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勇者「淫魔の国で風邪をひくとこうなる」

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Part12
425 : ◆1UOAiS.xYWtC :2017/02/15(水) 04:39:57.81 ID:qO+FEOZvo
*****
午後になり、城内にしばしの静寂が戻る。
隣女王も、この城にいる間は年相応の少女へ戻れているのだと勇者は感じた。
今はサキュバスBと娯楽に興じており、姿は見えない。
すっかり緑の濃くなった庭を歩いていると……見慣れた片翼の淫魔がベンチに腰掛け、酒瓶らしきものを仰いでいるのに出くわした。
勇者「また入り込んでるのか、サキュバスC」
サキュバスC「よー。寝室じゃねェんだからいいじゃん? ま、座れや」
勇者「お前の家か?」
呆れながらも隣へ座ると、彼女は少しだけ、ほんの少しだけ尻をずらし、勇者の方へ近寄った。
その手に持つのは、濃い色の酒瓶ではない。
透明な瓶に詰められたーーーー葡萄酒ではない薄い黄色。
それを見て、勇者はかすかな悪戯心を起こした。

426 : ◆1UOAiS.xYWtC :2017/02/15(水) 04:40:38.69 ID:qO+FEOZvo
勇者「……サキュバスC、そういうのは良くない」
サキュバスC「あ? 何だいきなり」
勇者「いくらなんでも、トイレなら……使っていいんだぞ」
サキュバスC「はぁ? ……ばっ、ち、違ェーぞ! 何言ってんだテメーは!?」
勇者「…………」
サキュバスC「……テメーな、いい加減にしねェとコイツで頭割るぞ? オイ?」
真意を汲んだか、怒りだし、落ち着きーーーーサキュバスCはからかわれた事に気付いて、立ち上がりかけた脚から力を抜いた。
目頭を押さえてしばし黙り込み、彼女は言葉を探そうとしたが、諦めたのか……その瓶を差し出してきた。
受け取り、口に含むと懐かしく、しかしこの淫魔界では出回らない味がした。
勇者「酒だと思ってたら、ジュースか。禁酒するのか」
サキュバスC「するかよボケが。アタシに死ねっつーのか?」
勇者「生きててほしいから勧めてるんだ」
サキュバスC「……あぁ、そ」

427 : ◆1UOAiS.xYWtC :2017/02/15(水) 04:41:14.24 ID:qO+FEOZvo
勇者「で……これは? ラベルも何も貼ってないみたいだな」
サキュバスC「アタシが作った。使い切れねぇ分をジュースにして保存してたんだよ」
去年の夏に出会った時、彼女はここから離れたのどかな場所で一人、およそサキュバスらしくない晴耕雨読の日々を送っていた。
鶏を世話し、いくつもの果樹を育て、数杯のエールを一日の楽しみにして、土と風に触れる日々。
それは全て、かつて人間界で受け取った、“リンゴ”の種を植え、実らせるために。
勇者「で、これを持って……何か悩んでたのか?」
サキュバスC「あァ。いや……下町の本屋の女いるだろ?」
勇者「ああ」
サキュバスC「あの女な、前に……変な事、言ってやがったのよ。それが気になってさ」
勇者「でもだからって、何でこんな所で……」
サキュバスC「緑多くて落ち着くんだよ、近いし。まぁ……ともかくな」

428 : ◆1UOAiS.xYWtC :2017/02/15(水) 04:41:45.11 ID:qO+FEOZvo
*****
書店主「あら、サキュバスCさん。こんにちは~」
サキュバスC「うす。……今日はガキいねーの?」
書店主「ええ、今日はお友達と出掛けてるの。何か御用でした?」
サキュバスC「いんや。……とりあえず一杯くれよ。また何か試してたか?」
書店主「分かる~? さ、座って~」
サキュバスC「……いや、ちょっと探すモンあるからさ。淹れたら呼んでくれや」
書店主「はいはい、分かりました~」
店の奥に消えた書店主を尻目に、サキュバスCは書架に向かう。
木造の床を真鍮の右脚が踏み締めるたびに硬い足音と床の軋みが店に反響した。
目指すのは、人間界の出来事を記した、“人間界で作られた”古書の棚。
数千年前のものにも関わらず、どれもまるで製本したばかりのようにくっきりと表紙のエンボス加工まで読み取れて、紙も崩れてくる事がない。
これが人間界に存在すれば、恐ろしく希少な価値を持つだろう。

429 : ◆1UOAiS.xYWtC :2017/02/15(水) 04:42:24.41 ID:qO+FEOZvo
しばし、手に取っては眺め、手に取っては眺めを繰り返しているとーーーー。
書店主「も~……またエッチな本読んでるんですか~……?」
サキュバスC「ぎゃああぁぁぁっ!?」
気配も無く後ろに立った彼女が、囁いてきた。
取り落としかけた本をばたつきながら受け止め、棚に戻すと向き直りーーーー。
サキュバスC「いきなりなんだよ? また、ってなんだよまたって!?」
書店主「え、だって……この間も買っていったじゃないですか。つんけんした男装の女騎士様と、従士の青年の……」
サキュバスC「エロくねーだろ! ……っつか、あれ……エッチ、する場面……ないし……」
書店主「え? ……じゃああれ、どういう終わりだったんですか?」
サキュバスC「どう、って……色々あったけどチューして、その後結婚して、子供できてて……終わりだよ」
書店主「……あ~……でしたっけ。好きなんですか、ああいうの?」
サキュバスC「……人間にはハッピーエンドを迎えてほしいだけなんだよ、アタシは。苦い結末は嫌いだ、いくらそこにテーマがあってもさ」
書店主「でも、単純に好きなんですよね? ロマンチックなのも」
サキュバスC「あんたと話してると誘導されてはめられそうだから、もうこの話は終わりだよ」


430 : ◆1UOAiS.xYWtC :2017/02/15(水) 04:43:00.52 ID:qO+FEOZvo
カウンター前の席で“コーヒー”を嗜んで時を過ごしていると、自然、話題は“陛下”の事になった。
書店主「そういえばぁ……陛下、おちんちんが固まったままになって大変みたいですねぇ」
サキュバスC「あーね。しかし、一年も経つのにまだかかってなかったのがビックリだ」
書店主「ですよねぇ。まだ治りませんかねぇ」
サキュバスC「無理だろ、まだ四百回以上あるし……」
書店主「……え? “五百回近く”じゃないんですか? あ、もしかして……ふふっ」
その時、サキュバスCの顔はさっと青ざめーーーー今自分が何を告白したかを理解した。
サキュバスC「い、いや待て違うんだって! 違うからな!?」
書店主「いえいえ、隠さなくてもいいんですよぉ。サキュバスじゃないですか。してる事、してるんですね~」
サキュバスC「あーーーーーっ! あーーーーーーっ!!」

431 : ◆1UOAiS.xYWtC :2017/02/15(水) 04:44:24.37 ID:qO+FEOZvo
書店主「それはともかく、本当は何をお探しになってたんですか~?」
サキュバスC「……いや、何って事もねェんだけどさ……気になって。あれ、減らし切れねェとどうなんのかなって」
書店主「ん~……どうだったかしら。おちんちんがもげちゃうとか……?」
サキュバスC「んなユルい口調で言うか、それをさ」
書店主「ところで、サキュバスCさん。風の噂ですけど……また、どこかお行きになるとか」
サキュバスC「あぁ、“別荘”な。今までもちょくちょく戻ってたけど、リンゴの実が生るって分かったから色々世話して、試したくてさ」
書店主「リンゴ……? ああ、あれですか。あれでお酒作ると美味しいんですよぉ。お口の中でしゅわ~ってして、甘酸っぱくて……」
サキュバスC「へー……美味そうじゃん、それ。どこで飲んだ?」
書店主「…………あれ? そういえば……どこでしょうか?」
サキュバスC「おい、おい……頼むよ」
書店主「でも……何でしょう。美味しかったし、すごく……幸せだった気がします。どこでか、誰とかは……思い出せません、けど」
言って、書店主は……何かを探るように、カウンターの上の一輪挿しのワスレナグサへ視線をやった。

432 : ◆1UOAiS.xYWtC :2017/02/15(水) 04:49:35.51 ID:qO+FEOZvo
今日の分投下終わり
本当、時間はともかく毎日更新できてて自分でビックリなんだ……
それにしても、書き専だから分からないけれど
やはりリアルタイムに追えるのは特別な何かがあるものでしょうか?
読んでいただけて何よりです
それではまた明日

433 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2017/02/15(水) 05:39:02.94 ID:9NPrGPoB0

ワスレナグサ…

435 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2017/02/15(水) 16:19:33.86 ID:OaV+y8GO0

読み返したら、書店主は人間界にいたときに、あの人と一緒にリンゴ酒を飲んでいたね…
そのうち、狐の酒場でも振る舞われそう。

437 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2017/02/15(水) 17:26:45.71 ID:dqWs/VPho
りんご酒・・・カルヴァドスか。
冷たくシュワッっと・・・

438 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2017/02/15(水) 20:45:42.75 ID:Zx6E4sGA0
りんごならシードルが好き
飲みたくなってきた

442 : ◆1UOAiS.xYWtC :2017/02/16(木) 04:49:14.62 ID:lpemIysuo
*****
サキュバスC「ま、そういう訳さ。アタシはアタシで、興味が出てきたんだよ。こいつで酒作れるってんならね」
勇者「動機は酒か、それも作る方で?」
サキュバスC「どうなんだ? 飲んだ事あったりするのか」
勇者「……確か、ある。リンゴを発酵させて作る酒で、発泡がきつかったな。すいすい行けるから調子に乗って飲んだせいで翌日酷かったな」
サキュバスC「ふーん……。まぁ、多分できんだろ。酒の造り方なんてどれもこれも似たようなもんだし」
勇者「密造酒の話を俺の前でするか……」
サキュバスC「あ? なんだ、逮捕か? いいよ、身体で払わせてやる」
勇者「俺が払うのか!」
サキュバスC「いいだろ? ……で、だ。マジメな話になる。お前、ヤベーぞ」

443 : ◆1UOAiS.xYWtC :2017/02/16(木) 04:49:45.32 ID:lpemIysuo
それまでから一転して……急に、サキュバスCは真剣な表情を向けてきた。
サキュバスC「……あと何回だ?」
勇者「え?」
サキュバスC「あと何回だっつってんだ!」
勇者「……四百と数回だ」
サキュバスC「そうか、クソっ……間に合わねェんじゃねーか……」
勇者「いったい何だ?」
サキュバスC「アタシも調べた。いいか、ソイツは……一週間しかない。淫魔熱は最初の症状が治まってから、“そう”なる。
         なった後、一週間以内に回数を減らし切れないと……」
勇者「……消えるのか」

444 : ◆1UOAiS.xYWtC :2017/02/16(木) 04:50:28.63 ID:lpemIysuo
サキュバスC「…………知ってやがったのか?」
勇者「堕女神から聞いた、そうなった人間が過去に居たって。……一致したって事は間違いないのか」
サキュバスC「落ち着いてる場合じゃねェ。今日を含めてあと四日。四日で四百回、一日で割れば百回。……まずいだろ」
初日に堕女神と交わしていた言葉が、真実になってしまった。
一日当たり百回、しなければならない。
堕女神からだけ聞いた時にはまだ楽観できていたがーーーー今はそうはいかない。
サキュバスCからも同じ話をされた以上、徐々に焦りが生まれてくるのが勇者に分かる。
その話は……真実になってしまったと。
勇者「ちなみに、その話は……どこから? 修道士の話なら聞いたけれど……」
サキュバスC「違う、そいつじゃない。別人だ。別人がここで風邪ひいて病気を人間界に持ち帰って、
         誰かにうつりこそしなかったが……同質量のドロドロになって死んだ」
勇者「……くそっ」

445 : ◆1UOAiS.xYWtC :2017/02/16(木) 04:50:55.10 ID:lpemIysuo
サキュバスC「ともかく、時間がねぇ。どんな手を使ってもいいから削り切るんだ。さもなきゃ、お前……」
勇者「……っ、待て!」
制するのが、一瞬遅れた。
話を遮る間もなく、焦燥感に駆られたままいたせいでーーーー気配に気付けなかった。
すなわち……ベンチの後ろにいつからか立っていた、隣女王の。
隣女王「……陛下……あの……」
勇者「……どのあたりから、聞いてた?」
立ち上がるとサキュバスCもきまりの悪そうな顔で立ち上がり、舌打ちする。
あくまで隣女王の方へ顔を向けないのはーーーー非礼ではあるが、誰も咎める余裕がなかった。
隣女王「陛下、が……その、回数を……減らせ、なければ……お体が……と」
傍らにサキュバスBはいない。
褐色の肌は光を失った土気色へ変わってしまい、その目は虚ろに、かつ涙を浮かべて揺れていた。
勇者「落ち着くんだ、決まった訳じゃない。……すまない、サキュバスC。また後で話せるか」
サキュバスC「ああ、分かった。……ごめん」

446 : ◆1UOAiS.xYWtC :2017/02/16(木) 04:51:21.48 ID:lpemIysuo
サキュバスCが去っても、隣女王は硬直したまま動かない。
座るように勧めても、彼女は地面に縫いとめられたようだった。
勇者「……隠すつもりじゃなかった。ただ不確かな事を言って動揺させたくなかった。分かってくれるか?」
隣女王「……左手を、お見せ願えますか?」
左手に灯った紫の四本線と、いくつかの点。
残る射精回数を示すそれを彼女へ見せると、その手は震えていた。
立ち聞きした話と、それを照らし合わせているのか……震えは止まない。
隣女王「そん、な……陛下、こうしている場合では……っ」
勇者「いや、大丈夫。気にしないでくれ、頼……」
隣女王「いけません!」
勇者は、彼女の激した声を聴くのは初めてだった。
思わず背筋が伸び、後ずさりかけた。
それでも左手は手放されず、隣女王の目が注がれている。

447 : ◆1UOAiS.xYWtC :2017/02/16(木) 04:51:57.51 ID:lpemIysuo
隣女王「……陛下、お願いがございます。どうか……これだけは」
勇者「……何かな」
隣女王「お伝えする前に、約束してください。必ず聞き入れて下さい。何と引き換えにしてでも、決して断らないで下さい」
勇者「それは……中身を聞いてから、じゃないと……いや。俺に出来る事ならば」
隣女王「約束ですよ?」
回りくどく、外堀を埋め固めるような言葉は、詰めが甘く、乏しい。
しかし、だからこそ伝わる事もある。
隣女王の中には、今ーーーー決心がある。
勇者「……約束する。俺に出来る事なら」
隣女王「それでは」
彼女の唇は震えながら……それなのに、はっきりと言葉を紡いだ。
隣女王「私に。私、だけに……お手伝いさせてください。私を使って……下さい」

448 : ◆1UOAiS.xYWtC :2017/02/16(木) 04:56:31.23 ID:lpemIysuo
短くてすまないのですが、今日はここまで
そして申し訳ない
明日はまた投下できない可能性が高い、というかほぼ……
では、また明後日……ちくしょう

450 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2017/02/16(木) 06:42:08.38 ID:giaqKo3A0
乙!
気負い過ぎずにゆっくりしてくれさい
しかし急展開…続きすごい気になる


451 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2017/02/16(木) 07:20:31.66 ID:ct17KtEBo
隣女王・・・400・・・余裕だな

463 : ◆1UOAiS.xYWtC :2017/02/18(土) 02:48:47.37 ID:74FqSM5yo
*****
勇者「今更言うのは良くない、それは分かる。……だけどだ。本当に良かったのか?」
隣女王「はい。覚悟は……できております、陛下の為ですから……」
勇者「俺の事なんてどうでもいい。君の話だ」
隣女王「陛下。去年の、……私達を助けて下さった時の事を覚えておいででしょうか?」
勇者「……忘れもしないよ。トロールの巣があんな近くにあったなんて。怖い思いをさせたな、ごめん」
隣女王「いえ……あの時は、本当にありがとうございました。私は……今、陛下をお助けしなければなりません。
     こうする事、ぐらい、しか……。それに」
勇者「……それに?」
隣女王「私……凄く、嬉しいんです。ですから、その……」
隣女王「優しく……してください、ね」

464 : ◆1UOAiS.xYWtC :2017/02/18(土) 02:49:34.83 ID:74FqSM5yo
蝋燭の灯が、艶めかしく汗に濡れた褐色の肌を照らし出す。
純白のシーツの上だからこそ映える肌の色は扇情的だった。
ましてその肢体の持ち主が淫魔であり、年端も行かぬ少女であり、そして、高貴な身分の者であるという事実。
興奮を覚えない者など、いないだろう。
隣女王「で、でも……少し……怖いです……ね、これは……」
じゃらり、と似つかわしくない硬質な音が部屋に響く。
見ると、ベッドに仰向けにされた隣女王の両手首には手枷がはめられ、そこから伸びる鎖が頭側へと伸びて壁に留められ、固定されていた。
隣女王はまるで監禁され、性奴隷として使われるような姿のまま、ベッドに横たわる。
自由に動く脚にも、動きを鈍らせ、筋力を奪い抑制するための魔法の足枷がはめられていた。
彼女が自由に動かせるのは、胴体と頭、それだけだ。
勇者「……外そう、やっぱり。こんなのは……」
隣女王「いえ、平気です。聞き及んでおりますから……」
これは、彼女の内側に眠る“淫魔”を抑制するための措置だ。
一たび切り替わってしまえば、彼女は止まらない。
文字通り共に過ごす男の全てを絞り出し、干乾びさせ、その精力を食らい尽くすまで。
かつて、彼女の種族を見た時もそうだった。
この幼い淫魔へ滾りをぶつけていたオークは……逆に生命力を吸い取られ、殺された。

465 : ◆1UOAiS.xYWtC :2017/02/18(土) 02:50:04.32 ID:74FqSM5yo
ベッド脇には、淫魔の手になる強壮剤の瓶が数十本に渡って並べられている。
一瓶飲めば、三日三晩は精力を保てる強烈なものだ。
疲労回復効果も折り紙付きであり、製法は淫魔の秘伝。
そしてーーーー既に一瓶、飲んである。
隣女王「……陛下、その……」
もじもじと、裸身をくねらせながら隣女王は頬を赤らめて呟いた。
隣女王「あの、怖い……ので……口づけ、を……していただけませんか……?」
一糸まとわぬ裸体で、手枷と足枷をはめられたまま、彼女は照れながら言った。
ささやかな胸を隠す事も、産毛のような銀毛がまばらに生えた秘所を隠す事もできないのに。
乱れた銀髪でせめて目元を隠しながら、そう望んだ。
応えるべくーーーー勇者はゆっくりと圧し掛かり、ぎゅっと目を閉じた隣女王の唇を、奪う。
隣女王「んっむ……っちゅ……はっ……ふぅ……!」
覚えた口淫とは違い、ひどく拙いキスだった。
舌を差し入れ合い、前歯と口の粘膜を溶け合わせるようなものではない。
むしろ、その前。
初めて触れた物の感触を、互いの唇の結び合う感覚を必死で覚え込もうとするような、切なげな文字通りの“接吻”だ。

466 : ◆1UOAiS.xYWtC :2017/02/18(土) 02:50:37.23 ID:74FqSM5yo
*****
堕女神「…………推奨はできかねます」
勇者「……ああ、そういう事も分かってる」
サキュバスA「命、いらないんですの? ダー○シュ○イダーでさえ絶頂死するような……」
勇者「それも聞いた事がある」
隣女王の申し出は、慎重にならざるを得ないものだった。
互いの身分の意味するところもだが、何より迂闊に手を出せば殺される。
ただ精力を糧とするだけのこちら側のサキュバスと違い、隣国の淫魔は根こそぎ奪い尽くす、
悪く言えばイナゴのような生態を持つサキュバスだ。
その中でも隣女王は最上位であり、一度眼を覚ましてしまえば……何が起こるか、分から無い。
ドラゴンの尾をくすぐるような、一歩間違えば殺されかねない危険がつきまとう。
それが分かっているから堕女神も、サキュバスAも、説得に回る。
執務室にいるのは、勇者を含めた三人だけ。
堕女神「……もはや、説得はできないのですか?」
サキュバスA「……私は止めましたわよ?」

467 : ◆1UOAiS.xYWtC :2017/02/18(土) 02:52:00.96 ID:74FqSM5yo
勇者「……だから、安全策を可能な限り考えてほしいんだ」
隣女王の暴走を防ぐ、もしくはしてもコントロールできる手段を考えなければならない。
堕女神とサキュバスCの結論が一致し、残り回数を消化できなければ何が起きるか分から無い。
そして何より、隣女王を説得する事はもうできない。
彼女の眼を見れば、分かる。
あれはーーーー本当に、勇者の身を案じて、その上での申し出だったからだ。
堕女神「……主導権を奪わせないようにしましょう。魔力を込めた枷を準備します」
サキュバスA「では、私は各種回復剤を調達して参りますわ。それと……」
勇者「ポチにも頼もう。もし何かあれば、割って入ってくれるように」
地下牢のキングローパー、ポチには途轍もない特性が一つある。
それはーーーー“特性を含めた、魔族の魔力を完全に無効化する”点だ。
最高位の魔族が生み出した攻撃魔法も効かず、魔族の結界を意に介さず通り過ぎ、とにかく魔力は効果がない。
物理的破壊には弱くとも再生能力がそれを補い、寿命は恐らく無限。
動きが緩慢な点だけが弱点だが、補って余りある。
ただ勇者の放つ雷だけが、彼を打てた。
そして……いくつもの安全策を重ねた上で、今に至る。

468 : ◆1UOAiS.xYWtC :2017/02/18(土) 02:54:04.36 ID:74FqSM5yo
ではここまでだ
続きはまた明日
……当初予定していた文字数を圧倒的にオーバーしているのはないしょだぞ!

469 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2017/02/18(土) 02:56:57.78 ID:l3mZ0yP5O

たくさん読めるのは良いことだ

470 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2017/02/18(土) 03:33:09.74 ID:ZWYqaOjK0
乙!
せいしをかける夜が始まる…

471 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2017/02/18(土) 05:58:01.01 ID:akdC/R1A0
乙!
ポチさん居るだけでわくわくしてまうww

472 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2017/02/18(土) 06:30:25.29 ID:2AAwhC6oO
乙!
ポチさん大活躍の予感!!

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