弟「釣りロマンを求めて」幼友「春の淡水釣り編だよー」
Part11755 : ◆M7hSLIKnTI :2014/07/23(水) 10:06:20 Wc0UFv4I
……………
………
…
…車で移動中
ブロロロオオォォッ…
男「──短い時間しか居られなくて残念でしたが、まあ…お前も免許を取れば自分で来られるだろ」
弟「うん」
幼馴染「一人ではだめです」
弟「うん、解ってる」
幼友「………」
756 : ◆M7hSLIKnTI :2014/07/23(水) 10:06:54 Wc0UFv4I
幼馴染「ところで、もうひとつ話に挙がっていた自然公園とやらには寄るのでしょうか」
男「ゆっくり散策するような時間はもうありませんが、そこにある施設にだけ立ち寄りましょう」
幼馴染「そこには何が?」
男「標高1000m近い山腹に建てられた展望塔があります」
幼馴染「ほほう」
男「その展望塔には日本一の大きさのベルが……まあ、行けば解るでしょう」
幼馴染「もう午後4時が迫っていますが、近いのでしょうか」
男「もう30分とかからないでしょう──」
761 : ◆M7hSLIKnTI :2014/07/23(水) 16:01:20 bSk1OO56
……………
………
…
…自然公園、展望塔施設
幼馴染「──ベル、でかっ! ふたつもあります」
男「塔の下からでも判るこの大きさ」
弟「大きいほうは2m、重さ6tだって。音階は低い『ソ』って書いてある」
男「では、まずは小さい方の塔から」
762 : ◆M7hSLIKnTI :2014/07/23(水) 16:02:14 bSk1OO56
幼馴染「石階段、中にハート型の石が埋められているらしいです」
弟「見つけると幸せになれる…かぁ」
男「幼馴染…」チョイチョイ
幼馴染「なんでしょう?」
男(ここは『愛』をテーマにした自然公園施設の一施設で、思いっきり恋人向けのスポットです)ヒソヒソ
幼馴染「なるほど」ニヤリ
男(そのへんを頭に置いて、二人との距離を…)ヒソヒソ
幼馴染(ええい、皆まで言うな)ヒソヒソ
763 : ◆M7hSLIKnTI :2014/07/23(水) 16:02:59 bSk1OO56
弟「うーん、ハートの石…無いなぁ。幼友ちゃん、あった?」キョロキョロ
幼友(……もしかして、これかな)チラッ
幼馴染(幼友、足元にあります! よく見て!)
幼友「無い…よ」プイッ
弟「そっかー」
幼馴染(あああああぁあぁぁ、もうっ!)ジタバタ
男(幼馴染、落ち着いて)ヒソヒソ
………
…
弟「小さい方のベルでも、近くで見るとすごいね」
男「高さ1.2m、3t近い重さらしい」
幼馴染「なになに…『鐘の名前は【緑のリボン】鳴らす二人の心を繋ぐ、愛の鐘』…だそうです」クックックッ
幼友「えっ」
男「大小ふたつのベルを鳴らせば、二人は結ばれる…などと言われています」
幼馴染「実際にここで結婚式も挙げられるとか」
幼友「ちょ…あの…えっ?」
弟「………」
765 : ◆M7hSLIKnTI :2014/07/23(水) 16:04:19 bSk1OO56
幼馴染「とりあえず、男と私は鳴らします」
男「振り子のロープを持って下さい」
幼友「お、幼馴染ちゃん…!」
幼馴染「振り子、重っ!」ズシッ
男「いきます、音も大きいでしょうから身構えて」グッ…
幼馴染「しょっ…もうひと振りっ」グイッ
男「せーの…」フワッ
男&幼馴染「てーーーい」
ガラーーン!!ゴローーーン!!!
766 : ◆M7hSLIKnTI :2014/07/23(水) 16:04:57 bSk1OO56
弟「うわ…本当にすごい音、こっちは低い『ド』の音階だって」キーン
幼友「………」
男「…よし、それでは」クルッ
幼馴染「私達は大きい方のベルの塔に登ります」クルッ
弟&幼友「えっ」
男「かなり重いから、身体もっていかれるなよー」
幼馴染「幼友、弟君に任せて手を添えるくらいで大丈夫です」
弟「ちょっと、一緒に! …行っちゃった」
幼友「……もう」
767 : ◆M7hSLIKnTI :2014/07/23(水) 16:05:27 bSk1OO56
弟「…どうする? 幼友ちゃん」ドキドキ
幼友「……どうするって」
弟「だってこのベル…僕と鳴らしていいの?」
幼友「…そっちこそ」
弟「ぼ、僕は他に一緒に鳴らしたい人なんかいないよ!」
幼友「どうだか」
弟「幼友ちゃん…」
幼友(…ばーか)
768 : ◆M7hSLIKnTI :2014/07/23(水) 16:06:01 bSk1OO56
弟「幼友ちゃん、さっきの街では本当ごめんなさい」
幼友「…久しぶりだったんでしょ、謝る事じゃないよ」プイッ
弟「うん…それでも、あまりに気が利かなかったよ」
幼友「……昔」
弟「うん?」
幼友「昔、好きだった娘…なんでしょ」
弟「…うん、そうだった」
幼友「今は?」
弟「幼友ちゃんが言った通り『昔、好きだった娘』だよ」
769 : ◆M7hSLIKnTI :2014/07/23(水) 16:06:34 bSk1OO56
幼友「どんな事、話したの」
弟「引っ越した時の事とか、近所にいた頃の思い出話とか」
幼友「『好きだった』って事は話してないの?」
弟「……話したよ」
幼友「……っ…」
弟「それで『今、好きなヒト』の事も話した」
幼友「それって」
弟「うん、幼友ちゃんの事」
幼友「…良かったの?」
弟「良かったよ、話せて」
770 : ◆M7hSLIKnTI :2014/07/23(水) 16:07:30 bSk1OO56
幼友「……弟君はそうかもしれないけど」
弟「本当は再会してできるだけ早く話せば良かったんだ。『君と離ればなれになった事、悔やんでない』って」
幼友「あの娘は、それを聞いてどう思ったのかな」
弟「『ちょっと妬ける』って言ってたよ」
幼友「せっかくの再会だったのに…悪かったんじゃない?」
弟「うん、でもね…彼女も悔やんでないんだって」
幼友「そうなの?」
弟「だから僕も…ごめん、ちょっとだけ『妬いた』んだ」
幼友「え…?」
弟「…彼女、来年には結婚するんだって」
771 : ◆M7hSLIKnTI :2014/07/23(水) 16:08:36 bSk1OO56
弟「ふたつ年上、高校の時の先輩と…って言ってた」
幼友「そう…なんだ」
弟「ごめんね、今になって妬く理由なんて無いはずなんだけど。どうしても胸がチクッとしたよ」
幼友「……それは仕方ないよ」
弟「そんな僕でよかったら…この小さい方のベル、一緒に鳴らして下さい」
幼友「小さい方だけでいいの? ふたつともを鳴らせば結ばれる…って」
弟「大きい方は、いつか二人でここを訪れて鳴らしたいよ」
幼友「………」
弟「できればその時には、今日とは違う関係の僕らで」
幼友「………」モジモジ
幼友「………」スゥ…
幼友「………」…ハァ
幼友「……はい」
772 : ◆M7hSLIKnTI :2014/07/23(水) 16:09:17 bSk1OO56
テーーーイ!
ガラーーン!!ゴローーーン!!!
幼友「あ…男さん達、大きい方を鳴らしたね」
弟「…だね」
幼友「お揃いのストラップ…」
弟「ん?」
幼友「それから、お蕎麦の記念の巾着袋」
弟「うん」
幼友「なんだかどっちも、ちょっと恥ずかしい思い出がついちゃったね」
弟「…その思い出までお揃いだから、いいよ」
773 : ◆M7hSLIKnTI :2014/07/23(水) 16:09:55 bSk1OO56
弟「じゃあ、ベル…いいかな──?」
幼友「──この予約は双方の同意のもと成立します」
弟「は?」
幼友「双方ともに心情の変化があれば、その旨を申し出た上で予約をキャンセルする事ができます」
幼友「ただし、予約を破棄せずに違う物件に手を出す事は規約違反となり、罰せられます」
幼友「また予約した件について正式な契約を交わすタイミングは、熟考の上お申し出下さい」
幼友「一定の条件を満たせばお受け致します。そうでない場合、通常は予約期間を更新します」
幼友「以上の規約に同意できる方のみ、ただいまから先着一名だけ──」
弟「幼友ちゃん…」
幼友「──私を恋人にする権利の予約を受け付けます。ご応募の方は挙手して下さい」
弟「はい!」ピッ
幼友「…受け付けを締め切ります」ニコッ
784 : ◆M7hSLIKnTI :2014/07/23(水) 20:50:43 hR4PI9vw
幼友「ひとつ教えて」
弟「なに?」
幼友「釣りの後、私がこの髪型にした時…褒めてくれたよね」
弟「うん」
幼友「その時…弟幼さんがポニーテールだった事、思い出した? もしかしてそれでこの髪型、好きだったりする?」
弟「…ううん、全然」
幼友「本当かなー?」ジッ
弟「いつもと違う幼友ちゃんに見惚れるので精一杯だったよ」
幼友「…だったら、よし」プイッ
弟「実は僕が好きなのは、肩下くらいの長さのゆるふわ内巻きヘアをおろした髪型なんだ」
幼友「あははっ、調子いいんだから」クスクス
774 : ◆M7hSLIKnTI :2014/07/23(水) 16:10:32 bSk1OO56
幼友「それじゃ、契約書に判を押しとくよ」
弟「…うん?」
幼友「まだ仮契約だから、ほっぺただけね──」
ガラーーン!!ゴローーーン!!!
… … … … …
弟「釣りロマンを求めて」幼友「春の淡水釣り編だよー」
【おわり】
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