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従姉に恋をした。

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Part5
154 名前:1 ◆6uSZBGBxi. [sage] 投稿日:2005/11/18(金) 08:42:39
もう俺の視線は彼女に釘付けで、周囲の視線は感じたけれど、
それを恥ずかしがる余裕など全く無かった。
彼女は言葉もなく泣き続ける。
自分のしたことに居た堪れなかった。
ようやく彼女が泣き終えた顔を上げた。
俺はひたすら謝った。ごめんと言うばかりで他の言葉は浮かばない。
彼女が言った。
「いいんです、いいんです…言ってくれてよかったです。ごめんなさい」
謝るのは俺のほうです。本当にごめんなさい!
「大塚さんの言葉だけに泣いてしまったんじゃないんです…
 最近別れた彼氏のこと、思い出して…」

155 名前:1 ◆6uSZBGBxi. [sage] 投稿日:2005/11/18(金) 08:44:00
彼女がその彼氏のことを話し始めた。
俺は黙ってその話を聞いた。
聞くことで俺のしたことが少しでも償えるなら…そんな身勝手な気持ちだった。
その彼氏とは去年の11月に別れたという。
理由は彼氏の浮気。
というよりも、新藤さんと付き合い始めた当初から、同時進行で別の女性がいたらしい。
結婚を誓い、双方の親にも挨拶を済ませた頃、それが発覚したそうだ。
責める彼女に対して、彼氏は開き直るばかりか、暴力まで振るったという。
踏ん切りをつけて彼氏と別れ、気持ちはボロボロになって何もかも嫌になった。
もう会社も辞めてしまおうかと思った頃、俺が転勤してきた。
いつも飄々としていて、明るく自分に接してくれる俺の姿に、彼女は救われたという。
責められるどころか、そんな風に俺のことを話す彼女に、ますます申し訳なく思った。

156 名前:1 ◆6uSZBGBxi. [sage] 投稿日:2005/11/18(金) 08:45:19
その後も彼女の話を聞き続けた。
話しながら彼女は杯を重ね、店が閉店時間を迎える頃には、彼女はヘベレケになっていた。
俺の酒量もとっくにリミットを越えていたが、とてもじゃないが酔えなかった。
酔い潰れた彼女を引きずるようにして店を出、タクシーを拾う。
彼女をタクシーに押し込み、自分は別のタクシーをと思ったが、
いくらなんでもそれは酷いと思い直し、俺も一緒に乗り込んだ。
正体をなくした彼女から住所を聞き出すのは骨が折れたが、
それでもなんとか彼女のマンションまでたどり着くことが出来た。
しかし揺さぶったりホッペを叩いても彼女は起きない。
タクシーの運転手が苛立った声で言う。
「一緒に降りてくれませんか?彼氏でしょう?」
口論する気力も無かったので、彼女を抱えて降りた。

157 名前:1 ◆6uSZBGBxi. [sage] 投稿日:2005/11/18(金) 08:46:49
酔っ払いは重い。
俺は彼女を背負い、ひぃひぃ言いながらドアの前まで歩いた。
と、彼女が目を開けた。
「よかった。もう大丈夫だね?」
「はい。すみませんでした」
「じゃ、降ろすよ」
だが彼女は降りようとしない。
「どした?まだ立てないかい?」
「大塚さん」
「ん?」
「今日は一緒にいて」
耳元で囁かれたその言葉にクラクラとした。
俺は泊まった。

158 名前:1 ◆6uSZBGBxi. [sage] 投稿日:2005/11/18(金) 08:47:43
なんともバツの悪い朝を迎えた。
のそのそとベッドから出た俺に新藤さんが日本茶を差し出した。
「コーヒーよりこっちのほうが、大塚さん、いいでしょ?」
笑顔だ。
なんで笑顔になれるんだ?
俺は苦笑いすら出来なかった。
あまりまともに会話も出来ず、俺は帰ろうと身支度を整えた。
「私も出掛けるので、駅まで一緒に行きましょう」
早くひとりになりたかったが、俺は何も言えなかった。
道すがら、彼女が言った。
「何も考えないでください。私、これきりだと思ってますから」
彼女はいつもの職場での顔になっていた。


159 名前:1 ◆6uSZBGBxi. [sage] 投稿日:2005/11/18(金) 08:48:47
家に帰ると、郵便受けに宅急便の不在票が入っていた。
芽衣子さんからだ。
宅配会社に連絡すると、1時間後に荷物が再配達された。
中には手作りと思しきチョコと、ブランド物のネクタイが入っていた。
今回は手紙は無かった。
それが何か無言の圧力に感じた。
いろんな感情に塗れながら食べたチョコは、味がしなかった。

160 名前:1 ◆6uSZBGBxi. [sage] 投稿日:2005/11/18(金) 08:49:32
翌週、職場で会った新藤さんはいたって普通だった。
ありがたいというか、なんというか。
自分が卑怯な男に思えたが、俺も努めて平静を装い、彼女に接した。
以後、彼女は全くあの日のことに触れず、俺も口に出さず、
ふたりで飲みに行くこともなくなった。

161 名前:1 ◆6uSZBGBxi. [sage] 投稿日:2005/11/18(金) 08:50:39
一ヶ月後のホワイト・デー。
芽衣子さんにお返しを送った。ちょっとだけ値の張る小物入れ。
メッセージの類は入れなかった。
何か事務的で、虚しさを感じた。

162 名前:1 ◆6uSZBGBxi. [sage] 投稿日:2005/11/18(金) 08:51:38
それから一ヶ月、二ヶ月、三ヶ月。季節は春を迎えた。
相変わらず芽衣子さんとのやりとりはない。
飽きもせず俺は考え続けていた。
しかも今までは恵子ちゃんや芽衣子さんのことだけだったのに、
なぜか新藤さんのことまで悩みの数に入れた。
なんともはや俺という男は小心者で、ナルシストで、くだらない人間なのか。

163 名前:1 ◆6uSZBGBxi. [sage] 投稿日:2005/11/18(金) 08:52:32
ある日、同僚と飲みに行った。
いい加減酔い、終電に飛び乗った時、俺は衝動に駆られた。
芽衣子さんに電話しよう。
横浜駅はまだ先だったが俺は途中下車した。
改札を出てすぐに電話する。
2、3コールで芽衣子さんが出た。

164 名前:1 ◆6uSZBGBxi. [sage] 投稿日:2005/11/18(金) 08:53:35
「お仕事ご苦労様!」
芽衣子さんの言葉を聞いたらたまらなくなった。
俺は芽衣子さんが口を挟む隙さえ与えぬほど、捲くし立てた。
たのむよ!俺の側にいてくれよ!恵子ちゃんのことなんて関係ないだろ!
忘れたかなんてわかんないよ!忘れたって言ったって信用してくれるのか!
芽衣子さんが必要だってことだけわかってるんだ!
嫉妬なんて構わないよ!嬉しいよ!嫌になんて絶対ならない!
俺の話が終わるのを待って、芽衣子さんが言った。泣いてた。
「健吾君の気持ちはうれしいの。でも私は、自分が嫌な女になるのが嫌なの!」
初めて聞く彼女の泣き声に、俺は少し冷静さを取り戻した。
「一体なんで、そこまでこだわるんだい?」

165 名前:1 ◆6uSZBGBxi. [sage] 投稿日:2005/11/18(金) 08:55:09
俺の問いに泣きながら彼女は答えた。
昔、結婚を考えた彼氏がいたこと。
でも自分はいつも彼を疑ってしまったこと。
そしてとうとう、彼は「わずらわしい」と言って去っていったこと。
自分は病気だと、芽衣子さんは言った。
俺は胸がいっぱいになった。
「じゃあ、俺が本当に恵子ちゃんのことを忘れたと、芽衣子さんが確信を
 持てるまで芽衣子さんは待つの?そんなの芽衣子さん次第であって、
 いつになるかわからないじゃない!」
ほんの少し無言になった後、芽衣子さんが言った。
「それでも私は待ちたいの」
ああ、理屈じゃないんだな、と思った。
堂々巡りに疲れた。もう、いいや。
俺は電話を切った。

166 名前:1 ◆6uSZBGBxi. [sage] 投稿日:2005/11/18(金) 08:56:05
家までのタクシー代は2万円近かった。
こんなことならカプセルホテルにでも泊まりゃよかった。
自宅のベッドで横になりながら、
そんなことを冷静に考える自分を冷たいと思った。

167 名前:1 ◆6uSZBGBxi. [sage] 投稿日:2005/11/18(金) 08:57:17
夏。初めて体験する東京の暑さは俺を一層、滅入らせた。
ある日、出勤すると新藤さんが職場のみんなに挨拶回りをしていた。
俺の姿を見つけ、彼女が深々と頭を下げる。
「このたび、会社を辞めることになりまして…」
俺とのことが原因!? 動揺した。
「今晩、飲みに行きません?」
小声で言った彼女は笑顔だった。

168 名前:1 ◆6uSZBGBxi. [sage] 投稿日:2005/11/18(金) 08:58:09
その晩、飲み屋に入り席に着いた彼女が、開口一番言った。
「私の退職は、大塚さんとのことと全く関係ありませんから」
きっぱりとしていた。
話を聞いた。
彼女は彫金を趣味としていたのだが、
最近、知り合いの彫金師にこれまで作ったアクセサリーを見せたところ、
強くプロになることを薦められたそうだ。
でもまだまだ自分は勉強不足だと感じるため、
会社を辞め、その知り合いのもとで修行をしようと決めたらしい。

169 名前:1 ◆6uSZBGBxi. [sage] 投稿日:2005/11/18(金) 09:00:37
生き生きと話す彼女がなんだか羨ましい。
その時の俺はどういう精神構造をしていたのか。
こともあろうに俺はとんでもないことを口にした。
「俺と付き合ってください」
はぁ?
そうは彼女は言わなかったが、
一瞬真顔になった後、すぐに笑顔でこう言った。
「そんなこと言わないで。
 残酷だけど、私の中では終わったことなんです。
 それって『今更』、ですよ?」
穴があったら入りたい、なんて言葉じゃ生温い。
今思い出しても、恥ずかしさで腹の辺りに空洞を感じる。
自業自得。また俺はひとりになった。

172 名前:恋する名無しさん[sage] 投稿日:2005/11/18(金) 12:53:34
1さん乙です。
ってか何かあまりにも悲しいですね…。見てると切なくなってきますよ。
続き期待してます。マイペースで頑張って下さい。

173 名前:恋する名無しさん[sage] 投稿日:2005/11/18(金) 13:29:20
悪いけど芽衣子さんは、本当に腹が立つ!!
読んでいてこんな気持ちになるんだから、
当事者の大塚の気持ちを考えるとたまらないな。

174 名前:恋する名無しさん[sage] 投稿日:2005/11/18(金) 20:40:53
芽衣子さんは本当に精神病ではないだろうか?
そんな芽衣子さんのどこが、1◆はよかったの?

175 名前:1 ◆6uSZBGBxi. [sage] 投稿日:2005/11/19(土) 06:09:41
また続きを載せます。
もう少しお付き合いください。
>>173
>>174
付き合い始めてからクリスマスを迎えるまで、
彼女にそんな性癖があるなんて思いもしませんでした。
その頃の彼女は本当に心優しくて、可愛くて、私は大好きでした。
彼女の極度の嫉妬心が病気といえるレベルだったのかはわかりませんが、
私次第で解決できると思っていました。
お気持ち、ありがとうございます。


176 名前:1 ◆6uSZBGBxi. [sage] 投稿日:2005/11/19(土) 06:11:17
プライベートがうまくいってないと、仕事までうまくいかないのだろうか。
毎日なにかしらやらかし、何をしても空回りする日々がしばらく続いた。
社会に出て10年余、
どんなに辛いことがあっても仕事に影響するなんてことはなかった。
それが、色恋沙汰で我を失っている。
これじゃアカンがなと思う反面、案外俺も普通の人間だったんだなと実感した。

177 名前:1 ◆6uSZBGBxi. [sage] 投稿日:2005/11/19(土) 06:12:45
秋になった。
大きな失敗こそしなくなったが、相変わらず仕事はパッとしない。
ある日、見かねた先輩が俺を飲みに誘った。
「どうしたんだ、ここんとこ?何かあったか?」
「いえ、別に。何もないですよ」
「そうか?お前はそういうことあんまり話さないからなぁ。彼女と何かあったのか?」
彼は俺が転勤する際、本社から残務整理の手伝いのために来ていた人だったので、
俺と芽衣子さんが付き合っていることは知っていた。
「彼女とは…終わったんですよ」
「…そか。まぁ、どうせ話さんだろうから深くは聞かんけど」
そう言って、先輩はそれ以上クドクド説教することはしなかった。
飲んでいる間、先輩がさりげなく気を遣ってくれているのがよくわかった。
ありがたかった。
こんなところで駄目になっちゃだめだ。
たった1年かそこらで都落ちなんてしてられっか!
俺は少し前向きになれた。
そろそろお開きにするかというところで先輩が言った。
「パーッと合コンでもすっか?俺、セッティングしたる」
それもいいか。
「レベル高いの、たのんますよ!(笑)」
カラ元気で言った。

178 名前:1 ◆6uSZBGBxi. [sage] 投稿日:2005/11/19(土) 06:14:05
2週間後、六本木で合コンとなった。
こちらは先輩と俺、相手はOLふたり。
とても綺麗な人たちだった。
丸の内で働いているというふたりはさすがに垢抜けていて、会話も洗練されている。
話していて楽しかったが、当たり障りのない会話に虚しさも感じた。
「ダメですよ!故郷のこと、そんな悪く言っちゃ!」
OLのひとり、関口さんが真剣な顔で言った。
会話の流れで俺の田舎の話になっていた時だった。
「○○なんて、いいところに住んでたんですね〜」
「いや、大したトコじゃないですよ。田舎だし」
「ええ〜?都会じゃないですか〜」
「中途半端にね。あんまり面白いところじゃないです」
横で聞いていた関口さんが俺を叱り付けた。
場が一瞬凍った。
「大塚〜!関口さんがもっと訛っていいってよ!(笑)」
先輩、ナイスフォローです。
また和気藹々とした雰囲気に戻ったが、
関口さんは恥ずかしそうに俯いていた。

179 名前:1 ◆6uSZBGBxi. [sage] 投稿日:2005/11/19(土) 06:15:35
2軒目はどうするかということになった。
俺は関口さんのさっきの態度が気にかかり、先輩に誘ってもいいかと尋ねた。
先輩は意外そうな顔をしていたが、
もうひとりのOLさんを連れてさっさと行ってしまった。
「もう少し、飲みません?」
「ええ」
関口さんを伴い、落ち着いて話せそうな店に入った。
1軒目よりも静かな会話だったが、お互い打ち解けた感じになった。
関口さんも
「こうして落ち着いて話せるほうが好きです」
と言っていた。
まったりとした時間を楽しみつつ、俺は気になっていたことを口にした。
「さっき、俺叱られちゃいましたね、関口さんに(笑)
 なんか悪いコト、言っちゃったかなぁ?」
彼女が目を丸くした。
「ごめんなさい!あんな大声出すつもりなかったんですけど…なんか…」
「なんか?」
「故郷の話をしてた時の大塚さん、辛そうな顔してた気がして…」

180 名前:1 ◆6uSZBGBxi. [sage] 投稿日:2005/11/19(土) 06:16:46
黙って話を聞いた。
「私はずっと東京で生まれ育ったから故郷がある人の感覚はよくわからないんですけど、
 普通、故郷の悪口を言う人って、それが冗談だったり、口ぶりに愛着が感じられたりして、
 本心で言ってるようには感じられないんです。でもさっきの大塚さんはとても辛そうに見えました」
真剣に話す関口さんが恵子ちゃんとダブって見えた。
お互いのメアドを交換し、関口さんと別れた。
なんだか無性に恵子ちゃんと話したくなった。
携帯のアドレス帳を開いたが、やっぱりやめた。

181 名前:1 ◆6uSZBGBxi. [sage] 投稿日:2005/11/19(土) 06:18:15
俺の気持ちが通じたのか。
数日後、携帯に恵子ちゃんから電話が入った。
その日はタイミング悪く夜勤中で、着信に気づいたのは翌日だった。
電話しようかしまいか夜まで迷った挙句、メールを送った。
「久しぶり〜!元気だった?昨日はごめんよー。夜勤中だったから」
返信はすぐに来た。
「ごめんね、突然電話して。夜勤だったんだ。ごめんなさい」
また送る。
「どしたん?何かあったのかい?」
また返信が来る。チャットのようなメールのやりとり。
「うん。最近落ち込んでて…ちょっと健吾君の声が聞きたかっただけ」
こんなに弱い感じの恵子ちゃんは初めてだ。
思い切って電話した。

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