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従姉に恋をした。

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Part17
758 名前:1 ◆6uSZBGBxi. [sage] 投稿日:2006/04/29(土) 17:01:27 ID:
開いた目に、母の顔が飛び込んできた。
「だいじょうぶ?だいじょうぶ?」
泣き顔だった。
周囲に視線をめぐらす。
十畳ほどの和室。
そこに床が延べられ、俺は寝かされていた。
そこは火葬場の控え室だった。
「大変だったのよ」
一生懸命、涙を拭いながら、俺の身に起きたことを母が話してくれた。
俺は突然、叫び出したという。
そして意味不明な言葉を発しながら、閉ざされた焼却炉の扉を叩き始めた。
あまりの異常さに驚いたお父さんや従兄たちが、俺の身体を制した。
俺は激しくそれに抗い、そして十数秒後、ヘナヘナと失神してしまったそうだ。
俄かに信じ難い話だったが、掛け布団をめくって愕然とした。
ズボンを穿いていなかった。
驚き、白黒させた目に、見覚えのない真新しい下着が映った。
気を失った俺は、失禁していたそうだ。
「本当に…気でも違ったのかと思ったんだから」
せっかく拭った母の頬がまた濡れていた。
首筋から頭のてっぺんまで寒気が走った。
羞恥心とは違う、得体の知れない感情に戸惑いながら、
俺は母の泣く姿を呆然と見つめた。

759 名前:1 ◆6uSZBGBxi. [sage] 投稿日:2006/04/29(土) 17:03:17 ID:
控え室に明かりが灯り、時刻が夜であることを告げた。
すでに火葬は終わり、ほとんどの参列者が帰っていたが、
お父さんや母、弟妹たち、守さん夫婦、それに勲夫さんが帰らず残っていた。
俺を気遣ってのことだった。
「だいじょうぶかい?病院に行ったほうがよくないかい?」
皆、口々にそう言って心配してくれたが、別段、身体に異常は感じなかった。
それよりも気になっていたことを尋ねた。
「あの…恵子ちゃんは?」
勲夫さんが俯き加減に目配せをした。
部屋の片隅、即席の祭壇に、
冗談とも思えるくらい小さくなった恵子ちゃんがいた。
母の用意してくれたジャージに着替え、恵子ちゃんの前に正座した。
線香に火をつける。
静かに手を合わせ、目を閉じた。
一切の静寂が、恵子ちゃんと俺を包んだ。
語りかけるべき言葉も思い浮かばず、自分に苛立つ時間だけが過ぎた。
俺は断念し、目を開けた。
目の前に鎮座する、白く、小さな四角い箱。
君は、そこにいるの?
しゃべるはずもない箱に、心の中で問いかけた。

760 名前:1 ◆6uSZBGBxi. [sage] 投稿日:2006/04/29(土) 17:04:21 ID:
翌日、俺は熱を出して寝込んでしまった。
母は会社を休み、看病してくれた。
「ゆっくり休んでいきなさい」
母の言葉がありがたかった。
今、ひとりになるのは、辛い。怖い。
熱は三日間続いたが、四日目の朝にはすっかり復調した。
「もうだいじょうぶだから」
心配そうにしている母を会社に送り出した。
まだまだ日差しの強い縁側に座り、ぼーっと外の空気に触れた。
昼。
用意されていたお粥を腹に流し込んでいたら、電話がかかってきた。
守さんだった。
「身体の調子はどお?」
寝込んでいたこの三日間、守さんは毎日電話をくれたと、母に聞いていた。
「すみません、ご心配をおかけして。もう、だいじょうぶです」
「そうか…よかった」
本来なら俺のほうが守さんたちを気にかけなければいけないのに…。
ありがたい気持ちと申し訳ない気持ちが胸を締め付けた。
「健吾君、いつ横浜に帰るの?」
「休みは日曜日までなので…明日か明後日には帰ろうかと思ってます」
「そうか。なら帰る時でかまわないから、ウチに寄ってもらってもいいかな?」
「ええ、かまいませんけど…」
「渡したいものがあるんだ」
「なんです?」
「恵子の手紙を見つけたんだ。健吾君宛ての」
手紙…?
恵子ちゃんからの?
「あの…今からお邪魔してもいいですか?」
「別にかまわないけど…だいじょうぶなのかい?無理しちゃダメだよ?」
守さんの気遣いを他所に、俺はただちに家を出た。
気持ちが急いて仕方ない。
それでも普段よりゆっくりと運転するよう心がけ、
一時間半ほどかけて守さんの家に着いた。

761 名前:1 ◆6uSZBGBxi. [sage] 投稿日:2006/04/29(土) 17:05:16 ID:
浩美さんも在宅していて、ふたりで俺を迎えてくれた。
やつれた顔で明るく振舞うふたりは痛々しかった。
俺も無理矢理、笑顔を作った。
恵子ちゃんの元へ案内された。
型通りに線香を手向け、手を合わせた。
相変わらず、箱は何も語らなかった。
居間に通され、茶を出された。
それに口をつけるのもそこそこに、守さんに目で促す。
守さんは黙って頷き、件の手紙を差し出した。
桜色の小さな封筒。
表に“健吾君へ”という文字。
俯きながら浩美さんが言った。
「今日ね、恵子の部屋の整理、始めようと思ったの。
 でも…途中でやめちゃった。
 あの子の物を触ってたら、まだそのままにしておきたくなって…」
当然だろう。
遺品の整理をすることが、心の整理につながるとは限らない。
いや、心の整理がつかないからこそ、遺品も整理できないのかもしれない。
「今はまだ…そのままでいいんじゃないですか」
「そうよね。まだ…いいよね」
顔を上げた浩美さんは、許しを得たかのようにほっとした顔をしていた。

762 名前:1 ◆6uSZBGBxi. [sage] 投稿日:2006/04/29(土) 17:06:11 ID:
「私らのことは気にしないで。早く帰って、読んであげて」
俺の気持ちを察してくれたのか、守さんがやさしく言ってくれた。
俺は深く頭を下げ、その場を辞去した。
車の運転がもどかしい。
早く。早く。
しかし俺の邪魔をするように道はどんどん混み始め、
とうとう高速のインターの手前で渋滞にハマった。
タバコをくわえ、イライラしながらハンドルを何度も叩く。
もう、その辺に車を止めてしまおうか。
なにも家に帰ってからじゃなくてもいいんだ。
そう思い始めた時、バックミラーに遠くの山々が映った。
(そうだ。あそこに行こう)
それはバーベキューの時に行った、恵子ちゃんのお気に入りの場所。
俺はすぐさま渋滞の列から抜け出し、Uターンした。


763 名前:1 ◆6uSZBGBxi. [sage] 投稿日:2006/04/29(土) 17:07:01 ID:
川原の土手に車を止め、車外へと躍り出る。
封筒を握り締め、あの日恵子ちゃんと歩いた森の小道を駆けた。
緑は数瞬で流れ去り、あっという間にあの滝が目に飛び込んできた。
乱れた息を整えながら、あの時ふたりで座った岩に腰を下ろす。
と、背後に人の気配を感じ振り向いた。
今日は先客がいたようだ。
小学生くらいの男の子がふたり。
ほんの少しの間、彼らは俺を見つめ、
やがて興味を失ったのか、また遊びに戻っていった。
封筒に視線を落とす。
一呼吸。二呼吸。そして最後にもう一呼吸。
そうして心を落ち着け、封筒を開封した。
ふわっと、アリュールの香りが鼻先を漂った。
封筒と同じ桜色の便箋が2枚。
そこには俺が愛した、しなやかで美しい文字が詰まっていた。

764 名前:1 ◆6uSZBGBxi. [sage] 投稿日:2006/04/29(土) 17:10:00 ID:
『健吾君へ
 今度のデートの時に渡そうと、この手紙を書いています。
 いつもおちゃらけてばっかりいる私だから、
 こんな手紙を書くと健吾君はきっと笑うだろうけれど、今日はガマンしてね。
 私の素直な気持ちです。
 健吾君、ありがとう。
 いつも笑わせてくれて。
 いつも話を聞いてくれて。
 いつも励ましてくれて。
 いつも心配してくれて。
 いつも素敵な言葉をくれて。
 いつも、私を幸せな気分にしてくれて。
 ありがとう。
 でも私は、その何分の1でもお返しできていますか?
 最近思ったの。
 私は健吾君からもらうばっかりで、
 何ひとつお返しできていないんじゃないかって。
 つき合う前の、もうずっと昔のこと。健吾君は言ったね。
 「俺は親戚とか少ないからみんなと親戚になれてうれしい」って。
 そしてその言葉どおり、
 健吾君は今までいつも、私やイトコ、親戚たちに優しく接してくれたね。
 私たちを、大事にしてくれたね。
 私はそれがすごくうれしかったけれど、反面、こう思ったの。
 健吾君はずっと、さみしかったんじゃないかって。
 健吾君はいつも堂々としていて、言葉も力強くて…私はそんな健吾君を
 いつも“すごいなぁ”って思いながら見てきました。
 でもいつだったか健吾君がご両親の話をしたとき、いつもと違う健吾君を感じたの。
 健吾君が、泣いてるような気がしたの。
 健吾君はあまり詳しくは話してくれなかったけれど、
 きっと辛い体験をしたんだね。
 そのとき私は何も言えなかった。何もできなかった。
 はじめて健吾君の心に近づけた気がしたのに、どうしたらいいかわからなかった。
 私が勝手に感じたことだし、気のせいかもしれないけれど、
 でもこれからは、さみしいと感じたとき思い出して。
 私はいつでも、健吾君の横にいます。
 私はずっと、健吾君の手をにぎっています。
 健吾君
 愛してます
                       2005.8.21  恵子 』
恵子ちゃんからの、最初で最後のラブレターだった。

765 名前:1 ◆6uSZBGBxi. [sage] 投稿日:2006/04/29(土) 17:10:47 ID:
ドボン、ドボンと、先程の子供たちが滝壺に飛び込んでいる。
大きな水しぶき。楽しげな嬌声。入れ代わり、立ち代わり。
咄嗟に口を手で押さえた。
そんなことをせずとも、彼らには聞こえなかったかもしれない。
俺は泣いた。

766 名前:1 ◆6uSZBGBxi. [sage] 投稿日:2006/04/29(土) 17:11:46 ID:
あれから二ヶ月。
俺は俺の日常に戻った。
時折、無性に腹が立つ。
君という大事な要素を欠いているのに、この世界は変わらず機能しているから。
いつもと同じ朝。
いつもと同じ夜。
まるで君を忘れてしまったかのような世界。
でも俺は、この世界のそこかしこで、君を感じている。
職場に君と同じロングヘアの女の子がいる。
その後姿が君を思わせるから、見るたびいつも視線をはずしてしまうけれど、
ついついもう一度見てしまう。
通勤電車でアリュールの香りがした。
香りの主を探してキョロキョロしたんだけど見つからなかった。
でも、それでもあきらめられなくて、電車を降りるのをためらった。
本屋に行くと必ず、君からもらった本を探す。
そして見つけては安心し、指でそっとなぞる。
見つからないと落ち着かなくて、ただそれだけのために別の本屋に行ってしまう。
いなくなった君に、ずっと恋をしている。
『早く結婚してくれ』と、君は言ったね。
見たかったなぁ。
あの時君は、どんな顔をして、その言葉を言ったんだい?
毎日のように俺は、その顔を想像してる。
そしていつのまにかその顔が、俺が思い出す君の顔になってしまった。
君の願いは、俺の願いでした。
恵子ちゃん。
さよなら。

767 名前:1 ◆6uSZBGBxi. [sage] 投稿日:2006/04/29(土) 17:12:43 ID:
以上です。
まずはこのような駄文・長文にお付き合いくださったみなさんに
あらためて御礼を申し上げます。
そして重ねて、
長期に渡りスレッドを放置した件についてお詫び申し上げます。
本当にすみません。
このスレッドを立てた当時、私は精神的にも肉体的にも病んでいました。
何をしていても考えることは彼女のことばかりで、
食事も睡眠も満足にとっていませんでした。
そして心身共に日に日に弱っていく中、この2チャンネルに出会いました。
お恥ずかしい話、コンピュータ業界に身を置きながら
この掲示板について全くの無知だった私は、とあるスレッドに書かれていた悩みと、
それに対する多くの意見・アドバイス・励ましを拝見し、とても感動しました。
そこには真摯に相談を受ける人々と、
それによって悩みから解放された人々がいました。

768 名前:1 ◆6uSZBGBxi. [sage] 投稿日:2006/04/29(土) 17:13:39 ID:
私はこの掲示板に縋ることで楽になれるのでは…と考えました。
おかしな話ですが、家族や身近にいる友人よりも、
モニターの向こう側にいる赤の他人に救いを求めたのです。
そして私は書き始めました。
仕事をしていても、寝ても覚めても、このスレッドのことばかり考えました。
ある意味、捌け口として成功していたと思えます。
文章を書くために彼女との出来事を思い出していく作業―
それは一見矛盾しているようですが、機械的なその作業に熱中することにより、
確実に悲しみや痛みが和らいでいったのです。
そして何よりみなさんからの感想、アドバイス、激励、叱咤その他諸々が
ますます私をこのスレッドに没入させていきました。

769 名前:1 ◆6uSZBGBxi. [sage] 投稿日:2006/04/29(土) 17:14:21 ID:
大との件を書き終えた時、身体が悲鳴を上げました。
長らく忘れていた痛みが胸を襲いました。
しかし私はそれを軽視し、「あと少しだから」と書く手を緩めず、
会社に行くこと以外の全ての時間を(それこそ食事や睡眠をおざなりにしてでも)
文章作りに費やすようになりました。
三、四日ほど経った頃。あの日は夜勤明けでした。
家に着くなり書き始め、夕方にとうとう書き終えました。(今回アップした分です)
書き上げたことへの安堵からか、一気に疲労感に襲われた私は、
スレッドにアップする前に一眠りすることにし、ベッドに雪崩れ込みました。
そして私は、自分の身体の限界を知りました。
夜半過ぎ、激しい動悸に目覚めました。
かつてないほどの痛みに危険を感じた私は救急車を呼びました。
そして駆けつけた救急隊員の担架に揺られながら、私は気を失いました。

770 名前:1 ◆6uSZBGBxi. [sage] 投稿日:2006/04/29(土) 17:15:10 ID:
目覚めると病院のICUにいました。
驚いたことに、倒れた晩から丸二日が経過していました。
しかも二度の手術を経た後でした。
担当医の説明に更に驚きました。
私の心臓は、数年前に倒れた時よりも格段に重い病にかかっていたのです。
その年の春に受診した健康診断ではなんの問題もなかったのに…。
担当医の問診に対し、この二ヶ月の私の生活について打ち明けました。
担当医は合点がいったという表情で私に言いました。
精神的な要因が強いですね、と。
なんとたった二ヶ月の間に、私の心は私の身体を殺す寸前まで追い詰めていました。

771 名前:1 ◆6uSZBGBxi. [sage] 投稿日:2006/04/29(土) 17:15:51 ID:
精神が肉体に及ぼす作用というものを直に体験し、さすがに私も驚きましたが、
恐怖はまったくありませんでした。
それどころか「もうどうでもいいや」という、捨て鉢な気分を自覚しました。
ようやく2チャンネルで手に入れかけていた安らぎや解放感も、
この時は霧散していました。
私の病気は決して難病というわけではなかったのですが、
あと二度ほど手術をする必要があると担当医は言いました。
そしてそれに耐えられるだけの体力と気力も必要だと。
両方ともその時の私には無いものでしたが、
それを取り戻す気にもなれませんでした。

772 名前:1 ◆6uSZBGBxi. [sage] 投稿日:2006/04/29(土) 17:16:38 ID:
入院生活が始まり、母が泊り込みで付き添ってくれました。
母は常に私を気遣い、励ましてくれましたが、私の無気力さは変わりませんでした。
父やお父さん、弟妹たち、守さんや親戚の人たち、友人や同僚、
様々な人々が私の病室を訪れ、みな口々に私を慰めてくれましたが、
やはり私の心に変化はありませんでした。
そしてもはや自力で歩けなくなるほど衰弱した私は、
この先に訪れるであろう己の末路をただひたすらに待ちました。
そして入院生活も一ヶ月になろうとしていた去年の暮れ、
心配した担当医と家族の勧めで、私はカウンセラーの治療を受けることになりました。

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