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キモオタ「我輩がおとぎ話の世界に行くですとwww」ティンカーベル「そう」 不思議の国のアリス編

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Part33
894 :◆oBwZbn5S8kKC :2017/07/18(火)02:21:52 ID:VHC
桃太郎「よ、よし!若干の不安は残るけどこれ以上ライオンに負担はかけらんない!さぁ助太刀するぞライオn」
ドシュ
ライオン「ぐぅ…ぐあぁっ!」ドサッ
桃「ライオン!」
アシェンプテル「良かったじゃあないかライオン。目的通りお前は十分に時間稼ぎを成功させた、だが私はこれ以上お前と踊るつもりはない。そろそろ眠っていろ」スッ
ドシュッ
ライオン「ぐあっ…!」ドサーッ
ロック鳥「ルオオォォッ!?」サッ
青い鳥「うわっ、なんだなんだ!?」
アシェンプテル「殺してやっても良かったが…気が変わった。せいぜいそこの役立たずの獣共と一緒に桃太郎の勝利を神にでも祈っているがいい」
桃太郎「クッ…ライオン、今行く!お前の傷も青い鳥の怪我も拙者がすぐに治してやるからなーー」
ヒュバッ
桃太郎「シンデレラ…!そこをどけ!拙者は友の傷を癒さなければならないんだ!」
アシェンプテル「させない。これだけ時間を与えてやったんだもう十分だろう……さぁ、そろそろ私と踊ってもらうぞ?」

895 :◆oBwZbn5S8kKC :2017/07/18(火)02:37:53 ID:VHC
ヒュバッ
桃太郎「また姿が…!見えないというのは厄介だ。標的は拙者か?ラプンツェルか?さっきはラプンツェルを先に始末するような事を口走っていたけど、その通りに動いて来るか?あるいはーー」
ラプンツェル「よーしっ、見切った…!シンデレラはそこにいる!くるっとして捕まえちゃうラプちゃんの髪の毛を受けてみよー!」フンスッ
バサッヒュヒューッ
桃太郎「おぉっ!?まさかラプンツェルお前、早速シンデレラを捕えたっていうのk…ゲホォッ!!」ドスッ
アシェンプテル「……そのアホの娘を信じるお前が悪い。そいつに作戦など理解できるはずないだろう」
ラプンツェル「むーっ…避けられちゃったか…」グヌヌ
アシェンプテル「何を言っている、避けてすらいない。お前が勝手に虚空に髪の毛を放り投げただけだ」
ラプンツェル「あれー?でも私は諦めないよー!いーっぱい投げたら一回くらいはなんとなく当たるかも…!」ヒュヒュ ヒュヒュ
パサッ パサッパサッ
アシェンプテルの声「無駄だ、闇雲に投げてあたる程ノロノロと動いてはいないのでな。」
桃太郎「ラプンツェル!焦るのは解らんでも無いけどそんな闇雲にやってても仕方ないって!あいつの攻撃にあわせてもっと確実にだな…」
ラプンツェル「でもー、私はちょっとでも早くシンデレラの事助けてあげたい!だってシンデレラ、いまとっても悲しい気持ちのはずだもんそれにとっても辛いんだよね」
アシェンプテル「悲しいだの辛いだの、助けたいなど勝手な事をぬかすな」
ラプンツェル「強がらないでいいよ、私はママの時も見てるから知ってる…心を操られるってこ都がどれだけ湯よいか」

896 :◆oBwZbn5S8kKC :2017/07/18(火)02:44:30 ID:VHC
誤字
ラプンツェル「心を操られるってことがどれだけ辛くて悲しくて涙が出ちゃうことなのか…」
今日はここまで つづきは水曜日(無理そうなら木曜日)更新します!お楽しみに!

897 :名無しさん@おーぷん :2017/07/18(火)03:17:37 ID:V3O
乙です!!

899 :名無しさん@おーぷん :2017/07/18(火)04:49:56 ID:kGb
乙!
そうだよな……ゴーテルもアリスの胡椒でやられたんだった
ラプちゃん桃さん頑張れ頑張れ
ライオンもよくやった!


906 :◆oBwZbn5S8kKC :2017/07/20(木)02:08:43 ID:srB
ラプンツェル「二人も知ってるよね。アリスが【ラプンツェル】の世界を消しちゃおうとした時、抵抗するママにアリスが心を操る魔法具を使った事」
桃太郎「話には聞いている。確か、怒りの感情を植えつけるコショウを使われて……ゴーテル殿の性格は豹変したんだったか」
ラプンツェル「うん。それでママは、普段絶対に言わないような酷い事を私にいっぱい言ったよ。それでねーー」
アシェンプテル「その話に興味は無い」ヒュッ
ドゴォ!
ラプンツェル「……んぐっ!」ズサーッ
桃太郎「ラプンツェル!」
アシェンプテル「確かに私は精神に干渉する魔法具を使われている、そしてお前の母親が感情を操る魔法具を使われた事も知っている。だが…それは今この場で話す必要のある話か?」
アシェンプテル「私はお前達を殺そうとしているんだぞ?そんな相手にする意味のある話か?答えは否だ、考えるまでも無い。……これだから馬鹿の相手は疲れる」
ラプンツェル「……シンデレラはね、私の事、バカだとかそんな風に言わないよ?」ヨロッ
アシェンプテル「当然だろう。私はアシェンプテルだ、シンデレラじゃあない」
ラプンツェル「違うよ、シンデレラだよ」
アシェンプテル「何も解っていないなお前は…そもそも私とお前の母親では使われた魔法具が違う。お前の母親が使われたコショウはありもしない怒りの感情を強制的に植えつける代物だ」
アシェンプテル「だが私の身体に突き刺さる悪魔の鏡の破片は違う、性格を捻じ曲げる代物だ。ありもしない感情を植えつけるような効果は無い」

907 :◆oBwZbn5S8kKC :2017/07/20(木)02:14:14 ID:srB
アシェンプテル「つまり…だ。シンデレラは少なからずあの継母や義姉に怒りを感じていたし、周囲に流されるがままの人生に疑問を感じていた。そしてお前の馬鹿さ加減に僅かながらうんざりしていた」
アシェンプテル「私が抱いている怒りや憎しみの感情は元々シンデレラが心の奥底で抱えていたものだ。悪魔の鏡の破片は、その感情を表に出す手伝いをしたに過ぎない」
アシェンプテル「これで理解できたか?感情を植えつけられたお前の母親と、元々存在する感情を引き上げられた私では状況が違う」
ラプンツェル「そんな事無いよ、違わない!同じだよ!」
アシェンプテル「馬鹿に何を言っても無駄か…」
ラプンツェル「だってそうでしょ!確かにシンデレラは悪いおかーさんやおねーちゃんのこと憎んでたかもしれないし、魔法使いのおかげで苦労せずにお姫様になった事悩んでたかもしれない」
ラプンツェル「私がいっつもめちゃくちゃな事しちゃうの、ちょっぴりうんざりしてたかもしれない。でも、シンデレラはそんなこと少しも言わなかったよ!」
アシェンプテル「シンデレラは他人を優先にする愚かな女だ。継母に復讐をすれば王子に迷惑がかかる、労せず王族になった事に疑問を抱けば魔法使いに失礼だ、友人のお前に暴言など吐きたくない…」
アシェンプテル「他人に迷惑をかけたり傷つけるくらいならば自分が耐えればいいという考えの女だ。だから言わない、自分の心内にしまい込む…そういう奴だというだけだ」
ラプンツェル「だったら…今、アシェンプテルがしてる事はシンデレラがやりたくないって思ってた事でしょ!」
ラプンツェル「魔法具のせいで…シンデレラはやりたくない事させられてる!言わないでおこうって思ってた事、言わされてる!それってとてもひどい事だよ!」
アシェンプテル「馬鹿女がわかったような口を…!」
ラプンツェル「シンデレラは愚かだから我慢してたんじゃない、とっても優しいからみんなの事傷つけたくなかったんだよ!」

908 :◆oBwZbn5S8kKC :2017/07/20(木)02:21:02 ID:srB
アシェンプテル「……馬鹿と会話をしたのが間違いだった」ヒュッ
ドゴシャ!!
ラプンツェル「……っ!ゲホッゲホッ!」ヨロヨロ
桃太郎「もういいラプンツェル!これ以上は危険だ、拙者の後ろにーー」
ラプンツェル「あの時、コショウの効果が切れて正気に戻ったママはね、泣いていたんだよ。今まで、私の前で泣いたことなんかなかったのに……」
アシェンプテル「……」
ラプンツェル「何度も何度も謝ったんだよ!ごめんねって、娘じゃないなんて言ってごめんねって!キモオタ達が帰った後だってずっとずっと気にしてたんだよ……」
ラプンツェル「あれから随分経つけど…今だってママはあの時の事引きずってる。ううん、きっとこの先もずっと私にひどい事言っちゃったこと、ママは自分の事を責め続けるんだよ」
アシェンプテル「私とお前の母親は、違う」
ラプンツェル「シンデレラだって同じだよ!魔法具の効果が切れて正気に戻った時……絶対に悲しむよ!復讐しようとした事、キモオタや私達に攻撃したりひどい事言ったりした事…」
ラプンツェル「全部知って、すんごく後悔してずっと自分の事を責め続けるよ、それでずっと謝り続けるよ!私はそんなの嫌だよ!だから私はシンデレラを元に戻すんだよ、少しでも早く!」
ラプンツェル「ちょっとでもシンデレラの心の傷が少なくて済むように、私の友達が泣かなくてもいいようにしたいの!だから大人しく捕まってよね!」
アシェンプテル「断る。だが安心しろ、今ここでお前を殺してしまえば『シンデレラ』は傷つく事もこの事を知る事も無い、永久にな」ヒュバッ
ガキィンッ
桃太郎「お前の言うとおりだよなラプンツェル…。長引けば長引くほどあいつは辛い思いするんだ、それなのになにモタモタしてんだ拙者は!」

910 :◆oBwZbn5S8kKC :2017/07/20(木)02:29:12 ID:srB
アシェンプテル「……感心するよ、随分と速度を上げたつもりだったけれど、まだ刀で防ぐか」
桃太郎「あいにく攻撃よりも防御や回避の方が得意だからな」チャキッ
アシェンプテル「腰抜けのお前らしいな。だが…私の最高速度はこんなものじゃあないぞ?」カツンッ
スッ…
ラプンツェル「あっ、また姿が消えたよ!桃太郎気をつけt」
桃太郎「避けろラプンツェル!!」グイッ
ビッ
ラプンツェル「……っ!」
桃太郎「さっきまでとは段違いの速度…!拙者ですら完全に読み切れない…!」
ビッ
桃太郎「ぬぐぅ…!防御が追い付かない…!」ググッ
キィンッ
桃太郎「しまった!鬼屠りが…!」カラーン
アシェンプテル「その刀が無ければお前などただの男…。いや、まだ隠し玉があったか……だが何を引っ張り出そうと同じ事」
アシェンプテル「終いだ、桃太郎」ビッ
ゴシャアッ

911 :◆oBwZbn5S8kKC :2017/07/20(木)02:32:34 ID:srB
桃太郎「がはっ…!」ベキベキッ
アシェンプテル「全力の『ガラスの靴』直撃はなかなかの味だろう?さぁ治癒される前に次のーー」
桃太郎「ゼェゼェ…。ラプンツェル…頼む…!」ガシッ
ラプンツェル「わかった!そのまま押さえてて!」シュシューッ
アシェンプテル「チィッ…!」ブンッ
ゴシャァ
桃太郎「ぐあっ…!」
ラプンツェル「あぁっ!もぉー、ギリギリ捕まえられなかったよ!もうちょっとだったのにー!」パサッ
アシェンプテル「気を失ってもおかしくない打撃だったはずだというのに、逆手をとって私を拘束しようとするとはな…」
アシェンプテル(なんという精神力…。これも友を救わんとする気持ちのなせる技か、それなら私はそれを踏みつぶすだけだ)
スッ…
ラプンツェル「桃太郎、ごめんね!捕まえるの失敗しちゃった、せっかくチャンス作ってくれたのにー」
桃太郎「いや…いい、できなかったもんは仕方ない。だがこりゃあいよいよ、長引かせられないぞ…」ゼェゼェ
ラプンツェル「どうしよう…ライオンと青い鳥は無理だと思うけど、ロック鳥なら動けるしお願いする?」
桃太郎「いや…天井が高いとは言っても室内だ、ロック鳥も身動きがとれないうちにやられるのが目に見えてる…」

912 :◆oBwZbn5S8kKC :2017/07/20(木)02:34:54 ID:srB
ラプンツェル「でも、それじゃあどうすr……んぐっ!」ドスッ
桃太郎「ラプンツェル!クソッ…容赦がない、本気だって言ってただけの事はある!とにかく、傷を治癒して次の動きにーー」
ビッ
桃太郎「……っ!させないってか…!」
ラプンツェル「どうしよ、桃太郎。私、これ以上はちょっとダメかも…」ヨロヨロ
桃太郎「すまん…お前だけでも治癒出来ればいいんだg…ぐぁっ!」ドゴシャッ
アシェンプテル「不可能だ。おまえがどんなに素早く治癒に取りかかろうと、私の『ガラスの靴』のトップスピードには追いつけない」
桃太郎「……ゲホッゲホッ」ゼェゼェ
ラプンツェル「うー…あっちもこっちも痛いよ…」ゼェゼェ
桃太郎(どうする…どうすればいい?このままじゃシンデレラを救えないまま終わる…それだけはダメだ、それだけは絶対に…!)
桃太郎(でも…どうすればいい?拙者もラプンツェルも既に立っているのがやっと…。あれほどの速度で動けるなら、どうやってもラプンツェルの髪の毛だって当然のように避けるだろう…)
桃太郎(完全に詰んだか…?いや、諦めるな!ここで諦めたら拙者を信じてくれたキモオタや舌切りに申し訳が立たない、ライオンやここまで戦ってくれたラプンツェル…他の仲間達にもだ。だから諦めるな!)
桃太郎「せめてあの速度さえ……あの高速移動さえなんとかできれば……ほんの少しでも動きを制限出来れば……」ゼェゼェ

913 :◆oBwZbn5S8kKC :2017/07/20(木)02:36:26 ID:srB
桃太郎「しかし、どうやって…?どうすればあいつの動きをーー」
ラプンツェル「シンデレラの動き止められたら……あんな風にすんごく速く走れなくしたら、まだシンデレラの事取り返せる…?」
桃太郎「あぁ…あの高速移動さえ封じればお前の髪の毛で拘束できるからな…。でも、拙者達にはその方法が無い…」
ラプンツェル「あんなに速く走れるんだから……シンデレラきっと避けるの得意だよね……」ゼェゼェ
桃太郎「ん…?まぁ、そうだろうけど……」
ラプンツェル「それで……桃太郎、避けるの得意だって言ってたよね?」ゼェゼェ
桃太郎「えっ?あっ、うん、言ったけど…まさか何か考えがあるのか?ラプンツェr」
シュルルルッ
ライオン「あ、あれっ?ラプンツェルさん…髪の毛を天井に飛ばしたりなんかしてどうするつもりなんだろう…」
ロック鳥(翻訳)「ラプちゃんと行動を共にした我にも解りかねる。だが彼女の事だ苦し紛れではない、何か考えがあっての行動だろう」
青い鳥「そうは言うけど、僕には苦し紛れにしか見えないよ。いくら髪の毛を飛ばしたところで天井にはシャンデリアがぶら下がっているくらいで、他には何も…」
シュルル ググッ
桃太郎「なっ……!」
青い鳥「嘘だろ…。あいつ髪の毛をシャンデリアに撒きつけたぞ!二人とも伏せろ、どうなるか目に見えてる!」
アシェンプテル「あの馬鹿女、まさか…!」
ラプンツェル「シンデレラ!桃太郎!ロック鳥と青い鳥にライオンも…みんなちゃんと避けてねーっ…!」
グイッ

914 :◆oBwZbn5S8kKC :2017/07/20(木)02:39:49 ID:srB
ガッシャァァン!!
ライオン「うわぁぁぁ…!ガラスの破片が飛んでくる!鉄の欠片が飛んでくるよぉー!」ピシピシピシ
青い鳥「何やっているんだあいつは…!勝てそうもないからってシャンデリアを落とすなんて苦し紛れにも程がある!」ピシピシピシ
ロック鳥(翻訳)「いや、苦し紛れではない。これはーー」
桃太郎「……そうか、そう言う事か。ラプンツェル!」バッ
ラプンツェル「桃太郎!こっちこっち!落ちてきたシャンデリアの方に来て!早く早く!」タタタッ
アシェンプテル「……理解してやったのか?それとも苦し紛れか?」
ラプンツェル「わかっててやったに決まってるよ!これでシンデレラはもうすんごい早さで私達に近寄れないでしょ!」フンス
アシェンプテル「……」ギリッ
桃太郎(ガラスの靴はシンデレラの脚力を向上させる魔法具。西洋の馬車を軽々と追い越しどんな俊敏な獣さえも置き去りにする、その姿さえ見えない速度で駆ける事が可能な強力な魔法具)
桃太郎(とはいえ所詮は靴だ、地面を蹴らなければ走る事は出来ない。となると足場があまりにも荒れていてはその魔法具も真価を発揮する事は出来ない。要するに…)
桃太郎(ガラスと鉄片が散らかったこんな場所では満足に走れない。高速で駆けようというのならばなおさらだ)
桃太郎(あいつはそれを理解したうえで、ガラスの靴が最高の状態で扱える広くて床の整ったこの部屋を戦いの場に選んだ)
桃太郎(ラプンツェルはエッチっぽいなんて言っていたけれどあのドレスだって戦いを意識したものだろう。飾りや布地を極力少なくすれば何かに引っかかったり掴まれる心配も少なくて済む)
桃太郎(なんにしろ…形勢逆転だ、ここから一気にシンデレラを奪還するぞ!)

915 :◆oBwZbn5S8kKC :2017/07/20(木)02:40:54 ID:srB
アシェンプテル「馬鹿女め…この程度で私のガラスの靴が役立たずになると思うな。スピードは少し落ちるが、お前達をの相手をするにはーー」
桃太郎「ラプンツェル!この部屋のシャンデリアを全て落としてくれ!出来るだけ部屋の外側からだ!」
アシェンプテル「貴様…っ!」
ラプンツェル「わかった!任せてよー!シンデレラ、ちゃんと避けてねー!」シュルルルルルッ
ガッシャアアアァン!!
ガッシャァァァァン!!
ガッシャァァァァン!!
ラプンツェル「ひゃわー!思ってたよりずっとすごい事になってる!シンデレラちゃんと避けてくれたかなー…?」
桃太郎「シャンデリアが落ちる場所は予想がつく。それならあいつは大丈夫だ、ガラスの靴が使い物にならなかろうと必ず避ける」
スタッ
アシェンプテル「……考えられないな。テラスは破壊する、シャンデリアを落としてホールは使い物にならなくする、まともな人間ならば普通、躊躇してしまうものだが」
アシェンプテル「これだから馬鹿の相手は嫌になる、何をしだすか予想できない」

916 :◆oBwZbn5S8kKC :2017/07/20(木)02:44:09 ID:srB
桃太郎「ラプンツェル、シンデレラはもう走れない。今のうちに拘束してくれ…あっ、刃物持ってるかも知れないから厳重に頼む」
ラプンツェル「わかった!じゃあシンデレラ、ちょっぴりだけ我慢してねー!」ヒュルル
アシェンプテル「……」グルグルグルッ
桃太郎「随分と素直に拘束されたな。まぁこっちとしてはその方が助かるんだけども…」
アシェンプテル「ここまで足場が悪くては走れない。手負いとはいえお前とまともに戦って勝てるなど思っていない、悪足掻きはしない主義だ」
ラプンツェル「よかったー、それじゃあ大人しく元に戻ってくれるよね!」
アシェンプテル「さぁ、それはどうだろうな。私は逃走を諦めただけだ。そもそも自分の意思で悪魔の鏡の破片をどうにかできるわけじゃあない」
ラプンツェル「えーっ!?じゃあ悪魔の鏡の破片をどうにかしなきゃいけないの!?ねぇねぇ桃太郎、聞いてた?どーする?なにか作戦ある?」
桃太郎「拙者、その作戦お前に一回伝えたんだけど…」
ラプンツェル「えーっと、あっ、言ってた言ってた!アレでしょ?ほら、なんとか剣!」
桃太郎「お前がこの剣の名前忘れるのおかしいだろ…。まぁいいけども、よいしょっと…」ガチャッ
アシェンプテル「私の正気を取り戻すものだとか言っていたが、その武器、魔法具……剣か」
桃太郎「あぁ…拙者はこれを手に入れたとき、刀の扱いだけじゃなく剣も使えるようになろうって思ってハインリヒ殿に指南を受けたんだ。必ず戦いの役に立つって思ったからな」
桃太郎「でもまさか、友であるお前に使うとは思わなかったけども」

917 :◆oBwZbn5S8kKC :2017/07/20(木)02:46:23 ID:srB
スラッ
桃太郎「七星剣…。それがこの魔法具の名だ」
ラプンツェル「この剣はね!私が前にアリスと戦った時に、お腹に刺されたんだよ!すんごく痛かった!」フンス
桃太郎「なんでちょっと誇らしげなんだよ…。まぁとにかくあの時お前の様子を見てもらったあとに魔法使い殿にこの剣の事を聞いて、拙者が譲り受けたって訳なんだけど」
アシェンプテル「……で、それをどうするつもりだ?」
桃太郎「七星剣は斬ったモノの魔力を弱める事が出来る剣だ。これを使ってお前に取りついている悪しき魔力を断ち切る」
アシェンプテル「言っておくが、私自身を斬ったところで意味は無いぞ?悪魔の鏡の破片は今のこの身体に突き刺さり、影響を及ぼし続けている」
アシェンプテル「それこそ悪魔の鏡の破片自体を貫きでもしない限り、そんな剣を振るったところでシンデレラを呼び戻す事など出来ない」
桃太郎「という事は、直接悪魔の鏡の破片を貫く事が出来れば……お前を正気にできるという事だな?」
アシェンプテル「あぁ、できるさ。だが…不可能だ」
ラプンツェル「えーっ?なんでー!?しちせーけんっていうので悪魔の鏡壊したらいいだけでしょー?」
アシェンプテル「鏡の破片は爪の先ほどの大きさしかない。その上、お前達はそれが私の身体のどこに突き刺さっているのか解らない。それでは手の出しようが無いだろう?」
アシェンプテル「まぁ場所さえ分かればあとは大した問題は無い。魔力を打ち消す剣で鏡の破片を砕き私を正気に戻す、その後に素早く治癒の力で傷を塞ぐ…完璧な作戦に見える、だが重大な欠点がある」
桃太郎「…お前が何を言いたいのか、拙者にはわかるよ」
アシェンプテル「だろうな、桃太郎。おまえが誰よりもわかっているはずだ……私を救うという事が目的だとしても、治癒の力があるとはいってもお前に私は刺せない」
アシェンプテル「他人の目を気にして生きているお前のような腰抜けに友人に刃を突き立てるなど出来るはずが無い。出来るわけがないのだ」
桃太郎「……」

927 :◆oBwZbn5S8kKC :2017/07/24(月)02:14:36 ID:g7R
アシェンプテル(所詮、桃太郎という男はこの程度だ)
アシェンプテル(以前と比べると確かに変わった、多少の度胸を手に入れいくらかは強さに磨きをかけている。だが…生まれ持った性根というのはそうそう変えられない)
アシェンプテル(結局のところ、こいつは腰抜けのヘタレ侍だ。日ノ本一という称号、英雄という栄誉に縛られ自由に動けない。そして世間体という名の鎖が絡みつき、身動きが取れなくなる)
アシェンプテル(『友を救う為とはいえ、その身に刃を突き刺す行為…。まして鏡の破片が何処にあるかわからぬ状況で闇雲に剣を突き立てるという行為……それを見聞きした者はどう思うか?』)
アシェンプテル(『それは英雄らしからぬ行動ではないか…?』そう考えてしまえば、桃太郎はもう動けない。その身に絡みつく鎖が息も出来ぬ程に締め付けてくるからだ)
アシェンプテル(そして結局、鳥獣共や馬鹿女が身を賭して手に入れたこのチャンスさえも無駄にする。落としたシャンデリアの衝撃と轟音は別の場所に居る仲間も感づいただろう…)
桃太郎「……なぁ、シンデレラは日ノ本一って何だと思う?」
アシェンプテル「なんだ突然?自分の在り方に疑問でも感じたか?」
桃太郎「拙者は…ずっとこの称号に縛られてきたんだと思ってる。というか、縛られないと生きて来れなかった」
桃太郎「桃からなんて数奇な産まれでさ、しかも治癒とかいうワケわからん能力まで持ってる拙者はみんなにとって『化物』だ。化物に、化物とその家族に居場所なんか無い」
桃太郎「だけど人っていうのは現金なもんで『化物』って事実を塗りつぶす程の称号とか価値があれば、誰も拙者の事を『化物』としては見ない」
桃太郎「だから拙者にはどうしても必要だった、強者…『日ノ本一』って称号が。拙者と、じいちゃんばあちゃんの居場所を手に入れる為にも」

928 :◆oBwZbn5S8kKC :2017/07/24(月)02:17:56 ID:g7R
アシェンプテル「そしてお前は日ノ本一という称号と栄光を手に入れた訳だ、だがそれがまやかしだという事はお前も自覚しているだろう?」
桃太郎「……否定はしない」
アシェンプテル「確かにお前の武勇は本物だったかもしれないが、その『日ノ本一の桃太郎』という存在を支えているモノはとても脆いものだ」
アシェンプテル「逃げ出したいという情けない本音、そして恐怖に支配され怯えきった心を演技と虚勢で塗り固めた、外見だけのハリボテの英雄だ。偽りにまみれた日ノ本一、それがお前だ」
桃太郎「拙者もずっとそう思ってた、最近までは」スッ
チャキッ
アシェンプテル「……何のつもりだ?」
桃太郎「悪魔の鏡の破片。それが埋まっている場所って、ここ…お前の胸元なんじゃないか?」
アシェンプテル「さぁ、どうだろうな。そう思うのなら試してみたらどうだ?」
ラプンツェル「桃太郎!本当にだいじょぶ?あくまの鏡の破片が刺さってるとこ、おっぱいのとこであってる?間違ったら大変だよ!?」グググッ
桃太郎「おっぱいって言うなよ…胸元だっての…」
アシェンプテル「虚勢を張るなよ桃太郎。いくら私に剣を突きつけようと、その刃がこの身を裂く事は決してない」
アシェンプテル「私の胸元に鏡の破片が刺さっているというのも根拠の無い推測。仮にも英雄と呼ばれるものがそのような当てずっぽうに頼るとは、お笑いだな」

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