勇者「淫魔の国で風邪をひくとこうなる」
Part15
556 : ◆1UOAiS.xYWtC :2017/02/24(金) 03:24:57.47 ID:gPmO1JyQo
幾条もの触手に絡め取られた隣女王の姿に、先ほどの傲岸不遜の魔族の面影はない。
ベッドの支柱と天蓋を巻き込んで形成された苗床に捧げられた生贄のように、彼女は動きを再び奪われていた。
隣女王「くっ……。何、の……おつもりですか……?」
勇者「……ポチ?」
隣女王「くだらない、ローパー如きに、私が……何っ!?」
目の前に躍り出た数本の触手が枝分かれしながら変異し、十数の触手へそれぞれ分かれた。
その形状は、一目で用途が想像できないものも少なくない。
ヒルのように平たい外観の腹に、粘液を滲ませる肉粒をびっしりと埋め込んだもの。
先端から四つに分かれた口内に、糸のように微細な触手を舌のように蠢かせるもの。
スライムのように半透明な粘液の塊が人間の手の形を成したもの。
連なる肉の粒を刺した串のようなもの。
それらが皆、彼女の褐色の幼い肢体を目指し、その時を待つ。
しかし隣女王が驚いているのは、そこではない。
彼女は恐らく、魔力を行使して触手を払おうとした。
肘まで、膝までを呑み込む触手を焼き払い、その縛めから逃れようと。
だが、それはーーーー叶わない。
淫魔では決して、この触手の持ち主には勝てず、殺す手段そのものも世界に存在しない。
557 : ◆1UOAiS.xYWtC :2017/02/24(金) 03:25:46.20 ID:gPmO1JyQo
隣女王「何故っ……きゃあ、あぁぁぁぁっ!!」
ヒル状の触手が、彼女の努力を嘲笑うようにささやかな胸へ伸び、ぐじゅりと粘液に湿る腹を押し付けるように、ぐねぐねと動いた。
隣女王「や、めっ……! な、何が起きてーーーー離せ、無礼な! 離……あんっ!」
すっぽりと覆われた小山を飲み込み、桃色の頂を捉え、内側の肉粒が粘液をなすりつけながら揉み込む。
淫らに響く水音は、視界を奪われた彼女の嫌悪感までも刺激してやまないはずだ。
自分が今何をされているのかーーーー次に何をされるのか、掴めない。
勇者「……『悪いな、嬢ちゃん。あんたに怨みはないが……あんたをそのまま帰す訳にはいかないんだ』」
隣女王「はっ……!? 何……を、言って……」
勇者「『せっかく起きた処、悪いが……もう一度、寝てもらうぜ。悪く、思……って、くれ』」
隣女王「先ほどから、何を……あぎっ! ぎ、ふぁっ……!」
微細な針状の触手が、彼女の肌に突き立つ。
しかし、血の滴る気配はない。
数秒して触手が脈打ち、何かを飲み込むように脈動していくと、謎は解けた。
針状の触手から吸い上げているのは血液、体液の類ではない。
紫色の燐光が瘤となって、地下深くのポチの本体へ向け、吸い込まれて行く。
ポチが吸収しているのは、彼女のーーーー淫魔としての力、そのものだった。
558 : ◆1UOAiS.xYWtC :2017/02/24(金) 03:26:43.35 ID:gPmO1JyQo
ポチ『旦那、手伝うぜ。残りはあと数回か? 気にする事ねぇ。あんたが一回動く度に、俺の吸収触腕は射精十回分もの淫魔力を取り上げる。
それに……一本じゃねぇからな』
勇者「……分かった、頼んだぞ」
隣女王に突き立ち、魔力を吸収する触手は合わせて五本。
それぞれ両上腕、へその下、左の尻たぶ、そして首。
五ヵ所から容赦なく淫魔の力を吸い上げ、彼女の身体に漲った凶暴性を吸い取り、無力化させていく。
口裂けの触手はヒル状のものと交代し、その乳首を内側の舌で締め上げ、ちゅぱちゅぱと音を立ててすすり込んでいた。
隣女王「あっ、あ……わ、私が……こんな……低級な……モノ、……に……?」
吸収されるたびにびくん、びくんと揺れる体は、もがく事すら許されていない。
彼女の四肢を飲み込んだ触手の中で暴れる手はさながら大蛇に飲まれた獲物のようだった。
ポチ『……低級でいたかったよ。淫魔を倒せる力なんて、欲しくなかったよ。でも、まぁ……仕方ないよな。
生きていたかったんだよ、俺はさ。もう、しがみつくのをやめても、落ちる事すらできねぇのさ』
勇者(……それにしても一体何なんだ、こいつの喋りは? ローパーの発言じゃないぞ)
ポチ『ほら、旦那。……ボサっとしてるな、間もなく夜が明けるぜ。急ぎな』
勇者「……ああ、そうだな」
559 : ◆1UOAiS.xYWtC :2017/02/24(金) 03:28:14.40 ID:gPmO1JyQo
触手に磔にされ、嬲られ続ける隣女王へ残りの数回全てを吐き出した。
驚くべき事に、この対淫魔の触手の洗礼の中でも、彼女の膣内は貪欲に蠢き、求めてきた。
それでも命がまだあるのはーーーーこちらが優位を奪えたからだ。
視界も、四肢の自由も、そして口も塞がれて、隣女王の中に宿った魔性は薄らぎゆき、やがて、消えた。
それが現れた時と同じように、淫靡な香りを放つ風が寝室を駆け抜け、背骨が折れそうなほどに身体を持ち上げ
ーーーーやがて、ぷつりと糸が切れたように脱力。
ポチはそれを見届け、責め苛んでいた触手を全て仕舞い込むと、更に十数秒間の残心を以て警戒し、やがて、彼女の身体を解放する。
そこに残されたのは、隣女王の、無邪気な寝顔と、ささやかな寝息で揺れる裸身だった。
加えて左手の紋章は消えて、もうすっかりと、ようやく大人しくなれた“自分自身”。
勇者「……ようやく、だ。ようやく……楽になれた……」
ポチ『フッ、人生長いもんだ。たまには柔らかいナニが恋しい時もあるさ。葉巻、持ってないか?』
勇者「今度持っていってやる」
隣女王を寝かせ、ガウンを体にかけてやりーーーー服を着てから、力無く窓辺の椅子に座る。
部屋を埋め尽くした触手はすでになく、一本だけが残り勇者の横で蠢く。
560 : ◆1UOAiS.xYWtC :2017/02/24(金) 03:29:42.70 ID:gPmO1JyQo
ポチ『……まぁそれは置いといて、だ。あんたの世界に残されていた淫魔の悪名。その正体は、こいつらだ』
勇者「何だって?」
ポチ『かつてこいつらの寿命はもっと長く、身体も大きく、そして……無邪気さはなく、残忍性だけがあった。
だが……気付けばこいつらはガキのまま成長しないようになり、魔力も少なくなり、その精神にもフタがかぶせられた』
勇者「それは、……人間界の誰かが?」
ポチ『いや、恐らくは前女王ーーーーの前に連なる誰かだろう。俺だって流石に全知じゃない。
ただ、誰かがこいつらの暴威を危ういと感じ、止めたのさ』
勇者「何のために?」
ポチ『分かるんだろう、色男。淫魔は……少なくとも、こっちの国の淫魔は、“人間”が好きなのさ。こいつらと違い、エサとしてじゃなくてだ』
勇者「隣女王は……これから、どうなる?」
ポチ『ひとまずあんたがつぎ込んだ魔力は全部取り上げたから、目が覚めたら元通りだろう。
だがこんなのはこれっきりにしろ。こいつらは男が死ぬまでやめないぞ』
勇者「分かった。……ありがとう、済まない、ポチ」
ポチ『礼には及ばねぇさ。恐らく嬢ちゃんが起きたら何も覚えていないだろう。……後はあんたに任せたぜ、それじゃあな』
そう言って、ポチの最後の触手は暗闇の中へ引っ込んでいく。
窓から差す朝の陽射しを背中に感じながら、勇者はベッドの上を見つめた。
そこには、憑き物の落ちたような顔で微笑むように眠る、銀髪の女王の姿があった。
勇者「…………ありがとう、隣女王」
彼女もまたーーーー紛れもなく、勇者を助けてくれたのだ。
561 : ◆1UOAiS.xYWtC :2017/02/24(金) 03:31:02.91 ID:gPmO1JyQo
投下終了
たぶんあと二回ぐらいの投下で終わります
だが終わらせるにはまだスレが余り過ぎているから、まぁそういう事になる
ではまた明日
562 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2017/02/24(金) 03:50:31.80 ID:XolMoWuM0
乙!
ポチのイケメソな会話がポルコ・ロッソで再生された。
隣国の淫魔の意外な過去に物悲しさを感じる…
563 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2017/02/24(金) 03:52:21.52 ID:fl1ABsNu0
乙
ポチさんかっけえっす
564 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2017/02/24(金) 04:29:58.88 ID:TleZ7pW8o
乙
ポチの過去が気になる発言だなぁ
565 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2017/02/24(金) 05:18:41.93 ID:UT7XKaRN0
乙!
隣女王拘束精力変換ックスもいつか是非…
566 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2017/02/24(金) 06:00:55.10 ID:bVhd+zPj0
乙
陵辱するわけじゃないポチさんがイケメン過ぎて
567 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2017/02/24(金) 08:13:56.53 ID:IqVWTO900
乙
本当に消費しきったな・・・
568 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2017/02/24(金) 11:27:14.25 ID:sMOeRfbA0
乙
ポチさんすげえ
576 : ◆1UOAiS.xYWtC :2017/02/25(土) 04:08:45.95 ID:qTGE4Zqmo
*****
隣女王「それでは、皆さん。短い間でしたが、お世話になりました」
彼女が馬車に乗り込むのを、堕女神、サキュバスB、その他使用人達で見送る。
隣女王は、結局ーーーーーあの変貌の事を、何一つ覚えていない。
最初に迎えた結合の記憶までしかなく、その後の異変も、ポチの事も、何一つ。
手枷が外されていた事に目が覚めてすぐ驚きはしたものの、“寝づらそうだから外した”とフォローするだけで彼女は納得した。
四百発もの射精を受け止めたというのに、とうとう、彼女の“そこ”から精液が漏れ出る様子も見えなかった。
恐らく、測るには桶が必要なはずだ。
それなのに彼女は全てを吸い込み、貪欲に力に変えてしまった。
勇者の背に、今朝から幾度も恐ろしい予感が走っている。
もし彼女があのままの勢いでいたらーーーー彼女に勝てる者は、この国にポチを除いていたのか、と。
隣女王「……陛下、いかがいたしました?」
勇者「……いや、何でもないよ。それより隣女王、体調に変わりはないか?」
隣女王「いえ、すこぶる快調ですが……どうして?」
勇者「それならいいんだ、何でもない。またいつでも来てくれ」
隣女王「はい、必ず。……それでは陛下も、お風邪など召されぬように……」
勇者「……肝に銘じるよ」
577 : ◆1UOAiS.xYWtC :2017/02/25(土) 04:09:46.28 ID:qTGE4Zqmo
*****
サキュバスC「よーォ、フニャチン陛下」
勇者「またお前はそういう事を言う」
サキュバスC「何だよ祝ってやってんじゃねーか、バカ。快気祝いって事で何かやるか? いいぜ、お前になら何でもしてやるよ?」
勇者「……今、何でもするって言ったか?」
サキュバスC「えっ……?」
開け放っていた執務室の窓に、右半身を乗り出すように隻脚甲の淫魔が座っていた。
揺れるレースカーテンからは新緑の香りが風とともに吹き込み、その中に、サキュバスCの纏う嗅ぎ覚えのある果実香が忍んでいた。
勇者「今、何でもするって言ったよな?」
サキュバスC「え、あ、いやっ、ちょ、何……え?」
わざとらしく音を立てて椅子を引き、立ち上がり、大股で近づいていけば彼女は分かりやすく狼狽した。
無表情を作ってそう演じているだけに、更に。
サキュバスC「ば、バカお前……ふざけろ、こんな明るいトコで……! 誰か、来ちまうだろっ……!」
堕女神「いえーーーーもういますので、その心配はありませんよ」
578 : ◆1UOAiS.xYWtC :2017/02/25(土) 04:10:41.36 ID:qTGE4Zqmo
勇者「……違う」
堕女神「何が?」
勇者「……冗談だったんだ。脅かしてやりたかっただけで」
堕女神「存じております。よもやーーーー職務を放棄して白昼堂々と、等と企てておいでではないと理解しておりますので」
真後ろに冷たい気配とともに佇んでいるのが、振り向かずとも分かった。
風に揺れた髪が、シャツの背に当たるのもーーーー。
サキュバスC「……ケッ、くだらねぇ恐妻家かよ、お前も。アタシはただ、ちょいお別れを言いに来ただけなんだぜ」
勇者「……やっぱり、行くのか?」
サキュバスC「ああ。下町の狐どもとナシ付けてさ、あれで酒作ってみようって事になったんだよ。
……で、そうするんなら原料がなきゃハナシにならねぇわけだ」
勇者「それは、楽しみだけど……」
サキュバスC「ならそうしてな。……まぁ、ウンザリしたら逃げて来い。アタシがたっぷり甘やかしてやるよ? ククッ」
堕女神「いえ、そうはさせませんよ」
579 : ◆1UOAiS.xYWtC :2017/02/25(土) 04:11:09.87 ID:qTGE4Zqmo
サキュバスC「うわぁ、怖ぇ。アタシの命日は今日かー、参ったなー」
堕女神「……御望みですか?」
勇者(…………またこれだよ)
堕女神(陛下、何か?)
勇者「脳内に!?」
サキュバスC「はぁ?」
把握できないサキュバスCだけが、しばし窓辺に座ったまま右脚をぶらつかせーーーーやがて、立ち上がった。
勇者と堕女神を見下ろしたまま、彼女はにやりと笑う。
サキュバスC「まぁ別に、一週に一度ぐらいは色々しにこっちに来るからよ。お前こそ来たくなったらいつでも来いよ。 それじゃあ、な」
彼女が後ろへ倒れ込むように身を投げ出すと、一枚しかない右の翼が閃き、矢のように早い蒼影だけが空を走った。
580 : ◆1UOAiS.xYWtC :2017/02/25(土) 04:11:42.24 ID:qTGE4Zqmo
隣女王に続いて彼女を見送ると、ようやく、城内にはいつもの静寂が戻った。
股間の苦しさも無い。
普通に立ち歩く事ができ、用足しの時も邪魔にならず、左手にうねる妙な紋章もない。
それだけの事の贅沢さを思い知らされた数日間だった。
勇者「……俺はもう、しばらくはいいかな」
堕女神「はぁ……?」
勇者「一晩で四百回。四百回分も吸い取られたんだぞ」
堕女神「恐らく人類史上最高記録でしょう。それで……いい、とは?」
勇者「だから……その、分かるだろ?」
堕女神「……分かりますが、困ります」
勇者「え……?」
堕女神「ですから、その……私が……私、と……」
言いづらそうにする彼女の姿は、それもまた、まさしくいつものように婉曲だ。
口では言ったばかりの勇者も、また自覚する。
勇者「……分かったよ、今日だな」
ここへ迷い込んだ男が時にかかる、奇病。
治療法は、ただ一つ。
そして治療が済んでもーーーーこの国では、誰も抗えない。
ここはーーーーーー“淫魔の国”だから。
終
581 : ◆1UOAiS.xYWtC :2017/02/25(土) 04:14:36.98 ID:qTGE4Zqmo
一ヶ月以上お付き合いありがとうございました
とりあえず酒を私は飲む
飲むと言ったら飲むんだ
書き始めればペースも保てるのに、どうも立ち上がりが俺は悪い
それでは、また
…………HTML化を出すには、ちょっと余りすぎてるね?
582 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2017/02/25(土) 04:16:16.49 ID:TeHK3YTvo
おつー!
583 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2017/02/25(土) 04:31:49.10 ID:yivhQ7rao
乙
そうだな、余りすぎてるな、
どうすれば良いんだろうね|壁|ω・)チラッ
584 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2017/02/25(土) 04:49:21.91 ID:gdb2eTrnO
外伝扱いだった『ワルキューレ達のその後(近況報告みたいなもの)』とか・・・?
585 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2017/02/25(土) 07:32:45.27 ID:sY25WvLb0
おつ
586 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2017/02/25(土) 07:55:16.97 ID:7VCNS1Ieo
乙
余ってるよー!絶賛余ってるよぉ!
598 : ◆1UOAiS.xYWtC :2017/02/28(火) 04:38:00.04 ID:K40RaSsSo
こんばんは、とりあえず日曜を期限としておまけH投下します
もう少しだけ待っていてください
599 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2017/02/28(火) 05:46:30.65 ID:MiJESRiHo
マジか、
今週はワクワクしながら過ごせそうだ
600 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2017/02/28(火) 06:03:36.56 ID:k36elstT0
やったぜ
601 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2017/02/28(火) 17:22:48.96 ID:n/wmQ+daO
オマケきた!
602 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2017/02/28(火) 20:04:30.94 ID:0YYdw6qF0
期待してる!
603 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2017/03/01(水) 00:18:59.97 ID:nyVgp6ZM0
楽しみだ!
604 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2017/03/01(水) 00:47:58.28 ID:UzmoXC++0
オマケきた!
幾条もの触手に絡め取られた隣女王の姿に、先ほどの傲岸不遜の魔族の面影はない。
ベッドの支柱と天蓋を巻き込んで形成された苗床に捧げられた生贄のように、彼女は動きを再び奪われていた。
隣女王「くっ……。何、の……おつもりですか……?」
勇者「……ポチ?」
隣女王「くだらない、ローパー如きに、私が……何っ!?」
目の前に躍り出た数本の触手が枝分かれしながら変異し、十数の触手へそれぞれ分かれた。
その形状は、一目で用途が想像できないものも少なくない。
ヒルのように平たい外観の腹に、粘液を滲ませる肉粒をびっしりと埋め込んだもの。
先端から四つに分かれた口内に、糸のように微細な触手を舌のように蠢かせるもの。
スライムのように半透明な粘液の塊が人間の手の形を成したもの。
連なる肉の粒を刺した串のようなもの。
それらが皆、彼女の褐色の幼い肢体を目指し、その時を待つ。
しかし隣女王が驚いているのは、そこではない。
彼女は恐らく、魔力を行使して触手を払おうとした。
肘まで、膝までを呑み込む触手を焼き払い、その縛めから逃れようと。
だが、それはーーーー叶わない。
淫魔では決して、この触手の持ち主には勝てず、殺す手段そのものも世界に存在しない。
557 : ◆1UOAiS.xYWtC :2017/02/24(金) 03:25:46.20 ID:gPmO1JyQo
隣女王「何故っ……きゃあ、あぁぁぁぁっ!!」
ヒル状の触手が、彼女の努力を嘲笑うようにささやかな胸へ伸び、ぐじゅりと粘液に湿る腹を押し付けるように、ぐねぐねと動いた。
隣女王「や、めっ……! な、何が起きてーーーー離せ、無礼な! 離……あんっ!」
すっぽりと覆われた小山を飲み込み、桃色の頂を捉え、内側の肉粒が粘液をなすりつけながら揉み込む。
淫らに響く水音は、視界を奪われた彼女の嫌悪感までも刺激してやまないはずだ。
自分が今何をされているのかーーーー次に何をされるのか、掴めない。
勇者「……『悪いな、嬢ちゃん。あんたに怨みはないが……あんたをそのまま帰す訳にはいかないんだ』」
隣女王「はっ……!? 何……を、言って……」
勇者「『せっかく起きた処、悪いが……もう一度、寝てもらうぜ。悪く、思……って、くれ』」
隣女王「先ほどから、何を……あぎっ! ぎ、ふぁっ……!」
微細な針状の触手が、彼女の肌に突き立つ。
しかし、血の滴る気配はない。
数秒して触手が脈打ち、何かを飲み込むように脈動していくと、謎は解けた。
針状の触手から吸い上げているのは血液、体液の類ではない。
紫色の燐光が瘤となって、地下深くのポチの本体へ向け、吸い込まれて行く。
ポチが吸収しているのは、彼女のーーーー淫魔としての力、そのものだった。
558 : ◆1UOAiS.xYWtC :2017/02/24(金) 03:26:43.35 ID:gPmO1JyQo
ポチ『旦那、手伝うぜ。残りはあと数回か? 気にする事ねぇ。あんたが一回動く度に、俺の吸収触腕は射精十回分もの淫魔力を取り上げる。
それに……一本じゃねぇからな』
勇者「……分かった、頼んだぞ」
隣女王に突き立ち、魔力を吸収する触手は合わせて五本。
それぞれ両上腕、へその下、左の尻たぶ、そして首。
五ヵ所から容赦なく淫魔の力を吸い上げ、彼女の身体に漲った凶暴性を吸い取り、無力化させていく。
口裂けの触手はヒル状のものと交代し、その乳首を内側の舌で締め上げ、ちゅぱちゅぱと音を立ててすすり込んでいた。
隣女王「あっ、あ……わ、私が……こんな……低級な……モノ、……に……?」
吸収されるたびにびくん、びくんと揺れる体は、もがく事すら許されていない。
彼女の四肢を飲み込んだ触手の中で暴れる手はさながら大蛇に飲まれた獲物のようだった。
ポチ『……低級でいたかったよ。淫魔を倒せる力なんて、欲しくなかったよ。でも、まぁ……仕方ないよな。
生きていたかったんだよ、俺はさ。もう、しがみつくのをやめても、落ちる事すらできねぇのさ』
勇者(……それにしても一体何なんだ、こいつの喋りは? ローパーの発言じゃないぞ)
ポチ『ほら、旦那。……ボサっとしてるな、間もなく夜が明けるぜ。急ぎな』
勇者「……ああ、そうだな」
559 : ◆1UOAiS.xYWtC :2017/02/24(金) 03:28:14.40 ID:gPmO1JyQo
触手に磔にされ、嬲られ続ける隣女王へ残りの数回全てを吐き出した。
驚くべき事に、この対淫魔の触手の洗礼の中でも、彼女の膣内は貪欲に蠢き、求めてきた。
それでも命がまだあるのはーーーーこちらが優位を奪えたからだ。
視界も、四肢の自由も、そして口も塞がれて、隣女王の中に宿った魔性は薄らぎゆき、やがて、消えた。
それが現れた時と同じように、淫靡な香りを放つ風が寝室を駆け抜け、背骨が折れそうなほどに身体を持ち上げ
ーーーーやがて、ぷつりと糸が切れたように脱力。
ポチはそれを見届け、責め苛んでいた触手を全て仕舞い込むと、更に十数秒間の残心を以て警戒し、やがて、彼女の身体を解放する。
そこに残されたのは、隣女王の、無邪気な寝顔と、ささやかな寝息で揺れる裸身だった。
加えて左手の紋章は消えて、もうすっかりと、ようやく大人しくなれた“自分自身”。
勇者「……ようやく、だ。ようやく……楽になれた……」
ポチ『フッ、人生長いもんだ。たまには柔らかいナニが恋しい時もあるさ。葉巻、持ってないか?』
勇者「今度持っていってやる」
隣女王を寝かせ、ガウンを体にかけてやりーーーー服を着てから、力無く窓辺の椅子に座る。
部屋を埋め尽くした触手はすでになく、一本だけが残り勇者の横で蠢く。
560 : ◆1UOAiS.xYWtC :2017/02/24(金) 03:29:42.70 ID:gPmO1JyQo
ポチ『……まぁそれは置いといて、だ。あんたの世界に残されていた淫魔の悪名。その正体は、こいつらだ』
勇者「何だって?」
ポチ『かつてこいつらの寿命はもっと長く、身体も大きく、そして……無邪気さはなく、残忍性だけがあった。
だが……気付けばこいつらはガキのまま成長しないようになり、魔力も少なくなり、その精神にもフタがかぶせられた』
勇者「それは、……人間界の誰かが?」
ポチ『いや、恐らくは前女王ーーーーの前に連なる誰かだろう。俺だって流石に全知じゃない。
ただ、誰かがこいつらの暴威を危ういと感じ、止めたのさ』
勇者「何のために?」
ポチ『分かるんだろう、色男。淫魔は……少なくとも、こっちの国の淫魔は、“人間”が好きなのさ。こいつらと違い、エサとしてじゃなくてだ』
勇者「隣女王は……これから、どうなる?」
ポチ『ひとまずあんたがつぎ込んだ魔力は全部取り上げたから、目が覚めたら元通りだろう。
だがこんなのはこれっきりにしろ。こいつらは男が死ぬまでやめないぞ』
勇者「分かった。……ありがとう、済まない、ポチ」
ポチ『礼には及ばねぇさ。恐らく嬢ちゃんが起きたら何も覚えていないだろう。……後はあんたに任せたぜ、それじゃあな』
そう言って、ポチの最後の触手は暗闇の中へ引っ込んでいく。
窓から差す朝の陽射しを背中に感じながら、勇者はベッドの上を見つめた。
そこには、憑き物の落ちたような顔で微笑むように眠る、銀髪の女王の姿があった。
勇者「…………ありがとう、隣女王」
彼女もまたーーーー紛れもなく、勇者を助けてくれたのだ。
561 : ◆1UOAiS.xYWtC :2017/02/24(金) 03:31:02.91 ID:gPmO1JyQo
投下終了
たぶんあと二回ぐらいの投下で終わります
だが終わらせるにはまだスレが余り過ぎているから、まぁそういう事になる
ではまた明日
562 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2017/02/24(金) 03:50:31.80 ID:XolMoWuM0
乙!
ポチのイケメソな会話がポルコ・ロッソで再生された。
隣国の淫魔の意外な過去に物悲しさを感じる…
563 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2017/02/24(金) 03:52:21.52 ID:fl1ABsNu0
乙
ポチさんかっけえっす
564 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2017/02/24(金) 04:29:58.88 ID:TleZ7pW8o
乙
ポチの過去が気になる発言だなぁ
565 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2017/02/24(金) 05:18:41.93 ID:UT7XKaRN0
乙!
隣女王拘束精力変換ックスもいつか是非…
566 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2017/02/24(金) 06:00:55.10 ID:bVhd+zPj0
乙
陵辱するわけじゃないポチさんがイケメン過ぎて
567 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2017/02/24(金) 08:13:56.53 ID:IqVWTO900
乙
本当に消費しきったな・・・
568 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2017/02/24(金) 11:27:14.25 ID:sMOeRfbA0
乙
ポチさんすげえ
576 : ◆1UOAiS.xYWtC :2017/02/25(土) 04:08:45.95 ID:qTGE4Zqmo
*****
隣女王「それでは、皆さん。短い間でしたが、お世話になりました」
彼女が馬車に乗り込むのを、堕女神、サキュバスB、その他使用人達で見送る。
隣女王は、結局ーーーーーあの変貌の事を、何一つ覚えていない。
最初に迎えた結合の記憶までしかなく、その後の異変も、ポチの事も、何一つ。
手枷が外されていた事に目が覚めてすぐ驚きはしたものの、“寝づらそうだから外した”とフォローするだけで彼女は納得した。
四百発もの射精を受け止めたというのに、とうとう、彼女の“そこ”から精液が漏れ出る様子も見えなかった。
恐らく、測るには桶が必要なはずだ。
それなのに彼女は全てを吸い込み、貪欲に力に変えてしまった。
勇者の背に、今朝から幾度も恐ろしい予感が走っている。
もし彼女があのままの勢いでいたらーーーー彼女に勝てる者は、この国にポチを除いていたのか、と。
隣女王「……陛下、いかがいたしました?」
勇者「……いや、何でもないよ。それより隣女王、体調に変わりはないか?」
隣女王「いえ、すこぶる快調ですが……どうして?」
勇者「それならいいんだ、何でもない。またいつでも来てくれ」
隣女王「はい、必ず。……それでは陛下も、お風邪など召されぬように……」
勇者「……肝に銘じるよ」
577 : ◆1UOAiS.xYWtC :2017/02/25(土) 04:09:46.28 ID:qTGE4Zqmo
*****
サキュバスC「よーォ、フニャチン陛下」
勇者「またお前はそういう事を言う」
サキュバスC「何だよ祝ってやってんじゃねーか、バカ。快気祝いって事で何かやるか? いいぜ、お前になら何でもしてやるよ?」
勇者「……今、何でもするって言ったか?」
サキュバスC「えっ……?」
開け放っていた執務室の窓に、右半身を乗り出すように隻脚甲の淫魔が座っていた。
揺れるレースカーテンからは新緑の香りが風とともに吹き込み、その中に、サキュバスCの纏う嗅ぎ覚えのある果実香が忍んでいた。
勇者「今、何でもするって言ったよな?」
サキュバスC「え、あ、いやっ、ちょ、何……え?」
わざとらしく音を立てて椅子を引き、立ち上がり、大股で近づいていけば彼女は分かりやすく狼狽した。
無表情を作ってそう演じているだけに、更に。
サキュバスC「ば、バカお前……ふざけろ、こんな明るいトコで……! 誰か、来ちまうだろっ……!」
堕女神「いえーーーーもういますので、その心配はありませんよ」
578 : ◆1UOAiS.xYWtC :2017/02/25(土) 04:10:41.36 ID:qTGE4Zqmo
勇者「……違う」
堕女神「何が?」
勇者「……冗談だったんだ。脅かしてやりたかっただけで」
堕女神「存じております。よもやーーーー職務を放棄して白昼堂々と、等と企てておいでではないと理解しておりますので」
真後ろに冷たい気配とともに佇んでいるのが、振り向かずとも分かった。
風に揺れた髪が、シャツの背に当たるのもーーーー。
サキュバスC「……ケッ、くだらねぇ恐妻家かよ、お前も。アタシはただ、ちょいお別れを言いに来ただけなんだぜ」
勇者「……やっぱり、行くのか?」
サキュバスC「ああ。下町の狐どもとナシ付けてさ、あれで酒作ってみようって事になったんだよ。
……で、そうするんなら原料がなきゃハナシにならねぇわけだ」
勇者「それは、楽しみだけど……」
サキュバスC「ならそうしてな。……まぁ、ウンザリしたら逃げて来い。アタシがたっぷり甘やかしてやるよ? ククッ」
堕女神「いえ、そうはさせませんよ」
579 : ◆1UOAiS.xYWtC :2017/02/25(土) 04:11:09.87 ID:qTGE4Zqmo
サキュバスC「うわぁ、怖ぇ。アタシの命日は今日かー、参ったなー」
堕女神「……御望みですか?」
勇者(…………またこれだよ)
堕女神(陛下、何か?)
勇者「脳内に!?」
サキュバスC「はぁ?」
把握できないサキュバスCだけが、しばし窓辺に座ったまま右脚をぶらつかせーーーーやがて、立ち上がった。
勇者と堕女神を見下ろしたまま、彼女はにやりと笑う。
サキュバスC「まぁ別に、一週に一度ぐらいは色々しにこっちに来るからよ。お前こそ来たくなったらいつでも来いよ。 それじゃあ、な」
彼女が後ろへ倒れ込むように身を投げ出すと、一枚しかない右の翼が閃き、矢のように早い蒼影だけが空を走った。
580 : ◆1UOAiS.xYWtC :2017/02/25(土) 04:11:42.24 ID:qTGE4Zqmo
隣女王に続いて彼女を見送ると、ようやく、城内にはいつもの静寂が戻った。
股間の苦しさも無い。
普通に立ち歩く事ができ、用足しの時も邪魔にならず、左手にうねる妙な紋章もない。
それだけの事の贅沢さを思い知らされた数日間だった。
勇者「……俺はもう、しばらくはいいかな」
堕女神「はぁ……?」
勇者「一晩で四百回。四百回分も吸い取られたんだぞ」
堕女神「恐らく人類史上最高記録でしょう。それで……いい、とは?」
勇者「だから……その、分かるだろ?」
堕女神「……分かりますが、困ります」
勇者「え……?」
堕女神「ですから、その……私が……私、と……」
言いづらそうにする彼女の姿は、それもまた、まさしくいつものように婉曲だ。
口では言ったばかりの勇者も、また自覚する。
勇者「……分かったよ、今日だな」
ここへ迷い込んだ男が時にかかる、奇病。
治療法は、ただ一つ。
そして治療が済んでもーーーーこの国では、誰も抗えない。
ここはーーーーーー“淫魔の国”だから。
終
581 : ◆1UOAiS.xYWtC :2017/02/25(土) 04:14:36.98 ID:qTGE4Zqmo
一ヶ月以上お付き合いありがとうございました
とりあえず酒を私は飲む
飲むと言ったら飲むんだ
書き始めればペースも保てるのに、どうも立ち上がりが俺は悪い
それでは、また
…………HTML化を出すには、ちょっと余りすぎてるね?
582 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2017/02/25(土) 04:16:16.49 ID:TeHK3YTvo
おつー!
乙
そうだな、余りすぎてるな、
どうすれば良いんだろうね|壁|ω・)チラッ
584 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2017/02/25(土) 04:49:21.91 ID:gdb2eTrnO
外伝扱いだった『ワルキューレ達のその後(近況報告みたいなもの)』とか・・・?
585 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2017/02/25(土) 07:32:45.27 ID:sY25WvLb0
おつ
586 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2017/02/25(土) 07:55:16.97 ID:7VCNS1Ieo
乙
余ってるよー!絶賛余ってるよぉ!
598 : ◆1UOAiS.xYWtC :2017/02/28(火) 04:38:00.04 ID:K40RaSsSo
こんばんは、とりあえず日曜を期限としておまけH投下します
もう少しだけ待っていてください
599 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2017/02/28(火) 05:46:30.65 ID:MiJESRiHo
マジか、
今週はワクワクしながら過ごせそうだ
600 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2017/02/28(火) 06:03:36.56 ID:k36elstT0
やったぜ
601 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2017/02/28(火) 17:22:48.96 ID:n/wmQ+daO
オマケきた!
602 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2017/02/28(火) 20:04:30.94 ID:0YYdw6qF0
期待してる!
603 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2017/03/01(水) 00:18:59.97 ID:nyVgp6ZM0
楽しみだ!
604 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2017/03/01(水) 00:47:58.28 ID:UzmoXC++0
オマケきた!
ショートストーリーの人気記事
神様「神様だっ!」 神使「神力ゼロですが・・・」
神様の秘密とは?神様が叶えたかったこととは?笑いあり、涙ありの神ss。日常系アニメが好きな方におすすめ!
→記事を読む
女「ハローハロー。誰かいませんか?どうぞ」
→記事を読む
キモオタ「我輩がおとぎ話の世界に行くですとwww」ティンカーベル「そう」
→記事を読む
魔王「世界の半分はやらぬが、淫魔の国をくれてやろう」
→記事を読む
男「少し不思議な話をしようか」女「いいよ」
→記事を読む
同僚女「おーい、おとこ。起きろ、起きろー」
→記事を読む
妹「マニュアルで恋します!」
→記事を読む
きのこの山「最後通牒だと……?」たけのこの里「……」
→記事を読む
月「で……であ…でぁー…TH…であのて……?」
→記事を読む
彡(゚)(゚)「お、居酒屋やんけ。入ったろ」
→記事を読む