが竿を振った。
女(負けるか)
みようみまねで、私も川の流れに糸を垂らした。
女「…」
糸は流され流され、ぴんと張って止まった。
女(かかるかな)
少しの不安と、大きな期待を胸に、竿を握り締めた。
30分後。
女「…」
1時間後。
女「…」
遠くで静かな水音がした。
振り返ると、リンが何の感動も無く竿を上げ、大きなニジマスをバケツに移していた。

265 :名無しさん@おーぷん :2015/09/16(水)21:04:58 ID:ePK
女「…」
唖然としてその様子を見つめる。
リン「…」
リンはもう一度竿に餌をつけ、…そしてちら、とこっちを見た。
女「!」
笑っていた。
目を細め、顎を上げ、どうだといわんばかりに。
女「く、…っ」
悔しい。本気で悔しい。
女(なんでいつもいつも、リンのほうが優秀なのよ)
もう見ない。急いで竿に視線を戻し、その振動に集中する。
しばらくして、また後ろで水音がした。
またまたしばらくして、後ろで水音がした。
またまたまたしばらくして、…
女「やめた!!」
2時間半が経った時、わたしは遂に高らかに宣言した。

266 :名無しさん@おーぷん :2015/09/16(水)21:12:37 ID:ePK
岩の上を下り、足音荒く砂利道を歩く。
リン「あれ、やめるのか」
竿を繰りながら、リンが言った。
女「…」
彼の傍らにあるバケツには、瑞々しい色の魚が4匹。
女「私に釣りは向いてないのかも」
リン「だろうな。集中力、根気がいるからな」
女「…っ」
くそう。くそう、くそう。
リン「どうすんだ?このままじゃ晩飯ナシだぞ」
女「黙ってて。あのね、考えはあるんだから」
そう、ある。
女「リンは今4匹ね。…すぐ倍にするから、いいもん」
リン「そんなに取っても食いきれないだろ」
冷静に竿を見つめながら返すリンに、精一杯の抵抗として舌を見せた後、私は服に手をかけた。
上着に着ていたパーカーを脱ぎ、半そでのTシャツだけになる。
リン「…」
靴を脱いで、太ももまでを覆っていたハイソックスを地面に放る。
リン「何する気だ」
リンが静かに聞いた。
女「魚のつかみ取り」
短く返すと、私は川の中に勇ましく入っていった。

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