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神様にねがったら、幼馴染が二人に増えてしまった

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Part2
32 :名無しさん :2014/03/28(金)23:58:29 ID:BsxWI0Ga1
 それまでぎこちなかった僕らの会話は、急に弾みだした。
 ハヅキが声を張りあげる。
「ほんとに二度としないからね」
「なにを?」
「ふたり乗り!」
「なんで? 楽しいじゃん」
「楽しくない!」
「どうして? 風は気持ちいいし、ハヅキは乗ってるだけだかららくだろ!?」
 僕がそう叫ぶと、「ちょっと楽しいけど」と小さな声がした。
 すぐに風にさらわれちゃったけど。

33 :名無しさん :2014/03/29(土)00:01:44 ID:6bLsc9NmA
 僕も彼女ほどでないにしろ、いい子だった。
 ハヅキにふたり乗りをすすめておいてこう言うのもなんだけど。
 周りの人たちは僕とハヅキを比べて、こんなふうに言っていた気がする。
 ハヅキは『優秀ないい子』。
 僕は『おバカないい子』って。
 生まれたときから極端にからだが弱かった僕だけど、性格はすごい明るかったんだ。
 妙に人懐こくて、ムダにおしゃべり。
 誰とでもすぐ打ち解けられたし、愛想もよかった。
 そのうえ、輪にかけてのんびり屋さんだったな。
 だから周りのみんなは、僕のことをよく世話してくれた。
 小学校高学年にあがるまでは、出席と欠席の日数がほとんど同じだったにも関わらず、
 クラスに自然となじめていたのはハヅキとこの性格のおかげだと思う。

34 :名無しさん :2014/03/29(土)00:07:11 ID:6bLsc9NmA
 でも今になって思うと、その性格は幼い僕が身につけた天然の処世術だったのかも。
 弱っちい僕が、自分を守るための。
 敵を作らないために身につけた武器とでも言うのかな。
 常にキビキビと行動して、周りを引っ張っていくタイプのハヅキとは真逆そのものだった。
 仮に病気か、この性格のどちらかが欠けていたら。
 僕とハヅキの関係が終わるのは、もっと早かったんじゃないかな。
 中学にあがるまでは、ハヅキは僕の中で姉のような存在だった。
 だけど、ずっといっしょにいるうちに。
 いつしか気づいたら意識してしまう大切な人になっていた。
 ハヅキに頼る僕から、ハヅキに頼られる僕になりたいとねがっていた。
 だけど、高校生活が終わるころには、すっかり僕らの関係は変わってしまった。
 その思いがハヅキに伝わることもなければ、伝えることもできなかったんだ。
 結局、僕らはべつべつの進路を進むことになってしまった。

35 :名無しさん :2014/03/29(土)00:11:32 ID:6bLsc9NmA
 広がる田園地帯の隙間を縫うように敷かれたアスファルト。
 僕らはそのうえを風といっしょに走り抜ける。
 風は朝露に濡れたアスファルトと土のにおいを含んでいて、少しだけ鼻がむずむずした。
「なんか背中、大きくなった?」
 ふたり乗りに慣れてきたのか、ハヅキが僕の背中を指でつついた。
「そうかもね」
「それに肩も、前よりガッシリしてる気がするし……からだ鍛えてるの?」
「ちょっとだけね!」
「へえ。すごいね!」
 ハヅキが僕の変化に気づいてくれたのが、本気で嬉しかった。
 ハンドルを握る手に、自然と力が入る。

36 :名無しさん :2014/03/29(土)00:12:20 ID:6bLsc9NmA
 ハヅキと自転車に乗っている。
 それだけで僕には色あせた田舎の風景が輝いて見えたんだ。
 ハヅキが自分の背中にしがみついているってことが、僕にとってはなにより嬉しいことだった。
 頼られてるような気がするんだよ。
 自転車にふたりで乗ろうと言ったのは、思いつきだったけど。
 きっと僕はハヅキとこうすることを望んでたんだろうな。


37 :名無しさん :2014/03/29(土)00:13:25 ID:6bLsc9NmA
今日はここまで
明日には終わらせたい

38 :名無しさん :2014/03/29(土)00:15:05 ID:dsvYw8g2e
>>37

明日支援できるか判らんけど頑張れ

39 :名無しさん :2014/03/29(土)00:17:54 ID:uxyXzAA64
これは期待せざるを得ない

40 :1です :2014/03/29(土)01:23:02 ID:Un51T9qFp
>>37
凄い面白いよ。期待して待ってるからな!

41 :名無しさん :2014/03/29(土)01:43:20 ID:rFp9z08Kg
>>40みたいな下手な荒らしが出ると萎える

42 :1です :2014/03/29(土)02:05:18 ID:tHVgmaXCS
>>41
俺は荒らしたつもりは全くなく素直に期待してたんだが…
不快にさせたらごめん

43 :名無しさん :2014/03/29(土)02:06:43 ID:Un51T9qFp
あ、コテ付けっ放しだったの気づかなかった
本当にこのスレ主ゴメン悪気があったわけじゃないんだ。
冗談抜きで全部読んでるから期待してます

47 :名無しさん :2014/03/29(土)21:18:13 ID:J5d5qY0X8
 僕が一人暮らしをするようになったのは、大学生になってから。
 実家からは電車で一時間もかからない距離にあるアパート。
 そんな距離で下宿する意味があるのかと問われると、うなずくのをためらってしまう。
 親に「男なら一度は一人暮らしを経験しておけ」と言われてそうすることにしただけだし。
 でも一時間で帰れるから、わりと高い頻度で帰ってる。
「二度とこんなことしないから」
 ハヅキが自転車を降りて最初に放った一言がこれだ。
 言葉ではそう言ってたけど、ハヅキとは十年以上の付き合いだ。
 彼女が怒っていないことは簡単に見抜けた。

48 :名無しさん :2014/03/29(土)21:18:53 ID:J5d5qY0X8
 僕の部屋に入るとハヅキはますます困惑したようだった。
 この部屋は誰の部屋なの、という疑問からから次々とハヅキは質問してきた。
 なんとかそれっぽいウソの説明をこころみたけど、ハヅキは当然納得しなかった。
 それでも「わかった」と言ってくれたのは助かった。
 現時点では僕がハヅキの疑問に答えないと、さとったんだろうね。
 それからしばらく僕は、ベランダに出てこれからどうするか考えてみることにした。
 ハヅキにはとりあえず、てきとうに漫画本を読んでもらうことにした。
 でも全然いいアイディアは出てこなかった。
 というより、理性と感情が全然べつの方向を向いていたんだと思う。
 
 考えることを放棄して、僕は今すぐにでもハヅキと遊びに行きたかったんだ。

49 :名無しさん :2014/03/29(土)21:20:08 ID:AgiupZBI2
おっ

50 :名無しさん :2014/03/29(土)21:20:14 ID:J5d5qY0X8
 まったくアイディアは出てこなかった。
 冬の風にさらされたからだは、かわりにくしゃみをよこしてくれた。
 結局十五分もしないうちに、僕は部屋に入った。
 考えがまとまらない理由はもうひとつあった。
 自分の部屋にハヅキがいるということ。
 幼馴染とはいえ女の子を部屋に連れこんでいるんだと思うと、落ち着けない。
「わかった。わかりました」
 なにも事情を話さないだけじゃなく、自分の目の前をうろうろする僕に我慢ができなくなったんだろうね。
「どこかに連れてってよ。近いところでいいから」
 ハヅキはそう言うと、僕の腕をとった。

51 :名無しさん :2014/03/29(土)21:21:09 ID:J5d5qY0X8
「どこかってどこだよ?」
「わたしに聞かないでよ。この町はわたしにとっては、未開拓地だし」
 僕が望んでいたことをハヅキが言ってくれたのに、いざ言われると困ってしまう。
「この部屋にいてもなにもないでしょ。ほら」
「そうだけど。いいの?」
「なにが?」
「いや、その……」
「どうせ聞いてもなにも答えてくれないんでしょ。だったら今はいいよ」
 もう一度彼女は同じことを言った。
「どこかに連れてってよ」

52 :名無しさん :2014/03/29(土)21:22:32 ID:J5d5qY0X8
 どこかに連れてって、と言われても僕の住む町には本当になにもないんだ。
 あるのはのどかな田園風景。
 スーパーと喫茶店。
 それから個人経営のコンビニがいくつか。
 大学が近いのと家賃が格安という理由で選んだ町に、時間をつぶせるような場所は存在しない。
 電車で隣町にでも行くかと聞いたけど、ハヅキは散歩がしたいとだけ答えた。
 理由はあえて聞かないことにした。
 そんな小さなねがいなら、僕でもかなえられるしね。
 最終的に僕たちは、歩いて二十分ほどで着く海に行くことにした。

53 :名無しさん :2014/03/29(土)21:23:37 ID:J5d5qY0X8
 透き通るような淡い冬の空には、めずらしく雲がなかった。
 太陽の光も穏やかで、散歩には絶好の日だと思ったけど潮風は普段より強かった。
「風、強いね」
 からだを縮こまらせて、ハヅキは言った。
「海が近いから風が強いんだよな」
「今ならまだ引き返せるよ」と僕が言うと、ハヅキは首をふった。
「いいよ、わたしが言い出したことだし」
 ふたりで並んで歩くことに、なぜか違和感のようなものを覚えた。
 久々だからかな、と思ったけどそれもちがう気がする。

54 :名無しさん :2014/03/29(土)21:24:46 ID:J5d5qY0X8
「本当になにもないんだね」
「静かで人が少ないことぐらいしかいいところがないからな、ここ」
「わたしは好きだよ。こういうところ」
「オレもきらいじゃないよ」
 海から流れてくる重く冷たい風が、ハヅキの前髪を揺らす。
「寒いのと風が強いのが難点だけど」
 気が利く海風はひときわ強く吹いて、ハヅキと僕を寄り添わせた。
「でもやっぱり好き」
「やっぱり好きだ」と僕もうなずいた。


55 :名無しさん :2014/03/29(土)21:25:40 ID:J5d5qY0X8
「背、縮んだ?」
 並んで歩いていて、僕は気づいたことをハヅキに言ってみた。
「わたしが縮んだんじゃなくて、そっちが伸びたんでしょ」
「今はハヅキのほうがチビだな」
 てっきりハヅキは怒るかと思ったけど、なぜか嬉しそうに「そうだね」とほほえんだ。
 どうして怒らないか不思議だった。
 そういえば、ハヅキはチビだった僕に昔から『牛乳を飲め』とうるさかった気がする。
 僕の背が伸びたことが嬉しかったのかな。
 理由はどうでもよかった。
 単純な僕は、ハヅキが笑ってくれるだけで満たされるんだから。

56 :名無しさん :2014/03/29(土)21:27:37 ID:J5d5qY0X8
「こうやって並んで歩いてるからかな」
「ん?」
「なんか違和感あるよね?」
 ハヅキも僕と同じように感じていたらしい。
 それだけのことで僕の胸はおどった。
 自分のことながら改めて単純だと思う。
「いつも、わたしのほうが少し前を歩いてたからかな」
 言われて僕は納得してしまった。
「こんなふうに肩が触れることなんて絶対になかったもん」
 のんびり屋だった僕は、いつもハヅキの背中を見て歩いていたんだ。
 そのことを思い出すと、少しだけ僕の歩くペースははやくなった。

57 :名無しさん :2014/03/29(土)21:29:07 ID:J5d5qY0X8
 道路から海を見おろすとハヅキが声をあげた。
「海だあ」
 ふりそそぐ太陽をあびて、鈍くかがやく海が目の前に広がっていた。
「冬に見る海って少し変わってるかも」
 ハヅキの言ってることは、僕にもなんとなくわかった。
 冬の海は夏のそれに比べると、油を含んでいるように重たげで、波の揺れもよどんで見える。
「海に絵の具の黒を入れたみたいだね」
となりでハヅキが僕を見あげる。
 ハヅキは昔から「~みたい」と微妙な喩えをすることがよくあった。
 彼女がびみょうな喩えを口にするたびに、僕は首をかしげたものだった。
 また懐かしさがこみあげてきて、僕の口もとはゆるんだ。
 「なにがおかしいのよ?」とハヅキがにらんできたので、「全部」と返した。
 口に出したら今度は笑いがこみあげてきた。

58 :名無しさん :2014/03/29(土)21:30:21 ID:J5d5qY0X8
 ハヅキが隣にいるってだけで、僕は本当に幸せだったんだ。
 そんな僕を見たハヅキも少し顔を赤くしつつも、最終的には笑ってくれた。
 それで僕はまた幸せな気持ちになる。
 幸せが幸せを呼ぶっていうのは、本当なのかもしれないと思ったね。
「そういえば、けっこう前にも冬の海に来たよね」
 道路の柵から身を乗り出してハヅキが言った。
 僕にとってそれは苦い思い出だった。
 高校受験が終わった僕は、ハヅキをデートにさそった。
 ハヅキには詳しい説明はしなかったんだよな、たしか。
「どこかへ連れてってあげる」とだけ言ったんだ。
 なぜ冬に海に行こうと思ったのかって?
 ある曲の歌詞に憧れてたんだよ、僕は。

59 :名無しさん :2014/03/29(土)21:32:32 ID:J5d5qY0X8
 冬の海辺をあてもなく歩いて、ふたりで貝殻集めて……。
 今でもその曲を聴くだけで顔が熱くなる。
 しかもかなり遠い海を選んだんだよね。
 そのせいで、目的地に着いたときにはお互いに疲れきっていた。
 冬の海って時点でそうとうアレなんだけど、当時の僕はそれを本気でロマンチックだと思ってたんだ。
 海に着いてからハヅキが怒るのには、一分もかからなかった。
 結局僕はハヅキにひたすら謝って許してもらったけど、当時は釈然としなかったね。
 今なら彼女が怒ったわけもわかる。
 かなり遠いところを選んだこと。
 両親に海に行くと伝えていなかったこと。
 ハヅキは病弱だった僕を心配して怒ったんだ。
 そしてこの話にはオチがある。
 ハヅキを海に連れてくきっかけになった曲。
 その曲の歌詞の内容が、失恋に近い状況を描いたものだってことだ。

60 :名無しさん :2014/03/29(土)21:34:16 ID:J5d5qY0X8
「前から思ってたけど、ガンコだよね」
「誰が?」と聞き返すとハヅキは、僕を指さした。
「海に行ったときも、最後まで行き先を教えてくれなかったし」
 海を見るハヅキの横顔は楽しそうだった。
 それからハヅキは僕のガンコに関連したエピソードを話しはじめた。
 ハヅキに教えられて、僕は思わず頬をかいた。
 天然でのんびり屋であったはずの僕に、そんなにガンコな一面があったのかと。
「なんだっけ? なにかの映画を見に行こうとしたら『絶対にイヤ』って聞かなかったよね」
 それについては僕も覚えがあった。
 その映画については、タイトルはよく思い出せない。
 けど、病気かなにかで大切な人と死別するって展開があったんだ。
 なぜか、そのことだけは知ってたんだよね。
 だから絶対に見に行きたくない、と僕はハヅキの話を聞かなかった。

61 :名無しさん :2014/03/29(土)21:36:32 ID:J5d5qY0X8
 僕は『病気で大切な人と死別する話を感動的に描く』みたいな物語が大っ嫌いだった。
 『命をかけて大切な人を守る』といった話にも強い抵抗があった。
 生まれつき病弱だったせいかもしれない。
 バカな僕でも昔からわかってたことがある。
 家族やハヅキ、周りの人にたくさんお世話になって、自分は生きているんだって。
 命を放り出すような真似は本気で許せないって思ってる。
 だから、この先なにがあっても自殺だけはしないって僕は決めていた。

62 :名無しさん :2014/03/29(土)21:36:54 ID:J5d5qY0X8
「ほんと、いろいろあったね」
 ハヅキが僕によりかかってくる。
「昔は、こうすることもできなかったよね」
「たしかに。昔のオレなら、このままたおされちゃってるかもな」
「たぶん、立場が逆だっただろうね」
 肩に感じるハヅキの重みが心地よかった。

63 :名無しさん :2014/03/29(土)21:38:01 ID:J5d5qY0X8
 さらにハヅキは話を続けた。
 幼少期に、病弱だった僕にハヅキがよくしたおでことおでこをくっつけるおまじないの話。
 妹が反抗期になったとき、僕の筆箱に生卵をぶちまけた話。
 ふたりで受験勉強したときのくだらないケンカの話。
 僕が覚えてたことから忘れてたことまで、ハヅキは様々なことを話してくれた。
「わたしのほうがいっぱいしゃべるって、めずらしいよね?」
 どちらかと言えば僕のほうがよくしゃべっていたな、昔は。
 しかも話し好きのくせに、話す内容はまとまりがなかったり、肝心なことは話さない。
 聞き手からすると、最低な話し手だった。
 不意に沈黙が訪れる。さざ波の優しい音。
 潮風が強く吹くと、つられたようにハヅキが口を開いた。
「なんかお互いに変だね」
「うん、お互いに変だな」
 少しして、どちらからともなく笑いだした。

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