花山薫「・・・妹?」
Part6
141 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/07/03(火) 21:30:37.75 ID:vbJ+yytIO
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
花山と妹は目を見合わせ、二人の間には沈黙の空気が流れていた
妹「・・・お兄・・・ちゃん?」
花山「・・・!」
妹「・・・」
花山「・・・そうか・・・そんな気がした」
妹「やっぱり、そうなんだ」
花山「母親が、逝ったってな・・・」
妹「・・・うん、一人になっちゃった」
花山「・・・」
妹は震えていた
今日は色々なことがあり過ぎた、戸惑う、などという言葉で片付けられる精神状態ではなかった、
別の世界に紛れ込んでしまったような、
気を失いそうな
でも、真実を、現実を知りたい
その一心で、なんとか正気を保っている
そして、今、目の前に優しく温かい真実が現れてくれた
思わず、妹は花山の逞しい掌に手を伸ばしていた
ギュ
妹「・・・大きい手」
花山「・・・」
142 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/07/03(火) 23:54:44.02 ID:vbJ+yytIO
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
独歩は上の階の戦闘で、天井が崩れ落ちそうなほどヒビが入って行くのを見ていた
独歩「・・・おいおい、また壊されてるよ、まったく」
そこで用具室のドアが開かれた
ガチャ
男「・・・いやあ、お久しぶりです、愚地独歩先生」
独歩「・・・!?てめえ・・・」
男「地下闘技場トーナメント以来ですね」
独歩「天内・・・悠」
143 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/07/04(水) 00:21:39.50 ID:QUW4SbxIO
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
信じられない程大きな兄の手に触れていると、不思議な程に心が落ち着く
自然と言葉が出てくる
妹「・・・お金、かえさきゃ」
花山「お前の金だ」
妹「ううん、ダメ」
妹は預金通帳と母からの手紙を取り出し、花山の手に置いた
妹「お父さんのお金だよ・・・お兄ちゃん受け取って」
花山「・・・」
妹「これ、お母さんの手紙・・・最後に口座番号と暗証番号書いてある」
無表情だけど優しい目を見ながら、話し続けていると、空気を劈く破裂音と共に花山の目が見開かれた
『ドン!』
花山「・・・クッ!」
妹「イヤ!何?!」
花山「散弾銃・・・隠れろ!」
妹をすっぽりと覆うように庇い、銃声に背中を向けているが、構わず連発される撃鉄を鳴らす音
『ドン!ドン!ドン!』
花山「・・・グッ」
妹「いやあ!お兄ちゃん!!」
144 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/07/04(水) 00:28:49.07 ID:QUW4SbxIO
『やっと妹と出会えたなあ、二代目ぇ』
硝煙の出る散弾銃を肩に掛け、玉虫色のスーツを着てこちらに近づいて来た、聞き慣れた声を出す、パンチパーマの男
花山「・・・新垣」
妹「!」
新垣「無敵の花山薫も、流石にショットガン四発はキツいだろ」
花山「・・・手前ぇ」
新垣「二人まとめてここで死んでくれ、なあ」
妹「お兄ちゃん!」
花山「・・・どういうことだ」
新垣「・・・あんたはいい頭だよ、人望がある・・・先代と同じようにな」
花山「・・・」
新垣「その娘の母親に、先代は深く入れ込んでたなあ・・・入院したときゃ組の金半分ポンとやっちまった」
花山「・・・手前ぇ親父にずっと付いてたな・・・金目的か」
新垣「その通りだよ、いつか組の金ごっそり頂いて高飛びしちまおうと考えてた」
花山「・・・」
新垣「小遣い集めによ、最近チンピラを集めて仕事させてたんだが、大した金にもなりゃしねえや」
花山「・・・手前ぇが」
新垣「そこで考えたんだ、リスクが少なく大金を手にするにはどうするか・・・その娘だよ」
妹「・・・」
新垣「そいつの母親が死んだと聞いた時、こりゃチャンスだと思ってよ、またチンピラ集めて攫ってやろうと考えたんだが・・・なかなか上手くいかねえ」
145 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) :2012/07/04(水) 00:40:14.31 ID:1Bq4zgJo0
機関銃持っててもヤクザがタイマンを嫌がる人間にショットガンとか……
146 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/07/04(水) 00:41:33.99 ID:jvbzh21Lo
アンチェインに喧嘩を売った不良警官並に無謀だな
147 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/07/04(水) 01:39:12.86 ID:QUW4SbxIO
新垣「思わぬ邪魔が入ってな・・・こんな厄介な所に連れて来られやがった」
妹「・・・チャイナさんがいなかったら」
新垣「いずれあんたの耳にも入って、計画がオジャンとなる前に、下っぱ使ってあんたに動けなくなってもらおうと思ったんだが・・・あんたの強さは・・・知っちゃあいたが、桁外れだった」
花山「爆弾野郎は・・・手前ぇの差し金だったのか・・・おかしいと思ったぜ」
新垣「始末したのはいいんだが、額を撃っちまった・・・あんたはなんとなく違和感に気付いただろ、自分で頭撃つ時は普通こめかみだ・・・」
花山「・・・まさかとは思ったが」
148 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/07/04(水) 01:51:44.67 ID:QUW4SbxIO
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
バラバラの身長で同じ顔という、不気味な五人組『ハンド』
親指から小指までの順番で並び、戦闘体制に入っている
烈「早く、末堂に救助を呼ばなければ・・・」
サム「ここに来るまでに」
ファースト「道場の人間には」
ミドル「全員」
リング「眠ってもらって」
ショート「誰も来ない」
克巳「・・・なんだこいつら」
烈「まるで・・・一人の人間が喋っているように」
「「「「「我らハンドは五身一体!」」」」」
克巳「真っ白いスーツ着てないで、おまえらこそ一人ずつ色分けしやがれ!シャッ!」
真ん中の一番背の高い男『ミドル』に向かい放たれた克巳の上段蹴りは、その左右の『リング』と『ファースト』の腕によって止められ、それと同時に一番外側の『サム』と『ショート』が克巳の脇腹に一撃ずつ食らわせた
それはまさに、一人の人間の一つの手の平の動きのようだった
シュッ ガッ ガッ ドス ドス
烈「克巳!」
149 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/07/04(水) 01:55:41.28 ID:QUW4SbxIO
克巳「クッ・・・躱すと同時に攻撃・・・」
床に倒れていたカオルが、目を覚ました
カオル「・・・う・・・ん」
烈「カオル!末堂君が下に落下した!」
カオル「・・・え?」
烈「救助をッッ!」
ショート「おっと、逃がさないよ」
立ちあがろうとするカオルの前に、一番低身長のショートが立ちはだかった
カオル「キャッ!」
サム「ショート、お前が捕まえておけ」
ファースト「さて続きだ」
ミドル「防御、攻撃」
リング「同時に多方向から」
「「「「「どうする?」」」」」
カオル「すえっち・・・ここから、落ちたの?!」
ショート「そのようだねぇ」
烈「・・・」
150 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/07/04(水) 12:24:08.44 ID:b9FUA7iDO
すえっちなら五点着地をきめてくれてるはず
151 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/07/04(水) 12:54:05.04 ID:QUW4SbxIO
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
男の名は天内悠
かつて地下闘技場トーナメントで独歩と拳を交えた相手だった
赤青スーツの二人は、天内の姿を見ると一気に恐怖が絶頂まで登りつめた
赤・青「ヒッ・・・ヒイィィィィィィ~~~ッッ!!」
独歩「こいつらは・・・お前さんに怯えてたのかい」
天内「ええ、一度公開処刑をしたことがありまして・・・身体中の骨を砕いた所を見せてやりました」
独歩「・・・堕ちたモンだな、アメリカ大統領SPから殺し屋かよ」
天内「・・・愛あるが故に、それに反する人の望まぬことを行う・・・天職を見つけましたよ」
152 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/07/04(水) 12:55:19.53 ID:QUW4SbxIO
独歩「思い出して来たぜ、その神経に触るほど丁寧な立ち振舞い・・・なんとかならねえのかよ」
天内「目上の方に対してだけです、誇っていい・・・貴方は私に尊敬されている」
独歩「相手見て使い分けてんのか、嫌な奴だったんだなあ・・・俺に敗ける前は聖人のように振る舞ってたじゃねえか」
天内「敗けてなどいないッッ!!」
153 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/07/04(水) 13:42:23.96 ID:h8IFE4p3o
wwktk
154 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) :2012/07/04(水) 20:17:51.58 ID:0XosftMGo
グラップラーバキまでしか読んでないんだけど
天内悠ってトーナメント以降出てきたの?
155 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/07/04(水) 20:31:28.71 ID:ZmIFU2wMP
出てきてない
ちなみにアニメ版では生存確認されてる
156 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) :2012/07/04(水) 21:05:54.88 ID:0XosftMGo
サンクス
マジであれ以降何も無しなんだ
勇次郎のお墨付きみたいな形で乱入したのにまさか独歩に負けるとは思わなかったよ
負けと言っていいのかわからない負け方だけど
157 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/07/04(水) 22:41:14.38 ID:QUW4SbxIO
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
背中から流血する花山を見下ろし、新垣は意気揚々とショットガンをリロードした
ガシャッ
新垣「親父が愛人に大金注ぎ込んでてよ、その愛人が死んだと聞いたら、残された娘を狙う・・・普通のことだろ?」
妹「・・・最低」
花山「・・・」
新垣「最低ね・・・ククッ・・・まあ、こんなモンで、あんたを仕留めれるとは思っちゃいねえよ・・・」
新垣は硝煙が出たままのショットガンを、慣れた手付きで一度振り回して見せてから、床に放った
新垣「だがよ、こいつを口にぶちこんだら、どうかな?」
放り投げた手をそのまま懐に入れ、銀色に輝く拳銃を取り出した
妹「・・・イヤ」
花山「・・・やってみろ」
新垣は妹を抱え込んだまま無表情で見上げる花山の口に銃口をねじ込んだ
ズボ
新垣「デザートイーグルに44マグナム弾だぜ?ハンドキャノンってぇやつだ・・・ヒャッハハハハ!!酷ぇ様だなあ!二代目え!」
妹「止めてぇ!!」
158 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/07/04(水) 22:50:06.51 ID:QUW4SbxIO
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
烈は義足を上手く利用し、克巳の背中に自らの背中を合わせた
クルッ ピタ
烈「急がなければ!」
克巳「ああ!」
サム「ほう、流石だな」
ファースト「背中合わせで、死角を消したか」
ミドル「だがこれは、試合では無い」
リング「正々堂々と正面からやり合うと思うか?」
不気味な台詞の輪唱の中、ショート以外の四人はスーツの背中から、美しく装飾がされた、太い曲線を描く大きな刀を同時に取り出した
シャキンシャキッシャキ
ショート「多方向から、同時に青龍刀の波状攻撃・・・」
烈「・・・ッッ!」
克巳「クソッ・・・」
159 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/07/04(水) 23:03:22.79 ID:QUW4SbxIO
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
用具室に響き渡った天内の声には、明らかに今までの冷静沈着な言い回しとは異なり、感情が露わにされていた
独歩「あっれ~?俺が勝ったと思ったがなあ」
天内「明らかに!明らかに私が勝っていたッッ!邪魔さえ入らなければ・・・」
独歩「・・・それじゃあ・・・どうすんだ?」
天内「知れたことッッ!」
天内は異常に長い両腕を床と水平に広げ、両脚を揃えて、独特の戦闘体制をとった
独歩「やっぱりヤルのか・・・もう、床壊さねぇでくれよ?」
天内「あの時は、ギャラリーに他出場者・・・人の目があった」
独歩「ああ、なんだ?兄ちゃんあがり症だったの?」
天内「ふざけるなッッ!」
独歩「ふざけてるのはどっちでぇ・・・」
160 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/07/04(水) 23:16:07.56 ID:QUW4SbxIO
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
絶望的な表情を浮かべながら、背中合わせで構える烈と克巳に、青龍刀で空気を切る音をさせながら、四人が近付いて行く
克巳「・・・ダメだ」
烈「ここまでか・・・」
二人が両腕をぶら下げ、観念したように両目を閉じた時、拍子抜けする程明るい、聞き慣れた声が聞こえて来た
『お待たせ』
ショート「ん?」
カオル「!」
克巳「来た来た」
烈「よし」
サム「・・・何故?」
カオル「すえっち!!」
末堂「ッッシャア!!」
音を殺してカオルを人質に取るショートの後ろに現れた末堂は、巨木の様な右脚をショートの脇腹に叩きつけた
ズドッ
ショート「ゲハァ!」
ドサ
161 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) :2012/07/04(水) 23:21:22.71 ID:1Bq4zgJo0
さすがジェットコースターから落ちても死ななかった男だな
162 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/07/04(水) 23:22:55.30 ID:/zeSPQHbo
三戦立ちは伊達じゃない
163 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/07/04(水) 23:58:19.89 ID:QUW4SbxIO
末堂「こっちはもう大丈夫です、二人ともナイスでした」
克巳「ちと臭かったかな?」
烈「克巳、咄嗟の判断でよく合わせてくれた」
克巳「だってコイツ、外で普通に起き上がって、こっちに手振ってんだもんな」
サム「今の狼狽が・・・芝居だったと言うのか」
克巳「いやあ~、あのオカマ野郎天内を油断させて、一網打尽にしてやろうと思ったんだけどね」
烈「彼女が人質に捕られ、芝居続行・・・フッ・・・思わぬ効果があったものだ」
164 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) :2012/07/05(木) 00:27:10.22 ID:xG5MJHCN0
まぁ、三階程度の高さだから、末堂なら大丈夫か
165 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/07/05(木) 00:27:28.83 ID:dkMRT4SIO
ファースト「・・・貴様達二人が窮地に陥っているという、事実には変わりはない」
ミドル「デカブツ、お前は後回しだ」
リング「こいつ達の後で、娘もろとも切り刻んでやる」
末堂「え?なにが?」
克巳「もういいかな」
烈「ああ」
克巳は烈の返事を聞くと、低く身構えた
そして、破裂音と共に四人の手に持っていた青龍刀が弾け飛ぶ
「「「「~~~~ッッ!!」」」」
ガシャガシャシャン
克巳「うちは武器禁止だってば」
烈「人質を捕るまでは良かったが・・・その床に転がっている武具は君達如きが扱える代物では無い・・・」
烈は床に落ちた青龍刀に近づくと、義足を軸にもう片方の足で四本を宙に舞い上げ、両手で見事に全てキャッチした
スッ パシッパシパシパシ
烈「貴様達は中国武術を舐めたッッ!!」
末堂「片手に二本ずつ・・・よ、四刀流?」
166 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/07/05(木) 00:34:40.98 ID:dkMRT4SIO
ファースト「クソ!」
ファーストが苦い表情と共に、懐から自動小銃を取り出すと、他の三人も同じ顔をしてそれを取り出した
カオル「銃!」
克巳「ほう、やっとチンピラらしくなってきたじゃないか」
末堂「カオル!避難するぞ!」
カオル「は、はい!」
167 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/07/05(木) 00:41:33.73 ID:dkMRT4SIO
烈「克巳、君も下がっていてくれ」
克巳「そ、そう?・・・なんか、キレてる?」
「「「「死ね!!」」」」
烈「憤ッッ!!」
四人が引き金に指をかけようとすると、烈はチャイナ服をたなびかせ、駒のように回転しながら青龍刀を唸らせた
ヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュン
ポトッ ポトッポトポト
ファースト「あれ?」
ミドル「・・・何か降って」
リング「これって」
サム「ッッ!!」
床に落ちる四つの自動小銃、そして
ガシャシャン
克巳「よく物を落とすなあ」
「「「「指~~~~~ッッ!!」」」」
168 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/07/05(木) 00:51:31.98 ID:dkMRT4SIO
烈「急いで病院に向かえば、まだ再生出来る筈・・・それともまだ・・・」
烈が言い終わる前に、四人は押し合いへし合いながら「餅まき」の様に指を取り合って、背を向け走り始めていた
サム「それは俺のだ!」
ファースト「違う!お前のはあっちだ!」
ミドル「指があ!指があ!」
リング「ヒイィ~!!」
ダダダダダダダダ
克巳「なんて悪者っぽい去り方だ・・・」
末堂「おい!忘れ物だ!」
ガシッ
ショート「・・・ん?」
末堂は気を失っていたショートのベルトを背中から掴み、砲丸投げの容量で二回三回回って四人の方へ放り投げた
ブン
ショート「うあああああ!」
ドーン
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
花山と妹は目を見合わせ、二人の間には沈黙の空気が流れていた
妹「・・・お兄・・・ちゃん?」
花山「・・・!」
妹「・・・」
花山「・・・そうか・・・そんな気がした」
妹「やっぱり、そうなんだ」
花山「母親が、逝ったってな・・・」
妹「・・・うん、一人になっちゃった」
花山「・・・」
妹は震えていた
今日は色々なことがあり過ぎた、戸惑う、などという言葉で片付けられる精神状態ではなかった、
別の世界に紛れ込んでしまったような、
気を失いそうな
でも、真実を、現実を知りたい
その一心で、なんとか正気を保っている
そして、今、目の前に優しく温かい真実が現れてくれた
思わず、妹は花山の逞しい掌に手を伸ばしていた
ギュ
妹「・・・大きい手」
花山「・・・」
142 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/07/03(火) 23:54:44.02 ID:vbJ+yytIO
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
独歩は上の階の戦闘で、天井が崩れ落ちそうなほどヒビが入って行くのを見ていた
独歩「・・・おいおい、また壊されてるよ、まったく」
そこで用具室のドアが開かれた
ガチャ
男「・・・いやあ、お久しぶりです、愚地独歩先生」
独歩「・・・!?てめえ・・・」
男「地下闘技場トーナメント以来ですね」
独歩「天内・・・悠」
143 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/07/04(水) 00:21:39.50 ID:QUW4SbxIO
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
信じられない程大きな兄の手に触れていると、不思議な程に心が落ち着く
自然と言葉が出てくる
妹「・・・お金、かえさきゃ」
花山「お前の金だ」
妹「ううん、ダメ」
妹は預金通帳と母からの手紙を取り出し、花山の手に置いた
妹「お父さんのお金だよ・・・お兄ちゃん受け取って」
花山「・・・」
妹「これ、お母さんの手紙・・・最後に口座番号と暗証番号書いてある」
無表情だけど優しい目を見ながら、話し続けていると、空気を劈く破裂音と共に花山の目が見開かれた
『ドン!』
花山「・・・クッ!」
妹「イヤ!何?!」
花山「散弾銃・・・隠れろ!」
妹をすっぽりと覆うように庇い、銃声に背中を向けているが、構わず連発される撃鉄を鳴らす音
『ドン!ドン!ドン!』
花山「・・・グッ」
妹「いやあ!お兄ちゃん!!」
144 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/07/04(水) 00:28:49.07 ID:QUW4SbxIO
『やっと妹と出会えたなあ、二代目ぇ』
硝煙の出る散弾銃を肩に掛け、玉虫色のスーツを着てこちらに近づいて来た、聞き慣れた声を出す、パンチパーマの男
花山「・・・新垣」
妹「!」
新垣「無敵の花山薫も、流石にショットガン四発はキツいだろ」
花山「・・・手前ぇ」
新垣「二人まとめてここで死んでくれ、なあ」
妹「お兄ちゃん!」
花山「・・・どういうことだ」
新垣「・・・あんたはいい頭だよ、人望がある・・・先代と同じようにな」
花山「・・・」
新垣「その娘の母親に、先代は深く入れ込んでたなあ・・・入院したときゃ組の金半分ポンとやっちまった」
花山「・・・手前ぇ親父にずっと付いてたな・・・金目的か」
新垣「その通りだよ、いつか組の金ごっそり頂いて高飛びしちまおうと考えてた」
花山「・・・」
新垣「小遣い集めによ、最近チンピラを集めて仕事させてたんだが、大した金にもなりゃしねえや」
花山「・・・手前ぇが」
新垣「そこで考えたんだ、リスクが少なく大金を手にするにはどうするか・・・その娘だよ」
妹「・・・」
新垣「そいつの母親が死んだと聞いた時、こりゃチャンスだと思ってよ、またチンピラ集めて攫ってやろうと考えたんだが・・・なかなか上手くいかねえ」
145 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) :2012/07/04(水) 00:40:14.31 ID:1Bq4zgJo0
機関銃持っててもヤクザがタイマンを嫌がる人間にショットガンとか……
アンチェインに喧嘩を売った不良警官並に無謀だな
147 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/07/04(水) 01:39:12.86 ID:QUW4SbxIO
新垣「思わぬ邪魔が入ってな・・・こんな厄介な所に連れて来られやがった」
妹「・・・チャイナさんがいなかったら」
新垣「いずれあんたの耳にも入って、計画がオジャンとなる前に、下っぱ使ってあんたに動けなくなってもらおうと思ったんだが・・・あんたの強さは・・・知っちゃあいたが、桁外れだった」
花山「爆弾野郎は・・・手前ぇの差し金だったのか・・・おかしいと思ったぜ」
新垣「始末したのはいいんだが、額を撃っちまった・・・あんたはなんとなく違和感に気付いただろ、自分で頭撃つ時は普通こめかみだ・・・」
花山「・・・まさかとは思ったが」
148 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/07/04(水) 01:51:44.67 ID:QUW4SbxIO
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
バラバラの身長で同じ顔という、不気味な五人組『ハンド』
親指から小指までの順番で並び、戦闘体制に入っている
烈「早く、末堂に救助を呼ばなければ・・・」
サム「ここに来るまでに」
ファースト「道場の人間には」
ミドル「全員」
リング「眠ってもらって」
ショート「誰も来ない」
克巳「・・・なんだこいつら」
烈「まるで・・・一人の人間が喋っているように」
「「「「「我らハンドは五身一体!」」」」」
克巳「真っ白いスーツ着てないで、おまえらこそ一人ずつ色分けしやがれ!シャッ!」
真ん中の一番背の高い男『ミドル』に向かい放たれた克巳の上段蹴りは、その左右の『リング』と『ファースト』の腕によって止められ、それと同時に一番外側の『サム』と『ショート』が克巳の脇腹に一撃ずつ食らわせた
それはまさに、一人の人間の一つの手の平の動きのようだった
シュッ ガッ ガッ ドス ドス
烈「克巳!」
149 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/07/04(水) 01:55:41.28 ID:QUW4SbxIO
克巳「クッ・・・躱すと同時に攻撃・・・」
床に倒れていたカオルが、目を覚ました
カオル「・・・う・・・ん」
烈「カオル!末堂君が下に落下した!」
カオル「・・・え?」
烈「救助をッッ!」
ショート「おっと、逃がさないよ」
立ちあがろうとするカオルの前に、一番低身長のショートが立ちはだかった
カオル「キャッ!」
サム「ショート、お前が捕まえておけ」
ファースト「さて続きだ」
ミドル「防御、攻撃」
リング「同時に多方向から」
「「「「「どうする?」」」」」
カオル「すえっち・・・ここから、落ちたの?!」
ショート「そのようだねぇ」
烈「・・・」
150 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/07/04(水) 12:24:08.44 ID:b9FUA7iDO
すえっちなら五点着地をきめてくれてるはず
151 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/07/04(水) 12:54:05.04 ID:QUW4SbxIO
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
男の名は天内悠
かつて地下闘技場トーナメントで独歩と拳を交えた相手だった
赤青スーツの二人は、天内の姿を見ると一気に恐怖が絶頂まで登りつめた
赤・青「ヒッ・・・ヒイィィィィィィ~~~ッッ!!」
独歩「こいつらは・・・お前さんに怯えてたのかい」
天内「ええ、一度公開処刑をしたことがありまして・・・身体中の骨を砕いた所を見せてやりました」
独歩「・・・堕ちたモンだな、アメリカ大統領SPから殺し屋かよ」
天内「・・・愛あるが故に、それに反する人の望まぬことを行う・・・天職を見つけましたよ」
152 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/07/04(水) 12:55:19.53 ID:QUW4SbxIO
独歩「思い出して来たぜ、その神経に触るほど丁寧な立ち振舞い・・・なんとかならねえのかよ」
天内「目上の方に対してだけです、誇っていい・・・貴方は私に尊敬されている」
独歩「相手見て使い分けてんのか、嫌な奴だったんだなあ・・・俺に敗ける前は聖人のように振る舞ってたじゃねえか」
天内「敗けてなどいないッッ!!」
153 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/07/04(水) 13:42:23.96 ID:h8IFE4p3o
wwktk
154 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) :2012/07/04(水) 20:17:51.58 ID:0XosftMGo
グラップラーバキまでしか読んでないんだけど
天内悠ってトーナメント以降出てきたの?
155 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/07/04(水) 20:31:28.71 ID:ZmIFU2wMP
出てきてない
ちなみにアニメ版では生存確認されてる
156 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) :2012/07/04(水) 21:05:54.88 ID:0XosftMGo
サンクス
マジであれ以降何も無しなんだ
勇次郎のお墨付きみたいな形で乱入したのにまさか独歩に負けるとは思わなかったよ
負けと言っていいのかわからない負け方だけど
157 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/07/04(水) 22:41:14.38 ID:QUW4SbxIO
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背中から流血する花山を見下ろし、新垣は意気揚々とショットガンをリロードした
ガシャッ
新垣「親父が愛人に大金注ぎ込んでてよ、その愛人が死んだと聞いたら、残された娘を狙う・・・普通のことだろ?」
妹「・・・最低」
花山「・・・」
新垣「最低ね・・・ククッ・・・まあ、こんなモンで、あんたを仕留めれるとは思っちゃいねえよ・・・」
新垣は硝煙が出たままのショットガンを、慣れた手付きで一度振り回して見せてから、床に放った
新垣「だがよ、こいつを口にぶちこんだら、どうかな?」
放り投げた手をそのまま懐に入れ、銀色に輝く拳銃を取り出した
妹「・・・イヤ」
花山「・・・やってみろ」
新垣は妹を抱え込んだまま無表情で見上げる花山の口に銃口をねじ込んだ
ズボ
新垣「デザートイーグルに44マグナム弾だぜ?ハンドキャノンってぇやつだ・・・ヒャッハハハハ!!酷ぇ様だなあ!二代目え!」
妹「止めてぇ!!」
158 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/07/04(水) 22:50:06.51 ID:QUW4SbxIO
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
烈は義足を上手く利用し、克巳の背中に自らの背中を合わせた
クルッ ピタ
烈「急がなければ!」
克巳「ああ!」
サム「ほう、流石だな」
ファースト「背中合わせで、死角を消したか」
ミドル「だがこれは、試合では無い」
リング「正々堂々と正面からやり合うと思うか?」
不気味な台詞の輪唱の中、ショート以外の四人はスーツの背中から、美しく装飾がされた、太い曲線を描く大きな刀を同時に取り出した
シャキンシャキッシャキ
ショート「多方向から、同時に青龍刀の波状攻撃・・・」
烈「・・・ッッ!」
克巳「クソッ・・・」
159 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/07/04(水) 23:03:22.79 ID:QUW4SbxIO
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
用具室に響き渡った天内の声には、明らかに今までの冷静沈着な言い回しとは異なり、感情が露わにされていた
独歩「あっれ~?俺が勝ったと思ったがなあ」
天内「明らかに!明らかに私が勝っていたッッ!邪魔さえ入らなければ・・・」
独歩「・・・それじゃあ・・・どうすんだ?」
天内「知れたことッッ!」
天内は異常に長い両腕を床と水平に広げ、両脚を揃えて、独特の戦闘体制をとった
独歩「やっぱりヤルのか・・・もう、床壊さねぇでくれよ?」
天内「あの時は、ギャラリーに他出場者・・・人の目があった」
独歩「ああ、なんだ?兄ちゃんあがり症だったの?」
天内「ふざけるなッッ!」
独歩「ふざけてるのはどっちでぇ・・・」
160 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/07/04(水) 23:16:07.56 ID:QUW4SbxIO
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
絶望的な表情を浮かべながら、背中合わせで構える烈と克巳に、青龍刀で空気を切る音をさせながら、四人が近付いて行く
克巳「・・・ダメだ」
烈「ここまでか・・・」
二人が両腕をぶら下げ、観念したように両目を閉じた時、拍子抜けする程明るい、聞き慣れた声が聞こえて来た
『お待たせ』
ショート「ん?」
カオル「!」
克巳「来た来た」
烈「よし」
サム「・・・何故?」
カオル「すえっち!!」
末堂「ッッシャア!!」
音を殺してカオルを人質に取るショートの後ろに現れた末堂は、巨木の様な右脚をショートの脇腹に叩きつけた
ズドッ
ショート「ゲハァ!」
ドサ
さすがジェットコースターから落ちても死ななかった男だな
162 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/07/04(水) 23:22:55.30 ID:/zeSPQHbo
三戦立ちは伊達じゃない
163 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/07/04(水) 23:58:19.89 ID:QUW4SbxIO
末堂「こっちはもう大丈夫です、二人ともナイスでした」
克巳「ちと臭かったかな?」
烈「克巳、咄嗟の判断でよく合わせてくれた」
克巳「だってコイツ、外で普通に起き上がって、こっちに手振ってんだもんな」
サム「今の狼狽が・・・芝居だったと言うのか」
克巳「いやあ~、あのオカマ野郎天内を油断させて、一網打尽にしてやろうと思ったんだけどね」
烈「彼女が人質に捕られ、芝居続行・・・フッ・・・思わぬ効果があったものだ」
164 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) :2012/07/05(木) 00:27:10.22 ID:xG5MJHCN0
まぁ、三階程度の高さだから、末堂なら大丈夫か
165 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/07/05(木) 00:27:28.83 ID:dkMRT4SIO
ファースト「・・・貴様達二人が窮地に陥っているという、事実には変わりはない」
ミドル「デカブツ、お前は後回しだ」
リング「こいつ達の後で、娘もろとも切り刻んでやる」
末堂「え?なにが?」
克巳「もういいかな」
烈「ああ」
克巳は烈の返事を聞くと、低く身構えた
そして、破裂音と共に四人の手に持っていた青龍刀が弾け飛ぶ
「「「「~~~~ッッ!!」」」」
ガシャガシャシャン
克巳「うちは武器禁止だってば」
烈「人質を捕るまでは良かったが・・・その床に転がっている武具は君達如きが扱える代物では無い・・・」
烈は床に落ちた青龍刀に近づくと、義足を軸にもう片方の足で四本を宙に舞い上げ、両手で見事に全てキャッチした
スッ パシッパシパシパシ
烈「貴様達は中国武術を舐めたッッ!!」
末堂「片手に二本ずつ・・・よ、四刀流?」
166 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/07/05(木) 00:34:40.98 ID:dkMRT4SIO
ファースト「クソ!」
ファーストが苦い表情と共に、懐から自動小銃を取り出すと、他の三人も同じ顔をしてそれを取り出した
カオル「銃!」
克巳「ほう、やっとチンピラらしくなってきたじゃないか」
末堂「カオル!避難するぞ!」
カオル「は、はい!」
167 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/07/05(木) 00:41:33.73 ID:dkMRT4SIO
烈「克巳、君も下がっていてくれ」
克巳「そ、そう?・・・なんか、キレてる?」
「「「「死ね!!」」」」
烈「憤ッッ!!」
四人が引き金に指をかけようとすると、烈はチャイナ服をたなびかせ、駒のように回転しながら青龍刀を唸らせた
ヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュン
ポトッ ポトッポトポト
ファースト「あれ?」
ミドル「・・・何か降って」
リング「これって」
サム「ッッ!!」
床に落ちる四つの自動小銃、そして
ガシャシャン
克巳「よく物を落とすなあ」
「「「「指~~~~~ッッ!!」」」」
168 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/07/05(木) 00:51:31.98 ID:dkMRT4SIO
烈「急いで病院に向かえば、まだ再生出来る筈・・・それともまだ・・・」
烈が言い終わる前に、四人は押し合いへし合いながら「餅まき」の様に指を取り合って、背を向け走り始めていた
サム「それは俺のだ!」
ファースト「違う!お前のはあっちだ!」
ミドル「指があ!指があ!」
リング「ヒイィ~!!」
ダダダダダダダダ
克巳「なんて悪者っぽい去り方だ・・・」
末堂「おい!忘れ物だ!」
ガシッ
ショート「・・・ん?」
末堂は気を失っていたショートのベルトを背中から掴み、砲丸投げの容量で二回三回回って四人の方へ放り投げた
ブン
ショート「うあああああ!」
ドーン
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