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キモオタ「我輩がおとぎ話の世界に行くですとwww」ティンカーベル「そう」 人魚姫編

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Part18
703 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/05/24(日)22:50:38 ID:eXh
鬼神『相変わらず貴様にしか俺の声は聞こえない。未だ体の自由は利かない……だが、確実に俺の力は増大している』
鬼神『気づいているだろう?俺の意思が以前より鮮明に貴様に伝わっているはずだ。それも当然、俺が以前よりも深い場所まで貴様の精神を蝕んでいるからだ』クックックッ
鬼神『共存などという夢物語に俺をも巻き込むと貴様は語ったが……どうやら俺が貴様を支配するほうが近そうだな?』クックックッ
赤鬼「……鬼神」
鬼神『何だ?貴様の青臭い演説など聞くつもりは無ぇぞ?』
赤鬼「お前のおかげで人魚王に殺されずすんだ、ありがとうな。赤ずきんや人魚姫も無事だったのもお前のおかげだ」
鬼神『……』
赤鬼「だけどお前の言うとおり、鬼神の力に頼ってちゃあ共存なんて夢物語になっちまうな。オイラ自身で何とかできるようにならねぇと」ガハハ
鬼神『……フンッ、貴様自身で何とかできたとしても夢物語である事に変わりはない。いずれ現実を突きつけられ絶望する日が来る、その日までせいぜい足掻け青二才』フンッ
赤鬼「……もちろん足掻くさ、夢だからな。俺と青鬼の」

704 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/05/24(日)22:54:03 ID:eXh
赤ずきん「さぁ、これからどうしましょうね?人魚の王もお姉さんもこのままというわけにはいかないものね」
人魚姫『親父は国をまとめるために人魚を殺して、それを人間のせいにしたんだよ?それをそのまま無かったことにはできないって、人魚のみんなに教えないとダメっしょ!』
赤鬼「そうだが、お前はもう人間だ。どうやって海底の奴らに……」
赤ずきん「問題はそれよね、私達には海底へと行く術がない。海底の魔女に払える対価も持ち合わせていないしね」
髪の短い人魚「……何故、責めないの?」
赤鬼「んっ?」
髪の短い人魚「頭巾の娘さん、あなたは人間よね?なら何故私達を責めないの?人間は人魚に危害なんか加えていなかった、それなのに私達人魚は罪のない人間に憎しみを向けていた」
髪の短い人魚「けれどそれは……お父様が国の為に作り出した偽物の憎悪。お父様が国民たちに騙った人間の悪事は全て偽り。それに踊らされて、私達は人間を殺し続けていたのよ!?」
赤ずきん「人間を殺した罪は消えない、けれど王に騙されたあなたも被害者だもの」
髪の短い人魚「……私達が愚かだった。人魚を悪意から守り、平和を築いていると思い込んで歌っていたのに……実際に確執の種をまいていたのは私達だった…!」
人魚姫『……姉ちゃん』
髪の短い人魚「鬼さん、お父様は小瓶を持っていませんでしたか?小さな、一見すると中身のない小瓶です」
赤鬼「ああ、どんな魔法具を持っているか解らないから持ち物は預かってるが……これか?」スッ
髪の短い人魚「人魚姫の声が閉じ込めてあるはずです、封を切れば声が取り戻せるでしょう」

705 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/05/24(日)22:56:55 ID:eXh
ポンッ フワッ
赤鬼「よし、封を切ったぞ。どうだ、人魚姫?」
人魚姫「……うん、声出せてる感じする!ねぇねぇ、ちゃんと聞こえてる?」
赤ずきん「ええ、あなたの考えはずっと私達に届いていたから久しぶりという感じはしないけれどね」フフッ
髪の短い人魚「人魚姫、あなたには辛い思いをさせてしまったわね。正しいのはあなただったのに」
人魚姫「いいよ、姉ちゃんはそんなにボロボロになってでも私を救うために来てくれたじゃん?ちょっと口うるさいと思ってたけど、結局は優しい姉ちゃんだしさ」ヘラヘラ
人魚姫「それにさ!人間が悪くないってのはもうわかったでしょ?だからもう人魚が人間を恨む理由はないっしょ?これってマジで共存するチャンスだと思うんだよね!さっそくみんなにこのことを伝えてさ、人間と仲良く暮らそうよ!」
人魚王「甘い考えだな……」
人魚姫「は?そんな事ないっしょ!全部ウソだったんだからさ、人間は人魚を襲ってなんかいないんだし恨む理由がもうないじゃん」
人魚王「長い年月で成長した憎悪はそう簡単には刈り取れぬ。私が植え付けた憎悪は確かに偽りだが、国民たちの中で膨らんだ人間への憎しみはそう簡単には拭えぬ」
髪の短い人魚「解ってくれる国民もいるでしょうけど、きっと大多数の人魚は突然真実を告げられても……混乱する。一度植え付けられた人間への悪い印象はぬぐえない、そう簡単にはね……」
人魚姫「……なにそれ」
髪の短い人魚「それに……いくら国民の為とはいえお父様の行為は許されない、おそらく投獄は免れないでしょうし王家への不信感は確実に高まります。最悪、国家転覆なんて事も十分に考えられます」
人魚王「それを私は望んでいない。平和を維持する最善の方法は、貴様らが口をつぐむこと。今まで通り人間への憎しみを向け、人魚だけで平和に暮らすことだ」

706 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/05/24(日)23:00:04 ID:eXh
人魚王「今まで通り、人間どもは好きに暮らせばいい。人魚は人間を恨み続け、ディーヴァは時折船を襲えばいい」
人魚姫「……なんでそうなんの?」
人魚王「解らんのか?国民に真実を告げれば、規模の大小にかかわらず人魚の仲間内で争いが起こる。国家へ反逆するもの、人間を信用する人魚とそうでない者のいさかい、私が収めた南北の海域間の争いだって勃発する」
人魚王「それに…確かに私の言葉は偽りだ。実際、人間は人魚を襲っていない。だが、それは人間が心優しい種族だからか?いいや、違う…人魚の存在を知らないからだ」
人魚王「人魚の存在を知った人間が人魚に危害を加えないと断言できるか?人間は善人ばかりか?貴様が出会った人間に悪意を持っている輩は一切存在しなかったか?」
人魚姫「……それは、でも!」
人魚王「貴様等は私の行動を悪だと言うが、例え偽りにまみれていたとしても長い間海底は平和で人魚の間での争いは起きていなかった。だが、お前が善行だと信じている行動は争いを生み出す、確実にだ。違うか?」
人魚姫「だからって!罪のない人を犠牲にしてまで得た平和に意味なんか無いじゃん!」
人魚王「いや、平和であること自体に価値がある。そしてそれに導くことが王の務めだ」
髪の短い人魚「私は……お父様の行動は、やはり許されたものではないと思います。でも、人間と共存できるかどうかというのは…また別の問題よ、人魚姫」
人魚姫「はっ!?姉ちゃんまで何言って…!」
髪の短い人魚「お父様が国民を騙していた事は公表し、償ってもらいます。あとは人魚間での争いが大きくならないように対応する、それが最善だと思います。共存なんて……やっぱり難しいわ」
人魚姫「……」

707 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/05/24(日)23:05:27 ID:eXh
人魚姫「……ねぇ、赤ずきんと赤鬼はどう思う?」
赤ずきん「正直に言うと、全ての人間が人魚と平和に暮らせるとは思えない。他人を利用して利益を得ようとする輩は少なくないもの」
赤鬼「鬼は人間に被害を受けている、これはお前達と違って偽りなんかじゃない。人間が自分たちの利益の為に鬼を利用したことは事実だ」
人魚姫「……」
赤ずきん「でも、そんなのは種族どうこうの問題じゃないわ。人間だけで暮らしていてもそういう輩は居るもの」
赤鬼「そうだな、それに……これは俺も同じ状況に居たからわかるが」
赤鬼「人魚は人間を悪い奴だと思っている、だが実際はそうでない人間も多い。それを知って貰うことだ」
人魚姫「海底の人魚たちに…人間の良さを知ってもらえば、良いって事?」
赤鬼「人魚は人間の本来の姿を知らない、きっと人魚を利用する悪人だと思ってる。その印象を拭ってやればいいんだ……まぁ、口で言うほど簡単なことではないんだがなぁ」
人魚姫「実際に見てないから解らない、解らないから信じられない……だったら、人間にもいい人がいるって事を知っている人魚がそのことをみんなに伝えればいいじゃんね?」
人魚姫「人間と接したあたしが、海底に行ってさ!赤ずきんや赤鬼や桃太郎や王子や……人間との事話せば、きっと信じてくれるっしょ!」
赤ずきん「……ちょっと待ちなさい、海底に行くってあなた……」
赤鬼「自分で言っておいてなんだが…お前がそれをするには人魚に戻るしかないんだぞ?それがどういうことか解ってないわけじゃないだろう?」
人魚姫「解ってるって、あたしそこまで馬鹿じゃないよ。でもこれって私じゃなきゃできないじゃん?」
赤ずきん「声を取り戻したとしても、あなたに掛けられている呪いが解けた訳じゃあないのよ?それなのにあの魔女があなたをまた人魚にしたり人間にしたりするとは思えない、きっと今度は声以上の対価を要求するわよ?」
人魚姫「そうかもしんないけどさ、悲しいじゃん?本当は仲良くなれるかもしれないのに、諦めるなんてさ」
人魚姫「私は人魚になって、親父と姉ちゃんと海底に行くよ。そんでさ、人間との事みんなに話して……仲良くできるように頑張ってみるからさ」ヘラヘラ
赤鬼「……」
人魚姫「だからあたしを城に連れて行ってくれる?王子に会いたいんだ、それに声も取り戻したし」
人魚姫「最後くらいさ、自分の声で気持ちを伝えたいじゃん?」ニコニコ


708 :名無しさん@おーぷん :2015/05/24(日)23:07:08 ID:GPa
鬼さん釜ゆでお願い

709 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/05/24(日)23:09:35 ID:eXh
今日はここまでです
次回、声を取り戻した歌姫の運命はどうなるのか
人魚姫編 次回に続きます

710 :名無しさん@おーぷん :2015/05/24(日)23:10:55 ID:mrZ
うわあああああ
良いところでぇ
>>1さん乙です!
人形姫カワユス

711 :名無しさん@おーぷん :2015/05/24(日)23:45:12 ID:JCz
乙です
アリスの薬が気になるねえ

712 :名無しさん@おーぷん :2015/05/24(日)23:46:33 ID:TW7
>>1さん乙です!
鬼神が相変わらずカッコいいですが、ドロシーもワケありなようで…益々面白くなってきました!!
あとは人魚姫次第…
何となく終わりが近そうに感じました
とりあえず次回更新を楽しみに待ってます!!

729 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/05/31(日)23:12:04 ID:mx2
人魚姫の世界 城 客室(人魚姫の部屋)
人魚姫「えーっと、アクセ作る道具と素材っしょー?二人が用意してくれた洋服と桃太郎に貰ったアクセとー……あと何か忘れ物してないっけ?」ゴソゴソ
赤鬼「……」
人魚姫「忘れ物したら大変だかんね、二人ともちゃんと手伝ってよ?」ゴソゴソ
赤ずきん「……」
人魚姫「ちょっとー!二人ともテンション低すぎなんですけどー?もうちょっと楽しくやろうよ、ほらほらできるっしょ?」ヘラヘラ
赤鬼「楽しくってお前…無理を言うなよ、こんな状況で笑ってられるわけないじゃないか」
赤ずきん「私も同意見よ…友達が死を覚悟しているというのにヘラヘラ笑っていられないわ」
人魚姫「あははっ、死を覚悟したとか流石に大げさ過ぎじゃん?」ヘラヘラ
赤鬼「大げさなんかじゃない、事実だ。お前は王子に別れを告げた後、海底へ行くんだろう。人魚の王が部下用に作らせた人魚に戻す薬…そいつを飲んで人魚へ戻るんだ」
人魚姫「そうそう、海岸で姉ちゃん達と話した通りだよ。私は人魚に戻って、姉ちゃんと一緒に親父を連れて海底へ行くよ」
人魚姫「そんでさ、国民を集めて親父の悪事を洗いざらい白状させて…みんなに謝って、親父と王族の処分を決める。それからさ、人間は本当は悪くないって…良い人がたくさんいるって、わたしがみんなを説得する」
赤ずきん「包み隠さず事実を公にして王の悪事にケジメをつける。王族として自らも罰を受けるというのはあなたのお姉さんの意見だったわね」
人魚姫「姉ちゃんまじめだからさ、自分も相応の罰を受けるって言って聞かないんだよね。ちゃんと謝罪してさ、そんで国民がそれでも政治を王族に任せてくれるなら姉ちゃんが王位に就くことになんのかなー?」
赤鬼「全ての人魚が許してくれるとは考えづらい、家族や友人を王に殺された人魚も大勢いるんだ。それでも誠心誠意謝罪をすれば…お前の姉までひどい扱いを受ける事は無いだろう、あいつも騙されていたんだ」
赤ずきん「…けれど、あの王が罪を認めるとは思えないわ。いいえ、自分の行いが罪だと思ってすらいないもの」

730 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/05/31(日)23:13:52 ID:mx2
人魚姫「それなんだよねー、あんな親父でも国民には支持されてるからさー。やり方は最悪だったけど、南北の海域の争いを収めたのも人魚の世界を平和にしたのも親父だしさ」
赤鬼「確かにな、方法は褒められたもんじゃねぇが…あの王が国民の為、国家繁栄の為に行動して成功したってのは事実だもんな」
人魚姫「そうそう、だから逆に親父がなんかうまい事演説でもしちゃったら最悪なんだよねー…まぁとにかくさ、そうなってもわたしがちゃんとみんなに人間のいいところ伝えるから大丈夫っしょ」ヘラヘラ
赤鬼「お前がよく考えてだした結論だ、オイラ達は応援する。お前ならきっとうまく説得できるってのも信じてる。だが、なぁ……赤ずきん?」
赤ずきん「……ええ、ひとつだけ大きな問題があるわね」
人魚姫「あー……うん、わかってる」
赤ずきん「あなたの説得が成功して人間への憎しみが消えたとしましょう。……その結果として人魚が人間と交流を持つようになっても人魚王が残した爪痕は消えない」
人魚姫「それって人魚に殺された人間……の事っしょ?復讐の為に…正義の為に殺したと思ってたのに実はただの虐殺だった……なんて、悲惨すぎるって」
人魚姫「でも本当に悲惨なのは殺されちゃった人たちだよね。だってどんなに反省しても謝罪してもさ、殺した人間が帰ってくる事はもうないもんね。例え誤解だったとしてもさ、残された家族にはそんなこと関係無いもんねー……」
赤鬼「そうだな……被害者の家族や友人にとっちゃあどんなに人魚が反省し悔もうが人間に友好的になろうが人魚は大事な人を殺した憎むべき種族になっちまう」
赤ずきん「事の顛末を全て話しても……どんなに頭では理解していても、一部の人魚だけが悪いのだと解っていても全ての人魚に憎しみを向けてしまうでしょうね」
赤ずきん「もちろん、長い時間を掛けてお互いをよく知る事を繰り返すことで…次第に憎しみを向ける相手が間違っていると理解できるでしょうけど…それはとても時間がかかるしものすごく難しいわ」
赤ずきん「あなたが人魚の心を動かし、そして人間の心を動かせる先導者がいれば…いつの日か人間と人魚は共存できる。それは険しくてどこまでも続くように見える長い道のりになるでしょうけれど…いつか叶う、必ずね」
人魚姫「……うん、だからこそわたしは人魚に戻る。わたしが絶対に人魚を説得して人間に歩み寄れるようにする。マジで頑張るよ、これだけは絶対にね!」

731 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/05/31(日)23:15:01 ID:mx2
赤鬼「うむ、よぉし!お前が体張って頑張るってんだ、オイラ達が気を落としてちゃあいけないよな!」ガハハ
赤ずきん「そうね…私達にできる事は多くないけれど、それでも出来る事が無いわけではないもの」
人魚姫「うんうん、二人ともありがとね!じゃあわたしは王子の所に行ってくるかなー」ヘラヘラ
赤鬼「おう、それじゃあオイラが連れて行ってやる。声が戻っても歩くと足が痛むのは変わらないんだ、肩に乗ると良い」
赤ずきん「……赤鬼、そこは一人で行かせてあげましょうよ」
人魚姫「あははっ、嬉しいけどさ王子の所には一人で行きたいんだー」ヘラヘラ
赤鬼「うおっ、それもそうか……ならオイラ達は城の前で待っているとするか、そしたら海岸へ向かおう。すぐに海底に行くつもりなんだろ?」
人魚姫「うん、王子に会ったらすぐに行こう。姉ちゃん達が誰かに見つかったらまずいかんね」
赤ずきん「……それなら後でバタついてもいけないし、忘れないうちにあなたにはこれを渡しておくわね」ゴソゴソ
スッ
人魚姫「何これ?瓶に入ってるけど……石?キャンディとかいうお菓子?」
赤ずきん「いいえ、石でも飴玉でもないわ。石なんかよりずっと脆くて飴玉のようにすぐに消えてしまうだろうけど、この魔法具はあなたを助けてくれる。使い方はね……」
ヒソヒソ
人魚姫「……マジで!?これ絶対役に立つじゃん!でもレアな物じゃないの?いいの?」ヘラヘラ
赤ずきん「いいのよ、けれど少しずるいかしら?」フフッ
人魚姫「そんなことないって、もしもあいつがちゃんと謝らなかったら使うからさ!…じゃあ、赤ずきんにはお返しのプレゼントあげなきゃねー」ゴソゴソ
グイッ
人魚姫「特別な魔法具って聞いたけどわたしには必要ないから赤ずきんが役に立ててよ。わたしからのプレゼントなんだから大切にしなきゃおこだかんね?」ヘラヘラ

732 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/05/31(日)23:17:13 ID:mx2
赤ずきん「ええ、ありがとう人魚姫」ニコッ
人魚姫「あははっ、じゃあまた後でねー」ヘラヘラ
バタンッ
赤鬼「行っちまったな……」
赤ずきん「…そうね」
赤鬼「王子との結婚も諦めて、泡になって消える事を承知で…それでも種族共存の道を取るんだな、あいつは」
赤ずきん「もちろんそれは彼女の願いだけれど……むしろ王子を幸せにするという意味合いのほうが強いのかもしれないわね、共存できればこの港町はかつてのそれよりも繁栄できるでしょうしね」
赤鬼「自分の幸せより王子の幸せの為…か。愛した男の願いの為なら、例え自分が泡になっても……か、健気な奴だよあいつは」グスッ
赤ずきん「私は彼女がそれを望むのなら…それがあの娘の愛の形なら…人魚姫らしく王子を愛する事、それが一番の選択だと思う」
赤鬼「そうだな、あいつが消えた後も人魚姫の願いと想いはずっと生き続ける。そしていつか、二つの種族が解り合える日が来るなら、あいつは報われる」
赤ずきん「……ええ、人魚姫が泡になれば結果としておとぎ話が消える事はない。ずっとずっと、このおとぎ話の中には彼女の想いが生き続ける…そしてこのおとぎ話が消えなければ」
赤鬼「現実世界で人魚姫の想いはは生き続ける、か……そういえば、赤ずきん。人魚姫から何を貰ったんだ?」
赤ずきん「短剣よ。おそらく、お姉さんが髪の毛と引き換えに彼女に託した魔法具ね」
赤鬼「ああ、確か……『解魔の短剣』だ。元のおとぎ話にもあったが魔法を打ち消す事が出来るらしい、ただし魔法に掛けられている奴と強い絆で結ばれている奴の血液を浴びせる必要があるけどな」
赤ずきん「そう、強力な魔法具だけど……容易には使えないわね」
赤鬼「ああ、強力な魔法具だが魔法を解くために他の誰かを刺す必要があるからな……」
赤ずきん「もちろんそれもあるけれど……友達からの贈り物ですもの、大切にしたいのは当然でしょう?」

733 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/05/31(日)23:18:47 ID:mx2
城 王子の部屋
人魚姫「王子ー、入るよ?」
ガチャッ
王子「……zzz」スゥスゥ
人魚姫「寝てる…っていうか灯りつけっぱなしだし、作業しながら寝ちゃったのかも知んないなー…本とか紙の束もあちこちに山積みだし」ペラッ
人魚姫「これは多分この辺りの海図っぽいね?それと船の行き来の記録と……こっちは事故船の記録っぽいけど…うへー、全然わかんないんですけどー」ウヘー
人魚姫「わたしなんかちょっと読んだだけで頭痛くなりそうなのに、マジで頑張り屋だよー。王子は港の復興が夢だもんねー…だから寝る時間も惜しんで頑張ってるんだ、うんうん偉い偉いー」ヘラヘラ
王子「……zzz」
人魚姫「……」
人魚姫「でも大丈夫だかんね、もう姉ちゃん達は船を襲わないからさ。海難事故はもう起きない、王子の頑張りは報われるんだよ?……っていうか姉ちゃんが船沈めてた事黙っててごめん」
ナデナデ
人魚姫「これからは港から出た船はちゃんと戻ってこれるし、余所からの船だってたくさん来るようになる。ちょっと時間はかかるかもしれないけどさ、昔よりも立派な港にきっとなるよ」
人魚姫「そのころには町ももっと栄えてて、たくさんの船や旅人が来て町はもっと賑やかでみんな幸せに暮らすんだよ」
人魚姫「そしたら、そのころには王子は王様になってるのかな?だったら絶対良い国になるっしょ!」
人魚姫「立派な王様になった王子が、頑張って手に入れた大賑わいの港町を治めるんだ。余所の国にも、あの国の王様は立派だって褒められて……それで仲良くなった人魚と人間が一緒に暮らしてんの」
人魚姫「時間はかかるかもしれないけどさ…それでお互いに協力し合って生活するの。人魚と人間が仲良くして王子の夢も叶う、わたしが夢見たそんな未来に…この街は絶対になれる」
人魚姫「わたしはそれを見ることはできないけどさ、王子も幸せになれるって信じてるからさ」ニコニコ

734 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/05/31(日)23:20:48 ID:mx2
人魚姫「欲張り言っちゃうと……本当はわたしも見たかったんだけどさ、王子が立派な港町治めるとこ。でもちょっと無理っぽいんだよね」ヘラヘラ
人魚姫「赤鬼たちとも話してたけど、一部の人間にとっては人魚は悪い種族になっちゃうんだよね。王子ならきっと人魚の味方してくれるけど、そこで人魚のわたしが側にいたらきっと王子に迷惑かけるしさ」
人魚姫「初めのうちはどうしても人魚を嫌う人間はいると思う、でもさ王子が共存の為に頑張ってくれてもわたしがいたら『王子は人魚の恋人がいるから肩を持ってるだけ』とか言われたりさ、しちゃうとおもうんだよねー」
人魚姫「それってすごくつまんないよ、わたしが原因で王子まで辛い思いをさせちゃうのってさ。そういうの泡になっちゃうより嫌だな、わたし」
王子「……zzz……んんっ……」モゾモゾ
人魚姫「……あっ、王子ごめん。起しちゃったっぽいね」ヘラヘラ
王子「姫…?あぁ、しまったもう朝じゃないか……調べ事をしている最中に眠ってしまったみたいだ」
人魚姫「あははっ、あんまり頑張りすぎると良くないからさ、テキトーに休まなきゃだよー?」ヘラヘラ
王子「いや、そんな事よりも…!喋れるようになったのだね!?君は声が出せない病だと聞いていたが……治ったのかい?」
人魚姫「あー……うん、そんな感じ?」ヘラヘラ
王子「それは良かった、そうだ…!赤鬼や赤ずきんはもう知っているのかい?この良い知らせを伝えなければ…!」ソワソワ
人魚姫「二人とももう知ってるから大丈夫だって、だから王子のところに来たんだしさ」ヘラヘラ
王子「そ、それもそうだね。すまない、なんだか舞い上がってしまって…」
人魚姫「っていうか、王子がテンションあがんのおかしいじゃん?」クスクス

735 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/05/31(日)23:22:10 ID:mx2
王子「いや、しかし喜ばしい事に変わりはない。これからは君の想いをより理解できる、愛する人と昨日よりずっと解り合える…こんな嬉しい事はない」ニコッ
人魚姫「……」
王子「早速父上にも報告しよう、きっと喜んでくださるだろう!」
人魚姫「あー…それはいいんだけどさ」
王子「父上に報告した後、婚姻の報告をすませたいと思っているんだ。君を国民たちに紹介したい、私の妃として」
王子「君は心優しい女性だ、そのうえ透き通った声と可憐な美しさを兼ねている。きっと国民にも慕われるよ」
王子「海難事故の直後で大変な時期ではあるが…だからこそ良い知らせを国民は待ち望んでいるはず。さぁ、準備を整えたらすぐにでも…」
人魚姫「ちょ、ちょっと……!待ってってば、王子!」
王子「あぁ…そうか、私とした事が事を急ぎ過ぎてしまった。まだ君の両親に御会いしていないのに……ご両親に挨拶もしないまま婚姻など不躾だ」
人魚姫「そうじゃないって、それはどうだっていいよ」
王子「……?ならば、何だというんだい?」
人魚姫「わたし、王子とは結婚できない」
王子「っ…!何故だい?私に何か不満があるのならば言って欲しい!私は姫を愛しているんだ!」
人魚姫「それはわたしも同じだけどさ……わたし、王子に言ってない事があるんだ」
王子「一体それは何だというんだい?君も私を愛してくれているというのなら、その想いを押さえつけるほどの事情なのかい?」
人魚姫「…わたしは、本当は人間じゃない」
人魚姫「海のずっと深くに住む、人魚なんだ」

736 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/05/31(日)23:24:03 ID:mx2
王子「人魚というと…あの伝説や昔話に出てくる人魚の事かい?」
人魚姫「陸の上ではそんな風に思われてるんだっけ。うん、わたしは人魚の国の姫なんだ」
王子「ふふっ、言葉を交わすことで君の新たな一面を知れたようだね。姫がそんな冗談を言うとは思わなかったよ」フフッ
人魚姫「ちょ…冗談なんかじゃないっての!本当の話だって、わたしは魔法の力で人間の姿をしてるだけなんだって!」
王子「……しかし、とてもじゃないが信じられない。人間以外の種族が実際に居るというのも、どう見ても人間である君が…人魚だというのも」
人魚姫「わたしはチョー真面目だよ。あの日、まだ人魚の姿だったから沈んでいく王子を助けて岸まで運べたんだしさ。すぐ近くで船が沈んでいってんのに自由に泳いであんな沖から海岸まで泳ぐって人間にできる?日も落ちてたのに?」
王子「……確かに」
人魚姫「初めて王子を見たときさ、一目で気に入っちゃってさ。恋人になりたいって思ったんだ、それで色々あって……海底の魔女に人間になる魔法を掛けてもらったんだ」
王子「……冗談ではないのだね、姫」
人魚姫「マジで言ってるよ。今のあたしは水中で呼吸出来ないし尾びれも無いけどさ、王子なら信じてくれるっしょ?」
王子「困ってしまうな……やはり姫が人魚だなんて信じられないが、君の言葉に嘘があるとは思えない。おそらく真実なのだろう」
人魚姫「信じてくれて、ありがとね。それでこそ王子だよ」ニコニコ
王子「だが…君は自分が人魚だから人間である私とは結婚できないという考えなのだろう?」
王子「私は姫が人間だからという理由や命の恩人だから愛しているのではない。君だから愛しているんだ、例え人魚だとしても私の気持ちは変わらない」
人魚姫「ヤバっ…チョー泣きそう」ボソッ
王子「君が何故そんな事を気にするのかわからない、私には君が何者かなんて関係無いんだ」
人魚姫「……でもさ、この海域の船を沈めていたのが…人魚だって言っても、同じふうに言ってくれる?」

737 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/05/31(日)23:26:20 ID:mx2
王子「この海域の船を……沈めていた?あれは、あれは事故ではないのか!?」バッ
人魚姫「あれは事故じゃない、襲撃だったんだよ。海底ではね、人間は人魚を襲う悪い種族だって言われててさ……船を沈める役割を持つディーヴァっていう仕事があるんだ」
王子「……」ボーゼン
人魚姫「人魚の事情としてはさ、人間が悪人だって嘘を振りまいた奴がいて…人魚たちはみんなそいつに騙されてたって事だけど、人魚が人間を殺したのは事実だよ」
王子「何という事だ……」
人魚姫「……ごめんなんて言葉じゃ足りないってのはわかってるけどそれでも、私にはそういうしかないよ。ごめん……」
王子「……何故だ?」
人魚姫「だからさ、人魚の王…わたしの親父が国をまとめるために人間を利用してて……」
王子「いや、人魚が船を襲った理由では無くてね。君が何故それを私に教えたかを聞きたいんだ」
人魚姫「なんでって……」
王子「君が実は人魚で、人魚は人間を恨んでいて、船を沈めていたのも人魚…いずれも信じがたいがすべて事実だとするなら、君にとってその事を私に教えることは不利益しかないはずだ。それなのに何故、君は私に打ち明けたんだい?」
人魚姫「……」
王子「私が…人魚が人間を殺していたことや船を沈めた事を怒って君に危害を加えるかもしれない…そう思わなかったのかい?」
人魚姫「王子はそんな事しないっしょ。それに、わたしは人魚だってことも船が沈んだ理由も王子に隠してたからさ…仮にされても文句言えないし…」
人魚姫「それに王子は喋れない私を信じてくれたし、なにもかも隠したままにするなんて嫌だったって事。王子だったら、例えこんなことがあっても人魚の事を受け入れてくれるって信じてたし」

738 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/05/31(日)23:28:05 ID:mx2
人魚姫「誤解っていっても人間を殺した人魚が絶対に悪いよ?でもいつかはきっと仲良く暮らせると思うわけ」
人魚姫「っていうか仲良く暮らすのはわたしの願い。そうなれば港町の復興も手伝えて王子の願いも叶う、これがもう一個のわたしの願い。人魚の説得は私がする、だから王子にも共存の為に手伝ってほしい、そう思って王子に教えたんだ」
王子「君の願い…そして私の目標の為なら、例え危険な目にあってもどう思われようと構わなかったというのかい?」
人魚姫「…それはちょっと違うかなー?王子に嫌われるのは絶対嫌だし、でも王子なら頭ごなしに怒ったり否定しないって信じてたしさ。ほら、実際にこうして話を聞いてくれてるじゃん?」ニコニコ
王子「……だとしても、決断には勇気を必要としただろう。実際、私も事故で友人を失っている……君が私にとって特別でなければ……どうしていたかわからない。それなのに君はそれを覚悟で真相を告白するほど、種族の共存を強く願っているんだね?」
人魚姫「そんな立派な感じじゃなくてさ、ただ欲張りなだけだよ。わたしには人魚の家族も友達も人間の友達も恋人もいる。だからどっちとも仲良くしたいだけって感じかな」ヘラヘラ
王子「……わかった、愛しい姫。約束しよう。すぐに結果は出ないだろう、茨の道になってしまうと思うが……私は君に協力する。人間が人魚と手を取り合う未来に向けて、出来る限りの助力をしよう」
人魚姫「本当!?王子ならそう言ってくれるって信じてた!」ギュー
王子「や、やめたまえ抱きつくのは…!」ジタバタ
人魚姫「誰も見てないなら良いって昨日言ってたじゃん?忘れちゃったとか言っても納得しないかんね?」クスクス
王子「むむぅ……だが、これでもう君が婚姻をあきらめる理由はないはずだよ?」
人魚姫「……」

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彡(゚)(゚)「お、居酒屋やんけ。入ったろ」