女「あの、顔色悪いけど大丈夫ですか?」 男「・・・え?」
Part5
86 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/07/29(水) 22:05:16.11 ID:q5tDDTRg0
ーーーーー1週間後。
女「今日はありがとう」
男「おう、オレも宿題進んだし」
女「今日は真面目に練習していたわね」
男「なんだそれ。オレはいつだってマジメだ」
女「ウソおっしゃい」
男「失礼な奴だな」
女「あ、それと」
男「ん?」
女「今日こそは私が奢ります」
男「いーよ。めんどくせーな」
女「だって、最初にそう約束したでしょ」
男「あのさ、よく考えてくれ。毎回オレがお前に奢らせてる絵って、すごいオレ感じ悪くない?」
女「・・・・じゃあ、今お金出します」
男「いーよ、もう。やめてくれ」
女「でも、このままではあなたに借りを作ったままでとても不愉快です」
男「悪かったな不愉快の原因作って」
87 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/07/29(水) 22:05:45.35 ID:q5tDDTRg0
女「何か、欲しいものはありますか?」
男「宿題見せてくれ」
女「ダメ。それは分担制でしょ」
男「えー」
女「私、どこか遊び行ってりしないから、お小遣い意外とあるのよ」
男「はー?」
・・・その言葉からオレは夏休みも一人家で過ごす女の姿が浮かんだ。
可能な限り、誰にも頼らないで生きてきたであろうこいつは、今まで友達と出かけたことなど殆ど無いんじゃないのか?
こいつの場合、誰かと出かけるということは、その誰かに依存しなければいけない。
盛夏だというのに、白い肌をしたこいつは、たぶん海で泳いだことなどないだろう。
もしかしたら、そもそも外出自体嫌いなのかもしれない。
しかしその瞬間、一緒に関数電卓を買いに行った日の光景を思い出した。
・・・・いや、そんなはずはない。
夏に外に出るのを嫌う奴が、あんな夏らしいロングスカートを持っているはずがない。
あんな麦わら帽子を持っているはずがない。
男「・・・じゃあさ、どっか遊び行こうぜ」
女「・・・・・・は?」
88 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/07/29(水) 22:06:50.60 ID:q5tDDTRg0
男「お前があんまり体力使わないで済むとこだとすると・・・水族館なんてどうだ?」
女「え?・・・え?」
男「そういや、○○水族館ってリニューアルしたばっかりだったよな。水族館てあんまり階段とかないだろうしいいんじゃね?」
女「ちょ・・・・ちょっと!」
男「ん?」
女「あなた・・・私とどこか遊びに行きたいって・・・どういう事?」
男「それもダメか?」
女「ダメというか・・・」
男「別に、オレは今更迷惑とか感じないぞ」
女「・・・」
男「?」
女「・・・じゃあ、8月に入ってあなたの部活終わってからでいいですか?」
男「え?ああ。別にいいけど」
女「・・・・わかりました。考えておきます」
男「都合のいい日決まったら、メールしてくれ」
女「・・・うん」
サッカー弱小校であるわが校は、オレの予想通り1回戦で敗退した。
どこでその情報を得たのかは知らないが、試合の帰り、バスの中で女からのメールを受け取った。
メールの文面は、オレが真面目に走り込みをしないからのも、試合に負けた遠因であるという皮肉と、水族館に行く日を指定するものだった。
89 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/07/29(水) 22:08:49.31 ID:q5tDDTRg0
×真面目に走り込みをしないからのも
○真面目に走り込みをしないのも
すいません
今日はここまでにします
90 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/07/29(水) 22:18:14.49 ID:AJ4ce4oKO
乙
91 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/07/29(水) 22:27:27.68 ID:MxJsiEC7O
乙
よく誘った
92 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/07/29(水) 22:48:41.71 ID:hpwVexE6O
女さんこんな事されちゃったら男の事絶対好きになるよな!
でも絶対車椅子の私とこれからもずっと一緒にいてくれるはずない ずっと一緒にいたいって病んじゃうよな!
そうなりそうなのが妄想膨らんでかなりツボだ!
93 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/07/29(水) 23:53:12.88 ID:JvZATG6OO
ちょっとずつ近づいてく感じいいなぁ
これドラマなら来週も見るわー
94 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/07/30(木) 01:14:06.17 ID:qrYbCCct0
乙
終わりが見えないけど見えないままでいい
95 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/07/30(木) 23:45:42.44 ID:Mjky/SnY0
こんばんは、続きです
96 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/07/30(木) 23:46:39.19 ID:Mjky/SnY0
**
ピンポーン
女母「はーい」
ガチャ
男「あ、こんにちは」
女母「こんにちは。上がってくださいな。今支度してるからちょっと待ってあげてね」
男「はい、おじゃまします」
女母「あの子のこと、誘ってくれてありがとね」
男「え・・・いや・・はい」
女母「ふふ」
男「?」
女母「あのね、男君。あなたにお願いがあるの」
男「え?なんですか?」
女母「あの子、友達と遠出したことあまりないの」
男(やっぱりそうなのか)
女母「家族で外に行くときは車で移動することが多いけど、今回は電車で移動して、駅からも歩きでしょ」
男「はい」
97 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/07/30(木) 23:47:10.71 ID:Mjky/SnY0
女母「あの子は、自分でできるって言うかもしれないけど、可能な限り車椅子を押してあげてほしいの」
男「・・・そうですか」
女母「あまり体力がある方ではないから」
男「そうですね・・・・でも女さん嫌がりそうですね」
女母「うん。いつもはね。でも、あなたなら大丈夫だと思うから」
男「・・・そうですかね」
女母「せっかくのデートなんだから、疲れちゃって休んでばっかりは嫌でしょう。あの子も、あなたも」
男「いや・・・えっと・・そういう訳じゃ」
女母「ふふ・・・友達と遊びに行くのは久しぶりでちょっと心配だけど、あなたを信じてあの子を預けますので、よろしくお願いしますね」
男「あー・・・えっと、はい」
女「・・・行きましょうか」
壁に手をつきながら、ゆっくりとした足取りで女がリビングに入ってきた。
長い髪は、背中で緩く留められていた。
女は玄関に置かれた車椅子に座ると、リボンのついた麦わら帽子をかぶった。
98 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/07/30(木) 23:47:41.61 ID:Mjky/SnY0
女「行ってきます」
ガチャ
男「・・・」がし
女「え、ちょっと。自分で動かせるわ」
男「いや、今日はオレが押すよ」
女「大丈夫よ。言ったでしょ?自分でできることは自分でやるって」
男「・・・お前の親にも言われたんだよ。押すのだって疲れるだろ?今日は一日中外なんだから無駄な体力使うなよ」
女「お母さんが余計なこと言ったのね・・・まったく」
男「それに・・・せっかくいい服着てるんだから無駄に汗かくな」
女「・・・服のこともお母さん言ったの?」
男「ん?服の事?・・よく分かんねーけど・・」
女「そ・・・そう」
男「?」
女「・・・でも、あなたが無駄に疲れてしまうのも気が引けるから・・・あなたが疲れたら自分で動かしますから」
男「・・・おう」
99 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/07/30(木) 23:48:12.31 ID:Mjky/SnY0
ガタン・・ゴトン・・
女「・・・実は電車に乗るの、久しぶりなの」
男「あー・・いつも車か」
女「ええ・・・こういう車椅子用の広いスペースがあったのね」
男「最近は大体ついてるぞ。まあだいたい一車両に一か所とかだけど」
女「・・・ここ、座る席ないから、あなたは座席行っていいわよ」
男「いや、オレ立ってる方が楽だから」
女「・・・そう」
男「なあ」
女「何?」
男「水族館でよかったか?」
女「・・はい?」
男「あ、いや・・水族館嫌いじゃないか?」
女「あまり行ったこと無いから分からいわ」
男「そっか」
女「・・・でも、たのしみ」
男「ん」
『次は終点○○駅です。ご乗車ありがとうございました』
100 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/07/30(木) 23:48:40.95 ID:Mjky/SnY0
男「暑くないか?」
女「ええ、大丈夫。あなたこそ」
男「俺は平気だ。部活のが暑いし」
女「そう言えばそうね。あなたいつも疲れるとさっさと木陰入って休んでるものね」
男「ッチ・・なんか引っかかる言い方しやがって」
女「ふふ・・まあ暑くなったら、私の帽子貸してあげるから言いなさいよ」
男「お前な。そんなリボンのついた帽子なんかオレが被ったらへんな奴だろ」
女「なによ、この帽子お気に入りなのよ」
男「いや、お前には似合ってるよ。オレが被ったらおかしいだろって話だ」
女「え・・・・・うん」
男「ん?」
女「あ・・えっと、あの建物かしら?」
男「ああ、たぶんそうだと思う」
女「かなり人が多いわね」
男「やっぱり夏休みだからな。平日だけど混んでるな」
女「別にいいじゃない・・ゆっくり見ましょう」
男「そうだな」
101 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/07/30(木) 23:49:13.98 ID:Mjky/SnY0
男「あーーーー涼しい」
女「ふふ、そうね。空調が効いてるのもそうだけど、水槽に囲まれていると涼しく感じるわね」
男「ああ、それあるな」
女「それにしても、小学生くらいの子供たちが多いわね」
男「ああ、なんかグループに当たっちゃったみたいだな。まあでもイルカとアシカのショーとやらが始まったら空くだろ」
女「そうね」
男「それまで、あそこのフードコーナーでアイスでも食べようぜ」
女「うん。賛成」
男「はい、ミックスな」
女「ソフトクリーム代、出すわ」
男「いや、別にいいよ。面倒だし」
女「あなたにお礼する名目で来てるのよ」
男「ああ。だから、ここに来ただろ。それでいいし」
女「・・・もう」
102 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/07/30(木) 23:49:51.37 ID:Mjky/SnY0
『まもなく、イルカさん、アシカさんのショーが始まります!』
男「お、やっぱり空いてきたな。行こうぜ」
女「うん」
**
男「なあ」
女「なに?」
男「ここに泳いでる魚、うまそうじゃないか?」
女「・・確かに食卓にのぼる魚だけど、その感想はどうかと思うわ」
男「はは・・そうか」
女「でも、サメも居るわよね。食べられたりしないのかしら」
男「えっと・・プランクトンを食べるサメなんだとさ」
女「そうなの」
男「あ、あっちはクラゲの水槽みたいだぞ」
女「クラゲだけ?」
男「ああ、ほら、見ようぜ」
からから
女「うん・・・あら・・これは綺麗ね」
男「すごい色んな種類のクラゲがいるな」
女「そうね。なんか神秘的だわ」
103 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/07/30(木) 23:50:31.79 ID:Mjky/SnY0
男「なー」
女「うん」
男「・・・お前の足さ・・・治療とかで歩けるようにならないのか?」
女「・・・ならないわ」
男「・・そっか」
女「ええ」
男「・・・」
女「・・・」
男「あー・・・ごめん」
女「別に、気にしていないわ。それに前に言ったでしょう?私は歩けないからって、困っていないわ」
男「そうだったな」
女「それに、まだ歩こうと思えば歩けるわ」
ぐっ
男「おい、無理して立ち上がろうとするな」
女「・・・でも、つかまるところがないと立ち上がれないのも確かだけど」
男「・・・オレの手につかまれよ」
女「・・・・・いいの?」
男「・・・別に構わねーよ」
104 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/07/30(木) 23:51:20.38 ID:Mjky/SnY0
がし
女「・・・」
すくっ
女の小さな手が、オレの左腕をつかんだ。
その握力は、とても弱弱しかった。
気が付くとクラゲコーナーにはオレたち以外に人は居なかった。
立ち上がった彼女は、すらりと背筋を伸ばしていた。
薄暗い水槽に囲まれて、白いワンピースが映えていた。
男「大丈夫か?」
女「ええ」
そう言うと、女はゆっくりと歩を進める。
緩く結んだ黒髪が、ふわりと揺れる。
女「あ」
男「おい!」
がし
彼女の輪郭がぶれた。
瞬間、オレは彼女の肩を後ろから抱いた。
ーーーーー1週間後。
女「今日はありがとう」
男「おう、オレも宿題進んだし」
女「今日は真面目に練習していたわね」
男「なんだそれ。オレはいつだってマジメだ」
女「ウソおっしゃい」
男「失礼な奴だな」
女「あ、それと」
男「ん?」
女「今日こそは私が奢ります」
男「いーよ。めんどくせーな」
女「だって、最初にそう約束したでしょ」
男「あのさ、よく考えてくれ。毎回オレがお前に奢らせてる絵って、すごいオレ感じ悪くない?」
女「・・・・じゃあ、今お金出します」
男「いーよ、もう。やめてくれ」
女「でも、このままではあなたに借りを作ったままでとても不愉快です」
男「悪かったな不愉快の原因作って」
87 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/07/29(水) 22:05:45.35 ID:q5tDDTRg0
女「何か、欲しいものはありますか?」
男「宿題見せてくれ」
女「ダメ。それは分担制でしょ」
男「えー」
女「私、どこか遊び行ってりしないから、お小遣い意外とあるのよ」
男「はー?」
・・・その言葉からオレは夏休みも一人家で過ごす女の姿が浮かんだ。
可能な限り、誰にも頼らないで生きてきたであろうこいつは、今まで友達と出かけたことなど殆ど無いんじゃないのか?
こいつの場合、誰かと出かけるということは、その誰かに依存しなければいけない。
盛夏だというのに、白い肌をしたこいつは、たぶん海で泳いだことなどないだろう。
もしかしたら、そもそも外出自体嫌いなのかもしれない。
しかしその瞬間、一緒に関数電卓を買いに行った日の光景を思い出した。
・・・・いや、そんなはずはない。
夏に外に出るのを嫌う奴が、あんな夏らしいロングスカートを持っているはずがない。
あんな麦わら帽子を持っているはずがない。
男「・・・じゃあさ、どっか遊び行こうぜ」
女「・・・・・・は?」
88 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/07/29(水) 22:06:50.60 ID:q5tDDTRg0
男「お前があんまり体力使わないで済むとこだとすると・・・水族館なんてどうだ?」
女「え?・・・え?」
男「そういや、○○水族館ってリニューアルしたばっかりだったよな。水族館てあんまり階段とかないだろうしいいんじゃね?」
女「ちょ・・・・ちょっと!」
男「ん?」
女「あなた・・・私とどこか遊びに行きたいって・・・どういう事?」
男「それもダメか?」
女「ダメというか・・・」
男「別に、オレは今更迷惑とか感じないぞ」
女「・・・」
男「?」
女「・・・じゃあ、8月に入ってあなたの部活終わってからでいいですか?」
男「え?ああ。別にいいけど」
女「・・・・わかりました。考えておきます」
男「都合のいい日決まったら、メールしてくれ」
女「・・・うん」
サッカー弱小校であるわが校は、オレの予想通り1回戦で敗退した。
どこでその情報を得たのかは知らないが、試合の帰り、バスの中で女からのメールを受け取った。
メールの文面は、オレが真面目に走り込みをしないからのも、試合に負けた遠因であるという皮肉と、水族館に行く日を指定するものだった。
89 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/07/29(水) 22:08:49.31 ID:q5tDDTRg0
×真面目に走り込みをしないからのも
○真面目に走り込みをしないのも
すいません
今日はここまでにします
90 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/07/29(水) 22:18:14.49 ID:AJ4ce4oKO
乙
乙
よく誘った
92 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/07/29(水) 22:48:41.71 ID:hpwVexE6O
女さんこんな事されちゃったら男の事絶対好きになるよな!
でも絶対車椅子の私とこれからもずっと一緒にいてくれるはずない ずっと一緒にいたいって病んじゃうよな!
そうなりそうなのが妄想膨らんでかなりツボだ!
93 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/07/29(水) 23:53:12.88 ID:JvZATG6OO
ちょっとずつ近づいてく感じいいなぁ
これドラマなら来週も見るわー
94 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/07/30(木) 01:14:06.17 ID:qrYbCCct0
乙
終わりが見えないけど見えないままでいい
95 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/07/30(木) 23:45:42.44 ID:Mjky/SnY0
こんばんは、続きです
96 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/07/30(木) 23:46:39.19 ID:Mjky/SnY0
**
ピンポーン
女母「はーい」
ガチャ
男「あ、こんにちは」
女母「こんにちは。上がってくださいな。今支度してるからちょっと待ってあげてね」
男「はい、おじゃまします」
女母「あの子のこと、誘ってくれてありがとね」
男「え・・・いや・・はい」
女母「ふふ」
男「?」
女母「あのね、男君。あなたにお願いがあるの」
男「え?なんですか?」
女母「あの子、友達と遠出したことあまりないの」
男(やっぱりそうなのか)
女母「家族で外に行くときは車で移動することが多いけど、今回は電車で移動して、駅からも歩きでしょ」
男「はい」
97 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/07/30(木) 23:47:10.71 ID:Mjky/SnY0
女母「あの子は、自分でできるって言うかもしれないけど、可能な限り車椅子を押してあげてほしいの」
男「・・・そうですか」
女母「あまり体力がある方ではないから」
男「そうですね・・・・でも女さん嫌がりそうですね」
女母「うん。いつもはね。でも、あなたなら大丈夫だと思うから」
男「・・・そうですかね」
女母「せっかくのデートなんだから、疲れちゃって休んでばっかりは嫌でしょう。あの子も、あなたも」
男「いや・・・えっと・・そういう訳じゃ」
女母「ふふ・・・友達と遊びに行くのは久しぶりでちょっと心配だけど、あなたを信じてあの子を預けますので、よろしくお願いしますね」
男「あー・・・えっと、はい」
女「・・・行きましょうか」
壁に手をつきながら、ゆっくりとした足取りで女がリビングに入ってきた。
長い髪は、背中で緩く留められていた。
女は玄関に置かれた車椅子に座ると、リボンのついた麦わら帽子をかぶった。
98 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/07/30(木) 23:47:41.61 ID:Mjky/SnY0
女「行ってきます」
ガチャ
男「・・・」がし
女「え、ちょっと。自分で動かせるわ」
男「いや、今日はオレが押すよ」
女「大丈夫よ。言ったでしょ?自分でできることは自分でやるって」
男「・・・お前の親にも言われたんだよ。押すのだって疲れるだろ?今日は一日中外なんだから無駄な体力使うなよ」
女「お母さんが余計なこと言ったのね・・・まったく」
男「それに・・・せっかくいい服着てるんだから無駄に汗かくな」
女「・・・服のこともお母さん言ったの?」
男「ん?服の事?・・よく分かんねーけど・・」
女「そ・・・そう」
男「?」
女「・・・でも、あなたが無駄に疲れてしまうのも気が引けるから・・・あなたが疲れたら自分で動かしますから」
男「・・・おう」
99 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/07/30(木) 23:48:12.31 ID:Mjky/SnY0
ガタン・・ゴトン・・
女「・・・実は電車に乗るの、久しぶりなの」
男「あー・・いつも車か」
女「ええ・・・こういう車椅子用の広いスペースがあったのね」
男「最近は大体ついてるぞ。まあだいたい一車両に一か所とかだけど」
女「・・・ここ、座る席ないから、あなたは座席行っていいわよ」
男「いや、オレ立ってる方が楽だから」
女「・・・そう」
男「なあ」
女「何?」
男「水族館でよかったか?」
女「・・はい?」
男「あ、いや・・水族館嫌いじゃないか?」
女「あまり行ったこと無いから分からいわ」
男「そっか」
女「・・・でも、たのしみ」
男「ん」
『次は終点○○駅です。ご乗車ありがとうございました』
100 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/07/30(木) 23:48:40.95 ID:Mjky/SnY0
男「暑くないか?」
女「ええ、大丈夫。あなたこそ」
男「俺は平気だ。部活のが暑いし」
女「そう言えばそうね。あなたいつも疲れるとさっさと木陰入って休んでるものね」
男「ッチ・・なんか引っかかる言い方しやがって」
女「ふふ・・まあ暑くなったら、私の帽子貸してあげるから言いなさいよ」
男「お前な。そんなリボンのついた帽子なんかオレが被ったらへんな奴だろ」
女「なによ、この帽子お気に入りなのよ」
男「いや、お前には似合ってるよ。オレが被ったらおかしいだろって話だ」
女「え・・・・・うん」
男「ん?」
女「あ・・えっと、あの建物かしら?」
男「ああ、たぶんそうだと思う」
女「かなり人が多いわね」
男「やっぱり夏休みだからな。平日だけど混んでるな」
女「別にいいじゃない・・ゆっくり見ましょう」
男「そうだな」
101 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/07/30(木) 23:49:13.98 ID:Mjky/SnY0
男「あーーーー涼しい」
女「ふふ、そうね。空調が効いてるのもそうだけど、水槽に囲まれていると涼しく感じるわね」
男「ああ、それあるな」
女「それにしても、小学生くらいの子供たちが多いわね」
男「ああ、なんかグループに当たっちゃったみたいだな。まあでもイルカとアシカのショーとやらが始まったら空くだろ」
女「そうね」
男「それまで、あそこのフードコーナーでアイスでも食べようぜ」
女「うん。賛成」
男「はい、ミックスな」
女「ソフトクリーム代、出すわ」
男「いや、別にいいよ。面倒だし」
女「あなたにお礼する名目で来てるのよ」
男「ああ。だから、ここに来ただろ。それでいいし」
女「・・・もう」
102 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/07/30(木) 23:49:51.37 ID:Mjky/SnY0
『まもなく、イルカさん、アシカさんのショーが始まります!』
男「お、やっぱり空いてきたな。行こうぜ」
女「うん」
**
男「なあ」
女「なに?」
男「ここに泳いでる魚、うまそうじゃないか?」
女「・・確かに食卓にのぼる魚だけど、その感想はどうかと思うわ」
男「はは・・そうか」
女「でも、サメも居るわよね。食べられたりしないのかしら」
男「えっと・・プランクトンを食べるサメなんだとさ」
女「そうなの」
男「あ、あっちはクラゲの水槽みたいだぞ」
女「クラゲだけ?」
男「ああ、ほら、見ようぜ」
からから
女「うん・・・あら・・これは綺麗ね」
男「すごい色んな種類のクラゲがいるな」
女「そうね。なんか神秘的だわ」
103 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/07/30(木) 23:50:31.79 ID:Mjky/SnY0
男「なー」
女「うん」
男「・・・お前の足さ・・・治療とかで歩けるようにならないのか?」
女「・・・ならないわ」
男「・・そっか」
女「ええ」
男「・・・」
女「・・・」
男「あー・・・ごめん」
女「別に、気にしていないわ。それに前に言ったでしょう?私は歩けないからって、困っていないわ」
男「そうだったな」
女「それに、まだ歩こうと思えば歩けるわ」
ぐっ
男「おい、無理して立ち上がろうとするな」
女「・・・でも、つかまるところがないと立ち上がれないのも確かだけど」
男「・・・オレの手につかまれよ」
女「・・・・・いいの?」
男「・・・別に構わねーよ」
104 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/07/30(木) 23:51:20.38 ID:Mjky/SnY0
がし
女「・・・」
すくっ
女の小さな手が、オレの左腕をつかんだ。
その握力は、とても弱弱しかった。
気が付くとクラゲコーナーにはオレたち以外に人は居なかった。
立ち上がった彼女は、すらりと背筋を伸ばしていた。
薄暗い水槽に囲まれて、白いワンピースが映えていた。
男「大丈夫か?」
女「ええ」
そう言うと、女はゆっくりと歩を進める。
緩く結んだ黒髪が、ふわりと揺れる。
女「あ」
男「おい!」
がし
彼女の輪郭がぶれた。
瞬間、オレは彼女の肩を後ろから抱いた。
女「あの、顔色悪いけど大丈夫ですか?」 男「・・・え?」
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