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魔法使い「メラしか使えない」

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Part4
50 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/12/07(日) 21:46:57.70 ID:i1fryCAAO
二人は慌てて風呂に走っていった
獣臭がするなと思ったら自分の臭いだった…………
巨人の肉の臭いがする年頃の娘……
どんなマニアックな人が嫁にもらってくれるだろうか?
私も慌てて二人の後を追った
女兵士「ふうっ」
導師「落ち着きますね〜」
魔法使い「全く」
女兵士「そう言えば二人は何故旅を?」
魔法使い「私の呪いを解くために」
女兵士「呪い?」
魔法使い「メラしか使えない」
女兵士「あ〜、あんな馬鹿デカい巨人もメラだけでやっつけたもんねえ」
導師「メラゾーマであれをやったらどうなるんですかねえ?」
魔法使い「呪いを解いたらやってみたい」
女兵士「国一つ滅びそうだね」
女兵士「火炎系の魔物が出たらどうするの?」
魔法使い「芯まで焼き尽くす」
女兵士「ワイルドだなあ……」
導師「メラもあれだけ束ねたらイオナズン並ですよね」
超強力な爆裂呪文、イオナズン……ではあるが、負けてる気はしない
メラを百発も放てるようになれば他のあらゆる呪文を凌駕できるはず
導師「お師匠様って魔法使いなのに脳筋ですよね〜」

51 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/12/07(日) 21:51:33.37 ID:i1fryCAAO
魔法使い「ふふふ……」
魔法使い「生きるためには躊躇しない、それが旅で学んだこと」
女兵士「巨人の肉には躊躇して欲しかった」
導師「師匠はマタンゴ肉でも平気でかじりそうですね〜」
魔法使い「マタンゴ肉はまだ試してなかった」
導師「毒ですよっ?!」
魔法使い「キングコブラは食べられるらしい」
女兵士「なんつか、肉食系女子ってより肉食人種だね」
魔法使い「マージマタンゴ美味しそうじゃない?」
導師「あの青紫の奴間違いなく毒でしょう」
風呂から上がると夕食を食べに町に出る
残ったお金で高価なディナーを頼むが、なんと言うか物足りない
女兵士「……普通の女の子に戻りたい」
導師「同感です」
魔法使い「残ってる干し恐竜肉炙ろうか」
女兵士「楽しみと思った自分を殴りたい」
導師「町では野菜を食べましょう……」
巨人や恐竜をジビエで食べてるのは私達くらいだろうな
肉ばかりも問題あるのでピーマンのお化けとか食べてみよう
ご飯の後でカジノに寄ると大勝ちした
有るレアアイテムをゲットし、ニコニコしながら宿に帰る
導師「あ〜、久し振りにベッドで寝られる」
女兵士「野宿もたまには良いけど、やっぱりベッドだね」

53 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/12/07(日) 21:53:56.70 ID:i1fryCAAO
導師「この国の向こうには魔王が住んでるはずですが、まだ魔物が大人しいですね?」
女兵士「そうでもないよ?」
女兵士「東の城のお姫様は魔物にさらわれちゃったしねえ」
導師「それ大問題じゃないですか」
女兵士「だよねえ」
導師「魔王とは不戦協定を結ぶ話が出ていたはずでは?」
女兵士「そうなんだよ、でも東の王が約束を反故にして領地拡張を計っちゃってね」
導師「はあ、人間の側が協定違反ですか」
女兵士「魔物に良くない感情を抱いてる人は多いからねえ」
魔法使い「ふん……いじめっ子は、嫌い」
導師「お師匠様は公平に物を見る人なんですねえ」
女兵士「何が本当に公平かは難しい話だよ」
魔法使い「……そうだね」
旅立った頃の私からしてみれば今の食うにも困らず弟子もいる地位はとても不公平に見えたかも知れない
あの時から私は変わらず、メラしか使えないのだから
私はゆっくり目を閉じ
そして夜は明けた
今日は城へと向かう
ロバを引いて街中を歩くと、旅人と言うより商人のようだ
この辺りで恐竜の肉や巨人の肉を販売して町人の反応を見てみたい衝動に駆られる

54 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/12/07(日) 21:59:18.63 ID:i1fryCAAO
そう言えば勇者達は今頃どこを旅しているのだろう?
巨人が居たのでまだこの街には来てないかも知れない
勇者が預言者達に啓示を受けて十年以上経つ
その間に魔物との間に不戦協定の話が出たり、それを人が反故にしたり
その結果として彼は旅立つ事になったのだろう
そう思うと周りに振り回された人生ではないか
少し幼馴染みを哀れにさえ思う
やがて、東の城に着いた
女兵士の出した証文によって私の巨人退治の功績は認められ、騎士号と賞金が与えられた
魔法使いに騎士号とは妙な話ではあるが、権力がいただけるならもらっておこう
うひひ
話を聞いた国王から謁見を許可される
城で準備をしてもらう事になった
旅の身には派手目なドレスをまとわせられたり、変な匂いの香水をかけられるのは面倒だ
女兵士は末端の兵士が王に会うなど、とか言いながらウキウキオロオロしている
全く無骨な武人なら扱いやすいものを
導師は何故か頬を赤らめぼーっとしている
やがて執事から声がかかるとはひっ、とか言ったので緊張していたんだろう

55 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/12/07(日) 22:01:38.46 ID:i1fryCAAO
国王の謁見室に通される
なんつーか謁見室見れば賢王か暗愚の王かは分かる
派手に装飾したシャンデリアに豪華な刺繍をしたカーテン、宝石だらけの燭台
はっきり言って愚の骨頂だ
愚者の王は面倒臭そうに言った
東の王「巨人を退治たお主に儂から要請がある」
いきなりこれだ
魔法使い「姫様を助けろと?」
東の王「!」
王は、にいっと嫌らしく笑う
東の王「賢しいな、大魔導師よ」
お前のような浅ましい人間の考えることなど手に取るように分かる
はっきり言ってこの国は滅ぼしたい
魔法使い「私より適任がおります」
東の王「ほほう」
魔法使い「勇者です」
東の王「おおっ、彼の者が我が地に?!」
私は早々に話を切り上げ、城を出る
とりあえず女兵士は正式に雇用した
女兵士「分かんねー、何考えてるの?」
魔法使い「姫様は助ける」
女兵士「ほあっ!?」
導師「それは、姫様は助けるけど報償は受け取らないと言う事ですか?」
女兵士「ますますわっかんねーっ!」
簡単な話だ
報償を受ければ受けただけ、私はあの愚者の王に縛られる
そんなのはまっぴらごめんだ


56 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/12/07(日) 22:03:23.23 ID:i1fryCAAO
その上で、勇者達がお姫様を取り戻せるとは思わない
一週間程経ってるのに未だに勇者達はこの国にも来れていないのだ
なら私が勇者に手柄を立てさせ、愚者の王の興味を勇者に集めておいた方が、自分がうっかり手柄を立ててもそうそう取り立てようと言う話にならないだろう
それだけの計算だ
女兵士「はあ……、考えてるなあ」
導師「確かに注目されてしまうと取り立てられて辞退するのが難しくなりますね」
魔法使い「おそらく魔王の領地に入るために偵察をしたり、この城を拠点にせざるを得なくなる」
魔法使い「出来るだけあの王に取り立てられて戦争で前線に送られるような事態は避けたい」
女兵士「すごいなあ、よくそこまで考えた」
導師「ぶっちゃけて言えば師匠は自由大好きなんですね」
魔法使い「そう、動機は単純」
導師「それってやっぱり呪いのせいですか?」
考えたこともなかった
だが確かに私はメラしか使えないと言うかなり窮屈な呪いに、今まで苦しめられてきた
自由が欲しいのかも知れない

57 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/12/07(日) 22:06:08.73 ID:i1fryCAAO
女兵士「まあ頭の悪い私にはよく分かんなかったけど、とにかく次はドラゴン退治だな!」
導師「ドラゴン!?」
魔法使い「姫様を監禁してるのがドラゴンって言う事ね?」
魔法使い「定番の物語過ぎて、笑える」
導師「笑えません、ドラゴンなんてメラで勝てるんですか?」
魔法使い「ドラゴン肉のステーキ」
導師「えっ」
魔法使い「ドラゴン肉のハンバーグ」
女兵士「くっ、食いたい……!」
導師「ドラゴンの肉は金と同じ価値……!」
だいぶ私の欲深さに導師が毒されてきたようだ
勝てる勝てないではない
メリットが有るか無いかだ
こうして私達のドラゴン討伐は決まった
愚王の授ける権力には唾を吐きかけても一片の肉の為になら命を懸けられる
なんだか素晴らしいじゃないか
私達は早々と旅の準備を整える
巨人退治の報償で炎の効きづらい服や鎧を買う
冷却系の武器を女兵士に与える
メラは確かに効きづらい相手だが、導師は氷撃系の超強力な呪文、マヒャドが使えた
ここまで準備すれば勝てない相手では無いはずだ
私達はドラゴンが姫を捕らえている幽閉の塔へ向かう

58 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/12/07(日) 22:09:05.45 ID:i1fryCAAO
幽閉の塔攻略の難しさの一つに、その険しい道のりがある
距離も数日、峻険な山岳、屈強な魔物、ドラゴン
私達はしっかりと蓄えた肉をロバの非常食に載せ、山岳を進む
導師や女兵士は緊張しているが、私はむしろにやけていた
この先にはどんな珍味が待っているのだろう
すっかり私自身が野生の猛獣である

それは人間を突き動かす、素晴らしいエネルギー
欲深い者は正義
まず私達を迎えたのは山羊の魔物たち
上等な山羊肉と言った方が良いか?
にやり
山羊達は明らかに私の気迫に震え上がって逃げ出そうとした
しかし私はたまたま手にした星降る腕輪の機動力で回り込んだ
導師「お師匠様、チート!」
女兵士「いつのまにあんなものを……」
魔法使い「なんか城下町のカジノでスライムレースで大穴開けて貰った」
導師「さすが強欲!」
女兵士「しかも豪運!」
私はそれに答えるように唱えた
魔法使い「メラメラメラメラメラメラメラメラメラメラメラメラメラ!」
上等な山羊肉で食事を作る
焼き山羊肉に臭い消しのスパイス、チーズをかけて……
とろーり、うまーっ!
導師「お師匠様に付いてきて良かった!」

59 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/12/07(日) 22:12:04.87 ID:i1fryCAAO
いやー、良い旅だなー
あれ?何のための旅だっけ?
仮にお姫様を解放したとしても勇者に引き渡せないと面倒だな〜
勇者が巨人がいなくなった後の街道を通り城に着くまで二日
その後王と謁見してこちらに向かうまで二日くらいか
最低でそのくらいを見積もっていれば正解かも知れない
ここから塔まで急げばあと一日だが、もう二日も時間を潰せば多少の誤差が有っても行き帰りの内に勇者に会えるはず
こんな小賢しい計算をしつつ私は周辺の魔物を倒すことでレベルアップすることを提案してみる
女兵士は新しい武器に馴染みたかったらしく、すぐに応じた
導師も何か新呪文のアイデアがあるらしく
比較的平たい土地を見つけて非常食……ロバを中心にキャンプを張った
干し蟹肉のスープが美味い
上手く干せたものだ
野晒しが良かったのか
それはそれとして、新たな肉、もとい、魔物の気配がする
ん、猿か
猿肉は不味そうなのでただ単純に焼き払った
やはり警戒されているようでその後も山羊肉や牛肉に襲われた
いや、肉じゃないが
導師「寝る暇が無さそうです」
女兵士「交代で見張りするか」
魔法使い「私はぜんぜん問題なし」

60 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/12/07(日) 22:15:24.23 ID:i1fryCAAO
予定通りの日程をこなし、私達は塔に着いた
塔の中にはアンデッドや野人系などおよそ食えそうにない魔物が巣くっていた
メラ連射力をひたすら強化する
食えないゴミは焼却だ〜!
やがていかにもそれらしい門の前に着く
ついにドラゴンの肉に……じゃなくて姫様に手が届く
糞みたいな愚王も姫様に諭されて心を改めるかも知れない
ドラゴンのハンバーグ食べたいとかではなく
私達はドラゴンに対峙した
導師「美味そう」
ちょ、誰だこの子壊したの
私か
女兵士「いよいよドラゴンハンバーグを味わえるっすね?」
うん、その前に倒さないとね
ステーキ、倒す
ドラゴン「……口上を述べて良いか?」
ドラゴンは何故か震えながら聞いてきた
何故だろう?
屈強なドラゴンが何を怯えているのだろう
そんな美味しそうな肉で何を怯えるのか!
……
すみません
魔法使い「いいよ」
ドラゴン「そうか!」
ドラゴン「我が迷いの塔をよくぞ乗り越えた」
ドラゴン「この奥に汝等の求める姫は確かに在る!」
ドラゴン「汝等が栄光を求めるならば」

61 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/12/07(日) 22:17:01.93 ID:D1BNr5mso
口上述べてないでドラゴンさん逃げてー!

62 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/12/07(日) 22:18:11.66 ID:i1fryCAAO
ドラゴン「我と言う闇に打ち勝って見せよ!!」
ドラゴンは高らかに叫ぶと、強烈な炎の息を吐き出した
しかし私達はトレーニングにより多少の攻撃は回避できるレベルになっていた
すかさず導師はマヒャドを放ち、女兵士は氷結斬りを放つ
私のメラはドラゴンにダメージを与え辛かったが
魔法使い「メラメラメラメラメラメラメラメラメラ……メラメラメラメラメラ!!」
力押しとはまさにこのこと
およそ五十発のメラを叩き込む
ドラゴン「ぐっはああああああああっ!!」
しかしそこは流石のドラゴン、肉弾攻撃で一人ずつ倒しにかかる
私もドラゴンに一撃をもらえば致命傷だ
魔法使い「ぐほっ!?」
食らった
その一撃で私の意識は遠い世界に連れて行かれた
その瞬間導師のベホマ……完全回復魔法が飛んでくる
どうやら回復呪文も効くようだ……助かった……
私は完全に意識を失う直前に立ち直った
しかし
すでに女兵士と導師は打ち倒されていた……
私にはメラしか使えない
ドラゴンに勝つ術はあまり多くない
ドラゴン「覚悟おおおおおおっ」
魔法使い「貴様だああああああああああっ!」
私はドラゴンの瞳に二指を突っ込んで唱えた
魔法使い「メラ!」