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犬娘「魔王になるっ!」

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Part28
345 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/09/16(火) 23:35:26.06 ID:NPhlLmoAO
女神「闇をはらし、あなた達に祝福を」
女神が優しい光を放つと、犬娘たちの怪我が癒え、魔力も満ちてくる
街を燃やしていた闇の炎も消えていく
女神「よっしゃ、帰るか」
術師「ありがとうございます、大魔法使い様」
女神「その呼び名やめて、こっ恥ずかしい」
犬娘「女神様に会えるなんて、勇者みたいだね〜!」
勇者「あはは……、俺もやっと本物の勇者になれたのかな?」
女神「みんなが勇者だよ、強く生きるもの、その心の光こそ光の力、勇者の証」
女神「私はいつも皆を見ているよ、またね」
女神はそれだけ告げると消えていった
女拳士「……腹減ったな」
勇者「俺も」
犬娘「帰ろう!」
術師「ええ」
メイド剣士「美味しいものいっぱい食べるぞ〜!」
魔人王「よし、肉と酒を持って行く、祭りの準備をしていてくれ」
犬娘「やった」
白導師「キタハマで最後の一仕事してくるか」
犬戦士「あー、もうお別れか」
メイド剣士「またいつでも会えますよ」
牧場娘「飯食って昼寝だー!」
犬娘「食べるよ〜!」
銀鈴「私も死ぬほど食べたい気分」

346 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/09/16(火) 23:40:07.79 ID:NPhlLmoAO
…………
犬娘たちは帰還後すぐ、石使いの話を聞いていた
石使い「……ウサギの話は知ってる」
石使い「彼女は飛び級して、十歳の頃には天才の名を欲しいままにしていた」
石使い「それを年上の同級生たちが妬んだ」
石使い「彼女が大切に飼っていたウサギを、生かすでも殺すでもなくいたぶり、足を焼き切ったりしたらしい」
石使い「ウサギは病気になり、彼女も必死に、長く看病したけれど、死んだ」
石使い「元々明るかった彼女が暗く落ち込んで行ったのは、その時から」
石使い「彼女は十二歳で卒業した」
石使い「私もその時留学したからその後は知らない……」
勇者「……」
勇者「それじゃサイセイの子ども達をさらったのは……」
犬娘「うさちゃん……、サイセイは魔物兎が多いから……」
勇者「……くそっ! やっぱり悪いのはサイセイじゃないか!」
勇者「自業自得だったんだ……っ!」
術師「そんな事はありませんわ、彼女のやった事はあまりに酷い」
女拳士「祭りの準備、出来たよ〜!」
女拳士「……ん? どうしたの?」
勇者「……いや、何でもない」
女拳士「あんた泣いてるじゃないか」
メイド剣士「勇者さん……」

347 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/09/16(火) 23:41:56.23 ID:NPhlLmoAO
勇者「今日はめでたいお祭りなんだ、明るく行こう!」
犬娘「……強いね、勇者ちゃん」
勇者「俺だって、さ、本当に魔王様には謝っても謝りきれない……」
犬娘「もう終わったよ」
犬娘「黒衣の魔女を倒したから、きっとお父さんもお母さんも、亡くなった人皆、満足してる」
犬娘「それよりおなか減ったよ〜!」
勇者「行こう!」
女拳士「今日は肉も魚介も食べ放題だ!」
犬娘「やった!」
…………
お祭りは魔人王率いるチュウザンの民、カイオウ国の民やコトーの竜女たち、ヤマナミの騎士たち、ハマミナトの難民たちを迎え、非常に盛大に行われた
キタハマのたくさんの新鮮な魚介類と、チュウザンからは肉や酒や果物が、カイオウ国からは一流の料理人が来て、皆たっぷり食べ、飲んで、歌い踊った
そんななか、魔女娘のところにハマミナト兵らしき男が近づいた
何か危険を感じたメイド剣士と犬娘、術師は彼女の元へ行く
ハマミナト兵「私は危害を加えるものでは有りません、これを」
ハマミナト兵は魔女娘に手紙を差し出した
ハマミナト兵「我々はあなたを王として迎える用意があります」
ハマミナト兵「では」
魔女娘は手紙を開いた

348 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/09/16(火) 23:44:00.05 ID:NPhlLmoAO
『この手紙を魔女娘、君が開く頃、私はこの世に居るまい』
『言い訳になるかも知れないが、私はずっと黒衣の魔女に脅されてきた』
『だが抵抗出来なかった、国民には破壊神信徒に騙された哀れな男としてくれ』
『……君には申し訳なく思っている』
『是非自分亡き後のハマミナトを守って欲しい』
『銀騎士』
魔女娘はそれを読み終わると、口に手を当てて、泣いた
術師「やっぱり戦争に正義なんてありませんわね……」
犬娘「でも、もう当分は戦争も無いよね」
メイド剣士「ハマミナト再建は大変ですよ〜、たくさん食べてください!」
魔女娘「ああ、ああ!」
犬娘「よおっし、私ももっと食べてこよっ!」
犬娘は女拳士たちが囲っているテーブルへ走っていく
その後を、魔女娘はゆっくりと追っていった
術師「私達も全力でサポートしましょうね」
メイド剣士「もちろん!」
…………
やがてまた春が訪れ、城もでき始める
犬娘は自分の部屋とお姫様のような天蓋付きベッドができて、とても喜んだ
早速その日から日替わりでメイド剣士を誘ったり術師を誘ったりして、二人で大きなベッドを楽しんだ
ある日勇者を誘った
勇者「ええ、俺?」

349 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/09/16(火) 23:47:25.15 ID:NPhlLmoAO
勇者は髪を下ろし、ふわふわなネグリジェを着てきた
実に可愛かった
犬娘「誰かと思ったよ〜」
勇者「どうせ似合わないよね……」
犬娘「すっごく可愛いよ!」
二人で寝ていると、誰かが忍び込んできた
白導師「ふひひひひ……」
ゴキブリだ
白導師「おろ、この可愛い子誰?」
白導師「ふひひ、んー、胸がおっきいのが残念だ」
白導師「ん?」
白導師「割と筋肉質……」
勇者「貴様、何してる」
白導師「はわっ?!」
白導師「すげー可愛いから誰かと思ったら、勇者ちゃんか」
勇者「んなっ!」
勇者は可愛いと言われて照れてしまう
しかし懲罰は与えておいた
白導師「ですよね」
…………
仕事が一段落して、いよいよまた雨期が来る
今回は戦争に使った石を使って海側にも即席の堤防を用意した
犬娘「今度こそ嵐に勝つよ!」
メイド剣士「残された最大の敵ですね」
その年の雨期は幸いにも大きな被害を出さずに済んだ
術師「塩田はやっぱり水浸し、こればっかりは仕方ないですわね」
メイド剣士「二千人を超える人たちに人的被害が無かったんだから良かったですよ」
旅人「やっぱり人間が国の柱だからね」


350 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/09/16(火) 23:52:06.21 ID:NPhlLmoAO
復興作業も手短に終わると、火山の麓に闘技場の建設を始めたり、娯楽施設の建設も進んでいく
移民はどんどん増えている
数年もすれば一万人に届くだろう
そして今年の夏こそはSランク戦に挑むことになった
コトーに行ってみると驚いた
牧場娘「あれ、あんたらも来たのかい!」
魔人王「ふふ、今年は面白くなりそうだ」
待ち受けていたのは魔人王たちだった
術師「魔人王様はSランク戦何年ぶりですか?」
魔人王「八年くらいか?」
牧場娘「覚えてないね、あの時はあんた一人で楽勝だったし」
魔人王「コトー王には敗れたがな」
白導師「あんな化け物勝てないよね〜」
術師「闇の衣は破れたんです?」
銀鈴「あの時は魔人王様は独力で叩き破った」
術師「凄まじい……」
メイド剣士「脳筋度が」
犬娘「闇の衣破っても駄目なのか〜」
談笑していると、対戦表が配られる
チームは八つ、三回勝てば優勝、その一週間後に真・魔王戦だ
犬娘達と魔人王達は決勝で当たることになる
しかし今回は魔人王も犬戦士、白導師、銀鈴、牧場娘と五人チームを作っている
勇者「はは、勝てるのかあのチームに」
犬娘「本当に強いよ〜」

351 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/09/16(火) 23:54:26.18 ID:NPhlLmoAO
術師「まあまずは一回戦ですわ」
メイド剣士「Sランクですもんね」
女拳士「とりあえず一回戦の敵は魔人とか竜だね、流石に楽な相手じゃないよ」
術師「んー、燃えまくりですわ!」
メイド剣士「燃えますね!」
開会式が始まった
係員「Sランク戦は今回よりヒーラー様の封印結界により、超級魔法の使用が許可されます」
係員「各人死力を尽くし、最高の戦いを魔王様に献上するように!」
術師「勝機が見えてきましたわね」
メイド剣士「魔人王様にもですか?」
術師「無理な気がしてきましたわ」
メイド剣士「ですよね」
一回戦が始まる
魔法に強い魔人たちは犬娘と女拳士、勇者が当たり、術師とメイド剣士はサポートに徹する
メイド剣士「全体能力強化!」
犬娘「雷神脚!」
女拳士「竜鱗装爆裂脚!」
勇者「三色雷神剣!」
流石に能力強化超級魔法三連撃では魔法に強いとかは関係なかったようである
相手に申し訳ないくらいの快勝だった
次の戦いで勝ち残った係員の顔が少し青い
魔人王達は神竜クラスの敵と戦ったが、魔人王にとっては雑魚でしかなかった
あれは果たして人間なのだろうか

352 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/09/16(火) 23:56:32.57 ID:NPhlLmoAO
観客はすでに決勝戦を楽しみにしているようだ
係員「少しは面白い戦いにしたいので、私も真の姿を現しますね」
そう宣言すると、痩せた係員は蒼く筋肉質な魔神の姿になった
術師「ただ者でないのは分かってましたが」
メイド剣士「強そうですね」
勇者「破壊神に比べて?」
犬娘「そう考えたら勝てそうだね!」
係員「ははっ、お手柔らかに!」
係員は先制で超級魔法を撃ってきた
術師「封印結界!」
係員「ははは、勝負を投げたくなりました」
係員は更に奥の手を出してくる
追跡してくる強力な閃光を放つ
が、犬娘と女拳士は自分からその魔法に当たりに行く
後衛を狙わせない策だ
更に白衣を纏っているために二人ともピンピンしている
係員「んー、リタイアします」
勝負は係員のリタイアで終わった
彼もこの後に仕事が有るのだろう
犬娘「不完全燃焼だよーっ!」
女拳士「強すぎるのも問題ありか?」
術師「何を言ってるやら、次の相手が分かってますの?」
犬娘「あ〜」
メイド剣士「次は私達が青くなる番ですね」
勇者「でも、勝てるよきっと」
女拳士「みんなが力を合わせたらね!」

353 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/09/16(火) 23:59:34.79 ID:NPhlLmoAO
魔人王たちの準決勝戦は、もはや語るまでも無かろう
相手方は竜女と緑竜たちだったが、まったく歯が立たなかった
あらゆる攻撃は牧場娘に逸らされるか白導師に回復され、反撃は魔人王の合成魔法となれば、もはや哀れな次元である
予定通りと言うべき決勝戦
魔人王たちは今回ずっと白衣を纏っている
最早生きて帰れるのか心配になるレベルの超強敵
だが、犬娘は怯まない
犬娘「魔人王さんを倒すよ!」
魔人王「楽しい戦いになりそうだな」
白導師「負けたらパンツ一枚!」
犬戦士「そんなもんもらうわけ無いだろ」
銀鈴「Sランク戦は相手の物をもらえないルール、国が動くことになると死ぬほどしんどい」
牧場娘「まあ当然っちゃ当然か」
メイド剣士「面白い戦いにするために逆にリスクを下げてるんですね」
術師「やっつけたら同じですわ」
女拳士「そうだ、やっちまおう」
勇者「俺達は最強だ!」
犬娘「行くよ!」
犬娘「私は魔人王さんも真の魔王様も倒し、本物の……」
犬娘「魔王になる!」
最終章「犬娘、魔王になる」 完

354 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/09/17(水) 00:01:43.97 ID:LELI1+/AO
ーーエピローグーー
牧場娘「はあ〜、真夏のビーチでお昼寝なんて最高〜!」
術師「本当ですわね」
白導師「犬娘ちゃん、サンオイル塗ったげる〜」
犬娘「雷神脚」
白導師「海で雷放ったら海水浴客全滅しちゃう!」
メイド剣士「先日里帰りして来た折にヤマナミ王様からいくらか聞いたのですが」
術師「な、何をですか?」
メイド剣士「術師さんって錬金術以外の座学はだいたい逃げ出して野山を駆け回っていたそうですね」
術師「くっ、あなたにだけは知られたくありませんでしたわ!」
メイド剣士「道理で敬語に違和感があると思いました!」
術師「ぐぬぬ……」
術師「あ、貝殻姫さんとか敬語上手ですわよね、教わろうかしら?」
メイド剣士「話をそらさない〜」
沖では魔人王がサメを取ってきたり、女拳士が魚娘とガチレースしたり、犬娘と貝殻姫が優雅に泳いだり、勇者と犬戦士が銛で魚を突いてきたりしている
牧場娘「こんな平和な日にそんな話はヤボヤボ!」
メイド剣士「のんびりしましょうか」
メイド剣士「そう言えば結局魔人王様にはかないませんでしたね〜」
牧場娘「まだまだ早かったね」
勇者「魚だいぶ取ったよ〜」
犬戦士「今日もバーベキューだな!」

355 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/09/17(水) 00:03:27.21 ID:LELI1+/AO
牧場娘「しかしコトーの魔王……、あれは何者だろう?」
術師「思い出さないようにしていますわ」
メイド剣士「一人でチュウザンに勝てるとか、頭がおかしいのかと」
銀鈴「ちょっとくやしかった、いつか死なせたい」
白導師「まあ二百年光の力を持って成長し続けた化け物だからね、犬娘ちゃんがあと何十年か修行したら勝てるんじゃない?」
術師「長生きしないと駄目ですわね」
勇者「できるかな〜」
白導師「大魔法使い様みたいに長生きしちゃう人いるから、多分できると思うんだけどね」
…………
犬娘「貝殻ちゃん待って〜!」
犬娘は凄まじい速さで犬掻きしている
貝殻姫「犬娘様こそ速いですわ!」
女拳士「うおりゃああああ!」
魚娘「魚人の本気泳ぎに着いてこないで!」
女拳士「やっぱり魚人だったのか」
魚娘「人魚です、ギガンテック美しい人魚です!」
メイド剣士「平和ですね〜」
白導師「私らで勝ち取った平和だよ〜」
牧場娘「昼寝できる幸せ……、全部皆のお陰だね」
術師「全くですわ」
皆がのんびりしている浜に、犬娘達が上がってくる
犬娘は開口一番こう言った
犬娘「おなか減った!」
ーー終わりーー

356 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/09/17(水) 00:11:46.81 ID:LELI1+/AO
終わっちゃいました
この後犬娘は魔王として、たくさんの冒険者たちを支えていく事になります
狐娘や猫娘、虎さんやシスター、虎兄弟にモグラ師弟、この物語を影で支えてきた人たちにも物語があります
出来れば皆さんに彼らの物語に興味を持って頂ければと思います
見てみたいお話があればリクエスト下されば幸せです
前作に比べリアリティの薄いお話なので楽な分難しかったです
率直な感想を頂ければ次回作から生かしたいと思います
では、また

357 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/09/17(水) 22:54:59.62 ID:HWM5EED5o
おつかれさん
バトル方向と開拓方向、魔法の便利さと不便さからくる苦労のバランスが難しいね

358 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/09/18(木) 18:04:42.51 ID:LkGW5EnAO
>>357
そうですね、シミュレーション好きなんで開拓中心に書きたかったんですけど、普通の人には退屈かな、と思ったのでバトル中心にして、開拓の話の合間に訓練でバトルさせたりしました
転送魔法は便利ですが術師でも覚えてなかったことでレアで難しく魔力消費の高い術、としています
経済のレベルでは生産調整など流通量を調整する政策があるので、そんなに気にすることはないと思っています
このお話が形になったのは黒衣の魔女のお陰で、彼女が出てこなかったらこのお話は書かなかったと思います
とりあえずまとまって良かったです
有り難う御座います