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歪世界トレイン
[8] -25 -50 

1:🎏 ◆e.A1wZTEY.:2017/4/30(日) 20:25:16 ID:4iSJ1d7xp2

乗客Yx1

戸野 千織(トノ チオリ)

目が覚めたらそこは、走る列車の中だった



81:🎏 ◆e.A1wZTEY.:2017/5/10(水) 23:37:12 ID:ufTVIcJVgc

千織「でも、でも早く行かないと沖くんが」

車掌「君は」

冷めた瞳で睨まれた

車掌「君は、私に買われたことを忘れたのか?言い方を変えれば、君は私の奴隷であり、私は君の主人だ」

千織「…!」

車掌「願いをきいてやったからといって調子に乗るな。今後は私の指示に従え」

千織「は、はい・・・」

82:🎏 ◆e.A1wZTEY.:2017/5/11(木) 23:08:36 ID:spmolqlGjY

「にゃ〜」

千織「あ・・・!」

みると、さきほどの黒猫が歩み寄って来ていた

車掌「・・・」

千織「あ、あの、さっきこの猫ちゃんが私に・・・」

車掌「知っている。どうせこいつが余計なことを言ったんだろう」

黒猫「余計な事とは心外だなぁ。貴重な人間が下衆な輩に奪われるのはもったいないと思わない?」

車掌「別に」

黒猫「またそんなこと言って。精力があるに越したことはないじゃないか」

千織「・・・」 ポカーン

83:🎏 ◆e.A1wZTEY.:2017/5/11(木) 23:12:54 ID:spmolqlGjY

黒猫「あ、自己紹介遅れたけど。僕の名前はブリアン。君の名前は?」

千織「と、戸野千織です」

ブリアン「千織ちゃんね。僕はこの列車の車掌補佐をやってるんだ〜」

千織「補佐…。ね、猫なのに?」

ブリアン「魚が手足生やして歩いてるこの世界で、驚くことじゃないでしょ〜」

車掌「ブリアン、しばらく彼女の面倒をみてやってくれ」

ブリアン「え〜?」

車掌「私はまだ仕事が残っている。何かあったら私のところへ連れてこい」

ブリアン「わかったよ〜」

車掌は貨物車両から出ていき、千織はブリアンと2人きりになった

84:🎏 ◆e.A1wZTEY.:2017/5/11(木) 23:18:04 ID:spmolqlGjY

千織「…あの、ブリアンさん」

ブリアン「なあに」

千織「この世界はなんなんですか?人間じゃない人たちが、いっぱいいて・・・」

ブリアン「・・・・」

ブリアン「・・・そうだねぇ」

少し考えてから、話し始める

ブリアン「人間の言葉でいうと、ここは異世界であり、死後の世界でもある」

千織「死後って・・・」

ブリアン「この世界は欲望に満ちている。そして、死後というのは“人間ならざるもの”に限られる」

千織「???」

ブリアン「例えば、君を襲った魚人がいたでしょ?あれは、人間界で生きていた魚が死後、この世界で生まれ変わったものだよ」

85:🎏 ◆e.A1wZTEY.:2017/5/11(木) 23:20:45 ID:spmolqlGjY

ブリアン「人間に恨みをもっていたのか、単純に人間になりたかったのかは知らないけど、“欲望”をもっていたその魚は、この世界で手足を得た」

千織「そ、そんな・・・。じゃあ、この世界にいるものたちは全て、すでに死んでいるってことですか?車掌さんやブリアンさんも?」

ブリアン「僕はそうだよ。人間になりたいって欲はなかったから、魚人みたいな醜い姿にならずに済んだけど」

千織「じゃあ一体、なんの欲望が体現されたんですか・・・?」

ブリアン「さぁ、それは内緒だなぁ」 クスクス

千織「あ、もしかして、喋ること?」

ブリアン「違うね。この世界にきた者たちは全て、無条件で言葉を話すことができる」

86:🎏 ◆e.A1wZTEY.:2017/5/11(木) 23:26:08 ID:spmolqlGjY

・この世界は、「人間以外の生物の死後世界」

・生前に強い欲望をもっていた場合にのみ、この世界に存在することが許され、且つその欲望が体現される


87:🎏 ◆e.A1wZTEY.:2017/5/11(木) 23:28:27 ID:spmolqlGjY

千織「車掌さんは、見た目が完璧な人間ですよね…。生前はなんだったんでしょう」

ブリアン「あいつは死者じゃないよ」

千織「え!?」

ブリアン「ただこの世界で、この列車を動かすためだけに生まれてきた存在。それだけさ」

千織「…」

千織「…よく、わからないです」

ブリアン「気になるなら、直接あいつから聞いたら?詳しいことは僕も知らないし」

88:🎏 ◆e.A1wZTEY.:2017/5/11(木) 23:31:59 ID:spmolqlGjY

ブリアンは千織を小部屋へ案内した

ブリアン「ここ、シャワー室ね」

ブリアン「さっき車掌から言われたと思うけど、まずはお風呂入ってもらわないと、人間臭くてたまんないから」

千織「は、はい」

ブリアン「そしたら、その駅員服に着替えて。男物だから、サイズ合わないと思うけど、勘弁ね」

千織「はい」

89:🎏 ◆e.A1wZTEY.:2017/5/12(金) 20:49:54 ID:spmolqlGjY

―――――――


恭太「う、うぅ・・・」

異臭と頭痛で目が覚めた

徐々に意識を覚醒させる

恭太(…俺、なにしてたんだっけ)

恭太(なんだこの臭い…くっさ…) ケホッケホッ

恭太(確か、よくわかんない列車でちおちゃんを探して―…)

恭太「――っ!」 ハッ

フッと記憶が蘇り、身体を起こす

90:🎏 ◆e.A1wZTEY.:2017/5/12(金) 20:51:39 ID:spmolqlGjY

しかし

グイッ

恭太「え、」

身体が柱に縛りつけられ、全く身動きが取れない

身ぐるみを剥がされている上に、身体にはベタベタしたものが塗りたくられている

恭太「うそ、だろ…」

恐ろしい魚の化け物に捕らえられた記憶

恭太「あれ、夢じゃねーのかよ…」

恭太「もしかして俺、食われるのか…?あの化け物に…」

91:🎏 ◆e.A1wZTEY.:2017/5/12(金) 20:54:25 ID:spmolqlGjY

「――安心しな、食いはしないさ」

恭太「!」

視界に化け物が現れた

魚人母「あんたは高値で売られるのさ。良かったねぇ、命が助かって」 ニヤニヤ

魚人母「まぁ、買い先で食われない可能性はないけど」

恭太「た、頼む、命だけは…」

魚人母「あらあら。私の話全然聞いてないわね」

魚人母「とりあえず、体に塗っちまった塩を落とさないとねぇ」

バシャーン!

恭太「ぅえっつめて!」

バケツから水をかけられる

魚人母「うふふ、楽しみだわぁ」

92:🎏 名無しさん@読者の声:2017/5/12(金) 21:40:53 ID:JJovD3w/IY
支援
93:🎏 名無しさん@読者の声:2017/5/13(土) 16:45:37 ID:QXC8O.Idx2
支援します
94:🎏 ◆e.A1wZTEY.:2017/5/13(土) 17:50:35 ID:KHBlWpl3yc
>>92 >>93
フオオオ支援ありがとうございます、今日は帰るのが遅いので遅い時間の更新になってしまいますが、お二方の支援に感謝して多めに更新させて頂きますよろしくお願いします_(:3」 ∠ )_
95:🎏 ◆e.A1wZTEY.:2017/5/14(日) 00:01:44 ID:spmolqlGjY

―シャワーを浴びながら、悶々と考える

千織(なんとか命は助かったものの…私、これからどうなるんだろう)

千織(買われちゃって、良かったのかな…)

千織(あれしか助かる方法はなかった。だから正しかったんだ、うん)

千織(車掌さんはちょっと怖いけど、悪い人じゃなさそう…。信用していいよね…?)

千織(…)

千織(とりあえず、今は沖くんを助けることを考えないと)

千織(…車掌さんは、簡単に魚人をやっつけちゃったし。車掌さんが手を貸してくれれば、沖くんも助けられるはず…)

千織(…そうだ。この世界に来るきっかけになった、あの男の子についても聞いてみよう。何かわかるかもしれない)

96:🎏 ◆e.A1wZTEY.:2017/5/14(日) 00:03:40 ID:spmolqlGjY

シャワーを浴び終え、駅員服に着替える

ブリアン「――うん、まぁまぁマシなにおいになったね」 クンクン

ブリアン「僕や車掌のそばにいれば、人間だと思われなくなるよ」

千織「はは…」

なんだか複雑な気持ちだ

千織「あの、私はこれからどうすれば?」

ブリアン「んー。とりあえず今は、列車の休止時間。ぶっちゃけすることないよ」

97:🎏 ◆e.A1wZTEY.:2017/5/14(日) 00:05:39 ID:spmolqlGjY

千織「明日の朝に出発するって言ってましたけど、この世界も、人間界と同じ時間で進むんですか?」

ブリアン「そうだよ。1日は24時間で、朝も昼も夜もある」

千織「そうですか…。私がこっちに来てから、何日たったんでしょう」

ブリアン「昨日の夜にこの列車に乗って、外に飛び出して、今日の昼に列車に積まれて…で、今は夜だからまる1日じゃない?」

千織「1日…。あぁ、お父さんとお母さん、心配してるだろうなぁ」

98:🎏 ◆e.A1wZTEY.:2017/5/14(日) 00:08:25 ID:spmolqlGjY

千織「―…そうだ。私がこの世界にきたきっかけなんですけど」

千織「学校の帰り道、不思議な男にチョコをあげたら、この世界に連れてこられちゃったんです」

ブリアン「男の子?」

千織「3月なのに半袖半ズボンで…生気のない顔してて。この世界に住んでる子じゃないかって思うんです」

ブリアン「知らないね。多分車掌も知らないと思うよ」

千織「そ、そうですか…」 ショボーン

千織「何でその子は、私をこの世界に連れてきたんでしょう」

ブリアン「この世界じゃ人間の希少価値は高いから、送り込んでやろうと思ったんじゃないの。誰かに頼まれたのか、ただのイタズラなのか知らないけど」

千織「でも、私その子に連れてこられるの2回目なんです。おかしいですよね」

99:🎏 ◆e.A1wZTEY.:2017/5/14(日) 00:11:49 ID:spmolqlGjY

車掌「――で?私が何か知っていないかって?」

箒をもって車内の掃除をしていた車掌に尋ねる

千織「はい」

車掌「…」

車掌「具体的にその少年が誰なのかは知らないが、推測はできる」

千織「!」

車掌「おそらく、もう生きてはいない者だろう。しかし、人間の世界に存在しているところを見る限り、この世界の者でもない」

車掌「そして君に、何か理由があって執着している」

100:🎏 ◆e.A1wZTEY.:2017/5/14(日) 00:17:28 ID:spmolqlGjY

千織「そ、それって…」

千織「わ、私、幽霊に憑かれてるってことですか?」

車掌「私は幽霊という概念に理解はないが、君たちの世界に存在する死者をそう呼ぶならそうなのだろう」

千織「ひー!いやだー!私霊感とか全然ないと思ってたのに…!」

千織「幽霊を祓わないと、私何度でもここに来ちゃうんだ…」

ブリアン「問題ないでしょ」

千織「え?」

ブリアン「千織は車掌に買われたんだから。元の世界に戻った後のこととか考える必要ある?」

千織「え、えぇえ!?」

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