女「あの、顔色悪いけど大丈夫ですか?」 男「・・・え?」
Part6
105 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/07/30(木) 23:51:53.28 ID:Mjky/SnY0
女「・・・・ごっ・・・ごめんなさい・・・その・・・足とは関係無いの。たぶん急に立ち上がったから」
男「あ・・・ああ。だ、大丈夫だな」
女「う・・うん」
彼女は大丈夫だと言った。
だが、彼女の控え目すぎる体重は、オレに預けたままだった。
男「・・・座るか?」
女「嫌・・・大丈夫。軽い貧血だからもう少し待って・・そうすれば歩けるから」
男「あ、ああ」
しばらく二人とも無言で水槽を見つめていた。
正確には、水槽に映ったお互いを見つめていた。
・・・
女「大丈夫・・・その、もう大丈夫だから」
男「お・・・おう」
すっ
女「このコーナー出るまでは、歩いてもいい?」
男「・・お前が大丈夫だと思うなら、そうすればいいだろ」
女「うん、ありがとう」
106 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/07/30(木) 23:52:29.60 ID:Mjky/SnY0
クラゲコーナーを出た後、オレたちは無言になった。
イルカ・アシカショーの声が遠くに聞こえる。
室内の水槽は依然として空いていた。
4つのコーナーを無言で見た後、彼女がぽつりと言った。
女「・・・ごめんなさい」
男「・・・いや、謝ることない」
女「私のわがままで、あなたに迷惑をかけました」
男「別に迷惑じゃねーよ」
女「あなたがいなければ、倒れていました」
男「・・・そのためにオレがついてきてるんだろーが」
女「・・・」
男「・・・あのさ」
女「はい」
男「オレ・・・お前の事尊敬するわ」
女「え?」
107 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/07/30(木) 23:53:33.91 ID:Mjky/SnY0
男「お前が勉強してる、資格、スゲー難しいのな」
女「・・・」
男「お前はさ・・・普通なら人に頼るところも全部自分でやろうとして、そのうえ明確な将来の目標も持ってる」
女「・・・私は・・・満足に歩けないからって、それに甘えてなにもしないのは嫌なんです」
男「お前は、オレなんかよりずっとスゲーよ・・・歩けない事、関係なく」
女「・・・」
男「・・・」
女「・・・でも、私だって・・・・歩けたら、もっと違う人間だったと思うわ」
男「・・・そんなこと言い出したらキリがないだろ」
女「そうだけど・・」
男「オレ、たぶん結構テキトーな性格だからさ・・・これからは勉強の事とか、なんか分かんないことあったら、お前に相談していいか?」
女「・・・うん」
男「その代わりさ・・・お前が困ったことあったらオレに言ってくれ」
女「・・・・・ありがとう」
男「ん」
気が付くと、最後の大水槽の前に居た。
108 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/07/30(木) 23:54:14.91 ID:Mjky/SnY0
女「・・・この水槽が最後ね」
男「そうみたいだな。吹き抜けで3階までつながってるんだな」
女「ええ」
男「・・・」
女「・・・」
男「・・・・あー」
女「?」
男「あのさ」
女「なに?」
男「オレと、付き合ってくれないか?」
女「・・・・・え?」
109 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/07/30(木) 23:55:00.88 ID:Mjky/SnY0
女「い・・意味が分からないわ」
男「いやだから・・・オレの彼女になってくれないかって言ったんだ」
女「・・・・からかってるの?」
男「本気だ」
女「・・・・」
男「・・・・」
女「私・・・車椅子なのよ」
男「知ってる」
女「あなたに迷惑をかけるわよ」
男「大したこと、ねーよ。そんくらい」
女「・・・私、出来ない事、たくさんあるのよ?」
男「お前は、それでもやろうとするだろ?それに、出来ないことあったら、オレがやるから」
女「・・・そうじゃないわよ・・分かってるの?私、これからずっとこうなのよ?私と付き合うってことは・・・あなたが私の世話をずっとしなければいけないって事なのよ?!」
男「分かってる・・・・さっき、覚悟した」
女「・・・・」
110 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/07/30(木) 23:55:46.69 ID:Mjky/SnY0
女「・・・・条件があります」
男「・・・なんだ?」
女「学校では、今まで通りの関係でいてください」
男「・・・・・なんで?」
女「他の誰かが、あなたを好きになれるように」
男「・・そんな事起きねーよ。それにそうなってもオレは、」
女「私より、他の誰かと結ばれたほうが・・・絶対に幸せです」
男「そんな事無いって思うから、告白したんだよ」
女「・・・私たちのことは、私たちだけの秘密。これが守れないなら・・・ダメです」
男「・・・わかった。でも、そもそもお前は・・・その・・いいのか、オレで」
女「私は・・・あなたの、物事に対して全力で挑まないところが嫌いです」
男「・・・」
女「でも、それ以外は・・・全部好きです」
男「・・・え」
女「私は・・・今までうまく立ち上がれないことを不自由に感じたことはありませんでした」
女「でも、今は、すごく悔しいです。立ち上がってあなたに抱き付くことができないのが」
女「お願いです、私を」
彼女の言葉は途中だったが、オレは言葉を遮り、ぽろぽろと涙を流す彼女の背中に手を回した。
オレの大切な人が痛くないように慎重に抱き上げ、優しく抱きしめた。
女「ごめんなさい・・・ありがとう」
111 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/07/30(木) 23:57:16.79 ID:Mjky/SnY0
今日はここまでにします
少々仕事が立て込んでいるので、週明けまで遅筆になると思います
112 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/07/31(金) 00:08:29.38 ID:GddZwEXQo
乙です
のんびり続き待ってます
113 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/07/31(金) 00:18:31.98 ID:2HqojdDnO
なんだ?俺なんで涙ぐんでるんだ?歳なのか?
114 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/07/31(金) 00:44:22.94 ID:neZ1kgtbO
出だしからしてバッドエンドになりそうで怖い
115 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/07/31(金) 03:38:35.28 ID:FmrGXmuIO
もう少し付かず離れずにイチャイチャしててもよかったがね
116 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/07/31(金) 07:24:15.34 ID:5+JOONuY0
いやあ良いぞ
女さんが少し自虐的な考え方持ってるところとかなんか好き
117 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/07/31(金) 11:18:29.20 ID:Zw+rmUbJO
こういうちょっと恵まれない子が幸せになるの大好物
118 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/07/31(金) 23:40:55.00 ID:eavyn2b60
こんばんは、今日は書けました
続きです
119 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/07/31(金) 23:41:57.00 ID:eavyn2b60
***
***
女「あなたは・・とても優しい人なんですね」
男「・・・」
男「そんな事ないです」
女「でも、あなたは、その人のことをいつも考えているじゃないですか」
男「考えているつもりでした・・・でも実際は、何も分かってなかったんです」
女「そうなんですか?」
男「オレが彼女の事、何も分かってなかったから、結局別れることになっちゃたんです」
女「・・・そうなんですか」
男「・・・今でも後悔してるんです。なんであの時別れてしまったんだろうって」
女「・・・」
少し喉が渇いた気がした。
鞄からミネラルウォーターのペットボトルをとりだし、口を濡らした。
ふと気が付くと、41講義室の窓から見えていた空には闇の帳が下り始めていた。
外は相変わらず騒がしかった。
少し妙だなと思ったが、オレはオレの思い出の続きを話すために、再び口を開いた。
120 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/07/31(金) 23:42:36.23 ID:eavyn2b60
***
***
コンコンコン
「どうぞ」
がらがら
男「しつれいします」
「あ、君2年C組?」
男「あ、ハイ」
「じゃあみんな揃ったから会議始めようか」
秋になり、文化祭のシーズンとなった。
オレは、クラスから1人ずつ選ばれる、文化祭実行委員に立候補した。
今までのオレであれば、そんな面倒くさいものは決してやらなかった。
が、今のオレには少なからずやる理由がある。
オレは会議室に入ると、会議の進行を行う席に座る一人に目線を向けた。
ぴん、と背筋を伸ばして座るその人は、オレの目線に気付いたようだったが、すぐに何事もなかったように手元の資料に目を落とした。
121 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/07/31(金) 23:43:10.33 ID:eavyn2b60
「それでは、今日の会議はここまでにします。文化祭まであと少しですが、みんなで力を合わせて頑張りましょう」
男「はぁー」
がた
男「・・・」
がらがら
会議室を出たオレは、自分の教室に戻り、なんとなく時間を潰す。
そして時計の針が18時を過ぎ、行内から人影がほとんど消えた頃、3階の階段へ向かう。
男「・・・おう」
女「・・・ん」
男「鍵」
女「うん、はい」
男「下にいるから」
女「うん」
オレが、職員室に生徒会室の鍵を返して、1階の階段出口に向かう。
女「・・・ありがとう」
男「おう」
女「・・・っしょ」
とす
122 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/07/31(金) 23:43:48.68 ID:eavyn2b60
男「大丈夫か?」
女「え?何が?」
男「最近、ちょっと階段降りてくるの遅い気がして」
女「最近寒くなってきたから、ちょっと調子悪いのよ」
男「おい、大丈夫か?」
女「ふふっ・・心配?」
男「・・当たり前だろ」
女「毎冬のことだから大丈夫。あなただって、寒くなったら体動かすの面倒になるでしょ?私も冬は少し筋肉が動かしづらいの」
男「ああ・・なんだ、そういうことか」
女「うん」
オレたちは、昇降口に向かって進む。
女「男君、部活は?」
男「ああ、オレ文実だから免除」
女「そうなの」
男「・・大変だろ、会計」
女「あなたに心配されるほど大変ではないわ。むしろいい勉強になるの」
男「ははっ・・さすがだな」
123 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/07/31(金) 23:44:31.25 ID:eavyn2b60
女「あ」
男「ん?」
女「会議のとき、私の方ジロジロ見るのやめてもらえますか」
男「えー」
女「・・・約束、忘れたんですか?」
男「・・・わかったよ」
女「それに、ちゃんとあなたの仕事をしなさい」
男「うっせーな・・・まったくお前は全然変わんねーのな」
女「当たり前でしょ。人間がそんなに急に変わるものではないわ」
男「へいへい」
ブロロロロ・・
男「あー・・迎え来たみたいだし、オレは帰るわ」
女「あ・・待って」
男「ん?」
女「えっと・・・明日、ヒマかしら?」
男「・・・おう」
女「・・・会計で買出しに行きたいので、一緒に来てもらえますか」
男「・・・おう」
女「じゃあ詳細はメールします」
男「了解」
女「では、さようなら」
男「ん」
女「・・・・ごっ・・・ごめんなさい・・・その・・・足とは関係無いの。たぶん急に立ち上がったから」
男「あ・・・ああ。だ、大丈夫だな」
女「う・・うん」
彼女は大丈夫だと言った。
だが、彼女の控え目すぎる体重は、オレに預けたままだった。
男「・・・座るか?」
女「嫌・・・大丈夫。軽い貧血だからもう少し待って・・そうすれば歩けるから」
男「あ、ああ」
しばらく二人とも無言で水槽を見つめていた。
正確には、水槽に映ったお互いを見つめていた。
・・・
女「大丈夫・・・その、もう大丈夫だから」
男「お・・・おう」
すっ
女「このコーナー出るまでは、歩いてもいい?」
男「・・お前が大丈夫だと思うなら、そうすればいいだろ」
女「うん、ありがとう」
106 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/07/30(木) 23:52:29.60 ID:Mjky/SnY0
クラゲコーナーを出た後、オレたちは無言になった。
イルカ・アシカショーの声が遠くに聞こえる。
室内の水槽は依然として空いていた。
4つのコーナーを無言で見た後、彼女がぽつりと言った。
女「・・・ごめんなさい」
男「・・・いや、謝ることない」
女「私のわがままで、あなたに迷惑をかけました」
男「別に迷惑じゃねーよ」
女「あなたがいなければ、倒れていました」
男「・・・そのためにオレがついてきてるんだろーが」
女「・・・」
男「・・・あのさ」
女「はい」
男「オレ・・・お前の事尊敬するわ」
女「え?」
107 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/07/30(木) 23:53:33.91 ID:Mjky/SnY0
男「お前が勉強してる、資格、スゲー難しいのな」
女「・・・」
男「お前はさ・・・普通なら人に頼るところも全部自分でやろうとして、そのうえ明確な将来の目標も持ってる」
女「・・・私は・・・満足に歩けないからって、それに甘えてなにもしないのは嫌なんです」
男「お前は、オレなんかよりずっとスゲーよ・・・歩けない事、関係なく」
女「・・・」
男「・・・」
女「・・・でも、私だって・・・・歩けたら、もっと違う人間だったと思うわ」
男「・・・そんなこと言い出したらキリがないだろ」
女「そうだけど・・」
男「オレ、たぶん結構テキトーな性格だからさ・・・これからは勉強の事とか、なんか分かんないことあったら、お前に相談していいか?」
女「・・・うん」
男「その代わりさ・・・お前が困ったことあったらオレに言ってくれ」
女「・・・・・ありがとう」
男「ん」
気が付くと、最後の大水槽の前に居た。
108 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/07/30(木) 23:54:14.91 ID:Mjky/SnY0
女「・・・この水槽が最後ね」
男「そうみたいだな。吹き抜けで3階までつながってるんだな」
女「ええ」
男「・・・」
女「・・・」
男「・・・・あー」
女「?」
男「あのさ」
女「なに?」
男「オレと、付き合ってくれないか?」
女「・・・・・え?」
109 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/07/30(木) 23:55:00.88 ID:Mjky/SnY0
女「い・・意味が分からないわ」
男「いやだから・・・オレの彼女になってくれないかって言ったんだ」
女「・・・・からかってるの?」
男「本気だ」
女「・・・・」
男「・・・・」
女「私・・・車椅子なのよ」
男「知ってる」
女「あなたに迷惑をかけるわよ」
男「大したこと、ねーよ。そんくらい」
女「・・・私、出来ない事、たくさんあるのよ?」
男「お前は、それでもやろうとするだろ?それに、出来ないことあったら、オレがやるから」
女「・・・そうじゃないわよ・・分かってるの?私、これからずっとこうなのよ?私と付き合うってことは・・・あなたが私の世話をずっとしなければいけないって事なのよ?!」
男「分かってる・・・・さっき、覚悟した」
女「・・・・」
女「・・・・条件があります」
男「・・・なんだ?」
女「学校では、今まで通りの関係でいてください」
男「・・・・・なんで?」
女「他の誰かが、あなたを好きになれるように」
男「・・そんな事起きねーよ。それにそうなってもオレは、」
女「私より、他の誰かと結ばれたほうが・・・絶対に幸せです」
男「そんな事無いって思うから、告白したんだよ」
女「・・・私たちのことは、私たちだけの秘密。これが守れないなら・・・ダメです」
男「・・・わかった。でも、そもそもお前は・・・その・・いいのか、オレで」
女「私は・・・あなたの、物事に対して全力で挑まないところが嫌いです」
男「・・・」
女「でも、それ以外は・・・全部好きです」
男「・・・え」
女「私は・・・今までうまく立ち上がれないことを不自由に感じたことはありませんでした」
女「でも、今は、すごく悔しいです。立ち上がってあなたに抱き付くことができないのが」
女「お願いです、私を」
彼女の言葉は途中だったが、オレは言葉を遮り、ぽろぽろと涙を流す彼女の背中に手を回した。
オレの大切な人が痛くないように慎重に抱き上げ、優しく抱きしめた。
女「ごめんなさい・・・ありがとう」
111 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/07/30(木) 23:57:16.79 ID:Mjky/SnY0
今日はここまでにします
少々仕事が立て込んでいるので、週明けまで遅筆になると思います
112 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/07/31(金) 00:08:29.38 ID:GddZwEXQo
乙です
のんびり続き待ってます
113 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/07/31(金) 00:18:31.98 ID:2HqojdDnO
なんだ?俺なんで涙ぐんでるんだ?歳なのか?
114 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/07/31(金) 00:44:22.94 ID:neZ1kgtbO
出だしからしてバッドエンドになりそうで怖い
115 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/07/31(金) 03:38:35.28 ID:FmrGXmuIO
もう少し付かず離れずにイチャイチャしててもよかったがね
116 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/07/31(金) 07:24:15.34 ID:5+JOONuY0
いやあ良いぞ
女さんが少し自虐的な考え方持ってるところとかなんか好き
117 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/07/31(金) 11:18:29.20 ID:Zw+rmUbJO
こういうちょっと恵まれない子が幸せになるの大好物
118 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/07/31(金) 23:40:55.00 ID:eavyn2b60
こんばんは、今日は書けました
続きです
119 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/07/31(金) 23:41:57.00 ID:eavyn2b60
***
***
女「あなたは・・とても優しい人なんですね」
男「・・・」
男「そんな事ないです」
女「でも、あなたは、その人のことをいつも考えているじゃないですか」
男「考えているつもりでした・・・でも実際は、何も分かってなかったんです」
女「そうなんですか?」
男「オレが彼女の事、何も分かってなかったから、結局別れることになっちゃたんです」
女「・・・そうなんですか」
男「・・・今でも後悔してるんです。なんであの時別れてしまったんだろうって」
女「・・・」
少し喉が渇いた気がした。
鞄からミネラルウォーターのペットボトルをとりだし、口を濡らした。
ふと気が付くと、41講義室の窓から見えていた空には闇の帳が下り始めていた。
外は相変わらず騒がしかった。
少し妙だなと思ったが、オレはオレの思い出の続きを話すために、再び口を開いた。
120 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/07/31(金) 23:42:36.23 ID:eavyn2b60
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コンコンコン
「どうぞ」
がらがら
男「しつれいします」
「あ、君2年C組?」
男「あ、ハイ」
「じゃあみんな揃ったから会議始めようか」
秋になり、文化祭のシーズンとなった。
オレは、クラスから1人ずつ選ばれる、文化祭実行委員に立候補した。
今までのオレであれば、そんな面倒くさいものは決してやらなかった。
が、今のオレには少なからずやる理由がある。
オレは会議室に入ると、会議の進行を行う席に座る一人に目線を向けた。
ぴん、と背筋を伸ばして座るその人は、オレの目線に気付いたようだったが、すぐに何事もなかったように手元の資料に目を落とした。
121 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/07/31(金) 23:43:10.33 ID:eavyn2b60
「それでは、今日の会議はここまでにします。文化祭まであと少しですが、みんなで力を合わせて頑張りましょう」
男「はぁー」
がた
男「・・・」
がらがら
会議室を出たオレは、自分の教室に戻り、なんとなく時間を潰す。
そして時計の針が18時を過ぎ、行内から人影がほとんど消えた頃、3階の階段へ向かう。
男「・・・おう」
女「・・・ん」
男「鍵」
女「うん、はい」
男「下にいるから」
女「うん」
オレが、職員室に生徒会室の鍵を返して、1階の階段出口に向かう。
女「・・・ありがとう」
男「おう」
女「・・・っしょ」
とす
122 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/07/31(金) 23:43:48.68 ID:eavyn2b60
男「大丈夫か?」
女「え?何が?」
男「最近、ちょっと階段降りてくるの遅い気がして」
女「最近寒くなってきたから、ちょっと調子悪いのよ」
男「おい、大丈夫か?」
女「ふふっ・・心配?」
男「・・当たり前だろ」
女「毎冬のことだから大丈夫。あなただって、寒くなったら体動かすの面倒になるでしょ?私も冬は少し筋肉が動かしづらいの」
男「ああ・・なんだ、そういうことか」
女「うん」
オレたちは、昇降口に向かって進む。
女「男君、部活は?」
男「ああ、オレ文実だから免除」
女「そうなの」
男「・・大変だろ、会計」
女「あなたに心配されるほど大変ではないわ。むしろいい勉強になるの」
男「ははっ・・さすがだな」
123 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/07/31(金) 23:44:31.25 ID:eavyn2b60
女「あ」
男「ん?」
女「会議のとき、私の方ジロジロ見るのやめてもらえますか」
男「えー」
女「・・・約束、忘れたんですか?」
男「・・・わかったよ」
女「それに、ちゃんとあなたの仕事をしなさい」
男「うっせーな・・・まったくお前は全然変わんねーのな」
女「当たり前でしょ。人間がそんなに急に変わるものではないわ」
男「へいへい」
ブロロロロ・・
男「あー・・迎え来たみたいだし、オレは帰るわ」
女「あ・・待って」
男「ん?」
女「えっと・・・明日、ヒマかしら?」
男「・・・おう」
女「・・・会計で買出しに行きたいので、一緒に来てもらえますか」
男「・・・おう」
女「じゃあ詳細はメールします」
男「了解」
女「では、さようなら」
男「ん」
女「あの、顔色悪いけど大丈夫ですか?」 男「・・・え?」
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