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犬娘「魔王になるっ!」

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Part6
64 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/12(火) 00:53:34.50 ID:DXeFWBlAO
メイド剣士「今日は私も食べますよ〜!」
術師「お財布の心配いりませんものね、まさか十万Gももらえるとは」
女拳士「あ、アタシの稼ぎも渡しとくね」
メイド剣士「そう言えば女拳士さんってAランクで勝ちまくってたんですよね」
女拳士「うん、だからカードで悪いけど、はい」
メイド剣士「これはっ、巷で噂の黒いカード……」
術師「たしか百万Gはないと収得できないのでは」
女拳士「うん、二百(万)くらい入ってる」
メイド剣士「」
術師「まあまあ大金ですわね」
メイド剣士「ちょっとまて」
そう言えば術師も大金持ちである
メイド剣士「お金に苦労しないのはそれはそれで問題がありますよ」
女拳士「そお?」
メイド剣士「あ、この人馬鹿だっけ」
術師「聞こえてますわよ!」
術師「まあ、これから新しい国を作るんだからお金はいくらあっても足りませんわよ」
術師「一応建国のモデルケースと言われてるオリファン開発記録を買っておきました」
さっきから分厚い本を持っていると思ったら、用意が良いものだ
メイド剣士「あ、来ましたよ」
四人の前に料理が運ばれてくる
犬娘「いっただっきまぁーっす!」

65 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/12(火) 00:55:46.24 ID:DXeFWBlAO
犬娘と女拳士は大食いの中の大食いだ
テーブルに並べられた料理は数人前あったが最初から白いお皿を置かれたように一瞬で蒸発した
術師「すみません、追加をお願いしますわ」
メイド剣士「……私人参しか食べてない……」
しばらくして、さっきの倍の量の料理が運ばれてきた
まわりの人間が目を見開いてこちらを見ている
一瞬で消えていく肉や魚の山
メイド剣士「この店を食いつぶすつもりですか」
メイド剣士はまたも人参をかじっている
術師「まだ私何も食べてませんわ」
メイド剣士「私もウサギ並みに人参ばかり食べてる気がします」
二人が望むだけ注文をさせてみるが、またもすぐに食べ尽くす
術師「建国できるんだろうか、もはや国家をも食い尽くす勢いである」
メイド剣士「術師さんが壊れた!?」
犬娘「術師さん、あーん」
術師「あーん」
犬娘が気を使ってくれるだけでご褒美をもらった犬のように従順な術師
メイド剣士はまた人参を食べていた
メイド剣士「人参好きですけど」

66 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/12(火) 00:57:19.50 ID:DXeFWBlAO
女拳士「そういやキミたち、なんでパーティー作ったの?」
メイド剣士「私は王命を受けて」
術師「私は彼女に興味があったので」
女拳士「ふーん」
犬娘「みんないいこだむふぉっ」
術師「口に物を入れながら喋らない」
メイド剣士「先に突っ込まれましたね」
女拳士「つまりこの娘の光の力に導かれたわけだ」
メイド剣士「光の力?」
術師「狼主様もそう言っておられました」
女拳士「おお、ふかふかちゃん元気?」
術師「あれ死ぬんですか?」
メイド剣士「それでその光の力とは……」
女拳士「平たく言うと、勇者の力だね」
術師「驚異的な成長力、人や魔物まで惹きつける魅力、闇を破壊する力、強者にも怯まない勇気」
女拳士「光の力を計る魔法もあるらしいよ」
女拳士「聞くところによると狼主やコトー王様、ヤマナミ王家の人はそれで人の力を計っているらしい」
メイド剣士「では私を彼女につけられたのも術師さんの同行を狼主様が許したのも」
女拳士「多分魔王様の力が分かっていたんだろ」
女拳士「アタシより強いなんて勇者としか思えないからね」
犬娘「私魔王だよ?」
術師「そうですわね」

67 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/12(火) 01:00:36.28 ID:DXeFWBlAO
そう言うと口の中一杯に食べ物を含んでもごもご言っている犬娘の耳をなでた
メイド剣士「今度は尻尾をもふります!」
女拳士「アタシのは?」
犬娘「くすぐったいよぉ〜!」
術師「そう言えば拳士さんの出自はどこですか?」
女拳士「アタシはニシハテの生まれだよ」
術師「あら、私はタイガンですよ」
女拳士「へえ、近所だね」
術師「それだけの力を持っているのに噂も聞いたことがないとは変ですね?」
女拳士「アタシは旅烏だったからね〜」
女拳士「本格的な修行したのは東大陸とかかつての魔王領とか、魔物が多い土地だったよ」
術師「なるほど」
メイド剣士「術師さんはタイガンでは有名だったんですか?」
術師「一応公爵家のお姫様として知られてはいましたけどねえ」
術師「まあ親の肩書きで私には関係ありませんわ、跡継ぎも兄様がいましたし」
メイド剣士「ふ〜ん……、って、えええっ!」
犬娘「だからお金持ちなんだね!」
術師「ヤマナミ王家とも縁深いので私が狼主様に仕えるまでは何度か行ってますわ」
メイド剣士「私が王家に仕え始めたのは二年前ですので……」
術師「私が狼主様に仕えたのもそれくらいですわ」

68 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/12(火) 01:04:25.79 ID:DXeFWBlAO
術師「って十二歳で働き始めたんですの?」
メイド剣士「はあ、メイド長様が変態だったのもありますが」
ーーヤマナミーー
メイド長「……くしゅん!」
ヤマナミ王「お姉ちゃん風邪?」
メイド長「大丈夫大丈夫、……くしゅん!」
ヤマナミ王「変態で性格悪いのにくしゃみは可愛いね」
メイド長「おうっ」
ーーコトー、酒場ーー
術師「するとかつて勇者と共に戦った剣士の家系なのですね」
メイド剣士「そう言うことになります、と言ってもずいぶん昔の勇者様らしく、お金も権力も残ってませんでしたが」
メイド剣士「両親が流行病で亡くなった時にメイド長様がどこからか聞きつけて、拾ってくださいました」
女拳士「その剣や剣技は血筋かあ」
犬娘「もぐもご」
メイド剣士「口に物を入れて喋らない!」
犬娘「ごめんなさい」
犬娘「メイド剣士ちゃんの剣すごく速いよぉ〜」
メイド剣士「竜にダメージ与えられませんがね……」
術師「竜のウロコより硬いものはあまりないと思いますが、そのうち出来ますわよ」
女拳士「若いのに竜退治とか気が早いよ」
女拳士「アタシが初めてドラゴンにガチで勝ったの十七の時だしねえ」


69 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/12(火) 01:07:03.68 ID:DXeFWBlAO
術師「私も十四の年に一人でドラゴンには勝てませんでしたわ」
女拳士「それが普通だわ、むしろメイドちゃんは強すぎるくらいだと思うけど」
メイド剣士「そ、そうでしょうか……」
どうやらメイド剣士はほめられるのに弱いようだ
女拳士(可愛いね)
術師(可愛いですわね)
犬娘「ジュースくださ〜い」
メイド剣士「そ、そろそろ帰りましょうか」
術師「そうですわね」
女拳士「ここはアタシの負け分の賞金で払うよ」
術師「別に構いませんわよ」
女拳士「いや、これからお世話になるし」
メイド剣士「ああ、食費大変そう……」
ーーコトー、宿ーー
術師「少し聞いておきたいことがあったのですが……」
宿では二組に別れ、術師と女拳士、メイド剣士と犬娘で部屋を取っていた
女拳士「うん、なんでも聞いて」
術師「話しにくい事かも分かりませんが」
術師「蠱毒の壷で敗れた経験はありますか?」
女拳士「三度ある」
術師「さ、三度……あの強さで……」
女拳士「しかもだいたい1対1で負けてる」

70 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/12(火) 01:08:51.20 ID:DXeFWBlAO
女拳士「蠱毒の壷では年に一度、Sランク戦って言うのが有るんだが」
術師「Sランク……あれより上が有るんですか」
女拳士「魔王様が会場に結界を張ってくれて、優勝者と戦ってくれるって大会なんだけど」
術師「あら、俄然興味が湧いてきましたわ」
女拳士「いつか四人で参加しようぜ」
術師「もちろん!」
女拳士「そこで二回」
術師「どんな相手だったんですか?」
女拳士「あんたも知ってる係員さんと、魔王を倒しにきたって言う勇者を名乗る奴に負けた」
術師「……勇者!」
女拳士「知ってるの?」
術師「ええ……」
術師は犬娘の村が勇者に滅ぼされた経緯を話した
女拳士「……あいつそんな悪い奴に見えなかったけど……酷いな」
術師「何か理由があるのかも分かりませんが、魔王様にとっては親の仇、いつか戦うことになるかも分かりませんわ」
女拳士「仮にも勇者を名乗ってる奴だ、そう簡単には勝てないぞ」
術師「こちらにも勇者はいましてよ」
女拳士「確かにな」
術師「三度目は私達ですか?」
女拳士「いや」
女拳士「あんたらは四回目」

71 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/12(火) 01:14:01.60 ID:DXeFWBlAO
翌朝ーー
四人はコトー王に呼ばれ、正式なカイオウ北開拓の命を受けた
魔王「ま、面倒で時間のかかることだし、今日からでも行ってくれたら助かるんだけど」
メイド剣士「どうしますか、術師さん」
術師「女拳士さんを手に入れられた今、無理にここで戦い続ける意味は有りませんわ」
メイド剣士「いよいよカイオウ島に向かうわけですね」
係員「カイオウ島に渡る船はカイオウ島で一番大きな国ハマミナトの国に繋がっています」
係員「ハマミナト王は善良な人間の王です、紹介状を書いておきましょう」
魔王「うむ、最初のうちは主力の貿易相手になるだろうからな」
犬娘「じゃあまずは王様に会います!」
魔王「そうだな、その後北上した所に砂浜があるから、そこに拠点を設けるといい」
魔王「最終的には港を作りカイオウ、コトー間航路をもう一つ開拓してもらいたい」
魔王「カイオウ島への航路が一つだとチュウザン国やカイオウ国からの輸送が滞ることも有り得るからな」
術師「良い資源があるんですか?」
係員「カイオウ島は全体的に農業が盛んで、小麦や肉類などを多く輸入しています」
係員「チュウザンはその中でもとても広大な農場を持つ農業国です」

72 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/12(火) 01:16:29.02 ID:DXeFWBlAO
係員「その上にチュウザンは山岳地帯ですので、鉱物資源も豊富です」
魔王「かなりの資源量を誇るミスリル銀鉱山がある、これは抑えておきたいわけだな」
犬娘「……ぐう」
メイド剣士「これはかなり勉強しないと駄目ですね……」
術師「そこでこれ、オリファン開発記録ですわ!」
魔王「おっ、懐かしいな」
術師「ここに生の開発協力者がいましたわ」
女拳士「なま!?」
魔王「まあほんとに困ったら助言も協力もしてやる、こちらとしてもメリットがあるから頼んでいるわけだからな」
術師「そうですね、できる限りは自分達でやらないと一国を作るなんてできませんわね」
メイド剣士「頑張ります!」
犬娘「むにゃ……」
魔王は覚醒の魔法を使った
犬娘「はうっ」
よだれを垂らしていた犬娘は飛び起きた
魔王「では勇者犬娘よ、行くが良い」
犬娘「勇者?」
魔王「いっぺん言ってみたかったんだよな」
メイド剣士「コトー王様ってお子様みたいですね」
術師「……子供ばっかりな気がしてきましたわ」
女拳士「じゃあ、いこうぜ!」
犬娘「おーっ!」
メイド剣士「そこは魔王様がリーダーなのでは……」

73 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/12(火) 01:19:42.00 ID:DXeFWBlAO
ーー船上ーー
術師「船旅は二回目ですわね」
メイド剣士「これから新天地へ向かうんですね……」
犬娘「カイオウ西ハマミナトにつくのは明日の夜だって」
術師「船の食料足りますかね?」
メイド剣士「ひと月分は乗せてるらしいから流石に……足りるかなあ?」
術師「いや、それだけあれば足りるでしょ」
犬娘「みんなー、あっちで魚釣りできるよーっ!」
女拳士「おっ、面白そうだな」
術師「食料対策しておかないと北浜ではしばらく食料は自己調達ですわよ」
メイド剣士「ほかにも色々準備がいりますよね」
術師「オリファン開発記録では食料は輸入が多いんですよね」
メイド剣士「チュウザンからの輸入路は必要ですから、拠点を設けたらチュウザンへ行きましょう」
術師「あら、賢いですわ」
メイド剣士「魔王様を支えるためには勉強しなければ」
術師「魔王様に勝てるの勉強だけですものね」
メイド剣士「うるさいです」
犬娘「はやくおいでよーっ!」
メイド剣士「はあい!」
術師「素直になれば可愛いのに」
ニシハテを経由し、やがて翌日には船からカイオウ島が見え始める

74 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/12(火) 01:23:03.52 ID:DXeFWBlAO
メイド剣士「あれが私達が開拓する予定の北浜ですね」
術師「海側から見られるのは貴重ですわ、よく見ておきましょう」
メイド剣士「南はなだらかな山岳地帯、西は磯、東は森ですね」
術師「地図によれば南東に山に囲まれた湖、その南がチュウザン、さらに南に下るとカイオウ国」
メイド剣士「歴史資料も読んでますがもともとはカイオウ国だけだったんですね」
術師「そこに人間の王がコトー王様の依頼を受けて入植したのは120年前」
メイド剣士「国作りって時間かかりますよね」
術師「五年以内に港を作るまでこぎつけたいですわ」
犬娘「綺麗だね〜!」
女拳士「ああ、あの山の上から夕日とか見たら最高だろうな!」
術師「観光資源ゲット」
メイド剣士「抜かりないですね」
そして日が傾きかけた頃、船はハマミナトに辿り着いた
ーーハマミナトーー
ハマミナトはカイオウ島の輸出を一手に担う貿易大国である
主要産業は工業、漁業、農業、人材派遣であり、教育も盛んである
商人も多く、巨大になったハマミナトは今やカイオウ島最大の都市国家だ
そこに四人は降り立つ

75 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/12(火) 01:26:36.97 ID:DXeFWBlAO
術師「まずは宿を取りますわ」
犬娘「王様と会うのは明日だね」
術師「私とメイド剣士さんは街をまわってから宿に帰りますので、お二人は何か食べてて良いですよ」
女拳士「やったね!」
犬娘「やったね!」
メイド剣士「旅立ちの準備や拠点作りにお金がかかりますので控え目にお願いします」
女拳士「はあい」
犬娘「はあい」
術師「姉妹みたいですわね」
…………
術師「さて、荷物も置きましたし、行きましょうか」
メイド剣士「はい、地形の把握をしておくんですね」
術師「街づくりのヒントも得られるかも分かりませんからね」
メイド剣士はコトーで手に入れたカイオウ島の地図を開く
メイド剣士「大きな街道が東に数本、南に二本伸びていますね」
術師「南はハマミナト穀倉地帯、カイオウ国で、東はチュウザンです」
メイド剣士「チュウザンとの貿易がかなり重要であることは見て取れますね」
術師「交差点となっているこのあたりは人も多いし、かなりの都会のようですね」
メイド剣士「王城は北の山の麓で、一応北に伸びる山道が一本有るようです」
術師「まずは街道の整備ですかね……」