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少女「君は爆弾に恋をした」

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Part16
177 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/11/28(金) 20:46:20.62 ID:OHxEuXQAO
僕は彼女を送って帰る
母は残ったイカでお酒を飲んでいた
男「ちょっと遅くなったかな」
少女「うん、電話入れておこう」
帰り道、彼女は博士に電話をかけた
……
……
…………?
少女「?」
少女「おかしいな、まだ寝てはいないはずだが……」
彼女は携帯に電話している
外出ではない……
……さっき食べた油物が胃の中をのたうっている
いや
胸騒ぎ……!
男「は、早く帰ろう」
少女「……うん!」
僕と彼女は走った
彼女のアパートの階段を駆け上がる
酒に酔っているらしい住民から怒号が飛ぶ
構わず彼女は部屋に走り込む
少女「お母さん!」
彼女の家は酷く散らかっていた
彼女らがいつもこんな風に部屋を散らかしているとは考えにくい
彼女たちはいつも清潔できっちりしているのに……
少女「……お、お母さんっ!」
彼女は取り乱し、あたりの紙を蹴散らして押し入れを開けたり、トイレを開けたり、お風呂を覗いたりした
男「お、落ち着いて!」
僕はひとまず彼女を落ち着かせようと、抱きしめた
彼女が暴れればすぐに振り解かれるだろうが、どうにか彼女は落ち着いたようだ

178 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/11/28(金) 20:47:46.60 ID:OHxEuXQAO
少女「そうだ……、あの人がそんなにあっさりさらわれる訳がない」
男「落ち着いて考えよう」
少女「考える……そうだ、考えよう……」
彼女は僕から離れるとしばらくブツブツと呟いている
少女「さらわれた時は……逃げろと言っていたが……」
少女「私が独りで逃げるとは思っていないはず……」
少女「しかし急にさらわれたら準備する範囲も限られているはず」
少女「お母さんがさらわれたら……どうなる?」
少女「簡単には分からない方法で隠しているはずだ……見つける方法を……」
少女「どうやって、どこに隠す?」
男「落ち着いて」
少女「うん、ありがとう……落ち着いてる……」
少女「まず」
少女「お母さんがさらわれたら困る人がいるだろう」
男「……君、……ではなくて……」
男「銀たちか」
少女「彼らに何かを託しているかも知れない」
男「とにかくここで二人で話していても仕方ない、銀の家に行こう」
少女「場所は分かるの?」
男「連絡先はわかる」

179 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/11/28(金) 20:50:17.36 ID:OHxEuXQAO
僕はすぐに銀に連絡した
彼らにしてみれば自分たちの秘密をバラされては困る
そして博士も彼らにはそれを食い止めるチャンスを与えているはず
推測に過ぎないが他にすがる物もない
銀はすぐに電話に出た
銀髪「こんばんは〜、魚美味かったね」
男「ああ、美味かったね」
男「じゃなくて、すまない、落ち着いて聞いてくれ」
銀髪「……何かあった?」
男「博士が……さらわれたかも」
銀髪「……!」
その後電話口で銀と研究者さんが何か話しているのが聞こえてきた
銀髪「分かった、すぐにそちらに向かう!」
銀はそう言うと電話を切った
男「銀たちが来てくれるらしい」
少女「そうか……」
しばらく僕と彼女は立ち尽くしていた
僕はふと彼女を抱き寄せてキスをした
落ち着いているふりをしているものの、僕だって落ち着いてない
彼女の体温が僕の頭を澄み渡らせる……
少女「……」
少女「こんな時なのに、うっとりしてしまった……」
うっ
……可愛いな
僕はそのまま彼女を抱き締めた

180 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/11/28(金) 20:52:08.77 ID:OHxEuXQAO
少女「……」
少女「ごめん」
少女「……」
少女「ここに居てくれて……ありがとう」
彼女の瞳からボロボロと大粒の涙が流れる
……
これで?
男「これで最後かよ……」
少女「……うっ」
少女「うう〜っ!」
彼女はすごい力で僕に抱きついてくる
ちょ、リミッターが外れている!
死ぬ!死ぬ!
少女「う、うわっ、ごめん!」
男「天国が見えた」
少女「本当にすまん」
でも離さないんだ
ううううう……
あったかい、柔らかい、幸せ……!
ううっ
離したくない!
僕は彼女を強く抱き締めて
どれくらいの時間が過ぎたか抱き締めて
銀髪「それ以上見せ付けられたら燃え尽きそうだから止めさせてもらう」
銀、もうきてた
研究者「若いってうらやましいっ!」
研究者「私は一発でふられたのにっ!」
なんか男版眼鏡が来た

181 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/11/28(金) 20:53:44.68 ID:OHxEuXQAO
研究者「そもそも愛とはっ!それは世界!」
この人こんなキャラだっけ?
銀髪「はいはい父さん、今はそれ所じゃないんだよ」
委員長「そうですよ、早く対応策を考えないと」
あれ?
委員長いたのか
委員長「話は車の中で聞かせてもらったよ」
男「どうして二人が一緒に?」
委員長「彼女たちを連れて四人で魚料理大会をやってたんだ」
銀髪「そこに君から電話が来たってことさ」
男「眼鏡たちは?」
委員長「流石に置いてきたよ、と、それより」
そうだ、そんなことは些細な問題だった
博士を探す方法は分かるのだろうか?
研究者「残念ながら教わってない」
研究者「だが」
だが?
研究者「彼女一人さらわれたら私たちが平和になれるとは思わない」
研究者「そもそも私は彼女に研究した遺伝子データの全てを渡したわけではなく自分の研究が汎用化されるのを懸念した結果、研究データは一切渡さず出来上がった遺伝子そのものだけを彼女に送ったのだ」
研究者「彼女が如何に天才でも遺伝子データ全てを読み取れるはずがないッッ!」
早口で何を言ってるか分からないがどうやら彼なりのプライドがあるようだ


182 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/11/28(金) 20:55:07.43 ID:OHxEuXQAO
研究者「はあっ、はあっ」
銀髪「ごめん父さん、何言ってるか分からない」
研究者「つまり彼女にしても私たちが危険にさらされるのは分かっていたと言うことだ」
研究者「彼女はそれを回避するために、多少難解でも我々が彼女を」
研究者「彼女を救えるチャンスを」
研究者「与えているはずだ!」
銀髪「彼女が死ぬ気ならどうするんだ?」
研究者「いいや、それでもだ!」
研究者「少女ちゃんの遺伝子を確保すれば全ての謎は明らかになりうるッ!」
男「話を遮ってすまないけど研究者さんお酒飲んでる?」
銀髪「魚が美味しいからってずいぶんお酒が進んだみたいだよ」
研究者「私の話を聞けッ!」
男「はい」
銀髪「へい」
研究者「つまりは彼女だって秘密が守られる世界の方が秘密が守られない世界より望ましいんだよ」
研究者「彼女は妥協しない」
研究者「天才は妥協しない、全てを計算の内に入れる」
研究者「つまり」
研究者「彼女が今最も親しい人物に彼女は鍵を託している」
男「それは研究者さんでは?」
研究者「私は彼女にふられたんだよおおおおお!」
少女「殴ってもいいか?」

183 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/11/28(金) 20:57:16.83 ID:OHxEuXQAO
男「君が殴ったら死んじゃう」
少女「そうか」
僕が殴る
研究者「へぐっ!?」
男「って言うかこの人飲酒運転した?」
銀髪「タクシーだよ、一応」
委員長「……ちょっと話について行けなかったが……タクシーには待っててもらってるよ」
研究者「博士の居場所のヒントは博士が一番親しい、研究に携わってない人が持ってるはずだ……誰だ?」
男「!」
少女「!」
銀髪「心当たりが?」
男「……母さん?」
少女「だな」
そう、博士は何故か僕の母には心を許していた
おそらくは孤独だったはずの博士
今の彼女にとっての世界の大きな部分に僕の母はある
だが博士はギリギリの選択をするらしい
最善を尽くす彼女はギリギリの選択を
したはずだ
僕らはタクシーにぎゅうぎゅうになりながら乗り込んだ
委員長「五人も乗れないな」
少女「家は分かってるから私と銀は走って行こう」
彼女たちは先に走り出した
僕と委員長、研究者さんを乗せ、タクシーは僕の家に向かった
最短距離を飛ぶように進んだ二人は、信号に度々捕まった僕らより先に家に着いていた
僕らは家に飛び込む
男「母さん!」
母「ほわっ!?」

184 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/11/28(金) 20:58:45.27 ID:OHxEuXQAO
男「何か博士さんに預かってる物はない?」
母「ん?」
母「……もう大変な状況になっちゃったの?」
男「何かあるの?!」
母「ん〜」
母「こんなものなんだけどね」
母はタンスからハンカチにくるまったものを取り出す
男「これは……」
少女「USBメモリか」
研究者「貸してみたまえ」
男「はい」
少し時間が経って研究者さんも酔いが覚めてきたようだ
手持ちのノートパソコンを凄まじい速さでタイピングする
研究者「これで暗号化は解けた……アドレス……?」
研究者「ネットに接続して……」
後ろからのぞき込むと地図が出てくる
その中に光る点
博士はそこにいる?
研究者「光点が動いているな」
委員長「GPSか……」
銀髪「なるほど、やっぱりさらわれた時のために準備をしていたんだな」

185 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/11/28(金) 21:01:00.91 ID:OHxEuXQAO
男「……追いかけよう!」
研究者「少し待ってくれ、タクシーをもう一台呼ぶ」
母「私がお酒飲んでなかったら運転するんだけど……」
流石に母さんを連れては行けない
銀髪「父さん、ノートパソコンを貸して」
研究者「む」
研究者「お前たちだけで行くつもりか?」
少女「研究者さんはどこかに隠れていて」
研究者「……」
研究者「ちゃんと帰ってくるんだぞ?」
銀髪「もちろん」
銀髪「行こう」
少女「委員長はどうする?」
委員長「俺も力になりたいが、仕方ない」
委員長「だが絶対に帰ってきて欲しい、……待ってる」
少女「……」
少女「分かった」
多分……
僕らは無事には帰れない
男「母さん……」
母「……何か大変なことが起こってるのね……」
男「うん」
母「行っておいで」
男「……ありがとう」
男「……行こう」
銀髪「ああ」
少女「こんな研究は……全て無かったことにする」
男「……仕方ない、ね……」
もちろん納得できるはずがないが
僕らは三人でタクシーに乗り込む
銀髪「運転手さん、指示する方に行ってください」
銀の指示にそって、タクシーは走り出す

186 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/11/28(金) 21:04:03.21 ID:OHxEuXQAO
町を外れ、山間に入る
真っ暗な、うねる山道を走る
やがて大きな屋敷が見えてくる
数時間はかかったとは言え、こんな近くにアジトがあるのか……
いや、空き家を買い取るなどして用意したのだろう
老人は彼女たちを見つけてから、これだけの準備を進めてきたのだ
つまり、侵入は容易では無いはず……
男「僕が居ても大丈夫?」
正直足手まといのはずだ
少女「最後は一緒に居てほしい……」
男「……」
男「もちろん!」
覚悟はとっくに決めている
タクシーを帰らせると、大きく開け放たれた門に入っていく
屋敷のまわりにいた警備員を彼女と銀が目にも留まらない速さで倒す
僕は二人の後から着いていく
ぐえっ、とかうぎゃっ、と小さな悲鳴が聞こえるが、静かに速やかに彼女たちは侵入していく
少女「どこだ……」
少女「どこにいる!」
上手く進入できているが、彼女は若干焦っている
あまりにも広い屋敷だ
僕は息を切らせつつ彼女の後を追いかけたが、少しずつ離されてしまう
老人「迷いネズミが」
男「!?」
僕は
激しい腹部の痛みと共に気を失った