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従姉に恋をした。

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Part13
705 名前:1 ◆6uSZBGBxi. [sage] 投稿日:2006/04/29(土) 16:12:08 ID:
気持ちの良い午後を過ごしたはずなのだが、
仕事から帰ってきた母に起こされた時は気分がすぐれなかった。
すぐにでも恵子ちゃんに電話したい気持ちを抑え、夕飯をとる。
食事の最中、携帯が鳴った。
もしやと思い、画面を見ると案の定、恵子ちゃんからだった。
「あ、職場からだ」
棒読み。
今更、母に嘘をつかなくてもいいのだが、
この時はわけのわからない恥ずかしさがあった。
足早に2階の部屋へと移る。
「昼間、電話くれたんだねー。ごめんね」
「こっちこそごめん。休憩中だと思って」
「そうだったんだけど気がつかなかった(笑)」
「そか(笑)」
「元気?そっちは死ぬほど暑いでしょ?」
「実は今、一足早く帰省中なんだ。土曜日に同僚の結婚式があって」
「そうなんだー」
「うん。それで、日曜日までいるつもりなんだけど、
 それまでの間、よかったらメシでも一緒にどうかなって」
「あ、なら明後日の金曜日はどう?
 土曜はウチの会社休みだから、私も気兼ねなくゆっくりできるし」
「気兼ねなくゆっくり飲めるし、の間違いだろ(笑)」
「そうそう…ってオイっ!(笑)私最近、お酒飲む量少なくなったんだよお」
「年のせい?(笑)」
「ちーがーいーまーすー(笑)耳の薬のせいだもん」
「え?耳って…ずいぶん前に三半規管の病気になったってやつ?
 あれって治ったんじゃなかったの?」
「ううん。今もバリバリ継続中(笑)」
「そっか。
 以前、快方に向かってるって聞いたから、てっきり完治したのかと思ってた」
「お医者さんには完全には治らないって言われたの。
 まあ、たまにめまいとか頭痛がする程度で、日常生活に支障はないんだけどね。
 薬を飲みつつ、一生付き合っていくって感じ」
「その薬が酒と相性悪いの?」
「飲んでもいいけど量は抑えなさいって言われた」
「なるほど」
「だから、私の目の前であんまり飲まないでね。誘惑に負けちゃうから(笑)」
「わかった。すっごく美味しそうに飲むことにする」
「わかってないじゃん!(笑)」
兎にも角にも、約束をとりつけた。
(決戦は金曜日、なんて歌があったな)
俺の大好きな言葉“悶々”がもうすぐ消滅する。
どちらに転ぶにせよ、だ。

706 名前:1 ◆6uSZBGBxi. [sage] 投稿日:2006/04/29(土) 16:12:59 ID:
インターバルのように空いた木曜日。
あの日、俺は何をしていたのだろうか。
最後の“悶々”を楽しんでいたのだろうか。
思い出せない。
だが確実に24時間は過ぎ行き、俺にとって生涯忘れえぬ金曜日が訪れた。

707 名前:1 ◆6uSZBGBxi. [sage] 投稿日:2006/04/29(土) 16:13:44 ID:
恵子ちゃんの仕事が終わってからということで、
待ち合わせは夜8時に設定していた。
家にいても余計なことを考えるばかりなので、日中から街に出た。
しかし、何をしていればいいのか思いつかない。
映画館に行ってみた。
ストーリーがまったく頭に入らず、1800円をドブに捨てた。
本屋に入った。
知らず知らずのうちに恋愛ハウツー本を手にとっていた。
しかもよく見ると女性向けだった。
喫茶店で休んだ。
ぼーっと、恵子ちゃんのことを考えた。
…なんだよ。
これじゃ家にいるのと同じじゃないか。

708 名前:1 ◆6uSZBGBxi. [sage] 投稿日:2006/04/29(土) 16:14:40 ID:

7:00PM
散々、街を彷徨ったのに約束の時間までまだ一時間もある。
…酒の力を借りよう。
決戦に備えて景気づけにもなる。
友枝とあの時行ったバーへと向かった。
開店まもない店内には客の姿はなかった。
いつものバーテンが「お久しぶりです」と俺を迎えた。
「待ち合わせ前なんで、一杯だけもらえますか?」
「はい。何になさいます?」
しばし考える。
思いつくのはひとつしかなかった。
「この間いただいた“両想い”、アレ…いいですか?」
カップルにしか出さないというカクテル。
しかしバーテンは
「憶えていてくださって、ありがとうございます」
快く応じてくれた。
淡いピンク色の水中を、ビーズのような気泡が踊っている。
今日は自分のために飲む。
軽く願掛けした。
その様を、バーテンが微笑みながら見守っていた。
なんだか気恥ずかしい。
ちびりちびり、じっくりと時間をかけて飲み干した。
「次回は2つ、お出ししたいです」
店を出る時にかけてくれたバーテンの声が、とても心強かった。

709 名前:1 ◆6uSZBGBxi. [sage] 投稿日:2006/04/29(土) 16:15:27 ID:

8:00PM
時間ぴったりに、恵子ちゃんは待ち合わせ場所へと現れた。
久々に見る恵子ちゃんのスーツ姿。
…タイトスカートって、いいなぁ。
「行きたいお店があるの」
恵子ちゃんの先導で向かった店は、初めてふたりで食事をしたあの店だった。
ひとり、気分が高揚する。
なんだか恵子ちゃんにお膳立てをしてもらっているようだ。
その日のオススメのワインをオーダーし、乾杯した。
俺はその杯に、またふたりでここに来れたことへの祝杯を重ねた。
「電話ではああ言ったけど、気を遣わないで飲んでね」
彼女の気遣いが愛おしかった。
だが今夜は俺も酒は控えるよ。
飲んだくれてる場合じゃないんだもん。
今日ここで、すべてが決まる。終わる。終わらせる。
しかしそんな意気込みも束の間、一時間も経つ頃には俺の心は苛立ち始めた。


710 名前:1 ◆6uSZBGBxi. [sage] 投稿日:2006/04/29(土) 16:16:11 ID:
ふたりで話しているとどうしても馬鹿話で盛り上がってしまう。
望む方向に会話を持っていけない。
なんとも色気のない話ばかりが続いた。
楽しいんだけど…いや、楽しいからこそタチが悪い!
「デザートでも頼もっか」
彼女に品書きを渡し、無理矢理、会話を中断した。
流れに変化をつけようと必死だった。
“デザート作戦”は功を奏し、恵子ちゃんはデザート選びに夢中になった。
ようやくシンキングタイムを手に入れた。
…しかし、どうしたものか。
切り口がわからない。
大体、こんな公衆の面前で女性に告白したことなんて今まで一度もない。
気の利いた言葉がひとつも浮かんでこない。
どうしよう。
どうしよう。
「はい。私は決まり。健吾君はどれにする?」
時間切れ。
「じゃ、じゃあ、俺は〜」
“イチゴとバナナの井戸端会議”なるものを注文した。

711 名前:1 ◆6uSZBGBxi. [sage] 投稿日:2006/04/29(土) 16:16:57 ID:
あれほど時間の観念がなくなった日はないだろう。
気づくと11時をまわっていた。
「そろそろ出よっか。終電も近いし」
おとなしく従った。
だがあきらめたわけではない。
駅までの道のりは徒歩10分。
当初の予定とは大幅に異なってしまったが、この際、四の五の言ってられない。
歩きながら、だ。
「あのね」
うわっ。
…恵子ちゃんに言葉を盗られた。
「実は、ね」
ここまでは俺の言いたいことと一緒だった。
「今、交際申し込まれてるの」
噴き出した脂汗が夜風に撫でられた。
(ああ、気持ちいいなぁ)
などと考えていた。

712 名前:1 ◆6uSZBGBxi. [sage] 投稿日:2006/04/29(土) 16:17:59 ID:
「…あ、相手は?」
現実に向き直った。
「同い年の、会社の人。職場でよく遊びに行くメンバーのひとり」
「じゃ、お互いによく知ってる仲なんだ…」
「うん」
「…恵子ちゃんは、その人のことどう思ってるの?」
「うん…すごく、いい人。ただ…」
「…ただ?」
「結婚を前提にって、言われたの」
熱帯夜、俺だけが凍りついた。
どうにか、口だけ解凍する。
「そ、そりゃ余程、恵子ちゃんのことが好きなんだねぇ」
「………」
「それで…ど、どうなの?」
「なにが?」
「い、いや、なにがって…悪い気はしないんでしょ?その人のこと」
「…わかんない。
 今まで仲の良い友達だと思ってたから…そんな風に見たことなくて」
「そうか…」
「ねぇ、健吾君。
 男の人って、付き合う前からいきなり結婚を意識するものなの?」
「そんなの…男も女も関係ないと思うよ。
 恵子ちゃんとその彼の間には、今まで身近に接してきた時間があったわけで、
 その中で彼が、恵子ちゃんを『この人だ!』って、感じたということでしょ?
 付き合う前の時間だけで、彼には充分だったんじゃないかな?」
なにを真剣にアドバイスしてるんだろ、俺。
「男女の仲になる前に…ってのは少し性急かもしれないけど、
 恵子ちゃんの良さに気づいたんだから、その彼、見る目ある人だと思うよ」
「やだなぁ、いつもの健吾君らしくないよ(笑)オチがないじゃん(笑)」
「いや、冗談じゃなくて(笑)」
本心なんだ。

713 名前:1 ◆6uSZBGBxi. [sage] 投稿日:2006/04/29(土) 16:19:00 ID:
「ありがとね、健吾君」
「いや…大したコト言えてないけど…」
「ううん…そうじゃなくて。…ありがとう」

どういう意味か聞きたかったが、すでに改札の前まで来ていた。
「送ってくれてありがと!ここでいいよ」
「うん…」
最終電車が来るまでまだ5分くらいあった。
引き止めたい。
何か話題は………何か話題を…。
「じゃ、健吾君。さよなら」
俺の言葉は、待ってはもらえなかった。
…これで終わりか?
改札の向こう、恵子ちゃんが笑顔で手を振っている。
………。
あわててSuicaを取り出し、改札に叩きつけた。

714 名前:1 ◆6uSZBGBxi. [sage] 投稿日:2006/04/29(土) 16:19:53 ID:
振っていた手を止め、恵子ちゃんがキョトンと俺を見ている。
「送る。ホームまで」
「え? いいよぉ(笑)」
「いいから…いいから…」
恵子ちゃんが眉をひそめて俺を見つめた。
ホームには最終電車がもう止まっていた。
時間調節しているようだ。
恵子ちゃんは電車の中。
俺は白線の上。
「じゃあ、これでほんとにさようなら(笑)」
さようなら、って、こんなにさみしい言葉だったんだ。
発車のアナウンスが、俺の背中を押した。
俺は電車に飛んだ。
すぐにドアは閉まった。
口をポッカリ開けて、恵子ちゃんが唖然としている。
「乗っちゃった(笑)」
「な、健吾君、なにしてるのぉ!?」
恵子ちゃんの口を見た。
「ごめん、恵子ちゃん。次の駅で、降りてくれ」
恵子ちゃんの口が「うん」と言ってくれた気がした。

715 名前:1 ◆6uSZBGBxi. [sage] 投稿日:2006/04/29(土) 16:20:54 ID:
次の停車駅までのほんの数分間、恵子ちゃんは俺の顔をずっと見ていた。
俺も恵子ちゃんを見つめ、決して負けなかった。
扉が開き、トン、と足をホームに下ろした。
すかさず振り返る。
ちゃんと恵子ちゃんも後に続いていた。
電車が出発するのを待つ。
電車が去った。
他の乗客がホームからいなくなるのを待つ。
いなくなった。
恵子ちゃんはずっと黙っていた。
「恵子ちゃん」
「…はい」
「さっきの彼氏の話、断ってください!」
「………」
「俺、恵子ちゃんのことが、好き、です」
恵子ちゃんが俺を見上げている、気がした。
震える四肢。
「もし、恵子ちゃんが俺のことを、ま、まだ、想ってくれてるなら、
 お、俺と…つきあ…てく…さい」
最後のほうの言葉は恵子ちゃんの言葉でかき消された。
「…自惚れてるなぁ(笑)」
絶句。
多分、金魚のような顔をしていたに違いない。
うわーうわーうわー。
やっちまった。やっちまったよ、おい。
とんだ勘違い野郎だったんだ、オレ…。
「でも」
視線を泳がせていた俺の鼻に、恵子ちゃんの匂いが流れ込んできた。
「ずっと…自惚れててください」
恵子ちゃんが俺の腰に両腕を回していた。

716 名前:1 ◆6uSZBGBxi. [sage] 投稿日:2006/04/29(土) 16:21:40 ID:
サラサラとした恵子ちゃんの黒髪が、俺の右手の中にある。
砂糖菓子のように容易く砕けそうな肩が、俺の左手の中にある。
俺は恵子ちゃんを抱きしめていた。
恵子ちゃんの匂いが俺をくすぐる。
出会った時から変わらない、いつもと同じ香り。
両腕に、もっともっと力をこめたくなる。
「ごめんねぇ。そろそろ、ホーム閉めたいんだけど(笑)」
ふたりとも、ビクッとなった。
すぐそこで、駅員のおじさんが笑っていた。
お互いにお互いの顔の赤さを認めつつ、
「す、すみませんでした!」
ふたりで改札まで駆けた。笑いながら。

717 名前:1 ◆6uSZBGBxi. [sage] 投稿日:2006/04/29(土) 16:22:48 ID:
改札を出るとすぐ、堰を切ったように俺は再び恵子ちゃんを抱き寄せた。
今度はもっとちゃんと、もっとやさしく。
10分。
灯りも消えた駅の入口に、ふたり、佇んだ。
このままいつまでも恵子ちゃんの髪を撫でていたかったが、
思い切って、身体を離した。
恵子ちゃんが俺を見上げた。
たまらず、また抱き寄せてしまった。
三度、恵子ちゃんの匂いを思いっきり吸い込んだ。
くすくすと、恵子ちゃんが笑った。
「すっごくクンクンしてるね(笑)」
「うん(笑)恵子ちゃんの匂い、好きだ」
後から聞いたのだが、アリュールという香水だそうだ。
飽きることなどなかったが、さすがに今度はちゃんと身体を離した。
代わりに恵子ちゃんが指を絡めてきた。
つないだ手を子供のように振りながら、ふたり歩き始めた。
「…ごめんな。変なところで降ろしてしまって…」
ようやく頭が冷静に考えることを思い出した。
「ううん…うれしかったから…いい」
「俺もすごくうれしい」
「…照れるね(笑)」
「照れる(笑)」
照れてばかりもいられない。
「どうしよ?また街に戻ってどこかで飲む?」
「うーん…」
恵子ちゃんが俺の顔を覗き込んだ。
「あのね。敏夫叔父さん(お父さん)のとこ、行きたい」
そう言うや否やすぐに顔を伏せた恵子ちゃんの耳は、
暗がりでもはっきりとわかるくらい、真っ赤だった。
「…わかった。行こ!」
すぐさまタクシーを拾った。

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