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犬娘「魔王になるっ!」

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Part9
99 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/12(火) 02:34:23.16 ID:DXeFWBlAO
貝殻姫「あの、申し訳ないと思いつつあなた方のお話を聞いておりました」
術師「え、まさか」
魚娘「はい、水神の石ですね、どうぞ」
貝殻姫「きゃあ、魚娘ちゃんそれレアアイテム!」
魚娘「そうでしたああああ!」
なんだろうこのハイテンションな魚たちは
術師「……間違いなくこれは水神の石ですわね」
犬娘「もっと頂戴!」
貝殻姫「愛しいあなたのお申し付けとあれば」
貝殻姫は水神の石を数十個も投げてきた
魚娘「ひめさまあああっ、それレアアイテムうううううぅ!」
貝殻姫「そうでしたあああああ!」
魚娘「あの、すみません、それお返しください」
術師「えと、構いませんわよ」
メイド剣士「どうしよう、最高に面倒くさい」
術師「声に出てますわよ」
魚娘「すみません、美しい人魚の私に免じてお許しを」
術師「醜い魚人ですがお気になさらず」
魚娘「がーん!」
貝殻姫「あの、そちらのお方のお名前は」
犬娘「私犬娘!」
メイド剣士「メイド剣士」
術師「術師」
女拳士「アタシは……」
魚娘「分かりました」
女拳士「いっぺん釣り上げるぞ」

100 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/12(火) 02:37:30.18 ID:DXeFWBlAO
貝殻姫「犬娘様はなぜこのような辺境に……」
完全に恋する乙女の眼差しで貝殻姫と名乗る人魚が聞いてくる
犬娘「私北浜に国を作るんだ!」
貝殻姫「あ、そう言えばコトー王様から通達がありましたわ!」
魚娘「あなたが勇者犬娘様!」
貝殻姫「しーっ、しーっ、それ極秘事項ですわっ!」
魚娘「あうちっ聞かなかったことに!」
術師「正直どうでもいいですわ(知ってるし)」
貝殻姫「私貝殻姫と申します、箱入りなもので物を知らないのですが、あなたのこと尊敬していますわ!」
犬娘「ありがとお〜っ!」
術師「ちょうどいいですのでカイオウ島の地理とかカイオウ国の現状とか、分かる範囲で教えて頂けますか?」
貝殻姫「は、はい」
貝殻姫「まずは私達の国、カイオウ国は我らが魚人の先祖、カイオウ様が建国した由緒正しい魔物の国です」
貝殻姫「主力産業は漁業ですわ」
魚娘「漁業と言っても真珠や珊瑚の養殖販売が主です」
貝殻姫「それらの加工業と、あとチュウザンから輸入した原石を加工した貴金属の輸出も行っています」
術師「すごく分かりやすいですわ」

101 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/12(火) 02:39:22.37 ID:DXeFWBlAO
術師「彫金の際はお世話になるかも分かりませんわね」
メイド剣士「いずれ正式に国王様にご挨拶に行きたいのですが」
貝殻姫「父は王とは言ってもほぼ水の中で、あまり人に会いたがりません、政治も母がしていたりします」
術師「引き籠もりですわね」
術師「あと、この水神の石の採取方法を教えてくださいますか?」
貝殻姫「水神の石はこの滝により、水の精霊力が圧縮されたものですから、滝壺の底に潜るか、そこから剥がれ、流れ出した物を拾うしか有りませんわ」
貝殻姫「普通の人には採取が難しいものですから、私共がお売りしております、一つ三万くらいが相場です」
術師「意外と博識ですわね」
魚娘「それはそうです、姫様は部屋に籠もって勉強ばかりしてますから」
女拳士「似なくていいとこ親に似たな」
犬娘「貝殻姫ちゃんはどうやってこの湖に来たの?」
貝殻姫「水拠点テレポートと言う技がありまして、水量がある程度有る場所には人間の転送魔法のように大ジャンプできるんです」
犬娘「へえ〜」
メイド剣士(あ、興味なさそう)

102 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/12(火) 02:41:42.26 ID:DXeFWBlAO
術師「こちらには水神の石の採取にいらしたんですか?」
貝殻姫「はい、たまには気分転換にとこの子に誘われまして」
魚娘「魚娘ですが人魚さんと呼んでください」
メイド剣士「分かりました魚人さん」
魚娘「魚人ではありません人魚です、美しい人魚です」
メイド剣士「刺身にしますよ」
術師「いずれカイオウ国にお邪魔することもあるかも知れません、その際はご案内いただけますか?」
魚娘「水路沿いで良ければ!」
貝殻姫「カイオウは水の都なのでそれでもほとんどの場所に案内できますわ」
貝殻姫「そうだ、パス代わりにこれを」
術師「貝殻ですか」
貝殻姫「王家や外交関係にある国の方にだけ渡しているレアな貝殻です」
犬娘「助かります!」
貝殻姫「い、犬娘様のお役に立てて嬉しいですわ、結婚してください!」
犬娘「お友達で」
貝殻姫「がーん!」
術師(魔王様って時々容赦有りませんね)
メイド剣士(戦闘だと頼もしいんですがね)
女拳士「ここからチュウザンに行くルートとか分からない?」
貝殻姫「陸のことは少し分かりかねますわ」
女拳士「だよね」

103 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/12(火) 02:44:29.28 ID:DXeFWBlAO
術師「うん、今からチュウザンに行くのも良いですわね」
女拳士「まあお金だけはあるからね」
術師「そうだ、その水神の石をここで買い取らせて頂くわけには行きませんか?」
貝殻姫「いいですよ、こちらとしても手間が省けます」
魚娘「お幾つほど必要ですか?」
術師「一つ三万なら20個」
女拳士「ずいぶん一度に買うんだね」
術師「行商に行こうと思ったらそれぐらいの数は必用かと」
メイド剣士「結構痛い出費ですね」
貝殻姫「こちらで採取したばかりのものですから、一つ一万でお譲りしますわ」
犬娘「やった」
術師「助かります」
貝殻姫「いえいえ、二十万も持って帰ったらみんな喜んでくれます!」
メイド剣士「とりあえず手持ちの現金は六十万は残りますね」
女拳士「アタシのお金って百万くらい下ろした?」
術師「買い出しの際に、カードを使えない所も多いですので」
術師「あ、お札って水につけられませんわね」
貝殻姫「あ、大丈夫です、海神のがま口と言うアイテムが」
術師「謎アイテムですわ、少し見せていただけますか?」
貝殻姫「はい」
術師「ふむふむ、水抵抗の魔法がかかってますわね」


104 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/12(火) 02:48:43.73 ID:DXeFWBlAO
貝殻姫「これを作れるなら買い取ります」
術師「え、カイオウ国で作られたものでは無いんですか?」
魚娘「耐水魔法は私達とは反対の属性ですからね」
術師「なるほど」
術師「作れたらお持ちしましょう」
貝殻姫「助かりますわ」
術師「こちらも貿易のアイデアを頂きましたわ」
犬娘「有り難う貝殻ちゃん」
貝殻姫「お役に立てて嬉しいですわ」
魚娘「頬を染めてくねくねしてますが犬娘様はメスですからね!」
貝殻姫「分かってますわ!」
貝殻姫「あ、チュウザンに行かれるのでしたら私からも何かチュウザン王様に贈り物を」
魚娘「それでは水神の石でいいですかね、少し取ってきます」
魚娘はハイヤッと言う気合いと共に一瞬で水の中に消えた
術師「カイオウ国も面白そうですわね、チュウザンの後に少し立ち寄りましょうか」
犬娘「賛成!」
貝殻姫「お待ちしていますわ」
しばらくすると魚娘が五つほど水神の石を取ってきた
術師「うちにも魚人さんがいればただで取れますね」
魚娘「派遣してもいいですよ」
術師「お願いに伺いますわ」
犬娘「じゃあチュウザンに行こうか」
貝殻姫「お気をつけて!」

107 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/15(金) 23:20:58.98 ID:89Tma+lAO
四人は湖の周囲の山の中で比較的低い、牧草地へと上がる道を探す
少し引き返した所で上に続く坂道を見つけた
牧草地を更に南に進むと、少しずつ荒れ地に変わっていく
荒れ地を登って行くと、大きな山が東に見えてきた
やがて、チュウザンの北端の町に辿り着いた
ーーチュウザンーー
チュウザンは大きな山に囲まれた国であり、幾つもの鉱山、広大な農地、牧草地、果樹園、絹糸や繊維製品など、様々な生産物により潤う、非常に豊かな国である
また、カイオウ島最大の面積を誇る国であり、北端から南端までの移動には馬でも数日を要する
チュウザン王の城は北にあるため、ここからチュウザン王の城までは数時間の距離である
チュウザンの王は人間の王であるが、自ら魔王を名乗っており、チュウザンの民からは魔人王と呼ばれている
術師「さて、着いた所で私は一旦帰ります」
犬娘「ええっ!」
術師「転送魔法のテストも有るんですが、べこちゃんたちの餌も用意しないと駄目ですし」
犬娘「そっかあ」
術師「まずは宿を取りましょう、それから帰りますわ」
メイド剣士「私も一緒に帰りましょうか?」
術師「構いませんよ、一人でできますから」

108 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/15(金) 23:23:24.26 ID:89Tma+lAO
女拳士「じゃあ、宿についたら飯にしようぜ」
犬娘「ご飯食べてから帰る?」
術師「いえ、まだ冷凍した魚とか残っているので、節約しますわ」
メイド剣士「少し寂しいですけど、しばらくは我慢ですね」
術師「すぐに帰ってきますわよ」
宿についてすぐに術師は転送魔法により、帰還した
メイド剣士「元々基礎的な転送魔法は使えていたからすんなり成功したみたいですね」
女拳士「着地失敗してたりして」
メイド剣士「不安にさせないでくださいよ!」
女拳士(仲間思いだな)
犬娘「ごはん! ごはん!」
メイド剣士「お金も少ないですし大食い禁止ですよ」
三人が食事を終えて宿に帰ると、しばらくして術師が帰ってきた
術師「ただいまです」
犬娘「おかえりー!」
メイド剣士「良かった、頭打ってないですか?」
術師「打ってませんわ!」
女拳士「すげー心配してたぜ」
術師「あらあら」
メイド剣士「してません!」
術師「まあまあ」
メイド剣士「なんですかそれ!」
術師「まあそれはそれとして」
メイド剣士「どうでもいいんですか!」
術師「実は転送魔法でついでに実家まで帰って、カードを作ってきました」

109 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/15(金) 23:25:19.78 ID:89Tma+lAO
メイド剣士「カード? あ、黒い」
犬娘「いくら入ってるのかな?」
女拳士「公爵家って言ってもお小遣い程度じゃないの?」
術師「まあ……うちの親の親バカぶりを知ってたらそうは思わないでしょうね……」
術師は遠い目をしている
女拳士「んで、いくらなの?」
術師「二千……万……」
女拳士「……」
メイド剣士「……」
犬娘「えええっっ!」
女拳士「アタシ今妙に落ち込んだ」
メイド剣士「お金って有るところには有るんですね……」
術師「ずっとお小遣いを使わないで取っておいたので仕方ないですわ」
女拳士「アタシのお小遣いなら今まで貯めても二千がいいとこだよ」
メイド剣士「一万倍ですね」
術師「うちの親は私が家を出てから送金しまくってたみたいですわ」
犬娘「使うのももったいない気がするね」
術師「これは国庫にしてしまって、何か大規模な開発をする際に使いましょう」
メイド剣士「塩田とかですかね?」
術師「築城しても良いですわね」
女拳士「明日は王様に会わないと駄目だし、寝ようか」
メイド剣士「賛成です」
犬娘「お休みー!」
術師「なんだか一日ですごく疲れましたわ……」

110 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/15(金) 23:27:52.71 ID:89Tma+lAO
夜ーー
雷が遠くで鳴っている
犬娘「すごい音だねー」
メイド剣士「落ちてきたら一溜まりも有りませんよね」
犬娘「雷を魔法にできたら凄い威力かもー」
メイド剣士「良いですね、出来ればですが」
犬娘「やってみようかな」
メイド剣士「……あまりいい予感がしないので明日にしてください」
犬娘「うん」
メイド剣士(あっさり成功して宿が倒壊ってオチになりそうだし……)
幸いにも犬娘はすぐに寝てしまった
メイド剣士(しかし、これから建国のために、どれくらい稼がないと駄目なんだろう……)
メイド剣士「ふあぁ……むにゃ」
メイド剣士はそのまま眠りに落ちた
朝ーー
どうやら雨が降っているようだ
城までは少し遠いと言うことで、一日動けない
犬娘「ちょっと出てくる」
術師「雨で濡れちゃいますわよ?」
メイド剣士「あれをやってみるんですか?」
術師「?」
女拳士「なになに?」
犬娘「内緒〜!」
メイド剣士「まあお楽しみに」
女拳士「なんだろ?」
術師「では、私はまたべこちゃんの世話をしてきますわ」
犬娘「そうだ、その転送魔法で私の村に帰れないかな?」
術師「座標が解れば出来ますわ」

111 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/15(金) 23:30:35.06 ID:89Tma+lAO
犬娘「じゃあ北浜に帰ったらお願いね!」
術師「分かりました」
メイド剣士「私も転送魔法の勉強始めようかな」
女拳士「ん〜、アタシもあの魔法完成させようかな?」
術師「皆さん新技の研究してるんですね、私も幾つか考えないと」
女拳士「まだ技を増やす気か、凄いな」
メイド剣士「みんなを巻き込まない方向でお願いします」
術師「え、あ、うーん?」
メイド剣士「巻き込む気満々か」
その日は雨の中、全員が修行して過ごした
翌日ーー
術師「すっきり晴れましたわね」
女拳士「昨日はあんなに雷鳴ってたのにな」
メイド剣士(あれ、多分魔王様だろうな……)
犬娘「じゃあ、王様に会いに行こう!」
メイド剣士「魔人王様ですか……それに前に会った犬の人……」
術師「そう言えばそんな人いましたね」
女拳士「知り合いがいるなら会いやすそうだな」
四人は準備をすませ城の位置を宿屋の主人に聞くと、すぐに宿を出た
メイド剣士「このあたりは城下町になるんでしょうか、賑やかですね?」
術師「塩を作ったとしてどこに卸せば良いでしょうかね?」
女拳士「まあそのあたりも城で聞いてみようよ」
術師「そうします」

112 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/15(金) 23:32:16.75 ID:89Tma+lAO
やがて、巨大な城壁が見えてくる
正門につくと、貝殻姫の貝殻を示し、コトーからの使いである事を告げた
しばらくしてーー
犬戦士「よおおっ、おまえら、久しぶり!」
犬娘「よおおっ!」
犬戦士「相変わらず元気だな、あ、一人増えてるな」
女拳士「女拳士だ、よろしくな」
犬戦士「また強そうな奴、面白い!」
術師「喧嘩はまた今度で、チュウザン王様に会えますか?」
そこに白い衣を身に纏い、白い杖を携えた術師と同じくらいの、若い女性の導師が現れた
白導師「何をしてるの、バカ犬」
美しい女性だが口は悪いようだ
メイド剣士「気が合いそうです」
術師「失礼、私共コトー王様から北浜の開拓を任された者です、チュウザン王様との御面会をお願いしたいのですが」
白導師「聞いてるわ、あんたたち強い?」
術師「え?」
犬戦士「こいつらつえーって、俺タイマンで負けたもん」
白導師「うちの王はやんちゃな奴だからね、強いと喧嘩することになる」
術師「それは燃えますね」
白導師「似たような脳内だったか」
そこに奥から鈴の音を響かせながらエルフの少女が現れた
銀鈴「私を一人にするの、嫌い、死ね」