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俺+妹×天使=世界の終わり

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Part5

66:つねこ ◆MbmtstD.Mk:10/11/13 22:28 ID:cfJvK2tyPA
ともかく、イロハが気に入ってくれたみたいでよかった。
これで、辛いことがちょっとでも紛らわせれたらいいんだが……
何?ただの現実逃避だって?
気のせいだよ。気のせい。


(さーて、今日の晩御飯は何にするかな……)


そんなに凝ったものを作る元気も無いし、無難にチャーハンでも作るか。
大量に作って余りは明日の俺の弁当にしちまえば一石二鳥で楽チンだしな。
ぐいっと腕捲りをして、さあ、調理開始だ!

67:つねこ ◆MbmtstD.Mk:10/11/13 22:42 ID:cfJvK2tyPA

********


「おーい、飯できたぞー」
「わーい」
「あれ?イロハは?」
「おねーちゃんならまだゲームだよ」
「早く呼んでこい。飯だ」
「はーい」


********


「おにーちゃんのごはん、いつもおいしいね!」
「兄ちゃんが腕によりをかけて作ってるからな」
「えへへ」
「そういえばイロハは?さっきまでそこに」
「おねーちゃんならゲームしにいったよ」
「食べ終わんの早っ!」


********


「イロハ、俺と更紗はもう寝るんだが」
「そうか」
「いや、音がうるさいんだよ」
「そうか」
「聞いてねぇなこいつ……」
「……」
(まあ、眠れないって言ってたから、多分夜は暇なんだろうな)
「……」カチャカチャ
「これ貸してやるから、静かにな」
「ああ」
(大丈夫かこいつ。まさかこんなにハマるとは……)



68:つねこ ◆MbmtstD.Mk:10/11/13 22:59 ID:cfJvK2tyPA
朝が来た。
また、新たな一週間が始まる。
俺はアラーム音の鳴り響く枕元の携帯を止め、布団から起き上がる。


「うう、寒い……」


やれ地球温暖化の癖に冬は寒いだのはやく夏になれだの、ぶつぶつ文句を言いながら制服に着替える。
また平日だ。学校だ。早く週末が来ればいいのに。
終わったばっかりの休日を懐かしむ。


「おーい、イロハ」


ヘッドフォンをしたイロハには恐らく何も聞こえないだろう。
そう思い、ちょっと思いきった行動に出ることにした。


「イロハの、ばーか」


最初はちょっと小さな声で言ってみる。
なんの反応も示さないところを見ると、やっぱり聞こえていないようだ。
調子づいた俺のイロハへの愚痴はエスカレートする。


「もうちょっとくらい優しくしろよな。この鬼畜天使め。ちくしょー、、本当に天使なのかお前、悪魔っていうほうが似合ってr痛っ」


ごつん、と俺の頭に何かが当たった。
足元を見るとプレステのコントローラーが転がっていた。
振り返ると、イロハがいた。


「全部聞こえてるんだよ……!」
「うわあああ申し訳ありませんんんんんん!!!」


どうやらイロハは地獄耳らしい。
というか、天使は耳がいいらしい。

69:つねこ ◆MbmtstD.Mk:10/11/13 23:21 ID:thGR1Hks36

********


「じゃ、行ってきまーす」
「いってきまーす!」


更紗と一緒に家を出る。
俺の高校は家に近いので助かる。
朝、結構ギリギリまで寝とけるしな。

冬の朝は寒い。
でも、寒さよりも清々しさが勝る。
学校に着いたあとは寒い寒いとストーブの無い教室を呪うもんだが、朝は何故だが寒いとは思わない。
他のやつがどうかは知らんが、少なくとも俺はな。

途中の十字路で更紗と別れる。
横断歩道を渡ってしばらく歩くと、後ろから走るような足音が近づいてきた。


「よっ、ニーノ!おはよーさん!」


ぽん、と肩を叩かれる。
振り返ると、よく見知った顔があった。


「なんだ、キリヤか」
「なんだはないやろなんだはー。もー、ニーノはほんま冷たいなぁ」


容姿端麗。
頭脳明晰。
スポーツ万能。
そして、すごくモテる。
ムカつくほど完璧なこいつは、俺の親友のキリヤだ。
小学校の頃からの付き合いで、ずっと同じクラスという確率的に素晴らしい偉業を成し遂げている。


「今日の一時間目は数学やでー。ちゃーんと宿題やってきたか?」
「するわけねーだろ、後で見せろよな」
「やっぱそう来たかぁ。さすがはニーノ。期待を裏切らへんな」
「いやいやなんの期待だよ」


二人で馬鹿みたいな会話をしながら通学する。
それはいつもの日課になっていた。

70:つねこ ◆MbmtstD.Mk:10/11/14 18:12 ID:thGR1Hks36
学校に到着して、キリヤの宿題を約束通り写させてもらい、一時間目が始まった。
正直俺はそんなに頭がよくないので、キリヤにはいつも助けられている。
それにしても……ものすごく……


(退屈だ……)


勉強って、心底つまらないと思う。
人生生きていくのに必要なのって+-×÷の計算くらいだろう。
小難しい関数やら微積やらそんなもんはどうせ忘れちまうんだから、無駄以外の何物でもない。
はあ、早く帰りたいなあとため息をついた瞬間、先生と目が合ってしまった。


「余裕そうだな、須藤」
「はっ、はい……ええと」
「では教科書62ページの問5を解いてもらおう」
「う……」


慌てて教科書を開いたものの、ちんぷんかんぷんだった。
なんだこれは。古代文字かなんかか。
あー、えー、としばらく唸っていると、

“答えはX=5やで!”

と書いた紙を、前の席に座っているキリヤが俺にだけ見えるように、後ろ手に持っているのに気付いた。


「え、X=5!」
「よろしい、座れ」


過ぎ去った危機に胸を撫で下ろすと、先生が黒板を向いた隙にキリヤがピースサインを送ってくる。
サンキュー、キリヤと口パクだけで礼を言うと、キリヤは照れくさそうに笑った。

71:つねこ ◆MbmtstD.Mk:10/11/14 21:57 ID:nfXWrQKYlE
とにかく、キリヤはいいやつだった。
クラスの皆にも人気があった。
顔がいいからだけじゃなくて、人柄も最高だったからな。
俺は友人としてキリヤが好きだった。


「ニーノ、飯食おうぜ~」
「おう」


午前中の授業が終わって、昼休み。
キリヤとクラスの何人かと固まって弁当を食べる。
食べながら、トランプとかもやったりして、いつも楽しくすごしていた。
もちろん、今日も。


「おい~、ニーノぉ」
「何」


俺はチャーハン、キリヤは卵焼きを口に運びながら言う。


「聞いたで?何やお前めっちゃかわええ女の子囲っとるらしいやん」
「ブフォッ」


思わずチャーハンを噴きそうになる。
な、何を言ってるんだこいつは。


「ばbばばばーかそんなわけねーだrろ」
「噛みすぎやし目線泳ぎすぎやねんけど」
「……だ、誰に聞いたんだよ、そんな話」


イロハがやって来たのはほんの2日前だ。
それなのに、もう知られてしまっているなんて……一体どういうことなんだ……。
俺は動揺を隠せない。


「なーに、ただの風の噂やって」
「……」


噂広まるのいくらなんでも早すぎだろ!
突っ込みたいがそうするとキリヤの言うところの“可愛い女の子を囲ってる”ということを認めることになってしまう。
そんなことになれば俺はクラスの皆に質問攻め目にあうことは間違いない。ぶるぶる。

72:つねこ ◆MbmtstD.Mk:10/11/15 07:41 ID:51FwbxHOy.
「ニーノ」


キラーン、とキリヤの目が光った。
あ、なんかヤバそう……。
俺は身の危険を察知し、机から立ち上がって後退りした。


「観念せぇや~!」
「あああああ!」


素早く背後に回り込まれ、ガッチリ固められて首を絞められる。


「ちょ、離っ……ぐえっ」
「いや、吐くまで絞めるで~!」
「わかっ……分かったから離せっ」


暴れてもびくともしない。完敗だ。
俺は両手を上げて降参のポーズを取った。


「つか、本気で絞めるなよ……」
「すまん、つい力入ってもーたわ」


つい、じゃねーよ本気で死ぬかと思ったぞ。

73:つねこ ◆MbmtstD.Mk:10/11/15 08:11 ID:51FwbxHOy.
「お前筋肉あるから力強いし、手加減してくれないとマジでヤバいんだっつの」
「すまんすまん。ところで、さっきの話やけど」


謝る気あんのかこいつ?
まあ俺とキリヤの仲だから、いちいちこんなことでぐちぐち言わないが。


「で、誰なんや?彼女なん?」
「えーと……」


あれ?何て答えたらいいんだろう?
まさか馬鹿正直に天使だと言うわけにもいかない。どう考えても信じてもらえないだろうし。


「ね……」
「ね?」
「姉ちゃん、です……」


言ってから、自分でもこれはないと思った。
仕方ない。畳み掛けて丸め込む!


「ふーん……?」
「いや、本当だぜ?しばらく会ってなかったんだがいきなり帰ってきたんだ。軽く10年ぶりくらいか?びっくりしたねー存在忘れかけてたところだもんな」


早口でまくし立てる。
全部嘘っぱちだが。


「分かったよ、ニーノ。降参」


今度はキリヤが両手を上げる。


「絶対違うと思うんやけど、ニーノがそう言うんやったらそういうことにしとくわ」
「お、おう。は、早く飯の続き食わねーと昼休み終わっちまうぞ!」
「うお、ホンマや!」


気まずいのでとりあえず話を強引にずらす。
乗ってくれてよかった……。
俺がホッと胸を撫で下ろし、チャーハンの残りに手をつけようとしたその時だった。

74:つねこ ◆MbmtstD.Mk:10/11/15 08:57 ID:7fhDmLflzk
「じゃ、その姉ちゃんとやらに会わせてくれや」
「ブフォッ」


本日二度目の爆弾投下。
あ、やべチャーハン一粒飛んだ。


「何でだよ!」
「いやー、なんや噂によれとめっちゃかわええらしいやん?そんなん会うしかないやろ?」
「でも」
「なんやニーノ。それとも俺に会わせられへん理由でもあんのか?」
「べ、別にそういうわけじゃ」
「じゃあ決まりやな!」
「うう……」


口のうまさもキリヤの方が一枚上手だった。
ちくしょう、何か一つくらい勝ちたいものだ。


「分かったよ。でも今日も明日もバイトあるから、水曜日な」
「おっけ~」


ああ、大変なことになってしまった。

75:つねこ ◆MbmtstD.Mk:10/11/15 09:04 ID:7fhDmLflzk

********


夜八時。
バイトが終わって帰宅。


「ただいま……」
「おかえりおにーちゃん。あれ、どしたの?元気ないね」
「いや……」


どうしようかなぁ。
でも悩んでも仕方ないしなぁ。
イロハだって挨拶するくらいなら構わないかなぁ。
まさかいきなり襲い掛かって殺しちゃうとかそんなことはないよなぁ。
多分。


「まあ、いっか」


忘れよう、面倒だし。
さらっと見てさらっと帰ってもらえばいいか。
さーて、晩御飯晩御飯っと。


76:つねこ ◆MbmtstD.Mk:10/11/15 20:16 ID:y5G9XV1F1g
そして時は流れて、水曜日。


「いや~、ニーノの姉ちゃんに会うの楽しみやわぁ」


キリヤは朝からニコニコ満面の笑みだ。
そんなにイロハに会うのが楽しみなのか。
ちなみに俺はというと心配で腹痛状態だった。


「でも、ニーノの家に行くんも久しぶりやんな」
「そういえばそうだな」


ニコニコ、隣でげっそり。
あまりにも対照的な二人だった。

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