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キモオタ「我輩がおとぎ話の世界に行くですとwww」ティンカーベル「そう」
Part186


655 :◆oBwZbn5S8kKC :2017/05/08(月)01:04:31 ID:Kna
ハートの女王の城 宝物室
ドロシー「キモオタさん、どうかしましたか?」ヒョコッ
キモオタ「ドロシー殿www助けてくだされwww我輩、なんだか妙な魔法具に絡まれてしまって困っているのでござるよwww」コポォ
ドロシー「妙な魔法具…?それって一体、何の事なんですk」
†鮮血に染まりし深紅の鍵†「『ドロシー』という名を聞いてまさかとは思ったが…やはりお前だったか」
ドロシー「あ、あなたは【青ひげ】の…!」ビクッ
†鮮血に染まりし深紅の鍵†「覚えていたか、如何にも俺は【青ひげ】の世界で生まれた魔法の鍵だ。しかし驚いたな、まさかこの城でお前と邂逅する事になるとは……今日は随分と神が粋な真似をする日だ」
ドロシー「あっ、あの、その、えっと……」オロオロ
キモオタ「ドロシー殿、あの鍵殿と知り合いだったでござるか。友達同士…にはとても見えないでござるけど、一体どのような関係なのか聞いてもいいですかな?」
ドロシー「は、はい…。あの、その、私は……あの鍵さんの仇、なんです」
キモオタ「仇という事は、お主がまだアリス殿の元に居た頃の…?」
ドロシー「はい…。アリスが魔法具を集めていた頃、私は魔法の鍵さんを奪う為に所有者だった青ひげさんとその奥さんを……殺したんです」
キモオタ「そうだったのでござるか…。いやはや、言いにくい事を言わせて申し訳なかったでござる」
ドロシー「いえ…受け入れなきゃいけない事だから、大丈夫です。それに、私が落ち込んでいいことじゃ…ないです」
ドロシー「でも鍵さんは御主人さまを殺した私の事を絶対に恨んでます…。許してもらえなくて当然ですけど、なんとか償いをしなきゃ…。わ、私…キチンと謝ってきます…!」

656 :◆oBwZbn5S8kKC :2017/05/08(月)01:07:38 ID:Kna
ドロシー「あ、あの…魔法の鍵さん…!」オドオド
†鮮血に染まりし深紅の鍵†「何の用だ?言っておくが、俺を倒そうなどという夢物語は早々に捨てておけ。お前達二人が束になって掛ってこようと俺の漆黒の魔力の前には無力。瞬く間に深紅の鮮血がお前達を包むだろう」
キモオタ「深紅なのか漆黒なのかどちらかにしていただきたいwww」
ドロシー「あ、あの…!私は、私達は鍵さんに攻撃しようなんて思ってないです!わ、私はただ鍵さんに謝りたくて……」オドオド
†鮮血に染まりし深紅の鍵†「謝るだと…?お前が、俺にか?」
ドロシー「うぅ……ですよね、わかってます…。謝ったところで許される事じゃないですもんね…。で、でも聞いて欲しいんです。私の気持ちを……」
†鮮血に染まりし深紅の鍵†「待て、お前は何か考え違いをしているようだ。俺は本当に身に覚えが無い。俺はお前に何かされたのか?謝罪が必要になるような事を」
キモオタ「ドロシー殿?深紅の鍵殿、どうやら煽りとか嫌味を言っているわけではないようでござるよ?本当に身に覚えが無いのでは?」
ドロシー「そ、そんなはずは…。だ、だって私は鍵さんのご主人様だった青ひげさんを殺したんですよ?【青ひげ】の世界が消えちゃったのだって私のせいで……」
†鮮血に染まりし深紅の鍵†「まさかとは思うが……お前が青ひげを殺した事を俺が恨んでいるとでも思っているのか?」
ドロシー「は、はい…。だって御主人さまを殺されたんですから私の事を恨むのは当然で……」
†鮮血に染まりし深紅の鍵†「クックックッ…!幾多の世界を破壊し、数多の生命を奪おうと所詮は子供…!その様な甘い考えでよく今まで生きてこられたものだな」
ドロシー「えっ…?」
†鮮血に染まりし深紅の鍵†「所詮この世は弱肉強食。青ひげが死んだのは奴が弱者であり、お前が強者だったからだ。弱き者には敗北を、強き者には勝利を…それが自然の摂理、万物に定められた運命≪ディスティニー≫」
†鮮血に染まりし深紅の鍵†「そして勝者には絶対的な正義が与えられる。故にお前に一切の非は無い、非があるとすれば弱者だった青ひげだ。奴が死んだのは奴自身の責任なのだから」

657 :◆oBwZbn5S8kKC :2017/05/08(月)01:11:08 ID:Kna
†鮮血に染まりし深紅の鍵†「故に、勝者であるお前が敗者の事など気にする事は無いのだ。むしろお前がやっている事は敗者に対する冒涜だ、勝者は堂々とするべきだ」
ドロシー「えっ…?キモオタさん、そうなんですか…?」
キモオタ「ちょwww我輩に振られてもwwwとりあえず深紅の鍵殿は気にしていないようでござるし結果オーライではwww」
†鮮血に染まりし深紅の鍵†「俺は冷酷な男≪クールガイ≫でな、かつて共に過ごした仲だからと敗者に同情するほどお人好しじゃあないのさ」
キモオタ「冷酷な輩は自分で自分の事を冷酷とか言わないでござるけどねwww」コポォ
†鮮血に染まりし深紅の鍵†「フッ…なんとでも言え。とにかく、だ…俺は奴の死に関して特別な感情など抱いていないと言う事だ。理解したか、ドロシー?」
ドロシー「は、はい…」
†鮮血に染まりし深紅の鍵†「まぁいいだろう。そんな事よりもお前達は何故この宝物室を訪れたんだ?……あぁ、言わなくていい。俺がここでお前達と邂逅した事はお互いの魂が導きあった結果……すなわち運命≪ディスティニー≫……そうだろう?」
キモオタ「お主はディスティニー言いたいだけでござろうwww」コポォ
ドロシー「あっ…あの、キモオタさん。ルイスさんの部屋の鍵をあけるって話ですけど…魔法の鍵さんにお願いするっていうのはどうでしょうか?」
キモオタ「うーむwwwぶっちゃけこれ以上関わりたくないと我輩の魂が叫んでいるのでござるけどwww」コポォ
†鮮血に染まりし深紅の鍵†「魂の叫び…か。それは深淵の底より世界に響き渡る賛歌の旋律≪メロディ≫…。だが如何なる存在も、人生という五線譜に刻まれた運命≪ディスティニー≫に抗う事はーー」
キモオタ「ほらほらほらwwwもうこの感じ嫌なんでござるよwww一刻も早く実家に帰って中学の頃のノートを焼き払いたいwww」コポォ

658 :◆oBwZbn5S8kKC :2017/05/08(月)01:14:30 ID:Kna
ドロシー「で、でも他に方法も無いですから…。それに魔法の鍵さん、きっと悪い人じゃないですよ…?」
キモオタ「やれやれwwwそれも一理ありますしなwww気は進まないでござるが頼んでみるでござるよwww」コポォ
ドロシー「じゃ、じゃあ私が…。あ、あの、魔法の鍵さん…私達、実はあなたにお願いがあるんです」
†鮮血に染まりし深紅の鍵†「フッ…俺の優秀さを見込んでの依頼か。やはり俺が纏う漆黒の魔力は強大すぎて、その凄まじさを隠しきれないようだな」
ドロシー「え、えっと…?と、とにかくですね…私達、開けたい扉があるんですけど肝心の鍵が無いんです。あの、魔法の鍵さんなら……その扉開けたりとか、できませんか?」
†鮮血に染まりし深紅の鍵†「愚問だな。俺は魔力を宿した鍵だ、どんなに強固な扉であろうと複雑な錠前だろうと開ける事は容易い。世界中の全ての扉と錠前は俺の前では無力化する」
ドロシー「わっ…!すごいです!それなら少しだけ、私のお手伝いをしてくれませんか?」
†鮮血に染まりし深紅の鍵†「そうだな…それもまた一興か。だが、手を貸すかどうかはお前達次第だな」
ドロシー「私達次第…?どういうことですか?」
キモオタ「報酬を寄こせって事でござろうwwwなかなか足元を見てくる鍵殿でござるなwww」
†鮮血に染まりし深紅の鍵†「働きに応じた報酬を要求するのは当然の掟だ。【青ひげ】を知っているお前ならば当然わかるだろう、俺が最も欲するモノが何なのかを」
ドロシー「それはわかりますけど…。鍵さんが欲しているモノって……血液ですよね?」
†鮮血に染まりし深紅の鍵†「よく解っているじゃあないか。俺は血液を浴びる事が何よりの喜びだ、だがこの部屋に閉じ込められてからはそれも叶わない。俺は今、非常に血に飢えている…!さぁ、お前は俺にどれだけの血液を差し出す?」

659 :◆oBwZbn5S8kKC :2017/05/08(月)01:19:03 ID:Kna
ドロシー「うぅぅ…あの、血液以外じゃ駄目ですか…?」
†鮮血に染まりし深紅の鍵†「血液を差し出せないというのならばこの交渉は決裂だ」
ドロシー「そ、そんな…!」
†鮮血に染まりし深紅の鍵†「代償を払わず成果を手に入れようなど虫のいい話だ。お前が本当にその扉を開けたいのならば、どのような犠牲も厭わないはずだろう」
†鮮血に染まりし深紅の鍵†「だが血を差し出したくないというのならば、お前の信念はその程度のものという事。信念の無い願いに応じてやるほど、俺も暇ではないのでな。諦めて他の方法を探す事だ」
ドロシー「き、キモオタさぁん…助けてください……」ポロポロ
キモオタ「ちょwww泣かなくてもいいでござろうwwwとはいえ我輩も血液を差し出すのは勘弁でござるなぁwwwドロドロ血液でござるしwww」
†鮮血に染まりし深紅の鍵†「俺はどちらでも構わない。お前達が諦めるというのならばそれもまた一つの選択、それもまた一つの運命≪ディスティニー≫」
キモオタ「あーあwww残念でござるなぁwww我々に…もといドロシー殿に手を貸す事はお主にとってかなりのメリットなのでござるのになぁwwwあーもったいないもったいないwww」
†鮮血に染まりし深紅の鍵†「……どういう事だ?」
ドロシー「キモオタさん…?」
キモオタ「ドロシー殿、鍵殿を説得する為にちょっとだけお主のトラウマに触ってしまうでござるけど…かまわんでござるか?」
ドロシー「えっと…うん、それで鍵さんに協力してもらえるなら、大丈夫です…!」

660 :◆oBwZbn5S8kKC :2017/05/08(月)01:22:01 ID:Kna
キモオタ「深紅の鍵殿、お主の目の前に居るドロシー殿はどのような少女でござるかな?www」
†鮮血に染まりし深紅の鍵†「どうと言われてもな…内気で臆病な娘に見えるが?」
キモオタ「そうでござろうなwwwしっかしお主の記憶の中のドロシー殿はどうでござる?内気さも臆病さも無く、むしろ狂気に満ちているのではwww」コポォ
†鮮血に染まりし深紅の鍵「……実はそれは俺も気になっていた。かつて青ひげを殺したドロシーは相当好戦的で、頭のネジが数本はじけ飛んでいるような明るさがあったからな」
ドロシー「あ、頭のネジが…」ガーン
†鮮血に染まりし深紅の鍵†「かつてアリスと共闘していたが今は決別している、という話は聞いていたからな。改心しておとなしい性格にでもなったものだと思い込んでいたが…違うのか?」
キモオタ「実はでござるな……今お主の目の前に居るのが本来のドロシー殿の性格なのでござる」
†鮮血に染まりし深紅の鍵†「それならば俺がかつて見た、あの狂気に満ちたドロシーは何だと言うんだ?」
キモオタ「あの姿はアリス殿に飲まされた魔法薬によって生み出された……ドロシー殿の第二の人格でござる!」
†鮮血に染まりし深紅の鍵†「第二の人格……」ピクッ
キモオタ「悲しい事にアリス殿に目をつけられた内気少女のドロシー殿は彼女に薬を飲まされ、第二の人格を生み出されたでござる。そして本人が知らない間にドロシー殿は悪事に加担させられていたでござる!」
†鮮血に染まりし深紅の鍵†(内気な少女に植えつけられた狂気に満ちた第二人格…。無自覚のうちに利用される少女…)ピクッピクッ
キモオタ「そしてなんやかんやでアリスから逃れたドロシー殿は悩みに悩み、そして今までの罪を償う為にアリス殿に立ち向かおうとしているのでござる!」
†鮮血に染まりし深紅の鍵†(第二人格の存在に気が付き悩む少女…。呪われた運命≪ディスティニー≫に立ち向かう少女…)ピクピクッ

661 :◆oBwZbn5S8kKC :2017/05/08(月)01:25:39 ID:Kna
†鮮血に染まりし深紅の鍵†「……」
ドロシー「キモオタさん…?鍵さん黙っちゃいましたけど…いいんですか?」ヒソヒソ
キモオタ「問題ないですぞwwwそれよりドロシー殿、鍵殿にこう言ってみて欲しいでござる……ゴニョゴニョ」ヒソヒソ
†鮮血に染まりし深紅の鍵†「……」
†鮮血に染まりし深紅の鍵†(おいおいおい…第二人格とかマジか!カッコよすぎるだろ第二人格持ってるとか!しかも本来の性格と正反対の人格とかメチャクチャ燃えるじゃん!)
†鮮血に染まりし深紅の鍵†(しかも利用されているのに気が付けないうちに第二人格は罪を重ねていって…ようやく気がついたときには自分は極悪人のレッテルが張られているとか!)
†鮮血に染まりし深紅の鍵†(そりゃ滅茶苦茶悩んだだろうな、元々は内気な娘なんだし。でもそれに負けることなく今こうしてアリスに立ち向かおうとしてるとか……いいよ!すごくいい!)
†鮮血に染まりし深紅の鍵†(なんだその王道ながらも熱い展開は!ヤベェ…滅茶苦茶心惹かれる!ぶっちゃけ仲間に入りたい…カッコつけて血液よこせとか言わずに味方しときゃよかった…!でも今更掌返すのもなぁ…)
ドロシー「あの、鮮血に染まりし深紅の鍵さん…」
†鮮血に染まりし深紅の鍵†「お、おう…?」
ドロシー「キモオタさんが話した通り…私はアリスに第二人格を植えつけられて、悪事に加担させられました。その事に気がついてからはとてもとても悩んだんですけど……その時私の心の支えになってくれたのは、仲間たちでした」
ドロシー「信頼できる仲間が居たからこそ、私はアリスに立ち向かう勇気を得る事が出来たんです。だから…深紅の鍵さんも私に力を貸してくれませんか?アリスの手で止められた運命≪ディスティニー≫という名の歯車を再び動かす為に…!」キラキラ
†鮮血に染まりし深紅の鍵†(こいつ…!なんて真っすぐな目をしてやがる…!)
†鮮血に染まりし深紅の鍵†「フッ……お前に俺が纏う漆黒の魔力を使うこなせるとは到底思えんが。だが、いいだろう…!」
†鮮血に染まりし深紅の鍵†「お前の魂の叫び≪シャウト≫…しかと聞き届けたぜ!この†鮮血に染まりし深紅の鍵†…お前に力を貸してやろう…!」
ドロシー「わぁ…!ありがとうございます!一緒に頑張りましょうねっ!」ニコニコ
キモオタ(やれやれwwwこれでルイス殿の部屋に入れますなwwwひとまず一件落着とはいえ、しばらく中二っぽいのは勘弁ですぞwww)
・・・

662 :◆oBwZbn5S8kKC :2017/05/08(月)01:29:19 ID:Kna
ハートの女王の城 広間
ハートの女王「……」イライライラ
白ウサギ「……」オロオロ
ハートの女王「……ええい遅い!奴等は何をやっておるのだ!戻ってきたら即刻首を刎ねよ!」バンッ
白ウサギ「落ち着いてください、女王様!もうじき戻ってくると思いますので…」
ハートの女王「まったく…この女王を待たせるなどありえん!」イライラ
トランプ兵(偵察部隊)「mission complete…!」ドタバタ
白ウサギ「おぉ…!ようやく戻ってきた!早速状況を伝えt」
ハートの女王「早急に応えよ!憎き雪の女王が大切にしているというガキ共は確かにこっちに向かっているのだろうな?」ギロリ
トランプ兵(偵察部隊)「y…yes!」
白ウサギ「ハートの女王様!ご安心ください、ヘンゼルとグレーテル…そして千代は間違いなくこちらに向かっているようです!もちろん迎撃態勢も整っております!」
ハートの女王「フンッ、当然であろう!見ているがいい…雪の女王に受けたこの屈辱…必ず晴らしてやるのだ…!」
ハートの女王「総員配置に着け!もたもたしている奴は首を刎ねるぞ!」
バタバタバタ
ハートの女王「今一度命じる!我等の目的は雪の女王を慕うガキ共の首を刎ねる事だ!失敗は許さぬ!死ぬ気で任務にかかれ!」
・・・

663 :◆oBwZbn5S8kKC :2017/05/08(月)01:36:46 ID:2Md
今日はここまで、不思議の国のアリス編 次回に続きます
†鮮血に染まりし深紅の鍵†「深き森の魔女に魅入られし兄妹が尊大なる紅き女王と邂逅する…!」
ドロシー「えっと、次回はヘンゼル君達がハートの女王と遭遇しちゃいます!」
†鮮血に染まりし深紅の鍵†「尊大なる紅き女王は侮辱する、白銀と氷雪の女王を。そして魔力宿りし兄は激昂する、そして家族の尊厳を守る為立ちあがる…!」
ドロシー「それで、ヘンゼル君はハートの女王と戦う事になっちゃうみたいだけど、大丈夫かなぁ…」
†鮮血に染まりし深紅の鍵†「次回『混沌と深淵の運命≪ディスティニー≫』」
ドロシー(ヘンゼル君がカッコよく戦う姿、私も見たいなぁ…)ドキドキ
次回もお付き合いください!

671 :◆oBwZbn5S8kKC :2017/05/16(火)01:20:31 ID:yzP
ハートの女王の城 廊下
銀貨の魔獣「ガルルゥ…」ダダダッダダダッ
グレーテル「魔獣ちゃん、私達乗せてるのにこんなに速く走れるんだね…。もしかして、もっと速く走れる…?」モフモフ
銀貨の魔獣「わふわふっ!ガル、ガルルゥー!」シュババッ
グレーテル「わー…すっごく速い…。これならアリスのとこまであっという間だね、魔獣ちゃん……」ナデナデ
銀貨の魔獣「わふっ!」シュババッ
ヘンゼル「グレーテル、あんまり彼に無茶させちゃ駄目だよ。魔獣、もう少し速度を落とそう。さっきの速さで十分だよ」
銀貨の魔獣「ガルッ!」ダダダッ ダダダッ
グレーテル「遅くなっちゃった……」ショボーン
ヘンゼル「彼には戦闘でも活躍してもらわなきゃいけないんだ。ここで無茶させて体力を消耗させるのは得策じゃないし…それにずっと全力を出させるのは可哀想でしょ?」
グレーテル「確かにそうだね…。ごめんね、魔獣ちゃん…」ナデナデ
銀貨の魔獣「ガルゥー!」
司書「それにあまり早く王座の間に辿り着くのも良くないかも。今は別行動になっちゃったけど、アリスちゃんと戦う時にはなるべく皆が揃っていた方が良いもんね。そうじゃなきゃ厳しい戦いになるかもしれないからね」
グレーテル「アリスに勝つためにはみんなが力を合わせた方がいいって事だね……。私も頑張る……ドロシーちゃんだけにいいカッコさせないよ……」
ヘンゼル「なんなのその対抗心…」
司書「でもグレーテルの気持ちわかるよ、少しでも皆の助けになりたいもんね。その為に色々と準備してきたんだもんね、私もグレーテルも。でも無茶はしちゃだめだよ?約束ね」
グレーテル「うん、約束…。無茶はしない……でも頑張ろうね……お兄ちゃん……お千代ちゃん……」

672 :◆oBwZbn5S8kKC :2017/05/16(火)01:22:45 ID:yzP
ヘンゼル「……」
ヘンゼル(僕としては危険な戦いの場に妹達を連れて来たくなかったけれど…。見ての通り、実際は二人とも連れてくることになってしまった)
ヘンゼル(というのもあの日【裸の王様】の世界で小夜啼鳥に『グレーテルの気持ちも尊重すべき』と諭された後、僕は自分の想いも考えも全て二人に話した。そして同様に、二人の想いと考えも聞かせて貰った)
ヘンゼル(僕が命に代えてもグレーテルを守りたいと思っているのと同じで、グレーテルもまた何を犠牲にしてでも僕と一緒に居たいと言ってくれた。お千代も、僕一人で何でも背負い込まないで欲しいと、言ってくれた)
ヘンゼル(それから三人でよく話し合って…兄妹間でいくつかの決めごとを作ると同時に、グレーテルと千代も僕と一緒にアリスを倒すこの戦いに同行する事になったんだ)
ヘンゼル(もちろん、二人も戦いに備えて準備はしていたけど……それでも二人はやっぱり女の子だ。十分な準備はしていたと思うし僕も協力はしたけど、それでも厳しい戦いになるかもしれない)
ヘンゼル(もしもそうなったら……二人の命が危険にさらされる事があれば、僕はこの身を投げ捨ててでも必ず二人を守る。その覚悟は出来てる)
ヘンゼル「……」フゥ…
司書「ヘンゼル。ため息なんかついて、どうかしたの?」
グレーテル「なにか悩みごとなの……?私、聞くよ……?」
ヘンゼル「いや、大丈夫だよ。大した事無いから」
ヒョコッ
小夜啼鳥「隠し事は駄目ですよヘンゼル君。【裸の王様】の世界で約束をしたでしょう?もう兄妹の間で隠し事をしたりしないと」
ヘンゼル「君はまた忘れた頃に出てきて余計な事を…」

673 :◆oBwZbn5S8kKC :2017/05/16(火)01:25:32 ID:yzP
小夜啼鳥「余計な事とは失礼な…。私はあなたのお目付け役としてですね……」クドクド
司書「ヘンゼル……もしかしてまた何か私達に内緒で一人で背負い込もうとしてたんでしょ?」
グレーテル「そうなの……?こないだ約束したばっかりなのに……もうそういう事しないって、私達に相談してって……言ったのに……約束破っちゃうの……?」
ヘンゼル「……そんな事無いよ。小夜啼鳥が大げさに言ってるだけd」
小夜啼鳥「いえいえ、私の眼は誤魔化せませんよ。ヘンゼル君はグレーテルちゃんとお千代ちゃんが戦う事がどうしても不安で、いざとなったら己が身を投げてでも二人を守らなければと思っているのですよ、そうですよね?」
ヘンゼル「なんで二人にバラすんだ…。というかどうやって僕の心をのぞき見たんだよ…。何者なんだよ君は……」ハァ…
小夜啼鳥「何者って、あなたのお目付け役ですが?」ピチチ
ヘンゼル「そうじゃなくて…。いや、約束を破って一人で背負おうとした事は謝るよ。でもね、僕はそれだけグレーテルと千代の事を心配してるんだよ、解って欲しい」
司書「そんなの私達だって一緒だよ?グレーテルも私と同じでヘンゼルの事心配だよね?ねっ?」
グレーテル「うん、すんごく心配……。お兄ちゃんは誰よりもカッコよくて誰よりも優しいけど……すぐ自分だけでなんとかしようとしちゃうのがダメなところ……」
司書「ヘンゼルの気持ちはわかるけど、あなたが背負えば背負う程私達だって苦しいの。だからもう一人で背負わない事、もう一回約束して?できるよね?」
ヘンゼル「理屈はわかるけど、でも僕はやっぱりお兄ちゃんなわけで……その分しっかりしないといけないし、だからーー」
グレーテル「……もし、お兄ちゃんが次に約束破って。また一人でなんとかしようとしたり、自分を犠牲にしようとしたりするなら……私はさいごのしゅだんに出るよ……」
ヘンゼル「えっ……何をするつもりなの?」
グレーテル「お兄ちゃんが次、約束破ったら……私はお兄ちゃんの妹やめて、キモオタお兄ちゃんの妹になる……」
ヘンゼル「!?」

674 :◆oBwZbn5S8kKC :2017/05/16(火)01:27:54 ID:yzP
司書「ウフフッ、それはヘンゼルにとっては従うしかない条件だね。考えたねグレーテル」ウフフ
グレーテル「本当は使いたくなかったけど……さいごのしゅだんだよ……」
ヘンゼル「いやいや、グレーテルにとっても損しかないし…。そもそもこんなの脅迫じゃないか!」
グレーテル「でぅふふ……お兄ちゃんがちゃんと約束を守ってくれれば……何の問題もないのでござるよ……こぽー……」
ヘンゼル「お願いだから本当にやめて」
グレーテル「じゃあ指きりする……」
ヘンゼル「わかったよ…。今度こそ、僕は絶対に一人じゃ背負わないし自分を投げ出そうともしない。これでいい?」ユービキーリ
グレーテル「うん、約束だからね……」ユービキーリ
ヘンゼル(ちょっとだけ納得いかない……)
司書「なんていうのかな…ヘンゼルは今まで自分一人でなんとかしなきゃって思ってくれてたから、急に私達を頼ってって言っても難しいのはわかるよ?」
司書「でもね、私もグレーテルもヘンゼルもカイも兄妹で女王様も家族なんだから。誰かを犠牲にして解決する…なんて無しにしよう?ねっ?」
ヘンゼル「そうだね、わかった。でも本当にお願いだから無茶だけはしないで、本当に君たちの事が心配だから」
司書「うん、無茶はしない。だから安心して。ねっ、グレーテルも大丈夫だよね?」
グレーテル「うん……大丈夫でござるよ……こぽー」
ヘンゼル「それも本当にやめて」

675 :◆oBwZbn5S8kKC :2017/05/16(火)01:30:19 ID:yzP
銀貨の魔獣「ガルガルゥ!!」
ヘンゼル「魔獣…?どうかしたのか?」バッ
小夜啼鳥「ヘンゼル君、前方を見てください…!少し開けた空間に出そうですが……何か居ます」
司書「……まだ遠くてよく見えないけど、あれって」
グレーテル「お城の前で見た……トランプの兵隊と同じだ……」
ヘンゼル「ここに来るまで敵を見かけなかったから安心してたけど、やっぱりそうなるか」
司書「きっとトランプ兵だけじゃないし、戦うとなったら覚悟決めなきゃね」
グレーテル「私はいつでも平気だよ……」
銀貨の魔獣「ガルルッ…」
小夜啼鳥「どうするんですか、ヘンゼル君?」
ヘンゼル「……」
・・・

676 :◆oBwZbn5S8kKC :2017/05/16(火)01:32:30 ID:yzP
ハートの女王の城 広間
ザワザワ ザワザワ
白ウサギ「…女王様!御覧ください女王様!遂に連中が来ました!偵察隊の報告通り、火打ち箱の魔獣に乗ってこちらに来ます!」
ハートの女王「えぇい!やかましい!お前が喚かずとも見ればわかる!トランプ兵共!配置に着き、手筈通りに動くのだ!失敗は許さんぞ!!」カッ
トランプ兵達「「「Yes my lord!!」」」ビシッ
ハートの女王「フン、上出来だ。総員、前方を注視せよ!ガキが相手だからと情けを掛ける必要などない、確実にその命を奪ってやるのだ!よいな!」
トランプ兵達「「「Yes my lord!!」」」ピシッ
白ウサギ「女王様!連中が広間に侵入します!」
ハートの女王「わかっておる!ではこの女王が直々に挨拶をしてやろうではないか!」ツカツカ
ダダダッ ダダダッ
銀貨の魔獣「ガルルゥーッ!!」ダダダッ
グレーテル「わー…いっぱいトランプの兵隊が居る……あっ、うさぎさんもいる……」
司書「……っ!ヘンゼル、あそこに居る女性に注意して!あの身なりと容姿、おそらくあの人がハートの女王…!」
ハートの女王「フンッ、まずは良く来たと褒めてやろうガキ共。だが徒労だ、お前達はここで死ぬk」
ヘンゼル「魔獣。無視して突っ切れ!」
白ウサギ「な、なにっ!?女王様を無視して進むなんてありえn」
銀貨の魔獣「ガルゥ!」
ダダダダダッ
ハートの女王「……」