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少女「君は爆弾に恋をした」

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Part13
142 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/11/22(土) 21:07:10.25 ID:0q+uCgFAO
委員長「君たちも今帰り?」
銀髪「うん、たまたまだね」
男「電車の時間があるからね」
銀髪「なるほど、それもそうか」
この駅から自分たちの街までの電車は一時間に二本しかない
女と友はもう少し遊んで帰るのだろう
女友「ごはん美味しかった〜」
少女「何を食べたんだ?」
銀髪「俺たちは普通にレストランに入ったよ」
委員長「俺たちはお好み焼き屋に……」
眼鏡「青海苔ついてないですかい?」
少女「大丈夫」
六人で色々話しているとやっぱりデートっていいな、と思う
……その時、いつか見た不良たちがまわりを取り囲んできた
不良A「お、お前ら!」
不良B「あの時は世話になったな、ねーちゃん!」
まだ今年も始まったばかりなのにむさい不良ばかり十人近く集まっている
彼女がいなかったらこいつらみたいに寂しい年始だったのかな、と思った
不良は彼女の手を捕まえようとするが彼女はスルスルかわす
頭に来たのか不良は彼女に殴りかかった
不良A「このくそアマッ!」
委員長「感心しないな」
不良の手を逆に委員長が捕まえる

143 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/11/22(土) 21:09:37.38 ID:0q+uCgFAO
不良A「ああ?なんだてめ」
不良たちは喧嘩を売る相手を最初から間違えている
委員長「え、と」
殴りかかったはずの不良は地面を舐めていた
委員長は合気道の師範クラスなんだよね……
不良B「て、てめえ!」
残る不良たちが一斉に襲いかかってくるが
彼女も銀も武器を持った軍隊を制圧するための兵器である
不良十人では荷が重いのではないか
瞬きをした後には、全員うなり声を上げていた
委員長「……強いな君たち」
う、委員長にはさすがにバレたのでは……
取り押さえた不良たちを駅員さんに突き出して僕らは電車に乗り込んだ
委員長「……」
男「あのさ、委員長」
委員長「ん?」
男「ああ、いや」
委員長「さっきのことなら気にしないでいいよ、少し驚いたけど」
委員長「銀君も少女さんも強いんだな」
さすがに委員長でも二人が兵器だとは思わないようだ
少女「出来れば内緒に……」
委員長「?」
委員長「まあ俺は噂を流すタイプでは無いから……」
委員長は眼鏡と女友を見た
眼鏡「拙者もわりと口は固い方ですぜ」
女友「友達を売るのはクズだと思う〜」

144 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/11/22(土) 21:11:58.63 ID:0q+uCgFAO
良かった
うちのグループは見た目と違って良識派ばかりだった
このグループなら彼女たちが少しくらいボロを出しても大丈夫だろう
今後もこういうことが無いとは限らない
ふと自分が引いた大凶のおみくじを思い出した
何事も有りませんように
女友「今日は楽しかった〜」
銀髪「またデートに誘っても良いかな?」
女友「えと〜、うん……」
銀髪「良かった」
眼鏡「またデートに誘っても良いでござるか?」
委員長「しゃべり方治したらね」
委員長は苦笑
そりゃそうだ
この二人が正式にカップルになるのはもう少し先のようだ
さっきの出来事も忘れて、楽しく電車に揺られて僕らの街に帰った
少女「……」
少女「君と居ると私は自分が爆弾だと言うことを忘れそうになる……」
彼女はまわりに聞こえない声で呟く
男「忘れていいよ」
男「忘れて欲しい、かな」
少女「そうか」
彼女は少し微笑んだ
好きだ
守りたい……彼女を……彼女の秘密を……

145 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/11/22(土) 21:13:16.06 ID:0q+uCgFAO
翌日も彼女とデートをする
前に訪れた植物園よりも大きな公園を一緒に散歩する
池を泳ぐ錦鯉に餌を与えたりしてのんびりすごした
映画を見て、レストランで食事
公園でキスをして、次は新学期に会うことにして別れた
いつも通りの平凡で平和な一日
しかし、僕らの悲しい運命の歯車が回り始めるのは、それから少ししてからのことだったーー

146 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/11/22(土) 21:15:08.16 ID:0q+uCgFAO
始業式
僕は彼女と待ち合わせて一緒に登校する
少女「お待たせ」
男「あんまり待ってないよ」
少女「いつも悪いな」
男「僕が待たせることもあるから」
少女「いこう!」
男「うん」
新学期に起こるだろう色々な出来事に思いを巡らしながら僕らは手をつないで登校する
少し冬休みに遊び過ぎたから勉強の計画も練らないと
横を見ると真っ直ぐな目線で綺麗な顔立ちの少女が歩いている
ふとこちらを見て柔らかく笑う
それだけでまた強くなれる気がした
女「おはよー!」
男「おはよ、元気だな」
女「まあねー」
男「友と上手くいってるんだな」
女「とと、友は関係ないよ!」
少女「そうだぞ、いつも無意味に元気だぞ」
女「それじゃ脳天気みたいでしょうがっ」
男「曇りなのか、女の脳は薄曇りか」
女「晴天です、ぺっかぺかの晴天です」
友「やっぱり脳天気じゃないか」
女「おう、おはよー!」
少女「脳天気カップルおはよう」
友「今日も脳みそ乾燥注意報……ってひどいっ!」
少女「何もそこまで言ってないが」
男「あははっ」


147 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/11/22(土) 21:16:54.59 ID:0q+uCgFAO
委員長「おはよう、みんな」
男「おはようー」
友「聞いてくれよ委員長……」
委員長「聞いてたよ、乾燥気味のスポンジ脳なんだって?」
友「酷くなってない?」
眼鏡「マッチで火をつけたら良く燃えそうですな」
友「人の脳を固形燃料みたいにっ!」
友とのコントを終えると委員長が僕に耳打ちしてきた
委員長「前に君たちがストーカーに会ったって言ってたよね?」
委員長「さっき校門の前に見慣れない黒い車が止まっていたんだが……」
男「本当に?」
僕は校門に目をやる
確かに黒い車が止まっていたが、すぐに走り去って行った
男「黒服の男が二人乗ってた?」
委員長「いや、三人で一人は白衣、一人は老人、運転手は普通の会社員風だった」
男(……また違う組織?)
男(杞憂だと良いけど……)
委員長「どう思う?」
男「今の段階じゃ分からないな、たまたま止まってただけかもね」
委員長「そうか」
委員長「でもストーカーが捕まってないなら気をつけないとね」
男「うん、確かに」
休みの間は忘れていたが、僕らは狙われる立場なのだ
委員長のお陰でまた気持ちを張り直すことができた

148 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/11/22(土) 21:19:49.81 ID:0q+uCgFAO
委員長「なんならボディガードするから気兼ねなく言ってくれ」
男「たぶん大丈夫、ありがとう」
生身の人間の中では一番頼りになる仲間だ
銀髪「おはよう」
男「おはよう銀!」
女友「おはよー」
少女「おはよっ」
銀は何か知らないだろうか?
後で話を聞いてみよう
それにしても何故だか、いつの間にかみんな僕の周りに集まるようになってるな
自分が一番無力な気がするのだが
委員長に少し鍛えてもらいたいくらい
始業式を終え、銀に声をかける
銀髪「ん、ストーカーか……」
男「組織と関係があるかな?」
銀髪「話を聞いた感じだけど、冬休み前のストーカーはどうも俺たちを作った組織とは関係無さそうだな」
銀髪「それより今日校門の前に止まってたっていう車の方が気にかかる」
銀髪「父さんからは老人に気をつけろと言われてるからな」
男「組織の人間なのか?」
銀髪「実質的なトップだよ、俺や彼女さんもたぶん面識がある」
男「見つかったら一発アウトか……」
銀髪「……それはね」
男「本人が確認に来た可能性があると……」
銀髪「否定はできない」

149 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/11/22(土) 21:23:05.96 ID:0q+uCgFAO
女友「あ、二人ともこんなとこにいた〜」
銀髪「ああ、待たせちゃったね」
男「早めに帰ろう」
二人が見つかったらどうなる……
まさか連れ去られたりはしないだろう
戦闘力が違いすぎる
銀髪「気をつけないといけないのは親たちだな……」
男「注意喚起はしておこう」
少女「……分かった」
僕らはいつものようにグループで帰った
銀髪「じゃあ俺は彼女を送るから」
女友「ありがとう〜」
委員長「じゃあ解散で」
委員長「くれぐれも気をつけて」
男「ありがとう、分かってる」
少女「かえろっ」
彼女と二人で手をつないで帰った
公園で少し話をする
少女「冬休みで油断していたな」
男「うん、すごく平和だったから」
少女「……あの老人が出てきたなら……決着を着けないと駄目かもな……」
彼女は鞄を開けてその中から透明の、わずかにピンク色に濁った液体が満たされている試験管を取り出した
割れないように金具やゴムで物々しい封印がしてある
男「それが例の薬?」
少女「……」
少女「こんなもの、出来れば飲みたくないが……」

150 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/11/22(土) 21:26:13.72 ID:0q+uCgFAO
男「……」
男「もしそれを飲むなら、その時は僕も一緒だよ?」
少女「……ありがとう」
少女「起爆剤を飲んでも三十分から、最長二時間は爆発しないから」
少女「その間にキスをして欲しいな……」
男「うん……」
少女「出来る限りは逃げるけどね」
男「もちろんだよ」
出来ればこの幸せを失いたくはない……
少女「週末のデートの計画でも練ろうか?」
男「うん、そうだね」
それから二人でデートの話で盛り上がった後、帰った
とても寒い
家までの道が少し遠いような気がした
……僕ができることなんて多くはない
せめて最後の時は二人でいることくらいだ
二人が付き合い始めてからのことを思い返した
頬にキスされたこと
初めて手をつないだこと
彼女をうちに誘って三人でカレーを食べて
買い物デートしたり
登山デートでは初めてキスしたこと
四人でダブルデートした遊園地
食べ物不味かったな……
合宿や勉強会も楽しかった
クリスマスにデートして
年末年始はずっと二人でいた……
気が付くと僕は泣いていた
どうして世界は僕らを放っておいてくれないんだろう……

151 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/11/22(土) 21:27:45.79 ID:0q+uCgFAO
死にたくないと言うより、幸せが壊れてしまうのがとても怖かった
冷たい風が強まる中、僕はたぶん顔を真っ赤にして
家に帰るとすぐに寝てしまう
だが、変化はすぐには訪れなかった
始業式の時の老人もそれからしばらくは姿を見せることはなくて
安心できるはずは無いけれど、そんな、かも知れない、程度の些細なことでペースを乱すのが悔しかったのもある
僕は後悔しないように彼女とのデートの計画を練った
しかしもうだいたいのデートはしてしまった気がする
女たちにヒントをもらおうかな?
女「う〜ん、すっかりベテランカップルだね〜」
男「でもいざデートってなるとだいたいやり尽くした感があって」
女友「またみんなで遊びに行きたいね〜」
男「もちろん、また行こう」
女「変に凝ったデートしようとしないでももういい気はするけど」
男「って言うと?」
女「例えばいつものモールでも二人でいたら幸せじゃないかな?」
男「確かに」
友「灯台下暗しってとこ?」
少女「友がおかしい」
友「今まともなこと言ったよね!?」
男「そうだよ、おかしいのはいつもだよ」
友「まともだよ?! 至極まっとうだよ?!」

152 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/11/22(土) 21:31:00.54 ID:0q+uCgFAO
女「また面白い顔して」
友「地ですよ?!」
少女「地が面白い顔なのか」
友「面白くないから、イケメンだから!」
女「自分でイケメンとか引くわ〜」
友「彼氏ー俺は君の彼氏ー!」
男「まあ友の顔はどうでもいいとして」
友「散々いじったくせに!」
男「とりあえず次のデートはモールでいいかな?」
友「スルーかよっ!」
少女「まあそれでいいよ、また行きたい所が出来たら相談しよう」
男「うん」
女「私たちはどこに行こうかな〜、ねえ友……」
友「……もういいもん……どうせ面白い顔だもん……」
女「あはは、また面白い顔してみんなを笑わせようと」
友「落ち込んでるんですーっ!」
銀髪「じゃあ俺たちとダブルデートしない?」
男「お、デートするのか?」
少女「いいぞ」
女友「お邪魔だけどよろしく〜」
男「他のカップルを見るのも新鮮だから気にしなくていいよ」
少女「ダブルデートは面白いからな」
女「熟練カップルにだいぶ当てられるけどね〜」
男「女たちだってもう熟練カップルだろ」
女「まあね」
男「お、余裕ですか」