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従姉に恋をした。

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Part9
325 名前:1 ◆6uSZBGBxi. [sage] 投稿日:2005/11/25(金) 11:53:25
大が俺の言葉を遮った。
「それはそうと…
 おい、お前まさかハードロックカフェに連れてくつもりじゃないだろな?
 知ってんぞ、横浜にもあるって。
 やめてくれよ、アッチで行き飽きてんだ(笑)」
まさにそのつもりだったからドキッとした。
「違うわい。ほら、降りるぞ」
慌てて関内で降り、行き着けの店に行き先を変更した。

326 名前:1 ◆6uSZBGBxi. [sage] 投稿日:2005/11/25(金) 11:54:16
和食の店に連れてった。
「それほど、日本食に飢えてるワケじゃないんだがな(笑)」
「うるさい。文句言うな」
そうは言っても刺身や日本酒に、大は喜んでいた。
「さっきの話。アメリカって、なんでだ?」
「もっかい勉強し直そうと思ってさ。アングラから再スタートだ(笑)」
「メジャーCDにもなってるってのに、なぁ。惜しくねーか?」
「まだまだよ、俺の腕は」
「ん?イギリス人に『謙虚』って言葉を学んだんか?(笑)」
「(笑)たまたま以前のライブで知り合ったプロモーターにアメリカ行きを勧められてさ。
 費用から住むところから、全て面倒見てくれるってんだ。
 少し行き詰まってたところだったから、世話になることにした」
目をキラキラ輝かせて未来を語る、
なんてことはこの三十路を越えた男にはなかったが、
忙しく箸とお猪口を動かしながら話すその声は弾んでいた。

327 名前:1 ◆6uSZBGBxi. [sage] 投稿日:2005/11/25(金) 11:55:00
「あ、それでな。木曜日まで泊まるからな」
事も無げに言いやがった。
「すぐ帰らなくていいのか?つーか、帰れ(笑)」
「(笑)見納めしときたいんだよ、日本の」
「仕方ねぇなぁ」
「宿泊費は出さんぞ」
「出せバカ(笑)」
ふたりともグデングデンになって家に帰り、
それでも祖母の位牌の前ではふたり並んで手を合わせ、寝た。

328 名前:1 ◆6uSZBGBxi. [sage] 投稿日:2005/11/25(金) 11:56:04
翌朝8時。
起きると大が床に寝ていた。
ふたりとも昨日の服のまま。
たしかふたり揃ってベッドに倒れこんだはず。
俺はかろうじてベッドに寝ていた。
(ズリ落ちたか、大)
なんだかニヤけてしまった。
この図体のデカい男とこれからちょっとの間、一緒に暮らすのだ。
俺は3日間だけの同居人に毛布と合鍵を被せ、
静かに身支度を整えて会社に向かった。
電車の中でふと思った。
(10年以上会ってなかったのに、昨日はすんなり話せたな)
高校時代の友人は一生モンだと、誰かが言っていた。
こういうことを言うのだろうか。

329 名前:1 ◆6uSZBGBxi. [sage] 投稿日:2005/11/25(金) 11:57:00
その日の仕事は日勤だけだったので、夜8時には家に帰り着いた。
(なにワクワクしてんだ(笑)新婚さんかよ)
ドアを開ける時、やたら可笑しくなった。
そしてドアを開けたら、笑い転げてしまった。
エプロン姿の大が立っていた。
「なんだよ!?その姿!!」
「メシぐらい作ってやろうかと思ってよ。あ、この姿はウケ狙いだ(笑)」
190cmの長身にまるで合っていないサイズだった。
「それよか、お前んち最低!包丁もフライパンもねーじゃねーか!」
「仕事から帰ってきたら作る気力なんかないんだよ。
 一人暮らしだから作る量も難しいし」
「俺はあっちでも自炊してたぞ。ちゃんと全部平らげてたしな」
「お前とは食える量が違うんだよ」
台所に行ってみると、
包丁やらまな板やら鍋やらが、出来上がった料理と一緒に並んでいた。
「宿泊費だ。とっとけ」
料理は美味かった。見事なもんだ。味噌汁まで出された。


330 名前:1 ◆6uSZBGBxi. [sage] 投稿日:2005/11/25(金) 11:57:48
食い終わると待ってましたとばかりに大が言った。
「おい、カラオケ行こうぜ。久しぶりに歌聴かせろよ」
バンド時代、俺はボーカルを担当していた。
楽器なんてひとつも出来なかったから。
「すげぇな、今時のカラオケって」
近所のカラオケ屋に連れて行った。大は大はしゃぎだった。
イギリスにもカラオケはあるそうだが、機材がまるで違うらしい。
採点システムに感動していた。
大は黙って俺の歌を聴いていた。
冷やかしもしなければ合いの手すら入れない。
およそ同僚と来る時とは雰囲気が違う。なんだか照れた。
「相変わらず聴かせるじゃねぇか」
「プロに言われるとうれしいな(笑)
 世話になってるからって、世辞を言う必要はねぇぞ(笑)」
「いや、上手いよ」
大の顔は真剣だった。
普段はふざけたヤツだが、こと音楽のことになると顔つきが変わるようだ。
これがプロってものかと感心した。
大の選曲は洋楽オンリーだった。
あまり上手くはない。
ベースを持つと天下一品なんだけどなぁ。
ギャップに笑った。

331 名前:1 ◆6uSZBGBxi. [sage] 投稿日:2005/11/25(金) 11:58:54
2時間コースが終了し、俺たちは軽く飲んでから帰ることにした。
行き着けのバーに案内した。
軽く、のつもりが昔話に花が咲き過ぎた。
お互い酔っているのがすぐわかるほどだった。
でも酒が美味くてやめられない。
今度コイツと飲める日なんて来ないかもしれない。
そう思うと今日という日が惜しくなり、潰れる覚悟でおかわりし続けた。
「そういえば、さ。お前、真子とはあの後どうなったん?」
グラスにしな垂れかかりながら大が言った。
「真子って、バンドの時の真子か?」
「他にいねぇだろ」
「あの後って、なんだよ?どうなったってのは?」
「周平が死んだ後だよ。お前、真子のこと好きだったんだろが」

332 名前:1 ◆6uSZBGBxi. [sage] 投稿日:2005/11/25(金) 11:59:45
ドラムを担当していた周平とキーボードの真子は付き合っていた。
俺は真子のことが好きだったが、仲の良いふたりを見続けるだけだった。
高校卒業後、ふたりは東京の大学に進み、俺は地元に残った。
そこでバンドは終わり、俺の想いも終わった。
20歳の時、周平が亡くなった。車を運転中の事故だった。
大は仕事で戻ってこれなかったが、俺と三浦は周平の葬式に参列した。
同じく参列していた真子は痛々しいほどに悲しみに暮れていた。
葬式の時もその後も、俺は慰めの言葉をかけてあげることが出来なかった。
それから3年ほど経った時、彼女から連絡があった。
大学を卒業した後、東京で就職したとのことだった。
その時の真子は、周平のことを引きずっている様子もなく、俺は安心した。
それ以降、彼女がどうしているかは知らない。

333 名前:1 ◆6uSZBGBxi. [sage] 投稿日:2005/11/25(金) 12:00:48
今頃になって彼女の話が出るとは。
「気付かれてたのか(笑)」
「俺にはな。こう言っちゃなんだが、チャンスだったんじゃないか?」
「真子に言い寄るチャンス、か?」
「そうだよ」
「あの時はとっくに気持ちなんてなかったよ。
 お前も知ってるだろ?
 あの頃俺んち大変だったから、そんな余裕もなかったしな」
「そうか?家のせいにしてただけじゃないか?」
「お前、あの時いなかっただろが(笑)見てたようなこと言うな」
「まぁな。なんとなくそんな気がしただけだがな」
「甘酸っぱい思い出ってやつだ(笑)」
もう一杯だけ飲んで帰ることにした。

334 名前:1 ◆6uSZBGBxi. [sage] 投稿日:2005/11/25(金) 12:01:31
「で、今は付き合ってる女とかいないのか?」
「いないねぇ」
「好きなやつは?」
「いないなぁ」
「つまんなくねぇか?好きな女すらいないなんて」
「別に」
「ふーん」
お互いリミットだと判断し、グラスを空けることなく店を出た。
「そういうお前はどうなんだよ?金髪のステディでもいるのか?(笑)」
「俺のことより、お前のほうが心配だよ」
大きな身体を俺に覆い被せながら、つぶやくように大が言った。

335 名前:1 ◆6uSZBGBxi. [sage] 投稿日:2005/11/25(金) 12:02:28
翌日の二日酔いはひどかった。
ベッドでウンウン唸っていたら、
大がゼリーとミネラルウォーターをコンビニから買ってきてくれた。
「俺、観光に行ってくるわ。今日、夜勤だろ?合鍵くれ」
「おばあちゃんの位牌に、ご飯出したか?」
「なんだ、それ?」
「茶碗にご飯を盛って、箸差して位牌の前に出すんだよ。知らんのか?」
「知らね。イギリスにそんなん無かったもん」
「日本にゃあるんだよ」
「お前、ジジくさいこと知ってんな」
いそいそとご飯を位牌の前に置き、大は元気に出て行った。
ベッドでひとりで寝ていたら、無性に寂しくなった。
(気色わりぃ)
苦笑して、また眠りに落ちた。

336 名前:1 ◆6uSZBGBxi. [sage] 投稿日:2005/11/25(金) 12:03:19
大の水が効いたのか、寝覚めは良かった。
大はまだ帰っていなかった。
家を出る時、「いってきまーす」と俺は部屋に声をかけた。
翌朝、家に帰ると大が俺のベッドで寝ていた。酒臭い。
(こんにゃろ)
と思ったが、俺もベッドの横で毛布にくるまった。
夜、目覚めるといい匂いがした。また味噌汁だ。
「起きたか。メシ食え」
「うれしいけど、なんだか気色悪いな(笑)」
「俺だって(笑)」
差し向かいでの夕飯。可笑しくなる。

337 名前:1 ◆6uSZBGBxi. [sage] 投稿日:2005/11/25(金) 12:04:23
ふと大が聞いてきた。至極、真面目な顔だった。
「お前、仕事楽しいか?」
「? 別に…楽しくはないわな。女も出来んし」
「こんな不規則な生活じゃあな」
「おお!?お前に言われるとはな(笑)
 ミュージシャンなんて、不規則の代名詞だろうが」
「お前、マスコミに毒され過ぎ(笑)意外と真面目なもんだぜ?」
「そうかね」
「そうさ」
(?)
なんだ。何が言いたかったんだ?
「大塚」
答えはすぐにわかった。
「お前、俺と一緒にアメリカ行かねぇか?」
爪楊枝を口に加えながら大が言った。

338 名前:1 ◆6uSZBGBxi. [sage] 投稿日:2005/11/25(金) 12:05:18
「おほ。なんだ?
 仕事の息抜きにアメリカ旅行でも連れてってくれるってのか?(笑)」
「違う。アッチで一緒にまたやろうって意味だよ」
コイツ、何言ってんだろ?
大が冗談を言ってるわけではないことは、その顔を見ればわかったが、
その真意が計りかねた。
「お前と一緒にバンド組むのか?」
「そう」
「俺にボーカルやれってか?」
「うん」
「アメリカで?」
「で」
「俺の歌、そんなに良かったかぁ?あんなカラオケごときで」
「いや、全然ダメだ。歌唱法も何も、基礎から全然なってない」
「なんだそりゃ」
「でもな、いいモン持ってると思ったんだよ」
「そんなのわかんのか?」
「わかる」
これは俺も真面目に話さなければいけないと思った。

339 名前:1 ◆6uSZBGBxi. [sage] 投稿日:2005/11/25(金) 12:06:12
「あのな、大塚。俺、ここ数年悩んでたんだよ。
 雇われバンドじゃなくて、自分のバンドを持ちたいってな。
 確かにお前も知ってるとおり、
 雇われバンドとして俺はある程度成功したのかもしれない。
 仕事の依頼も多いしな。
 でもこのままじゃ、どこまで行ってもそれ止まりな気がするんだよ。
 所詮は雇われだ。
 CDのジャケットに俺の名前がドーンと載るわけじゃない。
 バンドの名前も俺が考えた物じゃない。
 全部、他人が創り出したモンなんだよ。
 それに俺は乗っかってるだけ。
 そんなこと考えてたら、
 こないだ話したプロモーターから今回の話を持ちかけられたんだ。
 心機一転、やってみろってな。
 今からアメリカに乗り込むんだから、
 当然、下積みからまた始めなきゃいけない。
 それは長い時間になるかもしれない。でもチャンスだと思ったね」

340 名前:1 ◆6uSZBGBxi. [sage] 投稿日:2005/11/25(金) 12:08:06
「それはすごくいいことだと思うけど、
 その相棒が俺である必要はないだろ?」
「確かにな。
 お前より歌えるやつを俺はいっぱい見てきたよ。
 実のところ、
 カラオケに行くまではお前を誘う気なんてこれっぽっちもなかった。
 でもな。
 あの時、俺、思い出したんだよ。
 俺はお前の声が好きだったな、ってな。
 高校の時にお前をバンドに誘ったのもそれが理由だったんだよ。
 単にお前が友達だったからじゃないんだ」
「キーが高すぎるって、いつも文句言ってたじゃん」
「ガキだった俺に、お前の声好きだ、なんて言えると思うか?」
「………」
「どうせ再出発するんだったら、俺の好きなモノを集めたいと思ったんだ。
 俺の好きな声や好きな音を持ってるやつ。
 もうギタリストは見つけてあるし、
 そいつも俺と一緒にアメリカに行くことが決まってる」
「俺に会って、懐かしさが蘇っただけじゃないのか?」
「俺、プロだぜ?そんなことぐらいで、お前に人生賭けねぇよ」
「でもプロの世界って厳しいんだろ?そんな我侭が通じるのか?」
「甘い考えだとは思うよ。
 でも我侭ってのはちょっと違うと思う。
 俺にとって音楽は仕事でもあるけれど、でも俺の音は俺のものだからな」
言ってることは夢見がちな十代の台詞に思えたが、大の顔は大人の顔だった。

341 名前:1 ◆6uSZBGBxi. [sage] 投稿日:2005/11/25(金) 12:09:26
「以上!お前の考えを聞かせてくれ」
大の真っ直ぐな視線が俺を射抜いている。
言葉を整理しながら、俺はゆっくりと話した。
「まず…結論から言うわ。ごめん、俺はアメリカには行けない」
やっぱり、という顔を大はしたが、黙って俺の話の続きを聞いてくれた。
「正直、お前の話は魅力だよ。
 俺、一瞬、アメリカに立ってる俺の姿を想像しちまった。
 ものすごくワクワクした。
 俺の声を好きだとも言ってくれた。うれしいよ。
 それに、打算的な考えになるけど、
 ちゃんとお前にはお前を認めてくれるスポンサーもいることだしな。
 例えアングラなフィールドから始まるにしても、
 お前が力強い気持ちでアメリカに行く気になれるのはよくわかるよ。
 現実を踏まえた上での夢なんだな。
 でもな。俺の中の現実は違うんだよ。
 俺には、お前が言うほど、俺に力があるとはどうしても思えない。
 それはアメリカに行ってからの俺次第でどうにかなるって、
 お前は言うだろうな。
 俺、お前たちの仕事は天分だと思うよ。
 お前にはそれがあって、俺にはない。
 これは努力とかでなんとかなるもんじゃないって気がする。
 どっかで聞いた台詞だなんて言うなよ?
 本当にそう思うんだ。
 それに、俺はビビッてる。
 お前の誘いほど、俺の今の仕事に魅力があるわけじゃないけど、
 でもそれを捨てて知らない世界に飛び込めるほどの勇気は、俺にはないんだよ。
 お前は昔のまんま、相変わらずすごいヤツだけど、俺だけ年とったんかな(笑)」

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