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俺+妹×天使=世界の終わり

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Part2

16:つねこ ◆MbmtstD.Mk:10/10/6 22:23 ID:Dix0uZLpUY
あの超人的な力を見た後では、こいつが“天使”だということを信じなければならないのだろうか。
しかし俺の頭はまったくついていかない。
心の奥に眠る願いをイロハが見つけて、それを叶える。それまで監視させろって、一体どういうことだよ!


「日本語が理解できないのか?動物以下だな、貴様」
「いや、そういうんじゃなくて」
「だったら何だ、微生物め」
「俺微生物じゃないから。人だし新野っていう名前あるから。いや、しばらく監視するってどういうことだよ。願いなら今ここで叶えてくれたらいいじゃないかってことを問いたい」


ああ、とイロハが納得したように頷く。


「心の願いというものはそんなに簡単に見つかるものじゃないからな」
「じゃ“貴様で最後だ”ってのは?」
「聞いていたのか、地獄耳め」


いや、思いっきり普通に聞こえてましたけど。


「プロジェクト“幸福天使”の天使は、生まれ変わるために人間の願いを叶える」
「……と、言うと?」
「貴様、さっきから質問ばかりだが、少しは自分で考えたらどうだ」


考えても分からないから聞いてるんです。人間には天使の性質が分かりません。
そう言うと鼻で笑われてしまった。


「“幸福天使”になるのは、神の意に背きし咎人だ」


ふむふむ。
えー……つまるところ、どういうことでしょうか。


「簡単に言えば、幸福天使は、償いきれぬ罪を犯した奴が罪滅ぼしにする仕事ってとこだ」
「うーん……よく分からん」

「分からなくていい。貴様ごときに理解されようとは思っていないからな」

「はあ……」


結局よく分からない。咎人とか罪滅ぼしとか言ってたが、つまりこいつは何らかの犯罪者ってことなのだろうか。
しかし、俺がいくら考えても結論が出るはずはないので、詳しく考えると時間の無駄なのでやめておいた。

17:つねこ ◆MbmtstD.Mk:10/10/6 22:25 ID:Dix0uZLpUY
「おい、イロハ」
「何だ」


そこで、さっきから気になっていたことを質問してみる。


「俺を監視するってのはジョークじゃないのか?」
「馬鹿を言え。何故私が貴様にジョークを言わなければならないんだ」
「え……」
「分かったら、早く家に案内しろ」


イロハは俺が歩き出す前に、すたすたと家の方へ向かいだす。おかしい、案内しろって言ってたけど家の場所知ってんのかな。
あれ?じゃあ、さっきの“死ね”とかももしかしてジョークじゃなくてガチですか。マジネタですか。
あいつは俺のこと人として扱ってくれなさそう――現にさっきはいきなり本をぶつけられ獲物呼ばわり――だし、俺って実は危険な立場?


「ああそうだ、最後に忠告するが」


大樹の丘を下りかけていたイロハが俺を振り返る。


「幸福天使は、皆人間が嫌いな奴ばかりだ。視界に入るとうっかり殺されかねないぞ。せいぜい気を付けるんだな」
「ということは、お前も……」


今度の俺の問いに答えは返ってこず、そのままイロハの背中は遠ざかっていった。
そして気付く。


(ん?俺の服……乾いてる)


確か、雨のせいでさっきまではずぶ濡れになっていたはずだ。


(もしかして、あの時か?)


あいつはどうやら人間が嫌いらしい。ということは、人間である俺のことも嫌いなんだろう。
幸福天使の“視界に入ると殺される”……つまりイロハが“視界に入る人間は殺したくなる”ということだ。
怪しげな術で燃やされたのはそのせいなのかと思ったが、


(殺したくなるなんて言って、火傷一つ無いじゃねーか)


実は、いいやつなのかも?

18:龍 ◆RYU....FU.:10/10/8 03:37 ID:5h5vEatGpM
こwwwれwwはwww面白いwwwwww

19:名無しさん:10/10/8 17:14 ID:f2usB0XXug
おもしろいです☆
支援

20:つねこ ◆MbmtstD.Mk:10/10/8 23:33 ID:qrWylbYEXk
>>
18
なんと!龍さんではないですか!
支援ありがとうございます(^∀^)
>>19
面白いだなんて…すごく嬉しいです!
これからも良かったらよろしくお願いします!




「おい、待てよ!」


俺は、すたすたと歩いていくイロハを慌てて呼び止めた。
しかし何度呼んでも、無視されるばかりで返事はない。なのでやむを得ず、肩を掴んで振り向かせようとしたのだが、相変わらず辛辣な反応だった。


「貴様、さっきの忠告が聞こえていなかったようだな」
「え、何?視界に入ったら殺すぞってやつ?」


わざと明るくすっとぼけて言ってみる。まあ、軽いジョークのつもりだったんだ。


「殺す」
「うわわわわっすいません悪ノリしました軽い冗談だったんです誠に申し訳ありますん」
「どっちだ」
「ああっ、つい本音が!」


結果から言うと、こいつにジョークは通じない。俺は軽い好奇心の代償を体で支払うことになってしまった。
見事なジャーマンスープレックスホールドだった。


「いてて……何も本気で投げなくても」
「殺す、といったはずだ」
「俺まだ生きてるけど。もしかして、ちょっとした優しさ的な?」
「やっぱり殺す」
「タンマタンマ!ストップ、悪かった!もう投げんのはやめてくれ!」


今度こそ首の骨を折られてしまいそうだったので、再び戦闘体勢になりかかったイロハを必死で止める。か弱い見た目して、めちゃくちゃ格闘派じゃねーか。
あの細腕のどこにそんな力があるんだ?

21:乙潤 ◆nyan.ce4UM:10/10/10 16:54 ID:13gyeazI6U
天使ちゃんいいキャラしてますねぇ(*´∀`*)

22:つねこ ◆MbmtstD.Mk:10/10/11 22:14 ID:yMDOTeggTE
>>21
支援ありがとうございます!(^∀^)
なんというか、扱いにくいキャラクt(略



結局イロハの言っていることが本気なのかどうか分からなかった。
並んで歩きながら、イロハが話しかけてくることはないので、気を抜くとすぐに気まずい空気になってしまう。
それを避けるために俺はひたすら話を振り続けた。


「結局のところお前は何者なんだよ」
「見た通り天使だ」
「本当にそうなのか……。なあ、他にも天使はいんのか?」
「ああ」
「それ、もしかして皆お前みたいな性格してるとか……?」
「いや、そういう訳でもないな。天使にもいろんな奴がいる。ただ……」
「ただ?」
「“幸福天使”は別枠だ」
「それって、どういう意味だよ」
「……さあな」
「ふーん……」
「ま、そんなのはどうだっていい。とにかく、私の仕事はさっさと貴様の願いを叶えて、生まれ変わる資格を得る事だ」
「生まれ変わる資格って……」
「1500だ」
「え?」
「1500の人間の願いを叶える。これが幸福天使の仕事だ」
「なんか面倒そうだな……それをやらないと生まれ変われないのか?」
「天世の住人は、普通は何もしなくとも生まれ変わる資格を持っているが、幸福天使は違う」
「何でだ?」
「言っただろ。幸福天使になるのは咎人だと」


23:つねこ ◆MbmtstD.Mk:10/10/11 22:41 ID:/25NWE.7V2
「咎人って」


俺は一息おいてから問いかける。


「一体何の罪を犯したんだ?」


ちらりとこちらを見たイロハはすぐに目をそらし、


「さあな」


と言った。

イロハが言いたくない事は全て「さあな」で流してしまうため、聞きたいことの半分も分からなかった。
今のところ分かっているのは、

イロハが“幸福天使”だという事、
“幸福天使”は他の天使とは別枠だという事、
“幸福天使”は人間を殺したいほど嫌っているという事、
でも人間の願いを叶えないと生まれ変われないという事、
生まれ変わる為には1500人の願いを叶えないといけないという事、

そして、どうやら俺がイロハの“1500人目”であるらしいという事。


(貴様で最後、ってのはそういう意味だったのか……)

24:つねこ ◆MbmtstD.Mk:10/10/11 22:57 ID:zRM3qmvt7o
何だかんだと考えている内に、気付けばアパートの前まで来ていた。
恐るべし、毎日の習慣。


「さ、着いたぞ。ここが俺の家だ」


黒猫のキーホルダーがついた鍵をさしこみ、鍵を開ける。
ドアを開けた俺を押し退け、イロハはずかずかと無遠慮に家の中へ入っていった。


「狭い」
「悪かったな、狭くて。こちとらビンボーなんだよ」


早々に文句を言い始めるイロハを適当に流して、コーヒーを作る。
俺が台所でガチャガチャとやっていると、廊下とリビングを隔てる扉のかげから、妹が顔を覗かせた。まず俺を見て顔を輝かせ、イロハを見て「ひっ」と驚きの声を上げた。


「お、お兄ちゃん、その人だぁれ……?」


お気に入りのクマのぬいぐるみを抱き締めながら、不安そうにしている。
しまった、言い訳を考えてなかった。
焦った俺は、慌てて適当に考えた理由を口走る。


「こいつは、あ、新しいお姉ちゃんだ!」
「新しい、お姉ちゃん……?」
「そうだ!」


25:つねこ ◆MbmtstD.Mk:10/10/12 22:39 ID:/25NWE.7V2
人見知りの妹がイロハにどう反応するか心配だったが、それは杞憂に終わった。


「やったあ!」


と、更紗は嬉しそうにイロハに抱きついた。お姉ちゃん、お姉ちゃん、と頬擦りまでしている。
俺はイロハが妹に何かしでかさないかと焦ったが、それとは裏腹に、ぽんぽんと更紗の頭を撫でてやっていた。
あれ、俺と更紗の扱い違い過ぎないか?


「イロハだ。よろしくな」
「えへへ、イロハお姉ちゃん~♪」


なんとなく府に落ちないが、まあ更紗が喜んでるなら良しとしよう。
俺は机に座り、淹れ終わったコーヒーを一口飲む。今回のコーヒーは砂糖を入れすぎるでもなく、旨かった。


「ねえねえお兄ちゃん」
「何だ?」
「今日は、おしごと早くおわったんだね!」


ん、おしごと?


「…………」


コーヒーを飲む腕が止まった。


(やっべ忘れてた!!!)


色々ありすぎて午後から行くはずだったバイトをすっかりと忘れていた。
大目玉確定だ。
飲みかけのコーヒーを放置し、俺は再び床を蹴った。

26:つねこ ◆MbmtstD.Mk:10/10/13 07:45 ID:Dix0uZLpUY
俺がバイトしてるのは、駅前のコンビニだ。
家からは大体徒歩20分。駅前だけあって、結構な人が毎日やってくる。
店長は何かしでかしさえしなければ優しいため、働きやすいと高校生には人気のコンビニだ。
その店長が今、俺の前に立ち塞がる。


「す・ど・う・ク・ン?」
「すんませんっした!」


もはや平謝りするしかなかった。
腕を組み、笑顔で仁王立ち。そして頭を下げたまま恐怖で震える俺。
心なしか、他の店員たちの目も哀れむような視線のような気がする。


(怒ってる、よな……?)


すいません、正直めっちゃ怖いっす。

ああ、今月減給かなぁ。いや、それどころかクビかもしれない。
どうしよう、これから生きていけるだろうか……と思わず遠い目になりそうになったその時、店長の唇が動いた。


27:つねこ ◆MbmtstD.Mk:10/10/14 10:23 ID:qrWylbYEXk
ちら、と目線だけ動かしてみると、店長の腕が振り上げられたところだった。


「須藤クン♪」
(マジで!?)


殴られる、と覚悟を決めてぎゅっと目を閉じる。
そして店長の腕が振り下ろされ――――


「須藤クン、今日もお疲れ様!」
「へ?」


俺の頭の上に柔らかく着地した。まあつまり、撫でられていた。
お疲れ様、って……あれ?何が?怒ってないの?何で?
あまりに予想外の反応に、全く頭がついていかない。意味が分からない。もしかしたら、今油断させておいて後で何かする気なんだろうか。


「はぁ……お疲れ様です」
「じゃ、また明日ね~」


笑顔で手を振り、スタッフルームへと歩いていく店長。俺は訳が分からないまま放置されてしまった。
他の店員に助けを求めようと思ったが、皆普通に「お疲れ様でーす」とか言ってる。これじゃ完全にいつもの帰りのパターンだ。
もしかして俺がおかしいんだろうか……いやいやそんなはずは……。

不可解な顔をしたまま店を出ると、そこにイロハが立っていた。



28:名無しさん:10/10/15 00:55 ID:dLCU9OGsOM
支援w

29:名無しさん:10/10/15 02:01 ID:tA6KOE9Ttw
これは続き期待
頑張って下さい

30:つねこ ◆MbmtstD.Mk:10/10/16 00:33 ID:zRM3qmvt7o
>>29さん
ご支援ありがとうございます(^∀^)
私の気力がまだ持っているのはひとえに読んでくださる皆さんのおかげです!
少しでもご期待に沿えるように頑張っていきますので、これからもよろしくお願いしますね(∀)



「なんだ、ついてきてたのか?」


羽根ペンを片手に佇むイロハに、俺は声をかけた。
きっと返事はないだろうと思い、さっさと歩き出す。厚手のパーカーのポケットに両手を突っ込み、寒いので少し猫背気味に。
早く家に帰って、温かいコーヒーを飲み直そう。
いつの間にかまた降り始めて積もった雪が、足元で心地のいい音をたてた。


「おい」


一歩踏み出した瞬間、後ろから呼び掛けられた。
俺は、イロハから反応があるとは思ってもみなかったので、少し驚きつつ、手はポケットの中のまま振り向く。


「なんだ?」


互いに距離があるのでちょっと声を張って聞き返す。


「貴様、私に言いたいのはそれだけか」
「は?言いたいこと?」
「貴様ごときの頭では理解出来ないか。言い方が悪かったようだな」

31:名無しさん:10/10/16 00:39 ID:sa8/N5OhZE
イロハかわいいww
支援//

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