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歪世界トレイン
[8] -25 -50 

1: ◆e.A1wZTEY.:2017/4/30(日) 20:25:16 ID:4iSJ1d7xp2

乗客Yx1

戸野 千織(トノ チオリ)

目が覚めたらそこは、走る列車の中だった



101: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/14(日) 00:19:35 ID:spmolqlGjY

千織「た、確かにその、私買われて、ここで働くつもりはあるんですけど…実際に車掌さんにそう言ってしまいましたし。でも、でも一生この世界にいるのはちょっと、困るというか、」

焦ったように車掌をみる

車掌「…」 ハァ

車掌「君と連れの男を人間界へ送り返す分だけの精力を働いて返してくれれば、送ってやる」

千織「えっ…」

ブリアン「はああああ!?!?」

ブリアンが真っ黒な毛を逆立てた

102: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/14(日) 00:24:48 ID:spmolqlGjY

ブリアン「正気なの!?何のために2000万も払ったと思ってんの!?馬鹿じゃないの!?」

車掌「ずっと傍においておく理由があるか?」

ブリアン「あるよ!人間は精力の塊だ、死ぬまで働かせるか、すぐにでも燃料の一部にすれば、この列車の寿命を延ばすことができる!」

車掌「私一人いれば問題ない」

ブリアン「問題ないわけないだろ!いつか精力には限界がくる、わかってることじゃないか!!」

ブリアン「あの2000万だって、車掌の精力から錬成したものだろ!ちょっと働いて返してもらうだけじゃ大赤字だよ!!」

103: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/14(日) 00:27:46 ID:spmolqlGjY

千織「え…!?」

千織「す、すみません、話がちょっとわからないんですが」

ブリアン「っ…」

ブリアン「千織、おいで。僕が説明してあげる」

車掌「だめだ」

車掌が千織の手をつかむ

車掌「お前の説明じゃ偏見が大きい。私から説明する」

ブリアン「…!」

ブリアン「あぁそうかい!勝手にしなよ!!」

ブリアンは不機嫌そうに尻尾を床にたたきつけると、どこかへ行ってしまった

104: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/14(日) 00:52:18 ID:spmolqlGjY
多めと言いつつ9レスしか書けなかったので切腹_(:3」 ∠ )_
105: 名無しさん@読者の声:2017/5/14(日) 07:45:59 ID:spmolqlGjY
>>98
✕不思議な男
〇不思議な男の子
106: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/15(月) 01:00:22 ID:spmolqlGjY

2人きりになると、車掌が静かに話し始めた

車掌「―・・・以前にも言ったが、この列車は電気や蒸気で動く類のものではない」

車掌「精力と呼ばれる、心身の活動力を源としている」

千織「心身の活動力・・・」

車掌「生命力と言ってもいい。どの生物にも問わず存在しており、その形は限定されない」

車掌「前、君がこの列車に迷い込んだとき、私は君から髪という精力を頂戴した。その精力を使って、君を君の住む場所へ送り届けたというわけだ」

107: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/15(月) 01:01:44 ID:spmolqlGjY

千織「そうだったんですね…」

千織「…車掌さんは、ご自身の精力を使って、この列車を動かしているんですか?」

車掌「そうだ。この世界に住む者たちは、もともと死者だから精力を持ち合わせていないが、私は精力をもっている」

千織「車掌さんは生きているってことですか?」

車掌「この列車を動かすためだけに精力が与えられているだけだ。それが生きていると言うのかは知らない」

車掌「実際に目で見たほうがいいだろう。ついてこい」

108: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/15(月) 01:03:48 ID:spmolqlGjY

案内されたのは、車掌室だった

車掌「これが私の食事だ」

車掌が目をやった先をみると、茶色い箱があった

中には客から回収したと思われる乗車券が積まれている

千織「食事…?」

車掌「見ていろ」

車掌が手をかざすと、ゆらゆらと乗車券が揺れた

その形態は徐々に変化し、1枚1枚が青白い光になり、合わさっていく

109: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/15(月) 01:07:04 ID:spmolqlGjY

千織「…!?」

車掌はその光の塊を手のひらにのせると、自分の胸にあてがった

そのまま、ずずず、と自分の胸の中へ埋め込んでいく

千織「…」

呆気にとられている間に、光の塊は完全に車掌の体内へ入っていった

車掌「……これで終わり」

千織「い、いったい何が」

車掌「乗客は精力をもっていないので、金をだして精力を購入している。それが乗車券という形で私の元へきている」

車掌「私はその精力を吸収し、消費することで、この列車を動かしている」

千織「…!」

110: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/16(火) 01:18:08 ID:spmolqlGjY

千織「…わ、私のために払ったお金、車掌さんの精力を使ったんですよね?どのくらい使ったんですか…?」

車掌「別に気にしなくていい」

千織「でも!」

車掌「問題になる量ではないと言っている。ブリアンが大げさなだけだ」

千織「…」

千織「…本当に、ごめんなさい」

千織「私の精力、できる限り差し上げたいです。どうすればいいですか?」

111: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/16(火) 01:20:01 ID:spmolqlGjY

車掌「…」ハァ

車掌「君は躊躇もせず働くだの精力を渡すだの言うが、深刻さをわかっていないな」

千織「え…」

車掌「精力は生命力に等しいと、さきほど言ったことを忘れたのか?休めば回復する体力とは違う。自分の寿命を減らす覚悟があるなら考えてやる」

千織「そ、それは…」

そのとき

ぐううぅぅ〜〜

不意に、千織のお腹が鳴った

112: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/16(火) 01:21:21 ID:spmolqlGjY

千織「…」

車掌「…」

千織「ご、ごめんなさい…」 カアアァ

千織(もおぉ〜!何でこんな時に鳴るのよ!ばか!ばか!)

恥ずかしさで顔をおさえる

車掌「…まったく」

車掌「君は緊張感がないな」

千織「す、すみません…」

113: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/16(火) 01:22:30 ID:spmolqlGjY

車掌「…いや。普通に考えれば、君も腹がへって当然か。私の方こそ、自分だけ食事を済ませてしまってすまなかったな」

千織「い、いえ…」

謝られたことに少し驚く

車掌「積み荷に、乗客用の非常食があったはずだから、もってきてやる」

千織「あ、ありがとうございます」

114: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/16(火) 01:25:14 ID:spmolqlGjY

車掌がもってきたのは、「草」だった

千織「…草?」

車掌「ヤエヌクラ草という、この世界で最も簡単に手に入る食材だ」

車掌「この世界には人間がいないからな。君が慣れ親しんだ食料はない」

千織「た、食べても大丈夫でしょうか」

千織「食べたら元の世界へ戻れなくなるとか、ないですか?」

車掌「嫌なら食べなくてもいいが」

千織「た、食べます、食べます」

115: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/16(火) 01:27:11 ID:spmolqlGjY

シャク、と草を口の中へ入れる

千織「…」 シャク

千織「…」 シャクシャク

車掌「別にまずくはないだろう」

千織「無味、ですね…。噛み続けたガムの味です」

車掌「そのうちマシなものを調達するから、我慢してくれ」

千織「と、とんでもないです。餓死するよりずっとましです」

116: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/17(水) 23:50:20 ID:spmolqlGjY

食事を終えると、寝台車両へ案内された

1〜6両目が一般車両、7両目が寝台車両、8両目が貨物車両となっているようだ

車掌「ここの寝台で寝てくれ。最近ここは開放してないし、客がいきなり乗り込んでくることもない」

千織「はい」

千織「車掌さんやブリアンさんはどこで寝てるんですか?」

車掌「私は車掌室で寝ている。ブリアンは適当なところで寝ている」

千織「そ、そうなんですね」

117: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/17(水) 23:56:06 ID:spmolqlGjY

千織「…」 オドオド

車掌「?」

千織「あ、あの。ここが安全だとはわかってるんですけど…私、怖くて。魚人とか、未だに信じられないし…」

千織「ここは車掌室と距離があるので、何かあった時に不安で」 アセアセ

車掌「…」

千織「…」

車掌「…つまり?何が言いたい?」

千織「そ、その… 車掌さんの近くで寝させてもらったら安心だなって…」

118: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/17(水) 23:57:58 ID:spmolqlGjY

車掌は少し考える素振りを見せたが、小さく首を振った

車掌「君は甘えすぎだ。自分の身は自分で守ることも覚えろ」

千織「は、はい…」 ガーン

車掌「明朝6時に列車を動かす。5時には起きるように」

そういうと、車掌は寝台車両から出ていった

千織「…」

千織「…悪い人じゃ、ないんだけど」

気軽に話せるようになるには、まだ時間がかかりそうだ

119: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/18(木) 00:00:09 ID:spmolqlGjY

補足:列車編成

・最前部:運転席
・1〜4両目:一般車両
・中間部:車掌室
・5〜6両目:一般車両
・7両目:寝台車両
・8両目:貨物車両
・最後部:運転席

120: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/18(木) 20:56:06 ID:spmolqlGjY

―――魚人宅

恭太「へっくしゅん!」

柱に縛り付けられたまま、くしゃみをする

恭太(俺…死ぬのかな…)

寒さと空腹で、心身ともに限界だった

恭太(ちおちゃん…ちおちゃんは、食べられちゃったのかな)

恭太(俺、無力だ…好きな女の子ひとり、守れないなんて)

恭太(何でこんなことに…俺たちが何をしたっていうんだ…)

夢であってほしい

そう願いながら、恭太は眠りについた

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