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キモオタ「我輩がおとぎ話の世界に行くですとwww」ティンカーベル「そう」 人魚姫編

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Part14
584 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/05/03(日)23:17:30 ID:m3j
一時間後 海岸
ザザーン ザザーン
人魚姫『担いでくれてサンキューね。ここでいいよ、降ろしてくれる?』
赤鬼「おう、わかった。執事魚が言うにはここにお前の姉を連れてくるという事だったが…」トサッ
ザバザバ
執事魚「あぁ、人魚姫様…!お待ちしてました!お姉さまは大変心配なさって…なんと変わり果てたお姿に…!」
人魚姫『っていうかさ、姉ちゃんは?あたしは姉ちゃんと話すためにここにきたんだけど?』
ザバァ
髪の短い人魚「…本当に人間の姿になってしまったのね、人魚姫」フラフラ
人魚姫『姉ちゃん…!何それ…そんなにアザだらけで…全身キズだらけで…それでここまで泳いできたの!?それにその髪……!』
髪の短い人魚「魔女の言うとおりなのね。あなたは声を差し出した。、私にはあなたの言葉が届かない。なんて事を…そこまでして人間になりたかったなんて……でも、今の私にはあなたを責める事なんて出来ないわ」
人魚姫『赤鬼!お願い…!』バッ
赤鬼「ああ。なぁ、聞かせてくれるか?お前の執事の話だと人魚の王が町を襲うつもりらしいが…」
髪の短い人魚「あなたには人魚姫の言葉が届くのね……いいわ、答えましょう。お父様は夜明けにこの海岸から陸へと上がり町を襲う計画を立てています」

585 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/05/03(日)23:23:20 ID:m3j
髪の短い人魚「目的は…人魚姫の奪還」
赤鬼「人魚の王は人魚姫の声を手に入れたんだったな、あとはこいつが居れば……」
人魚姫『あたしという兵器が取り戻せるってことね。あたしを連れ戻すために関係ない人間まで攻撃するつもりとか……マジ最悪だよあの親父!』イライラ
髪の短い人魚「お父様ははっきりと口にされました…人魚姫は兵器であると。人魚姫は以前、お父様はディーヴァの事を兵器としてしか見ていないと言っていましたが、その通りだったのです」
髪の短い人魚「それなのに私はあなたを咎め…国民を守るという立派な使命の裏に隠されたお父様の真意に気が付けなかった…今更こんなことを言っても仕方ないけれど…」
人魚姫『本当だよ……もっと早くあいつの真意に気付けたら姉ちゃんはそんなキズだらけにならなくてもよかったんじゃん!人間を殺す事だって…!』
髪の短い人魚「どちらにしてもこのままではあなたはお父様に連れ戻される。そうすればもうお父様はあなたを自由にはしません、人魚に戻して尾ビレに重しを打ち込み、兵器として扱うと仰ってましたから…それはあまりに不憫です。ですから捕まる前に自ら戻るんです、海底へと」
赤鬼「尾ビレに重し…オイラ達で言うなら足枷をはめられるようなもんか。なんで実の娘にそんな事を……!」
人魚姫『あたしは戻らない……折角来てくれた姉ちゃんには悪いけど絶対に戻るつもりは……!』フルフル
髪の短い人魚「もしかしたら…人魚姫がきちんとお父様に謝れば、そこまでの罰は受けなくても良いかも知れません。そこで…これをあなたに受け取って欲しいの」カチャッ
人魚姫『なにこれ、短剣…?』

586 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/05/03(日)23:25:24 ID:m3j
髪の短い人魚「解魔の短剣。生物にかけられた魔法を解く事が出来る魔法具です」
人魚姫『ちょ、ちょっと待ってよ!これどうしたの!?こんなの王宮には無かった筈じゃん!もしかして姉ちゃんの髪が短いのって…!』
赤鬼「魔女に譲ってもらったんだな?お前の長かった髪の毛と引き替えに」
髪の短い人魚「察しがいいのね。この解魔の短剣は私の髪の毛と引き替えに魔女から手に入れたものです。私があなたに姉として出来ることはもうこれだけしかないのよ」
人魚姫『なんで!?子供の時言ってたじゃん!長くて綺麗な髪の毛は姉ちゃんの自慢だったんでしょ!?それを手放してまで…!』
髪の短い人魚「人魚姫、これであなたにかけられた魔法を……人間になる魔法を解きなさい。そして人魚に戻り、お父様に謝罪すれば多少の温情は頂けるはずです…」
赤鬼「待ってくれ、この短剣…使うには更に犠牲が必要なんじゃねぇか?」
髪の短い人魚「…解魔の短剣は魔力を分解する作用を血液に与える事で効果を表すと魔女が言っていました、ただしその血液は解魔の対象となる人物が強い想いを感じている者の血液であることが条件」
人魚姫『えっと…?ねぇ、赤鬼どーいう事?よくわかんないんだけど』
赤鬼「つまりだな……魔法を解くにはそいつにとって大切な奴の血液が必要って事だ、そうだろう?」
髪の短い人魚「その通り。人魚姫が人間になってまで想いを告げたいと思った王子ならその条件が満たせる。つまり、この短剣で王子を刺してその血を浴びれば人魚姫の魔法は解ける」
人魚姫『はっ……?あたしに王子を刺せって言うの!?その短剣で!?』

587 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/05/03(日)23:28:10 ID:m3j
髪の短い人魚「そうよ、人魚姫。きっと今の私の血液では効果はないでしょう…そこの彼や赤いずきんの娘でもあなたの魔法は解けるかもしれませんが、王子を殺したとなれば先の国家船襲撃妨害への謝罪にもなるでしょう」
髪の短い人魚「王子を解魔の短剣で刺し殺せば、あなたは人魚に戻れる上にお父様へ誠意の伝わる謝罪が出来る…だから」
人魚姫『……姉ちゃん、私のために髪の毛犠牲にしてくれたのは嬉しいよ。でも、あたしには無理。王子を刺し殺すなんて、マジで無理だよ。できない』フルフル
髪の短い人魚「無理だと言ってるの…?どうして?このままだとお父様はこの町を襲撃し、王子も命を失う!だったらその前にあなたが王子を殺すんです、それであなたの受ける罰が少しでも軽くなるなら…」
人魚姫『自分が酷い目に遭うのが嫌だからって、大好きな人を傷つけたりしたら…死ぬまで後悔するっしょ。大好きなアクセ作りもきっとつまらなくなるし、人魚と人間が共存するっていう夢はもう絶対に叶わない。それってもう死んでるのと一緒じゃん』
赤鬼「……」
髪の短い人魚「……あなたの声は私には届かないけれど、わかるわ。王子を殺すつもりは一切無いのね。例え自分が酷い目にあっても」
人魚姫『そのつもりもないよ、あたしは赤鬼達と一緒にあいつの邪魔をする、町は襲わせない』
赤鬼「そういう事だ。お前等の軍が攻めてきても、オイラ達が食い止める」
髪の短い人魚「……私には妹を救うことすら出来ないのね」
人魚姫『姉ちゃん……』
髪の短い人魚「あなたの気持ちは分かったわ……先ほども言いましたが、夜明け前にこの海岸からお父様は侵攻を開始します。連れ立つ兵士は多くはありません、20人ほどでしょうか。人間に攻撃するための兵ではありませんから」
髪の短い人魚「その代わり、私も同行します。人間を眠らせる……兵器として」

588 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/05/03(日)23:31:14 ID:m3j
人魚姫『ちょ、なんで!?もうあいつがディーヴァを兵器としてしか見てないって解ったじゃん!なんでまだ姉ちゃんがでるの?訳わかんない!』
髪の短い人魚「理解できないという顔ね…確かにお父様はディーヴァを兵器扱いしています、けれど私が歌うことをやめたら人魚の民が辛い思いをすることもあるでしょう。襲撃に失敗して今まで以上に人魚に被害が及んだら…?」
髪の短い人魚「そう考えたら私は歌うしかない。例えお父様に兵器だと思われていても、私が歌で国民を守れることに代わりないのよ」
赤鬼「……だったら、なぜだ?お前はあくまで海底の国側に味方する。なら何故襲撃時刻や規模を人魚姫に教えたんだ?」
髪の短い人魚「どうやら私の説得では妹を救うことは出来そうにないの。ならもう妹を助ける方法はあなた達がお父様を倒すしかない、私に出来る手助けはこれだけ」
人魚姫『……』
髪の短い人魚「けれど私はお父様側の人魚。あなたがお父様を敵に回すのであれば次に会うときはもう…私はあなたのお姉ちゃんでは居られない」
髪の短い人魚「あなたの大切な人を襲う、憎むべき人魚になってしまう」


589 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/05/03(日)23:33:34 ID:m3j
人魚姫『姉ちゃん…!姉ちゃんはいつも説教ばっかりだからウザく思う事もあったけど、あたしは姉ちゃんの事…!』
髪の短い人魚「無駄になってしまったけれど、その短剣は持っていなさい…私はもう戻ります。襲撃前にあなたに会ったなどとお父様に知れたら大変ですからね」スッ
髪の短い人魚「鬼…でしたね、私の妹を助けられるのはもうあなた達しか居ないの。こんなことが言えた立場ではないけれど、頼むわね」
赤鬼「…わかった、こいつを不幸にはしない。絶対にな」
髪の短い人魚「お願いね。それじゃあね人魚姫、さようなら」
ザブンッ
人魚姫『……姉ちゃん』ジワッ

590 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/05/03(日)23:35:41 ID:m3j
人魚姫『……』ポケーッ
鬼神『ナニヲ腑抜ケテイルノダ、アノ娘……猶予ハナイノダ、人魚共ヲ迎エ撃ツノダロウ?ソノ根回シヲスベキダ』
赤鬼「まぁ、しばらくそっとしてやろう」
鬼神『人間ナドニナルカラコノヨウナ結果トナルノダ、自業自得トイウモノダ』
赤鬼「そんな言い方をするなよ。しかしこの海岸から襲撃してくるってのは好都合だな、この道を守りきれば他に道はないから町へは進めない。20人なら赤ずきんも居ればなんとかなるか…?」
鬼神『ソノ程度、我ナラバヒトヒネリヨ。ドウダ?ココハ我二任セテミルトイウノハ?』ニヤッ
赤鬼「そうそうお前の力を借りれねぇよ、身体を貸せば貸すほどオイラはお前を制御しきれなくなるんだろう?」
鬼神『ソノトウリダ、ソレガ狙イダカラナ。ダガ…勝テルカ?マタ瀕死ノ貴様ノシリヌグイヲスルノハ断ルゾ』
赤鬼「魔法で人間になったとしても特別強くなるわけでもないだろう。むしろ問題は歌だな…」
鬼神『人間共ヲ眠ラセルトイウ歌カ』
赤鬼「一人二人兵士を取り逃がしても町には警備隊がいる。大きな問題にはならないだろう、だが歌を歌われて人間を眠らされたら八方塞がりだ。人魚姫は今声を失っているんだ桃太郎達の時のようにはいかない」
赤鬼「何か対策を考えないといけねぇが…どうしたもんか。歌への対策もだが人魚姫のこともある、考えることが多すぎるな……だがやるしかねぇ…!」
鬼神『……』

591 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/05/03(日)23:38:18 ID:m3j
海底 珊瑚で出来た王宮
執事魚「人魚姫様……どうなりますかね、あの鬼は本当に国王様に勝てるつもりでしょうか?」
髪の短い人魚「どうでしょうか…ですが私にはそれを祈るしかありません……」
執事魚「だ、大丈夫ですよ!きっと人魚姫様は大丈夫ですよ!だから元気出してください姫様」
髪の短い人魚「…それならいいんですが」
スッ
人魚王「…なるほどな、聞かせてもらった。襲撃前夜に何処に出掛けているかと思えば…」ギロリ
髪の短い人魚「お、お父様…!」
執事魚「ちちち、違うんです!これはその…」
ガシッ
人魚王「アレに作戦の内容を漏らしたのだな…?余計なことを…!兵器などに感情を持つからこんな事になるのだ」ブンッ
ゴガァ
髪の短い人魚「うぐっ……!」ゲホゲホ
人魚王「動きを拘束するのは貴様が先だったな。従順な兵器だからと自由を与えたのが間違いだったわ」ガシッ
髪の短い人魚「は、離して…くださ…」ガクッ
執事魚「ひ、姫様!」
人魚王「まぁいい、魔女が言うには鬼とかいう種族と銃を使う娘が居るんだったな…だが私には魔女から手に入れた薬がある、鬼とかいう種族がどんなに怪力であろうと遅るるにたりんわ」クックック

592 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/05/03(日)23:40:41 ID:m3j
今日はここまで 連休中にもうちょい進めたい(願望)
次回 vs人魚王
人魚姫編 次回に続きます

593 :名無しさん@おーぷん :2015/05/04(月)01:03:54 ID:HsA
1さん乙です
更新楽しみにまってます!

594 :名無しさん@おーぷん :2015/05/04(月)09:07:28 ID:eM0
>>1さん乙です!
更新ありがとうございます…
頑固な人魚王をどうやって改心させるのか楽しみです

595 :名無しさん@おーぷん :2015/05/04(月)12:57:11 ID:AWD
乙、何気に姉も不憫だよな
赤ずきんはなんか掴んだみたいだし王の貰った薬とやらも気になるな
>>594
こいつは改心とかいいから捻り潰して欲しいわ、個人的に

602 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/05/06(水)22:34:17 ID:leL
数時間後 海岸
ザザーン ザザーン
人魚姫『……スゥスゥ』
鬼神『何故コノ娘ハ気ヲ抜イテ眠ッテイルノダ……?数時間後ニハ海底カラ襲撃者ガヤッテクルトイウノニ、油断シテイルトシカ思エヌ』フンッ
赤鬼「人魚姫は足で歩くことに馴れていないからな、疲れているんだろう。夜明けまでしばらく時間がある、そのときに起こせばいいだろう」
鬼神『……フンッ、コノ娘ハ戦エヌノダゾ?足手マトイニナル前ニ城ヘオイテクレバヨイノダ』
赤鬼「そうもいかねぇよ、王子に人魚姫を匿ってくれなんて言えば海底から人魚が襲撃に来ることも言わないといけないだろ?人魚姫はそれを望んでない、種族間の関係が悪化すると思ってるからな」
赤鬼「どちらにしろ、もう夜明けまで数時間。赤ずきんはまだ来ないし海底の奴らをオイラが一人で退けねぇとなぁ…」
鬼神『ディーヴァトイウ輩ガ操ル奇怪ナ歌…対策ハアルノダロウナ?ソノ輩ヲドウニカセネバ貴様ハ不利ニナルノダゾ』
赤鬼「考えてはみたんだがなぁ。歌われる前に他の兵士を全部倒す……しかねぇかな?」
鬼神『……戯レガ過ギルゾ小僧、ソレハ対策トハ呼ベヌ代物ダ』

603 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/05/06(水)22:36:27 ID:leL
赤鬼「いや、だが実際他に対策が思いつかねぇ。住人全員に耳栓を配るわけにもいかねぇんだ、歌われる前に先手を打ってとにかく歌わせない。それが最上の方法に見えるんだがなぁ…」
鬼神『一人デソノ作戦ヲ実行スルノハアマリニ無謀、他ノ策ヲ練ルベキダ』
赤鬼「他の策って言ってもな……この歌声のせいでキモオタ達を頼ることも出来ねぇし、赤ずきんが間に合ったとしても結局はこの歌をどうにかしねぇと……」
鬼神『単純ナコトニ思エルガナ…?オソラクアレモ呪術ノ一種ナノダ……コノ世界デハ魔法ト呼ブノダッタカ?ドチラニシロ本質ハ同ジ』
赤鬼「魔法…確かにあの不思議な能力はまるで魔法みたいだが、歌うことで効果を発揮する魔法なんてあるのか?」
鬼神『呪術・魔法ト言エド…ソノ手法ハ千差万別。言霊ヲ媒介トスル呪術、術札ヲ媒介トスル呪術、アノ赤イ頭巾ノ娘ノヨウニ物質ヲ媒介トスル呪術…呪術ヲ扱ウ方法ニモイクツカアル』
鬼神『ディーヴァトカイウ人魚ノ場合、呪術ヲ行使スル手段ガ歌声ダトイウダケ。本質ガ同ジナラバ妨害スル方法モ……』
赤鬼「……ちょ、ちょっと待ってくれ」
鬼神『ドウシタ青二才、我ガ呪術ニ詳シイ事ガ不思議カ?』
赤鬼「ああ、お前は腕力一辺倒だと思ってたんだが」
鬼神『不思議ナ事デハアルマイ。我ハ呪術ニヨッテ鬼ノ憎悪スル感情ヲ源ニ生ミ出サレタノダカラナ。トハイエ我ガ呪術ヲ行使デキルワケデハナイ、モシ可能ナラバ人間ノ町ナド早々ニ焼キ払ッテオルワ』クックック

604 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/05/06(水)22:38:40 ID:leL
赤鬼「確かにそうか…だが、なんでオイラにそんなことを教えてくれるんだ?オイラは確かに助かるがお前にとって人魚の襲撃は人間を苦しめるいい機会だ…むしろ向こうに味方するんじゃないかと思ったが」
鬼神『貴様ノ死ハ我ノ死ダト何度モ言ッテイルダロウ。貴様ガ人間ナドニ肩入レスルカラ我ハ苦労シテイルノダ…コノ愚カ者メ。ダガシカシ…別ノ理由モアル』
赤鬼「……別の理由?」
鬼神『……コノ人魚ノ娘ガドウナロウト我ノ知ッタ事デハナイ。ダガ人魚ノ王ガコノ娘ヲ兵器同然ノ扱イヲスルトイウノハ…少々気二入ラン』
赤鬼「おおっ、つまり人魚姫が可哀想だって事だな?なんだお前にもそんな感情があるんだな!」ガハハ
鬼神『都合ノ良イ解釈ヲスルナ、ダカラ貴様ハ青二才ナノダ』フンッ
赤鬼「いや、だってお前…人魚の王があいつを兵器扱いするのが気に入らないんだろ?」
鬼神『……人間共ニ捕ラエラレタ鬼ハ角ヲモガレタリ見世物二サレ虐ゲラレル、ソレハ弱イ女子供ノ鬼ノ場合ダ。ダガ成人シタ大人ノ鬼モ捕ラエラレル事ハアッタ。無論、数ハ多クナカッタガ』
赤鬼「……いや、だが大人の鬼なんてそうそう捕まるものなのか?」
鬼神『ソコガ人間ノ卑劣ナ所ヨ。貴様ハ赤イ頭巾ノ娘ガ敵二捕ラエラレ…ソノ命ヲ救イタケレバ人間ノ集落ヲ潰セト言イワレタラドウスル?断レバ頭巾ノ娘ハ殺サレル』
赤鬼「それは……どうするんだろうな、オイラは…想像も出来ねぇ」
鬼神『カツテソノヨウナ選択ヲ強イラレタ鬼モイタノダ。女子供ヲ人質ニトラレ破壊ヲ命ジラレル…人間ノ中ニハ鬼ヲ破壊ノ道具トシテ扱ウ輩モ居タノダ』
赤鬼「……」

605 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/05/06(水)22:40:54 ID:leL
鬼神『強靱ナ肉体、驚異的ナ腕力。人間ヲ自在ニ操ル歌。優レタ能力ヲ持ツ者ヲ道具ノヨウニ扱ウ輩ハ種族問ワズ存在スル。我ヲ構成スル憎悪ニハソノヨウナ扱イヲ受ケタ者ノ無念モ含マレル』
鬼神『ソノセイカ人魚ノ王ノ行動ニハ虫酸ガ走ルノダ』フンッ
赤鬼「なぁ鬼神、お前は…鬼の人間に対する憎悪から生み出されたんだよな?」
鬼神『何ヲ今更、ソウダト言ッタダロウ。コノ腹ノ底カラ湧キ上ガル憎シミハ人間共ニ虐ゲラレタ無数ノ鬼達ノ憎悪。コノ憎シミヲ払ウニハ人間共ヲ駆逐スルホカナイノダ…!』
赤鬼「…お前が大勢の鬼の憎しみを抱えているってぇなら、同じようにその鬼達が憎しみを抱く原因となった虐げられた辛い記憶や苦しみも背負ってるんじゃねぇのか?」
鬼神『……』
赤鬼「…そうなんだろ?お前は憎悪にかられて人間を駆逐するなんて口にしているが本当は根っからの悪なんかじゃないんだろう…?」
鬼神『……貴様ノ都合ノイイヨウニ物事ヲ解釈スル癖、死ヲ招クゾ』
赤鬼「……」
鬼神『貴様ノ言ウ様ニ、我ハ数々ノ憎悪ノ感情ヲ抱エ、ソレト同様ニ無念ノ想イヤ辛辣ナ過去ノ記憶モ抱エテイル』
鬼神『ダガソレハ人間共ヲ駆逐スルタメノ糧ニスギヌ。貴様ガ期待シテイルヨウナ、我ヲ善ナル鬼ニヘト導ク為ノ代物デハナイ。我ハ復讐ニ利用デキルナラバ悪鬼モ殺ス、貴様ノ肉体モ奪ウ。善ナル鬼?フンッ、冗談デハナイワ』
赤鬼「お前がそう言うのなら、オイラは無理にお前を変えようとはしねぇが……」
鬼神『当然ダ、我ハ神ナル鬼…鬼神ダ。青二才ノ講釈デ易々ト目的ヲ見失ウ我デハナイ』

606 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/05/06(水)22:42:45 ID:leL
赤鬼「でもオイラも諦めないからな」
鬼神『……ムッ?』
赤鬼「決めたぞ。お前がオイラの身体を乗っ取って人間を殺すのを諦めて無いように、オイラもお前が人間を憎しみ続けるのを止める。今は無理でも諦めねぇぞ」
鬼神『馬鹿ガ、我ハ憎悪ノ塊。貴様ガ止メヨウトシテイルノハ無数ノ鬼ノ憎悪。思イ上ガルノモ大概ニセヨ』
赤鬼「思い上がっちゃいねぇさ。オイラの夢は全ての鬼と人間の共存だ、その道を変わらず突き進むだけだ」
鬼神『愚カナ、ソノ鬼ニ我モ含ンデイルトデモ言ウツモリカ?』
赤鬼「そうだ、鬼神だろうが鬼は鬼。何もおかしいことはないだろ?」
鬼神『ガッハッハッハ!愚ノ極ミ!アマリニ無謀!貴様、トンダ青二才ダト思ッテイタガ……ドウヤラ真ノ大馬鹿者ヨ!』グワハハハ
赤鬼「オイラはそうは思わねぇけどな?お前にも憎悪意外の感情があるってわかったんだ、だったらもうオイラにとっちゃお前は普通の鬼と大差ないさ」
鬼神『…舐メラレタモノヨ。ダガ貴様ハ人魚ノ娘ノ行ク末ニモ悩ンデイタダロウ。ソノ答モ出テ無イトイウノニ…自ラヤルベキコトヲ増ヤシ、己ノ首ヲ締メテドウスルノダ』クックック

607 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/05/06(水)22:47:09 ID:leL
赤鬼「それなんだが……少し気がついたことがある」
鬼神『ホウ…?コノ短時間デカ?クックック、サゾカシ立派ナ浅知恵ナノデアロウナ?言ッテミルガイイ』クックック
赤鬼「お前は言っていたよな、死ぬってのがどういう事か分からないと人魚姫を幸せには出来ないって」
鬼神『ソウダ、デハ理解出来タノカ?死トハナンナノカ』
赤鬼「人魚姫は姉に言っていた、自分が酷い目に遭うのが嫌で王子を傷つけたりしたら死ぬまで後悔する。何をしてもその後悔を背負うから、そんな人生は死んだことと同じだってな」
赤鬼「鬼神、お前が言いたいのは…この事だろ?消えない後悔を背負えば生きていても死んでいる事と同じ。だから逆に例え死んでも消えたとしても…後悔を残さないこと、無念を残さないことこそが大切だって、それがお前の考えなんだろう?」
鬼神『答エル義理ナド無イガ……アエテ教エテヤルナラバ、ソレデハ不完全ダナ』
鬼神『生キテイク上デ後悔シナイ者ナド存在シナイ…ダガ命尽キル時、コノ世ニ未練ヤ無念ヲ残サヌ事ハ可能ダ』
鬼神『具体的ニ言ウナラバ生キタ証トデモ言オウカ。命ヲ失ワヌ生物ハ存在シナイ、ダガ…死シテ尚、生キ続ケルモノガアル』
鬼神『強キ意志。アルイハ強キ想イ。ソレハ肉体ガ朽チヨウトモ消エルコトハナイ…云ワバ生キタ証』
鬼神『貴様デモ理解出来ルヨウニ言ウナラバ…マッチヲ売ル娘ガ良イ例ダ。アノ娘ハ子供達の幸セヲ願ッタガ、ソレヲ叶エラレズ命ヲ失ッタ。シカシ死シテ尚人間共ニ影響ヲ与エ…現実世界ノ人間共ノ精神ヲ育ンデイルトイウデハナイガ』
鬼神『死シテモソノ者ノ強キ想イハ生キ続ケテイルノダ。生キタ証ガ残リ続ケル、コレコソガ真ノ幸セトイウモノデアロウ』

609 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/05/06(水)22:49:04 ID:leL
鬼神『モットモ我ハ人間ヲ憎悪スル鬼神。マッチヲ売ル娘ノ想イナド興味ハナイガナ。ダガ貴様デモ理解ハ出来タデアロウ?』
赤鬼「キモオタ達が選択した答えと同じ、それがお前の考えって事か……」
鬼神『アノ豚ト同類ノヨウナイイカタハ不愉快ダガ……ソウダ。ソシテ人間共ニ殺サレタ鬼モ様々ナ目標ヤ夢ヲ持ッテイタ、ダガ志半バデ殺サレ…ソノ意思ヤ想イハ残ルコトナク命尽キタ』
鬼神『生キタ証サエ残ラヌ、残ルハ憎悪ノミ。コノヨウナ不幸ナ事ガアリエルカ?ダカラコソ我ハソノ無念ヲ晴ラスベク人間共ヲ駆逐スルノダ』
赤鬼「うーむ……そういわれちまうと、お前の行動も正しいのか……?いや、しかし無関係の人間を巻き込むのはまた別の問題だしなぁ…。いや、とにかく聞かせて貰えて助かった。ありがとうな、鬼神」ガハハ
鬼神『フンッ……我ハ人魚ノ王ガ気ニ食ワンカラ助言シタダケノコト…ソレニ貴様ニ恩ヲ売ッテオクノモ悪クナイト思ッタダケダ。我ガ善意デ貴様ニ協シテイルナドト思ウナ』フンッ
赤鬼「だが、オイラが人魚姫に何をしてやれるかはわかったようなきがするぞ、お前のおかげだな」ガハハ
鬼神『フンッ……精々、海底ノ輩ニ殺サレヌ様……ムッ?』
赤鬼「どうした?」
鬼神『ドウヤラ無駄話ハココマデノヨウダナ……』
ザバザバザバザバー
赤鬼「沖から複数の人影…!もう襲撃に来やがったのか!?まだ夜明けまで随分とあるぞ!?」バッ

610 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/05/06(水)22:51:12 ID:leL
鬼神『海底デ何カ起キタノカモ知レヌガ……最早、覚悟ヲ決メルシカアルマイ』
赤鬼「おい!人魚姫、起きろ!あいつらが攻めて来やがったぞ!」ユサユサ
人魚姫『もう…?ちょっと早くない?まだ夜明けじゃないじゃん…!』クシクシ
ザバザバザバー
赤鬼「だがそうも言ってられねぇ!赤ずきんも間に合わなかった、ここはオイラが一人で相手する!」
人魚姫『わかった…!邪魔になんないようにするから、ゴメンけどお願い!あいつ等を町に近づけないで!』
ザバザバ
赤鬼「おう、じゃあ…気合い入れてやらねぇとな…!」ググッ
ザバザバ ザバー
人魚王「……やれやれ、ようやく海岸までたどり着いたか。この足は泳ぐには随分と不便な代物だ」フウー
赤鬼「お前が…人魚の王、人魚王だな…?」
人魚王「如何にも。貴様はアレの仲間だな?魔女が言っていた……鬼とか言う種族の」
赤鬼「させねぇぞ…!人魚姫を連れて行かせはしねぇ!お前等の襲撃はオイラが食い止めてやる!」ググッ
人魚王「鬼というのは強靱な肉体を持つ種族だったな……だが貴様の対策も万全だ、恐れることなど無い。あぁ、だが襲撃というのは少し違うな……」
人魚王「これは我等による一方的な侵略だ。見せてみろ、鬼という種族がどれほどの実力を持つのか」


612 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/05/06(水)22:55:02 ID:leL
人魚王「さぁ配置に付け我が兵達よ!この鬼にはディーヴァの歌声は通用しないらしい。貴様等の仕事はあの鬼を捕らえることだ」
ザバァザバァザバァ
人魚兵達「「「了解しました、国王様」」」ビシッ
人魚姫『人魚の兵士…!あいつもだけどみんな人間になってる…!あたしを連れ戻すためだからって……あの魔女にどれだけの対価支払ったんだっての…!』
鬼神『ドウヤラ、兵ノ数ハ事前ノ情報通リ二十前後。武器ハ主ニ槍トイウワケカ…』
赤鬼「金棒だと少し不利な間合いだ……迂闊に近寄れないな」
人魚王「どうした?攻めてこないのか?貴様の武器は近接戦では滅法強いらしいが、中距離からの攻撃にはどうだ?それもこの人数相手だ」
鬼神『赤鬼、貴様ノ情報ハ筒抜ケノヨウダゾ。確カニ槍相手ダト分ガ悪イ』
赤鬼「だがいつまでもこうしている訳にもいかねぇぞ……」
人魚王「なるほど、外見の豪快さと違い随分と冷静なようだな。貴様のようなタイプは挑発にも応じなそうだ……おい、アレを連れてこい」
人魚兵「ハッ!承知しました!」スッ
人魚王「よく聞け。貴様の自分勝手な行動で我々は大迷惑だ、王宮は前例の無いほどの騒ぎとなり……魔女へ支払う対価のせいで宝物庫は空、これらは私の望んだ結果ではない」
人魚姫『…うっさい!勝手なのはあんたの方っしょ!あたしは戻んないし歌わないかんね!』イライラ
人魚王「反省している様子は無しか。何やら吠えている様だが、聞こえぬ。……だが、すぐに貴様は勝手な行動を悔いることになる」
人魚王「おい、私の兵器をここに寄越せ」クイッ
ドサッ
髪の短い人魚「……」ゼェゼェ

613 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/05/06(水)22:58:15 ID:leL
人魚王「見ての通り尾ビレには鋼を打ち込んだ、一人では泳ぐことすらままならぬ。両腕には鎖だ、首に鎖などを巻いて万一歌えぬ等ということになればそれこそこコレの価値は無くなるからな」クックック
人魚姫『ひどすぎっしょ……!姉ちゃん!!今助けるかんね!』ダッ
赤鬼「待て!近づくな!お前まで捕まっちまうぞ…!」グイッ
人魚姫『だって!赤鬼にも見えるっしょ!?姉ちゃんの体見てよ!酷いなんてもんじゃないじゃん!』ギリッ
人魚王「お前を奪還する上で…これには余計な感情が多すぎる。これは当然の措置だ、兵器の暴走を許すなどあってはならぬからな」
人魚姫『ふざっけんな!姉ちゃんを離せっての!』ギリッ
人魚王「コレはよりにもよって作戦を貴様等に漏らした。予定を早めたのもそのせいだ……コレのおかげで計画に狂いが生じたのだ、それを私は望んでいない」
人魚王「全く、嘆かわしい…姉妹揃って私の役に立てぬどころか邪魔をするのだからな!」シュッ
ゴッ
髪の短い人魚「……ゲホッ、ゼェゼェ……」ゲホゲホ
人魚姫『姉ちゃん!』
赤鬼「やめろ!なんでそこまでする必要があるんだ!そいつはお前の娘だろう!」
人魚王「違うな、これは私の所有する兵器だ。貴様の隣に居るそれと同様にな」
鬼神『……』フンッ
赤鬼「どういう神経してやがんだ…!」ギリッ
人魚姫「お願い…赤鬼!あいつを…あいつを殴ってよ!じゃなきゃあたしが殴る…!そうでもしなきゃ、姉ちゃんが…かわいそうっしょ……」

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