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犬娘「魔王になるっ!」

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Part12
134 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/16(土) 00:38:19.90 ID:YCMgiEvAO
メイド剣士「くしゅっ」
女拳士「あら、こっちもかい」
メイド剣士「魚人め、いつか刺身にしてやる……」
魚娘「勘弁してください」
貝殻姫「お母様、こちらがコトー王様の使い、犬娘様です」
人魚女王「よろしくね〜っ!」
犬娘「よろしく〜っ!」
人魚女王「まあ、素敵な方ね!」
貝殻姫「でしょ!」
人魚女王「尻尾が毛針みたいで美味しそう」
犬娘「美味しくないよっ!」
犬娘は慌てて尻尾を隠した
人魚女王「北浜ですとチュウザン経由ですからなかなか取引とかは出来ませんね」
術師「海上輸送なんかすれば大量に取引出来ますわ」
人魚女王「ふむ、港を作りさえすれば船はこちらで用意します、魚人以外がカイオウ国近海を使うのは好ましく有りませんので」
術師「カイオウ国の海上ルールは厳しいでしょうし、それでお願いしますわ」
術師「港が出来た際は耐水装備などを輸出しようと考えています」
人魚女王「こちらからは何を送りますか?」
術師「彫金をお願いしたいのですが」
人魚女王「ネックレスや指輪の台を送れば良いですね、よく考えてるなあ」

135 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/16(土) 00:44:11.24 ID:YCMgiEvAO
人魚女王「あと、このあたりは漁獲量が少ないので海産物も輸入したいなあ」
貝殻姫「海際に住んでる人が際限なく食べちゃうんですよね」
術師「意外ですわね、魚は食べないから一般的な漁業が無いのかと」
人魚女王「みんな自分で捕って食べちゃうから商売が成立しづらい歴史があるんですよ」
メイド剣士「それで取りすぎて輸入ですか」
術師「うーん、養殖を考えないと駄目ですかね?」
メイド剣士「チュウザンへの輸送分も有りますしね……、チュウザンで魚が高騰してても不思議じゃないですね」
犬娘「う……」
犬娘は必死に眠気を堪えている
女拳士「立派だね、魔王様」
犬娘「う、うん」
貝殻姫「犬娘様、疲れてらっしゃるならご無理はなさらず私の部屋にいらっしゃいませんか?」
犬娘「うん……」
女拳士「アタシも行っていい?」
貝殻姫「ご招待します、魚娘ちゃん、陸のお客様用の接客準備を」
魚娘「はいなっ」
魚娘はまた水柱を立てて泳いでいった
犬娘「くしゅっ」
女拳士「もうちょっと大人しく泳いでくれよ……」
貝殻姫「言っておきます、すみませんお客様に……」

136 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/16(土) 00:48:33.94 ID:YCMgiEvAO
ーー貝殻姫の部屋ーー
部屋はほぼ水の中だが、来客用にわずかに水上に道がある
その奥には比較的広い場所があり、テーブルとソファーが置いてある
犬娘「ふう」
貝殻姫「今お紅茶をお持ちします、南チュウザン産の一級品ですよ」
女拳士「チュウザン産の物は本当に幅広いね」
犬娘「楽しみ〜」
…………
魚娘「お待たせしました〜っ!」
人魚メイド「こちらデザートになります」
犬娘「わあ、良い香りだよ!」
女拳士「ほんとだ、なんか得しちゃったな」
貝殻姫「どうぞお召し上がりください」
犬娘「いっただきまーす!」
女拳士(魔王様、すっかり元気になったね……)
女拳士「ん、美味い」
犬娘「ん〜っ、幸せ!」
貝殻姫「我が国は職人気質の国なもので、料理人も一流です」
貝殻姫はえっへん、と胸を反らす
女拳士「やっぱり女の子はスイーツだね」
犬娘「だね〜っ!」
三人で楽しんでいると白導師が頭の上半分を出して覗き込んで来た
女拳士「ギョッとするからやめてくれ」
白導師「スイーツ……」
犬娘「こわいこわい」
貝殻姫「えと、もう一つ用意するのでどうぞ?」

137 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/16(土) 00:50:53.75 ID:YCMgiEvAO
白導師「お構いなく、実は魔人王様からお返しの品を持ってきてまして」
まだ壁から頭の上半分だけ出して喋っている
女拳士「その体勢キツくない?」
白導師「キツいな」
そう言うと白導師は普通に部屋に入ってきた
女拳士「いったいなんなんだ」
白導師「犬娘ちゃんが可愛かったから」
女拳士「は?」
白導師「犬娘ちゃんが可愛かったから」
女拳士「言い直さんでいい」
犬娘「この人怖い」
白導師「だーっ、そうじゃなくて!」
白導師「これ、転移の魔法が一回だけ使える魔法石、転移石だよ」
白導師「これを八つ持ってきた」
白導師「知り合いにでも渡すといい」
貝殻姫「どこにでも行けるんですか?」
白導師「残念ながらチュウザン王都限定、レアアイテムではあるんだけど」
貝殻姫「緊急回避に使えるかも知れませんから有り難く頂きますわ」
白導師「それだけじゃなんなので銀細工も持ってきてる」
そう言うと白導師は袋から無造作に銀細工を取り出す
女拳士「綺麗なもんだね、指輪とかネックレスとか」
白導師「チュウザンにもいくらか職人はいるからね」

138 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/16(土) 00:53:59.78 ID:YCMgiEvAO
白導師「まだあと幾つか……」
貝殻姫「これ以上は貰い過ぎですわ」
魚娘「紅茶お持ちしました〜」
魚娘「犬娘様もおかわり如何?」
犬娘「いただきます!」
…………
術師「魔王様、終わりましたわよ」
メイド剣士「あ、三人で良いもの食べてる!」
貝殻姫「お疲れ様でした、お二人もどうぞ」
術師「頂きますわ!」
メイド剣士「やった」
白導師「お茶終わったら帰るかい?」
術師「ええ、また暫くはテント暮らしですわ」
犬娘「明日はサイセイに帰って、明後日は山に登って」
術師「いよいよ町作りですね」
メイド剣士「塩田を作って普通の畑も作らなきゃ」
女拳士「この街みたいに綺麗な水路や下水の整備もしたいね」
貝殻姫「楽しそうですわ!」
魚娘「お待たせしました〜」
メイド剣士「美味しそう!」
術師「いただきます」
…………
貝殻姫「お名残惜しいですわ」
犬娘「また来るよ!」
魚娘「ううっ、うわーん!」
女拳士「大袈裟だな」
術師「今日は御馳走様でした」
メイド剣士「さて、帰りましょうか」
白導師「うふふ、北浜はどんな所かしら」
メイド剣士「来ないで良いです」


139 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/16(土) 00:57:11.58 ID:YCMgiEvAO
ーー北浜ーー
べこ「もおおぉ〜」
白導師「おお、これは良い牛だ」
術師「なんにもおもてなし出来ませんわよ」
白導師「そんなもの、美少女の生着替えが見れるだけで……」
メイド剣士「見せません」
女拳士「でも水浸しだし、着替えはしておくか」
白導師「うふふふふふ」
犬娘「こわい」
女拳士「肉体強化」
白導師「!?」
女拳士「せーのっ!」
女拳士は白導師を全力で森に投げた
術師「鬼ですね」
メイド剣士「どうせすぐ戻ってくるから早く着替えましょう」
犬娘「さんせい!」
その頃、白導師は木に引っかかっていた
白導師「これが使者の扱いか、つか取れないなこれどうしよう」
白導師「誰か助けに来てくれないかなー」
すぐに暗くなってきた
白導師「むなしい……」
白導師は自分で浮遊魔法と転送魔法を使って帰ってきた
女拳士「帰ったんじゃ無かったの?」
白導師「木に引っかかってました」
術師「魚しか無いですけど食べていきますか」
白導師「うちは魚は高級品だって」
メイド剣士「じゃあお土産で持って帰りますか?」
白導師「メイド剣士ちゃんを? いただきます」

140 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/16(土) 01:00:37.84 ID:YCMgiEvAO
メイド剣士「えい」
白導師「真空魔法止めて、冗談だからやめて」
犬娘「雷牙拳」
白導師「死んじゃう」
術師「冷凍してますから数時間は持つと思いますが、早めにお食べくださいね」
白導師「お、有り難う」
メイド剣士「溶ける前に帰ってくださいね」
白導師「ゆっくりさせて」
術師「白石セットしておきますから帰るまでは溶けませんわ」
白導師「人の情けが身に染みる」
白導師は晩御飯を食べた後もしばらくゴネたが、なんとか送り返した
術師「疲れましたわね」
犬娘「明日はゆっくりしよう」
メイド剣士「賛成です」
女拳士「アタシは塩田でも作ろうかな」
術師「お願いしますわね」
その後術師たちはしばらく塩田の作り方を説明していたが、犬娘とメイド剣士はテントに入って眠りについた
翌朝、犬娘とメイド剣士は術師が起きてくる前に朝食の準備をした
犬娘「住民増えるかなー」
メイド剣士「しばらくテント暮らししてもらうのは難しくないですかね?」
犬娘「転送魔法で送り迎え」
メイド剣士「それは良いかも、私も早く転送魔法覚えなきゃ」
術師「おはようございます」
犬娘「おはよー!」

141 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/16(土) 01:03:53.95 ID:YCMgiEvAO
メイド剣士「無理しないでくださいね」
術師「しませんわ」
犬娘「まだゆっくりしてていいよ」
術師「今日は魔王様の里帰りなんですから、お気になさらず」
犬娘「でも今日はゆっくりする日なの!」
メイド剣士「私が転送魔法を覚えたらもっとゆっくりしてもらいますよ」
術師「ふふっ、有り難う御座います」
朝の時間をゆっくりと過ごすと、犬娘と術師はサイセイに飛んだ
ーーサイセイ南の外れの森ーー
サイセイ南の外れの森は北浜と距離が近いため、比較的早く着くことができた
迫害を受けた魔物たちが隠れ住む森である
犬娘はまず、故郷の村人たちの墓参りをする事にした
術師「お花持ってきたら良かったですね」
犬娘「うん、どこかで摘んでこようかな」
しかし、墓には誰かが手入れをした跡がある
術師「お花を置いてありますね」
犬娘「近所の村の人かな?」
術師と犬娘はしばらく祈りを捧げると、近隣の村へと向かった
虎の獣人が出迎えてくれる
虎獣人「おお、久しぶりだな、犬娘ちゃん」
犬娘「おじさん、うさちゃんを迎えに来ました」
虎獣人「おお、どこかに定住する事にしたのかね?」

142 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/16(土) 01:11:38.13 ID:YCMgiEvAO
虎獣人と話していると犬娘と同じ年頃の半獣人の娘が兎を抱いてやってきた
虎娘「犬娘ちゃん、お帰り!」
魔物兎「きゅっ、きゅっきゅっきゅ〜っ!」
犬娘「ただいま!」
術師「虎獣人様、少しよろしいでしょうか」
虎獣人「……人間か」
村を一つ滅ぼされたのだ
やはり獣人たちは人間を拒絶しているのだろう
虎獣人「大歓迎だ!」
術師「ほあっ?」
思わず変な声が出てしまった
虎獣人「この村にも随分前から何人も人間が住み着いている」
術師「そうでしたか」
術師「実は今私たちは犬娘様を魔王として、新しい国を作ろうとしているのです」
術師は犬娘が魔王になった経緯と、彼女が魔物たちの安住の地を作ろうとしていることを知らせた
術師「無理に故郷を捨てろとは申しません、しかし魔物たち皆さんに知らせて欲しいのです」
虎獣人「乗った」
術師「えっ?」
虎獣人「あの子が親を亡くして、どれほど辛い思いで旅をしてきたかは簡単に想像出来る」
術師(大部分食べてばかりでしたけどね)
虎獣人「俺たち一家だけでも手伝おう」
術師「有り難う御座います、でも……」
虎獣人「家のことは気にするな、俺たち獣人は丈夫だからな」

143 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/16(土) 01:14:05.94 ID:YCMgiEvAO
虎獣人「しかし、そうするとあの人間も連れて行かねばなるまい」
虎獣人は、術師に少し待つように告げると、どこかの家に入っていった
犬娘「今魔王やってるんだ〜」
虎娘「じゃあ、夢が叶ったね〜、魔王様って呼ばないとね!」
犬娘「まだまだこれからだよ〜」
犬娘たちが話をしていると、遠くから知った顔の人間が歩いてきた
犬娘「!!」
その人間は犬娘を見つけると、膝を地につけ、深々と頭を下げた
勇者「……すまなかった!」
犬娘「勇者……!」
術師「!!」
術師「どういう事ですの!」
勇者は自分が犬娘の父親と相討ちになった事、その後この村で倒れ、この村の人に拾われたこと、虎娘の介護で助かったこと、自分がある事情で誤解していたことを知ったことなどを一気に話した
勇者「俺が許されるとは思っていない、お前には俺を殺す権利がある」
術師「身勝手ですわね」
勇者「……すまない」
術師「私たちは今、建国の準備をしています、あなたには」
犬娘「……」
術師「私たちの為に奴隷のように働いてもらいます」
勇者「そんなことで……、良いのか?」
犬娘「いいよ」
勇者「……!」

144 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/16(土) 01:21:41.42 ID:YCMgiEvAO
術師(超戦力ゲットですわーっ!)
術師は頭の中で小躍りした
犬娘「詳しい話は帰ってから聞かせて」
勇者「分かっている」
虎獣人「じゃあ、俺も家族を連れてこよう」
虎獣人は人間のシスターと犬娘や虎娘と同じ半獣人の少年を連れてきた
虎少年「久しぶり、犬娘のお姉ちゃん」
犬娘「久しぶり!」
シスター「お久しぶり、犬娘ちゃん」
虎獣人「これからは魔王様だ」
シスター「あら、そうですね」
犬娘の父親と虎獣人は共に人間と結ばれたことで古くから親交があったようだ
虎獣人「生活に必要な物資をまとめてこよう、しばらく待って欲しい」
術師「構いませんわ、少し村を見てみたいので」
犬娘「街づくりの参考になるかも!」
虎獣人「そうか、それではしっかりと準備してこよう」
術師(この虎の人もすごく強そうですわね)
その後術師たちは下水や上水、生活環境の整備状態を確認してまわった
その間、獣人から出た魔王を称えたくさんの獣人たちが犬娘を取り囲んでいた
鼠獣人「俺たちもいつか魔王様の土地に住めるんだね!」
犬娘「うん、待ってるよ!」
術師「ある程度生活環境を整える必要があるので、暫くは待ってください」