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歪世界トレイン
[8] -25 -50 

1: ◆e.A1wZTEY.:2017/4/30(日) 20:25:16 ID:4iSJ1d7xp2

乗客Yx1

戸野 千織(トノ チオリ)

目が覚めたらそこは、走る列車の中だった



2: ◆e.A1wZTEY.:2017/4/30(日) 20:27:44 ID:4iSJ1d7xp2

千織(・・・あれ、いつのまに電車なんて乗ってたんだろ・・・)

電車に乗る前の記憶が全くない

千織(無意識のうちに乗ってたのかな・・・。でも、これ何線だろう)

通学に使う山手線や総武線とは似つかない、一面茶色の車両

窓から見えるのは、真っ黒な景色

3: ◆e.A1wZTEY.:2017/4/30(日) 20:30:40 ID:4iSJ1d7xp2

千織(なんか、やばいかも・・・)

ぼんやりした目覚めの感覚から、徐々に危機の意識が湧いてくる

スマホを取りだし時間を見ると、午前 2時3分の表示

千織(ありえない、こんな時間に電車に乗ってるなんて)

他に乗客が数人いるが、皆うつむき表情が見えない

4: ◆e.A1wZTEY.:2017/4/30(日) 20:34:44 ID:4iSJ1d7xp2

ピーッ

千織「!?」

前方のドアが開き、奥から1人の男性が姿を現した

帽子を目深にかぶり、手を後ろに組んだままこちらに歩み寄ってくる

千織(車掌さんだ・・・!)

風貌をみるに、車掌のようである

無意識に安堵し、保護されたような気分になった

5: ◆e.A1wZTEY.:2017/4/30(日) 20:38:39 ID:4iSJ1d7xp2

千織「あっ、あのっ」

思わず話しかける

千織「これってなんていう電車ですか?すみません、知らないうちに乗ってしまっていて・・・」

車掌「・・・」

千織「あ、あの・・・?」

車掌「・・・電車ではありません」

千織「え?」

6: ◆e.A1wZTEY.:2017/4/30(日) 20:41:50 ID:4iSJ1d7xp2

車掌「電気で動いておりません。この列車は、全て精力を燃料にしております」

千織「せ、せいりょく・・・?」

車掌「お客さま、乗車券を拝見いたします」

男はすっと手を差し出した

千織「あっ、えっ、えっと・・・」

あわててポケットに手をつっこむと、乗車券らしきものはなかったが、財布があるのを確認できた

7: ◆e.A1wZTEY.:2017/4/30(日) 20:46:09 ID:4iSJ1d7xp2

千織「あの、乗車券持ってなくて・・・。現金でもいいですか?」

車掌「現金でのお支払いはお受けしておりません」

千織「そ、そうなんですか!?どうしよう・・・suicaならあるんですけど」

車掌「・・・」

男は小さく息を吐いた

車掌「お客さま、どこからお乗りですか?」

千織「ご、ごめんなさい、覚えてないんです・・・。住んでるところは東京の荒川区なんですけど・・・」

車掌「・・・わかりました」

8: ◆e.A1wZTEY.:2017/4/30(日) 20:50:25 ID:4iSJ1d7xp2

男は白い手袋をはめた手を伸ばし、優しく千織の髪にふれた

千織「え・・・?」

車掌「今回は、乗車賃としてこれを頂きます」

千織「へ・・・?あ、あの」

車掌「もう二度と、この列車に乗ることがありませんように。その時は、お送りできる保証はありませんので」

千織「・・・!?」

ふわりと風が吹き、一瞬、帽子の奥から男の瞳が見えた

――それと同時に、千織は気を失った


9: ◆e.A1wZTEY.:2017/4/30(日) 23:51:44 ID:8vQGUW9sCM


乗客Yx2

沖 恭太(オキ キョウタ)


10: ◆e.A1wZTEY.:2017/4/30(日) 23:53:44 ID:8vQGUW9sCM

恭太「――ちおちゃん!?!?」

千織「お、おはよう」

恭太「か、か、髪どうしたの!?なんか嫌なことでもあった!?」

千織「ううん、何もないよ。イメチェンしたかっただけ」

恭太「だ、だって、小学校のころからずっとロングだったのに」

千織「どうせ似合ってないですよーだ」

恭太「そんなことないよ!ボブのちおちゃんも超カワイイ!!」

千織「もー恥ずかしいからやめて」

11: ◆e.A1wZTEY.:2017/4/30(日) 23:58:18 ID:8vQGUW9sCM

――今朝

気がついたら、私は荒川区にある公園のベンチで寝ていた

胸まであった長い黒髪はばっさりと切られ、無造作なショートヘアになっていた

切られた髪は、どこにも見当たらない

千織(・・・あれは、夢じゃなかった・・・)

髪に触れ、車掌服を着た男の言葉を思い出す


『今回は、乗車賃としてこれを頂きます』


千織(・・・こんなのってアリ・・・?)

12: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/1(月) 00:05:39 ID:spmolqlGjY

――どうやら私は高校が終わってから半日、夕方〜朝方の間行方不明になっていたらしい

親が帰宅しない私を心配し、捜索願を出すかどうかというところで帰ることができた

髪のことを含め散々問いただされたが、曖昧にごまかすしか術がなく、美容院で髪を整えてもらい午後から登校する次第となった

恭太「っていうかさー、昨日なんでLINE返してくれなかったんだよぉ。宿題教えてもらいたかったのにー」

千織「ごめんごめん。気づいたら寝ちゃってて」

どうやら、私が行方不明になっていたことを知らないらしい

13: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/1(月) 00:11:41 ID:spmolqlGjY

恭太「確かに、昨日の帰り道でなんか疲れてるっぽかったもんねー」

千織(昨日の帰り道・・・)

千織「ねぇ沖くん、私昨日・・・」

恭太「ん?」

千織「ふ、普通に帰ってた?」

恭太「? どゆこと?」

千織「だからその、沖くんと別れるまで・・・」

恭太と途中まで一緒に帰り、別れるところまでは記憶がある

だが、帰り道を分岐してからは、断片的で、曖昧な記憶しかない

14: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/1(月) 00:18:12 ID:spmolqlGjY

恭太「普通だったよ?なんで?」

千織「な、なんでもない。そうだよね、うん。なんでもない」

恭太「え、なに、気になるじゃーん!」

恭太「…あ!もしかして変質者がいたとか!?今日は俺が家まで送ったほうがいい!?」

千織「だ、大丈夫。大丈夫だから」

15: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/1(月) 00:21:28 ID:spmolqlGjY
帰り道

恭太「−じゃあ、ちおちゃんまたね!」

千織「うん、またね」

手を振り、2人はT字路で左右の道へ分かれた

すぅっと息を吸う

別に怖くなんかない
いつも通り、普通に帰ればいいのだ

いつものように、人がまばらなマンション街を歩く

何もない 何も思い出さない


何も――



16: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/1(月) 00:25:01 ID:spmolqlGjY

『お客さま』

ふっと、あの車掌の声が脳裏によぎる

最後に見た漆黒の瞳


千織(・・・あの人は)

千織(あの人は、誰なんだろう)

わからない でも、別にわからなくてもいい

気がつけば、自分の住むマンションの前に来ていた

千織(・・・何も、なかった)

千織は安堵すると、勢いよく階段を駆け上がった

17: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/1(月) 21:54:52 ID:spmolqlGjY

――あれから、1か月たった

ショートヘアの違和感にも慣れ、あの時のことは忘れつつあった

自分の髪を見るたびふと思い出すこともあるが、あれは現実のような夢だったのだ

そう、夢だったのだ そう思うことにしていた


恭太「――ちおちゃん!」

千織「あ、沖くん」

恭太「待たせてごめんねー、先生の説教長くってさぁ。さぁ、かえろー!」

千織「ちゃんと宿題出さなきゃだめだよ?」

恭太「今回は家に忘れちゃっただけなんだよ〜」

千織「もう、それ何回目?」 クスクス

18: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/1(月) 21:58:36 ID:spmolqlGjY

恭太「・・・あ!そうだ、大事なこと思い出した」

千織「大事なこと?」

恭太「はい、これ!」 スッ

カバンの中から、ピンク色の包装紙に包まれた小さな箱を取りだす

恭太「きょう、ホワイトデーでしょ!」

千織「あ・・・」

19: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/1(月) 22:00:14 ID:spmolqlGjY

恭太「ちおちゃんには、バレンタインデーにおいしいクッキーもらったからね〜」 ニコニコ

千織「で、でも、沖くんもバレンタインにチョコくれたじゃない。私てっきり交換だと思って・・・」

恭太「いいのいいの!俺がホワイトデーにお返しあげたいだけなんだから!」

千織「あ、ありがとう・・・。また手作りしてくれたの?」

恭太「もち!愛情100%!」

千織「沖くんの女子力にはかなわないなぁ〜」

20: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/1(月) 22:07:24 ID:spmolqlGjY

恭太「あーあ、ちおちゃんと帰ってると帰り道があっという間だなぁ」

千織「またすぐ明日会えるでしょ」

恭太「そうだけどさー、寂しいっていうか・・・」

千織「寂しい?」

恭太「うん」

千織「変なのー」クスクス

恭太「ほんとだよ、俺ちおちゃんがいないと…」

千織「あ、いけない!今日お母さんに夕飯の買い出し頼まれてたんだった!」

千織「じゃあ、沖くんまたね!チョコほんとにありがと!」 タタタッ

恭太「あっ・・・!」

21: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/1(月) 22:14:05 ID:spmolqlGjY

恭太と別れてからいつも1人で帰る道を、今日は少し早足で歩いていく

千織(えっと…ネギと人参だっけ?も〜、お母さん、学校帰りに買い出し頼むのやめてほしいな〜)

少し閑散とした通りに出ると、小さな池が見えた

あの池を過ぎれば、自宅からもっとも近いスーパーがある

千織(・・・?)

1人の男の子が池の前でしゃがみこみ、じっと何かを見つめている

千織「ぼく、この池はけっこう深いから危ないよ」

なんとなく声をかける

そう、声をかけてしまった

22: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/1(月) 22:23:29 ID:spmolqlGjY

男の子はゆっくりと立ち上がり、千織を見た

10歳にも満たないだろうか、まだ肌寒い時期だというのに半袖を着て半ズボンをはいている

眠そうな表情と、ぼさぼさの栗色の髪

男の子「――おねえちゃん」

男の子「おねえちゃん、ぼく、おなかすいたよ」

ぼそりと、かすれた声で言う

千織(もしかして、貧乏な子なのかな・・・上着着てないし)

千織「ぼく、おうちはどこ?お母さんは?」

男の子「・・・」

男の子「・・・ねぇおねえちゃん、おなか、すいた」

千織「・・・」

23: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/1(月) 22:26:15 ID:spmolqlGjY

千織「ご、ごめんね、今おねえちゃん何も食べ物持ってなくて・・・」

男の子「うそ。持ってる」

千織「え?」

男の子「そこに入ってる」

千織のカバンを指さす

千織(・・・もしかして)

カバンから、恭太からもらったチョコを取りだす

千織「こ、これはね、友だちからもらったものだから・・・」

そのとき

ふっと、脳内に記憶がよみがえった

24: 名無しさん@読者の声:2017/5/1(月) 22:33:43 ID:spmolqlGjY

千織(あれ・・・?こんなこと、前にもどっかで・・・)

男の子「・・・おねえちゃん、前はぼくに、それくれたよ」

千織「え?」

男の子「ぼく、それ好きなんだ。だから、今日ももらいにきたの」

千織「・・・!」

男の子の生気のない眼を見つめていると、ぞわぞわと忘れていたものが視界に、耳に、背筋にかけめぐる

1か月前、2月14日

あの日、私は同じように沖くんからもらったチョコを――


25: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/1(月) 22:37:56 ID:spmolqlGjY


「ちおちゃん!!」


はっとして振り向くと、恭太が息を切らしながら走ってきていた

千織「沖くん・・・!?」

恭太「あのねちおちゃん!俺、どうしても今日伝えたいことがあって」

千織「だめ、沖くん来ちゃだめ!!」

恭太「ホワイトデーだから、どうしても伝えたくて!俺、ちおちゃんのことが――」

千織「来ちゃだめ、戻って!!!」

次の瞬間

男の子が、千織の手からチョコをもぎとった

男の子「えへへ、またもらっちゃった・・・」

千織「・・・!」

男の子「お礼に、また、連れてってあげるね」


視界から、色が消えた


26: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/2(火) 18:59:58 ID:spmolqlGjY



――ガタンゴトン ガタンゴトン

――ガタンゴトン ガタンゴトン


千織(・・・・また・・・・)

ガタンゴトン

千織(・・・・来て、・・・・)


ガタン、


「お客さま」

千織「!」 ハッ

27: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/2(火) 19:02:30 ID:spmolqlGjY

目を開けると、そこは、”あの”列車のなかだった

目の前には、帽子を目深にかぶった、”あの”車掌

1か月前となんら変わりなく、背筋をのばし、手を後ろで組んで、千織を見下ろしている

車掌「・・・お客さま」

車掌「乗車券を、拝見いたします」

千織「っ・・・」

間違いない

また、あのよくわからない列車

現金も、suicaも使えない列車

28: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/2(火) 19:05:45 ID:spmolqlGjY

千織「・・・・・」

心臓がバクバクと音をたて、何も喋ることができない

車掌「・・・」

千織「・・・」

車掌「・・・お客さま」

千織「・・・・まっ・・・」

なんとか声をしぼりだす

千織「っま、また、髪をあげます!だから、元の世界へかっ、帰してください!」

車掌「・・・」

29: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/2(火) 19:12:19 ID:spmolqlGjY

千織「私、ほんとに何も知らないんです!知らなくて、乗ってしまって・・・」

千織「だから、乗車券とか持ってなく、て・・・」

車掌「・・・」

車掌「あなたの今の髪の長さでは、足りません」

千織「・・・!?」

車掌「毛根から根こそぎ頂くことになりますがよろしいでしょうか?」

千織「もっ、毛根!?」

車掌「・・・はい」

ゆっくりと、千織の髪に手を伸ばす――

そのときだった

30: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/2(火) 19:14:32 ID:spmolqlGjY

恭太「てめぇっ、ちおちゃんから離れろ!!」

ドゴッ!!

千織「!?」

突如視界に恭太が現れ、車掌を殴りとばした

車掌は勢いよく近くの座席シートに激突した

千織「おっ、沖くん・・・!?」

恭太「ちおちゃん、気をつけろ!こいつはさっき、俺を奥の車両に閉じ込めやがった!!」

千織「え・・・!?」

恭太「これは普通の列車じゃない!俺たちをどっかへさらおうとしてるんだ!!」

31: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/3(水) 20:45:35 ID:spmolqlGjY

車掌「・・・まったく」

口元の血をぬぐい、ゆっくりと立ちあがる

帽子がとれたその姿は、意外にも千織たちとほぼ同年代の若い青年だった

車掌「無賃乗車の分際で、よく吠える」

恭太「なんだと・・・!?」

車掌「この列車に乗ったからには、この列車の規律を守って頂こう。君は大声出して列車内を徘徊するという迷惑行為をしていたので、閉じ込めたまでのこと」

千織(車掌さん・・・!?)

今までの丁寧な口調とは打って変わり、鋭い口調になっている

32: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/3(水) 20:50:42 ID:spmolqlGjY

恭太「へっ、あんなロック、力づくで壊してやったし!」

恭太「つーか、俺たちをどこへ連れて行くつもりなんだ!今すぐ降ろしやがれ!!」

車掌「・・・」

千織「沖くん、待って・・・!」

恭太「ちおちゃん、安心して。降りさえすれば、俺んち電話して、車出してもらうから」

恭太「聞こえてんのかお前!!さっさと列車を止めやがれ!!」

車掌「・・・わかりました」

プシューッッ!!

千織「ひゃっ」

恭太「うわっ」

33: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/3(水) 20:55:53 ID:spmolqlGjY

大きな音を立て、列車が止まった。ドアが開く

千織「・・・!」

車掌「どうぞ」

恭太「お、おう・・・」

あっけなく止まったので、少し動揺したが、すぐさま千織の手をつかむ

恭太「ちおちゃん、行くよ!」

千織「まっ待って」

ギリギリのところで制止する

千織「車掌さん、あの」

車掌「・・・なんでしょう」

34: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/3(水) 21:01:18 ID:spmolqlGjY

千織「おっ、遅くなりましたけど、この間は送って頂いてありがとうございました!」

車掌「・・・」

恭太「え!?送ってもらったってなに!?」

千織「沖くんが、失礼をしてすみませんでした」 ペコリ

車掌「・・・」

恭太「え、ちょっと待って、どゆこと?知り合いだったの?」

千織「ううん、そういうわけじゃ・・・」

車掌「降りるならさっさと降りてください。いい迷惑です」

恭太「な、なんだよ、かんじわる・・・。ちおちゃん、行こう!」

恭太が手を引くと、2人は列車を飛び出した

外は暗黒だった

35: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/3(水) 21:15:02 ID:spmolqlGjY

黒猫「――いいの?逃がしちゃって」 クスクス

座席の上で、1匹の黒猫が毛づくろいする

車掌「どういう意味」

黒猫「人間なんて、貴重な”燃料”になるじゃないか。みすみす放すなんてもったいない」

黒猫「大体さあ、人間がこんなとこで降りたら、魚人あたりに喰われるのが関の山だよねー」

車掌「知ったことか。全く、客だと思って丁重に扱ってやったらこのザマだ」

不服そうに血が滲んだ口元をぬぐう

黒猫「あらー殴られちゃったの?珍しいね」 クスクス

車掌「ほっとけ」

プシューッと音を立てると、列車は再び走り出した

36: 名無しさん@読者の声:2017/5/4(木) 22:29:10 ID:lH5VhHYhaA
支援
37: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/4(木) 23:20:48 ID:spmolqlGjY
>>36
ヒエッ、初支援ありがとうございます…!
嬉しいです頑張って毎日更新するのでよろしくお願いします//
38: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/4(木) 23:25:53 ID:spmolqlGjY

恭太「――まいったなぁ」

河川敷に座り、スマホを操作する

恭太「ここ、全然電波とんでねーじゃん。しっかりしろよクソ●トバンク」

千織「私も繋がらないや」

恭太「ていうかさ、何で俺たちこんなとこに来ちゃったんだ?全然覚えてないんだけど」

千織「・・・」

どうやら恭太には、以前の千織と同様、ここに来る直前の記憶がないらしい

千織(今度は、私覚えてる・・・。あの男の子にチョコをあげたら、ここに来てしまった・・・)

恭太「とりあえず、どっかの家に電話借りようか」

と、その時

目の前の河川から、ばしゃんと大きな音がした

39: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/4(木) 23:31:03 ID:spmolqlGjY

???「あー、はらへったな・・・・」

何かが、川の中から這い上がってくる

千織「・・・!」

恭太「な、なんだよあれ・・・」

暗がりではっきりとはみえないが、人の形ではないことはわかる

いや、手足のようなシルエットはみえる

???「・・・」

それは、こちらに気づいたのか、じっと見つめてきた

40: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/4(木) 23:35:21 ID:spmolqlGjY

千織「お、沖くん、」

そでをつかむ。嫌な予感がする

凝視すると、それの姿が把握できた

全長2mほどの大きな魚に、手足が生えている


恭太「―逃げるぞ!!」 ダッ

千織「きゃっ」

危機を察知し、恭太は千織の手をつかみ逆方向へ走り出した

同時に、魚人も無言でダッシュを切り追いかけはじめる

41: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/4(木) 23:40:50 ID:spmolqlGjY

恭太「なっ、なんだよあの化け物っ・・・」

千織「沖くん、列車に戻ろう!」

恭太「もう出発してる!無理だ!」

暗い土手を、無我夢中で走る

あの化け物がどこまで追ってきているのか、確認する余裕もない

魚人「はい、追いついた」

「!?」

突如、背後から肩をつかまれ、千織は地面に尻もちをついた

42: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/4(木) 23:46:20 ID:spmolqlGjY

恭太「ちおちゃん!!」

魚人がニタニタと笑い、千織の首ねっこをつかむ

恭太「てっ、てめぇ!ちおちゃんをはなせ!!」

叫ぶが、ガタガタと足が震えている

魚人「まさか人間を見つけるなんてなぁ・・・。幸運だぜ」

千織「沖くん、逃げて!!」

次の瞬間

ドゴッ!!

恭太「う、」

千織「!!」

恭太は腹に拳を入れられ、バタリと地面に崩れおちた

43: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/5(金) 20:46:40 ID:ufTVIcJVgc

―――――


千織「――ん・・・」

目を覚ますと、そこは薄暗い部屋の中だった

千織「・・・!?」

身体の自由がきかない

手足が縄で拘束され、口にはテープが貼られている

千織「んっ、んっ」

必死にもがくが、一向に縄がほどける気配はない

千織(沖くんは・・・!?)

44: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/5(金) 20:49:32 ID:ufTVIcJVgc

まわりを見回すが、恭太の姿はない

ダンボールがそこら中に積まれている

すると

ギイイイィ・・・

千織「!」

部屋の扉が開いた

45: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/5(金) 20:53:08 ID:ufTVIcJVgc

入ってきたのは、魚人と、

千織(車掌さん・・・!?)

あの、車掌だった

魚人「あ、起きてるじゃねーか」

ニタニタと笑いながら近づき、千織の顎をつかむ

魚人「てめぇは女だからなぁ・・・。高値で売ってやるぜ」

千織「・・・!」

46: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/5(金) 20:56:33 ID:ufTVIcJVgc

魚人「オレの荷物は、これと、これと、この奴隷だ」

2つのダンボール箱と千織を指さす

魚人「ミヤコ駅まで運んでくれ。くれぐれも人間だからって食ってくれるなよ」 ケラケラ

車掌「かしこまりました」 ペコリ

車掌が会釈すると、魚人は部屋を出て行った

千織「んーっ、んーっ」

車掌もそれに続こうとするのを、必死で止める

47: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/5(金) 21:03:20 ID:ufTVIcJVgc

千織「んー!んんーっ!」

車掌「・・・」 ハァ

小さくため息をつき、千織の方へ振り返る

車掌「君を助けることはできない。君はこの貨物車両に積まれた『荷物』だ」

千織「んーっ!んーっ!!」

車掌「これからは、魚人の奴隷として生きていくことだ」

バタン

慈悲もなく、車掌は出て行った

48: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/5(金) 23:53:30 ID:spmolqlGjY

魚人「いやー、にしても、人間なんて珍しいモン見つけるなんて超ついてるわぁ。そう思わねえ?」

列車内をご機嫌で歩く

車掌「そうですね」

魚人「しかも2人だぜ2人!たまに人間が迷い込んでも誰かにとられちまうからなぁ」

車掌「運ぶのは1人だけでよろしいのですか?」

魚人「あぁ、男の方は今晩の夕飯だ。母ちゃんに蒸し餃子にしてもらうんだあ〜楽しみだぜ」

車掌「そうですか」

49: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/6(土) 00:00:11 ID:spmolqlGjY

ゴトン、ゴトン・・・

音を立て、列車が走りはじめる

千織が閉じ込められているのは、最も後続の貨物車両だった

千織(どうすれば・・・)

千織(どうすれば、いいんだろう・・・)

どうやら自分は、どこかで奴隷として売られてしまうらしい

千織(沖くんは、無事なのかな・・・)

そのとき

「にゃ〜〜ご」

千織「!」

1匹の黒猫が、部屋の隅から姿を現した

50: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/6(土) 00:03:26 ID:spmolqlGjY

千織(ね、ねこ・・・?なんでこんな所に・・・)

黒猫は千織に歩み寄ると、ペロリと千織の頬をなめた

千織(かわいい・・・)

千織「んー、んー」

黒猫「にゃー」

千織「んー」

黒猫「助かる方法、教えてあげようか」

千織「!?」 ビクッ

千織(しゃしゃしゃ喋った・・・!?!?)

思わず身をのけぞり、猫から距離をとる

51: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/6(土) 00:08:38 ID:spmolqlGjY

黒猫「なに?知りたくないの?」

千織「・・・!」

ブンブンと首を横に振った

急な出来事に、心臓がバクバクと音を立てている

猫がニヤリと笑った

黒猫「いい?君を助けられるのは、この場においてこの列車の車掌、あいつ一人だけだ」

無意識にうなづく

黒猫「それ以外はどうやったってだめだ。仮にそこの窓から逃げられたとしても、君はまた別の奴に捕まるだろう」

52: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/6(土) 00:13:20 ID:spmolqlGjY

黒猫「だから、君はあいつに必死に頼むんだ。『私を買ってください』って」

千織「・・・!?」

黒猫「生きたかったら、覚悟を見せな」

ベリリ、と千織の口のテープを剥がす

黒猫「まずは、大声だして騒げ。騒ぎまくって、あいつを呼べ。そしたら・・・わかってるね」

千織「ま、待って!」

千織「そ、そんなこと言ったって、『お前は客の荷物だからだめだ』って、さっき言われちゃったし・・・!」

黒猫「グズグズしてるとミヤコ駅に着くよ」

そう言うと、暗闇に消えていった

53: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/6(土) 21:30:15 ID:spmolqlGjY

――人ならざる者たちが座る車内を、手を後ろに組み、歩く


車掌「―お客さま」

タバコをふかしているカエル男の前で止まる

車掌「この列車は、全席禁煙でございます」

蛙男「あぁ?」

車掌「おタバコはおやめください」

蛙男「いいじゃねえか、タバコくらい。こちとらちゃんと乗車券とって乗ってんだ」

車掌「乗車券を持っているからといって、列車内の決まりを破っていい理由にはなりません」

54: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/6(土) 21:33:02 ID:spmolqlGjY

蛙男「てめぇ、車掌の分際で客に文句言うのか」

ギロリと車掌をにらむ

車掌「この列車の規則を守れないのであれば、即刻、降りて頂きます」

蛙男「あんだとぉ!?」

立ち上がり、車掌の胸ぐらをつかんだ

他の乗客たちもざわつき始める

蛙男「俺は今、イライラしてんだ。ストレスたまってんだよ、わかるか?タバコくらい吸わせろや」

55: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/6(土) 21:36:14 ID:spmolqlGjY

車掌「そのような個人の理由は配慮致しかねます」

蛙男「あぁそうかい!じゃあ消せばいいんだな、わかったよ」

そういうと、蛙男は床にタバコを落とし、グリグリと足でふみつけた

蛙男「これで満足だろぉ?んん?」 ニヤニヤ

車掌「・・・」

車掌「次、規則を破ったときは容赦致しませんので、ご理解ください」

そう言い、タバコの吸い殻を拾った、そのとき――


「わーーーーっ!!!!!」


「!?」

56: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/6(土) 21:40:31 ID:spmolqlGjY

突如、大きな声が列車内に響いた

乗客がみなぎょっとする

「わー!!わーー!!わーーー!!!」

ドタドタ、バタン、ガッシャーン!!!

それと同時に、何か物が倒れたり壊れたりするような音がする

どうやら後続の車両からのようだ

車掌「・・・なんなんだ」

小さく舌打ちをして、歩き出した

57: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/6(土) 21:47:11 ID:spmolqlGjY

千織「わーわーわー!!わーーっ!!」

必死に大声を出し、騒ぎ立てる

手足は拘束されたままなので、まるでミノムシのようにダンボールに体当たりする

千織「・・・」 ゼェゼェ

千織「わ・・!」

車掌「静かにしろ」

仏頂面をした車掌が部屋に入ってきた

車掌「こんなに散らかして・・・人の仕事を増やさないでもらえるか」

58: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/6(土) 21:50:10 ID:spmolqlGjY

千織「車掌さん!!」

息をのみ、口を開く

千織「私を、かっ・・・」

千織「買ってください!!!!」

車掌「は?」

千織「私、何でもします!何でもっ・・・何でも、お手伝いしますから!私を買ってください!!」

車掌「・・・」

千織「もう、このわけのわからない世界で頼れるの、車掌さんしかいないんです!お願いします・・・!」

千織「ご迷惑をかけてしまうのはわかってます!でも、お願いします、買ってください・・・!」

59: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/6(土) 21:54:44 ID:spmolqlGjY

車掌「・・・なにか勘違いしているようだが」

千織「え・・・?」

車掌「君を買うことと、君を助けることは等しくない。私は君を助けることはできない」

千織「・・・!」

車掌「誰にそそのかされたかしらないが、私に過剰な期待をしないことだ」

千織「っ・・・それでも!このまま、魚のお化けに連れて行かれるのは困るんです!」

千織「お願いします、お願いします・・・!」

拘束された状態で、必死に頭を下げる

60: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/6(土) 21:59:26 ID:spmolqlGjY

千織「髪の毛、根こそぎあげてもいいです!私にできることなら、何でもします!!」

車掌「・・・」

目をつぶり、ため息をつく

車掌「買うということは、君の身体を全て、私が所有することを意味する。わかっているか?」

千織「・・・!」

ゴクリと唾をのむ

千織「わかって、います・・・」

車掌「よろしい」

すると、車掌は背を向け、貨物車両を出て行った

61: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/7(日) 21:21:04 ID:ufTVIcJVgc

魚人「――ん・・・?」

足を組んで座る魚人の前に、車掌が立つ

車掌「・・・」

魚人「なんだ?何か用か?」

車掌「はい。お客さまのお荷物のことなのですが」

魚人「おう」

車掌「あの奴隷、大体いくらほどの値打ちをお考えでしょう」

魚人「あ?なんでそんなこと聞く?」

車掌「ぜひ、私に買わせていただきたい」

62: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/7(日) 21:23:45 ID:ufTVIcJVgc

魚人「・・・ぶっ」

魚人「ぶわははははは!!!」 ゲラゲラ

予想外の言葉に、たまらず笑い出す

魚人「こいつぁ意外だ!人間なんぞ興味ない顔してやがるくせに!!」

車掌「お客さまにこのようなことをお願いするのは重々失礼だと存じ上げておりますが、器量の大きいお客さまでしたら、考えて頂けるかと・・・」

魚人「面白いが、やめときな。車掌ふぜいが払える金額じゃねえ」

63: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/7(日) 21:27:10 ID:ufTVIcJVgc

車掌「おいくらでしょうか?」

魚人「そうだなぁ・・・上流貴族に売れたとしたら、大体1000万くらいか」

車掌「でしたら」

バンッ、と手に持っていたプロテクトケースを開く

大量の札束が視界に広がった

車掌「2000万でお買い致しましょう」 ニッコリ

魚人「・・・!!」

64: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/8(月) 23:51:38 ID:spmolqlGjY

千織(・・・私、どうなっちゃうんだろう)

施錠されたドアを眺め、絶望とわずかな期待を抱く

すると

『――次は、ミヤコ駅。ミヤコ駅でございます』

千織「!」

アナウンスと同時に、列車が速度を緩め始めた

千織(どうすれば・・・)

プシューッ

列車が止まると、乗客が乗り降りする音と同時に、千織のいる貨物車両に誰かが入ってきた

千織「わっ」 バサッ

千織に大きな風呂敷がかぶせられる

65: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/8(月) 23:57:48 ID:spmolqlGjY

兎男「ん?今何か声がしたような・・・」

車掌「そうですか?気のせいでしょう」

兎男「いやはや、私も年ですかな。えーと、これとこれを運べばいいんですな?」

車掌「はい。あと、隅の大きなダンボールも」

兎男「わかりました」

数人の兎男たちが、荷物を運び出している

千織(車掌さんが、見つからないようにしてくれてる・・・?)

やがて、荷物の出し入れが終わったのか、人が出ていく音がした

車掌「――もういいだろう」

フワッと風呂敷がとられる

66: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/9(火) 00:01:26 ID:spmolqlGjY

千織「車掌さん・・・」

車掌「君の望み通り、君を買った。今後、全ての行動は私の指示に従ってもらう」

千織「はっ、はい・・・あ、ありがとうございます!」

手足を拘束していた縄をほどく

車掌「名前は?」

千織「はい?」

車掌「君の名前を聞いている」

千織「はっ、はい。戸野千織、です」

車掌「千織。まず君はシャワーをあびて、この服に着替えなさい」

ぽん、と真っ黒な服を渡される。どうやら駅員服のようだ

67: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/9(火) 00:05:43 ID:spmolqlGjY

千織「え、えと、シャワーですか?」

車掌「この貨物車両を出てすぐ右手にある」

千織「あの、ありがたいんですけど、その前にいろいろ聞きたいことが・・・」

車掌「君の人間の臭いを消すためでもある。再び変な輩に嗅ぎつけられる前に、対処しなければならない」

千織「人間の臭い・・・。そんなのがあるんですか」

車掌「ある。さきほどの風呂敷は、視覚的だけでなく嗅覚的にも隠す効果があった」

千織「車掌さんは、人間じゃないんですか・・・?」

車掌「そうだ」

さらりと答える

しかし、さきほどの魚人と比べて、風貌は人間にしか見えない

68: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/9(火) 00:10:01 ID:spmolqlGjY

千織「人間じゃないって、じゃあ一体・・・」

車掌「静かに」

不意に、口を押えられ、車両の隅へ追いやられた

車掌が覆い隠すように千織の前に立つ

ガタン

ドアが開き、貨物車両に魚人が入ってきた

魚人「・・・お、いたいたぁ」

まさしく千織と恭太を誘拐した魚人だった

車掌「どうされましたか?なにかお忘れ物でも」

魚人「いや別に、なにもないんだが・・・」

ゆっくりと2人に歩み寄ってくる


69: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/9(火) 20:13:19 ID:spmolqlGjY

千織「・・・?」

嫌な予感がした

車掌と魚人が、わずか1mの距離に対峙する

察したのか、車掌は小さく息を吐いた

車掌「―・・・申し訳ありませんが」

車掌「この人間を返すことはできません」

魚人「じゃあ死んでもらうしかねぇなあっ!!」

魚人は車掌めがけて腕を振り上げた

70: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/9(火) 20:15:20 ID:spmolqlGjY

千織「っ・・・」

思わず目をつむり、うずくまった


・・・・・・・

・・・・・・・・・

何も音がしない

千織(いったい、何が起きたの・・・?)

薄く目をあけると―――

千織「え・・・」

魚人は腕を振り上げたまま、硬直していた

71: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/9(火) 20:41:32 ID:spmolqlGjY

魚人「て、てめぇ!なんだこれは…!」

車両の壁や床から黒い手が出現し、魚人の手足に巻き付いている

車掌「あなたはもう、乗客ではありませんから。容赦はしません」

魚人「…!」

魚人「ま…待ってくれ!俺はそんなつもりじゃなかった、はは、」

車掌「残念ながら、あなたには遅かれ早かれ死んでいただく予定でした。私が人間を所有していると、あちこちにバラされては困りますので」

魚人「そんなことはしない、そんなことはしないから殺さないでくれ!」

車掌「千織、目を閉じて」

千織「っ…」

次の瞬間、ザシュッッ、と鈍い音がした

72: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/9(火) 20:44:18 ID:spmolqlGjY

千織「…」

思わず目をあけてしまう

魚人は黒い手に胸を3か所、突き抜かれていた

巨体が倒れる姿を見て、口をおさえる

千織「あ、あなたは、…」

黒い手が、すすす、と消えていく

車掌「…」

車掌「…この列車は、全て私の意志で生きている。そういうことです」

73: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/10(水) 23:13:52 ID:ufTVIcJVgc

――しばし沈黙が流れたあと


千織はハッとして叫んだ

千織「そうだ、沖くん!沖くんを助けなきゃ!!」

車掌「・・・あぁ、あの連れの」

千織「この魚人に連れ去られた後、離れ離れになっちゃったんです!どうしよう、早く探しに行かないと――」

車掌「もう手遅れだろう」

千織「どういうことですか!?」

車掌「この世界で人間は希少であり、食料としても奴隷としても需要が高い。常識的に考えて、あの男はもう煮るなり焼くなりされている」

74: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/10(水) 23:15:52 ID:ufTVIcJVgc

千織「っ・・・なにが常識なんですか!!」

千織「大事な友達なんです!お願いです、助けてください!お願いします!!」

車掌「これ以上私の仕事を増やさないでほしい」

千織「お願いします!車掌さんしか頼れないんです…!お願いします、お願いします」

何度も頭を下げる

車掌「…」

車掌「…では、その男を助けて、私に何のメリットがあるのか教えてほしい」

千織「え…」

車掌「私は人間を助けるボランティア活動をしているわけではない」

75: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/10(水) 23:21:23 ID:ufTVIcJVgc

千織「っ… に、人間は希少なんですよね?その人間をもう1人、車掌さんが手に入れられると思えば」

車掌「私は人間を食べないし奴隷にする趣味もない。君を買ったのも仕方なく、だ」

千織「じゃ、じゃあ、車掌さんは何が欲しいんですか?」

車掌「…」

車掌「この列車を動かすのに必要な精力。私はそれだけあればいい」

千織「よ、要するに、この列車の人手が足りてないってことですよね!?じゃあ、私が一生懸命働きますから!車掌さんの負担を減らせるように、何でもしますから…!」

76: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/10(水) 23:23:46 ID:ufTVIcJVgc

車掌「…何も理解してないくせに、よく言う」

千織「え?」

車掌「やれやれ」

ため息をつくと、車掌は息絶えた魚人の懐に手を入れた

千織「・・・?」

車掌「―あった」

取りだしたのは、なにやら携帯電話のようなもの

77: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/10(水) 23:25:40 ID:ufTVIcJVgc

カチャカチャ、カチ

慣れた手つきで操作し、どこかに通話をかけはじめた

プルルルル、プルルルル―――ガチャッ

魚人母『はいもしもし』

車掌「――あぁもしもし、俺だけど」

千織「!」

なんと、車掌の声が魚人そっくりになっていた

78: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/10(水) 23:27:57 ID:ufTVIcJVgc

魚人母『俺?』

車掌「やだなぁ俺の声忘れたの、母さん」

魚人母『あぁ、あんたかい?あんたミヤコ駅ついたんかね?』

車掌「着いたよ、ついさっきね。奴隷も無事だ」

魚人母『そいつは良かった。高値で売ってくるんだよ〜』

車掌「わかってる。ところでさ、昨日捕まえたもう1匹の人間って、どうした?」

魚人母『んん?あんたが飯にしろって言ったから、ちょうど今、塩を塗ってるところさね』

千織「・・・!!」

車掌「そう。せっかく準備してるところ申し訳ないんだけどさ・・・」

79: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/10(水) 23:30:45 ID:ufTVIcJVgc

車掌「ちょうど今、男の人間を買いたいっていう貴族に会ったんだ。聞いてくれよ、6000万で買ってくれるっていうんだ」

魚人母『ろっ・・・6000万!?!?』

車掌「うん。だからさぁ、ちょっと食べるのは中止で。俺が取りにいくまで生かしといてくれないかな」

魚人母『わ、わかったよ。それなら仕方ないね』

車掌「じゃあ、よろしく頼む」ピッ

千織「・・・」

車掌「・・・運が良かったな」

車掌の声は、野太い怪物の声からいつもの声に戻っていた

80: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/10(水) 23:34:11 ID:ufTVIcJVgc

千織「・・・っ」

千織は目に涙を浮かべ、頭を下げた

千織「ありがとうございますっ・・・。車掌さんがいなかったら、ほんとに、私たち・・・」

車掌「・・・・」ハァ

車掌「とりあえず、昨日君たちが連れ去られた駅――ササノコ駅に戻るのは、明日の夜になる」

千織「あ・・・明日の夜ですか?もっと早くできませんか?」

車掌「君たちのためにこの列車を動かしているわけではないからな。明日の朝ミヤコ駅の物資をのせ、他の駅を経由しつつササノコ駅へ戻る」

81: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/10(水) 23:37:12 ID:ufTVIcJVgc

千織「でも、でも早く行かないと沖くんが」

車掌「君は」

冷めた瞳で睨まれた

車掌「君は、私に買われたことを忘れたのか?言い方を変えれば、君は私の奴隷であり、私は君の主人だ」

千織「…!」

車掌「願いをきいてやったからといって調子に乗るな。今後は私の指示に従え」

千織「は、はい・・・」

82: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/11(木) 23:08:36 ID:spmolqlGjY

「にゃ〜」

千織「あ・・・!」

みると、さきほどの黒猫が歩み寄って来ていた

車掌「・・・」

千織「あ、あの、さっきこの猫ちゃんが私に・・・」

車掌「知っている。どうせこいつが余計なことを言ったんだろう」

黒猫「余計な事とは心外だなぁ。貴重な人間が下衆な輩に奪われるのはもったいないと思わない?」

車掌「別に」

黒猫「またそんなこと言って。精力があるに越したことはないじゃないか」

千織「・・・」 ポカーン

83: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/11(木) 23:12:54 ID:spmolqlGjY

黒猫「あ、自己紹介遅れたけど。僕の名前はブリアン。君の名前は?」

千織「と、戸野千織です」

ブリアン「千織ちゃんね。僕はこの列車の車掌補佐をやってるんだ〜」

千織「補佐…。ね、猫なのに?」

ブリアン「魚が手足生やして歩いてるこの世界で、驚くことじゃないでしょ〜」

車掌「ブリアン、しばらく彼女の面倒をみてやってくれ」

ブリアン「え〜?」

車掌「私はまだ仕事が残っている。何かあったら私のところへ連れてこい」

ブリアン「わかったよ〜」

車掌は貨物車両から出ていき、千織はブリアンと2人きりになった

84: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/11(木) 23:18:04 ID:spmolqlGjY

千織「…あの、ブリアンさん」

ブリアン「なあに」

千織「この世界はなんなんですか?人間じゃない人たちが、いっぱいいて・・・」

ブリアン「・・・・」

ブリアン「・・・そうだねぇ」

少し考えてから、話し始める

ブリアン「人間の言葉でいうと、ここは異世界であり、死後の世界でもある」

千織「死後って・・・」

ブリアン「この世界は欲望に満ちている。そして、死後というのは“人間ならざるもの”に限られる」

千織「???」

ブリアン「例えば、君を襲った魚人がいたでしょ?あれは、人間界で生きていた魚が死後、この世界で生まれ変わったものだよ」

85: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/11(木) 23:20:45 ID:spmolqlGjY

ブリアン「人間に恨みをもっていたのか、単純に人間になりたかったのかは知らないけど、“欲望”をもっていたその魚は、この世界で手足を得た」

千織「そ、そんな・・・。じゃあ、この世界にいるものたちは全て、すでに死んでいるってことですか?車掌さんやブリアンさんも?」

ブリアン「僕はそうだよ。人間になりたいって欲はなかったから、魚人みたいな醜い姿にならずに済んだけど」

千織「じゃあ一体、なんの欲望が体現されたんですか・・・?」

ブリアン「さぁ、それは内緒だなぁ」 クスクス

千織「あ、もしかして、喋ること?」

ブリアン「違うね。この世界にきた者たちは全て、無条件で言葉を話すことができる」

86: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/11(木) 23:26:08 ID:spmolqlGjY

・この世界は、「人間以外の生物の死後世界」

・生前に強い欲望をもっていた場合にのみ、この世界に存在することが許され、且つその欲望が体現される


87: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/11(木) 23:28:27 ID:spmolqlGjY

千織「車掌さんは、見た目が完璧な人間ですよね…。生前はなんだったんでしょう」

ブリアン「あいつは死者じゃないよ」

千織「え!?」

ブリアン「ただこの世界で、この列車を動かすためだけに生まれてきた存在。それだけさ」

千織「…」

千織「…よく、わからないです」

ブリアン「気になるなら、直接あいつから聞いたら?詳しいことは僕も知らないし」

88: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/11(木) 23:31:59 ID:spmolqlGjY

ブリアンは千織を小部屋へ案内した

ブリアン「ここ、シャワー室ね」

ブリアン「さっき車掌から言われたと思うけど、まずはお風呂入ってもらわないと、人間臭くてたまんないから」

千織「は、はい」

ブリアン「そしたら、その駅員服に着替えて。男物だから、サイズ合わないと思うけど、勘弁ね」

千織「はい」

89: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/12(金) 20:49:54 ID:spmolqlGjY

―――――――


恭太「う、うぅ・・・」

異臭と頭痛で目が覚めた

徐々に意識を覚醒させる

恭太(…俺、なにしてたんだっけ)

恭太(なんだこの臭い…くっさ…) ケホッケホッ

恭太(確か、よくわかんない列車でちおちゃんを探して―…)

恭太「――っ!」 ハッ

フッと記憶が蘇り、身体を起こす

90: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/12(金) 20:51:39 ID:spmolqlGjY

しかし

グイッ

恭太「え、」

身体が柱に縛りつけられ、全く身動きが取れない

身ぐるみを剥がされている上に、身体にはベタベタしたものが塗りたくられている

恭太「うそ、だろ…」

恐ろしい魚の化け物に捕らえられた記憶

恭太「あれ、夢じゃねーのかよ…」

恭太「もしかして俺、食われるのか…?あの化け物に…」

91: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/12(金) 20:54:25 ID:spmolqlGjY

「――安心しな、食いはしないさ」

恭太「!」

視界に化け物が現れた

魚人母「あんたは高値で売られるのさ。良かったねぇ、命が助かって」 ニヤニヤ

魚人母「まぁ、買い先で食われない可能性はないけど」

恭太「た、頼む、命だけは…」

魚人母「あらあら。私の話全然聞いてないわね」

魚人母「とりあえず、体に塗っちまった塩を落とさないとねぇ」

バシャーン!

恭太「ぅえっつめて!」

バケツから水をかけられる

魚人母「うふふ、楽しみだわぁ」

92: 名無しさん@読者の声:2017/5/12(金) 21:40:53 ID:JJovD3w/IY
支援
93: 名無しさん@読者の声:2017/5/13(土) 16:45:37 ID:QXC8O.Idx2
支援します
94: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/13(土) 17:50:35 ID:KHBlWpl3yc
>>92 >>93
フオオオ支援ありがとうございます、今日は帰るのが遅いので遅い時間の更新になってしまいますが、お二方の支援に感謝して多めに更新させて頂きますよろしくお願いします_(:3」 ∠ )_
95: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/14(日) 00:01:44 ID:spmolqlGjY

―シャワーを浴びながら、悶々と考える

千織(なんとか命は助かったものの…私、これからどうなるんだろう)

千織(買われちゃって、良かったのかな…)

千織(あれしか助かる方法はなかった。だから正しかったんだ、うん)

千織(車掌さんはちょっと怖いけど、悪い人じゃなさそう…。信用していいよね…?)

千織(…)

千織(とりあえず、今は沖くんを助けることを考えないと)

千織(…車掌さんは、簡単に魚人をやっつけちゃったし。車掌さんが手を貸してくれれば、沖くんも助けられるはず…)

千織(…そうだ。この世界に来るきっかけになった、あの男の子についても聞いてみよう。何かわかるかもしれない)

96: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/14(日) 00:03:40 ID:spmolqlGjY

シャワーを浴び終え、駅員服に着替える

ブリアン「――うん、まぁまぁマシなにおいになったね」 クンクン

ブリアン「僕や車掌のそばにいれば、人間だと思われなくなるよ」

千織「はは…」

なんだか複雑な気持ちだ

千織「あの、私はこれからどうすれば?」

ブリアン「んー。とりあえず今は、列車の休止時間。ぶっちゃけすることないよ」

97: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/14(日) 00:05:39 ID:spmolqlGjY

千織「明日の朝に出発するって言ってましたけど、この世界も、人間界と同じ時間で進むんですか?」

ブリアン「そうだよ。1日は24時間で、朝も昼も夜もある」

千織「そうですか…。私がこっちに来てから、何日たったんでしょう」

ブリアン「昨日の夜にこの列車に乗って、外に飛び出して、今日の昼に列車に積まれて…で、今は夜だからまる1日じゃない?」

千織「1日…。あぁ、お父さんとお母さん、心配してるだろうなぁ」

98: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/14(日) 00:08:25 ID:spmolqlGjY

千織「―…そうだ。私がこの世界にきたきっかけなんですけど」

千織「学校の帰り道、不思議な男にチョコをあげたら、この世界に連れてこられちゃったんです」

ブリアン「男の子?」

千織「3月なのに半袖半ズボンで…生気のない顔してて。この世界に住んでる子じゃないかって思うんです」

ブリアン「知らないね。多分車掌も知らないと思うよ」

千織「そ、そうですか…」 ショボーン

千織「何でその子は、私をこの世界に連れてきたんでしょう」

ブリアン「この世界じゃ人間の希少価値は高いから、送り込んでやろうと思ったんじゃないの。誰かに頼まれたのか、ただのイタズラなのか知らないけど」

千織「でも、私その子に連れてこられるの2回目なんです。おかしいですよね」

99: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/14(日) 00:11:49 ID:spmolqlGjY

車掌「――で?私が何か知っていないかって?」

箒をもって車内の掃除をしていた車掌に尋ねる

千織「はい」

車掌「…」

車掌「具体的にその少年が誰なのかは知らないが、推測はできる」

千織「!」

車掌「おそらく、もう生きてはいない者だろう。しかし、人間の世界に存在しているところを見る限り、この世界の者でもない」

車掌「そして君に、何か理由があって執着している」

100: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/14(日) 00:17:28 ID:spmolqlGjY

千織「そ、それって…」

千織「わ、私、幽霊に憑かれてるってことですか?」

車掌「私は幽霊という概念に理解はないが、君たちの世界に存在する死者をそう呼ぶならそうなのだろう」

千織「ひー!いやだー!私霊感とか全然ないと思ってたのに…!」

千織「幽霊を祓わないと、私何度でもここに来ちゃうんだ…」

ブリアン「問題ないでしょ」

千織「え?」

ブリアン「千織は車掌に買われたんだから。元の世界に戻った後のこととか考える必要ある?」

千織「え、えぇえ!?」

101: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/14(日) 00:19:35 ID:spmolqlGjY

千織「た、確かにその、私買われて、ここで働くつもりはあるんですけど…実際に車掌さんにそう言ってしまいましたし。でも、でも一生この世界にいるのはちょっと、困るというか、」

焦ったように車掌をみる

車掌「…」 ハァ

車掌「君と連れの男を人間界へ送り返す分だけの精力を働いて返してくれれば、送ってやる」

千織「えっ…」

ブリアン「はああああ!?!?」

ブリアンが真っ黒な毛を逆立てた

102: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/14(日) 00:24:48 ID:spmolqlGjY

ブリアン「正気なの!?何のために2000万も払ったと思ってんの!?馬鹿じゃないの!?」

車掌「ずっと傍においておく理由があるか?」

ブリアン「あるよ!人間は精力の塊だ、死ぬまで働かせるか、すぐにでも燃料の一部にすれば、この列車の寿命を延ばすことができる!」

車掌「私一人いれば問題ない」

ブリアン「問題ないわけないだろ!いつか精力には限界がくる、わかってることじゃないか!!」

ブリアン「あの2000万だって、車掌の精力から錬成したものだろ!ちょっと働いて返してもらうだけじゃ大赤字だよ!!」

103: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/14(日) 00:27:46 ID:spmolqlGjY

千織「え…!?」

千織「す、すみません、話がちょっとわからないんですが」

ブリアン「っ…」

ブリアン「千織、おいで。僕が説明してあげる」

車掌「だめだ」

車掌が千織の手をつかむ

車掌「お前の説明じゃ偏見が大きい。私から説明する」

ブリアン「…!」

ブリアン「あぁそうかい!勝手にしなよ!!」

ブリアンは不機嫌そうに尻尾を床にたたきつけると、どこかへ行ってしまった

104: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/14(日) 00:52:18 ID:spmolqlGjY
多めと言いつつ9レスしか書けなかったので切腹_(:3」 ∠ )_
105: 名無しさん@読者の声:2017/5/14(日) 07:45:59 ID:spmolqlGjY
>>98
✕不思議な男
〇不思議な男の子
106: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/15(月) 01:00:22 ID:spmolqlGjY

2人きりになると、車掌が静かに話し始めた

車掌「―・・・以前にも言ったが、この列車は電気や蒸気で動く類のものではない」

車掌「精力と呼ばれる、心身の活動力を源としている」

千織「心身の活動力・・・」

車掌「生命力と言ってもいい。どの生物にも問わず存在しており、その形は限定されない」

車掌「前、君がこの列車に迷い込んだとき、私は君から髪という精力を頂戴した。その精力を使って、君を君の住む場所へ送り届けたというわけだ」

107: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/15(月) 01:01:44 ID:spmolqlGjY

千織「そうだったんですね…」

千織「…車掌さんは、ご自身の精力を使って、この列車を動かしているんですか?」

車掌「そうだ。この世界に住む者たちは、もともと死者だから精力を持ち合わせていないが、私は精力をもっている」

千織「車掌さんは生きているってことですか?」

車掌「この列車を動かすためだけに精力が与えられているだけだ。それが生きていると言うのかは知らない」

車掌「実際に目で見たほうがいいだろう。ついてこい」

108: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/15(月) 01:03:48 ID:spmolqlGjY

案内されたのは、車掌室だった

車掌「これが私の食事だ」

車掌が目をやった先をみると、茶色い箱があった

中には客から回収したと思われる乗車券が積まれている

千織「食事…?」

車掌「見ていろ」

車掌が手をかざすと、ゆらゆらと乗車券が揺れた

その形態は徐々に変化し、1枚1枚が青白い光になり、合わさっていく

109: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/15(月) 01:07:04 ID:spmolqlGjY

千織「…!?」

車掌はその光の塊を手のひらにのせると、自分の胸にあてがった

そのまま、ずずず、と自分の胸の中へ埋め込んでいく

千織「…」

呆気にとられている間に、光の塊は完全に車掌の体内へ入っていった

車掌「……これで終わり」

千織「い、いったい何が」

車掌「乗客は精力をもっていないので、金をだして精力を購入している。それが乗車券という形で私の元へきている」

車掌「私はその精力を吸収し、消費することで、この列車を動かしている」

千織「…!」

110: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/16(火) 01:18:08 ID:spmolqlGjY

千織「…わ、私のために払ったお金、車掌さんの精力を使ったんですよね?どのくらい使ったんですか…?」

車掌「別に気にしなくていい」

千織「でも!」

車掌「問題になる量ではないと言っている。ブリアンが大げさなだけだ」

千織「…」

千織「…本当に、ごめんなさい」

千織「私の精力、できる限り差し上げたいです。どうすればいいですか?」

111: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/16(火) 01:20:01 ID:spmolqlGjY

車掌「…」ハァ

車掌「君は躊躇もせず働くだの精力を渡すだの言うが、深刻さをわかっていないな」

千織「え…」

車掌「精力は生命力に等しいと、さきほど言ったことを忘れたのか?休めば回復する体力とは違う。自分の寿命を減らす覚悟があるなら考えてやる」

千織「そ、それは…」

そのとき

ぐううぅぅ〜〜

不意に、千織のお腹が鳴った

112: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/16(火) 01:21:21 ID:spmolqlGjY

千織「…」

車掌「…」

千織「ご、ごめんなさい…」 カアアァ

千織(もおぉ〜!何でこんな時に鳴るのよ!ばか!ばか!)

恥ずかしさで顔をおさえる

車掌「…まったく」

車掌「君は緊張感がないな」

千織「す、すみません…」

113: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/16(火) 01:22:30 ID:spmolqlGjY

車掌「…いや。普通に考えれば、君も腹がへって当然か。私の方こそ、自分だけ食事を済ませてしまってすまなかったな」

千織「い、いえ…」

謝られたことに少し驚く

車掌「積み荷に、乗客用の非常食があったはずだから、もってきてやる」

千織「あ、ありがとうございます」

114: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/16(火) 01:25:14 ID:spmolqlGjY

車掌がもってきたのは、「草」だった

千織「…草?」

車掌「ヤエヌクラ草という、この世界で最も簡単に手に入る食材だ」

車掌「この世界には人間がいないからな。君が慣れ親しんだ食料はない」

千織「た、食べても大丈夫でしょうか」

千織「食べたら元の世界へ戻れなくなるとか、ないですか?」

車掌「嫌なら食べなくてもいいが」

千織「た、食べます、食べます」

115: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/16(火) 01:27:11 ID:spmolqlGjY

シャク、と草を口の中へ入れる

千織「…」 シャク

千織「…」 シャクシャク

車掌「別にまずくはないだろう」

千織「無味、ですね…。噛み続けたガムの味です」

車掌「そのうちマシなものを調達するから、我慢してくれ」

千織「と、とんでもないです。餓死するよりずっとましです」

116: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/17(水) 23:50:20 ID:spmolqlGjY

食事を終えると、寝台車両へ案内された

1〜6両目が一般車両、7両目が寝台車両、8両目が貨物車両となっているようだ

車掌「ここの寝台で寝てくれ。最近ここは開放してないし、客がいきなり乗り込んでくることもない」

千織「はい」

千織「車掌さんやブリアンさんはどこで寝てるんですか?」

車掌「私は車掌室で寝ている。ブリアンは適当なところで寝ている」

千織「そ、そうなんですね」

117: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/17(水) 23:56:06 ID:spmolqlGjY

千織「…」 オドオド

車掌「?」

千織「あ、あの。ここが安全だとはわかってるんですけど…私、怖くて。魚人とか、未だに信じられないし…」

千織「ここは車掌室と距離があるので、何かあった時に不安で」 アセアセ

車掌「…」

千織「…」

車掌「…つまり?何が言いたい?」

千織「そ、その… 車掌さんの近くで寝させてもらったら安心だなって…」

118: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/17(水) 23:57:58 ID:spmolqlGjY

車掌は少し考える素振りを見せたが、小さく首を振った

車掌「君は甘えすぎだ。自分の身は自分で守ることも覚えろ」

千織「は、はい…」 ガーン

車掌「明朝6時に列車を動かす。5時には起きるように」

そういうと、車掌は寝台車両から出ていった

千織「…」

千織「…悪い人じゃ、ないんだけど」

気軽に話せるようになるには、まだ時間がかかりそうだ

119: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/18(木) 00:00:09 ID:spmolqlGjY

補足:列車編成

・最前部:運転席
・1〜4両目:一般車両
・中間部:車掌室
・5〜6両目:一般車両
・7両目:寝台車両
・8両目:貨物車両
・最後部:運転席

120: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/18(木) 20:56:06 ID:spmolqlGjY

―――魚人宅

恭太「へっくしゅん!」

柱に縛り付けられたまま、くしゃみをする

恭太(俺…死ぬのかな…)

寒さと空腹で、心身ともに限界だった

恭太(ちおちゃん…ちおちゃんは、食べられちゃったのかな)

恭太(俺、無力だ…好きな女の子ひとり、守れないなんて)

恭太(何でこんなことに…俺たちが何をしたっていうんだ…)

夢であってほしい

そう願いながら、恭太は眠りについた

121: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/18(木) 20:57:25 ID:spmolqlGjY

魚人母「――な、な、何だってんだい、あんたたち!」

銃をつきつけられた魚人母が、後ずさりする

???「…」

???「隊長、家の中をチェックしましたが、人間とこの魚人以外いないようです」

???「そうか。仕事が少なくて助かるな」

???「人間はかなり衰弱しているようです。急いだほうがよろしいかと」

???「あぁ」

魚人母「…!? あんたら、あの人間を連れていくつもりなのかい!」

魚人母「そうはいかないよ、あれはウチの獲物だ!!」

122: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/18(木) 21:01:04 ID:spmolqlGjY

???「静かにしろ」

バンッ、バンッ

魚人母「ぎえぇっ」 バタッ

容赦なく発砲され、魚人母は倒れこんだ

魚人母「よ、よくも…よくもおお…!」

???「歪世界に迷い込んだ人間を捕らえ、奴隷にしたり食したりすることは異界法違反だ。たとえそれが未遂でもな」

魚人母「なん、だと」

???「貴様は刑罰に処する」

バンッ

123: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/18(木) 21:03:59 ID:spmolqlGjY

男たちが恭太の前に立つ

???「――隊長。こちらがその人間です」

???「ふむ。意識を失っているな。身元を確認できるものは?」

???「人間のものとみられる学生?手帳を見つけました。沖恭太、東京都荒川区○○在住…」

???「よし、送り届けるぞ」

???「記憶の処理はどうなさいますか?」

???「消してやろう。恐怖でいっぱいだっただろうからな」

恭太(・・・・・・ん・・・?)

人の存在に気づき、意識を戻し始めた

124: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/18(木) 21:05:47 ID:spmolqlGjY

恭太(だれか、いる…?魚人か…?)

???「おや、目を覚ましたようですよ」

???「沖恭太くん。もう大丈夫だ」

恭太「大丈夫…?」

???「君の身柄は、我々異界警察が保護した。安心したまえ」

恭太「警察…!?」

はっと目を開ける

125: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/18(木) 21:13:32 ID:spmolqlGjY

???「おっと。もう少し寝ていたまえ。ちゃんと送り届けるから、大丈夫だよ」

男が恭太の目を手で覆った

恭太「っ…ちおちゃんを、ちおちゃんを助けてくれ!頼む!」

???「ちおちゃん…?」

???「まだ歪世界に人間がいるのか?」

???「調べてみます」

???「―――…いえ。この世界に、他に人間の気配はありません」

126: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/18(木) 21:14:39 ID:spmolqlGjY

???「ニオイ探知はどうだ?」

???「反応していません」

???「…ふむ。どういうことだろう?」

???「その少年も、恐怖で記憶が混乱しているのでしょう」

恭太(ちおちゃんがいない…!?そんな、馬鹿な)

恭太(まさか、食べられちゃったのか…!?)

恭太「あああああっ!!」

127: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/18(木) 21:15:49 ID:spmolqlGjY

恭太「ちおちゃん、ちおちゃん…!!!」

後悔のあまり、叫びをあげる

???「落ち着いて。隊長、記憶の削除を行ってよろしいですか」

???「あぁ」

恭太「ちおちゃん…!!」

その言葉を最後に、恭太は意識を失った

128: 名無しさん@読者の声:2017/5/22(月) 22:43:57 ID:3/JsMTxgiM
支援
129: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/23(火) 13:36:40 ID:spmolqlGjY
>>128
支援ありがとうございます、嬉しいです!!
更新遅れてすみません、がんばります\(^o^)/
130: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/23(火) 13:39:48 ID:spmolqlGjY

―――千織が歪世界にきてから、3日目の朝


「――おり。ちおり」

千織「ん…」

車掌「千織。起きなさい」

千織「んん〜おかあさーん…」

千織「だいじょうぶ、まだあと5ふんねても…まにあうから…」 グーグー

車掌「…」

131: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/23(火) 13:41:26 ID:spmolqlGjY

ブリアン「あら〜かわいい寝顔だね」 ヒョコッ

車掌「…ブリアン。機嫌は直ったのか」

ブリアン「まぁ、僕も車掌とは喧嘩したくないから。でも、この子を人間界に戻すことは反対だよ」

車掌「…」

ブリアン「今まで君は独りだったから、実感ないと思うけど。この子の髪も、顔も、手も足も、全部車掌のものなんだよ?」

ブリアン「全部、車掌の好きなようにしていいんだ」

車掌「変態くさい言い方はやめろ」

132: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/23(火) 13:43:55 ID:spmolqlGjY

車掌「いったい何を企んでいるんだ、お前は」

ブリアン「べつにぃ?僕は車掌のためを思って言ってるだけさ」

車掌「…客が乗ってくる時間だ。行くぞ」 スッ

ブリアン「起こさないの?」

車掌「疲れているのだろう。無理に起こさなくても仕事は回る」 バタン

ブリアン「…独りに慣れすぎなんだよ、車掌は」 ボソ

133: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/24(水) 00:09:35 ID:spmolqlGjY

ガタンゴトン

ガタンゴトン

千織「…」 スヤスヤ

千織「……ん」

千織「…ん…!?」

はっとして目を覚ました

起き上がると、明るい日差しが窓から注ぎ込んできた

千織「…」

千織「…い、いま何時だっ」

134: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/24(水) 00:10:46 ID:spmolqlGjY

スマホをみるが、電池が切れている

だが、既に列車が動いているところをみるに、寝坊したことに間違いないようだ

千織「どど、ど、どうしようっ…」

車掌は怒っているだろうか

急いで起き上がり、寝台車両が出ようとしたが、動きを止めた

千織「…行って、いいのかな…」

ここを出れば、一般車両である

おそらく客(人外)が多く乗車しているはず

千織(む、無理だあぁ〜〜) ヘナヘナ

135: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/24(水) 00:12:36 ID:spmolqlGjY

車掌「…」 ピク

車掌「…起きたか」

列車を運転しながら、つぶやく

ブリアン「こわ。なんでわかるの」

車掌「列車内に存在する精力の動きは全て把握している」

ブリアン「そういやそうだったね」

車掌「とりあえず、貨物と寝台の掃除でもやらせるか。ブリアン」

ブリアン「はいはい、僕が指導しに行けばいーんでしょお」 スタスタ

136: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/24(水) 23:34:08 ID:spmolqlGjY

――――――


ブリアン「――だめだね。まだホコリが残ってる」

千織「えぇ」

ブリアン「ちゃんと隅から隅まで掃くんだよ。やりなおし」

千織「は、はい…」

いそいそと貨物車両の掃除をする

ブリアンは意外と掃除には厳しいようだ

ブリアン「魚人の家があるササノコ駅まであと3時間。それまでに雑巾がけまで終わらせてね」

千織「はい」

137: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/24(水) 23:40:35 ID:spmolqlGjY

車掌「正確には3時間15分だ」

千織「車掌さん」

貨物車両に車掌が入ってきた

車掌「ササノコ駅を終点とした後は、直接魚人の家まで列車を走らせる」

千織「え…」

ブリアン「えぇえ?線路のないところ走るつもり?」

車掌「あぁ」

ブリアン「やめなよ〜。揺れが酷いし精力も消費しちゃう」

138: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/24(水) 23:43:01 ID:spmolqlGjY

車掌「何かあったとき、近くに列車があったほうがいいだろう」

千織「そ、そんなことが可能なんですか」

車掌「可能だ」

千織「そもそも、どうやって魚人の家を見つけるんですか?」

車掌「昨日魚人から回収した携帯機器から、住所はわかった」

千織「な、なるほど…」

139: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/24(水) 23:51:48 ID:spmolqlGjY

千織「あ、あの。私が頼んでおいてあれなんですけど、…私にできることありますか?」

車掌「…」

ブリアン「…」

車掌「…そうだな。おととい会った感じ、君の連れは頭を使わない猿だった。ここでまた暴れられても困るから、きちんとなだめるように」

ブリアン「ブッ」

千織「そっ、それは…!確かに沖くんは、考えるより先に行動しちゃうタイプですけど」 アセアセ

千織「でもそれは、私のことを心配してくれての行動だったので」

140: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/24(水) 23:55:01 ID:spmolqlGjY

車掌「君を守りたいならなおさら、迂闊な行動は逆効果だろう」

千織「う…」

ブリアン「車掌から見たら、人間なんてみんな迂闊な行動しかしないよ」 ケラケラ

ブリアン「千織、そんな男やめて車掌に乗り換えたら?」

千織「はっ…!?」

ブリアン「冷静沈着、頭脳明晰。しかもほら、顔も見てよ、悪くないでしょ」

141: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/24(水) 23:57:13 ID:spmolqlGjY

ヒョイ、と車掌の頭の上にのって帽子をとろうとする

車掌「ブリアン」

千織「も、もしかして誤解してます!? 私、沖くんとそういう関係じゃないです」

車掌「違うのか」

ブリアン「お互いすごい心配しあってるから、そうだと思ったよねぇ」

千織「た、ただの友達です…」 カアァ

142: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/25(木) 21:24:53 ID:spmolqlGjY

――約3時間後

列車は、終点ササノコ駅に到着した

客は皆降り、列車内は車掌とブリアンと千織のみになった

車掌「――さて、行くか」

そう言うと、列車は線路を外れ、ガタゴトと土手を走り始めた

千織「せ、線路がないのにどうやって走ってるんですか」

車掌「線路がないわけではない。一時的に線路を錬成して敷いている」

千織「す、すごいですね…」

143: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/25(木) 21:27:00 ID:spmolqlGjY

およそ10分後

列車は数軒の家が立地する場所に着いた

千織「この中にあの魚人の家が…?」

車掌「おそらく一番奥の家だ」

車掌「密集した住宅地じゃなくてよかったな。騒ぎが大きくならなくて済む」

千織「はい」

車掌「私が降りて様子をみてくる」

千織「わ、わかりました」

144: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/25(木) 21:29:01 ID:spmolqlGjY

車掌「ブリアン。お前は千織のそばにいろ」

ブリアン「はーい」

千織「…」

千織(沖くん、無事でいてね…)

車掌のオレオレ詐欺電話のおかげで、恭太は食べられるのを阻止されたはずだ

魚人の母親が約束を守っていれば、生きているはず

不安になりながら、手を握り締めた

145: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/25(木) 21:32:47 ID:spmolqlGjY

車掌「――…!」

窓から家の中を覗くと、想定外の光景が広がっていた

家の中はテーブルがひっくりかえり、皿が割れ、酷い荒れようだった

車掌「…」 ガチャ

車掌は扉をあけ、家に侵入した

人の気配はない

静まりかえった家のなかをすすむと、

車掌「…!」

魚人母の死体が転がっていた

146: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/25(木) 21:36:59 ID:spmolqlGjY

車掌「…ちっ」

車掌は家の中を歩き回り、恭太の姿を探した

しかし、どこにも見当たらない

車掌(…人間の臭いは残っているが、もうここには気配がない)

最悪の事態が頭によぎる

魚人以外の何者かに、連れ去られた可能性が高い

車掌「いったい誰が…」

この地区の一帯に住んでいるのは魚人だ

他の魚人が希少な獲物である人間を横取りした可能性はあるが――



147: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/25(木) 21:38:44 ID:spmolqlGjY

車掌「…」

再び、死んでいる魚人母をみやった

車掌「…銃?」

魚人母の胸に撃たれた銃傷に気づく

車掌(…魚人が銃をもっているはずがない)

では、いったい誰が

車掌「…」

しばし考えると、車掌は列車へと足を戻した

148: 名無しさん@読者の声:2017/5/25(木) 22:19:25 ID:gF9oOjiWTU
支援
149: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/26(金) 01:46:07 ID:spmolqlGjY
>>148
支援ありがとうございます〜〜!
嬉しさのあまり深夜の追加更新します(*- -)(*_ _)ペコリ
150: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/26(金) 01:47:42 ID:spmolqlGjY


―――目が覚めると、白い天井が見えた

「――恭太!」

恭太「…」

恭太母「あぁ良かった目が覚めて…!お父さん、お医者さん呼んできて!」

バタバタと騒がしい音がする

恭太(…ここ、どこだ…?)

まわりを見渡すと、どうやら病院のようだった

恭太(なんで、病院に…)

151: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/26(金) 01:50:39 ID:spmolqlGjY

医者「――うん。特に異常はないですよ。念のため今日明日くらいは安静にね」

恭太母「本当ですか…!ありがとうございます」

医者「その点滴が終わったら、帰っていいですよ」

恭太母「はい」

母と一緒に頭を下げる

正直まったく状況把握ができていないのだが、どうやら俺は、まる1日行方不明+1日意識不明というトンデモ状況に陥っていたらしい

152: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/26(金) 01:53:03 ID:spmolqlGjY

恭太母「あんた全然帰ってこないと思ってたら、家の前でパンツ1枚で倒れてるのよ。お母さんびっくりしちゃったわ」

恭太母「それで全然目を覚まさないでしょ。死んじゃったのかと思って、もう…」 シクシク

恭太「そうだったの…」

恭太母「あんた、全然覚えてないわけ?」

恭太「う、うん…」

思い出せない

ここ数日何があったのか、まったく


153: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/26(金) 01:56:29 ID:spmolqlGjY

恭太母「あんた半裸だったけど、財布とかは無事だったしねえ」

恭太母「誰かに誘拐されたとか、集団暴行にあったとか、そんなことはないのね?」

恭太「うん、たぶん…」

身体に小さな外傷はあるものの、骨折などはしていない

恭太母「それならいいけど…気をつけてよね」

恭太「うん、ごめん心配かけて」

恭太母「千織ちゃんのことは?何か知らない?」

恭太「ちおちゃん?なんで?」

154: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/26(金) 02:00:49 ID:spmolqlGjY

恭太母「千織ちゃんも、あんたと同じ日に行方不明になって…しかもまだ、帰ってきてないのよ」

恭太「…え…?」

恭太「ちょっと待って、それ、どういう、」

恭太母「警察も捜索しているけど、見つからないの…無事だといいんだけど」

恭太「っ、なんだよそれ!ちおちゃんに何があったんだよ!」

恭太母「そんなこと、母さんに言われても」

恭太母「多分、これから警察の人があんたに事情聴取にくるよ。同じ日から行方不明だったから」

155: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/26(金) 02:03:27 ID:spmolqlGjY

恭太「…! そんな…」

恭太「俺、何も覚えてないし知らない」

恭太「どうしよう母さん、俺、何か悪いことしちゃったのかな、」

恭太「ちおちゃんに何かあったら俺…!」

恭太母「恭太、落ち着いて。大丈夫、大丈夫よ」

息子を抱きしめ、頭をなでる

恭太母「お母さんはあんたが無事で本当にうれしいのよ。今は自分のことだけ考えていなさい」

156: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/27(土) 23:27:55 ID:xo/qm8TjTw

―――――――――


千織「い…」

千織「いなかった…?」

車掌「あぁ」

ブリアン「え。それってやばくない?」

千織とブリアンが目を丸くする

ブリアン「魚人に食べられちゃったってこと?」

車掌「いや。魚人は何者かに殺されていた。誰かが連れ去ったのだろう」

157: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/27(土) 23:32:02 ID:xo/qm8TjTw

千織「そ、そんな…!」

千織「そんな、じゃあどうすればいいんですか!? 沖くんは…!!」

ブリアン「落ち着いて。車掌のことだから、ちゃんと調べてきたんでしょ?」

車掌「…」

車掌「…魚人は銃で殺されていた。だが、この世界で銃を使える者がいるとは聞いたことがない」

車掌「連れ去ったのは魚人ではないと思う。だが、それが具体的に誰なのか私にはわからない」

千織「…!」

158: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/27(土) 23:36:53 ID:xo/qm8TjTw

千織「そ、そうだ臭いは!?人間の臭いがわかるんですよね!?」

車掌「広範囲で判別できるわけではない。距離が近いときにわかるというレベルだ」

千織「…」

千織はへなへなと座り込んだ

そのまま、ぼろぼろと涙をこぼしはじめる

車掌「…」

ブリアン「…あーあ」

159: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/27(土) 23:39:58 ID:xo/qm8TjTw

ブリアン「ミヤコ駅で一晩停車してる場合じゃなかったね。すぐこっちへ戻ってくるべきだった」

車掌「…列車業務は放棄できない」

ブリアン「そりゃそうだけどさー」

黙ったまま涙をこぼす千織を見る

車掌「…」

ブリアン「…」

ブリアン「…まさか、可哀そうだからすぐに人間界に送り返してやろうだなんて思ってないよね?」

160: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/27(土) 23:44:19 ID:xo/qm8TjTw

車掌「別に」

ブリアン「別にってなんだよ」

車掌「女に泣かれるという経験がないから、どうすればいいかわからないだけだ」

車掌は懐に手を入れると、ハンカチを取り出した

車掌「千織」 スッ

千織「…」 グスッ

車掌「…いらないのか」

千織「…鼻水が止まらないので、ティッシュがいいです」

161: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/27(土) 23:50:26 ID:xo/qm8TjTw

車掌「そうか」

車掌は右手を上に向け、手のひらに青い光を生じさせた

すると、ボフッと音をたて、光はボックスティッシュに変わった

ブリアン「げ。精力使いやがった!」

車掌「好きなだけ使え」 スッ

千織「…ありがとうございます」

千織はティッシュを受け取ると、ちーん!と鼻をかんだ

車掌「…」

千織「…あの」

千織「しばらく、独りにしてもらっていいですか」

162: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/27(土) 23:57:34 ID:xo/qm8TjTw

――列車はササノコ駅へ戻り、そこで一晩過ごすこととなった

ブリアン「――信じられないよ。ためらいもせず精力使ってさぁ」

車掌「しつこいな」

ブリアン「そうやって、僕がいないところでポンポコポンポコ使ってるんだね。はぁ」

車掌「なら、どうすれば良かった?」

ブリアン「女の扱いがわかってないね。抱きしめて、頭ぽんぽんで解決だよ」

車掌「理解ができないな」

ブリアン「そうかい。君には一生無理だろうね」

163: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/30(火) 03:39:05 ID:spmolqlGjY


千織「…あの」

独りにしておいた千織が、二人のもとへ戻ってきた

車掌「泣き止んだか」

千織「はい。いろいろすみません」

泣きはらした目とは異なり、表情は落ち着いている

車掌「…?」

千織「…私」

千織「私、この世界で沖くんを探します」

164: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/30(火) 03:40:40 ID:spmolqlGjY

車掌「…」

ブリアン「えぇえ?」

千織「誰かに連れ去られただけで、食べられたとは限らないですから。私みたいに、生かされている可能性もありますし」

千織「どこにいるのか私には想像もできないですけど、探していれば、いつか…」

ブリアン「途方もないね」

呆れた顔をしつつも、ブリアンはにやりと笑った

ブリアン「…でも確かに、この列車なら、この世界の至る所を走る。捜索には適していると思うよ」

165: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/30(火) 03:42:24 ID:spmolqlGjY

車掌「至る所を走るが、降車するわけではない。探すことは無理だ」

千織「お客さんから情報収集するだけでもいいんです」

車掌「情報収集?乗客に対して、『人間の男を知りませんか』なんて尋ねるのか?笑わせるな」

千織「…」

千織「…やってみないと、わかりません」

千織「とにかく私は、沖くんを巻き込んでしまった責任があるので、できる限りのことをしたいんです」

166: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/30(火) 03:47:29 ID:spmolqlGjY

千織「車掌さんからしたら、メリットもなくて、ふざけるなと思われるかもしれないですけど」

車掌「その通りだな」

千織「お仕事の邪魔になるようには決してしませんから… お願いします」 ペコリ

ブリアン「まぁまぁ」

ブリアン「とりあえず、千織がこの世界にいる目的ができて僕は嬉しいよ。どっちにしろ、ここで働いてもらう予定だったわけだし、いいでしょ」

車掌「…はぁ」

大きなため息をつく

車掌「お前らに、振り回されてばっかりの気がする…」

ブリアン「やだーそんなわけないじゃーん??」 ニコニコ

167: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/31(水) 02:27:28 ID:spmolqlGjY

異空間の治安・警備にあたる組織がある

選ばれた者のみで構成される、『異界警察』

恭太を歪世界から人間界へ連れ戻したのも、彼らだった


168: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/31(水) 02:32:11 ID:spmolqlGjY

――コンコン

隊長「入れ」

部下「はっ、失礼します」 ガチャ

部下「先日、歪世界へ人間が紛れ込んだ案件について、追加報告です」

隊長「なんだ」

部下「隊長が命ぜられた通り、人間が発見された現場に監視昆虫を潜らせておいた結果なのですが」

部下「人間を送り返した翌日、歪世界の者が現場を訪れる様子が撮れました」

隊長「ほう」

169: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/31(水) 02:35:55 ID:spmolqlGjY

部下「様子をみるに、人間を探していたと思われます」

隊長「俺が踏んだ通りだ。そいつは、もしかしたら別の人間をもっているかもな」

部下「別の人間、ですか?」

隊長「人間の少年が言っていただろう。『ちおちゃん』と。歪世界には、まだ人間が迷い込んでいる。その人間の情報を通して、あの現場へたどり着いた可能性がある」

部下「しかし、探知機には何も反応がありませんでした」

隊長「何らかの方法でごまかしたんだろう。知能は高めのようだな」

隊長「で?そいつの身元特定は?」

170: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/31(水) 02:42:32 ID:spmolqlGjY

部下「そ、それが」

隊長「ん?」

部下「監視昆虫が追跡する前に、踏みつぶされてしまったようです」

隊長「…ぶっ」

隊長「ぶはははは!!」

隊長「面白い。誰だか知らないが、俺に喧嘩を売りやがったな」

部下「ど、どうされますか?」

隊長「決まっているだろう。異界警察のメンツにかけて探し出して、死刑にしてやる」

部下(い、言えない… 監視昆虫が追跡できなかったのは、ただの誤作動だったなんて)

171: ◆e.A1wZTEY.:2017/6/5(月) 20:42:56 ID:qmYFUaaIGI
多忙のため少しお休みします
172: 名無しさん@読者の声:2017/6/7(水) 17:19:10 ID:TLNgewpArk
いつも更新お疲れ様です
(´・ω・)っ旦~

読み返して待ってるので落ち着くまで頑張ってください
つCCC
173: ◆e.A1wZTEY.:2017/6/12(月) 11:58:26 ID:qmYFUaaIGI
>>172
ありがとうございます;;めっちゃ嬉しいです( ;∀;)
14日or15日に更新再開予定です!
174: ◆e.A1wZTEY.:2017/6/16(金) 23:42:31 ID:qmYFUaaIGI

歪世界に来てから4日目の朝

今日は寝坊することなく、早朝5時に起きた

車掌「――君にはとりあえず、各駅で荷物の積み下ろしをやってもらう」

千織「はい」

車掌「基本的にどの駅でも、兎男がその業務に携わっている。君はその補助程度でいい」

千織「兎男… 兎男さんは、どういう人たちですか?」

車掌「気性は穏やかだ。人間とわからなければ手出しをしてくることもないし、仕事はマメに教えてくれるだろう」

千織「本当ですか!」 パアア

175: ◆e.A1wZTEY.:2017/6/16(金) 23:46:03 ID:qmYFUaaIGI

車掌「何か質問は?」

千織「え、えーと… 私、自分の筋力にはあまり自信ないんですけど。荷物って結構重いですか?」

車掌「物によるな。重そうなものは無理しなくていい。兎男は協力的だから手伝ってくれるだろうし」

千織「優しい人たちなんですね…」 ジーン


――というわけで、千織は兎男たちに混ざって荷物の積み下ろし業務にあたった

まず、駅に停車すると、貨物車両から該当の荷物を下ろす

そして、新たに載せる荷物を乗客から受け取り、貨物車両へ運び入れる

この繰り返しだった

176: ◆e.A1wZTEY.:2017/6/16(金) 23:48:47 ID:qmYFUaaIGI

千織「…」ゼェゼェ

やはり、女の千織にとってこの肉体労働は楽ではない

一駅働いただけで汗だくになってしまう

老兎男「――お嬢ちゃん、がんばるねぇ」

千織「えっ、あっ、はい!」

老兎男「新人なのにえらいねぇ。あの車掌さんにしごかれてるのかい?」

千織「い、いや、そういうわけでは!私が体力がないだけなんです」

老兎男「ほっほっほ。初日から頑張ると、明日から筋肉痛で動けなくなっちまうから、無理しないようにね」

千織「は、はい…!」

千織(ほんとに優しい…) ジーン

177: ◆e.A1wZTEY.:2017/7/10(月) 11:14:57 ID:wxYS1bSIHQ

車掌「千織」

昼になると、車掌が貨物車両で休む千織のもとへやってきた

千織「はい」

車掌「昼飯だ」

ぽん、とお弁当を手渡される

千織「え…!?」

千織「お、お弁当!?お弁当があるんですか!?」

車掌「駅売り弁当というやつだ。今停車しているヒナコ駅で買ってきた」

千織「駅売り弁当…」

178: ◆e.A1wZTEY.:2017/7/10(月) 11:17:54 ID:wxYS1bSIHQ

パカ、と開くと、色とりどりの具材が目に入った

千織「お、おぉー」

感動する

しかし、それぞれの具材はなじみのある見た目ではなく、何なのかわからない

千織「…わ、私が食べられるものなんですよね?」

車掌「さきほど私も少し食べてみたが、問題ないと思う」

千織「車掌さんって、ふだん精力が食事なんですよね…?参考になるんでしょうか」

車掌「いらなければ食べなくていい」 ツーン

千織「た、食べます!食べます!ありがとうございます」

179: ◆e.A1wZTEY.:2017/7/10(月) 11:21:45 ID:wxYS1bSIHQ

午後も変わらず、荷物の積み下ろし業務に携わった

千織「兎男さん、手伝います!」

兎男「おや、初めて見る顔だね?」

千織「今日から列車で働いてます、千織といいます。よろしくお願いします!」

兎男「そうなのか〜こちらこそよろしく」

兎男と一緒に、よいしょと声をかけて荷物をもつ

千織「う〜重い」

兎男「大丈夫かい?なんなら俺ひとりでも…」

千織「大丈夫です!へっちゃらです!」 ニコニコ

兎男「…」

兎男(よく見ると、か、かわいい顔してるなぁ〜…) ドキドキ

180: ◆e.A1wZTEY.:2017/7/10(月) 11:27:09 ID:wxYS1bSIHQ

おとなしい雰囲気の兎男とは、千織も安心して会話することができた

千織「兎男さんは、ずっとこのお仕事をされているんですか?」

兎男「いや、俺が働き始めたのはつい最近だよ」

兎男「恥ずかしい話、家で引きこもってる時期が長くてね。最近になってやっと働こうっていう気になったんだよ」

千織「そうなんですね」

兎男「やりたいことがなくて毎日だらだらしてたんだけど、さすがに働かないとね、生活できないし」

181: ◆e.A1wZTEY.:2017/7/10(月) 11:30:24 ID:wxYS1bSIHQ

千織「そう考えて実行できるのが偉いと思います。やりたいことは、働いてお金をためながら、見つけるでもいいんじゃないですかね?」

兎男「そうだよね、俺もそう思ったんだ。実は俺、ミュージシャンになりたいなって、ちょっと考え始めてるんだ。音楽が好きだから」

千織「へぇ!とっても素敵です」

兎男「でも、仲間には無理だって言われてる。見た目も冴えないし、気が弱いから」

兎男「兎男一族は、みんな駅や列車に派遣されて働いているしね」

千織「大切なのは兎男さんの気持ちだと思いますよ。夢があるから毎日を頑張れると思いますし」

182: ◆e.A1wZTEY.:2017/7/10(月) 11:37:20 ID:wxYS1bSIHQ

兎男「そうかな?」

千織「そうですよ。チャレンジしてみて、自分ができることをやりきって…それでもダメだったら、列車のお仕事をすればいいんじゃないんですかね。自分の人生ですから」

兎男「そんなことを言ってくれたのは、千織ちゃんが初めてだよ」

千織「そうなんですか?」

兎男「うん。俺…みんなから変わってるって言われるんだ。だから自信なくしちゃって」

千織「変じゃないですよ!私は応援してます」

兎男「あ、ありがとう… 千織ちゃんのおかげで、何か元気が出てきたよ」

183: ◆e.A1wZTEY.:2017/7/12(水) 21:14:10 ID:wxYS1bSIHQ

日が暮れ、そろそろ仕事が終わるだろうかという頃――


兎男「千織ちゃん、千織ちゃん」

千織「はい」

兎男「初めての仕事、1日よくがんばったね」

千織「いえいえ。兎男さんたちが優しく教えて下さったおかげです」

兎男「千織ちゃんはニコニコ可愛いから、俺たちの癒しだって、みんな言ってるよ」

兎男「ところで、みんなと話して、お嬢ちゃんの歓迎会をやろうって話になったんだ。どう?」

184: ◆e.A1wZTEY.:2017/7/12(水) 21:16:46 ID:wxYS1bSIHQ
>>183
×お嬢ちゃん
〇千織ちゃん
185: ◆e.A1wZTEY.:2017/7/12(水) 21:17:26 ID:wxYS1bSIHQ

千織「え、歓迎会?」

兎男「うん。列車はこのタツノコ駅で今日は終点だろ?近くにおいしいお店があるんだ」

千織「そ、そうなんですか」

千織(どうしよう…嬉しいけど、さすがに無理だよね…)

しかし、笑顔いっぱいの兎男を見ていると、とても断りづらい

千織「しゃ、車掌さんに相談してきてもいいですか?」

兎男「え?なんで?君は仕事が終われば自由だろ?」

千織(い、言えない… 車掌さんに買われてるだなんて)

千織「ざ、残業があるかもしれないので…」

兎男「そうなの?じゃあ、少しここで待ってるよ」

186: ◆e.A1wZTEY.:2017/7/12(水) 21:19:08 ID:wxYS1bSIHQ

車掌「――歓迎会?」

千織「は、はい… 皆さんすごく優しいので、断りづらくて。どうすればいいでしょう」

車掌「町に出るのは危険だな。私のそばを離れれば、わずかに残る人間の臭いでバレる可能性もある」

千織「で、ですよね」

車掌「君は行きたいのか?」

千織「い、いえ!夜ですし、何かあったら怖いので… 」

車掌「仕方ないな。私から言ってやる」

千織「すみません」

187: ◆e.A1wZTEY.:2017/7/12(水) 21:22:06 ID:wxYS1bSIHQ

兎男「……納得いきませんね」

車掌「何がでしょう」

兎男「新人を業務終了後も拘束するなんて。ここはブラックじゃないと思っていましたが」

車掌「彼女には住み込みで働いてもらっているので。これから列車の清掃業務をさせます」

兎男「な…さすがにかわいそうですよ、こんな女の子を」

車掌「ご心配なく。彼女も了承済みです」


188: ◆e.A1wZTEY.:2017/7/12(水) 21:24:15 ID:wxYS1bSIHQ

兎男「千織ちゃん、本当なの?」

千織「は、はい…」

兎男「…」

兎男「…そう。じゃあ、今日はひとまずやめとくよ」

兎男「またね、千織ちゃん」

千織「はい。すみません、ありがとうございました」 ペコリ


189: ◆e.A1wZTEY.:2017/7/12(水) 21:27:32 ID:wxYS1bSIHQ

帰路につきながら、兎男は考える

兎男「なんかおかしい…納得できないぞ」

兎男「普段から業務は滞りなくあの車掌ひとりでやってるんだから、住み込みの働き人なんていらないはずだ」

兎男「女の子を深夜までこきつかうなんて…信じられない…」

兎男「…はっ!もしかして」

兎男「千織ちゃんは可愛いから、無理やり拘束されてるんじゃないか?」

兎男「抵抗しても力じゃかなわないだろうし、あの車掌の言いなりにされて、酷いことを…」

兎男「そうだ、きっとそうに違いない!」

兎男「んああああっ!!ゆるせんんんん!!!!!」

190: 名無しさん@読者の声:2017/7/26(水) 23:19:21 ID:.JIA1ip43s
支援
お帰りなさい!
191: 名無しさん@読者の声:2017/8/30(水) 09:41:42 ID:UtKpo4NOEg
>>190
ありがとうございます!
お待たせしました!
192: ◆e.A1wZTEY.:2017/8/30(水) 09:44:34 ID:UtKpo4NOEg

車掌「――明日からは、あの兎男とは業務時間をずらしてもらう」

千織「え、何でですか!?」

車掌「前々から見ているに、考え方が若くて甘い。他の兎男よりも危ないところがある」

千織「でも、せっかく歓迎会に誘ってくれたいい人なのに…」

車掌「…」 ハァ

車掌「千織、あの男に何か言ったな?」

193: ◆e.A1wZTEY.:2017/8/30(水) 09:46:34 ID:UtKpo4NOEg

千織「え?」

車掌「あいつに好意を寄せられるようなことをだ」

千織「そ、そんな。言ってません、普通にお話しただけです」

車掌「何を言ったか知らないが、君の目線で物事を語らないことだ。この世界に住む者は、人間ではない上、もともとは死者だ。それを忘れるな」

千織「…!」

194: ◆e.A1wZTEY.:2017/8/30(水) 09:49:12 ID:UtKpo4NOEg

――翌日

兎男「…あれ?千織ちゃんは?」

兎男2「ん?なんか別チームの荷物班になったらしいぞ」

兎男「ええぇっ!なんで??」

兎男2「そんなこと俺が知るかよ〜。さぁ、仕事仕事」 バタバタ

兎男「…」


195: ◆e.A1wZTEY.:2017/8/30(水) 09:52:30 ID:UtKpo4NOEg

兎男(別チームって…そんなの、あの車掌が決めたにきまってるじゃないか)

沸々と胸の内に怒りがわいてくる

兎男(俺が昨日文句を言ったから、チームを変えられたんだ。許せない)

兎男(あんな性格の悪い車掌が、千織ちゃんに優しく接してるはずがない)

兎男(きっと虐められてる… 俺が、俺が助けてあげなきゃ!!)


196: ◆e.A1wZTEY.:2017/8/30(水) 10:01:46 ID:UtKpo4NOEg

千織「――ふう!」

キサラギ駅と書かれた駅での荷物の積み下ろしを終え、汗をぬぐう

力仕事にもだいぶ慣れてきた

千織「働くのって悪くないかも」

そう呟き、次の駅に向けて列車に乗り込もうとしたとき――

兎男「ち、千織ちゃん!!」

千織「兎男さん…?」

兎男が走ってきて、千織の手をつかんだ

197: ◆e.A1wZTEY.:2017/8/30(水) 10:04:12 ID:UtKpo4NOEg

千織「ど、どうしたんですか」

兎男「俺が、君を助けてあげる!一緒に逃げよう!!」

千織「え、えぇ!?」

『――まもなく、列車が出発します。まもなく列車が出発します』

アナウンスが入り、列車が音を立て始める

千織「だ、だめです、列車に戻らないと」

兎男「いいから、俺についてきて!!」 バッ

千織「きゃ!?」

兎男は千織を抱き上げると、ホームの外へ走り出した

198: ◆e.A1wZTEY.:2017/11/30(木) 11:22:59 ID:UugzyVWfTQ

車掌「…」 ピク

運転席で、わずかに顔をしかめる

車掌「…ちっ」

千織の気配が列車外へ出たのに気づいた

列車の出発をいったん止め、目を閉じて精力を集中する

車掌「…」

すると、列車の車両から、にょきにょきと巨大な黒い手が出現した

199: ◆e.A1wZTEY.:2017/11/30(木) 11:29:21 ID:UugzyVWfTQ

兎男「――な、なんだありゃあ!?」

千織を抱きかかえながら走る兎男に向かって、黒い手が追いかけてくる

千織「…!!」

兎男「つ、つかまってたまるか!!」

兎男は全力で走り、駅を出て町へ向かう

千織「う、兎男さん、止まってください!」


200: ◆e.A1wZTEY.:2017/11/30(木) 11:31:05 ID:UugzyVWfTQ

千織「これ以上は危ないです、やめてください!」

兎男「やめない!俺は君を助けたいんだ!!」

見ると、黒い手は猛スピードで背後に迫っていた

黒い手が至近距離まで迫り、兎男を掴もうと大きな手をひろげた瞬間――

ザンッッ!!!

「!!」

巨大な刃物で、黒い手が切断された

201: ◆e.A1wZTEY.:2017/11/30(木) 11:33:37 ID:UugzyVWfTQ

車掌「っ!」

自らの手をおさえ、顔をゆがめる

ブリアン「――ちょっと車掌!?何してんのさ!!」

ブリアンが運転室に飛び込んできた

ブリアン「列車は出発しないし、精力の手が列車から出てるし、いったい何が――」

車掌「ブリアン」

ブリアン「え?」

車掌「千織が連れ去られた。いますぐ列車から降りて、千織を追え」

202: ◆e.A1wZTEY.:2017/11/30(木) 11:35:46 ID:UugzyVWfTQ

ブリアン「ええぇえ!?」

車掌「これ以上は手が伸ばせないし、列車業務にも支障が出る」

ブリアン「ま、まじかよぉ」

車掌「早く」

ブリアン「わ、わかったよ。じゃあ、明日折り返してこの駅に戻ってきてよ!」

そういうと、ブリアンは列車の外へ飛び出した


203: 名無しさん@読者の声:2018/2/13(火) 11:06:13 ID:tNKE7DItDk
支援
204: ◆e.A1wZTEY.:2018/2/13(火) 18:15:38 ID:UugzyVWfTQ
>>203
支援ありがとうございます・・・!!
更新滞ってるのに見て下さって本当に嬉しいです、更新します
205: ◆e.A1wZTEY.:2018/2/13(火) 18:17:10 ID:UugzyVWfTQ

千織「…」

切断された黒い手をみて、唖然とする

黒い手は地面に落ちたまま動かない

千織「しゃ、車掌さん…」

兎男「ふぃ〜!助かったぁ!!」

兎男「感謝するよ、兄貴」

兎男が見た先には、さらに一回り大きい体の兎男がいた

手には大きな刀のようなものをもっている

206: ◆e.A1wZTEY.:2018/2/13(火) 18:19:52 ID:UugzyVWfTQ

兎兄貴「まったく、久しぶりに帰ってきたと思ったら、なんの騒ぎだ」

兎男「この子を助けてあげたくってさ」

兎男「千織ちゃん、安心して。ここはキサラギ町っていって、俺の故郷なんだ」

千織「え。えっと…」

兎男「兄貴、この子は列車で囚われてたんだ。かわいそうだろ」

兎兄貴「ほぉーん。列車って…あの無口な車掌がいる列車だろ?」

兎兄貴「てかお前、そんな大層なことして、明日からどこで働くつもりだよ」

207: ◆e.A1wZTEY.:2018/2/13(火) 18:22:21 ID:UugzyVWfTQ

兎男「そ、そんなこと二の次だよ!とにかくこの子を助けたかったんだ」

千織(ど、どうしよう…)

どうやら完全に、誤解されているらしい

はっきり違いますと伝えて、一刻も早く車掌の元へ戻らなければ

千織「あ、あの」

兎兄貴「つーかこの子、人間みたいだなぁ?」

千織「!」 ビクッ

208: ◆e.A1wZTEY.:2018/2/13(火) 18:25:16 ID:UugzyVWfTQ

兎男「そんなわけないじゃないか!見た目はちょっと俺たちと違うけど」

兎兄貴「そうそう。見た目がさぁ、似てないか?この町にいる人間に」

兎男「ま、まぁ確かに…でも、人間の臭いはしないよ?」

千織「…」

千織「…え?」


209: ◆e.A1wZTEY.:2018/2/13(火) 18:28:14 ID:UugzyVWfTQ

聞き間違いでなければ、この町に人間がいると、聞こえた

千織「あっ、あのっ」

兎兄貴「ん?」

千織「いま、人間って…」

兎兄貴「あぁ」

兎兄貴「この町に1人、奴隷として買われた人間がいるのさ。珍しいもんさ」

千織「…!!」

210: ◆e.A1wZTEY.:2018/2/13(火) 18:30:25 ID:UugzyVWfTQ

千織(沖くんだ…!沖くんだ、きっと!!)

千織「あの、その人に会わせてください!お願いします!!」

兎兄貴「あぁん?」

兎男「何で?千織ちゃん食べたいの?」

千織「た、食べたいわけでは…。ほ、ほら、希少価値が高いと聞くので、見てみたいんです」

兎男「まぁ、気持ちはわかるけど…」

兎兄貴「人間を買ったのは、この町でいちばんの大金持ちだ。俺たちが人間に近づけば、盗人と勘違いされちうまうぜ」

千織「そんな…」

211: 名無しさん@読者の声:2018/2/14(水) 10:13:27 ID:b.B/sZevxI
待ってました! ありがとう(>∀<)
212: ◆e.A1wZTEY.:2018/2/14(水) 21:56:23 ID:UugzyVWfTQ
>>211
こちらこそお待ちいただきありがとうございます!(>∀<)
(関係ないですが、本日2月14日は、千織が初めて歪世界トレインに乗った日です)
213: ◆e.A1wZTEY.:2018/2/14(水) 21:57:45 ID:UugzyVWfTQ

必死に考えをめぐらせる

千織(ど、どうしよう。この町で情報を得られたのは大きいけど、車掌さんと離れ離れになってしまった)

千織(車掌さんは列車業務があるから、すぐにはここに来れないはず)

千織(…そ、そもそも、助けに来てくれるのかもわからないけど)

千織(車掌さんが来てくれることを信じて、この町でできる限りのことをしよう)

兎男「千織ちゃん」

千織「は、はいっ」

214: ◆e.A1wZTEY.:2018/2/14(水) 21:58:54 ID:UugzyVWfTQ

兎男「いきなり連れ出したりしてごめんね。でも、俺はどうしても君を助けたかったんだ」

兎男「これからは俺が、千織ちゃんのことを守るから安心してよ」

千織「え、えと、その…」

相変わらず、よくわからない誤解をしている

千織「な、何か勘違いされていませんか?私は別に、助けてもらうような状況では――」

言おうとして、はっと口をつぐむ

215: ◆e.A1wZTEY.:2018/2/14(水) 21:59:59 ID:UugzyVWfTQ

千織(…そうだ。しばらく車掌さんと離れてこの町にいる以上、味方になってくれる人が必要だ)

千織(このまま、兎男さんたちのそばにいたほうが安全かもしれない)

千織「…あ、ありがとうございます。とても頼もしいです」

兎男「そ、そうかい?へへへ」

兎兄貴「なんでい、にやけるねぇ〜」


216: ◆e.A1wZTEY.:2018/2/14(水) 22:01:47 ID:UugzyVWfTQ

その様子を、ブリアンが少し離れたところから眺める

ブリアン(この町に人間がいる…?)

くんくんと鼻を動かす

ブリアン(別に臭いはしないけどな…ほんとにいるのか?)

ブリアン(でも、千織と同じように臭いをカモフラージュさせてる可能性もあるっちゃあるな)

ブリアン(…少し観察してみるか)

217: ◆e.A1wZTEY.:2018/2/14(水) 22:03:26 ID:UugzyVWfTQ

――――――


車掌「…」 ゴホッゴホッ

列車を動かしながら、咳をする

短時間で多く精力を消費したせいか、体調が芳しくない

車掌「…まったく」

千織がここに来てから、精力を得るどころか消費してばかりだ


218: ◆e.A1wZTEY.:2018/2/14(水) 22:05:17 ID:UugzyVWfTQ

あんな小娘1人、歪世界に放置しても何も困りはしないのに

なぜ、精力の手で追いかけ、ブリアンまで置いてきてしまったのか

自分のとっさの判断だが、理解ができない

車掌「……」

とにかく、自分が指示した以上、今日の列車業務を終え次第、キサラギ駅に戻らなければならない

大きくため息をつくと、車掌は列車の速度を上げた

219: 名無しさん@読者の声:2018/2/15(木) 19:11:38 ID:SMl5NMYR0U
この世界観好き
ノC
220: ◆e.A1wZTEY.:2018/2/16(金) 16:39:31 ID:UugzyVWfTQ
>>219
支援ありがとうございます〜〜( ;∀;)
世界観好きと言って頂けて嬉しいです

ふと、結構話がわかりづらくなってきた気もするので、簡易的なまとめを作ってみようと思いました
>>218までのあらすじになりますので、既に記述済みの内容です
更新が遅いせいで前の内容あまり覚えてないけど読み返すのは面倒だなぁ〜という方がもしいらっしゃれば見て頂ければと思います→http://akb.akiba.coocan.jp/file/uploader.cgi?mode=downld&no=493
221: ◆e.A1wZTEY.:2018/2/17(土) 17:16:42 ID:UugzyVWfTQ

キサラギ駅

きさらぎ駅


222: ◆e.A1wZTEY.:2018/2/17(土) 17:19:03 ID:UugzyVWfTQ

――少女は、昔、この駅に迷い込みました

何も知らない少女は、異界の者に捕らえられ

奴隷にされました

恐怖と苦痛に耐えきれなくなくなった少女は、

この地に来て7日目の朝

自ら命を絶ちました


223: ◆e.A1wZTEY.:2018/2/17(土) 17:21:09 ID:UugzyVWfTQ

少女「…いつ、」

少女「…私は、」

少女「…助けてもらえるの…?」

ぽつぽつと呟きながら、大きな屋敷の廊下を歩く

傷んだ髪は腰まで伸び、顔から上半身を覆っている


224: ◆e.A1wZTEY.:2018/2/17(土) 17:22:43 ID:UugzyVWfTQ

少女「…」

うつろな目で、窓の外を眺めた

少女「…?」

町中で、兎男たちと行動する千織の姿が目に入る

少女「…あのひとは、」

少女「人間…?」


225: ◆e.A1wZTEY.:2018/2/17(土) 17:26:45 ID:UugzyVWfTQ

兎兄貴「――で?お前、この子を助けたはいいけど、これからどうすんだよ」

兎兄貴「この町にいることはバレてるだろうし、車掌がここに来るのも時間の問題だぞ」

兎男「に、逃げてみせるよ。たとえこの町を出ていくことになっても」

兎兄貴「…」

兎兄貴「…千織と言ったな。お前、あの車掌とどういう関係だ?」

千織「え」

226: ◆e.A1wZTEY.:2018/2/17(土) 17:27:56 ID:UugzyVWfTQ

兎兄貴「俺たちのイメージだと、車掌は列車業務以外には無関心な男だ。だが、さきほどお前を追ってきたところをみると、そうでもないようだと思ってな」

千織「…それは…」

兎男「あいつは、千織ちゃんが可愛いから傍において拘束したいんだよ!そうに決まってる」

兎兄貴「そうなのか?」

ちら、と千織をみる

227: ◆e.A1wZTEY.:2018/2/17(土) 17:29:28 ID:UugzyVWfTQ

千織「…それは… わ、わからないです」

兎兄貴「わからない?」

千織「え、えーと・・・」

どう答えればいいのだろう

正直に言えば人間だとバレてしまうし、かといって嘘をついて車掌を悪者にするのも気が引ける

兎男「兄貴!千織ちゃん困ってるだろ。きっとあいつに脅されてて、誰にも言うなって言われてるんだよ」

兎兄貴「ふむ…まぁそのうち話す気になったら、聞かせてもらおう」

228: ◆e.A1wZTEY.:2018/2/17(土) 17:31:32 ID:UugzyVWfTQ

兎兄貴「とりあえず、身を隠す必要があるなら俺の家にこい」

兎男「兄貴の家に?」

兎兄貴「お前の家は真っ先に怪しまれる。俺の家は町の最北だし、外塀もあるし、いざとなったら地下もあるから見つかりにくいはずだ」

兎男「さすが兄貴!頼りになる!」

千織(そ、そんな…見つかりやすいほうがいいのに・・・)

兎男「千織ちゃん、大丈夫だよ。俺がずっと傍にいるからね」

229: 名無しさん@読者の声:2018/2/24(土) 11:37:03 ID:W4ttS0IcFo
わくわく ノC
230: ◆e.A1wZTEY.:2018/2/25(日) 22:04:47 ID:OFS60Ero8I
>>229
支援ありがとうございます!!
少し気を抜くとすぐ1週間間が空いてしまいますね・・・(;^ω^)
明日更新予定です
231: ◆e.A1wZTEY.:2018/2/26(月) 12:29:12 ID:UugzyVWfTQ

兎兄貴の家へ向かって、町中を歩く

その途中、ひときわ大きなレンガ造りの建物の前を通った

千織「…ここ、大きな家ですね」

兎男「うん。町で一番お金持ちな、兎女の家だよ」

千織「さっき、お金持ちの人が人間を所有してると言ってましたけど、もしかして…」

兎男「そうだね。ここに人間みたいなのが住んでるって話だよ」

千織「…!」

232: ◆e.A1wZTEY.:2018/2/26(月) 12:30:18 ID:UugzyVWfTQ

兎兄貴「ま、兎女がもともと引きこもりのブスだから、なかなか見かけることがないけどな」

千織「そ、そうなんですね…」

この屋敷のなかに、沖くんがいるかもしれない

窓から何か見えないか、必死に目を凝らすが、真っ暗になっていて何も見えない

兎男「気になるのはわかるけど。どーせ人間なんて俺たち庶民に手に入るものじゃないよ」

千織「そ、そうですけど。チラッと見ることとかできないかなって」

兎男「この町に住めば、そのうち見かける機会があるんじゃないかなあ?俺も見たことあるわけだし」

千織「…」

233: ◆e.A1wZTEY.:2018/2/26(月) 12:31:48 ID:UugzyVWfTQ

足を進めると、兎兄貴の家に到着した

木造の小屋を開けると―――

千織「う」

整理整頓のせの字もない、散らかった部屋の光景が広がった

生ごみもそのままでハエがたかり、洗濯物が無造作に放り出されている

兎男「兄貴ぃ!もうちょっとどうにかなんないの」

兎兄貴「しゃーねえだろ!男の一人暮らしなんてこんなもんだ」

234: ◆e.A1wZTEY.:2018/2/26(月) 12:33:14 ID:UugzyVWfTQ

兎男「こんなの千織ちゃんに嫌がられちゃうよ」

千織「はは…」

千織「わ、私…お掃除しましょうか?」

兎兄貴「まじで!?」

千織「お掃除好きなので…」

千織(なるべく拘束されないようにしなきゃ)

兎男「俺も手伝うよ!一緒にやろう」

兎兄貴「お前ら…いい奴らだなぁ…」

235: ◆e.A1wZTEY.:2018/2/26(月) 12:36:26 ID:UugzyVWfTQ

――ブリアンは窓からこっそりと彼らの様子を見つめた

ブリアン「・・・とりあえず千織がすぐに危害を加えられることはなさそうだ」

ブリアン「匿われてる場所は特定したし、人間がいるとかいう屋敷を調べてみようかな・・・?」

ヒョイッと屋根をつたってレンガ造りの屋敷の上に飛び移る

兎男たちは、ここに人間がいると話していた

ブリアン「・・・えーと、侵入できそうな場所は」

入り込めそうな隙間を探すと、壁と屋根のあいだに小さな隙間を見つけた

ブリアン「ちょっときついかなー。ま、でもいけるっしょ」

強引に体をつっこみ、ねじりながら、屋敷内に侵入した

236: ◆e.A1wZTEY.:2018/3/1(木) 12:21:39 ID:vGGqM0uMLc

ブリアンは屋根裏から中の様子をうかがった

薄暗く、ほこりっぽい

誰かが住んでいる気配はあまり感じない

ブリアン「・・・なんだか不気味で嫌だなあ」

赤い絨毯がひかれた廊下に飛び降り、歩いていく

1つ1つの部屋を軽くのぞいてみるが、どれも使われていない

237: ◆e.A1wZTEY.:2018/3/1(木) 12:23:03 ID:vGGqM0uMLc

ブリアン「・・・」

ブリアン「・・・人間どころか、兎すら住んでなさそうだけど」

ブリアン「こりゃガセネタかな」

『ガセじゃないわ』

ブリアン「!?」 バッ

気配は感じなかった

しかし、振り向くと背後に髪の長い女が立っていた

238: ◆e.A1wZTEY.:2018/3/1(木) 12:24:27 ID:vGGqM0uMLc

ブリアン「だっ・・・誰だ!」

毛を逆立てて威嚇する

少女「・・・」

少女「・・・私を、助けにきてくれたのよね・・・?」

ブリアン「は・・・?」

少女「人間を探しているんでしょう」

ブリアン「・・・あ、あぁ」

ブリアン「でも、あいにく君じゃなかったみたい。男の子なんだ、探してるのは」

239: ◆e.A1wZTEY.:2018/3/1(木) 12:26:13 ID:vGGqM0uMLc

ブリアン「だいたい君、人間じゃないよね?臭いも気配も感じないよ」

少女「・・・ひどいわ」

ブリアン「え」

少女「・・・化け物ばかりのこの世界でずっとここに閉じ込められて・・・必死に生きてきたのに・・・」

少女「私が人間じゃないだなんて・・・ひどい・・・許せない・・・」

ぶるぶると震える女を見て、背筋が寒くなった

240: ◆e.A1wZTEY.:2018/3/1(木) 12:27:40 ID:vGGqM0uMLc

ブリアン「よ、よくわかんないけど、僕は関係ないから。勝手に入って悪かったね、もう帰る、んぐっ!?」

すごい速さで体を捕まえられた

気配を感じないため反応できなかった

少女「ひとりで寂しかったの・・・」

少女「私のお友達になって、ね?猫ちゃん」


241: 名無しさん@読者の声:2018/3/3(土) 11:35:49 ID:JaP15NqWpE
更新きてる(>∀<)/
242: ◆e.A1wZTEY.:2018/4/17(火) 20:38:45 ID:18YnfYyzqU
>>241
お待たせしました!
新社会人になったので慌ただしくてorz
243: ◆e.A1wZTEY.:2018/4/17(火) 20:40:51 ID:18YnfYyzqU

――一晩があけた

掃除に疲れた千織は、貸してもらったベッドで眠りに落ちていた

千織「・・・」 スヤスヤ

兎男「ふふふ、可愛いなあ」

寝顔を眺めてにやにやする

兎兄貴「のんきなこと言ってる場合じゃねえぞ。武器の手入れくらいしとけ」

兎男「ぶ、武器?」

兎兄貴「本気でその子守ろうってんなら必要だろう。いつまでも気の優しい男じゃだめだぞ」

兎男「そ、そうだよね。頑張らなきゃ・・・!」

244: ◆e.A1wZTEY.:2018/4/17(火) 20:44:54 ID:18YnfYyzqU

車掌が乗った列車は、昨晩一度終点に到着後、再びこのキサラギ駅に向かって走っていた

車掌「・・・あと2時間で到着といったところか」

到着後は、長時間列車を駅に停めることになる

以前のように列車を線路外へ強引に走らせることは可能だが、さすがに町中へ突入させるのは無理だ

本来許されることではないが、故障などと理由をつけて停めるしかない

列車業務を無駄なく遂行したい車掌にとってはストレスが大きかった

車掌「・・・さっさと取り返して戻らないと」

車掌「ブリアンができる奴なら、千織の居場所を特定して、駅で待っていてくれるはずだが」

245: ◆e.A1wZTEY.:2018/4/17(火) 20:47:15 ID:18YnfYyzqU

ブリアンは、屋敷の薄暗い部屋で、柱にひもで括りつけられていた

意識はあるが、一晩この状態で放置されたため、暴れる元気もなくなっていた

ブリアン「くっそぉ・・・」

ブリアン「何なんだあの女・・・僕が何をしたっていうのさ」

力ない声でつぶやく

ブリアン(・・・そういえば)

ブリアン(この屋敷の主・・・兎女だったか?そいつはどこにいるんだ)

246: ◆e.A1wZTEY.:2018/4/17(火) 20:49:07 ID:18YnfYyzqU

掃除が行き届いていない部屋や廊下の様子をみる限り、生活感は感じられない

ブリアン(仮にあの女が本当に人間だったとして・・・人の臭いはいくらでもカモフラージュできるから、臭わなくても不思議じゃない。でも、気配を感じないのはなぜなんだ・・・?この世界の者でも、気配はあるはず)

ブリアン「あーもう!訳わかんね!あれか!?人間界でいう幽霊!?幽霊なのか!?!?」

少女「私は人間よ」

ブリアン「うわっ!」

いきなり目の前に現れた女にぎょっとする

247: ◆e.A1wZTEY.:2018/4/17(火) 20:52:33 ID:18YnfYyzqU

少女「・・・そろそろおとなしくなった?」

ブリアン「おかげさまで。お腹ペコペコで力が出ないよ」

少女「あら・・・かわいそうに。抵抗しないと約束するなら、ご主人様から何かもらってきてあげる」

ブリアン「ご主人様って・・・兎女のこと?」

少女「ええ」

ブリアン「この屋敷にいるの?あんたはやっぱり買われたの?」

少女「・・・」

248: ◆e.A1wZTEY.:2018/4/17(火) 20:54:17 ID:18YnfYyzqU

少女「・・・それは、」

少女「・・・喋ることを許されていない・・・ようです」

ブリアン「は・・・?」

少女「・・・」

先ほどと少し様子が変わり、うつむいてあまり口が動かなくなった

ブリアン(なんだこいつ・・・)

怪しい雰囲気に、思案する

249: ◆e.A1wZTEY.:2018/4/17(火) 20:56:32 ID:18YnfYyzqU

ブリアン「・・・じゃあさ、あんたにとっても兎女にとってもメリットになりそうなこと教えてあげるって言ったら、この縄ほどいてくれる?」

少女「…それはできないわ」

ブリアン「君たちが好きそうな、人間に関する情報だよ」

少女「・・・昨日、町中で見かけたわ。でも、私、どうしてか、外に出られないの・・・」

少女「いますぐ、会いに行きたいのに…」

ブリアン「・・・それなら」

試しに、言ってみることにした

ブリアン「僕の体を使えばいいんじゃない?」

250: 名無しさん@読者の声:2018/4/18(水) 17:17:50 ID:.9ImDJRFHc
新社会人おめでとうございまする(*´∀`*)
251: ◆e.A1wZTEY.:2018/4/18(水) 20:45:57 ID:18YnfYyzqU
>>250
ありがとうございます〜!!(´∀`*)
明日更新しまする!
252: ◆e.A1wZTEY.:2018/4/19(木) 22:11:36 ID:18YnfYyzqU

――昼になった頃

列車はキラサギ駅に到着した

車掌は降車すると、大きく【故障、修理点検中】と書かれた看板を立てた

車掌「・・・」

駅の周囲を見渡すが、ブリアンの姿は見当たらない

車掌「・・・使えない車掌補佐だな」

ため息をつくと、町にむかって歩き出した

253: ◆e.A1wZTEY.:2018/4/19(木) 22:12:33 ID:18YnfYyzqU

そのころ、兎兄貴の家では

兎兄貴「――ダメだダメだぁっ!腰が引けてるぞ!」 ガキィッ

兎男「ひぃっ」 バタッ

千織を守るための訓練と位置付けて、兎兄貴が兎男に対して剣の稽古をつけていた

兎兄貴「昨日の大きな黒い手を見ただろう!?車掌はおかしな術を使ってくるから、思い切って懐に飛び込む度胸をつけなきゃだめだ!」

兎男「お、おす!」

254: ◆e.A1wZTEY.:2018/4/19(木) 22:13:17 ID:18YnfYyzqU

千織「・・・はは」

苦笑いしながら眺めていると

「にゃ〜〜〜〜ご」

千織「!!」

家の外塀から聞き覚えのある声が聞こえ、目をやった

千織「ブリアンさん!」

塀の上にブリアンが立っていた

255: ◆e.A1wZTEY.:2018/4/19(木) 22:14:17 ID:18YnfYyzqU

千織(助けに来てくれたんだ・・・!!)

兎兄貴「なんだあ・・・?猫・・・?」

兎男「え、猫?どこどこ?」

すると、ブリアンは背を向けてどこかに走り出した

千織「あっ・・・!」バッ

あわてて千織が追いかける

兎兄貴「あっおい!どこ行くんだよ!!」 ダッ

兎男「あ、あれってもしかして車掌の猫じゃない・・・!?千織ちゃん、待って!!」 バッ

256: 名無しさん@読者の声:2018/4/21(土) 11:44:01 ID:iUzkpGjVKg
支援
257: ◆e.A1wZTEY.:2018/4/22(日) 19:58:38 ID:18YnfYyzqU
>>256
支援ありがとうございます!!
とても励みになります〜〜(*^。^*)
258: ◆e.A1wZTEY.:2018/4/22(日) 20:04:07 ID:18YnfYyzqU

車掌はキサラギ町にある兎男の自宅に訪れていた

車掌「――さすがにこんなバレやすいところにはいないか」

窓から家の中を眺めるが、無人のようだ

ふと、近くを歩く兎の町人を見つけ、話しかける

車掌「失礼、ちょっとよろしいですか」

町兎「はい?」

車掌「ここの家の者がどこに行ったか知りませんか?」

259: ◆e.A1wZTEY.:2018/4/22(日) 20:05:17 ID:18YnfYyzqU

町兎「兎男さんですか。さぁ・・・普段は列車で働いて、停車駅の町で寝泊まりしているらしいですからねえ」

車掌「私がその列車の車掌なのですが」

町兎「えぇっ!?これはこれは、こんな辺鄙な町へようこそ。兎男は何かしたのですか?無断欠勤とか?」

車掌「私の所有物を盗んで逃亡したので、探しています」

町兎「えええ!?そんなまさか」

どうやら兎男は、町の者たちに根回しして協力をあおいでいるわけではないらしい

車掌(馬鹿なのか、それともよほど隠れる場所に自信があるのか)

260: ◆e.A1wZTEY.:2018/4/22(日) 20:08:43 ID:18YnfYyzqU

車掌「彼の犯したことのせいで、列車を正常に稼働することができず、多くのお客様にご迷惑をかけています。兎一族は、代々列車の貨物業務にご協力いただき、私自身大変感謝しているのですが、このままでは兎一族全体に汚名をかけることになります」

町兎「ひ、ひえ」

車掌「列車はいまキサラギ駅に停車していて、今にも憤った乗客たちが町に乗り込んできそうな勢いです。それは何としても止めたいので、早急に彼を見つけなければなりません」

町兎「そ、そうですね」


261: ◆e.A1wZTEY.:2018/4/22(日) 20:10:51 ID:18YnfYyzqU

歪世界の住人はもともと「人間以外の生物」のため、知能は基本的に高くない

車掌の論術で言いくるめるのは難しくなかった

車掌「では、ご協力いただけるということでよろしいですか?兎男と少しでも交友関係があるとされる者の家を全て教えてください。他の町人の方に聞いてくださってもかまいません」

町兎「い、いますぐですか?」

車掌は静かに微笑んで見せた

車掌「今じゃなかったらいつなんですか?私の話聞いていましたか?早くどうにかしないと、列車に勤務する兎男全員を解雇します」

262: 名無しさん@読者の声:2018/4/24(火) 11:24:53 ID:A.EYkzvPoQ
楽しく読ませてもらってます!
263: ◆e.A1wZTEY.:2018/4/26(木) 22:37:49 ID:18YnfYyzqU
>>262
うおーめちゃめちゃ嬉しいです・・・!!( ;∀;)
楽しんで頂けるのがなによりの幸せ

264: ◆e.A1wZTEY.:2018/4/26(木) 22:44:59 ID:18YnfYyzqU

――ブリアンが、兎女の屋敷へ飛び込んで行くのが見えた

普段は施錠されている屋敷の扉が、この時だけは開いていた

千織「…」 ハァッ、ハァッ

千織(ここ、確か人間がいるって言っていたところ・・・!でもブリアンさんがどうして…)

兎男「千織ちゃん待ってー!」

兎兄貴「おーい!」

千織「!」

265: ◆e.A1wZTEY.:2018/4/26(木) 22:46:48 ID:18YnfYyzqU

後ろから兎男たちが走ってくる

この屋敷に勝手に入っていいのかわからないが、このままブリアンと離れるわけにはいかない

加えて、ここは恭太がいるかもしれない場所だ

千織(行かなきゃ・・・!)

千織は開いたままの扉から屋敷のなかに入った

すると、

ガタン!! ガチャッッ

千織「!」

千織の意思に関わらず、扉が勝手に締まり、施錠された

266: ◆e.A1wZTEY.:2018/4/26(木) 22:49:14 ID:18YnfYyzqU

千織「ど、どうして…」

外では、兎男と兎兄貴が入ることを許されず、立ち往生していた

兎男「あ、兄貴・・・閉まっちまったぞ」

兎兄貴「クソッ、あかねえ!」 ガチャガチャ

兎男「な、何でここに入ったんだ?兎女の差し金?」

兎兄貴「知るか!だが、こんなことできるのは屋敷主の兎女だけだろう」

兎兄貴「扉は頑丈すぎて無理だ、どこか侵入できるところを探すぞ!」

兎男「う、うん!」

267: ◆e.A1wZTEY.:2018/4/26(木) 22:51:32 ID:18YnfYyzqU

千織「・・・」

屋敷の中は薄暗く、不気味な空気が漂っていた

千織「ぶ、ブリアンさーん・・・」

千織「こ、ここにいますよね?私です、千織です・・・」

周囲を見回すが、ブリアンの姿は見当たらない

千織(も、もしかして、違う猫を見間違えちゃったのかな・・・)

おそるおそる奥へ進む

「にゃ〜」

千織「!」

268: ◆e.A1wZTEY.:2018/4/26(木) 22:53:38 ID:18YnfYyzqU

左前方の柱の陰に、ブリアンの姿が見えた

ブリアンはそのまま、ドアの隙間から一室に入った

千織「ブリアンさん・・・!」 ダッ

追いかけて、千織もその部屋に入る

――だが、部屋に入った瞬間

ガシャンッッ!!

千織「!!」

上から鉄格子の檻が降ってきて、千織を隔離した

269: 名無しさん@読者の声:2018/4/27(金) 13:43:33 ID:YGEouu4Zt6
好き!紫炎
270: 名無しさん@読者の声:2018/4/28(土) 20:29:56 ID:D8l8UUZnFg
C
271: ◆e.A1wZTEY.:2018/4/30(月) 16:58:49 ID:JKkMWsFJTY
>>269
支援ありがとうございます!
好きと言って頂けて感激です、照れます(>ω<)

>>270
支援ありがとうございます〜!
時間あれば今夜には更新しますね
272: ◆e.A1wZTEY.:2018/5/1(火) 22:29:56 ID:.QFQUZNLxc
すみません、今まさに投稿しようとしたら、PCにお茶こぼしてPC死にました
修理に出しますが、いつ直るかわからないのと、書き溜めてたぶんが死んだ可能性大でショックがやばいです
途方に暮れてますが、放置は絶対に致しませんので、待っていてくださると幸いです…
273: 名無しさん@読者の声:2018/5/2(水) 09:44:20 ID:9UKRv5vPg2
どんまい!
気長にまってます(*´∀`*)
274: ◆e.A1wZTEY.:2018/5/6(日) 21:10:26 ID:.QFQUZNLxc
>>273
ありがとうございます〜!
幸いなことに、PCが復活いたしました。データも無事です。
皆様もPCまわりでの飲食にはご注意ください;;
275: ◆e.A1wZTEY.:2018/5/6(日) 21:14:36 ID:.QFQUZNLxc

千織「え、え、え・・・!?」

檻の外には、ブリアンが微笑みながら立っている

千織「ブリアンさん、これは、ど、どういうことですか」

ブリアン「・・・」

ブリアンがゆっくり目を閉じる

すると、ふわりとブリアンの体から白いもやのようなものが離脱した

同時に、ブリアンがバタリと倒れる

千織「・・・!?」

そのもやは、徐々に人の形を形成し、髪の長い少女の姿になった

千織「あ、あなたは・・・」

少女「・・・はじめまして」

276: ◆e.A1wZTEY.:2018/5/6(日) 21:16:38 ID:.QFQUZNLxc

町兎「しゃ、車掌さん!」 バタバタ

車掌「はい」

町兎「兎男と、その友人である兎兄貴を見たという情報をもらいました」 ゼェゼェ

車掌「はい」

町兎「丁度先ほど、兎女の屋敷の前にいたそうです。おそらくまだその周辺にいるかと・・・」

車掌「その屋敷の場所は?」

町兎「は、はい!ご案内しますのでついてきてください!」


277: ◆e.A1wZTEY.:2018/5/6(日) 21:17:57 ID:.QFQUZNLxc

――兎女の屋敷周辺(裏庭)

兎兄貴「ちっ、どの窓も閉まってやがるな」

兎男「でも、どの窓もそこまで頑丈じゃなさそうだ」

兎兄貴「おっ、やっちまうってか?」

兎男「お、俺は千織ちゃんを助けるって決めたからね!方法がこれしかないんなら、俺はやるよ」

兎兄貴「いい度胸だ。お前も男らしくなってきたじゃねえか」

周囲を見渡すと、装飾用として屋敷の庭に置かれた、大きな石材を見つけた


278: ◆e.A1wZTEY.:2018/5/6(日) 21:19:27 ID:.QFQUZNLxc

兎兄貴「あれを二人で持って窓にぶちこむぞ」

兎男「う、うん!」

二人で石を持ち上げる

兎兄貴「結構重いな・・・準備はいいか?」

兎男「うん!」

兎兄貴「せーのっ!!」

ガシャーーンッッ!!!!


279: ◆e.A1wZTEY.:2018/5/6(日) 21:20:34 ID:.QFQUZNLxc

石は窓を突き破り、屋敷の中に落ちた

兎男「やった、やったぞ!」

兎兄貴「よし、中に入るぞ」

そのとき

「ご苦労さま」 グイッ

「!?」

二人は突如背後から首元の服をつかまれ、強い力で後ろへ引かれた


280: ◆e.A1wZTEY.:2018/5/6(日) 21:22:12 ID:.QFQUZNLxc

ズシャアッと音を立てて尻もちをつく

兎男「ぐえっ」

兎兄貴「な、ナニモンだぁ!?」

尻もちのまま振り向くと、

車掌「こんにちは」

冷たい表情を浮かべた車掌が立っていた


281: 名無しさん@読者の声:2018/5/11(金) 09:17:20 ID:f7tqz6Y84k
PCが無事でなにより ノC

ようやく車掌さんが追いついたw
282: ◆e.A1wZTEY.:2018/5/20(日) 19:22:20 ID:.QFQUZNLxc
>>281
ありがとうございます〜〜本当に無事でよかったです
支援も感謝いたします(*- -)(*_ _)
283: ◆e.A1wZTEY.:2018/5/20(日) 19:29:04 ID:.QFQUZNLxc

兎男「あ、あわわわ・・・」

兎兄貴「て、てめえこのやろ・・・」

車掌「あなた方の言い分を聞くつもりはありません。兎警察を呼んでおきましたので、然るべき処分を受けてください」

兎男・兄貴「・・・!?」

車掌の後ろには、10数人の兎警察が待機していた

車掌「列車業務の放棄、私物の窃盗、それに伴う列車の稼働停止」

兎男「違う!罪を犯したのはお前の方だ!」

兎男「千織ちゃんの軟禁して、働きづめにして、深夜まで・・・」

284: ◆e.A1wZTEY.:2018/5/20(日) 19:30:26 ID:.QFQUZNLxc

車掌「何か問題でも?」

兎男「な、なんだって?」

車掌「今言いましたよね、彼女は私の“物”です。それをどのように扱おうと何の問題もないと思うのですが」

兎男「こ、この野郎・・・!!」

兎兄貴「とんでもねえクソ野郎だな!」

二人が車掌に殴りかかろうとしたところを、兎警察が取り押さえる

兎男「くそっ、はなせ、はなせ・・・!!」

285: ◆e.A1wZTEY.:2018/5/20(日) 19:33:26 ID:.QFQUZNLxc

兎兄貴「やい警察ども、町に住んでる俺らよりこの車掌の言葉を信じるってのか!?」

抵抗するが、大人数の警察からは逃れられない

二人を引きずりながら、連行していく

ぎゃーぎゃー喚く声が聞こえるが、雑音にしか聞こえなかった

車掌(・・・あいつらは窓を壊してまで、この屋敷へ入ろうとしていた)

車掌(千織はここにいると考えていいだろう)

兎男たちが壊した窓に手をかけると、車掌は屋敷の中へ入った

286: ◆e.A1wZTEY.:2018/5/20(日) 19:36:29 ID:.QFQUZNLxc

―――

千織「あ、あなたは、誰、ですか・・・?」

少女「・・・人間よ。あなたと同じ」

千織「・・・」

確かに、見た目は完全に人間だ

だが、先ほどまでまるで幽霊のようにブリアンに乗り移っていた

千織「ブリアンさんに何をしたんですか?」

少女「猫ちゃんのこと?自分で言ったのよ、僕の体を使っていいって」

千織「・・・?」

287: ◆e.A1wZTEY.:2018/5/20(日) 19:39:01 ID:.QFQUZNLxc

少女「私が人間のお友達がほしいって言ったから、協力してくれたの」

千織(ブリアンさんが・・・?もしかして、何か考えがあって・・・)

しかし、ブリアンは気絶しているので尋ねることができない

千織「ブリアンさんの体に入って操ってましたよね。その時点で、あなたは人間ではないんじゃ・・・」

少女「・・・」

少女「・・・人間よ」

ゆっくりと、檻の中の千織へ歩み寄ってきた

少女「あなたならわかるでしょう・・・?たった一人で、この世界に迷い込んでしまった気持ち・・・」

288: 名無しさん@読者の声:2018/5/22(火) 12:40:42 ID:Z.V51.JqXI
支援〜
289: 名無しさん@読者の声:2018/5/27(日) 21:23:01 ID:qQeRoyBMoc
4円
290: ◆e.A1wZTEY.:2018/5/29(火) 21:27:29 ID:.QFQUZNLxc
>>288 >>299
うおおお支援ありがとうございます・・・!!(´;ω;`)
明日必ず更新しますのでもうしばしお待ちくださいませ
1週間に2回くらい更新できるようになりたい
291: ◆e.A1wZTEY.:2018/5/30(水) 21:09:45 ID:.QFQUZNLxc

千織「・・・!」

少女「ずっと怖かった・・・ずっと寂しかった・・・ずっと帰りたかった・・・」

千織「あなたは・・・」

少女「でも、限界がきてしまったの・・・それで、少し、身体を壊してしまったの」

少女「あなたの身体・・・うらやましいな・・・」

そう言って、少女は両手を千織の頬へ伸ばした


292: ◆e.A1wZTEY.:2018/5/30(水) 21:11:03 ID:.QFQUZNLxc

次の瞬間、

「そこまで」

「!」

聞き覚えのある声と同時に、少女の喉元に剣先がつきつけられる

千織「車掌さん・・・!」

車掌が静かに佇み、少女を制止していた

少女「・・・」

少女「・・・誰よ、あんた・・・」

293: ◆e.A1wZTEY.:2018/5/30(水) 21:12:12 ID:.QFQUZNLxc

車掌「この人間の主です。申し訳ありませんが、私の許可なく彼女に手を出すのはやめて頂きたい」

少女「主・・・?あんたが・・・?」

車掌「はい」

少女「証拠は?」

車掌「千織。言いなさい」

千織「は、はいっ」

促され、あわてて口を開く

294: ◆e.A1wZTEY.:2018/5/30(水) 21:13:16 ID:.QFQUZNLxc

千織「わっ、私の主は、車掌さん、です」

車掌「もう少しまともに言えないのか?」

千織「す、すみません・・・!わ、私は車掌さんに買われた身です。ので、列車で働いてます」

車掌が来てくれた驚きと嬉しさでパニックになっているため、うまく言えない

車掌「・・・」 ハァ

車掌「・・・残念な出来ですが、お聞きの通り、彼女の所有権は私にあります」

少女「・・・」

295: ◆e.A1wZTEY.:2018/5/30(水) 21:14:39 ID:.QFQUZNLxc

少女「・・・では・・・」

少女「・・・彼女を買うと、仰って、います・・・」

千織「!?」

車掌「・・・へえ」

車掌「それは誰が言ってるんですか?あなたですか?」

少女「・・・」

様子が変わり、立ったままうつむいて喋らなくなった

296: ◆e.A1wZTEY.:2018/5/30(水) 21:17:50 ID:.QFQUZNLxc

車掌「・・・ちっ」

舌打ちすると、車掌は気絶しているブリアンに歩み寄り、身体をつかんでぶんぶんと振った

千織「わっ、あの、ちょっとっ」

車掌「いつまで寝てる、さっさと起きて状況を説明しろ」 ブンブン

ブリアン「・・・んげ、んげげっげえ」

うめき声とともに、ブリアンが目を覚ました

千織「ブリアンさん!大丈夫ですか!?」

ブリアン「も、もう少し丁重に扱ってよね・・・動物愛護に反するでしょ・・・」

297: 名無しさん@読者の声:2018/6/4(月) 10:45:41 ID:DYNeIVy1cE
楽しく読ませて貰ってます! ありがとう(>∀<)/
298: ◆e.A1wZTEY.:2018/6/4(月) 19:13:43 ID:DapDYfJjKw
>>297
うおおおこちらこそお読みいただきありがとうございます・・・!(^○^)
感謝感激雨あられ;;活力になります
299: ◆e.A1wZTEY.:2018/6/4(月) 19:15:28 ID:DapDYfJjKw

車掌「何のためにお前に千織の後をつかせたと思ってるんだ?お前が情報よこさないから自力でここまで来たんだぞ」

ブリアン「捕まってたんだからしょうがないでしょ・・・でも、何となくこいつの正体がわかったよ」

千織「!」

車掌「ほう」

ブリアン「今目の前にいるこの少女は、他人に乗り移ることができる。つまり、今実体をもっていない」

ブリアン「だがこいつはしつこく自分のことを人間だと主張してる。これらのことを辻褄合わせるためには・・・」

千織「人間だったけど、死んでしまった・・・?」

300: ◆e.A1wZTEY.:2018/6/4(月) 19:16:52 ID:DapDYfJjKw

千織「じゃあ幽霊ってことですか!?」

車掌「違う」

車掌「生きている者がこの世界で死んでも、何も残りはしない。あるのは“無”だけだ」

千織「??」

千織「わ、訳がわかりません・・・」

ブリアン「たぶん、この女はまだ生きてる。けど、魂だけ身体から抜き取られて操られてるんだ」

千織「!」

車掌「・・・なるほど」

301: ◆e.A1wZTEY.:2018/6/4(月) 19:19:16 ID:DapDYfJjKw

車掌「この屋敷の主・・・兎女といったか。それが、裏にいるようだな」

少女「ばれちゃった?」

俯いて黙っていた少女が不意に顔を上げ、不気味に笑った

少女「この子、人間界に迷い込んできたのを大金はたいて捕まえたの」

少女「でも、1週間くらいで自分から死のうとしちゃって。ほんと困ったわ」

車掌「・・・喋っているのは兎女か」

少女「ぎりぎり命は助けたけど、身体の方が使えなくなっちゃってねえ。でもだからって捨てるのはもったいないし、生霊化させて使うことにしたの」

302: ◆e.A1wZTEY.:2018/6/4(月) 19:21:25 ID:DapDYfJjKw

千織「い、いきりょう・・・」

少女はゆっくりと千織へ視線を向けた

少女「わかるわよね、人間の生きた魂はこの世界で本当に貴重なの。だからあなたとも会えてとっても嬉しいわ」

少女「あなた、私が買ってあげる。そろそろ生きた人間の肉体がほしいわ」

千織「こっ・・・この女の子の身体はどこにいったんですか!?まだ生きているなら・・・!」

少女「そんなこと言う必要ある?」

303: ◆e.A1wZTEY.:2018/6/4(月) 19:23:28 ID:DapDYfJjKw

今度は、車掌へと目を向けた

少女「交渉しましょう。あなたの言い値を払うわ。だから、この人間をちょうだい」

車掌「・・・」

少女「本当にいくらでもいいわよ?私、お金には不自由してないの」

車掌「・・・あいにく、私も金には不自由していない」

少女「あら・・・」

少女「それもそうよね、人間を所有しているくらいだものね」

少女「それならあなたは何が欲しいのかしら?」

304: 名無しさん@読者の声:2018/6/7(木) 18:17:03 ID:qglqJZU.8Y
がんばってください C
305: ◆e.A1wZTEY.:2018/6/8(金) 20:39:09 ID:DapDYfJjKw
>>304
支援ありがとうございます!
がんばりますぞい(*^▽^*)
306: ◆e.A1wZTEY.:2018/6/8(金) 20:44:51 ID:DapDYfJjKw

車掌「お前に私が欲しいものは用意できない」

少女「・・・そう。せっかく良い取引をもちかけているのに、酷い態度ね」

車掌「取引はしない。代わりに、私はお前が所有する人間に手を出さない、お前も私が所有する人間に手を出さない。それでいいだろう」

千織「ま・・・待ってください!」

千織「車掌さん、私・・・私、この人間の女の子が生きているなら、助けてあげてほしいです・・・!!」

ブリアン「ぶっ」

車掌「・・・」

307: ◆e.A1wZTEY.:2018/6/8(金) 20:46:30 ID:DapDYfJjKw

大きくため息をつく

車掌「・・・いい加減にしろ。お前のそれは一体何回目だ?」

千織「でも、でも・・・!このまま見過ごすことなんてできません・・・!」

ブリアン「千織、自分の状況忘れてない?君、いま兎女に捕まって檻の中なんだよ?」

千織「そ、それは・・・そうですけど」

少女「・・・あなた、面白いわね。それならこうしない?」

少女「お互いの人間を交換するの。私が今使ってるこの少女をあげる。その代わり、その千織とかいう人間を私にちょうだい」

308: ◆e.A1wZTEY.:2018/6/8(金) 20:48:04 ID:DapDYfJjKw

千織「え・・・」

少女「あなた、助けたいって言ったわよね?もしかして自分は何もしないで済むと思ってた?世の中そんなに甘くないわよ」

車掌「いいだろう」

千織「・・・え?」

ブリアン「は?」

車掌の言葉に、耳を疑う


309: ◆e.A1wZTEY.:2018/6/8(金) 20:50:52 ID:DapDYfJjKw

車掌「交換してやる。こちらの人間を渡すから、その生霊になってる娘を渡せ」

千織「しゃ、車掌さ…」

車掌「人間なんて、どれも同じだ。私にこだわりはない」

ブリアン「車掌!何言ってんの!」

少女「・・・その言葉、偽りないわね」

少女「嘘をつかれたら困るから、契約書を書いてもらうわ」

ふわりと1枚の紙とペンが宙に舞い、車掌の前に落ちる

310: ◆e.A1wZTEY.:2018/6/8(金) 20:53:28 ID:DapDYfJjKw

少女「その紙には呪いがかかっているの。契約を破った者は、この世界での死を迎える」

車掌「なるほどな」

何のためらいもなく、車掌はサインする

車掌「――契約完了だ」

次の瞬間、少女がばたりと倒れた

そして―――

ガタン!!

千織「ひいいぃっ!?」

床に巨大な穴が開き、千織が入った檻が落ちていった

311: 名無しさん@読者の声:2018/6/13(水) 15:05:31 ID:jMFJ/QEKJY
再び車掌さんと離れ離れに(>_<)
支援〜。
312: ◆e.A1wZTEY.:2018/6/18(月) 21:19:28 ID:DapDYfJjKw
>>311
支援ありがとうございます〜!!
明日更新しますのでしばしお待ちくださいませ
313: ◆e.A1wZTEY.:2018/6/19(火) 21:54:13 ID:DapDYfJjKw

ブリアン「千織!!」

あっという間に、千織の姿が暗闇に消えた

ブリアン「車掌、どういうつもりなの!」

ブリアン「千織と死にぞこないの人間の娘が同価値なわけないだろう!?」

ブリアン「いったい何を考えて――」

車掌「静かにしろ」

ため息をつく

314: ◆e.A1wZTEY.:2018/6/19(火) 21:55:24 ID:DapDYfJjKw

車掌「経験上、千織はああなると自分の望みを譲らない。私が何を言おうと、ひたすら頭を下げて頼んでくる」

車掌「それは時間の無駄だと思っただけだ」

ブリアン「ああなると・・・?」

車掌「私に頼みごとをするときの態度だ」

ブリアン「・・・」

確かに、自分を買ってくれと頼んだとき、魚人から恭太を助けてくれと頼んだとき、この世界で恭太を探させてくれと頼んだとき、車掌がいくら拒否しても千織は引き下がらなかった

315: ◆e.A1wZTEY.:2018/6/19(火) 21:59:44 ID:DapDYfJjKw

ブリアン「・・・じゃあ、どうせ千織はこの少女を助けろと言って言うことを聞かなくなるから、さっさと助けてやることにしたってわけ?」

ブリアン「それでもいいけど、代わりに千織を差し出すのは納得いかない」

車掌「少しは頭を使え」

車掌「兎女は、千織を手に入れたいと思っている。そして、千織はいま檻の中に捕らわれていて、私たちの手から離れている。仮に何らかの方法で檻から出せても、兎女が操るこの屋敷から無事に脱出できる保証はない。こちらの方が不利な状況だ」

車掌「この不利な状況を打開するために必要なことは何だと思う」

ブリアン「・・・」

考えて、つぶやく

ブリアン「・・・・兎女を・・・見つけ出して、シメる」

車掌「そういうことだ」

316: ◆e.A1wZTEY.:2018/6/19(火) 22:01:16 ID:DapDYfJjKw

車掌は倒れている少女に近づき、身体に触れようとした

――が、手はすうっと身体を透き抜けた

車掌「・・・生霊というのは確からしいな」

車掌「身体はどうなると言っていた?」

ブリアン「し、知らないけど・・・“身体は使えなくなった”って言ってたよね」

車掌「生霊である以上、身体は死んではいないはずだ。おそらくどこかにある」

ブリアン「どこかにあるって・・・」


317: ◆e.A1wZTEY.:2018/6/19(火) 22:03:27 ID:DapDYfJjKw

車掌「おい、起きろ」

少女に呼びかける

車掌「起きろと言っている」

語気を強めると、少女はぴくりと眉を動かした

ブリアン「あ・・・」

少女「・・・わた・・・し」

少女が目を開けるやいなや、車掌は少女の目の前に剣先をつきつけた

少女「! な、なにを・・・」

車掌「・・・“それ以上死にたくなければ”、私の命令を聞け」

318: 名無しさん@読者の声:2018/6/22(金) 09:22:29 ID:kbTChomcX.
待ってました(>∀<)/
319: ◆e.A1wZTEY.:2018/6/24(日) 16:56:19 ID:DapDYfJjKw
>>318
お待ちいただきありがとうございます!
とても励みになります(´`*)
320: ◆e.A1wZTEY.:2018/6/24(日) 16:59:49 ID:DapDYfJjKw

千織「――う・・・」

千織は大きなベッドの上で目を覚ました

千織「・・・」

千織「・・・」 ハッ

すぐに状況を思い出して、身体を起こした

――が、

ガキッッ!!

千織「え・・・!?」

手には手錠がはめられ、ベッドの柱と鎖で繋がれており、身動きがとれなくなっていた

321: ◆e.A1wZTEY.:2018/6/24(日) 17:01:30 ID:DapDYfJjKw

危機的状況に青ざめる

『――こんにちは』

不意に背後から声が聞こえ、振り向く

そこには、人型の女兎が立っていた

千織「・・・あなたが、兎女・・・?」

兎女「そうよ。今日からあなたの主人」

千織「っ・・・」

間違いなく、車掌は人間交換の契約に同意し、サインしていた

自分は兎女の奴隷となってしまったのだ

322: ◆e.A1wZTEY.:2018/6/24(日) 17:04:43 ID:DapDYfJjKw

千織「しゃ、車掌さんは・・・」

兎女「もしかして、あの車掌が助けに来てくれることを期待してる?残念ながら、あの契約書は本物よ」

兎女「契約を破った瞬間、契約書に封印された呪念が解き放たれ、違反者のはらわたを食らう」

千織「は、はらわた・・・!?」

兎女「この世界は死者の世界だって知ってる?」

兎女「死者の世界の者が再び死を迎えるとね、全ての世界から消えていなくなるの。人間界にも、歪世界にも、他の異世界にも、その魂は存在しなくなる」

兎女「そんなの嫌よね。せっかく二度目の生を与えられたこの世界で、無駄死になんてしたくない・・・」

兎女「だから車掌は契約を破らないわ。わかるわよね?」

323: ◆e.A1wZTEY.:2018/6/24(日) 17:07:17 ID:DapDYfJjKw

少女「――しにたくないっ!」

少女「私は生きて、生きて、生きて・・・生きてもとの世界に帰るの・・・!」

車掌「・・・」 ハァ

車掌「自分がいまどういう状態なのかすらわかっていないようだな」

少女「え?」

すると、車掌は剣を振り上げ、少女の顔に突き刺した

少女「ひいっ!!!」

だが剣は少女の顔を通り抜け、床に刺さった

324: ◆e.A1wZTEY.:2018/6/24(日) 17:13:42 ID:DapDYfJjKw

少女「・・・?」

車掌「お前は今身体を持っていない。つまり、生きてはいないのだ」

少女「え・・・!?え、え・・・!?!?」

車掌「だが、死んでもいない。人間界で言う“幽体離脱”のような状態だ」

車掌「しかしこのままの状態を放置すると、いずれ魂が体から完全に離脱し、自動的に死ぬ」

少女「・・・!」

車掌「助ける方法はただ1つ。兎女からお前の身体を取り戻すことだ」

少女「ど、ど、どうすれば・・・」

車掌「先ほど私が言ったな?死にたくなければ、私の命令を聞けと」

コクコクと少女がうなづく

車掌「この屋敷に隠れている兎女の場所へ案内しろ。あとは何とかしてやる」

325: 名無しさん@読者の声:2018/6/27(水) 17:43:29 ID:fXmvYlRTI6
C
326: 名無しさん@読者の声:2018/7/3(火) 11:28:32 ID:N6n8ZELEgc
支援〜
327: ◆e.A1wZTEY.:2018/7/3(火) 22:39:47 ID:2devQBjAhY
>>325>>326
支援ありがとうございます〜!
明日更新しますのでしばしお待ちを(^○^)
328: ◆e.A1wZTEY.:2018/7/4(水) 20:02:28 ID:2devQBjAhY

少女のあとについて、車掌とブリアンは長い階段を下りていた

走りながら、思案する

ブリアン(相変わらず車掌にとってメリットは何もないけど、千織を見捨てるっていう選択肢は考えてないみたいで良かった)

ブリアン(ま、ここまで精力消費して助けてきたんだから、無駄死にさせないようにするのは当然か)

ブリアン(でも、何か勝算があるのか?ここには列車がないから、仮に精力を操ろうとしても限界があるぞ)

ブリアン「・・・車掌」

車掌「なんだ」

329: ◆e.A1wZTEY.:2018/7/4(水) 20:03:23 ID:2devQBjAhY

ブリアン「先に言っておくけど、馬鹿みたいな精力の使い方はしないでよ。車掌の精力は、列車を動かすためにあるんだ。寿命を減らさないように頼むよ」

車掌「千織を助けてほしいんじゃないのか?」

ブリアン「千織を助けることで今後得られる精力と、千織を助けるために消費する精力。この精力の収支がマイナスにならないようにしてって言ってんの」

車掌「・・・」 ハァ

車掌「安心しろ。今回はプラスになる」


330: ◆e.A1wZTEY.:2018/7/4(水) 20:05:35 ID:2devQBjAhY

千織「わ、私を、どうするつもりですか?」

兎女「今まで使ってた少女の代わりをしてくれればいいわ。私の下僕となって、身の回りの世話をするの」

兎女「ちっとも難しくないでしょう?化け物に捕らわれて食事にされるよりずっといいわ」

千織「で、でも・・・!あの女の子は、生霊になってしまっていたのに」

兎女「自分で死のうとしたのよ。馬鹿な子よね、せっかくの生身の身体を自分でぼろぼろにするなんて」

兎女「あなたは賢そうだし、そんなことしないでね?」


331: ◆e.A1wZTEY.:2018/7/4(水) 20:07:07 ID:2devQBjAhY

兎女「仮に死のうとしても、同じように生霊化させて使うだけ。生身より不便だし、私もあなたにもメリットはないわ」

千織「・・・生霊ってことは、身体は完全には死んでないんですよね?」

千織「女の子の身体は今どこにあるんですか!?」

兎女「・・・あ」

兎女「すっかり忘れていたわあ。交換契約したんだから、あの車掌に死にぞこないの身体を渡さなきゃだったかしら」


332: ◆e.A1wZTEY.:2018/7/4(水) 20:08:38 ID:2devQBjAhY

うーん、と考えるそぶりをしたあと、にこりと笑った

兎女「・・・ま、面倒だしいっか♪」

千織「ちょ・・・!」

「――わざわざ取りに来てやったが」

次の瞬間

ガタンと扉が開き、車掌が部屋に入ってきた

千織「車掌さん!」

後からブリアンと少女も入ってくる

333: ◆e.A1wZTEY.:2018/7/4(水) 20:09:51 ID:2devQBjAhY

兎女「・・・あらあら」

兎女「どうしてこの地下の部屋にたどり着けたのかしら・・・と思ったら、そういうことね」

少女「ひっ」

兎女に睨まれた少女が車掌の後ろに隠れる

兎女「その子の身体を取りに来たのよね?ごめんなさいねえ、私ったらうっかりしちゃって」

兎女「すぐ渡すから、そしたらお引き取り願える?」

車掌「・・・ああ」

334: ◆e.A1wZTEY.:2018/7/4(水) 20:12:01 ID:2devQBjAhY

兎女「物分かりが良くて助かるわ」 ニッコリ

兎女「その子の身体は、ここの右隣の部屋の棺桶に入ってるわ。鍵をあけといてあげるから、勝手にもっていって」

少女「!」

車掌「・・・ブリアン」

ブリアン「はいはい」

確認のためにブリアンが隣の部屋に走っていく

ブリアン「――あったよ〜」

1分後、隣の部屋からブリアンの声が聞こえた

335: 名無しさん@読者の声:2018/7/12(木) 09:35:03 ID:dYZi6Pf3ok
更新きてた〜(*´∀`*)ノC
336: ◆e.A1wZTEY.:2018/7/17(火) 01:03:08 ID:2devQBjAhY
>>335
支援感謝です〜!
活力になってます(*´ω`)
337: ◆e.A1wZTEY.:2018/7/17(火) 01:09:54 ID:2devQBjAhY

兎女「はい。じゃ、そういうことで」

兎女「もう用はないわよね。サヨウナラ」

手を振り、帰るように促す

車掌「…悪いが」

車掌「この契約は破棄する」

千織「!!」

兎女「・・・は?」

338: ◆e.A1wZTEY.:2018/7/17(火) 01:12:08 ID:2devQBjAhY

車掌「この少女も、千織も、私の所有とさせてもらう」

兎女「な、何を言ってるのかしら?あなた契約書にサインしたわよね」

車掌「した。そのうえで、破棄すると言っている」

兎女「あ・・・あははは!馬鹿なのかしら!?この契約には呪いがかかってると言ったはずよ!」

兎女「破った者は呪いによって死ぬ!信じてないの?」

車掌「死だったら自分の心配をしたらどうだ」

次の瞬間

車掌は剣を抜き、一瞬で兎女へと間合いを詰めた

339: ◆e.A1wZTEY.:2018/7/17(火) 01:14:56 ID:2devQBjAhY

兎女「!!」

ガタン!!

兎女が座っていた椅子が勢いよく倒れる

車掌が兎女を床に倒し、左手で首をおさえ、右手で剣を突き付けていた

千織(ぜ、全然見えなかった・・・!)

兎女「う、うぐぐぐ・・・!」

車掌「・・・ヒソヒソと隠れ住んでいるだけあって、ひ弱なようだな」

車掌「生きて人間2人を解放するか、死んで解放するか、好きな方を選べ」

340: ◆e.A1wZTEY.:2018/7/17(火) 01:17:34 ID:2devQBjAhY

兎女「ふ・・・ふふ。どちらを選んでも、あなたは死ぬことになるわよ?契約違反だもの」

兎女「選択する必要なんてないわ。今の発言で契約違反は明確的・・・」

兎女がにっこりと笑う

兎女「さぁ!呪いの裁きを受けなさい!!」

手を振ると、契約書がヒラリと宙を舞った

そして――

ドギュンッッ

どす黒い物体が飛び出した

341: ◆e.A1wZTEY.:2018/7/17(火) 01:21:07 ID:2devQBjAhY

千織「!!」

その物体は部屋を一周すると、車掌に向かって一直線に飛んだ

千織「車掌さん!!」

兎女「死になさい!」

物体は鋭く形態を変化させ、車掌の背後から腹を貫通した

千織「ひっ・・・」

思わず目をつぶる

ブリアン「腹に入ったのか・・・」

車掌の血肉をまとった物体が浮遊する

兎女「ふふふふふ。はらわたを食われる感覚はいかがかしら?」

342: 名無しさん@読者の声:2018/7/20(金) 09:15:39 ID:N6n8ZELEgc
支援!
343: ◆e.A1wZTEY.:2018/7/24(火) 20:41:49 ID:2devQBjAhY
>>342
支援感謝いたします〜!!
344: ◆e.A1wZTEY.:2018/7/24(火) 20:51:47 ID:2devQBjAhY

車掌は俯き、表情はみえない

相変わらず自分を押さえつけ、剣をつきつけているが、これを維持する力はないはずだ

兎女「馬鹿な男ね」

車掌をどかそうと、手足に力をいれたとき――

車掌「・・・悪いな」

兎女「!!!」

車掌は目を開き、勢いよく剣を兎女の胸に突き刺した

345: ◆e.A1wZTEY.:2018/7/24(火) 20:53:02 ID:2devQBjAhY

兎女「あっあぐっ・・・・」

深く突き刺さった剣からは、逃れることができない

兎女「な、な、・・・なぜ、・・・」

もがき、車掌に向かって手をのばす

兎女「あ、あぐ、あぐ・・・」

兎女「く、くそ・・・くそ・・・どうして・・・、」

車掌「・・・楽にしてやろうか」


346: ◆e.A1wZTEY.:2018/7/24(火) 20:54:49 ID:2devQBjAhY

ズボッッ

車掌は腕に力を入れると、兎女に突き刺さった剣を引き抜いた

兎女「ひぎっ・・・」

千織「きゃっ・・・」

千織が思わず目をつむる

車掌は引き抜いた剣をそのまま、再び兎女の胸に振り下ろした


347: ◆e.A1wZTEY.:2018/7/24(火) 20:57:38 ID:2devQBjAhY

ブリアン「――お疲れさま」

返り血をぬぐう車掌に近づく

ブリアン「最初からわかってたの?“呪いの正体が精力”だって」

千織「え・・・!?精力・・・!?」

車掌「この世界で呪いなどという都合の良い使い方ができるものは、精力しか思い浮かばなかった。それだけだ」

ブリアン「兎女は車掌と同じ精力を与えられた者だったってこと?」

車掌「いや、違うと思う。あの女自体からは精力は感じなかった。金はあるようだから、どこかから精力を購入して形を変えさせたんだろう」

348: ◆e.A1wZTEY.:2018/7/24(火) 20:59:24 ID:2devQBjAhY

千織「え、あの、ちょっと待ってください」

千織「車掌さんが無事なのは、あの黒い物体の正体が精力だったからってことですか?」

ブリアン「そうだよ」

ブリアン「僕も最初は気づかなかったけど。呪いは車掌を喰おうとして腹に入ったけど、逆に車掌に喰われちゃったって感じだよね」

千織「そ、そういうことだったんですか・・・」

千織「良かった、車掌さんが無事で・・・」 ウッ

車掌「・・・」

349: 名無しさん@読者の声:2018/7/29(日) 16:41:14 ID:cJYZ8iRJJk
壁|´∀`)ノC
車掌さんが無事でなにより
350: ◆e.A1wZTEY.:2018/8/1(水) 23:32:21 ID:ont54cCv1I
>>349
壁から支援ありがとうございます〜!かわいい(´∀`*)
やや多忙のため少し少ないかもしれませんが更新します

351: ◆e.A1wZTEY.:2018/8/1(水) 23:37:08 ID:ont54cCv1I

千織に繋がれた鎖をはずす

ブリアン「・・・ところで」

ブリアン「少女の身体だけど、だいぶ傷んでるよ。兎女の力?かなんかで、腐らずに保存はしてあるけど」

少女「・・・!!」

車掌「見せてみろ」

隣の部屋にいくと、棺桶に少女の身体が安置されていた

しばしそれを眺めると、車掌は小さく息をついて少女をみた

車掌「どうだ?自分の身体と対面した気分は」

352: ◆e.A1wZTEY.:2018/8/1(水) 23:38:17 ID:ont54cCv1I

少女「・・・わ、私・・・本当に生霊だったんですね・・・」

呆然としており、やはりショックは大きいようだ

千織「か、身体に魂を戻すことはできないんですか?」

車掌「できるなら兎女がやっているだろう。身体からは辛うじて精力が感じ取れるが、おそらく魂が入っても動かすことはできない」

少女「そ、そんな・・・!」

少女「じゃあ、私はどうすれば!どうすればいいんですか・・・!?」

車掌「兎女は、お前が自分で死のうとして身体が使えなくなったと言っていた。自業自得だろう」

353: ◆e.A1wZTEY.:2018/8/1(水) 23:39:18 ID:ont54cCv1I

千織「車掌さん!」

少女「な、何とかしてくれるって、言ってたじゃないですか!」

車掌「兎女から身体を取り戻すという意味で、だ。取り戻したあと蘇生できるか否かは、身体の状態を見なければ判断できない」

少女「・・・!!」

少女「うっ、ううっ・・・」

少女が膝をつき、泣き始める

ブリアン「・・・あーあ」

354: ◆e.A1wZTEY.:2018/8/1(水) 23:40:44 ID:ont54cCv1I

ブリアン「どうすんのこの子。僕は千織以外の人間を面倒見る気はないよ」

車掌「・・・」

ブリアン「いっそボロボロの身体ごと列車の燃料にしちゃったら?少しは精力の足しになるでしょ」

千織「ぶ、ブリアンさん、何を言って・・・」

車掌「・・・こんな活きの悪い精力を欲するほど困ってはいない」

車掌「おい、お前」

少女「は、はい・・・」 ヒック

車掌「人間界での自分をまだ覚えているか?故郷を覚えているなら、魂だけでも家族の元へ戻して弔ってやってもいい」

少女「!!」

355: ◆e.A1wZTEY.:2018/8/1(水) 23:42:27 ID:ont54cCv1I

千織「車掌さん・・・!」 パアア

ブリアン「ちょ、ちょっと待ってよ!?」

ブリアン「魂だけ戻すってどうするつもり!?精力を消費するようなことは――」

車掌「安心しろ」

ブリアンの言葉を遮る

車掌「魂を列車で凍結保存する。千織が人間界に帰るタイミングで適当な物に憑依させて、千織に持ち帰らせる。あとは、千織が人間界でこの少女の家族を探し出して渡せばいい」

千織「・・・!」

千織「わ、私やります!やらせてください!!」

356: 名無しさん@読者の声:2018/8/2(木) 19:06:02 ID:SMN2WuISc6
むりはせず C
357: 名無しさん@読者の声:2018/8/6(月) 19:46:22 ID:v77Q6o0Bws
車掌さんいい人支援
358: ◆e.A1wZTEY.:2018/8/9(木) 22:07:29 ID:ont54cCv1I
>>356
支援ありがとうございます!今日ちょっとひと段落したので、ちょっと更新頻度増やしたいと目論んでますw

>>357
支援ありがとうございます!(*´∀`)つ車掌
359: ◆e.A1wZTEY.:2018/8/9(木) 22:10:11 ID:ont54cCv1I

ブリアン「何で千織を帰す前提なんだよ!僕はそこ納得してない!」

車掌「うるさいな。私が買ったのだから私が決める」

少女「魂を凍結保存って・・・そんなことできるんですか?」

車掌「魂は精力の塊だからな。私の専門分野だ。生霊のままだと管理が難しいし、何かに憑依させたとしてもそれが壊れたら今度は死ぬ可能性もある。凍結して安全なところに保管しておくのが良いだろう」

車掌「それ以上の贅沢は叶えてやれない。理解してほしい」

360: ◆e.A1wZTEY.:2018/8/9(木) 22:11:34 ID:ont54cCv1I

少女「…いえ・・・」

少女はぽろぽろと涙をこぼし始める

少女「それだけでもう・・・十分です。この世界に来て私のこと、大事にしてもらったの、初めてで・・・」

少女「嬉しいです・・・ありがとう、ございます・・・」

千織「良かった・・・良かったね」 ウルウル

ブリアン「・・・」 プイ


361: ◆e.A1wZTEY.:2018/8/9(木) 22:13:16 ID:ont54cCv1I
千織「少女さんは、名前とか、覚えてないんですか?あと、この世界に来てしまったきっかけとか」

少女「名前は・・・覚えてます。私の名前は、笠木晴香」

千織「かさきはるか・・・」

少女「でも、どうしてここに来てしまったのか・・・ 学校帰り、気づいたら気を失ってて、」

少女「目が覚めたら暗いトンネルの中だった。そこから必死に歩いたけど、迷子になって、そしたら化け物に捕まって、奴隷にされて・・・」

少女「それからは、もう・・・」 ウウッ

千織「ご、ごめんね、辛いこと思い出させて。教えてくれてありがとう」

千織「私が必ずご家族のところに帰してあげるから」

少女「ありがとう・・・」

362: ◆e.A1wZTEY.:2018/8/9(木) 22:30:05 ID:ont54cCv1I

ブリアン「・・・そういえば、キサラギ駅は人間界との時空が一致しやすいって聞いたことあるよね」

千織「どういうことですか?」

車掌「異世界間の空間に偶発的な繋がりができるということだ。人間が歪世界に入ったとき、キサラギ駅に迷い込むことが多い」

車掌「少女がキサラギ町で奴隷にされたのも、それが原因だろう」

千織「そ、そうなんですか!?じゃあ、私が歪世界に来たとき、列車はキサラギ駅に停まっていたんですか?」

車掌「いや、そんなことはなかった。お前が迷い込んだのは別の原因だと思う」

千織「べ、別の・・・難しいですね・・・」

363: ◆e.A1wZTEY.:2018/8/9(木) 22:32:19 ID:ont54cCv1I

車掌「――話を戻すが」

少女の方へ向き直る

車掌「おそらく、生霊のままではお前はこの屋敷から出ることはできない。肉体から一定距離離れることができないからな」

少女「はい」

車掌「肉体は持っていけない。よって、ここで凍結処理する」

少女「・・・はい」

車掌が少女に手をかざす

364: ◆e.A1wZTEY.:2018/8/9(木) 22:35:36 ID:ont54cCv1I

すると、すうっと少女の周りが薄青色の光につつまれた

少女の身体が次第に消えていき、1つの球体になる

車掌は精力で透明な箱を作り出すと、その中に魂を入れた

千織「・・・」

千織「・・・良かった」

ほっと安堵する

千織「車掌さん。私も彼女も、助けて下さって本当にありがとうございます」 ペコリ

車掌「・・・」 ハァ

車掌「さっさと屋敷を出て、列車に戻るぞ」

365: ◆e.A1wZTEY.:2018/8/9(木) 22:43:09 ID:ont54cCv1I
お気づきの方もいらっしゃったと思いますが、モチーフにさせていただきました
「きさらぎ駅」http://llike.net/2ch/fear/kisaragi.htm
※物語上の関連性はありません
366: 名無しさん@読者の声:2018/8/12(日) 09:30:14 ID:n6L.IjToRA
懐かしいですね、きらさぎ駅(*´∀`*)
367: ◆e.A1wZTEY.:2018/8/18(土) 05:24:42 ID:36uvoWkwM.
>>366
懐かしいですよね
怖いんですけど、不思議な異世界感が忘れられない話です

更新遅れてすみません;
今週中に書く予定だったんですが、急な予定が入ってしまったので
日曜か、来週頭くらいに更新します
368: 名無しさん@読者の声:2018/8/20(月) 10:43:47 ID:n6L.IjToRA
ふぁいと! 支援
369: ◆e.A1wZTEY.:2018/8/21(火) 20:52:22 ID:36uvoWkwM.
>>368
ありがとうございます!感謝です(´∀`*)
370: ◆e.A1wZTEY.:2018/8/21(火) 20:53:13 ID:36uvoWkwM.

――その時だった

ガタンと音を立て、勢いよく部屋の扉が開いた

「やっと見つけたぞおっっ!!!!」

「!?」

見ると、息を切らした兎男と兎兄貴が立っていた

兎男「千織ちゃん!待たせてごめんね!!」

兎兄貴「てめえ、さっきはよくも嵌めやがったな!今度は許さねえぞ!!」

371: ◆e.A1wZTEY.:2018/8/21(火) 20:54:33 ID:36uvoWkwM.

千織「う、兎男さんたち!?」

ブリアン「うわーこのタイミングでめんどいの来たー」

ブリアン「今まで何してたのこいつら」

車掌「兎警察に引き渡したはずだが・・・」

兎兄貴「あんなひ弱な連中に負けるはずねえだろ!!」

兎男「ち、千織ちゃんのために頑張って逃げてきたんだ!」

千織「兎男さん・・・」

372: ◆e.A1wZTEY.:2018/8/21(火) 20:56:15 ID:36uvoWkwM.

千織「しゃ、車掌さん、彼らは誤解してるだけなんです。私が車掌さんから虐げられてるって・・・」

千織「悪い方々じゃないんです。だから、その、許してあげてください」

ブリアン「そうは言ってもねえ」

ブリアン「千織を盗んで、この町で列車を止めて、時間と精力をロスさせたのはもともとこいつらのせいだし」

車掌「・・・許す許さない以前に、こいつらと関わるのは時間の無駄でしかない」

車掌が兎男たちに目を向ける

車掌「これ以上私たちに関わらないなら、目をつむってやる。さっさと立ち去れ」

373: ◆e.A1wZTEY.:2018/8/21(火) 20:59:15 ID:36uvoWkwM.

兎兄貴「あぁん!?」

兎兄貴「何を偉そうに!たかが車掌の分際で!」

兎男「千織ちゃんへの虐待がわかったら、罪に咎められるのはそっちだよ!」

ブリアン「あーあ、だめだね。やっぱ知能が低そう」

千織「ど、どうしよう」

困った顔で車掌をみると、車掌は大きくため息をついた

車掌「…ならばこうしよう」

374: ◆e.A1wZTEY.:2018/8/21(火) 21:01:26 ID:36uvoWkwM.

車掌「私を力でねじ伏せて、千織を奪って見せろ。そしたら、ついでに私も警察へ突き出せばいい」

千織「え、えぇえ!?」

車掌「かかってくるなら2人同時で頼む。これ以上時間をロスしたくない」

兎兄貴「・・・言うじゃねえか」

兎男「ど、どこからそんな自信がくるんだ」

兎男「そ・・・そうか!」

はっとした顔をする

375: ◆e.A1wZTEY.:2018/8/21(火) 21:03:13 ID:36uvoWkwM.

兎男「俺が千織ちゃんを連れて逃げたとき、黒い手を出現させて追って来ていた。またああいう得体のしれない物体を出現させる気だな!」

兎兄貴「あぁ、俺がぶった切ったやつだな」

車掌「・・・」

ブリアン(・・・いや。それは無理だ)

ブリアン(車掌が巨大な精力を動かせるのは、“車掌の精力を溜め込んだ列車”に乗っているときだけ。今は近くに列車はないから、コントロールできる精力には限界がある)

千織「や・・・やめてください!」

千織「こ、これ以上車掌さんに精力を消費してほしくないです。私のせいで、ただでさえ浪費してしまっているのに・・・」

376: 名無しさん@読者の声:2018/8/27(月) 13:03:44 ID:iZZrb7XHlw
車掌さんがんばれ。C
377: ◆e.A1wZTEY.:2018/8/27(月) 21:09:49 ID:36uvoWkwM.
>>376
支援感謝です!!
明日更新します(*- -)(*_ _)
378: ◆e.A1wZTEY.:2018/8/28(火) 22:39:57 ID:36uvoWkwM.

車掌「・・・」

千織「兎男さん、兎兄貴さん。手荒なことはやめてください。私は、私は大丈夫なんです」

兎男「千織ちゃん」

千織「誤解なんです。私は自分のために車掌さんの傍にいるんです。車掌さんは何も悪くないんです」

兎兄貴「どういうことだよ」

千織「それは・・・」

自分は人間で、この世界に迷い込んでしまったから、生き延びるために車掌の力を借りている

この言葉を言うべきか否か

379: ◆e.A1wZTEY.:2018/8/28(火) 22:42:47 ID:36uvoWkwM.

千織(・・・兎男さんも、兎兄貴さんも、悪い人たちじゃない)

千織(私が人間だとわかったところで、危険なことはきっとしてこない)

そう考え、口をひらく

千織「・・・わ、私は、にん」

すっと車掌の手が千織の口を覆った

千織「!」

車掌「千織の弁解でお前たちは納得するのか?私が彼女に無理に言わせていると思うだろう」

兎男「あ・・・当たり前だろ!」

車掌「だったらつべこべ言ってないでかかってこい」

380: ◆e.A1wZTEY.:2018/8/28(火) 22:44:25 ID:36uvoWkwM.

千織「車掌さん!」

兎兄貴「上等だあ!!」

兎兄貴が大きな剣を抜く

兎兄貴「前から兎一族をこき使う、いけ好かねえ野郎だと思ってたんだ。この機会にぶっ飛ばしてやる!」

兎男「お、俺もやってやる!」

兎男も剣を抜く

千織「ま、待って・・・!」

千織の言葉を聞かずに、兎兄貴と兎男は勢いよく車掌に向かって飛び出した

381: ◆e.A1wZTEY.:2018/8/28(火) 22:47:10 ID:36uvoWkwM.

兎兄貴「どりゃあっっ!!」

ガキィッッ

兎兄貴「!!」

振り下ろした大剣が、車掌の剣によって受け止められる

体格差から兎兄貴の方が腕力があるはずなのに、車掌の剣はぴくりとも動かない

兎兄貴「兎男!!」

兎男「うん!」

車掌の左側から、今度は兎男が剣を振り下ろす

382: ◆e.A1wZTEY.:2018/8/28(火) 22:51:56 ID:36uvoWkwM.

ガキッッ

兎男「え!?」

車掌は左手に鞘をもち、それによって兎男の剣を抑えていた

兎兄貴「ふざけやがって・・・!」

兎兄貴が剣を振り直そうと、一瞬力を抜いて剣を浮かせたとき、

車掌「甘いな」

車掌は剣から瞬時に手をはなし、逆手に持ち直した

兎兄貴「!?」

そのまま勢いよく、下から上へ剣を振り上げた

383: ◆e.A1wZTEY.:2018/8/28(火) 22:54:36 ID:36uvoWkwM.

バキィッッ!!

兎兄貴「あぐっ!」

兎男「兄貴!」

剣は兎兄貴の手元ぎりぎりの柄の部分に当たった

衝撃とともに、兎兄貴の剣が弾かれて地面に落ちる

車掌「よそ見するなよ」

ドガッッ

兎男「あうっ!?」

気をとられた兎男の隙を見逃さず、今度は左足で兎男のみぞおちを蹴り飛ばした

384: ◆e.A1wZTEY.:2018/8/28(火) 22:59:37 ID:36uvoWkwM.

兎男が尻もちをつく

兎兄貴「てめえ!!」

兎兄貴が素手で車掌に飛び掛かった

車掌「・・・」 フイ、

しかし、兎兄貴のこぶしは虚しく空を切る

兎兄貴「フンッ!フンッ!フンッ!」

幾度もパンチを繰り出すが、全て見極められたかのように避けられる

兎兄貴「こ、この野郎・・・!!」 ゼェゼェ

385: 名無しさん@読者の声:2018/9/2(日) 19:08:18 ID:5FLtuh9VMs
いいね(・∀・)b
386: ◆e.A1wZTEY.:2018/9/8(土) 19:05:31 ID:7Cg5LKsjhw
>>385
ありがとうございます〜!
これから更新します
387: ◆e.A1wZTEY.:2018/9/8(土) 19:14:11 ID:7Cg5LKsjhw

千織「・・・」 ポカーン

ブリアン「千織、口あいてるよ」

千織「え、あ・・・あの」

千織「しゃ、車掌さんは・・・な、何者なんですか?」

ブリアン「車掌は車掌だよ」

千織「そうではなくて!せ、精力を使ってないのにあんなに強いなんて」


388: ◆e.A1wZTEY.:2018/9/8(土) 19:15:25 ID:7Cg5LKsjhw

ブリアン「あれは多分、車掌にとっては護身術の域なんだよ。この世界は知能の低い奴らが多くて、絡まれることが多いからね」

ブリアン「ゲテモノを乗せた列車を毎日正常運行させるためには、あのくらい必要でしょ」

千織「でも、2対1なのに・・・」

ブリアン「兎一族はもともと戦闘能力があまり高くないのもあるかもね」

千織「な、なるほど・・・」


389: ◆e.A1wZTEY.:2018/9/8(土) 19:17:56 ID:7Cg5LKsjhw

兎男「えい!とりゃ!ふん!」

必死に剣を振るが、全て読まれているのか車掌には全く当たらない

兎男「・・・」 ハァッハァッ

兎男「くそ、どうすれば・・・」

車掌「・・・」

冷めた瞳で汗だくの兎男を眺める

車掌「・・・お前、千織を守りたいと言ったな」

兎男「!」

車掌「この世界は人間にとって危険で溢れているのに、その程度でよく守るなどと言えたものだ」

390: ◆e.A1wZTEY.:2018/9/8(土) 19:20:25 ID:7Cg5LKsjhw

兎男「そ、それは・・・!」

車掌「気持ちだけではどうにもならない。お前はそれを理解するべきだ」

千織「・・・!」

不意に、以前兎男と話した内容を思い出す

“兎男『実は俺、ミュージシャンになりたいなって、ちょっと考え始めてるんだ。音楽が好きだから』”

“兎男『でも、仲間には無理だって言われてる。見た目も冴えないし、気が弱いから』”

“兎男『俺…みんなから変わってるって言われるんだ。だから自信なくしちゃって』”

あのとき、千織は「変じゃない」「私は応援する」と兎男を鼓舞した

しかし、車掌は「考え方が若くて甘い」と評していた

391: ◆e.A1wZTEY.:2018/9/8(土) 19:22:54 ID:7Cg5LKsjhw

千織(・・・私は)

千織(・・・車掌さんの言うことは正論だと思う・・・けど、)

千織(兎男さんの言ってることは、変じゃない)

車掌「だからお前は、他の兎男たちよりも浮いてしまうんだ」

兎男「!」

兎兄貴「てめえ!!」

千織「ま・・・」

千織「待って!!!」

392: ◆e.A1wZTEY.:2018/9/8(土) 19:25:21 ID:7Cg5LKsjhw

「!?」

人一倍大きな声を出した千織に、皆がぎょっとする

ブリアン「千織・・・?」

千織「あ・・・あの」

千織「それ以上、兎男さんを悪く言わないでください。車掌さんは・・・わ、わかってないです」

兎男「! 千織ちゃん!」

車掌「・・・わかってない?」


393: ◆e.A1wZTEY.:2018/9/8(土) 19:28:41 ID:7Cg5LKsjhw

千織「車掌さんの言ってることは正しいです!でも、でも・・・人の心って、単純じゃないんです」

千織「理論的に考えてやめておいた方がいいことも、本心ではやりたいって思っていたら、やらなきゃいけないことがあるんです」

車掌「・・・お前が私を振り回すときは、いつもそれだな。理論で拒否しても、強引に感情で押してくる」

車掌「それは大いに結構だが、自分のキャパシティを考えてやれと言っている」

千織「キャパシティとか、そういうのを無視してでもやりたいと思うことがあるんです!」

千織「そ、それが・・・人間の心の1つ、だと思うんですけど」

兎男「千織ちゃん・・・」

394: ◆e.A1wZTEY.:2018/9/9(日) 10:10:43 ID:7Cg5LKsjhw

兎兄貴「・・・兎男・・・お前、人間だったのか?」

千織「つ、つまり!兎男さんは変わってるとか、浮いてるとかじゃなくて・・・他の人より、人間の心を豊かにもってるんだと思うんです」

千織「だから、そこを否定してあげてほしくないんです・・・」

車掌「・・・」

目を細めて息をつく

車掌「・・・この世界には、人間はいない。だから、人間の心などというものは意味をなさない」

車掌「だから、私にはその心を理解することはできないし、理解する必要もない」

千織「そ、そんなの決めつけです!」

395: ◆e.A1wZTEY.:2018/9/9(日) 10:33:51 ID:7Cg5LKsjhw

千織「意味があるかとか、理解する必要があるかとか、そんなのは車掌さん個人の考え方であって、兎男さんに強制していいことではないと思います」

兎男「・・・!」 ジーン

千織「車掌さんは私の恩人です。でも兎男さんの気持ちもよくわかるんです。私はどっちかが間違っているとは言えません」

千織「だから・・・これ以上皆さんが闘っているところを見たくありません。お願いします・・・」 ペコリ

車掌「・・・」

目を細め、静かに息をつく

車掌「・・・わかった」

千織「車掌さん!」

車掌「実力差は示したし、お前たちも私に勝てないことはわかっただろう。千織に免じて見逃してやるから、さっさと消えろ」

396: ◆e.A1wZTEY.:2018/9/9(日) 10:35:44 ID:7Cg5LKsjhw

兎兄貴「な、なんだと」

兎男「あ、兄貴・・・」

兎兄貴の腕をつかむ

兎男「引こう。千織ちゃんが、俺たちを助けようとしてくれてるんだよ」

兎男「千織ちゃん、ありがとう。俺、また励まされちゃったよ・・・」

兎男「無理やり車掌の傍に拘束されてるわけじゃないんだよね?それだけ確認させて」

千織「は、はい。私は、事情があって車掌さんのお世話になってるんですけど、決して悪いことはされていないです」

兎男「良かった。・・・いろいろ、ごめんね。迷惑かけて。ありがとう」

397: ◆e.A1wZTEY.:2018/9/9(日) 10:38:46 ID:7Cg5LKsjhw
訂正
>>389最終行の車掌のセリフ
「人間にとって」の部分を削除してください
398: 名無しさん@読者の声:2018/9/15(土) 20:12:19 ID:5FLtuh9VMs
楽しい物語をありがとう。支援。
399: 名無しさん@読者の声:2018/9/16(日) 11:06:54 ID:H265LO0gUQ
支援
400: ◆e.A1wZTEY.:2018/9/23(日) 12:41:21 ID:7Cg5LKsjhw
>>398
ひえっ・・・そんな風に言って頂けたら・・・感涙の極みでございます・・・ありがとうございます;;;;
書いていて良かった、本当に;

>>399
支援ありがとうございます!!またもや遅くなってすみません、今週半ば頃には更新する予定です!
401: ◆e.A1wZTEY.:2018/9/26(水) 20:50:50 ID:7Cg5LKsjhw

――車掌たちは屋敷から脱出し、地上に出た

兎男たちともそこで別れた

ブリアン「…ふぅ」

ブリアン「ま、とりあえず一件落着って感じ?」

千織「そうですね!」

車掌「・・・」

千織「・・・車掌さん?」

車掌「・・・」 ツーン

402: ◆e.A1wZTEY.:2018/9/26(水) 20:51:58 ID:7Cg5LKsjhw

ブリアン「・・・あーわかった」

ブリアン「せっかく苦労して千織を助けたのに、最後に説教くらったから拗ねてんでしょ」 ニヤニヤ

千織「えっ!?」

ブリアン「ぎにゃっ!」

ガバッとブリアンの身体をつかむ

車掌「お前は大して役に立たなかったくせに偉そうな口をきくなよ?」

ブリアン「いいいたいっていたいって」

403: ◆e.A1wZTEY.:2018/9/26(水) 20:55:02 ID:7Cg5LKsjhw

千織(車掌さんが・・・拗ねてる?)

千織「車掌さんにも、人間みたいなところあるんですね!」

車掌「ない」

千織「良いと思います!」

車掌「ないと言っている」

ブリアン「もー強情なんだからー」


404: ◆e.A1wZTEY.:2018/9/26(水) 20:56:14 ID:7Cg5LKsjhw

3人は列車に戻ってきた

列車の前には、発車を待つ乗客たちが何人もうろついていた

車掌「お待たせして申し訳ありません。早急に発車準備をいたします」

車掌の口調が、いつもの丁寧な敬語に戻る

車掌「ブリアン、乗客に乗車券の確認を」

ブリアン「はーい」

車掌「千織は、貨物を車両に運んで」

千織「は、はい!」

慌ただしく準備にとりかかる

およそ10分後、列車は発車しキサラギ駅を後にした

405: ◆e.A1wZTEY.:2018/9/26(水) 21:00:02 ID:7Cg5LKsjhw

千織「――おわった、あぁ〜・・・」

ぐぐっと伸びをして、寝台に寝転がる

あの後、休む間もなく列車業務にうつり、作業が終了したのは夜の23時だった

千織「・・・」

千織「・・・そうだ」

ふと、思い出す

キサラギ町で助けてもらったことについて、しっかりと礼を言わなければと思っていた

起き上がると、車掌室へ向かった

406: ◆e.A1wZTEY.:2018/9/26(水) 21:01:51 ID:7Cg5LKsjhw

千織「・・・車掌さん」

車掌室をのぞく

部屋は暗く、明かりはほとんど灯っていなかった

千織「・・・あ」

車掌は、腕と足を組み、椅子に座った状態でうつらうつらとしていた

いつもピンと伸びた背筋が、珍しく横に傾いている

千織(・・・車掌さんが寝てるところ、初めて見た)

千織(でも・・・そうだよね、きっと寝る間もなく助けに来てくれたんだよね。疲れてて当然だ)

407: ◆e.A1wZTEY.:2018/9/26(水) 21:04:13 ID:7Cg5LKsjhw

千織(・・・)

千織(・・・帽子があると寝にくそうだな)

歩み寄り、そっと車掌の帽子をはずす

月明かりに照らされて、漆黒の髪と、整った青年の顔があらわになる

千織(・・・)

千織(綺麗だな・・・)

思えば、車掌の顔をちゃんと見たことはほとんどなかった

千織(・・・車掌さんのこと)

千織(・・・もっと、知りたい)

無意識のうちに、髪に触れていた

408: ◆e.A1wZTEY.:2018/9/26(水) 21:07:55 ID:7Cg5LKsjhw

柔らかな髪をそっと撫でる

千織「・・・」

千織「・・・」 ハッ

我に返り、顔を紅潮させる

千織(わ、私何して・・・!)

顔を押さえ、下を向く

千織(お、落ち着け落ち着け・・・大丈夫、ばれてない)

車掌「・・・何をしている」

千織「・・・へ・・・」

409: ◆e.A1wZTEY.:2018/9/26(水) 21:09:48 ID:7Cg5LKsjhw

眠気まなこの車掌がこちらを見ている

千織「ご、ごめんなさいごめんなさい!起こすつもりはなかったんです!」 アワアワ

千織「た、ただ、帽子があると寝にくそうだな、と、思って・・・」

手に持った車掌帽で顔をかくす

千織「な、何もしてません!本当です本当です・・・」

車掌「・・・なぜ赤くなっている」

千織「そ、それは・・・」


410: ◆e.A1wZTEY.:2018/9/26(水) 21:12:35 ID:7Cg5LKsjhw

車掌「・・・」

千織「・・・」

車掌「おかしな奴だな。何か用があったからここに来たんじゃないのか」

千織「あ、は、はい!そうなんです」

千織「キサラギ町でのお礼、ちゃんと言ってなかったと思って・・・」

車掌「お礼?」

千織「私なんて、見殺すことだってできたはずなのに・・・助けて下さって、本当にありがとうございました!」 ペコリ


411: 名無しさん@読者の声:2018/9/29(土) 10:21:38 ID:Brl2G9AObY
支援〜(*´∀`*)
412: ◆e.A1wZTEY.:2018/10/9(火) 21:29:40 ID:6jBANpAtHw
>>411
支援ありがとうございます〜(^○^)!
明日か明後日に更新します、もうしばしお待ちください
413: ◆e.A1wZTEY.:2018/10/10(水) 23:42:42 ID:6jBANpAtHw

車掌「・・・」

車掌「・・・自分でも、わからない。なぜお前を生かすことに尽力しているのか」

車掌「・・・たぶん、死なせたくないと思う気持ちがあるからだと思うが」

千織「車掌さん・・・」

車掌「なぜ死なせたくないと思うのかはわからない」

千織「・・・嬉しいです。私も、同じですよ」

車掌「同じ?」

千織「車掌さんにはずっと、無事で・・・というか、元気でいてほしいです」

千織「何で・・・って言われると、ちょっと困っちゃいますけど」

414: 名無しさん@読者の声:2018/10/10(水) 23:44:18 ID:6jBANpAtHw

車掌「・・・そうか」

椅子の背に身体を預けていた車掌が、上体を起こす

車掌「帰りたいか?」

千織「え?」

車掌「聞くまでもないことだと思うが」

千織「そ、それはもちろん・・・」

車掌「ブリアンはお前の精力がどうのこうのと口煩いが、私からしたら千織がこの世界で危険な目に遭うほうが心身的負担が大きいらしい。ならばいっそ、細かいことは考えず人間界に帰したほうがいいと思う」

千織「・・・」

415: ◆e.A1wZTEY.:2018/10/10(水) 23:45:40 ID:6jBANpAtHw

車掌「お前の連れだった男・・・沖恭太といったか。あれは、期待しないほうがいい。まずは自分の身を優先するべきだ」

車掌「仮に見つけたら、私が人間界に送り届けてやる」

千織「・・・」

車掌が言ってることは正論だし、条件なしで人間界に帰らせてもらえることは千織にとっては喜ばしい提案だ

だが、なぜかすっきりしない

気持ちが晴れない

車掌「・・・なぜ、」

車掌「そんなに哀しい顔をしている」

416: ◆e.A1wZTEY.:2018/10/10(水) 23:46:25 ID:6jBANpAtHw

千織「!」

気づかぬうちに、沈んだ表情になっていたらしい

車掌「あの男の安否がわからないまま帰れないから、困っているのか」

千織「そ、それは」

千織「それも、・・・ありますけど」

車掌「・・・他にあるのか?」

千織「・・・」

車掌「・・・」

417: ◆e.A1wZTEY.:2018/10/10(水) 23:48:20 ID:6jBANpAtHw

千織「・・・な、なんでもないです!なんでもないんです!」

顔をぶんぶんと振る

千織「帰るかどうかは、か、考えておきますので!それでは、夜も遅いので、これで、」

手に持っていた車掌の帽子を返す

千織「おやすみなさい!」 タタタッ

千織は勢いよく車掌室を飛び出していった

車掌「・・・なんなんだ」


418: ◆e.A1wZTEY.:2018/10/10(水) 23:50:47 ID:6jBANpAtHw

――寝台車両に飛び込むと、千織は胸に手をあて、上がった息を落ち着かせた

千織「・・・あぁもう、何考えてるんだろ・・・」

ずるずるとしゃがみ込む

紅潮した頬を両手で押さえる

千織「・・・言えないよ」

千織「車掌さんと離れたくない、なんて・・・」


419: 名無しさん@読者の声:2018/10/21(日) 09:03:16 ID:rhQj2WYI1s
千織ちゃんかわいいw
420: ◆e.A1wZTEY.:2018/10/22(月) 21:32:44 ID:6jBANpAtHw
>>419
(´///`*)
421: ◆e.A1wZTEY.:2018/10/22(月) 21:33:46 ID:6jBANpAtHw

―――人間界

恭太「・・・ちおちゃん・・・」

自室の窓際で、つぶやく

千織が行方不明になって、1週間がたった

依然として千織の所在はわからない

自分が行方不明になっていた間の記憶も思い出せない

ショックと罪悪感で、恭太は部屋に引きこもり、学校に行けずにいた

422: ◆e.A1wZTEY.:2018/10/22(月) 21:35:21 ID:6jBANpAtHw

何度も警察の事情聴取を受けたが、千織に関する有力な情報は提供できなかった

覚えているのは、あの日――3月14日に、二人で帰っていたことだけ

ホワイトデーのチョコを、渡したことだけ

恭太(・・・あの日、俺・・・告白しようと思ってた)

恭太(俺は、告白・・・できたのか?)

もう、会えるかわからない

そんなことを考えると、せめてあの日、自分の想いの丈を伝えられていれば・・・と、心に浮かぶ

423: ◆e.A1wZTEY.:2018/10/22(月) 21:36:33 ID:6jBANpAtHw

恭太「・・・あぁ・・・」

恭太「最低だ、おれ・・・」

まだ千織が無事である可能性もあるのに、悪い方向へとばかり考えてしまう

頭をかかえ、うずくまる

どうすればいい

どうすれば、このやりきれない気持ちを消化できるのか

――コンコン

不意に、ドアがノックされた

424: ◆e.A1wZTEY.:2018/10/22(月) 21:38:21 ID:6jBANpAtHw

恭太母『――恭太。起きてる?』

恭太「・・・起きてるよ」

恭太母『さっき変な人がうちに来てねえ・・・恭太に会わせろって言ってきて』

恭太母『気味悪かったから、押し返したんだけど』

恭太「変な人・・・?」

恭太母『なんでも、霊媒師とかって・・・心当たりある?』

恭太「・・・ない、かな・・・」

恭太母『そうよねえ。胡散臭いし、帰ってもらって正解だったわ』

恭太「・・・」

恭太母『じゃあ、お母さんお夕飯の準備してるからね。何かあったら言いなさいね』

425: ◆e.A1wZTEY.:2018/10/22(月) 21:41:24 ID:6jBANpAtHw

――深夜

コンッ

なにかぶつかる音がした

恭太「・・・ん・・・」

目を覚ます

コンッ、コンッ

恭太「なんだ・・・?」

2階にある恭太の部屋の窓に、小石がぶつけられているようだ


426: ◆e.A1wZTEY.:2018/10/22(月) 21:42:44 ID:6jBANpAtHw

おぼろげながら、窓から外を覗くと――

恭太「――!?」

見知らぬ長髪の男が立っていた

びっくりして、思わず布団に身を隠す

コンッ、コンッ

再度、窓に石が当たる

恭太(なんなんだよ・・・!!)

恐怖を感じながら、薄目で再び窓の方を見ると――

427: ◆e.A1wZTEY.:2018/10/22(月) 21:43:43 ID:6jBANpAtHw

『戸野千織のいる世界を知っている』

そう大きく書かれた紙を、男が広げていた

恭太「っ・・・!?」

『恐れるな。私は君の味方だ』

男が紙をめくる

『一度話をしよう』

恭太「・・・」


428: ◆e.A1wZTEY.:2018/10/22(月) 21:45:31 ID:6jBANpAtHw

頭が混乱している

どうすればいいのかわからない

長髪の男は、下に降りてこいとジェスチャーをしている

恭太「・・・」

とても信用できる状況ではない

――が、『千織のいる世界』という言葉に、何か刺さるような感覚を覚えた

おそるおそる、恭太は1階へと下りた


429: ◆e.A1wZTEY.:2018/11/6(火) 20:57:10 ID:dW73PZiuFo

長髪の男「――こんばんは」 ニッコリ

長髪の男「下りてきてくれてありがとう、沖恭太くん」

恭太「・・・あんた、誰だよ」

長髪の男「私のことは紫苑(シオン)と呼んでくれ。霊媒師をしている」

恭太「あんたが、うちに昼間来たっていうやつか」

紫苑「そうさ。君から、強い霊気を感じてね」

恭太「霊気?」

紫苑「私の感覚で呼んでいる言葉なんだがね。詳しく言うと、『死者の魂』って感じかな?」

430: ◆e.A1wZTEY.:2018/11/6(火) 20:58:14 ID:dW73PZiuFo

恭太「は?どういうことだよ。俺は霊感なんてないぞ」

紫苑「君の身体にまとわりついているのさ。すごく臭う、ぷんぷんとね」

紫苑「あ、勘違いしないで。憑りつかれてるとか、そういった類じゃないから。”死者の臭いが身体についてる”っていう表現のほうが正しいかな」

恭太「わ、訳が分からないんだけど。仮にあんたの言うことが正しいなら、何で俺にそんなものがついてるんだ?」

紫苑「君が死者の世界に行っていたからだよ」

恭太「・・・!?」

431: ◆e.A1wZTEY.:2018/11/6(火) 20:59:14 ID:dW73PZiuFo

紫苑「君は行方不明になっていた間、死者の世界にいっていたんだよ。その名残で、その世界の臭いが身体についてる。私はそれを辿って君のところにきた」

恭太「ま、待ってくれ。俺が死者の世界に行っていた?そんなこと信じられるわけ・・・」

紫苑「信じる信じないは自由だけど。君は何も覚えていないし、戸野千織に関する有力な情報もない。こんな状況下じゃ、藁にでもすがりたい気持ちじゃないのかい?」

恭太「・・・」

紫苑「君が何も覚えていないのは、その不思議な世界で記憶を消されたからだ。それなら合点がいくだろう?」

432: ◆e.A1wZTEY.:2018/11/6(火) 21:00:26 ID:dW73PZiuFo

恭太「・・・な、何でそんな世界にいく必要があるんだ」

紫苑「必要かどうかというより、迷い込んでしまった、という表現が正しいのかな」

紫苑「人間が自分から行くことはできないはずだからね」

恭太「じゃあ、ちおちゃんは・・・」

紫苑「おそらく、まだ死者の世界にいるだろう」

恭太「!!」


433: ◆e.A1wZTEY.:2018/11/6(火) 21:01:29 ID:dW73PZiuFo

こんな現実離れした話、信じられるはずがない

信じられるはずがないのだが――

警察が話していたどの可能性よりも、真実に近いように感じた

恭太「・・・確かに、俺は今、藁にでもすがりたい気持ちだ。ちおちゃんを助けるためなら、あらゆる手を尽くしたい」

恭太「あんたを信じれば、ちおちゃんを助けられるのか?」

紫苑「・・・そうだな」

434: ◆e.A1wZTEY.:2018/11/6(火) 21:03:10 ID:dW73PZiuFo

紫苑「はっきり言って、助けられる保証はない。が・・・助けられる可能性はある」

紫苑「私はもともと、神隠しと呼ばれる現象の正体を追っていてね」

恭太「神隠し?」

紫苑「人が行方不明になったり、なんの前触れも無く失踪することを、神の仕業としてとらえた言葉だよ」

紫苑「だが私は、神隠しとは人が死者の世界に迷い込んでしまったために起こることだろうと考えている」

恭太「ちおちゃんは神隠しにあったっていうのか」

紫苑「そうさ」

435: ◆e.A1wZTEY.:2018/11/6(火) 21:04:29 ID:dW73PZiuFo

紫苑「矛盾の多い、不可解な行方不明・・・。当初行方不明だった君が記憶をなくしたことも含めると、極めてその可能性が高いと感じたんだ」

恭太「どうやって神隠しから助けるんだ」

紫苑「迷い込む際には必ず2つの世界のあいだに時空的な繋がりができているはずだ。私はその繋がるポイントを探している」

恭太「ポイント・・・」

紫苑「戸野千織が行方不明になった場所だ。警察には何度も説明しているだろうが、改めて私をそこに案内してほしい。記憶が残っている場所まででいい」

436: 名無しさん@読者の声:2018/11/6(火) 23:35:44 ID:vXKJk.211Q
支援
437: 名無しさん@読者の声:2018/11/8(木) 14:52:12 ID:S/fhLd8FCY
支援!
438: 名無しさん@読者の声:2018/11/13(火) 20:13:58 ID:Kg2uN2ua4E
支援〜(*´ω`*)
439: ◆e.A1wZTEY.:2018/11/14(水) 16:39:22 ID:gw58qzRucQ
>>436-438
支援ありがとうございます〜!*\(^o^)/*
たくさん支援頂けて嬉しいびっくりです
今後ともよろしくお願いしますm(_ _)m
今週中には更新しますのでもうしばしお待ちくださいませ
440: ◆e.A1wZTEY.:2018/11/20(火) 01:18:42 ID:dW73PZiuFo

恭太「――ここだ」

通学路の途中にある、直径3メートルほどの小さな池の傍に案内する

恭太「千賀池(せんがいけ)っていうんだ。ここの近くに千織ちゃんが立っているのが見えて、俺は駆け寄っていった・・・そこまでしか、覚えていない」

紫苑「ニュースで言っていた、最後の目撃情報のところだな。池と周辺の川を全部あらったけど何も出てこなかったと聞いた」

恭太「池の深さは1メートルもない。子どもだったら溺れるかもしれないけど、高校生が溺れるような場所じゃない」

441: ◆e.A1wZTEY.:2018/11/20(火) 01:20:58 ID:dW73PZiuFo

紫苑「なるほどね」

恭太「ここを見て何かわかるのか?」

紫苑「そうだね・・・もう少し調べないと、わからないけど」

紫苑「1つわかることがあるよ」

恭太「? なんだ?」

紫苑「猫の霊が見える」


442: ◆e.A1wZTEY.:2018/11/20(火) 01:23:15 ID:dW73PZiuFo

恭太「猫・・・?」

紫苑「この池のまわりで、黒猫の霊が見えるんだ。心当たりはないかい?」

恭太「さぁ・・・俺は知らないな」

紫苑「この池から強い霊気を感じるから、この池が死者の世界と繋がる時空間的ポイントである可能性は高そうだ。と、すると・・・この黒猫は、この場所を守る番人みたいなところかな」

恭太「番人?」

紫苑が、池の右端の何もない空間に向かって、話しかける

紫苑「君は、この場所を守っているのかい?」

443: ◆e.A1wZTEY.:2018/11/20(火) 01:24:22 ID:dW73PZiuFo

恭太「・・・」

紫苑「・・・ほう」

恭太「・・・猫は何て言ってるんだ」

紫苑「小さく首を振った。どうやら、番人というわけではないらしい」

紫苑「君はどうしてそこにいるんだい?」

恭太「・・・」

紫苑「・・・」

紫苑「・・・うーん、さすがに猫と言葉のやりとりはできないね」

444: ◆e.A1wZTEY.:2018/11/20(火) 01:29:37 ID:dW73PZiuFo

恭太「猫はどんな様子なんだ」

紫苑「悲しそうな瞳でこっちを見ているだけだよ。私の言葉は理解しているかもしれないけど、どうしたらいいかわからないって感じだ」

恭太「・・・霊のことはよくわからないけど、やっぱり何か未練があるからここにいるんだろ?」

恭太「それがちおちゃんと関係あるなら知りたいけど、それすらわからないからな・・・」

紫苑「・・・ふむ」

紫苑「私はもう少しこの周辺を調べてみるよ。何かわかったら君に知らせよう」

445: ◆e.A1wZTEY.:2018/11/20(火) 01:31:53 ID:dW73PZiuFo

――数日が過ぎ、千織が歪世界に来て、10日目の朝を迎えた

平常通り、列車は動き、千織も自分の仕事を始めた

荷物の積み下ろしにもだいぶ慣れ、てきぱきと動けるようになった

車掌「――千織」

千織「はい!」

背後から呼ばれ、振り向く

車掌がぎょっとしたような顔をする

千織「? どうかしました?」

446: ◆e.A1wZTEY.:2018/11/20(火) 01:32:58 ID:dW73PZiuFo

車掌「・・・いや、元気だなと・・・」

千織「そうですか?いつも通りですよ!」

ぶんぶんと腕をふる

千織「車掌さんが少しでも精力を節約できるようにお手伝いして、恩を返さなきゃいけませんしね!」

車掌「・・・」

千織「あれ、何か用事があったんじゃないんですか?」

車掌「・・・そうだった」

コホンと咳払いして、気を取り直す

447: ◆e.A1wZTEY.:2018/11/20(火) 01:35:16 ID:dW73PZiuFo

車掌「この世界に来てから、まずいものしか食べていないだろう。今日の業務が終わったら、食事に連れて行ってやる」

千織「えっ・・・本当ですか!?」

千織「食事って、いったいどこで」

車掌「今日の終点のアカダコ駅で町へおりよう。そこそこ栄えている町だから、良い店があるだろう」

千織「私、町におりても大丈夫なんですか?」

車掌「人間の臭いもほとんど消えているし、私の傍にいれば大丈夫だ」

千織「わあぁ・・・!楽しみです!ありがとうございます!!」 キラキラ

448: ◆e.A1wZTEY.:2018/12/5(水) 14:55:56 ID:4O0j5IHbJk
今週中には更新します!
449: ◆e.A1wZTEY.:2018/12/8(土) 22:55:52 ID:.NxPsvQjAc

ブリアン「――ご飯に連れて行ってあげるなんて、珍しいじゃん」

列車を運転する車掌の横で、ブリアンがあくびをする

ブリアン「車掌は精力しか食べたことないのに」

車掌「生物の三大欲求の1つは食欲だろう。たまに良いものを食べたほうがいいのはわかる」

ブリアン「ふーん。ま、ヤエヌクラ草を食べるのも飽きてきたしいいんじゃないの」

ブリアン「で、何の店にするのさ」

車掌「肉だ」

ブリアン「ざっくりしてるねえ」

450: ◆e.A1wZTEY.:2018/12/8(土) 23:03:43 ID:.NxPsvQjAc

――夜、列車が業務を終了すると、2人と1匹はアカダコ町へおりた

夜の町は明かりが灯り、賑わっていた

千織「私、すごくわくわくします」 キラキラ

千織「おいしいごはん食べられるのもありますけど、列車の外に出られる機会あまりないので」

千織「しかも、何かあっても車掌さんが傍にいるし。安心感がやばいです」

ブリアン「めっちゃテンション高いじゃん」

千織「そりゃそうですよ!ブリアンさんもたまにはキャットフード以外を食べたくなるでしょう?」

451: ◆e.A1wZTEY.:2018/12/8(土) 23:08:38 ID:.NxPsvQjAc

ブリアン「僕は停まった駅で適当に下りて色々食べてるし」

千織「えーそうだったんですか。確かに猫なら、ささっと行ってささっと帰ってこれそうですよね・・・」

車掌「――ついたぞ」

千織「!」

着いた先には、赤色の看板がかかったレストランがあった

中から笑い声と、ジューッと何かを焼く音がきこえる

千織「すごい、いい感じですね!何のお店なんですか?」

車掌「焼肉だ。レドンという、歪世界にのみ生息する食肉用生物を調理している」

452: ◆e.A1wZTEY.:2018/12/8(土) 23:10:18 ID:.NxPsvQjAc

千織「れ、レドン・・・?」

車掌「人間界の焼肉とどのくらい違うのかは知らないが・・・まずくはないと思う。試しに食べてみるといい」

千織「は、はい!楽しみです」

この世界に、人間界の食べ物はない

そのことにはだいぶ慣れつつあり、聞きなれない食料でもあまり気にしないことにしていた

ブリアン「よし、入ろ〜。お腹ペコペコだよ」


453: ◆e.A1wZTEY.:2018/12/8(土) 23:15:40 ID:.NxPsvQjAc

中に入ると、羊型の男に席に案内された

羊男「こちらへお座りください。すぐにお水をお持ちします」

羊男「ご注文の際は、そちらのベルをお鳴らし下さい。では」 ペコリ

千織「・・・すごい。人間界と一緒だ」

車掌「ぼーっとしていないで、食べたいものを決めろ。私はそのへん詳しくないからな」

千織「は、はい!」

メニューの冊子を手に取る

454: ◆e.A1wZTEY.:2018/12/8(土) 23:17:45 ID:.NxPsvQjAc

千織「・・・」

千織(・・・よ、よくわからないけど、写真でおいしそうなもの適当に選んどけばいいよね)

千織「じゃあ、レドンのアグダと、ナイロと、・・・カカンを1皿ずつ」

ブリアン「あとはねー、ガズイのサラダとレッペの厚焼きも」

ブリアン「飲み物はどうする?」

千織「の、飲みやすくて、ジュースみたいのってありますか?」

ブリアン「そうだなー、ホリーニャとか?」

千織「じゃ、じゃあそれにします」

車掌「では、私もそれにする」

ブリアン「おっけー。じゃあ店員よぶよー」 チリリーン

455: ◆e.A1wZTEY.:2019/1/9(水) 17:23:02 ID:M04A3cPyqc
あけましておめでとうございます。
来週から更新再開いたします。
456: 名無しさん@読者の声:2019/1/12(土) 11:05:59 ID:kXjObwftrc
あけましておめでとうございますヽ(=´▽`=)ノ
作者さんにとってよい一年となりますように! 応援してます(*´ω`*)
457: ◆e.A1wZTEY.:2019/1/21(月) 20:20:22 ID:owxdLBffe2
>>456
ありがとうございます!読者さんにとってもよい1年になりますように(´∀`*)
応援して下さってとてもとても嬉しいです!

更新詐欺ですみません、明日か明後日には更新します・・・!!
458: ◆e.A1wZTEY.:2019/1/22(火) 21:35:20 ID:owxdLBffe2

千織「――おいしい!」

焼いたレドンの肉を頬張り、笑顔になる

千織「すごくおいしいですね!牛肉みたいです」

車掌「それなら良かった」

千織「車掌さんは食べないんですか?」

車掌「食べてもいいが・・・食べなくても問題ない。だったら、千織やブリアンが私の分も食べたほうがいいだろう」

千織「何言ってるんですか!食事はみんなで食べるからおいしいんですよ」

459: ◆e.A1wZTEY.:2019/1/22(火) 21:36:43 ID:owxdLBffe2

千織が車掌の皿にも肉を盛り付ける

千織「このタレをつけるんですよ。車掌服にこぼさないようにしてくださいね」

ブリアン「プッ」

車掌「・・・あのな」

車掌「私が精力以外食べたことがないからって、馬鹿にし過ぎだぞ」

千織「え、そうなんですか?てっきり箸とかうまく使えないのかなって」

車掌「フン、その程度できるに決まっている」

460: ◆e.A1wZTEY.:2019/1/22(火) 21:39:50 ID:owxdLBffe2

箸を手に取ると、焼けた肉をつかんだ

ポロッ

肉は箸の隙間から抜け、テーブルにぼとりと落ちた

車掌「・・・」

ブリアン「ブッ、ププププ」

千織「・・・わ、笑っちゃだめですよ!ブリアンさん」

千織「車掌さん!まずは箸の持ち方教えてあげますからね。グーじゃなくて、人差し指と中指を・・・」

車掌「・・・」

461: ◆e.A1wZTEY.:2019/1/22(火) 21:41:59 ID:owxdLBffe2

千織「どうです?お味のほうは」

車掌「・・・うまい、と、思う」

千織「ですよね!」 パアァァ

ブリアン「精力の味と比べてどう感じんの?」

車掌「・・・精力を食べても、空腹を満たす感覚しかない。だから、味というものはあまりよくわからない」

車掌「だが、この肉は・・・飽きがないというか、バリエーションがあって、不思議だ。もっと食べてみたいという気持ちにさせる」

千織「それは間違いなくおいしいってことですよ!」

千織「車掌さん、こんな素敵なお店に連れてきてくれて本当にありがとうございます」 ニッコリ

車掌「・・・別に」

車掌「感謝されるようなことじゃ、ない」

横を向き、わずかに頬が赤くなったのを隠した

462: 名無しさん@読者の声:2019/1/29(火) 19:56:51 ID:kXjObwftrc
支援C
463: ◆e.A1wZTEY.:2019/1/29(火) 22:09:45 ID:owxdLBffe2
>>462
支援ありがとうございます!!
前回分少なくてすみません、更新します

464: ◆e.A1wZTEY.:2019/1/29(火) 22:12:17 ID:owxdLBffe2

タコ男「・・・おい、あれ見ろよ」

イカ男「ん?なんだ?」

タコ男「あそこの席に座ってる男・・・列車の車掌じゃないか?」

イカ男「あそこ・・・?」

イカ男「おお、本当だ。あいつが列車から降りているところ、初めて見たね」

タコ男「かーっ、女なんか連れてやがるぜ。生真面目な性格してるくせに」

465: ◆e.A1wZTEY.:2019/1/29(火) 22:13:50 ID:owxdLBffe2

イカ男「童貞だと思ってたよなー」

タコ男「よく見ると女はかわいい顔してるじゃねえか。一晩貸してもらうかな」

イカ男「さすがにそれはダメなんじゃないのぉ?」

タコ男「なーに言ってんだよ、俺は列車の常連客だぞ?週に2回は乗ってる。あいつはいつも、『お客様』『お客様』ってヘコヘコしてるんだ。逆らうなんてありえないぜ」

イカ男「たしかにー」 ケラケラ

466: ◆e.A1wZTEY.:2019/1/29(火) 22:17:23 ID:owxdLBffe2

ブリアン「ふーっ!まんぷくまんぷく」

千織「満腹ですね〜」

車掌「なら、そろそろ出るか?」

千織「そうですね〜・・・って、あれ?」

千織の視界が、ぐわんと揺れた

車掌「千織?」

千織「あれ・・・わたし、どうしちゃったんでしょ」 フラフラ

467: ◆e.A1wZTEY.:2019/1/29(火) 22:18:26 ID:owxdLBffe2

ブリアン「ちょっと大丈夫?顔赤いよ」

千織「だ、だいじょうぶ・・・です」

車掌「大丈夫じゃないだろう」

車掌が千織の腕をつかむ

ブリアン「・・・もしかして」

ブリアンがはっと何かに気づいたとき――

468: ◆e.A1wZTEY.:2019/1/29(火) 22:19:56 ID:owxdLBffe2

タコ男「よお?車掌さん」

テーブルの横に、タコとイカの怪人が立っていた

車掌「・・・?」

タコ男「俺が誰だかわかるよな?しょっちゅう列車に乗ってるんだから」

イカ男「わかるよねえ?」

車掌「・・・」

車掌「・・・お客様、ですか」

タコ男「お、そうそう、そうだよ。『お客様』だよ」 ニヤニヤ

469: ◆e.A1wZTEY.:2019/1/29(火) 22:21:48 ID:owxdLBffe2

車掌「何か御用ですか。今取り込み中なのですが」

タコ男「実は今夜の夜伽相手を探してるんだが・・・」

車掌「・・・は?」

タコ男「わかるよな?」

イカ男「わかるよねえ?」

車掌「申し訳ありませんがわかりません。そもそも、今は勤務時間外ですので、お客様のご要望にはこたえられません。お引き取りください」

タコ男「なんだと?」

470: ◆e.A1wZTEY.:2019/1/29(火) 22:24:19 ID:owxdLBffe2

タコ男「誰が列車に乗ってるおかげでここの焼肉が食えてると思ってるんだ?んん?」

車掌「・・・」

イカ男「一晩でいいんだよー。そしたら返してあげるからさ、ね?」

車掌「・・・わかりました」

車掌「支払いを済ませて外に出ますので、お待ちください。ここだと店の迷惑になりますから」

イカ男「お」

タコ男「やっとわかったか」 ニヤニヤ

ブリアン「・・・ほんとこういうバカな連中って、絶えないよね」

大きくため息をついて、呟いた

471: 名無しさん@読者の声:2019/2/5(火) 20:45:04 ID:b7FM2p7xx.
千織ちゃんピンチ(>_<)
支援〜
472: ◆e.A1wZTEY.:2019/2/19(火) 20:22:40 ID:4fTYf.E3LU
>>471
支援ありがとうございますすす!
数日中に更新いたします(*- -)(*_ _)
473: ◆e.A1wZTEY.:2019/2/22(金) 22:37:51 ID:4fTYf.E3LU

タコ男「あ・・・あが、がが・・・」

イカ男「ぐっぐふ・・・」

バタッ

打ちのめされた2人が道端に倒れる

車掌「・・・」 ハー

車掌「ブリアン。千織の様子は?」

ブリアン「酔っ払ってるだけだよ」

車掌「・・・酔ってるだと?」

ブリアン「頼んだホリーニャって飲み物。お酒だったみたい」

474: ◆e.A1wZTEY.:2019/2/22(金) 22:39:33 ID:4fTYf.E3LU

車掌「それなら私も飲んだぞ」

ブリアン「車掌は1杯だけでしょ。千織は3杯くらい飲んでたし」

ブリアン「この子お酒強そうなタイプに見えないしね」

車掌「・・・」 ハァ

ため息をつき、ぐったりした千織をおんぶする

タコ男「ま・・・待ちやがれ」

うめき声とともに、タコ男たちが身体を起こした

タコ男「よくもぶん殴りやがったな・・・俺たちは客だぞ?」

イカ男「今度列車に乗ったら・・・暴れてめちゃくちゃにしてやるぅ」

タコ男「は・・・ははは!そりゃいい考えだ!窓を割って、積み荷を捨ててやろう!」 ゲラゲラ

475: ◆e.A1wZTEY.:2019/2/22(金) 22:41:47 ID:4fTYf.E3LU

車掌「・・・」

静かに振り返ると、微笑んで見せた

車掌「どうぞご自由に」

タコ男「な・・・なんだと?」

車掌「あなた方のような輩はごまんといるんですよ。珍しくもなんともありません」

車掌「そのような事態から列車を守るのも、私の務めですので。いつでもどうぞ」

イカ男「・・・」

車掌「ただし、その時は、容赦なくあなた方を殺します。相応の覚悟をもっていらしてください」

476: ◆e.A1wZTEY.:2019/2/22(金) 22:44:50 ID:4fTYf.E3LU

ブリアン「――もっとコテンパンにぶちのめしちゃえば良かったのに」

千織を背負いながら、列車までの夜道を歩く

ブリアン「あの場で殺したって誰も文句は言わないよ」

車掌「・・・どうでもよかった」

ブリアン「どうでもいい?」

車掌「千織を優先したかった。時間を浪費せずに、早く列車に戻るべきだと思った」

ブリアン「あれま」

車掌「それに・・・」

ブリアン「それに?」

車掌「・・・血を」

ブリアン「血?」

車掌「服に、血をつけたくなかった」

背に千織の重さを感じながら、つぶやいた

477: 名無しさん@読者の声:2019/3/9(土) 11:42:01 ID:iy9nhkC4Gs
支援
478: ◆e.A1wZTEY.:2019/3/12(火) 21:17:52 ID:JY2CD6zBXI
>>477
支援感謝いたします!更新します(^○^)
479: ◆e.A1wZTEY.:2019/3/12(火) 21:22:47 ID:JY2CD6zBXI

――異界警察

準隊長「隊長?お呼びですかぁ?」

グラマラスな隊員が、長い髪をゆらして隊長室に入る

隊長「あぁ。お前に1つやってもらいたい任務があるんだが」

準隊長「あら。いいですよ〜、何の任務ですか?」

隊長「先日、歪世界に迷い込んだ人間の少年を保護して帰還させた件は知っているな?」

準隊長「はい」

準隊長「加えて、まだ歪世界に人間が残っているかもしれない・・・という件ですよね?」 ニッコリ

480: ◆e.A1wZTEY.:2019/3/12(火) 21:30:38 ID:JY2CD6zBXI

隊長「そうだ。現場に残した監視昆虫が壊されたことから、人間は何者かに捕らえられている可能性が高い」

隊長「先ほど調査部隊から報告が入ってな。超高度な探知機を使って人間の臭いを追った結果、キサラギ町やアカダコ町というところで判定が出たそうだ」

準隊長「うぅん・・・?ちょっと待ってくださいよ」

考える素振りをする

準隊長「私の記憶が正しければ、その2町は500kmくらい離れてません?」


481: ◆e.A1wZTEY.:2019/3/12(火) 21:32:02 ID:JY2CD6zBXI

隊長「察しがいいな。短期間でこの長距離を移動できる方法は、歪世界では1つしかない」

準隊長「あぁ・・・列車が走ってるんですよね、あそこは。人間を捕らえた犯人は列車を使って移動しているということですか」

隊長「おそらくな。しかし、キサラギ町やアカダコ町は、人身売買がされるようなところではないはずだから、何のために行ったのかはわからない」

準隊長「それで?その町に行って聞き込みでもしてこいって言ってるんですか」

隊長「それは現在調査部隊が行っている。だが、今のところ有力な情報は得られていない」

準隊長「ふーん・・・」

482: ◆e.A1wZTEY.:2019/3/12(火) 21:43:46 ID:JY2CD6zBXI

準隊長「犯人は、頭がいいみたいですね。歪世界の生物にしては珍しく」

隊長「あぁ。たいていは知能が低いから、すぐに証拠をこぼすんだが・・・こんなケースは初めてだ」

準隊長「それで、私には何をしろと仰せられるんですか」

隊長「・・・いまのところ、犯人がササノコ駅、キサラギ駅、アカダコ駅を経由していることは確認している。高頻度で列車に乗車していることは確かだ。お前には、列車を調べてきてもらいたい」

準隊長「車掌に聞き込みするってことですかぁ?さすがに乗客1人1人は覚えてないと思いますけど」

隊長「高頻度で乗車している客のことなら、記憶に残っているかもしれない。加えて、人間を連れているなら貨物として運ばせている可能性も高い」

483: ◆e.A1wZTEY.:2019/3/12(火) 21:48:06 ID:JY2CD6zBXI

準隊長「なるほどね・・・そういうことなら、任せてくださいよ」

隊長「大丈夫か?お前は頭もいいし身体能力も高いから心配はしてないが、すぐ調子にのるからな」

準隊長「うふふっ、大丈夫ですよぉ。いつもちゃんと成果は出してますし?」

隊長「まぁな・・・。列車は明日の昼の13時にフマダシ駅に来るようだ。そこから乗れ」

準隊長「まっ、乗車券まで手配してくれたんですかぁ?ありがとうございますぅ〜」

ご機嫌で踵を返し、隊長室を出ていく

準隊長「・・・あ、そうそう」

ふと足を止める

準隊長「ちなみに、車掌が犯人だった場合は?」

隊長「お前に一任する。ただ列車を管理するだけの能をもった存在だ、捕らえるのはたやすいだろう」

484: 名無しさん@読者の声:2019/3/25(月) 22:07:41 ID:hZNiysemts
私怨
485: ◆e.A1wZTEY.:2019/4/1(月) 21:43:16 ID:1Hsj4T7jp6
>>484
わーい支援ありがとうございます!(^○^)
明日か明後日には更新しますのでもうしばしお待ちください

486: 名無しさん@読者の声:2019/4/1(月) 22:32:55 ID:rUTxK6Y93Q
令和初支援!
487: ◆e.A1wZTEY.:2019/4/2(火) 22:38:54 ID:1Hsj4T7jp6
>>486
ふおおお令和初支援キタ・・・!ありがとうございます!
令和でも拙作をよろしくお願いいたします
488: ◆e.A1wZTEY.:2019/4/2(火) 22:40:04 ID:1Hsj4T7jp6

「――千織。千織」

千織「ん・・・」

優しく名前を呼ばれ、目を覚ます

母「千織、そろそろ起きなさい?いくら日曜だからって、お昼まで寝てちゃだめよ」

千織「え・・・?」

母「今日は友達と図書館に行くんでしょう?早くご飯食べて準備しなきゃ」

千織「お・・・お母さん?」

母「やだ、どうしたのそんなびっくりして。お母さんの顔に何かついてる?」

千織「お、お母さん、私、」

489: ◆e.A1wZTEY.:2019/4/2(火) 22:40:54 ID:1Hsj4T7jp6

千織「私、今どこにいるの!?」

ガバッと起き上がり、母の肩をつかむ

千織「私人間界に帰ってきたの!?いったいどうやって――」

母「・・・ああ」

にっこりと母が笑う

母「車掌服を着た男の人があなたを送り届けてくれたのよ」


490: ◆e.A1wZTEY.:2019/4/2(火) 22:41:36 ID:1Hsj4T7jp6

千織「え、」

母「全然帰ってこないから心配したのよ。でも良かったわね、親切な人に助けてもらって」

母「お母さんがちゃんとお礼言っておいたから、安心なさい」

千織「待ってお母さん、車掌さんはなんて、」

母「あ、いけない、お母さんお料理の途中だったのよ。じゃ、用意できたらリビングに来なさいね」

千織「お母さん、お母さんちょっと待って―――」


491: ◆e.A1wZTEY.:2019/4/2(火) 22:43:41 ID:1Hsj4T7jp6

がばっっ

千織「・・・」 ハァハァ

起き上がり、息切れをする

千織「・・・ゆ、ゆめ・・・」

やけにリアルな夢だった

本当に人間界へ戻ってきたのかと錯覚した

千織「・・・私、なにしてたんだっけ」

千織(確か、車掌さんやブリアンさんと一緒に外食して――)

千織「いつつ・・・」

軽い頭痛を感じながら、立ち上がる

492: ◆e.A1wZTEY.:2019/4/2(火) 22:44:42 ID:1Hsj4T7jp6

すると、寝台車両のドアがスッとあいた

千織「あ・・・」

車掌「おはよう」

千織「おっ・・・おはようございます!」 ペコリ

車掌「具合は大丈夫か?店で飲んだものが酒だったようだ。私の配慮が足りなかったせいで、すまなかった」

千織「え!?お酒・・・ そうだったんですね」

千織「具合は大丈夫です、心配かけてすみません。もう発車してますか?」

車掌「30分後だ。別に無理はしなくてもいいが」

千織「いえ、いけます!すぐシャワーあびて準備しますね!」

493: ◆e.A1wZTEY.:2019/4/2(火) 22:50:03 ID:1Hsj4T7jp6

――昼、フマダシ駅

十人程度の異界警察官が集まっていた

部下1「準隊長は、歪世界の列車に乗ったことがあるのですか?私は初めてなのですが」

準隊長「ないわよぉ。たいていの場所は異界警察特権のワープでいけちゃうし、近距離移動も特急車を使うしね。話には聞くから、そういう交通手段があることは知ってるけど」

部下1「ですよねぇ。知能の低い奴らがたくさん乗っているんだろうなぁ・・・」

準隊長「そうね〜。車掌が話が通じる奴だといいわねぇ」


494: ◆e.A1wZTEY.:2019/4/2(火) 22:51:29 ID:1Hsj4T7jp6

『――まもなく、フマダシ駅。フマダシ駅に到着いたします』

車内アナウンスとともに、列車が速度を緩め始める

千織(っと、次の駅で運ぶ荷物は、これと、あの段ボールだな・・・)

慣れた様子で、貨物運搬の準備をする

1分後

ぷしゅーっと音を立て、列車はフマダシ駅に停車した

495: ◆e.A1wZTEY.:2019/4/2(火) 22:53:35 ID:1Hsj4T7jp6

準隊長「乗るわよ」

部下1「はい」

ぞろぞろと列車に足を踏み入れる

ブリアン「はーい、乗車券はこちらでもらいまーす」

準隊長「ん?」

見ると、入り口手前の段差のところで、黒猫が小さな箱を持って立っている

ブリアン「乗車券を持ってない人は、ダッシュで駅の窓口に行って買ってきてねー」

準隊長「あらぁ、可愛い猫ちゃんね。ここに乗車券を入れればいいの?」

ブリアン「そうでーす。下半分をびりっと破って入れてね。上半分はお客さんの控えだよー」

部下1「なるほど」

乗車券を半分に破り、片方を箱に入れた

ブリアン「はいどうもー。いってらっしゃーい」

496: ◆e.A1wZTEY.:2019/5/11(土) 21:43:20 ID:wBkhRdDbz.

――運転席

ピタリと車掌が動きを止めた

車掌「・・・」

車掌「・・・誰か異質な者が、列車に乗ったな」

顔をしかめ、気配を辿る

車掌(歪世界の者とは違って、生きている者の気配だ。人間か・・・?)

わからない

人間の臭いはしないので、人間ともまた違う気がする

車掌「・・・」

車掌(ブリアンのやつ、ちゃんとチェックしろと言っているのに、また適当に客を通したな)

定刻になったので、列車を発車させなければならない

車掌(・・・とりあえず、出すしかない)

アナウンスを入れ、列車のアクセルを入れた

497: ◆e.A1wZTEY.:2019/5/11(土) 21:45:14 ID:wBkhRdDbz.

ゴトンゴトンと音を立て、列車が走り出す

部下1「どうします?早速車掌のところに行きますか?」

準隊長「そうね。彼に会いに来たわけだし、のんびり乗ってても仕方ないわ」

準隊長「とりあえず、運転席の方に向かえば会えるわよね」

部下1「はい。そうしましょう」

「――その必要はありません」

準隊長「・・・あら」

運転席方面の車両ドアから、車掌が現れた

498: ◆e.A1wZTEY.:2019/5/11(土) 21:47:03 ID:wBkhRdDbz.

準隊長「話が早いわね。どうして私たちのことがわかったのかしら?」

車掌「・・・この世界の者ではない気配がいたしましたので」

部下1「ほう。そんなことが察知できるのか」

準隊長「じゃあ、私たちが誰かということはわかってるの?」

車掌「わかりません。車掌として、乗客のことは把握しておかなければなりませんので、確認に来た次第です」

準隊長「・・・ふふ」

準隊長「あなた、しっかりしてるのねぇ。話が通じそうで良かったわ」

499: ◆e.A1wZTEY.:2019/5/11(土) 21:48:58 ID:wBkhRdDbz.

準隊長「私たちは、“異界警察”というの。聞いたことない?」

車掌「・・・異界、警察・・・?」

準隊長「人間界や歪世界など、異世界どうしの間で生じた問題を取り扱う警察よ。存在は公にされてないから、知らないのが普通だけど」

車掌「・・・」

部下1「今回、君に聞き取りしたい件があったので、参上したのだ」

車掌「・・・」

思考が脳内にめぐる

500: ◆e.A1wZTEY.:2019/5/11(土) 21:52:06 ID:wBkhRdDbz.

車掌「・・・なるほど」

車掌「私にわかることでしたら、ご協力しましょう」

準隊長「あらぁほんと?助かるわ」

車掌「断る理由はありませんので」

車掌「しかし、今は業務中で手がはなせません。業務終了までお待ちいただきたく存じます」

部下1「話しながらできないのか?主な業務は運転だろう」

車掌「聞き取りがすぐに終わるのでしたら、対応しましょう」

準隊長「いいわ。そうしましょ」

501: ◆e.A1wZTEY.:2019/6/6(木) 23:43:49 ID:KD8ySevVr2
明日か明後日に更新します
502: ◆e.A1wZTEY.:2019/6/8(土) 23:36:45 ID:KD8ySevVr2

準隊長と部下数人を運転室に通し、会話をする

準隊長「――早速本題に入るけど。10日ほど前、この世界に人間が迷い込んだの」

車掌「・・・人間、ですか」

準隊長「ずっと探しているけど、見つかっていない。普段は、迷い込んだ人間は臭い探知ですぐ見つけられるのに」

準隊長「きっとこの世界の者が人間を捕らえているんだと思うわ。そいつを探しているのよ」

車掌「それで…私に聞きたいことは、人間もしくは人間を捕らえた犯人がこの列車に乗車していないか・・・ということでしょうか」

準隊長「理解が早いわね。そうよ、それが知りたいの」

503: ◆e.A1wZTEY.:2019/6/8(土) 23:39:09 ID:KD8ySevVr2

車掌「・・・」

複数の選択肢が頭に浮かぶ

どう答えることが正解なのか

この者たちが千織を無事に人間界に送り届けてくれるなら、正直に伝えるべきかもしれない

――が、まだ素性がわからない

安易な回答は避けたほうが良いと感じた

車掌「・・・さぁ。申し訳ありませんが、心当たりがございません」

部下1「本当か?」

車掌「はい」

準隊長「・・・ふーん」

504: ◆e.A1wZTEY.:2019/6/8(土) 23:41:07 ID:KD8ySevVr2

準隊長「あなた、人間の臭いをかぎ分けることはできるわよね?」

準隊長「この世界の者は全員、できると聞いたわ」

車掌「・・・そうですね。確かに近距離であればわかります」

準隊長「だから、仮に貨物に紛れ込んだりしていても、人間が列車内に存在していたらわかるってことよね」

車掌「・・・はい」

準隊長「それでも心当たりはなかったと」

車掌「はい。ありませんでした」

迷いの態度は疑いを生む

車掌は毅然とした口調で答えた

505: ◆e.A1wZTEY.:2019/6/8(土) 23:43:19 ID:KD8ySevVr2

部下1「嘘は言っていまいな?」

部下2「虚偽の証言は許さんぞ」

車掌「はい」

準隊長「・・・おかしいわねえ」

準隊長「こちらの調査では既に、犯人がササノコ駅、キサラギ駅、アカダコ駅を経由していることはわかってるんだけど」

車掌「・・・!」

準隊長「この世界において、短期間でこれらの駅を経由するためには、ほぼ確実にこの列車に乗る必要があると思うのよね」

506: ◆e.A1wZTEY.:2019/6/8(土) 23:50:24 ID:KD8ySevVr2

車掌「・・・何の証拠をもって、それらの駅の経由がわかるのですか?」

準隊長「普段の1000倍超高度な人間探査機を使ったの。そしたら、これらの駅に判定がでたわ。微かな臭いが残っていたのね」

車掌「・・・もしこの列車に人間が乗車したことがあるのならば、この車両にも判定は出るのでは?」

準隊長「それが出なかったらしいのよねえ。なぜかしら」

車掌「・・・乗車した事実はないということなのではないですか」

準隊長「乗車しないと町間の移動ができないわ」

準隊長「この謎を解くために、列車内を調べさせてもらいたいの」

車掌「・・・」

507: ◆e.A1wZTEY.:2019/6/8(土) 23:55:43 ID:KD8ySevVr2

列車内に人間の判定が出なかった理由は明白だ

千織を歪世界の者から守るために、列車を車掌の精力で覆い、存在を探知できないようにしていた

車掌(・・・異界警察などという組織が探知を試みていたとは知らなかったが)

また、彼らの話が本当ならば、おそらく沖恭太の安否もわかっているはず

車掌(・・・だが、今は不用意な質問はできない)

車掌「・・・わかりました」

車掌「そういうことであれば、列車内を調査することを許可しましょう」

部下「!」

準隊長「・・・へぇ。いいの?」

車掌「何か手がかりが得られれば、それは異界警察様のお役に立てたということですので」

508: ◆e.A1wZTEY.:2019/6/8(土) 23:58:59 ID:KD8ySevVr2

準隊長「・・・ふふ」

準隊長「では、お言葉に甘えてそうさせて頂こうかしら。全車両を調べさせてもらうわ」

車掌「ただ、お客様がお困りになるようなことはやめてください」

準隊長「もちろんよ。それは配慮するわ。でもね――」

ガッッ

車掌「!」

部下が素早く、車掌の両手を鎖で拘束した

準隊長「念のため、あなたには何も動かずにいてほしいの。念のためね」

車掌「困ります。これでは運転ができません」

準隊長「大丈夫、運転できるだけの自由はあげるわ」

やや緩められた鎖が、運転室のドア横にある柱に巻き付けられる

準隊長「部下をここに置いていくから、絶対ここから出ないでね」 ニッコリ

509: 名無しさん@読者の声:2019/8/14(水) 18:31:30 ID:ofTUkzJ/j2
いいぞぉ
510: ◆e.A1wZTEY.:2019/9/12(木) 08:58:58 ID:RSUiwP9n.s
>>509
お待たせしてすみません!
今週中に更新します
511: ◆e.A1wZTEY.:2019/9/15(日) 14:52:04 ID:wjAhgKvSuo

車掌「・・・私も立ち会わせてください」

車掌「警察とはいえ皆様は部外者です。私がいないところで好き勝手されては困ります」

準隊長「別に乱暴なことはしないわ。人間の痕跡を探すだけ」

準隊長「それとも、何か不都合なことでもあるのかしら?」

車掌「・・・」

準隊長「あ。そうそう、鍵のかかってる車両とかある?」

車掌「・・・」

準隊長「あるのね。どこ?一番後ろの貨物車両とかかしら」

512: ◆e.A1wZTEY.:2019/9/15(日) 14:53:35 ID:wjAhgKvSuo

車掌「・・・7両目の寝台車両と8両目の貨物車両です。これらの車両は現在お客様の立ち入りを禁止していますので」

準隊長「そう。じゃあ、それらの鍵を貸してちょうだい」

車掌「お渡しすることはできません。同行させて頂ければ通します」

準隊長「強情ねえ」

ため息をつく

準隊長「ならいいわ。少し手荒になるかもしれないけど鍵開けが得意な部下にやらせるから」


513: ◆e.A1wZTEY.:2019/9/15(日) 14:57:05 ID:wjAhgKvSuo

車掌「なぜ私は同行を許してもらえないのでしょうか?私は人間を攫った犯人として疑われているということでしょうか」

準隊長「・・・」

にっこりと微笑む

準隊長「やだぁ。そんなわけないじゃない?」

準隊長「あなたの評判、知ってるわよ。非常にまじめに列車業務に従事して、規律を決して破らない。時間厳守を徹底する。快適な列車の旅を提供するために努力を怠らない――」

車掌「・・・」

準隊長「こんな列車オタクが、人間になんて興味を示すはずないですものね」

準隊長「でも、言ったでしょう?“念のため”だって」

514: ◆e.A1wZTEY.:2019/9/15(日) 14:59:47 ID:wjAhgKvSuo

千織「・・・ふー。ちょっと休憩しよ!」 ボフッ

力仕事に疲れ、寝台車両のベッドに身体を投げる

千織「次の駅は貨物ないみたいだし、20分くらい時間あるよね・・・」

寝ないようにだけしないと、と考えながら目を閉じる

千織「・・・」

千織「・・・」

千織「・・・ん?」

不意に、頭上に気配を感じ、顔を上げた

515: ◆e.A1wZTEY.:2019/9/15(日) 15:01:35 ID:wjAhgKvSuo

千織「――!?!?」

ぎょっとする

天井から巨大な精力の手が出現していた

千織「しゃ、しゃ、しゃ、車掌さん・・・!?」

これは車掌が出現させているものだということは経験から学んだ

だが、いったい何のためにこれが今出ているのか

千織「・・・」


516: ◆e.A1wZTEY.:2019/9/15(日) 15:03:29 ID:wjAhgKvSuo

焦って周囲を見渡すが、車掌の姿もブリアンの姿もない

千織「ど、どうしよ・・・」

あたふたしていると、精力の手はぬっと大きく掌を広げた

千織「ひっ・・・」

そのまま優しく千織を包み込み、ゆっくりと持ち上げる

千織「・・・」

反射的に目をつぶるが、危険は感じない

手は千織を包み込んだまま、天井に向かって吸い込まれた

517: ◆e.A1wZTEY.:2019/9/15(日) 15:06:34 ID:wjAhgKvSuo

千織「―――う。まぶし・・・」

陽の光が顔に当たる

千織「え・・・」

千織「えええええ!?!?」

千織は走る列車の外――寝台車両の真上に座り込んでいた

風が勢いよく身体をつきぬける

千織「な、なんでこんなところに」

千織が落ちないように、精力の手が柵のように周囲をかこんでいる

千織「車掌さん、説明してくださーい・・・」

小さなか細い声が、風の音にかき消された

518: ◆e.A1wZTEY.:2019/11/2(土) 18:58:13 ID:uXZCkO.GE2

部下2「――3両目。人間の痕跡はありません」

部下3「4両目もありません。人外の客が乗っているのみで、探査機も反応しません」

ザワザワ 

乗客1「な、なんだこいつら?」

乗客2「警察みたいな格好してるな・・・お、おとなしくしとこうぜ」

5〜6人の異界警察がぞろぞろと探索をはじめ、列車は異様な空気に包まれた

ブリアン「・・・」

その様子を、網棚の上からブリアンが眺める

519: ◆e.A1wZTEY.:2019/11/2(土) 18:59:53 ID:uXZCkO.GE2

ブリアン「・・・あらら。適当に仕事してたら変な奴ら通しちゃったみたいね」

ブリアン「また車掌に怒られちゃうな〜やだな〜」

ブリアン「・・・」

ブリアン(・・・普通に考えて、こいつらはきっと千織を探してる)

ブリアン(服装を見る限り・・・警察っぽいな。異質な奴らに列車に上がられて、車掌が黙ってるわけないと思うけど)

ブリアン(・・・あいつ今何してるんだ)

周囲を見渡しながら、怪しまれないように運転室へと向かった

520: ◆e.A1wZTEY.:2019/11/2(土) 19:02:20 ID:uXZCkO.GE2

車掌「・・・」

ガチャッ

手を動かすと、鎖がぶつかり音を立てた

車掌「・・・」

目を細め、顔をしかめる

腕が鎖で柱と繋がれたために、運転動作以外身動きが取れない

加えて、背後には準隊長の部下が待機しており監視されている

車掌(千織は避難させたから、おそらく見つからない・・・。寝台車両や貨物車両も私の精力で覆われている。人間の気配も感じ取れないはず)

521: ◆e.A1wZTEY.:2019/11/2(土) 19:04:24 ID:uXZCkO.GE2

だが、何だか嫌な予感がする

一刻もはやく千織の元へ向かいたい


「にゃ〜」

車掌「!」

部下1「「なんだ?」

運転室の外にブリアンの姿が見えた

ガイガイとドアを引っ掻いている

部下1「なんだなんだ。猫の客か?それともこの列車で飼っているのか」

車掌「・・・」

522: ◆e.A1wZTEY.:2019/11/2(土) 19:07:57 ID:uXZCkO.GE2

部下2「6両目まで調査が終了しましたが、異常はありません」

準隊長「ふーん。じゃあ、鍵がかかってるとかいう7両目と8両目を拝見しましょうか」

準隊長「鍵開けが得意なひとー。お願いね」

部下3「はっ」

ガチャガチャ

ガチャガチャ

ロックのかかったドアの鍵穴に針金のようなものを差し込み、作業する

準隊長「どお?開きそう?」

部下3「複雑なものではなさそうです。すぐ開けられます」

ガチャッ

部下3「開きました!」

準隊長「グッジョブ〜!さぁみんな行くわよ」

523: 名無しさん@読者の声:2019/11/11(月) 18:17:00 ID:EBmepaSjlI
しえん
524: ◆e.A1wZTEY.:2019/11/20(水) 01:23:45 ID:uXZCkO.GE2
>>523
支援ありがとうございます・・・!!
今週中には更新したいと考えてます

525: ◆e.A1wZTEY.:2019/11/25(月) 20:35:12 ID:uXZCkO.GE2

-----------

部下2「――7両目および8両目、不審な点はありません」

準隊長「・・・」

部下2「いかがいたしますか?」

準隊長「・・・」

準隊長「・・・不思議ねえ。私の勘が、ここに何かあるって言ってるのに」

準隊長(この列車に乗ったことは間違いないはず・・・でも、ひとかけらの痕跡も見つからない)

準隊長(完璧すぎる・・・妙だわ)

526: ◆e.A1wZTEY.:2019/11/25(月) 20:36:20 ID:uXZCkO.GE2

準隊長(それともまだ隠し部屋があるのかしら・・・)

周りを見渡しながら、ふと、窓の外に目をむけた

緑のない殺風景が視界に入る

準隊長「――・・・」

準隊長「この列車・・・」

ひとつの違和感に気づく

準隊長「・・・何を、動力にしてるの?」

527: ◆e.A1wZTEY.:2019/11/25(月) 20:37:46 ID:uXZCkO.GE2

部下2「え?」

準隊長「てっきり電力だと思い込んでいたけど。でも、線路脇に集電装置がないし、上空に架線もない。普通の電車じゃありえないわ」

準隊長「蒸気で走ってるようにも見えないし・・・歪世界特有の動力でもあるのかしら?」

部下2「さ、さぁ・・・わかりません。車掌に聞いてきましょうか?」

準隊長「いいわ。上に調査をお願いすればわかるかも」

そう言ってポケットから通信機器を取り出した

ピッピッとボタンを押す

528: ◆e.A1wZTEY.:2019/11/25(月) 20:39:39 ID:uXZCkO.GE2

準隊長「・・・――あ〜もしもし?隊長ですかあ?」

準隊長「ちょっと早急に調べてほしいことがあるんですけどぉ」

準隊長「え〜?ちゃんとやってますよ!任務に関することですから」

準隊長「歪世界の列車のことなんですけどね・・・動力は何なのかご存知です?」

準隊長「それがどうにも、電力じゃなさそうなんですよねえ。私も詳しくはないんですけど」

準隊長「5年くらいに前に、確か一度歪世界の実態調査しましたよね?それがちゃんとしてるなら、列車の仕組みについても多少記載されてると思うんですよね」

529: ◆e.A1wZTEY.:2019/11/25(月) 20:43:18 ID:uXZCkO.GE2

準隊長「車掌?車掌はちょっと・・・ええ、ええ、別に手荒なことはしてないですよ」

準隊長「でも、もし嘘とかつかれたら面倒ですから。ちょっと調べてもらってもいいです?」

準隊長「・・・はい。はーい。ありがとうございますぅ」

ピッ

通話を切り、機器をしまう

準隊長「これでオッケー」

部下2「しかし・・・仮に電力じゃなくても、人間が見つからないことと関係があるんですかね?」

準隊長「さぁ。でも、もしも”人間の命”とかを燃料にして走ってたら・・・怖いと思わない?」 ニッコリ

530: 名無しさん@読者の声:2019/11/26(火) 23:43:55 ID:Ulgjh/Ikt2
支援

ダークな展開、めっちゃ好きです
531: ◆e.A1wZTEY.:2019/11/28(木) 00:14:09 ID:uXZCkO.GE2
>>530
支援ありがとうございます!!
そう言っていただけて嬉しいです〜
532: ◆e.A1wZTEY.:2019/11/28(木) 00:19:26 ID:uXZCkO.GE2
あ、あの、あの、たった今気づいたのですが、
このSSまとめ掲載して頂いていたのですか!?
しかも、今年の2月に載せていただいたようで…まっったく気づいておりませんでした!!
9ヶ月も前に…うおおもっと頑張って更新していれば良かったああ申し訳ないです;
とても光栄です、本当にありがとうございます!今後とも書き続けていきますのでよろしくお願いいたします
533: ◆e.A1wZTEY.:2019/12/11(水) 23:33:55 ID:rVcw3SKl36

ブリアン「にゃあ〜」

ガイガイと運転室のドアをひっかく

車掌「――あの猫はこの列車のマスコットなのです」

部下1「マスコット?」

車掌「どこの世界でも、かわいいマスコットは人気なのですよ。とても集客効果があります」

部下1「ま、まあ確かに・・・綺麗な黒の毛並みでかわいいな」

車掌「そろそろご飯の時間なので、私にまだかと言ってきてるんです」

部下1「ほう」

車掌「良かったらご飯あげてみますか?」

534: ◆e.A1wZTEY.:2019/12/11(水) 23:35:39 ID:rVcw3SKl36

部下1「! い、いいのか?」

車掌「はい。猫をこの部屋に入れてくれませんか?」

部下1「ふむ・・・まぁ、猫くらいならいいだろう」

車掌を繋ぐ鎖を持ちながら、ドアをわずかに開け、隙間をつくった

ブリアン「にゃん」

スッとブリアンが運転室に入り込んだ

部下1「来た来た」

車掌「・・・」

部下が目を離した隙に、精力で猫の餌を錬成する

535: ◆e.A1wZTEY.:2019/12/11(水) 23:38:19 ID:rVcw3SKl36

車掌「これをどうぞ」 ニッコリ

部下1「お、キャットフードか。準備がいいな」

バッ

手渡す前に、ブリアンが餌をもつ車掌の腕にとびついた

部下1「おわっ、元気がいいな!?」

肩までのぼってきたブリアンに耳打ちする

車掌『異界警察とかいう輩だ。千織を探してる』

ブリアン『・・・』

車掌『千織は列車の上に隔離した。面倒を頼む』

最低限の言葉を伝えると、ブリアンは肩から飛び降り、今度は部下の足元にすり寄った

536: ◆e.A1wZTEY.:2019/12/11(水) 23:41:43 ID:rVcw3SKl36

ブリアン「にゃあ〜」

部下1「よしよし、餌がほしいんだろう」

車掌から餌を受け取り、差し出す

ブリアン「にゃあ〜〜」 モグモグ

部下1「食ってる食ってる」

ブリアン「にゃ」 ダッ

部下1「あ!」

ブリアンは少し食べると、運転室を飛び出していった

部下1「もう満足したのか・・・」 ショボン

車掌「猫って飽き性なんですよね。すみません」

537: 名無しさん@読者の声:2019/12/26(木) 23:17:56 ID:/NPzTh4qO.
めりーくりすます!!
538: ◆e.A1wZTEY.:2019/12/28(土) 03:01:10 ID:rVcw3SKl36
>>537
メリークリスマス!!
良いお年をお迎えください(*^-^*)
539: ◆e.A1wZTEY.:2019/12/29(日) 23:05:06 ID:rVcw3SKl36

準隊長「――せいりょく?」

通信機器を耳にあて、目を見開く

隊長『あぁ。俺も知らなかったが・・・』

準隊長「性力って。そんないやらしい力・・・」

隊長『米偏に青の力な。心身のエネルギーみたいなものか』

準隊長「それ、歪世界の住人に無くて人間に有るものですよね」

隊長『あぁ。調査報告では、車掌が人間の精力を奪ったという前科はないようだが・・・人間を欲するには十分な理由だ。よく気づいたな』

準隊長「女の勘ってやつですわね。オホホ」

540: ◆e.A1wZTEY.:2019/12/29(日) 23:07:06 ID:rVcw3SKl36

準隊長「ところで、そもそも何で動力が精力?」

隊長『そこまでは調べられていないな・・・車掌はどうやって操作しているのか』

準隊長「怪しい。怪しすぎますね。人間の気配はありませんでしたけど、きっと何かある」

隊長『よし。調べられるだけ調べてこい』

準隊長「あら・・・そんなこと言っていいんです?」

隊長『ん?』

準隊長「最初は“列車に人間の痕跡がないか”ということを前提で調査してましたけど、そういうことなら、車掌を縛り上げます」

準隊長「黒である可能性が高いと判断できれば、手荒な手段も投じます」

隊長『・・・かまわん。人間を安全に保護することが我々の最優先事項だ』


541: ◆e.A1wZTEY.:2019/12/29(日) 23:08:40 ID:rVcw3SKl36

千織「――へっくしゅん!」

列車の屋根に座り込み、くしゃみをする

精力の手が風よけをしてくれてはいるが、やはり寒い

千織「車掌さーん、いつまでここにいればいいんですかー・・・?」

精力の手に話しかけてみるが、反応はない

千織(なんでこんな所に置かれてるんだろう)

千織(もしかして、列車の中でなにかあった・・・?)

千織(私に危害が及ばないように、守ってくれてる、とかなのかな・・・)

542: ◆e.A1wZTEY.:2019/12/29(日) 23:11:54 ID:rVcw3SKl36

「――千織」

千織「!」

背後から呼ばれ、振り返った

千織「ブリアンさん・・・!!」

ブリアンが屋根の上に立ち、こちらに歩み寄ってきていた

千織「良かった、ブリアンさん!私、精力の手?にここに連れてこられたみたいなんですけど、どうしたらいいのかわからなくて・・・」


543: ◆e.A1wZTEY.:2019/12/29(日) 23:14:26 ID:rVcw3SKl36

ブリアン「・・・」

ブリアン「まさか屋根に隠すなんてね。ここしかないとはいえ、咄嗟によくやったもんだ」

千織「列車で何かあったんですか?車掌さんは・・・」

ブリアン「異界警察が来たんだよ。千織を探してる」

千織「異界警察・・・?」

ブリアン「思ったより早かった。さすがって感じだね」

千織「どういうことですか?警察が来て、私を探してるんですか?」

ブリアン「そう。彼らは異世界間の秩序を守る組織。歪世界に迷い込んだ人間を助けに来たんだよ」

千織「・・・!」

544: ◆e.A1wZTEY.:2020/1/22(水) 00:54:05 ID:BVk53N/NaE

千織「そ、そんな人たちがいたなんて」

ブリアン「この列車は車掌の精力で覆われてるから、そう簡単に見つからないと思ったんだけどねえ」

千織「け、警察ってことは、悪い人ではないんですよね?念のため、車掌さんは私を隠してくれてるってことですか」

ブリアン「そうだね。異界警察なんて、歪世界の住人は知らないから。いきなり現れた得体のしれない奴らにはいどうぞと渡せないでしょ」

千織「・・・?」

千織「ブリアンさんは、どうして異界警察のことを知って・・・」

ブリアン「・・・さあね」

千織「さあって・・・」

545: ◆e.A1wZTEY.:2020/1/22(水) 00:59:21 ID:BVk53N/NaE

ブリアン「おっと、そんな説明してる場合じゃなかった。いつまでもこんなとこにいたら風邪ひくし、別のところに隠れよう」

千織「え、あ、そうですね・・・精力の手が風よけしてくれてるんですけど、やっぱり寒いです」

ブリアン「っていっても、ここ以上に見つからない場所なんてないんだけど」

千織「え」

ブリアン「でも、ここもいずれ見つかる」

千織「ど、どうすればいいんですか?」

ブリアン「・・・列車を降りよう」

千織「え・・・?」

546: ◆e.A1wZTEY.:2020/1/22(水) 01:00:52 ID:BVk53N/NaE

一瞬を耳を疑う

ブリアン「列車を降りるんだ。ここから飛び降りて」

千織「え、えええええ!?!?」

千織「いやいやいや無理ですよ!!怪我しちゃいますよ!!」

千織「仮に安全に降りられたとしても、また怪物に襲われてしまいますし・・・!」

ブリアン「着地は精力の手が守ってくれる。人間の臭いは消えてるからすぐに襲われることもない」

ブリアン「すぐに車掌が迎えに来てくれるよ。それまでの辛抱だ」

千織「・・・」

千織「・・・それは、車掌さんの指示ですか?」

547: ◆e.A1wZTEY.:2020/1/22(水) 01:01:57 ID:BVk53N/NaE

ブリアン「ん?」

千織「列車から降りたら、見つけてもらうのすごく大変だと思うんです。見つかるなら、沖くんだって・・・」

ブリアン「千織は気づいてないと思うけど、身体に列車の精力がついてるんだ。だからそれが目印になる」

千織「でも・・・」

ブリアン「このままだと異界警察に見つかって、人間誘拐と監禁の罪で車掌が捕まるんだよ」

千織「・・・!」



548: ◆e.A1wZTEY.:2020/1/22(水) 01:03:45 ID:BVk53N/NaE

千織(私が見つかったら、車掌さんにも危険が及ぶ・・・?)

千織「で、でも」

千織「話したらきっと、わかってくれますよね。警察だし・・・車掌さんは悪い人じゃないって、私が言えば」

ブリアン「人間界ではさ」

ブリアン「罪を犯した人間が、”この人は悪い人じゃない”って言ってもらえれば、許してもらえるの?」

ブリアン「たとえ目的が人を助けるためでもあっても、犯罪は犯罪なんだよね」

千織「・・・そんな」

千織「車掌さんは、私の身の安全を確保してくれていたんです。罪なんて犯していません」

ブリアン「そんな綺麗ごとをそのまんま信じてもらえるなんて期待しないほうが良いって話」

549: 名無しさん@読者の声:2020/1/28(火) 18:22:40 ID:n4MI9ARbPE
支援〜ノC
550: ◆e.A1wZTEY.:2020/2/13(木) 20:41:00 ID:7pU5WGbVn6
>>549
支援感謝いたします!!
今週中に更新しまする〜〜
551: ◆e.A1wZTEY.:2020/2/16(日) 12:03:22 ID:7pU5WGbVn6

千織「・・・」

千織「・・・わかりました。確かに、ブリアンさんの言うことは間違ってないと思います」

ブリアン「うん」

千織「列車から飛び降りればいいんですよね。着地は精力の手が守ってくれるし、降りた後も私の身体に付いた列車の精力が目印になる」

ブリアン「そう」

千織「・・・そういうことなら、やってやりますよ」

立ち上がり、急速に流れていく地面を見つめる

千織「・・・」

ゴクンと唾をのみ込む

大丈夫だとわかっていても、やはり飛び降りるのは勇気がいる

552: ◆e.A1wZTEY.:2020/2/16(日) 12:05:44 ID:7pU5WGbVn6

ブリアン「・・・」

千織「・・・い、いきます」

目をつむり、意を決して屋根から足を外した




車掌「!!」

その一瞬に、車掌の神経に警報が響いた

車掌「なにやってる!!!!」

部下1「おわっ!なんだ!?」

553: ◆e.A1wZTEY.:2020/2/16(日) 12:08:12 ID:7pU5WGbVn6

宙を舞った千織の身体を、一瞬遅れて精力の手が追う

千織の身体が地面にぶつかる瞬間――

ズササササッッッッ

ぎりぎりのところで精力の手が千織の下に滑り込み、クッションになった

千織「きゃっ・・・」

地面を削るような衝撃が伝わる

数秒、精力の手とともに地面を引きずられた後、動きが止まった

千織「・・・」

千織「・・・しゃ、車掌さん・・・」

自分の下敷きとなり、ボロボロになった精力の手を抱きしめる

554: ◆e.A1wZTEY.:2020/2/16(日) 12:11:16 ID:7pU5WGbVn6

千織「・・・ごめんなさい・・・」

千織「助けてくれて、ありがとう・・・」

電車の姿は既に、遠く彼方へ小さくなっていた




ブリアン「・・・うーわ」

驚いたように目を丸くする

ブリアン「まじで助けたんだ」

正直、精力の手が間に合う可能性は低いと思っていた

あそこまで動かすためには、間違いなく車掌の意思が必要だ

あの一瞬で、千織の危機を察知し、精力の手を動かした

ブリアン(・・・やっぱり恐ろしいやつだね、君は)

555: 名無しさん@読者の声:2020/3/10(火) 04:42:02 ID:q/tbxYcTSE
千織ちゃんが無事でよかった!
つCCCC
556: ◆e.A1wZTEY.:2020/3/15(日) 12:55:35 ID:/tDptHe//U
>>555
いっぱい支援感謝です!(*- -)(*_ _)ペコリ
557: ◆e.A1wZTEY.:2020/3/15(日) 13:01:05 ID:/tDptHe//U

車掌「・・・」ハァ、ハァ

部下1「お、おい。いきなり叫んでどうした?大丈夫か」

車掌「・・・いえ・・・」

車掌「なんでも・・・」 ハァ、ハァ

見ると、右腕を痛そうに押さえている

部下1「? 腕がどうかしたのか?」

車掌「・・・」

大きな精力を1つ損失した形だ

回復には少々時間がかかりそうだった

558: ◆e.A1wZTEY.:2020/3/15(日) 13:03:10 ID:/tDptHe//U

部下1「おい、聞いてるのか?」

車掌「・・・列車を」

部下1「ん?」

車掌「列車を、引き返します」

部下1「・・・は?」

部下1「そ、そりゃまたどういうことだ?お前、本当にどうしたんだ」

車掌「・・・」

車内アナウンスを入れる

559: ◆e.A1wZTEY.:2020/3/15(日) 13:05:56 ID:/tDptHe//U

車掌『――お客様へ、お知らせいたします』

車掌『諸事情により、次のミズカキ駅に到着後、1つ前の駅であるヒナコ駅に戻らせて頂きます』

乗客「なんだ、なんだ?」

乗客「列車を戻すだって?」

ざわざわ

車掌『10分ほど時間を要しますが、その後はふたたびミズカキ駅方面へ走り、当初の予定通り終点まで走ります』

車掌『ご迷惑をおかけして申し訳ありません。ご理解のほどよろしくお願い申し上げます』

560: ◆e.A1wZTEY.:2020/3/15(日) 13:13:18 ID:/tDptHe//U

準隊長「――ひと駅戻るなんて相当なイレギュラーね」

部下1「準隊長!」

運転室に、列車調査を行っていた準隊長たちが入ってきた

準隊長「何があったのかしら?」

車掌「・・・」

車掌(千織が落ちた地点に戻るまでおそらく10分・・・。千織を助けるところは確実に目撃される)

車掌(・・・いや。こいつらはどう見ても私を疑っている。時間の問題か)

準隊長「何を考えているの?」

車掌「人間を連れ戻します」

561: ◆e.A1wZTEY.:2020/3/15(日) 13:16:12 ID:/tDptHe//U

「―――!?」

その場の空気が凍った

準隊長「・・・へぇ。どういうこと?」

車掌「予期せず人間が列車外に落ちたので助けにいきます」

準隊長「・・・あははっ」

準隊長「問い詰める前に自分から吐いてくれるのね」

車掌「その顔をみると、そちらも何か手がかりを掴んだのでしょう?」

準隊長「えぇ。あなたが“精力”というものを操るということをね」

準隊長「人間は精力の塊・・・関連を考えずにはいられないわ」

車掌「・・・」

準隊長「まだ証拠は掴んでないけど、あなたを徹底的に調べさせてもらおうと思っていたところ」

562: ◆e.A1wZTEY.:2020/4/22(水) 16:11:55 ID:blwQXIi.BE

車掌「・・・私は人間を保護していました」

車掌「あなた方は警察だと仰いました。しかし、素性がわからず、人間・・・彼女をあなた方に引き渡しても、彼女の安全が保証されるのか疑問だったので、隠させて頂きました」

準隊長「なるほどね。で、どうして隠し通そうと思わなかったの?」

準隊長「“保護”とかいう生ぬるい言葉使えば自分の罪が許してもらえると思った?」 ニッコリ

車掌「・・・バレるのは時間の問題だと思いましたので」

車掌「列車を引き返して、人間を連れ戻すところを隠すことは無理でしょう」

準隊長「そうね。間違いないわ」

563: ◆e.A1wZTEY.:2020/4/22(水) 16:12:58 ID:blwQXIi.BE

列車はミズカキ駅に停車後、もと来た線路を引き返し始めた

準隊長「さっき列車外に落ちたって言っていたけど・・・」

準隊長「もしかして屋根の上に隠していたの?だったら見つからないわけだわ」

準隊長「でも、下に落としちゃうなんて“保護者”として詰めが甘いんじゃない?そもそも人間は生きているのかしら?」

車掌「生きています。ただ、時間が経てばこの世界の者に襲われるかもしれない」

準隊長「・・・ふぅん、いいわ。それじゃ、あなたが人間を助けるところ、この目で確認させてもらいましょう」


564: ◆e.A1wZTEY.:2020/4/22(水) 16:14:25 ID:blwQXIi.BE

千織「・・・車掌さん、大丈夫かな・・・」

見知らぬ土地で、精力の手の残骸を抱きしめながらうずくまる

線路から離れすぎない場所で、かつ人目につかない木の下に移動していた

千織(ブリアンさんの指示で下におりちゃったけど・・・迷惑かけてるよね、きっと)

千織(異界警察・・・とかいうのにも、対応しなきゃだろうし)

千織(私のせいで車掌さんが逮捕、とかないよね?)

千織(嫌な予感がする・・・)

565: ◆e.A1wZTEY.:2020/4/22(水) 16:17:49 ID:blwQXIi.BE

車掌「・・・私からも1つ、お尋ねしてもよいですか」

準隊長「内容によるかしら」

車掌「・・・」

車掌「迷い込んだ人間は、もう1人いたと思います」

車掌「彼の現在を正しく説明してくださるのであれば、あなた方のことをおおむね信用します」

準隊長「・・・はてさて、あなたに信用される必要があるのかしらね?」

車掌「・・・」

566: ◆e.A1wZTEY.:2020/4/22(水) 16:21:04 ID:blwQXIi.BE

準隊長「まぁいいわ。あなたがもう1人のことを知っているのは、”彼女”が“彼”の知り合いだからよね」

準隊長「それとも、もしかして彼を最初に捕まえたのはあなただったの?」

車掌「前者が正しいです。彼は今どうなっていますか」

準隊長「魚人に捕らえられているところを我々異界警察が保護して、人間界に帰還させたわ。ここでの記憶を消してね」

車掌「・・・」

準隊長「彼の名前は、沖恭太。記憶を消す前、何度も『ちおちゃん、ちおちゃん』と呟いていたわ。・・・可愛いわよね、恋人だったのかしら?」

567: ◆e.A1wZTEY.:2020/4/22(水) 16:28:33 ID:blwQXIi.BE

車掌「・・・あなた方は、本当に警察なのですね。そんなものがこの世界に介入していたとは、知りませんでした」

準隊長「それが普通よ、非公開の組織だもの。逆に知っていたら、怪しさ満点よ」

車掌「・・・」

車掌「私が言わなくとも、だと思いますが。彼女を保護したら、安全に人間界へ帰還させてください」

車掌「彼女はこれまで、この世界に沖恭太が残っていると思って、頑なに帰ろうとしなかったんです。だが、彼の消息がわかった今、この世界にとどまる理由はありません」

準隊長「え?なに、あなた、人間界に帰そうと思えば帰せたって言うの?」

車掌「・・・多量の精力を消費すれば」

準隊長「へえぇ。面白いわ。あなたのこと、一度調べてみたいわね」

準隊長「ちなみに、最初こちらのニオイ探査機に反応が出なかったのはどうして?」

車掌「・・・この列車は、私の精力で形成されています。1人の人間の存在を覆い隠すことは難しくない」

準隊長「なるほどね」

568: ◆e.A1wZTEY.:2020/5/21(木) 02:33:42 ID:XCexI6W0e.

ガタンゴトン ガタンゴトン

車掌(・・・そろそろ、千織が落ちた地点だ)

部下1「・・・あ!」

部下1「じゅ、準隊長!あそこの木の陰に・・・!」

準隊長「・・・!」

車掌「・・・列車を停めます」

プシューッ

車掌『お客様へご連絡いたします。当列車は5分ほどこの場で停車いたしますが、すぐミズカキ駅方面へ再出発いたしますので、そのままお待ちください』

569: ◆e.A1wZTEY.:2020/5/21(木) 02:35:00 ID:XCexI6W0e.

千織「・・・!!」

千織「列車だ!!!」

立ち上がり、思い切り手を振る

千織「車掌さん、車掌さーん!!」 ブンブン

千織(戻ってきてくれた・・・!車掌さんを信じて良かった・・・!!)

間近に列車が停まり、運転室に近いドアが開く

千織「・・・え?」

ぞろぞろと出てきたのは、警察官のような風貌をした者たち

千織「っ・・・!」

千織(ブリアンさんの言っていた、異界警察・・・!?)

570: ◆e.A1wZTEY.:2020/5/21(木) 02:36:29 ID:XCexI6W0e.

準隊長「――こんにちは」

準隊長「やっと会えたわね。無事でなにより」

千織「あ、あの・・・」

準隊長「私たちは異界警察。あなたを保護し、人間界へ送り届けます」

千織「え・・・!」

複数人の警官たちに取り囲まれる

千織「ま、待ってください。車掌さんは・・・」

準隊長「・・・車掌とは会わせないわ」

571: ◆e.A1wZTEY.:2020/5/21(木) 02:37:43 ID:XCexI6W0e.

千織「え?」

準隊長「どんな理由であろうと、彼は人間の拉致・監禁の罪を犯したことになる」

千織「そ、それは!私を助けるために・・・!!」

準隊長「安心して。あなたを人間界へ帰すことには賛同してるから」

準隊長「あと、沖恭太。あなたの恋人?友達?も、保護して人間界へ帰還ずみ。他に何か困ることあるかしら?」

千織「・・・!!!」


572: ◆e.A1wZTEY.:2020/5/21(木) 02:39:40 ID:XCexI6W0e.

車掌「・・・」

千織と準隊長のやりとりを、運転室の窓から見つめる

車掌(・・・これでいい。千織をこれ以上この世界に縛る理由はない)

ブリアン「本当にいいわけ?」

車掌「・・・ブリアン」

いつの間にか、ブリアンが横に立っていた

ブリアン「このままじゃ、車掌もあいつらにどうされるかわかんないし、いいことなさそう」

車掌「・・・お前」

車掌「なぜ、千織を車外に落とした」

ブリアン「・・・」

車掌「精力の手がうまく受け止められなかったら千織は死んでいた。返答次第ではお前を許さない」

ブリアン「・・・フフ」

ブリアン「いいね。許さない・・・か。なかなか、エモいセリフを吐くようになったね」

573: ◆e.A1wZTEY.:2020/5/21(木) 02:43:13 ID:XCexI6W0e.

ブリアン「屋根の上だっていつかは見つかるでしょ。だったらいっそ、車外に落として一時的にでもやり過ごすべきだと思ったんだ」

ブリアン「もちろん、車掌が精力の手で落下時の衝撃を守ってくれるだろうって信頼したうえでね」

車掌「だが結局、列車を引き返させたことで隠すどころではなくなった」

ブリアン「そこが僕の見込み違いだった。車掌ならもう少しうまくごまかすと思ったんだけどなあ、まさか速攻で吐くなんて」

車掌「ごまかす?どうやって?千織をあの場所に放置しておくなんて」

ブリアン「前の君ならできたよね。実際千織に人間の臭いは残ってないし、あの場所はひと気もないし、少なくとも1日くらいは安全だったと思うよ」

車掌「・・・前の私だと」

ブリアン「気づいてないとか言わないよね。自分のことだよ?」

574: 名無しさん@読者の声:2020/7/4(土) 22:04:50 ID:yEz/WR3Wj.
コロナで大変だけど頑張って更新しエレストてくれぇぇぇえ!応援してるぞ!!面白いからな!!!
575: ◆e.A1wZTEY.:2020/7/6(月) 19:53:47 ID:VdGDHZ34nE
>>574
うおおお嬉しいお言葉ありがとうございます・・・!!
最近リアルがバタついておりまして、申し訳ないです
でもそのコメントのおかげで元気いっぱいになりました!
数日以内に更新しますね(*^▽^*)
576: ◆e.A1wZTEY.:2020/7/10(金) 22:57:18 ID:VdGDHZ34nE

―――人間界

恭太が紫苑と接触してから4日後

恭太のもとへ紫苑から電話がかかってきた

紫苑『やぁ、待たせてすまなかったね。戸野千織が消息を絶った千賀池周辺を調査していたんだが・・・』

紫苑『色々わかったことがあるから、君ともう一度会いたいんだ』

恭太『わかった。いつ行けばいい?』

紫苑『今日の深夜1時、千賀池で会おう』

577: ◆e.A1wZTEY.:2020/7/10(金) 22:58:31 ID:VdGDHZ34nE

――深夜、千賀池

紫苑「やぁ、こんばんは」

恭太「あぁ」

恭太「それで、何がわかったんだ?」

紫苑「まぁ落ち着いて。順を追って話すから」

恭太「・・・」

紫苑「この池に、黒猫の霊がいると言っただろう?僕の知り合いの霊たちの力を借りて、なんとかコミュニケーションを試みたんだ」

紫苑「私たちに警戒していて、ちょっと苦労したけど、粘っていたら少し心を開いてくれた」

恭太「それで、猫はなんて」

紫苑「どうやら、ここで“ご主人様”を待っているらしい」

578: ◆e.A1wZTEY.:2020/7/10(金) 23:00:10 ID:VdGDHZ34nE

恭太「ご主人様・・・?飼い主のことか」

紫苑「多分ね。よくあるのは、なんらかの事情でこの池で飼い主が死に、念が残ってしまい、棲みついてしまうケースなんだが」

紫苑「どうやらそうではないらしい」

恭太「・・・?」

紫苑「ご主人様はここから時々、死者の世界とこの世界を行き来しているから、それを見守っている、と・・・。正確じゃないかもしれないが、そんなニュアンスのことを言っていた。やはりこの池は死者の世界と人間界を繋ぐ時空間的ポイントだった」

恭太「!!」

579: ◆e.A1wZTEY.:2020/7/10(金) 23:02:11 ID:VdGDHZ34nE

恭太「つまり、そのご主人様ってやつが、ちおちゃんを死者の世界へ攫った犯人ってことなのか」

紫苑「おそらくその可能性が高いね。目的はよくわからないけど」

紫苑「どうやって行き来しているのか、その方法も尋ねた。よくわからないみたいだったけど、やはり異世界同士の波長が合う日が不定期的にやってくるようだ。そのタイミングでここで“何か”をすれば、おそらく死者の世界へ行ける」

恭太「“何か”って・・・ずいぶん曖昧だな。波長の合う日もわからないのか」

紫苑「さすがに、聞き出す相手が猫だったからね。限界があるよ」

恭太「・・・この池でできることと言ったら、池に飛び込むとかか」

580: ◆e.A1wZTEY.:2020/7/10(金) 23:03:10 ID:VdGDHZ34nE

紫苑「その可能性もあるけど。戸野千織が消えた瞬間はどうだったんだい?」

恭太「ちおちゃんが消えた瞬間・・・」

正直、あまり思い出せないが――

恭太「・・・池に飛び込んだり、というのは・・・なかった気がする」

紫苑「そうか。じゃあ何だろうな、念じるだけで行けるというのも考えにくいが・・・」

紫苑「難しいと思うが、もう一度思い出して。君の記憶が手がかりなんだ」

恭太「・・・」

しばし考え込む

恭太「・・・ダメだ、思い出せないよ」

581: ◆e.A1wZTEY.:2020/7/10(金) 23:04:26 ID:VdGDHZ34nE

恭太「本当にすっぱり、記憶が抜け落ちてるんだ。誰かに消されたみたいに・・・」

紫苑「・・・ヒントは、視界にうつったことだけとは限らないよ」

恭太「?」

紫苑「例えば、日付とかね。戸野千織が消えた日は、3月14日―――」

紫苑「ニュースにはなっていないけど、私の情報では、戸野千織はその1カ月前にも一晩だけ行方不明になっている。2月14日だ」

恭太「!」

恭太「そうだ、その日の夜、実は行方不明だったって、俺も最近ちおちゃんのお母さんから聞いて、」

紫苑「昼間は君と一緒にいたんだよね。何か変わったことはなかった?」

582: ◆e.A1wZTEY.:2020/7/10(金) 23:06:05 ID:VdGDHZ34nE

恭太「そ、れは・・・そりゃ、真っ先に思いつくことは」

恭太「バレンタインデーとホワイトデー・・・」

紫苑「そうだね」

恭太「でも、プレゼント交換したことくらいしか・・・」

紫苑「・・・そこから考えられることは、そのプレゼントを“献上”すること・・・とかかな」

恭太「献上って・・・」

紫苑「ちなみに何をあげたの?」

恭太「チョコレート・・・だったと思う」

紫苑「ふむ」

紫苑「ものは試しだ。ここで、チョコレートを献上してみようじゃないか」

583: ◆e.A1wZTEY.:2020/8/22(土) 03:12:28 ID:setgox7HOE
恭太「献上、って・・・」

恭太「今はチョコレートなんて持ってないぞ?」

紫苑「私が持っている。大好物のチロルチョコさ」

懐から小さな四角い包みを2つ取り出す

恭太「いい年してチロルチョコ持ち歩いてるのか・・・」

紫苑「ん?何か言ったかい?」

恭太「何も」

紫苑「そうかい。じゃあ、これをささげてみよう」

チロルチョコを右手にもち、池の前で腕をのばす

584: ◆e.A1wZTEY.:2020/8/22(土) 03:14:12 ID:setgox7HOE

紫苑「さぁ、貢ぎ物のチョコだよ。これと引き換えに、僕たちをそちらの世界へ繋げてくれないかい?」

恭太「・・・」

紫苑「・・・」

シーン

池は変わらず静まりかえり、何も起こらない

恭太「・・・何も起こらないぞ」

紫苑「ふむ・・・今日がそのタイミングではないのか、それともこのチョコではダメなのか・・・」

恭太「両方なんじゃないか」

ため息をつく

チョコを捧げたら死者の世界に繋がるなんでバカな話だ

585: ◆e.A1wZTEY.:2020/8/22(土) 03:17:09 ID:setgox7HOE

紫苑「諦めてはいけないよ。考えうることで一番可能性が高いのは間違いない」

紫苑「ちなみに、君があげたチョコレートはどんなもの?」

恭太「どんなって・・・手作りのだよ。ガトーショコラみたいな」

紫苑「手作り!きみ、男の子なのにやるねえ」

恭太「まぁ・・・もともとお菓子作りは好きだけど。好きな女の子にあげるものなら頑張るっしょ」

やや赤面しながら答える

紫苑「うんうん、いいと思うよ。私もそんな青春を過ごしてみたかった・・・」

586: ◆e.A1wZTEY.:2020/8/22(土) 03:18:45 ID:setgox7HOE

紫苑「じゃあ、君の手作りチョコであることに意味があるのかも」

恭太「は・・・?そんなことあるわけ・・・」

紫苑「とりあえず試してみない?今、君の家にあったりしないかな」

恭太「・・・そんな都合よくあるわけないだろ。それに、チョコ作りは・・・ちおちゃんへの想いを思い出して、今はつらいんだ」

紫苑「そのちおちゃんへの手がかりになるかもしれない。明日、作ってみてくれないか」

恭太「・・・」

紫苑「それで、明日の夜にまた落ちあおう。明日が死者の世界に繋がるタイミングの日かはわからないから、何日か試すことになるかもしれないけど」

恭太「・・・わかったよ。今できることがそれだってんなら、俺はやってやる。明日の夜にまたここで会おう」

587: ◆e.A1wZTEY.:2020/8/22(土) 03:24:26 ID:setgox7HOE

――――――


車掌「・・・確かに、私は変わったかもしれない」

車掌「前は、人間の小娘など生きても死んでも気にも留めなかった。最初、千織がこの世界に迷い込んだ時も、帰したのはただの気まぐれだった」

ブリアン「だよねえ」

車掌「だが、そういうお前はなんなんだ?」

車掌「はじめ、千織に固執したのはブリアンだ。列車の精力になる、列車の寿命を伸ばすことができるから、と・・・。しかし今は、千織を異界警察に引き渡すことに加担した」

588: ◆e.A1wZTEY.:2020/8/22(土) 03:28:26 ID:setgox7HOE

ブリアン「加担なんてしてないって。言ったでしょ、車掌なら千織を精力の手で受け止めると信じてたし、うまく奴らを言いくるめてやり過ごせるって思ってたからの判断だよ」

車掌「結果的に今、千織は我々から引き離されそうになっているわけだが。千織を列車の精力にしたかったお前は、どんな気分なんだ?」

ブリアン「最悪だよ。危機的状況だと思ってる」

そう吐き捨てながらも、どこか笑っているようにも見える

ブリアン「このままじゃこの列車は大損だ。だから・・・僕は、千織を取り返す努力をしたい」

車掌「は・・・?」

ブリアン「車掌にも協力してほしいんだ」

589: ◆e.A1wZTEY.:2020/9/13(日) 22:37:55 ID:bh825eqJEo

車掌「協力だと・・・?何を考えているか知らないが、断る」

ブリアン「そんな早く決めないでよ」

車掌「千織が安全に人間界へ戻る。沖恭太も無事だった。それでいいだろう、万事解決だ」

ブリアン「でも、車掌はきっと捕まるよ?人間監禁の罪とかなんとかで」

ブリアン「そしたらこの列車はどうなるんだろうね」

車掌「・・・それは・・・」

顔をしかめ、唇を噛む

590: ◆e.A1wZTEY.:2020/9/13(日) 22:39:10 ID:bh825eqJEo

車掌「・・・私のしたことが罪になるのなら、仕方のないことだ」

車掌「あいつらは歪世界の事情を詳しく知っているようだし、逃げるのも難しいだろう」

ブリアン「だよねえ」

ブリアン「捕まらず、なおかつ千織を取り戻すためには・・・あいつらを殺すしかないよね」

車掌「は・・・」

耳を疑った

車掌「・・・頭がおかしくなったのか?」

591: ◆e.A1wZTEY.:2020/9/13(日) 22:40:38 ID:bh825eqJEo

ブリアン「なってないよ。車掌が本気出せば、ここに来てる異界警察10数人全員を殺ることは可能でしょ?」

車掌「奴らの戦闘力は測れていない」

車掌「仮に殺ったとしても、すぐに増援を呼ばれる」

ブリアン「そいつらも全部殺すんだよ」

車掌「・・・お前、私を殺し屋かなんかと勘違いしてないか?」

ブリアン「列車に乗っている限り、ここは車掌のテリトリーだ。できないことはないでしょ?」

車掌「多量の精力を消費することになる。お前の嫌がることだろう」

592: ◆e.A1wZTEY.:2020/9/13(日) 22:43:00 ID:bh825eqJEo

ブリアン「気づいてない?あいつら、臭いも気配も違うけど中身は人間に近いみたいだよ。量はわからないけど、精力を持ってる」

ブリアン「つまり、倒して片っ端から燃料にしちゃえば、マイナスになることはないでしょ」

車掌「・・・お前は」

車掌「本当に、恐ろしいことを考えるな」

ブリアン「列車と・・・車掌のためだよ」


593: ◆e.A1wZTEY.:2020/9/13(日) 22:47:37 ID:bh825eqJEo

車掌「百歩譲って、お前の作戦が可能だとしても・・・我々の利益など、そんなに必死になってまで優先するべきことか?」

ブリアン「・・・13年」

車掌「・・・」

ブリアン「今のペースで列車稼働に精力を消費したら、13年後に精力は尽きる。間違ってないよね?」

車掌「・・・ああ」

ブリアン「これは予定より20年くらい早い。大きな原因は、乗車券に蓄えられる精力の量が大幅に削減されたことだけど」

車掌「仕方のないことだ。昔は人間界から頻繁に精力が流通していたが、今は制限が厳しくなり、この世界全体に精力が減った」

594: ◆e.A1wZTEY.:2020/9/13(日) 22:52:07 ID:bh825eqJEo

ブリアン「・・・」

車掌「13年でかまわない。私は、与えられた仕事を全うするだけだ」

ブリアン「・・・与えられた仕事、ね」

ブリアン「その大事な仕事を1年でも長くできるよう工夫することも、大事だと思うけどね?」

ブリアン「計算したんだ。若くて健康な人間ひとりをまるまる列車に投資したら、寿命は・・・20年延びる。本来の寿命と一緒だ。素晴らしいじゃないか」

車掌「・・・」

ブリアン「イコール、これは君の命の長さだ。僕は、仕事仲間であり親友である君に・・・生きてほしいんだ」

595: 名無しさん@読者の声:2020/9/20(日) 02:03:39 ID:QxVPOrBXk2
ブリアン(`;ω;´)
生意気なやつめーとか思ってごめんね…
車掌長生きしてほしい
596: 名無しさん@読者の声:2020/9/20(日) 04:14:00 ID:QxVPOrBXk2
今気づきましたがTOPのその他から厳選入りおめでとうございます!!
597: ◆e.A1wZTEY.:2020/9/26(土) 17:08:15 ID:oWRIfZORLo
>>595 >>596
ありがとうございますー!
その他に掲載していただいてるの、私も最近知ったので
びっくり&超感激でした…!本当にありがたいです。
これからも何卒よろしくお願いしますm(__)m

近日中に更新します!
598: ◆e.A1wZTEY.:2020/10/10(土) 20:47:35 ID:ZyA0ubr.xE

千織「ま・・・待ってください」

警戒しながら、異界警察と距離をとる

千織「まずは、車掌さんと会わせてください。でないと信じられません」

準隊長「強情ねえ。彼は罪人だって言ってるでしょ?」

千織「あなた方のことを信用できないと言ってるんです。沖くんが無事だと言っていましたけど、適当なことを言って私を信じさせようとしているだけではないですか」

千織「沖くんが本当に無事だという証拠をみせてください。もしくは・・・車掌さんがあなた方を信じると仰るなら・・・考えます」


599: ◆e.A1wZTEY.:2020/10/10(土) 20:48:45 ID:ZyA0ubr.xE

準隊長「・・・ふぅん」

準隊長「ちゃんと頭はあるみたいね。気弱な女の子だと思ってたからちょっと驚いたわぁ」

千織「・・・」

準隊長「・・・じゃあ、特別に車掌に面会することを許可してあげましょう。彼は賛同してるから、証言してくれるはずよ」

準隊長「車掌を呼んできて」

部下1「はっ」 タタッ


600: ◆e.A1wZTEY.:2020/10/10(土) 20:52:40 ID:ZyA0ubr.xE

部下1「――おい、車掌!」

ガラッ

部下1「・・・!?」

運転室のドアをあけたが、車掌の姿がない

部下1「他の車両へ行ったのか?こんなときに・・・」

運転室を出て1両目に入ろうとすると――

部下1「げっ」

乗客1「おい、いつまでここに停まってやがるんだ!?」

乗客2「5分ってきいたのに嘘じゃねーか!車掌をだせ!!」 ドンドン

待たされて気が立った乗客たちが騒ぎ始めていた

部下1「こ、これは・・・車掌はどこへ行ったんだ!?」

601: ◆e.A1wZTEY.:2020/10/10(土) 20:58:08 ID:ZyA0ubr.xE

ブリアン「――千織。千織」

千織「!」

異界警察と対峙していると、背後の草むらから小さな声が聞こえた

ブリアンだ

ブリアン「静かに、振り向かずに聞いて。今の状況は・・・とても良くないね。車掌も望んだことじゃない」

千織「・・・!」

ブリアン「あいつらは得体のしれない偽善者だ。君を人間界へ帰してくれる保証なんてどこにもない」

千織(そ、そんな・・・)

千織「車掌さんはどこに・・・」

ブリアン「あいつも見張られてるから迂闊に動けないんだ」

602: ◆e.A1wZTEY.:2020/10/10(土) 21:05:06 ID:ZyA0ubr.xE

ブリアン「でも、一度君が列車の中に戻ることができれば・・・あそこは車掌のテリトリーだ。君を守ることができる」

千織「・・・!」

ブリアン「うまく口実を作って、列車の中に戻るんだ。・・・難しかったら、最悪走って逃げて、一歩でも足を踏み入れればいい」

千織「・・・」

千織(・・・でも、そのあとは?)

千織(一時的にやり過ごせても、また追われて、車掌さんに迷惑をかけてしまうんじゃ・・・)

千織(・・・それに、ブリアンさんは・・・)

ブリアン「千織」

ブリアン「僕たちを信じて」

603: 名無しさん@読者の声:2020/10/22(木) 18:04:04 ID:8XMy7bQTxY
ブリアンきた!!良かったね千織ちゃん

つCCCCC
604: ◆e.A1wZTEY.:2020/10/29(木) 17:33:58 ID:LQTjeH4R2o
>>603
たくさん支援感謝ですー!
今週中の更新めざします
605: ◆e.A1wZTEY.:2020/11/1(日) 21:02:03 ID:aDFiMekXc6

準隊長「ん〜〜遅いわねえ。車掌はまだ来ないの?」

準隊長「いっそこちらから出向きましょうか」

千織「!」

千織「あっあの」

思い切って声を出す

準隊長「うん?」

千織「た、たぶん、お客さんの対応に追われてるのだと思います。ここに停車して時間が経っていますから・・・」

準隊長「・・・あぁ、そういうこと」

606: ◆e.A1wZTEY.:2020/11/1(日) 21:04:15 ID:aDFiMekXc6

千織「ですから、私たちが列車に―――」

バンッッ

千織「!?」

千織の顔の横を銃弾がかすめた

千織「・・・」

驚きのあまり、足がふらつく

銃をかまえた準隊長がにっこりと笑った

準隊長「あら、おかしいわねえ。あなたの後ろに誰かいた気がしたんだけど」

千織「・・・!」

振り向くが、ブリアンの姿はない

607: ◆e.A1wZTEY.:2020/11/1(日) 21:07:02 ID:aDFiMekXc6

準隊長「列車には戻らないわ。車掌が姿を現さないのなら、それまで。あなたをこのまま連れて行くだけよ」

準隊長「車掌のことは後日逮捕でも処刑でもすればいいし。あなたを保護することが警察として最優先だからね」

千織「・・・」

ごくんと唾をのみ込む

千織(・・・もう、何を信じるべきなのかわからない。だけど・・・このまま車掌さんと何も話せないまま別れるのは嫌だ、嫌だ)

千織(私のことを保護すると言ってるから、少なくとも私の命は保証されてるはず。それなら・・・)

ブリアンに言われたように、思い切り走って、列車に逃げ込むしかない

だが、複数人の警官に囲まれている状況だ

とても可能そうには見えない

千織(でも、やるしかない!!)

608: ◆e.A1wZTEY.:2020/11/1(日) 21:09:13 ID:aDFiMekXc6

千織「―――っ!!」ダッ

「!!」

周囲の警官を振り切って走り出す

部下2「こいつ・・・!」

部下3「何を無茶なことを!」

すぐに手や肩をつかまれ、身体が戻されようとする

そのとき―――

ドゴッッ!!

部下2「うごっ!?!?」

部下3「ぎゃっ!!!」

飛び蹴りがとんできて、部下たちの顔面をなぎはらった

609: ◆e.A1wZTEY.:2020/11/1(日) 21:11:02 ID:aDFiMekXc6

千織「・・・!?」

部下4「大丈夫か」

千織「え・・・!?」

帽子を目深にかぶった部下4が、千織をかばうように立っている

部下5「なんだ貴様!!」バッ

バキッ!

部下5「がはっ」

部下4の拳を腹に受け、倒れ込む

610: ◆e.A1wZTEY.:2020/11/1(日) 21:13:49 ID:aDFiMekXc6

千織「車掌さん・・・!!」

風貌は警官だが、声は紛れもなく車掌だ

準隊長「はっ、部下に化けるなんて芸達者じゃないの!」

準隊長が銃をかまえ、発砲した

バンッ

千織「!」

車掌「っ・・・」

部下4の帽子が舞い、車掌の顔があらわになった

準隊長「・・・あは、まさか避けたの?今のを?」

611: ◆e.A1wZTEY.:2020/11/1(日) 21:15:59 ID:aDFiMekXc6

車掌「・・・」

車掌「・・・悪いが、今は千織を渡せない。退いてくれないか」

準隊長「は・・・?あなた、さっきは納得していたわよね」

準隊長「まさか今更になって人間の女の子を手元におきたくなっちゃった?」

車掌「・・・」

やや眉をしかめるが、問いには答えない

そのまま千織の身体を寄せ、腰を抱いた

千織「ひゃっ」

地を蹴り、ふわりと宙を舞う

612: ◆e.A1wZTEY.:2020/11/1(日) 21:21:19 ID:aDFiMekXc6

準隊長「!」

部下6「ぎゃひっ」

部下7「んげっ!!」

部下たちの顔を足台にしながら、列車に向かって飛んでいく

準隊長「ちっ」

バンッ バンッ バンッ

1発が車掌の腕をかすめたが、速度は落ちない

準隊長「くっ・・・」

顔をしかめたときには、車掌と千織は列車に到達していた

613: ◆e.A1wZTEY.:2020/11/1(日) 21:25:38 ID:aDFiMekXc6

車掌「発車だ」

ブリアン「まだ社内に警官が残ってるみたいだよー?」

横からブリアンの声がきこえた

車掌「かまわない。精力の手で追い出しておく」

準隊長「待ちなさい!!」

準隊長「こ、このまま逃げられると思っているの?列車なんてすぐに追跡できる、時間と労力の無駄よ!!」

車掌「・・・」

ブリアン「うるさいオバサンだなあ。さよなら!」

ぷしゅーっと音を立て、列車が走り出した

614: ◆e.A1wZTEY.:2020/12/23(水) 01:26:05 ID:GnFfdiuz6c
SS板が無くなってる…だと…
びっくりしましたがスレが残っていて良かったです
近日更新します

615: ◆e.A1wZTEY.:2020/12/27(日) 22:51:41 ID:v/MKOnGQpQ

千織「・・・」

へなへなと座り込み、震える瞳で車掌を見つめる

千織「車掌さん、あの人たちは・・・」

車掌「異界警察というらしい。千織を探していたようだ」

千織「っ・・・ほ、ほんとうに、警察なんですか?」

車掌「・・・わからない。私も初めて聞いた組織だ」

車掌「だが、沖恭太のことは知っていた。彼は無事だと言っていた」

千織「・・・はい・・・」

616: ◆e.A1wZTEY.:2020/12/27(日) 22:52:56 ID:v/MKOnGQpQ

車掌「・・・すまない。お前をあのまま異界警察に託したほうがよいのではないかと、私も考えた。だが・・・」

車掌「100%信用できたわけではないし、なにより・・・」

千織「・・・なにより?」

車掌「いや・・・」

車掌「・・・私にも、わからないんだ。今回の決断が正しかったのか・・・」

ブリアン「正しかったよ」

ブリアン「僕は車掌や千織と離れ離れになりたくないよ。2人だってそうだろう?」

ブリアン「車掌は、千織をあのまま手放したくないと思ったんだよ。その気持ちを尊重しようじゃないか」


617: ◆e.A1wZTEY.:2020/12/27(日) 22:55:12 ID:v/MKOnGQpQ

千織「車掌さんが・・・」

車掌「・・・」

車掌「・・・すまない。少し、休ませてくれ」

頭を押さえながら、小さく呟く

車掌「ブリアン。運転はするから、乗客の説得と誘導は頼む」

ブリアン「うん」

車掌「千織も無理に働かなくていい。奴らもすぐには追ってこれないだろうから」


618: ◆e.A1wZTEY.:2020/12/27(日) 22:58:19 ID:v/MKOnGQpQ

千織「あ、あの、車掌さん!」

千織「私は、助けてくれて嬉しかったです・・・!あのままお別れになるなんて、嫌でしたから」

千織「結果として、また迷惑かけてしまうことになると思いますけど・・・」

車掌「・・・」

車掌「千織のことは危険にさらさない。それだけは・・・約束する」

千織「・・・!」

車掌「私のことは気にするな。既に重罪のようだし、いつ捕まっても同じことだ」

千織「でも・・・!」

車掌「また、後で話そう」

帽子を被りなおすと、背を向け、運転室へ向かっていった

619: 東京名無しンピック2021?:2021/2/14(日) 18:39:13 ID:lPwrypuljw
支援!
620: ◆e.A1wZTEY.:2021/3/3(水) 01:43:53 ID:MCTxRfd3dQ
>>619
支援ありがとうございます…!!
ちょっとリアルが忙しくて
少々更新お待ちいただけますと幸いです
621: ◆e.A1wZTEY.:2021/3/14(日) 21:37:06 ID:MCTxRfd3dQ

なんとかその日の列車業務を終えた、夜

コンコンと、千織が休む寝台車両がノックされた

千織「・・・!」

起き上がり、ドアを見つめる

千織「は、はい・・・車掌さんですか?」

車掌「あぁ」

千織「どうぞ」

静かにドアがあき、いつものように目深に帽子をかぶった車掌が入ってきた

千織「お疲れさまです。今日は、・・・いろいろとご迷惑かけてしまって」

622: ◆e.A1wZTEY.:2021/3/14(日) 21:38:35 ID:MCTxRfd3dQ

車掌「別に謝罪の言葉を聞きに来たわけじゃない」

千織「は、はい」

車掌は帽子を外して手にもつと、千織の隣に腰掛けた

若い青年の顔があらわになる

千織(め、珍しいな・・・)

何となく直視できなくて視線を外す

車掌「・・・」

車掌「ブリアンは車掌室に寝かせて鍵をかけてきた。ここは2人きりだ」

千織「はい・・・って、え?」

車掌「・・・」

623: ◆e.A1wZTEY.:2021/3/14(日) 21:40:21 ID:MCTxRfd3dQ

車掌「・・・あいつはただ、千織に・・・千織の精力に、執着しているだけだと思っていた。それを理解していれば、制御できると思っていた。だが・・・今はあいつの真意がわからない」

千織「・・・」

車掌「そして私も・・・自分のことが、わからなくなりそうなんだ」

うつむき、やや苦しげな声を出す

千織「車掌さん・・・」

千織「私は、車掌さんのことを信じています。この世界のだれよりも」

千織「何度・・・わたしを助けてくれたんですか」

おそるおそる、車掌の手に触れ、両手で包み込んだ

千織「・・・不思議ですね。車掌さんは、私と同じ人間に見えるのに。何度も救われてしまいました」

624: ◆e.A1wZTEY.:2021/3/14(日) 21:43:00 ID:MCTxRfd3dQ

車掌「・・・私の存在なんて、取るに足らないものだ」

車掌「この世界に列車というものが必要だから、神は私を作った」

千織「神・・・?」

車掌「歪世界の創造神・・・ブラフマーという。神の導きで生まれた私は、生者でも死者でもない」

車掌「いや・・・生者か死者かもわからない、というほうが正しいか。私は自分のことなどこれっぽっちもわかっていない」

苦い笑みを浮かべ、自嘲する

車掌「だから、おそらく代わりを得ることも容易いだろう。神ならば」

千織「代わり・・・?何を言ってるんですか」

車掌「昼間、異界警察の女も言っていただろう。我々などすぐに追跡すると」

625: ◆e.A1wZTEY.:2021/3/14(日) 21:45:30 ID:MCTxRfd3dQ

車掌「私が捕まるのは時間の問題なのだ」

千織「・・・!でも、何か方法が」

車掌「ブリアンは、全て返り討ちにすればいいと言っていたな。それも可能かもしれない。だが・・・底の見えない戦いを続け、千織を危険にさらすことに何の意味がある」

千織「・・・」

車掌「だが、あのまま奴らに千織を渡すことも嫌だった。沖恭太の情報を掴んでいるあたり信用度は高かったが、万が一ということもある。何より、千織ともう一度ちゃんと話がしたかった」

千織「・・・!私も!私もです」

車掌「はは・・・間抜けだな。この私が、感情などというものを行動判断に使ってしまうなんて」

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