勇者「淫魔の国は白く染まった」
Part4
145 : ◆1UOAiS.xYWtC :2014/12/30(火) 03:15:35.31 ID:PoJyx+V3o
>>128より
サキュバスB「次、陛下の番ですよ?」
勇者「え?」
半ば蚊帳の外だった勇者に、今度は告げられる。
サキュバスB「ほら、一緒に……隣女王さま、気持ちよくさせてあげましょー。こっち来てくださいよ」
気付けば、隣女王はベッドに組み敷かれていた。薄衣は乱れ、裾からほっそりとした、それでいて肉感も残した太ももが露わとなっている。
胸元も大きくくつろげられ、なだらかな砂丘のオアシスのような乳首が、衣の下からぷっくりと浮き出ている。
サキュバスB「ほぉら、脱ぎ脱ぎしましょー」
隣女王「……はい………」
サキュバスBが、ゆっくりと彼女の服を脱がせる。
前で合わさっていただけのそれは、扉を開くように、するすると解かれていった。
全身にキラキラと輝く汗は、ミルクを溶いた『珈琲』のような褐色の肌を艶やかに強調させる。
平坦で、乳首だけが存在を主張させているような胸。
細く切れ込んだ臍を中心にいただいた、柔らかそうな腹。
毛も生え揃っていない、余分を省いたような縦一文字の秘部。
芸術的なまでの脚線の先には、桜貝にも似た爪。
触れがたいような少女の裸体は、淫魔に特有の、雌の色気も従え、混ざり合いーーーー狂気じみたほどの色気を醸し出していた。
146 : ◆1UOAiS.xYWtC :2014/12/30(火) 03:18:42.74 ID:PoJyx+V3o
隣女王「あ、あの…恥ずかしい、のですが……!」
サキュバスB「だいじょーぶだいじょーぶ、私も脱ぎます。みんな。ね?」
言うが早いか、彼女もさっさと脱ぎ捨て、勇者にもそうするように目配せした。
勇者が脱いでいる間にも、サキュバスBは、彼女の首筋に残った僅かな残滓までも舐め取っていった。
勇者「サキュバスBお前、、やけに押しが強くないか?」
サキュバスB「えっ……そうですかね? まぁいいじゃないですか。ほら、陛下も一緒に」
半ば言いなりになるように、二人に近づく。
組み敷かれ無防備な隣女王の姿は、情欲をどこまでもかき立ててやまない。
怯えるようなーーーーそれでいて、何かを期待するような表情も。
薄い胸は強い鼓動で見て取れるほど上下し、そのたびに、ぴょこんと立った乳首が、風にそよぐように主張していた。
隣女王「何を、なさるの……ですか…?」
サキュバスB「えっと……そうですね。ちょっと慣れてから…軽く、イっちゃいましょっか」
隣女王「いく、とは……?」
サキュバスB「ん、んー……。ちょっと説明できないです、ごめんなさい。大丈夫、痛い事しないですから! ね!?」
隣女王「は、い。お願い……いたします」
サキュバスB「それじゃ、陛下。前からお願いします」
勇者「……前?」
147 : ◆1UOAiS.xYWtC :2014/12/30(火) 03:19:28.16 ID:PoJyx+V3o
促され、されるがままの隣女王の足側へ移動し、次を待つ。
近づくたびに少女は視線を揺らし、無意識に身をよじって逃れようともしていた。
隣女王「は、恥ずかしい……恥ずかしいです、陛下……」
間近で見る隣女王の裸身は、肌理の細かさも、立ち昇る汗と呼気の甘酸っぱさも、全てが男を誘うためのものとしか思えなかった。
熱く潤んだ瞳の奥にある微かな怯えは、さながら魔眼だ。
サキュバスB「よい、しょっ……と!」
隣女王「あっ……!」
頭側に移動したサキュバスBが、隣女王の両脇に下から手を入れて、ぐっと引き寄せた。
隣女王はサキュバスBに背中を預けてだらしなく座るような格好になり、咄嗟に開いた脚の間から、小さな割れ目が覗かせた。
サキュバスB「それじゃ、早速……えいっ」
悪戯じみた声とともに、彼女の両手が、ささやかな双丘に向かう。
指の股に乳首を挟み込むようにして、きゅっ、と捕まえてしまった。
隣女王「ひゃぅっ!?」
今はまだ、驚きの声だ。
甘みは未だ含まれず、羞恥と、驚きと、若干の怖さが勝っているようだ。
それを分かってか、サキュバスBはゆっくりと、こね馴染ませるように彼女の胸を愛撫する。
148 : ◆1UOAiS.xYWtC :2014/12/30(火) 03:20:34.82 ID:PoJyx+V3o
サキュバスB「わ、すごい手触りです。おっぱいが手に吸い付いちゃうみたい……」
隣女王「やめ、て……ください……」
解きほぐすような手の動きが、少しずつ範囲を増していく。
指の間から見える乳首は、触れれば爆ぜてしまいそうなほど、硬くしこっていた。
サキュバスB「ほらほら、陛下も。手でしてくださいよー。お口はだめですよ? おあいこですから!」
勇者「楽しそうな奴」
隣女王の声が、喘ぎ声へと変わり始めた頃ーーーー脚に近づき、彼女の膝に片手をかける。
力を加えて、開かせようとした時、慌てるような声が聞こえた。
隣女王「あの、陛下っ…そ、そこは……」
サキュバスB「隣女王さま、だめですよ。陛下のおちんちん見たんですから、よく見せてあげないと。ね?」
ぐっ、と押し開けて細い右脚をほぼ平行へと傾けると、ひくひくと揺れて清水を流す、小さな褐色の土手が間近に見えた。
しばし、観察しているとーーーーその下にある桃色の蕾が収縮して窄まった。
気恥ずかしさに括約筋をつい食い締めるが、サキュバスBの愛撫ごとに再び緩まり、息をするように、二つの口がぱくぱくと蠢く。
隣女王「や、やだ……このような……破廉恥な姿を……」
いやいやをするように頭を振る隣女王の耳元に、サキュバスBが口を寄せ、囁いた。
サキュバスB「慣れないと、ですよ? 男のヒトってみんなえっちなんですから、見せつけちゃいましょー。ほら、陛下……早く、してあげて」
149 : ◆1UOAiS.xYWtC :2014/12/30(火) 03:21:09.30 ID:PoJyx+V3o
妙な流れに促されるがまま、ぐっ、と身を乗り出し、隣女王の恥部へ指先を伸ばす。
ふっくらとした、血色の良い無毛の聖地は弾力があり、ぷにぷにと指を撥ね返すようだ。
生物のように震えたかと思うと、濡れた綿を圧したように、じわっと清水が滲む。
ぴっちりと閉じた筋目の向こうには、たっぷりと蜜を貯え、堪えているのが感じ取れた。
隣女王「きゃんっ!」
サキュバスB「えへへ。えっちな声……出ちゃってますよ。これは早くも効果アリですねー」
触れると同時に爪で乳首の尖端をきりきりと穿られ、隣女王の声が嬌声へと変わる。
負けじと指の腹を割れ目へ這わせ、柔らかく擦り上げる。
隣女王「な、何か………へん、な感じで……」
サキュバスB「どんな感じですか?」
隣女王「お腹、なか……熱くてむずむず、して……ひぅっ! 心臓、も……」
サキュバスB「なるほど。……もーっと可愛いトコ見てたいですけど、それじゃお勉強になりませんしね。早くイっちゃいましょっか、もったいないけど……」
言うとサキュバスBが目配せし、三度小さく頷き、タイミングを測らせた。
三度目に合わせ、指を深く沈ませて激しく擦り上げる。
中に入ってしまわないよう細心の注意とともに、小さな縦筋を愛でるように、内側にある蜜の海をくすぐるように。
合わせて左手で抑えた太ももを担ぎ上げ、羞恥心を煽るように大きく股を開かせた。
150 : ◆1UOAiS.xYWtC :2014/12/30(火) 03:21:50.10 ID:PoJyx+V3o
隣女王「んあぁっ! そんなに、したら……だめ、駄目……ですぅっ! な、何か…お腹で、あばれ……て……! いやぁぁっ!」
サキュバスBの受け持つささやかな乳房も、小さな掌の愛撫でぐにぐにと形を変えていく。
未発達でまだ痛覚も残したままの種のような乳だというのに、隣女王は痛みも見せない。
まがりなりにも淫魔であるため、その技は折り紙つきだ。
ぴんと尖った乳首は、今にも爆発してしまいそうなほどに昂っていた。
隣女王「だっ……だめ、だめだめだめっ! からだ、なにかおかしく……こわい、こわいぃぃっ!!」
サキュバスB「怖くない怖くない。大丈夫、私も陛下もここにいますよ。いっしょですよー。だから、ほら……イっちゃえー!」
隣女王「んぁ、ぁぁっ! イっ……イき、ます……わたし、イって……しまいますぅ!」
ぎゅむっ、と乳首を抓まれた瞬間ーーーー隣女王の背は弓なりに反れて、足の指がシーツをぎゅっと掴んだ。
サキュバスBは右太ももと左腕に深く爪を立てられ、苦悶の表情を見せつつ、堪えた。
二度、三度めの痙攣とともに秘部が蠢き、きゅっと指の腹を締め付けてから、緩んだ。
151 : ◆1UOAiS.xYWtC :2014/12/30(火) 03:23:10.76 ID:PoJyx+V3o
隣女王「ふ、ぁっーーーーはぁ、はぁ……わ、わたし……は……?」
再び彼女が意識を取り戻した時には、布団の中だった。
涙と唾液で濡れていた顔もすっきりと拭き取られ、先ほど起こった事は夢にも思えるような、落ち着いた空気が流れていた。
サキュバスB「あ、お、起きました……ね? あの、そのですね?」
身体を起こすと、ベッドの端にサキュバスBが正座している。
慌てるように、彼女はそのまま体を前に倒しーーーー
サキュバスB「ごめんなさい、ごめんなさい! つい調子に乗っちゃいました!」
隣女王「えっ!?」
勇者「お前は…………そろそろ本気で減給するぞ?……いや、俺も悪ノリ……した、けれど……」
ベッド脇に、薄いシャツを羽織った勇者がいる。
気まずそうに水を飲み、呆れたような目を彷徨わせていた。
勇者「俺からも謝る。すまなかった、許してくれ。悪ふざけが過ぎた……」
隣女王「え、え……?」
やや狼狽えーーーー頭を下げる両者を交互に見てから、隣女王はにこりと微笑み、告げた。
隣女王「……どうか、頭をお上げになってくださいまし」
サキュバスB「……ゴメンなさい……」
隣女王「お二方のおかげで、私はまた一つ、知る事ができました。……本当は、少し怖かったですけれど」
152 : ◆1UOAiS.xYWtC :2014/12/30(火) 03:23:58.19 ID:PoJyx+V3o
勇者「申し訳ない……」
隣女王「そ、それで……ですね。つ、次は……何を、教えてくださるのでしょうか?」
サキュバスB「えっ」
隣女王「で、ですから……もう一度……ですね……」
それきり、隣女王は引き寄せた掛布団で顔を覆い、耳を真っ赤に染めて押し黙ってしまう。
勇者「……だが、時間がなぁ」
柱時計を見れば、もう暁に近い。
サキュバスB「それじゃ……このまま、みんなで寝ましょっか」
言うと、サキュバスBは布団へ潜り込み、裸のままの隣女王を胸に抱き寄せ、横たわった。
それに倣って彼女の反対側へ入り込む。
サキュバスB「続きはまた明日、って事で。ね?」
隣女王「はい、……楽しみにしておりますよ」
153 : ◆1UOAiS.xYWtC :2014/12/30(火) 03:27:09.91 ID:PoJyx+V3o
短いのですが投下終了
ヘタをすれば年内最後の投下かもしれない
考えた結果、堕女神責められシーンは蔵入りとします
多分書いた時は厭世的になりすぎていたかもしんない
ではまた次回
154 : ◆1UOAiS.xYWtC :2014/12/30(火) 03:28:45.02 ID:PoJyx+V3o
ああ、そういえばもう三年になるのか、早いなぁ
しがみついてるなぁ、自分
156 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2014/12/30(火) 03:52:32.29 ID:fgoyxYnVo
うわぁ懐かしいスレ発見しちゃった
157 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2014/12/30(火) 05:21:48.21 ID:FHUNbp390
正直たしかに勇者以外の♂に責められる堕女神というのは見ていて胃がキリキリしそうだww
158 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2014/12/30(火) 07:49:02.41 ID:78Hi/CuG0
>>157
うわみたくねえ・・・頼むからNTRはNGであってほしい・・・
210 : ◆1UOAiS.xYWtC :2015/01/04(日) 00:01:56.42 ID:SbR5PYgYo
翌朝、朝食を終えてあの少年のいる別館へ向かった。
隣女王はどこに行くのかと不思議がっていたが、堕女神の取り成しでどうにか事は明かさずに済ませた。
警備に話を聞けば、昨夜はとくに異変は無かったという。
勇者「邪魔するぞ」
イン娘「……あ、勇者、さん。おはようござい……ます」
扉を開けると、『彼』は少し顔色が悪かった。
どこかぼんやりとした様子も見て取れ、好調ではなさそうだった。
勇者「眠れなかったのか?」
イン娘「はい……。なんだかずっと目が変に冴えちゃって。でも、今寝ると夜に眠れなくなっちゃうし……今日こそ、眠れるかなって……」
勇者「ひょっとして、この国で目が覚めてから一度も寝てないのか?」
イン娘「はい。……もう、二日に、なります」
勇者「二日間……。後で誰かを寄越して、体の具合を見てもらおう。どこか悪いとしか思えないな。メシは食ったのか?」
イン娘「え、ええ。すごくおいしかったです」
勇者「少し、外でも歩くか? 歩けるようなら、でいい」
イン娘「えっ……いいんですか?」
提案すると、イン娘は隈の出来かかった顔を綻ばせてみせた。
勇者「ちょっとぐらいは構わないよ。……とりあえず、服は用意してあるみたいだ。着替えられるか?」
部屋の隅に畳んで置かれている衣類を一瞥して訊ねると、逡巡し……どこか怯えるような様子で、イン娘は答えた。
イン娘「ごめんなさい。恥ずかしいから……き、着替えるので……その……」
勇者「ん……?」
イン娘「見ない、で……ほしくて……」
勇者「……あ、あぁ。そうか、分かった。外で待つから、着替えたら出てくるといい。外の者には言っておくから」
211 : ◆1UOAiS.xYWtC :2015/01/04(日) 00:03:24.60 ID:SbR5PYgYo
室外の使用人に事情を話し、別館の外で待つ。
今日は少しだけ晴れ間が覗くが、その分雲の切れ目から暖気が逃げて冷え込む。
木に止まる小鳥は羽を膨らまし、身を寄せ合って動かぬようにしていた。
あれから堕女神の様子も、落ち着いた。
イン娘の現れた翌日は、終日もじもじと落ち着かない様子で、執務の合間にも、妙に距離を詰めてくる傾向にあった。
逆にこちらが「執務中だ」と諌めるようなことまであり、違和感ばかりを覚えてしまったほどに。
だが結局、その時は押し切られてしまいーーーー搾られた。
勇者「いや、淫魔の国だから普通……なのか? ナイトメアの言うとおり、今までが変だった?」
としても、変化があまりに急だった。
急変の理由をいくら考えても答えは出ず、やがて扉が開かれ、待ち人が出てきた。
勇者「遅ーーーーなんだ、その服は!?」
イン娘「えっ……変、ですか?」
外に出てきたイン娘は、服を着ていた。
ーーーー女性物の、やや簡素なブラウスと、スカート、外套を。
イン娘「と、とくにおかしくはないと思うんですけど……どうしました?」
勇者「…………いや、もういい」
心から、おかしくはないと思っているようだった。
戸惑った様子で体をねじって服装の乱れを見直しているが、それ以前の問題がある。
勇者「……とりあえず歩くか」
考えても見れば、淫魔の国に男性用の衣類などあるはずもない。
少なくとも市販されてはおらず、勇者がふだん着る一点物では、『彼』にはサイズが合わないだろう。
212 : ◆1UOAiS.xYWtC :2015/01/04(日) 00:04:49.12 ID:SbR5PYgYo
勇者「おい」
イン娘「はい?」
勇者「その、下……も……か?」
イン娘「へ? 下?」
勇者「何でもない。いいから、散歩してくるといい」
イン娘「はい、分かりました」
勇者(似合ってるけど……似合ってるけどさ。違和感無いが。そういう問題じゃ……)
彼は、ゆっくりと踏みしめるように隣接した庭園へと歩いて行く。
後ろから見るとーーーー前から見てもだが、その姿は少女に、『サキュバス』にしか見えない。
垂らした尻尾も、角も、小さな翼も、青白い肌も。
だがそれでも、『彼』はサキュバスではないという。
何名かが庭園を周る少年を監視し、別館の屋根や城館の尖塔にも、目を光らせている者が見えた。
そうまでして監視せねばならないほどの、イレギュラーなのだ。
213 : ◆1UOAiS.xYWtC :2015/01/04(日) 00:06:43.53 ID:SbR5PYgYo
彼を横目に見ながら歩いて行くと、雪上に変わった足跡があるのを見つけた。
さながら巨大な鉤爪のような足跡と、靴跡とが交互に続いている。
勇者「……まさか、な」
その足跡は別館の裏まで続いているようで、かすかな追憶と共に興味を引かれ、辿ってみる事とした。
鉤爪の足跡は深く刻まれ、雪の下にある芝まで達しているものまである。
反面、靴跡は浅く新雪をなぞっていた。
数十歩も行くと、角を曲がり、別館の裏手側へと行き着いた。
そこで足跡は不自然に途切れておりーーーー終端まで行くと、後頭部にぼふっ、と軽い衝撃が走り、
外套の首元から冷たいものが入り込んで背筋を冷やした。
勇者「っ冷、たっ……!」
手をやると砕けた雪が付着しており、ようやく、誰かに投げつけられたのだと気付いた。
後方を振り返り、そこにあった庭木を見上げると、足跡の主が、いた。
???「ははっ、命中。騙されてんじゃねーよ、鈍ってんな?」
けらけらと笑う声は、忘れもしない。
夏に出会った隻脚の淫魔、ーーーーサキュバスC、だった。
214 : ◆1UOAiS.xYWtC :2015/01/04(日) 00:09:16.21 ID:SbR5PYgYo
その右脚は、不釣り合いなほど大きな真鍮の脚甲と一体化している。
左脚は踵の高いショートブーツと腿までのソックスで覆われ、下半身はスリット入りのスカート姿だった。
上は飾り気のない黒い絹のインナーとフード付のベストという、農園で逢った時とは違う、洒落た衣装を着こなしている。
サキュバスC「……んだよ、怒ったのか?」
無言で見つめていると、どこか心配そうな様子で彼女が言う。
だが視線は、無防備にぶらぶらと投げ出した脚の付け根にある。
勇者「白」
サキュバスC「あ?」
勇者「冬だから、白か?」
サキュバスC「はぁ? ……て、てめぇ!」
一瞬で顔を赤く染めたサキュバスCが、抗議するべく樹上から飛び降りる。
その瞬間に右脚の爪痕が雪上に深く刻まれ、粉雪が舞いあがった。
サキュバスC「勝手に見てんじゃねェ!」
勇者「国王に雪ぶつける奴が何言うか! だいたい何で白だよ!」
サキュバスC「アタシの勝手だろボケ!」
ひとしきり強く言い合って再会を確かめた後、ようやく、本題に入る。
まず、二つの意味を込めた問い掛け。
勇者「……で、何でここにいる?」
215 : ◆1UOAiS.xYWtC :2015/01/04(日) 00:10:13.69 ID:SbR5PYgYo
サキュバスC「今は城下町に住んでるからさ。夏だけはあっちで過ごすけどよ。……城にいる理由か?」
勇者「白を穿く理由もな」
サキュバスC「しつこい!」
勇者「つい。……で、何故なんだ?」
サキュバスC「いんや、別に理由はねーよ。強いて言えば、インキュバスのガキを見に来た?」
そう言うと、彼女は尻尾を振り、バランスを取って歩きながら建物の壁へともたれ、腕組みする。
サキュバスC「まぁ、それはそうとだ。何か変わった事とかねぇの?」
勇者「変わった……?」
サキュバスC「インキュバスは異物さ。異物が紛れ込めば場が乱れる。何も起こってない訳がネェ」
勇者「……異物か。皆そう言うよな」
彼は、この国のサキュバスとそう変わってはいないように見えた。
性別が違うだけなのに、サキュバスAも、誰もが彼を警戒している。
彼を見張っている者達の顔にも、油断は無い。
サキュバスC「やり過ぎ、過敏、って言いてェのか? ……あのクソ連中が人間の女をどう扱ったか教えてやってもいいぜ」
言葉に混じったのはいつもの露悪的な物言いではなく、心からの軽蔑、憎しみだった。
その様子と、言外の意図が感じ取れた時、勇者の心は重く澱んだ。
想像する事すらも覚悟がいる、そんな予感がしたからだ。
表情を曇らせると、彼女が場の空気を察したのか、ふっと微笑んで続けた。
サキュバスC「ーーーーなんてな。見たところ本当にガキみてェだし、今警戒する必要はそんなにねェ。それに」
勇者「それに?」
サキュバスC「ンな事考えるのはアタシの仕事じゃねーし? まぁ、肩の力抜けよ。……で、何か変わった事は無かったワケ?」
勇者「変わった……か」
>>128より
サキュバスB「次、陛下の番ですよ?」
勇者「え?」
半ば蚊帳の外だった勇者に、今度は告げられる。
サキュバスB「ほら、一緒に……隣女王さま、気持ちよくさせてあげましょー。こっち来てくださいよ」
気付けば、隣女王はベッドに組み敷かれていた。薄衣は乱れ、裾からほっそりとした、それでいて肉感も残した太ももが露わとなっている。
胸元も大きくくつろげられ、なだらかな砂丘のオアシスのような乳首が、衣の下からぷっくりと浮き出ている。
サキュバスB「ほぉら、脱ぎ脱ぎしましょー」
隣女王「……はい………」
サキュバスBが、ゆっくりと彼女の服を脱がせる。
前で合わさっていただけのそれは、扉を開くように、するすると解かれていった。
全身にキラキラと輝く汗は、ミルクを溶いた『珈琲』のような褐色の肌を艶やかに強調させる。
平坦で、乳首だけが存在を主張させているような胸。
細く切れ込んだ臍を中心にいただいた、柔らかそうな腹。
毛も生え揃っていない、余分を省いたような縦一文字の秘部。
芸術的なまでの脚線の先には、桜貝にも似た爪。
触れがたいような少女の裸体は、淫魔に特有の、雌の色気も従え、混ざり合いーーーー狂気じみたほどの色気を醸し出していた。
146 : ◆1UOAiS.xYWtC :2014/12/30(火) 03:18:42.74 ID:PoJyx+V3o
隣女王「あ、あの…恥ずかしい、のですが……!」
サキュバスB「だいじょーぶだいじょーぶ、私も脱ぎます。みんな。ね?」
言うが早いか、彼女もさっさと脱ぎ捨て、勇者にもそうするように目配せした。
勇者が脱いでいる間にも、サキュバスBは、彼女の首筋に残った僅かな残滓までも舐め取っていった。
勇者「サキュバスBお前、、やけに押しが強くないか?」
サキュバスB「えっ……そうですかね? まぁいいじゃないですか。ほら、陛下も一緒に」
半ば言いなりになるように、二人に近づく。
組み敷かれ無防備な隣女王の姿は、情欲をどこまでもかき立ててやまない。
怯えるようなーーーーそれでいて、何かを期待するような表情も。
薄い胸は強い鼓動で見て取れるほど上下し、そのたびに、ぴょこんと立った乳首が、風にそよぐように主張していた。
隣女王「何を、なさるの……ですか…?」
サキュバスB「えっと……そうですね。ちょっと慣れてから…軽く、イっちゃいましょっか」
隣女王「いく、とは……?」
サキュバスB「ん、んー……。ちょっと説明できないです、ごめんなさい。大丈夫、痛い事しないですから! ね!?」
隣女王「は、い。お願い……いたします」
サキュバスB「それじゃ、陛下。前からお願いします」
勇者「……前?」
147 : ◆1UOAiS.xYWtC :2014/12/30(火) 03:19:28.16 ID:PoJyx+V3o
促され、されるがままの隣女王の足側へ移動し、次を待つ。
近づくたびに少女は視線を揺らし、無意識に身をよじって逃れようともしていた。
隣女王「は、恥ずかしい……恥ずかしいです、陛下……」
間近で見る隣女王の裸身は、肌理の細かさも、立ち昇る汗と呼気の甘酸っぱさも、全てが男を誘うためのものとしか思えなかった。
熱く潤んだ瞳の奥にある微かな怯えは、さながら魔眼だ。
サキュバスB「よい、しょっ……と!」
隣女王「あっ……!」
頭側に移動したサキュバスBが、隣女王の両脇に下から手を入れて、ぐっと引き寄せた。
隣女王はサキュバスBに背中を預けてだらしなく座るような格好になり、咄嗟に開いた脚の間から、小さな割れ目が覗かせた。
サキュバスB「それじゃ、早速……えいっ」
悪戯じみた声とともに、彼女の両手が、ささやかな双丘に向かう。
指の股に乳首を挟み込むようにして、きゅっ、と捕まえてしまった。
隣女王「ひゃぅっ!?」
今はまだ、驚きの声だ。
甘みは未だ含まれず、羞恥と、驚きと、若干の怖さが勝っているようだ。
それを分かってか、サキュバスBはゆっくりと、こね馴染ませるように彼女の胸を愛撫する。
148 : ◆1UOAiS.xYWtC :2014/12/30(火) 03:20:34.82 ID:PoJyx+V3o
サキュバスB「わ、すごい手触りです。おっぱいが手に吸い付いちゃうみたい……」
隣女王「やめ、て……ください……」
解きほぐすような手の動きが、少しずつ範囲を増していく。
指の間から見える乳首は、触れれば爆ぜてしまいそうなほど、硬くしこっていた。
サキュバスB「ほらほら、陛下も。手でしてくださいよー。お口はだめですよ? おあいこですから!」
勇者「楽しそうな奴」
隣女王の声が、喘ぎ声へと変わり始めた頃ーーーー脚に近づき、彼女の膝に片手をかける。
力を加えて、開かせようとした時、慌てるような声が聞こえた。
隣女王「あの、陛下っ…そ、そこは……」
サキュバスB「隣女王さま、だめですよ。陛下のおちんちん見たんですから、よく見せてあげないと。ね?」
ぐっ、と押し開けて細い右脚をほぼ平行へと傾けると、ひくひくと揺れて清水を流す、小さな褐色の土手が間近に見えた。
しばし、観察しているとーーーーその下にある桃色の蕾が収縮して窄まった。
気恥ずかしさに括約筋をつい食い締めるが、サキュバスBの愛撫ごとに再び緩まり、息をするように、二つの口がぱくぱくと蠢く。
隣女王「や、やだ……このような……破廉恥な姿を……」
いやいやをするように頭を振る隣女王の耳元に、サキュバスBが口を寄せ、囁いた。
サキュバスB「慣れないと、ですよ? 男のヒトってみんなえっちなんですから、見せつけちゃいましょー。ほら、陛下……早く、してあげて」
149 : ◆1UOAiS.xYWtC :2014/12/30(火) 03:21:09.30 ID:PoJyx+V3o
妙な流れに促されるがまま、ぐっ、と身を乗り出し、隣女王の恥部へ指先を伸ばす。
ふっくらとした、血色の良い無毛の聖地は弾力があり、ぷにぷにと指を撥ね返すようだ。
生物のように震えたかと思うと、濡れた綿を圧したように、じわっと清水が滲む。
ぴっちりと閉じた筋目の向こうには、たっぷりと蜜を貯え、堪えているのが感じ取れた。
隣女王「きゃんっ!」
サキュバスB「えへへ。えっちな声……出ちゃってますよ。これは早くも効果アリですねー」
触れると同時に爪で乳首の尖端をきりきりと穿られ、隣女王の声が嬌声へと変わる。
負けじと指の腹を割れ目へ這わせ、柔らかく擦り上げる。
隣女王「な、何か………へん、な感じで……」
サキュバスB「どんな感じですか?」
隣女王「お腹、なか……熱くてむずむず、して……ひぅっ! 心臓、も……」
サキュバスB「なるほど。……もーっと可愛いトコ見てたいですけど、それじゃお勉強になりませんしね。早くイっちゃいましょっか、もったいないけど……」
言うとサキュバスBが目配せし、三度小さく頷き、タイミングを測らせた。
三度目に合わせ、指を深く沈ませて激しく擦り上げる。
中に入ってしまわないよう細心の注意とともに、小さな縦筋を愛でるように、内側にある蜜の海をくすぐるように。
合わせて左手で抑えた太ももを担ぎ上げ、羞恥心を煽るように大きく股を開かせた。
隣女王「んあぁっ! そんなに、したら……だめ、駄目……ですぅっ! な、何か…お腹で、あばれ……て……! いやぁぁっ!」
サキュバスBの受け持つささやかな乳房も、小さな掌の愛撫でぐにぐにと形を変えていく。
未発達でまだ痛覚も残したままの種のような乳だというのに、隣女王は痛みも見せない。
まがりなりにも淫魔であるため、その技は折り紙つきだ。
ぴんと尖った乳首は、今にも爆発してしまいそうなほどに昂っていた。
隣女王「だっ……だめ、だめだめだめっ! からだ、なにかおかしく……こわい、こわいぃぃっ!!」
サキュバスB「怖くない怖くない。大丈夫、私も陛下もここにいますよ。いっしょですよー。だから、ほら……イっちゃえー!」
隣女王「んぁ、ぁぁっ! イっ……イき、ます……わたし、イって……しまいますぅ!」
ぎゅむっ、と乳首を抓まれた瞬間ーーーー隣女王の背は弓なりに反れて、足の指がシーツをぎゅっと掴んだ。
サキュバスBは右太ももと左腕に深く爪を立てられ、苦悶の表情を見せつつ、堪えた。
二度、三度めの痙攣とともに秘部が蠢き、きゅっと指の腹を締め付けてから、緩んだ。
151 : ◆1UOAiS.xYWtC :2014/12/30(火) 03:23:10.76 ID:PoJyx+V3o
隣女王「ふ、ぁっーーーーはぁ、はぁ……わ、わたし……は……?」
再び彼女が意識を取り戻した時には、布団の中だった。
涙と唾液で濡れていた顔もすっきりと拭き取られ、先ほど起こった事は夢にも思えるような、落ち着いた空気が流れていた。
サキュバスB「あ、お、起きました……ね? あの、そのですね?」
身体を起こすと、ベッドの端にサキュバスBが正座している。
慌てるように、彼女はそのまま体を前に倒しーーーー
サキュバスB「ごめんなさい、ごめんなさい! つい調子に乗っちゃいました!」
隣女王「えっ!?」
勇者「お前は…………そろそろ本気で減給するぞ?……いや、俺も悪ノリ……した、けれど……」
ベッド脇に、薄いシャツを羽織った勇者がいる。
気まずそうに水を飲み、呆れたような目を彷徨わせていた。
勇者「俺からも謝る。すまなかった、許してくれ。悪ふざけが過ぎた……」
隣女王「え、え……?」
やや狼狽えーーーー頭を下げる両者を交互に見てから、隣女王はにこりと微笑み、告げた。
隣女王「……どうか、頭をお上げになってくださいまし」
サキュバスB「……ゴメンなさい……」
隣女王「お二方のおかげで、私はまた一つ、知る事ができました。……本当は、少し怖かったですけれど」
152 : ◆1UOAiS.xYWtC :2014/12/30(火) 03:23:58.19 ID:PoJyx+V3o
勇者「申し訳ない……」
隣女王「そ、それで……ですね。つ、次は……何を、教えてくださるのでしょうか?」
サキュバスB「えっ」
隣女王「で、ですから……もう一度……ですね……」
それきり、隣女王は引き寄せた掛布団で顔を覆い、耳を真っ赤に染めて押し黙ってしまう。
勇者「……だが、時間がなぁ」
柱時計を見れば、もう暁に近い。
サキュバスB「それじゃ……このまま、みんなで寝ましょっか」
言うと、サキュバスBは布団へ潜り込み、裸のままの隣女王を胸に抱き寄せ、横たわった。
それに倣って彼女の反対側へ入り込む。
サキュバスB「続きはまた明日、って事で。ね?」
隣女王「はい、……楽しみにしておりますよ」
153 : ◆1UOAiS.xYWtC :2014/12/30(火) 03:27:09.91 ID:PoJyx+V3o
短いのですが投下終了
ヘタをすれば年内最後の投下かもしれない
考えた結果、堕女神責められシーンは蔵入りとします
多分書いた時は厭世的になりすぎていたかもしんない
ではまた次回
154 : ◆1UOAiS.xYWtC :2014/12/30(火) 03:28:45.02 ID:PoJyx+V3o
ああ、そういえばもう三年になるのか、早いなぁ
しがみついてるなぁ、自分
156 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2014/12/30(火) 03:52:32.29 ID:fgoyxYnVo
うわぁ懐かしいスレ発見しちゃった
157 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2014/12/30(火) 05:21:48.21 ID:FHUNbp390
正直たしかに勇者以外の♂に責められる堕女神というのは見ていて胃がキリキリしそうだww
158 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2014/12/30(火) 07:49:02.41 ID:78Hi/CuG0
>>157
うわみたくねえ・・・頼むからNTRはNGであってほしい・・・
210 : ◆1UOAiS.xYWtC :2015/01/04(日) 00:01:56.42 ID:SbR5PYgYo
翌朝、朝食を終えてあの少年のいる別館へ向かった。
隣女王はどこに行くのかと不思議がっていたが、堕女神の取り成しでどうにか事は明かさずに済ませた。
警備に話を聞けば、昨夜はとくに異変は無かったという。
勇者「邪魔するぞ」
イン娘「……あ、勇者、さん。おはようござい……ます」
扉を開けると、『彼』は少し顔色が悪かった。
どこかぼんやりとした様子も見て取れ、好調ではなさそうだった。
勇者「眠れなかったのか?」
イン娘「はい……。なんだかずっと目が変に冴えちゃって。でも、今寝ると夜に眠れなくなっちゃうし……今日こそ、眠れるかなって……」
勇者「ひょっとして、この国で目が覚めてから一度も寝てないのか?」
イン娘「はい。……もう、二日に、なります」
勇者「二日間……。後で誰かを寄越して、体の具合を見てもらおう。どこか悪いとしか思えないな。メシは食ったのか?」
イン娘「え、ええ。すごくおいしかったです」
勇者「少し、外でも歩くか? 歩けるようなら、でいい」
イン娘「えっ……いいんですか?」
提案すると、イン娘は隈の出来かかった顔を綻ばせてみせた。
勇者「ちょっとぐらいは構わないよ。……とりあえず、服は用意してあるみたいだ。着替えられるか?」
部屋の隅に畳んで置かれている衣類を一瞥して訊ねると、逡巡し……どこか怯えるような様子で、イン娘は答えた。
イン娘「ごめんなさい。恥ずかしいから……き、着替えるので……その……」
勇者「ん……?」
イン娘「見ない、で……ほしくて……」
勇者「……あ、あぁ。そうか、分かった。外で待つから、着替えたら出てくるといい。外の者には言っておくから」
211 : ◆1UOAiS.xYWtC :2015/01/04(日) 00:03:24.60 ID:SbR5PYgYo
室外の使用人に事情を話し、別館の外で待つ。
今日は少しだけ晴れ間が覗くが、その分雲の切れ目から暖気が逃げて冷え込む。
木に止まる小鳥は羽を膨らまし、身を寄せ合って動かぬようにしていた。
あれから堕女神の様子も、落ち着いた。
イン娘の現れた翌日は、終日もじもじと落ち着かない様子で、執務の合間にも、妙に距離を詰めてくる傾向にあった。
逆にこちらが「執務中だ」と諌めるようなことまであり、違和感ばかりを覚えてしまったほどに。
だが結局、その時は押し切られてしまいーーーー搾られた。
勇者「いや、淫魔の国だから普通……なのか? ナイトメアの言うとおり、今までが変だった?」
としても、変化があまりに急だった。
急変の理由をいくら考えても答えは出ず、やがて扉が開かれ、待ち人が出てきた。
勇者「遅ーーーーなんだ、その服は!?」
イン娘「えっ……変、ですか?」
外に出てきたイン娘は、服を着ていた。
ーーーー女性物の、やや簡素なブラウスと、スカート、外套を。
イン娘「と、とくにおかしくはないと思うんですけど……どうしました?」
勇者「…………いや、もういい」
心から、おかしくはないと思っているようだった。
戸惑った様子で体をねじって服装の乱れを見直しているが、それ以前の問題がある。
勇者「……とりあえず歩くか」
考えても見れば、淫魔の国に男性用の衣類などあるはずもない。
少なくとも市販されてはおらず、勇者がふだん着る一点物では、『彼』にはサイズが合わないだろう。
212 : ◆1UOAiS.xYWtC :2015/01/04(日) 00:04:49.12 ID:SbR5PYgYo
勇者「おい」
イン娘「はい?」
勇者「その、下……も……か?」
イン娘「へ? 下?」
勇者「何でもない。いいから、散歩してくるといい」
イン娘「はい、分かりました」
勇者(似合ってるけど……似合ってるけどさ。違和感無いが。そういう問題じゃ……)
彼は、ゆっくりと踏みしめるように隣接した庭園へと歩いて行く。
後ろから見るとーーーー前から見てもだが、その姿は少女に、『サキュバス』にしか見えない。
垂らした尻尾も、角も、小さな翼も、青白い肌も。
だがそれでも、『彼』はサキュバスではないという。
何名かが庭園を周る少年を監視し、別館の屋根や城館の尖塔にも、目を光らせている者が見えた。
そうまでして監視せねばならないほどの、イレギュラーなのだ。
213 : ◆1UOAiS.xYWtC :2015/01/04(日) 00:06:43.53 ID:SbR5PYgYo
彼を横目に見ながら歩いて行くと、雪上に変わった足跡があるのを見つけた。
さながら巨大な鉤爪のような足跡と、靴跡とが交互に続いている。
勇者「……まさか、な」
その足跡は別館の裏まで続いているようで、かすかな追憶と共に興味を引かれ、辿ってみる事とした。
鉤爪の足跡は深く刻まれ、雪の下にある芝まで達しているものまである。
反面、靴跡は浅く新雪をなぞっていた。
数十歩も行くと、角を曲がり、別館の裏手側へと行き着いた。
そこで足跡は不自然に途切れておりーーーー終端まで行くと、後頭部にぼふっ、と軽い衝撃が走り、
外套の首元から冷たいものが入り込んで背筋を冷やした。
勇者「っ冷、たっ……!」
手をやると砕けた雪が付着しており、ようやく、誰かに投げつけられたのだと気付いた。
後方を振り返り、そこにあった庭木を見上げると、足跡の主が、いた。
???「ははっ、命中。騙されてんじゃねーよ、鈍ってんな?」
けらけらと笑う声は、忘れもしない。
夏に出会った隻脚の淫魔、ーーーーサキュバスC、だった。
214 : ◆1UOAiS.xYWtC :2015/01/04(日) 00:09:16.21 ID:SbR5PYgYo
その右脚は、不釣り合いなほど大きな真鍮の脚甲と一体化している。
左脚は踵の高いショートブーツと腿までのソックスで覆われ、下半身はスリット入りのスカート姿だった。
上は飾り気のない黒い絹のインナーとフード付のベストという、農園で逢った時とは違う、洒落た衣装を着こなしている。
サキュバスC「……んだよ、怒ったのか?」
無言で見つめていると、どこか心配そうな様子で彼女が言う。
だが視線は、無防備にぶらぶらと投げ出した脚の付け根にある。
勇者「白」
サキュバスC「あ?」
勇者「冬だから、白か?」
サキュバスC「はぁ? ……て、てめぇ!」
一瞬で顔を赤く染めたサキュバスCが、抗議するべく樹上から飛び降りる。
その瞬間に右脚の爪痕が雪上に深く刻まれ、粉雪が舞いあがった。
サキュバスC「勝手に見てんじゃねェ!」
勇者「国王に雪ぶつける奴が何言うか! だいたい何で白だよ!」
サキュバスC「アタシの勝手だろボケ!」
ひとしきり強く言い合って再会を確かめた後、ようやく、本題に入る。
まず、二つの意味を込めた問い掛け。
勇者「……で、何でここにいる?」
215 : ◆1UOAiS.xYWtC :2015/01/04(日) 00:10:13.69 ID:SbR5PYgYo
サキュバスC「今は城下町に住んでるからさ。夏だけはあっちで過ごすけどよ。……城にいる理由か?」
勇者「白を穿く理由もな」
サキュバスC「しつこい!」
勇者「つい。……で、何故なんだ?」
サキュバスC「いんや、別に理由はねーよ。強いて言えば、インキュバスのガキを見に来た?」
そう言うと、彼女は尻尾を振り、バランスを取って歩きながら建物の壁へともたれ、腕組みする。
サキュバスC「まぁ、それはそうとだ。何か変わった事とかねぇの?」
勇者「変わった……?」
サキュバスC「インキュバスは異物さ。異物が紛れ込めば場が乱れる。何も起こってない訳がネェ」
勇者「……異物か。皆そう言うよな」
彼は、この国のサキュバスとそう変わってはいないように見えた。
性別が違うだけなのに、サキュバスAも、誰もが彼を警戒している。
彼を見張っている者達の顔にも、油断は無い。
サキュバスC「やり過ぎ、過敏、って言いてェのか? ……あのクソ連中が人間の女をどう扱ったか教えてやってもいいぜ」
言葉に混じったのはいつもの露悪的な物言いではなく、心からの軽蔑、憎しみだった。
その様子と、言外の意図が感じ取れた時、勇者の心は重く澱んだ。
想像する事すらも覚悟がいる、そんな予感がしたからだ。
表情を曇らせると、彼女が場の空気を察したのか、ふっと微笑んで続けた。
サキュバスC「ーーーーなんてな。見たところ本当にガキみてェだし、今警戒する必要はそんなにねェ。それに」
勇者「それに?」
サキュバスC「ンな事考えるのはアタシの仕事じゃねーし? まぁ、肩の力抜けよ。……で、何か変わった事は無かったワケ?」
勇者「変わった……か」
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