同僚女「信用したいって云うたら嫌いになる?」
Part266 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/04/23(木) 18:41:33.59 ID:qv6ULQoP
――5/30、木曜日 19:00 神楽坂作業室
新人女「――過労とストレス性の過呼吸だそうです」
男「うん」
新人女「点滴で一晩様子を見て、とは仰ってました」
男「了解。大変だったね。ありがとね」
新人女「いえ……」
男「……」
新人女「……」
男「……」
男「ん。新人女さん、今日のところは、上がってください。
みんなの身体にも気をつけないとね」
男:カタカタカタカタカカタカタカタカタカ
新人女「男さん……」
男「ん?」
新人女「お見舞い、行かないですか?」
男「早くて、週末かな」
男:カタカタカタカタカカタカタカタカタカ
67 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/04/23(木) 18:42:43.83 ID:qv6ULQoP
新人女「でもっ」
男:カタカタカタカタカカタカタカタカタカ
男「だめ」
男:カタカタカタカタカカタカタカタカタカ
C男:カタカタカタカタカ
新人女「……」
男「いま、そっちに気持ちを振ったら
踏みとどまれないでしょ。
ここが、正念場だよ」
C男 こくり
新人女「え?」
男「いまパニックになったら、女先輩の帰ってくる
場所がなくなるよ。それは酷い話だ」
新人女「――」
男「悪いけど、手加減できなくなった。だから新人女さんは
今日のところは沢山寝て。明日から、仕事増やすよ」
新人女「はい……」
68 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/04/23(木) 18:43:33.90 ID:qv6ULQoP
――5/30、木曜日 19:30 神楽坂作業室
C男:カタカタカタカタカ
男「大体判った?」
C男 こくり
男:カタカタカタカタカカタカタカタカタカ
C男:カタカタカタカタカ
男「半日以下で終る細かい仕事は全部新人女さんに振って。
引継ぎ業務も、納品データの管理も。
彼女のほうがそういう業務には向いてる」
C男「判った」
男「悪いな」
C男「問題ない」
男:カタカタカタカタカカタカタカタカタカ
C男:カタカタカタカタカ
男「……」
C男「プリン一個の仕事。まだまだ受けれる」
69 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/04/23(木) 18:44:11.77 ID:qv6ULQoP
男「そか」
男:カタカタカタカタカカタカタカタカタカ
C男:カタカタカタカタカ
C男「男は、怖くないのか」
男「?」
男:カタカタカタカタカカタカタカタカタカ
C男:カタカタカタカタカ
C男「ずっと終らないかもって、思わないのか?」
男「ん……」
男:カタカタカタカタカカタカタカタカタカ
C男:カタカタカタカタカ
男「なんだろう。……思ってる。けど、それって怖いか?」
C男「……」
男:カタカタカタカタカカタカタカタカタカ
C男:カタカタカタカタカ
男「だって、ずっと続くって、要するに続くだけだろ」
70 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/04/23(木) 18:45:49.15 ID:qv6ULQoP
男:カタカタカタカタカカタカタカタカタカ
C男:カタカタカタカタカ
男「だいたい、終るって良く判らない。デスマが終るのは
嬉しいけれど、それってインターバルだよな。
デスマがある世界にいる限り、やっぱり終ってないよ。
終わらないって、今回がどうこうじゃなく、そういう連鎖だろ」
C男「うん」
男:カタカタカタカタカカタカタカタカタカ
C男:カタカタカタカタカ
男「ここはデスマのある世界だし」
C男「うん」
男:カタカタカタカタカカタカタカタカタカ
C男:カタカタカタカタカ
男「デスマのない世界には行きたくない」
C男「そうなのか?」
男:カタカタカタカタカカタカタカタカタカ
男「うん」
男「俺は学生のころから、酷いバイト沢山やってきて
感覚が麻痺しちゃってるだけかもしれないけれど
この世にデスマの全く無い業界とか、会社なんて、
無いんじゃないのかな……」
C男「……」
男:カタカタカタカタカカタカタカタカタカ
C男:カタカタカタカタカ
男「いや、デスマっていうと、曖昧だけどさ。
銀行とかだって潰れるし、
公務員だって削減されっちゃうような時代だよ。
どんな仕事してても、泣きたくなるほど青ざめる瞬間って
絶対あると思うんだよ。血の気が引いて足がすくむような
瞬間がくると思う」
男:カタカタカタカタカカタカタカタカタカ
C男:カタカタカタカタカ
C男「……」
男「そんな事は起きないって言える業界や社会人がいるとしたら
それって、たぶん、責任感が無いってだけだと思うんだ」
男:カタカタカタカタカカタカタカタカタカ
C男:カタカタカタカタカ
男「じゃなければ、本当に幸運で『見たことが無い』だけか」
72 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/04/23(木) 18:48:51.66 ID:qv6ULQoP
男「もちろん、毎日青ざめるよりは、週一のほうが良いし
週一で青ざめるよりは、月一、年一のほうが良いよ」
C男「うん」
男:カタカタカタカタカカタカタカタカタカ
C男:カタカタカタカタカ
男「身体を壊すようなデスマーチだって、
金輪際やりたくなんか、無いよ」
C男「うん」
男:カタカタカタカタカカタカタカタカタカ
C男:カタカタカタカタカ
男「でも『そういうのが絶対に無い世界』には、行きたくない。
それって幸せかもしれないけど
――なんか間違ってる気がするんだ」
C男「……」
男:カタカタカタカタカカタカタカタカタカ
C男:カタカタカタカタカ
男「……」
C男「ここは、捨てちゃダメな場所か?」
男「いまは、捨てちゃダメな瞬間だよ」
73 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/04/23(木) 18:50:10.56 ID:qv6ULQoP
――5/31、金曜日 23:30 小さなアパート
(昏いな……)
(やっちゃった……)
(うち、やっちゃったんだな。……ああ)
けふっ。けふっ
(やっちゃった……)
(絶対イヤだったのに。倒れちゃったか……)
(まだまだ平気のはずだったのに)
(――頭、痛い)
(身体重い、なんでこんなに布団が石みたいで……)
(倒れたんだっけ……)
(耳鳴りが、飛行機みたいにうるさくて……)
74 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/04/23(木) 18:51:08.29 ID:qv6ULQoP
(ハケンダカラ……アソンデテモカネモラエテ……)
(やっちゃった……うち、迷惑、掛けた……)
(何でこんなことになっちゃったのかな)
(うち、ウォリアーなのに)
けふっ。けふっ
(男のこと、助ける役なのに)
(助けて無いじゃんっ)
(真っ先に倒れて、足引っ張ってるじゃん)
(うち、ウォリアーちがう)
けふっ。
(こんなのウォリアーちがう)
(……)
(痛い……)
75 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/04/23(木) 18:51:43.82 ID:qv6ULQoP
けふっ
(昏いな……部屋、真っ暗……なんでこんなに寒いのかな……)
(誰もいないよ)
(当たり前か……友達、いないもんな……)
(1人やし)
(いま、何時かな……)
(23:46……真夜中、前か……)
(……頭、痛い。……昏い。……怖い)
(会社、首になるよね……)
けふっ。けふっ
(首にならなくても、十日も休めば、現場から外される、か)
(ハケンジャハナシニナラネェンダヨ)
(外される……外されて……)
(大丈夫、なんかな……うち……)
76 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/04/23(木) 18:52:24.02 ID:qv6ULQoP
(病院、幾らだったんだろ……保険なんて、無い……)
(働けなくなったら、どうしよう……)
(家賃払えなくなったら、追い出されるのかな)
(……そしたら、住むとこないやん)
(家なき子やん……)
けふっ。けふっ
(……昏いよ。寒いよ)
(住むとこなくなって、新しいとこ、借りられないよ。
保証人なんか見つけられないもんな……)
(一人で……ずっと一人で。帰る場所なんて無くて)
けふっ。……っぐ。
(みんなにも、会えなくなって……)
77 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/04/23(木) 18:53:15.52 ID:qv6ULQoP
(夜はやだな……)
(真っ暗の中で、石みたいに固くなって、
ずっとこうなんかな、うち……)
(ずっとこれが、続くのかな……)
(23:50――五分しか、たってない……)
(痛いよ……ずっと一人で……真っ暗の中で……)
(仕事首になったら)
(二度と会えないじゃんね……)
(ウォリアじゃないから)
(うち役に立たないから……)
けふっ。けふっ。……ずっ。ひゅぇ。
(甘えてて役に立たないから)
(終わったのかな……)
78 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/04/23(木) 18:53:58.41 ID:qv6ULQoP
(うちの終わりってこういうのなんだ……)
(遠くで自動車の音――酔っぱらいの声――)
けふっ。あ。……ぁ。
(でもうちは暗くて寒くて……)
(ずっと時計の針を追いかけて……)
(もう会えないのかな)
けふっ。けふっ
(一人でずっと泣いてるのかな……)
(――23:52)
(ずっと真っ暗な中で)
(ずっとずっと真っ暗な中で)
続きの記事 同僚女「観念してうちを撫でるんやね」
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