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キモオタ「我輩がおとぎ話の世界に行くですとwww」ティンカーベル「そう」
Part173


286 :◆oBwZbn5S8kKC :2017/01/23(月)01:19:04 ID:DXW
ルイス・キャロル著 不思議の国のアリス 六章より
・・・
「チェシャ猫さん、私はこれからどっちの道に進めばいいのか教えてくれる?」とアリスは聞きました
「どっちでも君の好きな方に進めばいいさ」とチェシャ猫が答えたのでアリスは質問を変えることにしました
「それじゃあこの辺りには何があるのかしら?そしてどんな人が住んでいるの?」
アリスの質問にチェシャ猫はニヤニヤしながら答えました
「あっちの方角に進めば帽子屋の家にたどり着くだろうね。そしてこっち側の方角には三月ウサギの家がある」
「どっちでも好きな方を訪ねると良いよ。まぁどっちともキチガイだけどね」
ニヤニヤと話すチェシャ猫にアリスは言いました
「でも私はキチガイのところになんか行きたくはないわ」
「そりゃ無理な相談だ、この世界じゃみんなキチガイなんだから。帽子屋も三月ウサギもキチガイ、僕もキチガイ、君もキチガイだ」
「まぁ、どうして私がキチガイなの?私はキチガイなんかじゃあないわ」
怒るアリスにチェシャ猫はニヤニヤしたまま答えました
「いいや、君は絶対にキチガイだよ。そうじゃなければーーこの世界には居ない」
「だってこの世界にはキチガイしかいやしないんだから」
・・・

287 :◆oBwZbn5S8kKC :2017/01/23(月)01:20:57 ID:DXW
不思議の国のアリスの世界 三月ウサギの庭
カチャカチャッ
三月ウサギ「ったくよぉ…あいつらときたら菓子のカスをボロッボロこぼしやがって、掃除が大変だぜ」サッサッ
三月ウサギ「さて、掃除が終わったら茶葉のストック確認して…砂糖とミルクも見ておかねぇと。菓子も特別なもんが欲しいな、あとで帽子屋に相談するか」
三月ウサギ「折角だから特別なティーセット出しとくかな。テーブルクロスもとっておきの奴引っ張り出して、花もとびきり綺麗な奴をーー」
スッ
帽子屋「ンフフッ、お茶会の支度してる時のアナタはいつだってご機嫌ねぇ。でも祝勝会の準備はちょーっと気が早いんじゃないかしらぁ?」ブホホッ
三月ウサギ「なんだ帽子屋、お前【雪の女王】の世界に向かったんじゃなかったのか?アリスの帰りが遅いってんで迎えに行くって話だったろ?」
帽子屋「そうよぉ、でももう済ませたわっ。雪の女王とキモオタちゃん相手にちょーっぴり手間取ってたみたいだけど、雪の女王は始末したしアリスちゃんは別に怪我とかしてないから大丈夫よっ」
三月ウサギ「そりゃあ何よりだ。で、一緒じゃねぇみたいだけどアリスは何してんだ?」
帽子屋「アリスちゃんなら今頃、鬱陶しい結界を破って【アラジンと魔法のランプ】の世界に居るでしょうね。何をするために向かったのか…なんてことは言わなくたって当然わかるわよねぇ?」ブホホ
三月ウサギ「当たり前だろが。あらゆる願いを叶える魔法のランプ、そいつを奪いに行ったんだろ?そんなもんクイズにもなりゃしねぇよ」
帽子屋「ぶほほっ、大正解!まぁアタシ達はその為に魔法具集めてたんだしねぇ〜、魔法具集めには結構苦労したけれどようやく報われるって感じねぇ」
三月ウサギ「まぁそうだけどよ、んなことより護衛は誰がついてるんだ?まさかアリスを一人で向かわせたって訳じゃねぇだろうな?」
帽子屋「当然よっ、護衛にはアシェンちゃんがついてるわ。あの娘の強さは折紙付きだから大丈夫でしょっ。そんなことよりもアタシ喉渇いちゃってるのよぉ…ねぇお茶を一杯もらえなぁい?」
三月ウサギ「あいにく準備中でな。おらっ、水でも飲んでろ」コトッ
帽子屋「んもうっ!ワタシはこれでもグルメなのよ!?今更ただの水なんて出されても満足できないわよっ!まったく……カァーッ!潤うわぁっ!」ゴクゴクゴク プハーッ
三月ウサギ「にしちゃあお前、随分といい飲みっぷりじゃねぇか…」

288 :◆oBwZbn5S8kKC :2017/01/23(月)01:22:33 ID:DXW
三月ウサギ「で、結局何しに来たんだ?まさか茶を飲む為だけに来たってわけじゃあねぇんだろ?」カチャカチャ
帽子屋「もちろんよぉ〜。アリスちゃんが『ボクが魔法のランプを奪いにいっている間、帽子屋は休んでくれて構わないよ。留守番を兼ねてね』なんていうもんだからお言葉に甘えてんのよっ」
三月ウサギ「そりゃいい御身分なこって、まぁ俺も待機だから人の事言えねぇけどよ」フキフキ
帽子屋「でっ、時間も出来た事だし三月ウサギちゃんには話しておきたい事もあったからお邪魔したってワケよぉ〜」クネクネ
三月ウサギ「俺に話す事だ?あんまり…つぅか微塵もいい予感はしねぇがよぉ、まぁ言ってみろ。俺に話したい事ってなんだよ?」
帽子屋「始めに言っておくけど…コレすんごくマジメな話よぉ?」
三月ウサギ「あぁ、わーったわーった。お前がそうやって話を切り出して真面目だった試しがねぇんだよ、どうせまたくだらないジョークかハートの女王へのイタズラでも思いついたんだろ?」
三月ウサギ「お前はいつだってそうだ、マジメな顔して興味を引いておきながら口を開けば答えのないナゾナゾだのくだらない替え歌だのを披露してよぉ…もう俺は騙されねぇんd」
帽子屋「アタシね、実は雪の女王殺してないのよ」
三月ウサギ「はっ?」ガタッ
帽子屋「だからぁ…始末したって言ったけど彼女まだ生きてるの、生け捕りって言うやつよぉ。城の敷地の時計塔あるでしょ、あそこに幽閉してるわ。あそこはとても頑丈な造りだし陽の光もよく当たるからねぇ」ブホホ
三月ウサギ「待て待てお前…!生け捕り!?そりゃなんの冗談だ!?先に言ってやるが笑えねぇからなそのジョーク!」バンッ
帽子屋「んもうっ…だからマジメな話だって言ったでしょぉ?冗談なんかじゃないわ、本当の話よ」
三月ウサギ「おいおい…マジかお前…。あの雪の女王だぞ!?殺さず生かしておくなんざ何を考えてるんだテメェはよぉ!」バンッ

289 :◆oBwZbn5S8kKC :2017/01/23(月)01:26:32 ID:DXW
帽子屋「何を…って、そんなの決まってるじゃないのぉ。アナタと同じよ、アタシはアリスちゃんとアリスちゃんの願いのことだけしか考えちゃいないわ」
三月ウサギ「だったらどうして女王を殺さなかった!?こないだの話し合いで雪の女王は殺すべきだって結論になっただろうが!何を独断で勝手な事をしてんだ!」
三月ウサギ「確かに生け捕りにしてその魔力を利用するって案も出たがよ、雪の女王の魔力はあまりにもデカ過ぎる!生かして損はあっても利は無ぇ…だったら殺すべきだってアリスが決めたじゃねぇか!」
帽子屋「大丈夫よっ、彼女は随分衰弱しているし暑さのせいで魔力も枯渇してるわっ。あの様子じゃ自由に動けないし、仮にキモオタちゃん達が奪還に来てもあの塔をこじ開けるのは一筋縄じゃいかないわっ」
帽子屋「それに万が一女王を奪い返されたってあの女には何もできないわよっ。魔力を失ってんだからもう一般人とたいして変わらないものねぇ」ブホホ
三月ウサギ「例えそうだとしてもだ…帽子屋、お前少し楽観的すぎやしねぇか?」
帽子屋「あらそぉ?」ブホホッ
三月ウサギ「俺達がやってる事は余所の連中にとっちゃ許しがたい悪行だ。そりゃあ確かに今のところ俺達が圧倒的有利で、もはやアリスを止められる奴なんざいねぇように思えるが…」
三月ウサギ「仮にアリスが倒され、俺達の計画を阻止されちまったら…俺達やアリスがどうなるかわかってんだろ?」
帽子屋「わかってるわよ。アタシ達は今まで散々やりたい放題してきたんだもの、もしもアタシ達が敗者になったとしたら……世界中はアタシ達を、アリスちゃんを決して許さない」
帽子屋「【不思議の国のアリス】はもちろん現実世界にも別のおとぎ話の世界にも居場所なんかなくなっちゃうわね。そもそも、敗北した時点でアタシ達は捕えられて殺されるでしょうね」
三月ウサギ「あぁそうだ!いろんなもんを犠牲にしてきた事を今更とやかく言わねぇがな、ここまでやった以上アリスの願いを叶える以外に俺達に未来はねぇんだ!絶対に失敗は許されない戦いなんだよこれは!」バンッ
帽子屋「んもぅ…そんなに怒鳴らなくてもわかってるわよ」
三月ウサギ「わかってるってんならなんでこんな事してんだお前は!しくじれない以上、どんなに小さな可能性でも不安要素は潰すべきだろうが!」
帽子屋「確かにアナタの言ってる事は正論よ。アタシ達の役目はアリスちゃんを勝利に導く事、どんな些細な障害でも取り除くべきだってアタシも思うわ」
三月ウサギ「だったらよぉ…!」
帽子屋「それでもね、今のアタシは…雪の女王は殺すべきじゃないと思うのよね。他ならないアリスちゃんの為にもねっ」

290 :◆oBwZbn5S8kKC :2017/01/23(月)01:30:36 ID:DXW
三月ウサギ「アリスにとって雪の女王は障害にしかならねぇだろ!こっちに引き入れるにしてもどう口説こうが脅そうが俺達に味方するとは思えねぇしよぉ…」
三月ウサギ「まったく、わっかんねぇな…どうして雪の女王を生かしておく事がアリスの為になるってんだよ!?」
帽子屋「簡単な話よ。ルイスちゃんが昔、雪の女王にお世話になった事があるってお話…とうぜん覚えてるでしょぉ?」
三月ウサギ「あぁ、チェシャ猫が仕入れてきた情報だろ?ルイスがアンデルセンの弟子してたとき雪の女王が助手してたっていう話ーー」ンッ?
三月ウサギ「おいおい…まさか雪の女王がルイスの恩人だからって生かしてたってのか!?」
帽子屋「その通りよぉ、大正解ね三月ウサギちゃん」ブホホッ
三月ウサギ「お前馬鹿か!そんな百年以上も昔の…しかもアリスが直接関係してるわけでもねぇ奴に恩義なんざ感じる必要ねぇだろ!」
帽子屋「確かにアリスちゃんには直接関係ある話じゃないわね、もちろんアタシ達にとっても」
帽子屋「でもルイスちゃんは感謝してると思うわよぉ?師匠のアンデルセンにも先輩の雪の女王に対してもねっ。ルイスちゃん、情に厚いからねぇ」ブホホ
三月ウサギ「そりゃあルイスは感謝してるかもしれねぇけどなぁ!それとこれとは話が違うだろうが!」
三月ウサギ「ルイスの恩人はルイスの恩人!アリスの敵はアリスの敵!その相手がたとえ同一人物だとしても関係なんざねぇだろ!?」
帽子屋「そうね、アタシ個人としてもルイスちゃんが受けた恩義はアリスちゃんにとってはなんの関係もないと思うわよ?」
帽子屋「でも…当の本人、アリスちゃんはどう思うのかしらねぇ?」

291 :◆oBwZbn5S8kKC :2017/01/23(月)01:34:52 ID:DXW
三月ウサギ「どうもクソも…関係無いと思ってんじゃねぇのか?つーか雪の女王とルイスの関連性を知った上で殺すって決断出したのは他でもないアリスだぜ?」
帽子屋「そうねっ、でもそれがアリスちゃんの心からの言葉かどうかはわからないわよっ?」
三月ウサギ「なぁ、お前はさ…こう言いたいのか?実はアリスは雪の女王を殺す事を躊躇していた。ってよぉ」
帽子屋「んー…細かいところまでいうとちょっと違うんだけどねぇ。まぁ、ザックリ言えばそんなところかしらっ」
三月ウサギ「俺にはそんな風には見えなかったぜ?チェシャ猫からこの一件聞いた後も相変わらずアリスは目的を達成するためには容赦が無かったしよぉ」
三月ウサギ「容赦なく別世界を消して、躊躇なく殺しに手を染めてたぜ。いくら大好きなルイスの恩人だからって…アリスが女王に情なんかもつかぁ?」
帽子屋「まぁ少なくとも情は持ってないわねっ、アリスちゃんが気にして居るのだとすればおそらく…理由はただひとつね」
帽子屋「『ボクが雪の女王を殺したと知ったらルイスはどんな顔をするだろう』って事だけよ、例えとっくに亡くなってても大好きなルイスちゃんには嫌われたくないでしょうしねぇ」
三月ウサギ「お前さ、そこまで言うからには何か根拠っつぅか思い当たる節があるんだよな?まさか推測だけで話してるわけじゃねぇだろ?」
帽子屋「ンフフッ、もちろん根拠ならあるわよっ。それはねぇ…アタシの鋭いオンナの勘ってやつかしらn」
三月ウサギ「張っ倒すぞお前」
帽子屋「冗談よ。ほらァ、アタシ客商売長いじゃない?だから表情とか雰囲気でなんとなーく本音っていうか考えてる事わかっちゃうのよぉ、そゆとこ目ざといのよ」
帽子屋「チェシャ猫ちゃんがルイスちゃんと女王の関係話した時、アリスちゃんは特に表情変えずに冷静な風に見えたけど……」
帽子屋「きっと、内心動揺していたはずよ。少なくとも私にはそう見えたわ」

292 :◆oBwZbn5S8kKC :2017/01/23(月)01:38:23 ID:DXW
三月ウサギ「つってもなぁ……」
帽子屋「まぁアリスちゃんのことですもの、無理やりにでも自分の中で折り合いをつけて結局は雪の女王を殺すことにしたんでしょ。リーダーである自分が悩んでちゃ示しがつかないなんて思ったのかもねぇ」
帽子屋「でも…結局殺す事はできなかったわね。気持ちの上ではきっと殺す気でその感情に嘘は無かったんでしょうけど、雪の女王にルイスちゃんの名前出されたことでどこかで心がセーブしちゃったみたいねぇ」
三月ウサギ「……」
帽子屋「三月ウサギちゃん、なんだか納得いかないって顔ねぇ?」
三月ウサギ「お前の言ってる事、とりあえず筋が通っているようにも聞こえる。確かにアリスはルイスの想いを大切にしてる、責任感が強いってのもそうだ、お前が言うようなこともあるかもしれねぇ…。でも結局その根拠も説も推測の域を出ないレベルだぜ」
帽子屋「それは否定しないわねっ。まぁ…アタシの妄想だといえばそれまでだしねぇ、商人の勘って事以外に根拠があるわけじゃないし」
帽子屋「でもね、もしこの推測が事実だとしたら…雪の女王を殺してしまえばアリスちゃんには決して外せない枷が食い込むわ、ルイスちゃんに対する罪悪感と言う名のね」
帽子屋「そしてその枷は…きっと重要な局面でアリスちゃんを動けなくする。そしてそれは…作戦の失敗につながる、それだけは絶対に避けなきゃならない」
三月ウサギ「だから大事をとって雪の女王を生け捕りにしたってか?」
帽子屋「そうよ、それに彼女を生け捕りにした事はアリスちゃんも知ってるけど、殺せなんて命令私にしなかったわよ?まぁ生かせとも言わなかったけどね」
三月ウサギ「ふーむ…理屈はわかったぜ。言いたい事がねぇわけじゃないが、アリスが黙認してるってんなら俺がやいやい言う必要もねぇ。ただ…」
三月ウサギ「アリスは今までに何度もヤバイ修羅場をくぐりぬけてきたんだ、罪悪感に押しつぶされるほど弱くはねぇと俺は思うぜ」
帽子屋「あらっ、それは誤解よ。三月ウサギちゃん?」

293 :◆oBwZbn5S8kKC :2017/01/23(月)01:42:02 ID:DXW
帽子屋「あの子は…アリスちゃんは強くなんかないわ。むしろ弱い女の子よ、アタシ達が守ってあげなきゃならないほどにね」
三月ウサギ「まぁあいつは元々は現実世界の人間だしな、時間停止以外に特別な力があるってわけでも魔法が使えるわけでもねぇ」
三月ウサギ「でも俺は強いと思うぜ?あれくらいの年齢の女が世界を敵に回す決断をしたんだ、強くなけりゃそんな覚悟もてねぇだろ」
帽子屋「ンフフッ、わかってないわねぇ〜…三月ウサギちゃんはっ」
三月ウサギ「なんだよ…だってそうだろ?心が強くなけりゃ世界消して人殺して平気な顔でいられねぇだろ、普通」
帽子屋「そりゃあ覚悟はしてるでしょうけどね、それでも結局アリスちゃんは…まだまだ少女、女の子なのよっ」
帽子屋「どんなに覚悟して修羅場を抜けてきても、大好きな人の名前を出されて少し心が揺れてしまうような…まだまだ子供の女の子」
帽子屋「別の世界に向かうとね、余所の世界の連中はアリスちゃんをまるで悪魔のように言うのよ…恐れるべき悪人のように。まぁ実際やってる事はそうかもしれないけど」
帽子屋「でもね…いくらおとぎ話の世界を消そうともその住人を滅ぼそうとも、冷酷な殺人鬼だの悪逆非道な悪魔だの呼ばれてもね…結局アリスちゃんはただの女の子なのよ、アタシにとっては」
三月ウサギ「まぁ、な…」
帽子屋「自分自身を蔑ろにされて、大切な人を蔑まれて…人々を恨んで世間を恨んで、世界に絶望してそしておとぎ話の世界を恨んで…」
帽子屋「やっている事の規模は大きいけれど、アリスちゃんの心の根っこにある感情は結局大人や社会に対する反抗、不満よ」
帽子屋「普通の女の子が持つ感情と、それはそんなに違うものでもないでしょうに。特別あの子が強いってわけじゃないわよ」
三月ウサギ「確かにな、そう考えりゃ…結局はあいつもただの少女ってわけか」
帽子屋「えぇ、ワタシはそう思うわね。まぁなんにしても…アタシ達がすべきことは今までと変わらずたった一つだけ、アリスちゃんの幸せを願うことのみ」
三月ウサギ「そりゃあ俺もお前も、あいつらも同じだろうよ」
帽子屋「そうよねっ、でも悲しい事にこの世界は誰かを幸せにすれば他の誰かを不幸にしなきゃならない仕組みになっている」
帽子屋「【不思議の国のアリス】でのアナタのお茶会と一緒ね、自分のティーカップが汚いのなら席を一つずれて…それを他人に押し付けるしかないのよ。そうすれば自分は綺麗なティーカップを使える、結局は誰かが汚れたカップを我慢して使わなきゃならない」
帽子屋「でもそれはアリスちゃんの役目じゃないわ。アリスちゃんには綺麗なカップで楽しいお茶会を過ごしてほしいものね」ブホホッ
・・・

294 :◆oBwZbn5S8kKC :2017/01/23(月)01:46:34 ID:DXW
時間は前後し…
シンデレラの世界 魔法使いの屋敷 裏の森
キィィィィィン
キモオタ「ぶひいいいぃぃっ!」ドッサァー
ティンカーベル「ここは…見覚えがある!シンデレラのとこの魔法使いの家だ!ほらあそこ裸王とヘンゼルが倒した木があるしっ!」
キモオタ「確かにそのようですな…つまり雪の女王殿は、我々の事を考えてこの世界に……って、カイ殿ぉぉぉぉぉっ!」キャッチ ズサーッ
カイ「……」ゼェゼェ
キモオタ「ぶっふぅ…カイ殿満身創痍ですからな、その状態では着地も出来ないでござろうし。我輩のキャッチが間に合ってよかったでごるよ」
ティンカーベル「うんうん、そうだよねっ。ここでまたカイに大怪我なんてさせたら雪の女王に合わせる顔がないm…むぐっ!ちょっとカイ!いきなり身体掴まないでよ!」ガシッ
カイ「……おい、ティンカーベル」ギロリ
キモオタ「か、カイ殿…?なんかすごい顔をしておりますな…いや心中お察しするでござるが、ひとまずここh」
カイ「ティンカーベルッ!お前、確か世界移動の魔法使えるんだよな?」
ティンカーベル「うん、できるよ。でも…」
カイ「だったら何をモタモタしてんだ!こうしている間にも女王はアリスに攻撃されてる間もしれねぇんだぞ!?時間がねぇんだ!」
カイ「さっさと【雪の女王】の世界へ戻れ!あいつ何を考えて俺達を逃がしたんだかしらねぇが…馬鹿な真似しやがって!」
カイ「今すぐに戻って加勢するぞ!そしてこんな馬鹿げた真似をしている連中に文句を言ってやらねぇと俺の気が収まらねぇんだよ!」

295 :◆oBwZbn5S8kKC :2017/01/23(月)01:50:04 ID:DXW
ティンカーベル「……」
カイ「おいティンカーベル!何をチンタラしてやがる!一刻を争うって事がわからねぇか!?さっさあの世界へのゲートを…」
ティンカーベル「……駄目だよ、あの世界には戻れない」
キモオタ「……」
カイ「はぁ!?テメェ何を言ってんだ!戻らねぇって…あいつを見殺しにしようって言うのか!?」
ティンカーベル「そんなつもりはないよ、でも駄目。絶対に私は世界移動…しないよ」
カイ「ふざけてんじゃねぇぞテメェ…!そんなに自分の命が惜しいのか!?あぁ!?アリスにやられっぱなしで悔しかねぇのか!?」
ティンカーベル「悔しいよ!悔しいに決まってるじゃん!特訓頑張ったけど歯が立たなくて…何も出来なくて、すんごく悔しいし今すぐにでもアリスに仕返ししたいよ!」
カイ「だったら早く世界移動しろ!んなところでウダウダ話してても埒があかねぇだろうが!」
ティンカーベル「じゃあ聞くけどさ、戻ってどうするつもりなの!?説明してよ!さっき私達は大したこと出来ずにボロボロにされてんだよ!?今から帰って何かできるとは思えないよ!」
カイ「…それでもだ!勝機があろうとなかろうと、あいつを見殺しにするなんざ俺にはできねぇ!」
ティンカーベル「じゃあ女王が心配だからって何もできない私達がもっかい戻ってさ、そんでアリスと戦ってなんになるの!?勝ちなんかこれっぽっちも見えないんだよ!?」
ティンカーベル「だったらここは女王の想いを無駄にしないためにも体制を整える場面じゃん!しっかり対策しなおしてアリスを倒す事、それが私達が女王にとって出来る最後のーー」
カイ「テメェ…最後ってどういう意味だ言ってみろクソ妖精が…!」

296 :◆oBwZbn5S8kKC :2017/01/23(月)01:54:31 ID:DXW
キモオタ「落ち着くでござるよカイ殿!お主まだ血を流しているというのにその様に暴れては…」
カイ「うるせぇ豚ァ!おいティンカーベル、テメェ等がこないってんなら好きにしろ。だが俺一人だけは元の世界へと連れ戻せ!」
ティンカーベル「…それも駄目、カイ一人で戻っても…悪いけど何にも出来ないよ。それに…もう傍から見たっ女王は限界じゃん!女王が心配なのはわかるけど、でも……」
カイ「…じゃあなんだ、頭を下げりゃいいのか!?土下座でもすりゃあお前は満足して俺を元の世界に返してくれんのか!?」
ティンカーベル「そうじゃないよ!私はただ…!」
カイ「……頼む、お前にしかできねぇんだ。俺には、俺にはあいつを見殺しにするなんか、できn」フラッ
ドザッ
キモオタ「カイ殿ォ!?いわんこっちゃない!お主相当に血を失っているでござるからあまり無茶をしては…!」
ティンカーベル「カイ…!」
カイ「頼む…頼むティンカーベル…俺を、俺をあのせかいへ……」ゼェゼェ
キモオタ「……」
魔法使い「裏庭が騒がしいから着て見れば……予想以上にひどい有様だな」
キモオタ「魔法使い殿…!丁度よかったのでござる、実は大変な事が起こってしまい…助言をしていただきたいでござるがいいですかな!?」
魔法使い「こちらは元よりそのつもりだ。どうやら…アリスを倒すどころか力の差を見せつけられたようだな…」
魔法使い「今はとにかく部屋入りなさい。立ち話をしているわけにもいくまいし…その少年の手当ても必要そうだ」

297 :◆oBwZbn5S8kKC :2017/01/23(月)01:57:02 ID:DXW
不思議の国のアリス編 きょうはここまで
次回をお楽しみ!

298 :名無しさん@おーぷん :2017/01/23(月)07:56:29 ID:vzY
おつ

299 :名無しさん@おーぷん :2017/01/23(月)10:15:49 ID:jSY

アリスにとってはルイスが全てなのね
説得するにしろ倒すにしろルイスが鍵になりそうだ
シェヘラザード派の俺としてはそっちの状況も気になるとこだ(チラッチラッ

304 :◆oBwZbn5S8kKC :2017/01/30(月)01:21:40 ID:w7G
ずっとずっと昔
雪の女王の世界 書庫
・・・
カイ「……」ペラッ
カイ(俺がこの宮殿で暮らす事になってもう一週間か…)ペラッ
カイ(行方不明になった俺の捜索もいい加減に打ち切られただろ、家族も村の連中も俺の生存は絶望的だと諦める頃だ。まぁ、ゲルダの奴は俺が死んだなんて絶対に認めないだろうがな…)
カイ(心配してくれている連中には悪いが、ここでの生活は俺にとってかなり快適なもんだ、何しろこの膨大な数の本に囲まれて過ごせるんだからな)
カイ(親父の仕事や家事の手伝いをする必要なんざねぇ。一日中、気が済むまで本を読んで思索にふける事が出来るなんてのはまさに天国だ)ペラッ
カイ(寝床にも飯にも不自由しねぇ快適な生活。ただ、一つだけ不満があるとすれば……)ペラッ
スタスタスタ
雪の女王「カーイっ!おはよう、今日も早起きだな君は。なんにせよ勉強熱心なのはいいことだ、偉いぞ」ムギュッ
カイ「……」ペラッ
雪の女王「そうはいっても何か食べなければ頭も働かないぞ。さぁ私と一緒に朝食を取ろうじゃあないか」ギューッ
カイ「……俺はいい。抱きしめるな、ページがめくれねぇだろうが」
雪の女王「フフッ、なんだなんだ。照れているのか?かわいい奴め」フフッ
カイ「……」
カイ(快適な生活の中で感じる唯一の不満、それがこいつ…この宮殿の主にして強大な魔力の持ち主…雪の女王だ)

305 :◆oBwZbn5S8kKC :2017/01/30(月)01:24:30 ID:w7G
カイ「俺に構うな。メシなら一人で食えばいいだろ、俺は読書を優先する」
雪の女王「そんなつれない事を言うなよカイ。君の朝食用にと思って普段は食べない卵やベーコンなんかを揃えたんだぞ?」
カイ「知った事じゃねぇな。捨てちまうのがもったいねぇってならお前が食えばいいだろ」
雪の女王「それは出来ない。私は火を使った調理はできないんだ、だから君が食べてくれなければ困る」フフッ
カイ「勝手な事を言いやがる…。つぅか調理するの俺じゃねぇか、面倒くせぇ…」
雪の女王「そうはいっても料理することにも慣れておかないとな。そうしなければ君はこの先、温かいものは一切口にできないぞ?」
カイ「メシにこだわりはねぇ、水とパンがありゃあ十分だ」
雪の女王「そういう訳にもいかないだろう?これから長い間君と私は生活を共にするわけだが、私も時には数日間宮殿を空ける事がある」
雪の女王「いつ、何が起きるかわからないからな。君もある程度の生活力を身につけていかないといざという時に困るぞ?」
カイ「…だったら俺は後で適当に作って食う。別にお前と飯を食う必要性は無いだろ」
雪の女王「魔法具の影響とはいえ君は随分とドライだな、確かに必要性は無いかも知れないが意味はあるぞ?」
雪の女王「誰かと食事をするのは単純に楽しい時間だ。それに食卓を囲めば相手の好みや人間性も見えてくる。これは経験則だが、親密な関係を築く上でこれはとても大切な事だぞ」
カイ「…だからそれが無意味だって言ってんだよ。俺はお前と慣れ合うつもりなんかねぇんだからな」
カイ「所詮、俺とお前の関係は【雪の女王】の作者が作りだした単なる『設定』だ。親密になる必要も親睦を深める意味もありゃしねぇんだよ」

306 :◆oBwZbn5S8kKC :2017/01/30(月)01:28:08 ID:w7G
カイ「確かに…悪魔の鏡の破片のせいで俺は変わった。性格の豹変した俺があのまま村に居てもロクな事にならなかったのは目に見えてる」
カイ「そういう意味では俺をここに連れて来たお前に一応感謝はしてるぜ。だがそれも結局は作者が生み出したおとぎ話の筋書きに過ぎねぇんだ」
カイ「俺達に求められている事は慣れ合って生活する事じゃねぇ。ゲルダがここに来て俺にかけられた魔法を解くまでの間、俺達は適当に時間をつぶしてりゃあそれでいい」
雪の女王「……」
カイ「まぁ、俺もこの世界が消えちまったら困るんでな。存続の為にもすべきことはしてやる、だが必要以上にお前と慣れ合うつもりはねぇんだ」
雪の女王「なるほどな、君の考えも一理ある」
カイ「そうだろ?お互いに干渉するのは最小限にしようぜ、その方が面倒くさくなくていいだろ」
雪の女王「だがそれは…少々枯れた考え方だな。結末や運命が決まっているからその流れに身を任せて何もしないなんていうのは、幸福になる事を放棄しているだけだ」
カイ「あぁ…?何言ってんだお前、俺もお前もおとぎ話の世界の住人だ。どう足掻こうと運命には逆らえねぇ、何をしたところで結果がかわらねぇならそりゃ無駄な足掻きだろうが」
雪の女王「そんな事は無いさ、アナスンは…作者は【雪の女王】の原稿に中で私と君の生活について詳細は記していないんだから」
雪の女王「確かに私達の運命や結末は決まっている。だが本に記されていない部分…言わばページとページの間の空白の時間、それをどう使おうと私達の勝手というわけだ」
雪の女王「そしてその時間をどう過ごしたか、それは必ず結末の先の未来を変えるだろう。おとぎ話の住人である私達にも変えられる事はある、私はかつて共に暮らした男からそれを学んだ」
カイ「……」
雪の女王「だから私達は出来る限り幸福になる努力をしないとな」フフッ
雪の女王「私達の人生は物語を締めくくる『めでたしめでたし』の後も、ずっと続くのだから」

307 :◆oBwZbn5S8kKC :2017/01/30(月)01:32:59 ID:w7G
雪の女王「君の人生はゲルダに助けられておしまい…じゃあないんだ、その先どうするか決めるのは作者じゃない。君だよ」
カイ「……まぁ、興味深い説だとは思うぜ。それが事実かどうかは別としてな」
雪の女王「私はその考えに則って、君との生活をお互いにとって豊かで幸福なものにしたいと考えている。ゲルダがここを訪れるのはまだまだ先、それならばその間の時間も楽しんでいたいと思うんだよ」
カイ「理屈はわかるけどよ、だからって出会ったばかりのお前を手放しで信用しろって言うのか?それはあまりに都合がよすぎるぜ」
カイ「確かにお前に感謝してるとは言ったがよ、それはお前の事を信用してるかどうかってのとは別問題だ。逆に聞くがお前は俺を信用できるのか?出会って数日、名前以外ろくに何も知らないガキの事をよ」
雪の女王「出来ると言えばそれは嘘になる。正直に言えば、君の全てを信用しているというわけじゃあないよ、今はまだね」
カイ「そうだろうよ、だったらよぉ…」
雪の女王「でも君と親しくなりたいとは思う、君の事をもっと知りたいともね。だから君を食事に誘った」
カイ「……」
雪の女王「信用するとかしないとか、そういうのはお互いをもう少し知ってからだよカイ。何が好きとか、どんな癖があるとかこういうところが鬱陶しいとか知ってから、その先だ」
雪の女王「君が好きな本だって装丁からじゃ全てわからないだろう?手にとって、その内容に目を通して初めてどんな本かわかる。人間も一緒だよ」
カイ「……いいぜ、そこまで言うならメシくらいは付き合ってやる。読みもせず本の内容にグダグダ文句つける奴は俺も嫌いだからな」スッ
カイ「だが、俺がお前を信用するかどうかはまた別問題だぜ。お前の事を多少知ってそれでもお前に付き合いきれねぇと思ったら俺は好きにする、いいな?」
雪の女王「フフッ、それで構わないよ。だけど私はなんとなく、君とはいい家族になれるんじゃないかって思っているよ」
カイ「流石にそりゃあ無いな。仮にお前が信用に足る奴だったとして、俺はお前にそこまで肩入れするつもりはないぜ。家族とかねぇよ、ありえねぇ」
雪の女王「それじゃあ勝負するかい?いつか君と私は離ればなれになる時が来る、その時に君が涙を流すかどうか賭けようじゃないか」クスクス
カイ「馬鹿かお前、んな事で俺が泣く訳ねぇだろうが」
雪の女王「へぇ、それじゃあ賭けに君が負けたらどうする?」
カイ「賭けにもならねぇ馬鹿馬鹿しい勝負だが、仮に俺が負けるようになりゃあ何だってしてやるぜ」
カイ「お前の命令だろうと願いだろうと何でも聞いてやる。それがどんなもんだろうとお前の望み通りにしてやるよ」
・・・