サシャ「いつだって、あなたの味方です」
Part7
144 : ◆H4iwFNXQsw:2014/04/02(水) 21:29:39 ID:moLpM0wo
ライナー「取り敢えずは歩きながら考えるか。……座ってないでそろそろ行くぞ」スクッ
サシャ「はーい、わかりました…………あっ」
サシャ(そういえば、手は……怪我しちゃってるから繋げませんよね。でも、逆側に回りこむのもなんだか……)モンモン
ライナー「ほら」スッ
サシャ「……え? あの、これってどうしたらーー」
ライナー「どうしたらもこうしたらもないだろ? 腕に掴まれ」
サシャ「……いいんですか?」
ライナー「自由にさせておくと何をするかわかったもんじゃないからな。……早くしろ」
サシャ「は、はい……」ギュッ
サシャ(腕組みして、街の中を歩くなんて……なんだか、恋人同士みたいですよね……)
145 : ◆H4iwFNXQsw:2014/04/02(水) 21:30:21 ID:moLpM0wo
ライナー「……」チラッ
サシャ「……へへ」ギュー
ライナー「顔、緩んでるぞ」
サシャ「えっ、そうですか? ……それじゃあ気をつけますっ」キリッ
ライナー「……」
サシャ「……」キリリッ
ライナー「……」
サシャ(……へへへー)ニヘラ
ライナー(あーかわいい)ニヤニヤ
146 : ◆H4iwFNXQsw:2014/04/02(水) 21:31:06 ID:moLpM0wo
ーー 夕方 トロスト区 繁華街 アクセサリー店前
ライナー「……屋台、何軒回った?」
サシャ「ええっと、7つくらいですかね……5番目がプレッツェルでしたっけ?」
ライナー「いや、6番目だ。……まあ、回った屋台の数はいいか。今更」
サシャ「そうですね、もういいですよね」
ライナー「量もそれなりに食ったから腹に溜まったな。財布もほぼすっからかんだが」
サシャ「私もですよ。……しばらくお菓子買えないです」シュン
ライナー「それで、まあ、食い終わって店の前に来たはいいが……」
サシャ「……閉まってますね」
ライナー「休みだってのは考えてなかったなー……」
サシャ「しかも臨時ですもんね、こればっかりはどうしようもないですよ。ーーそれで、これからどうします? 門限まではまだ時間ありますけど……」
ライナー「時間も半端になっちまったからなー……。ここからまた屋台のある通りに出るのも面倒だ。ーー仕方がない、戻るか?」
サシャ「えっ? ……もう帰っちゃうんですか?」
ライナー「他にやることもないだろ? この辺りはぶらぶら歩くには少し治安が悪いし、今日のところはおとなしく訓練所に戻ってーー」
サシャ「! やっ……!」ギュッ
147 : ◆H4iwFNXQsw:2014/04/02(水) 21:32:12 ID:moLpM0wo
サシャ「あっ……! え、えっとすみません、しがみついたりして……」パッ
ライナー「ああ、いや……別に構わんが」
サシャ「あの、もうちょっとだけ……もうちょっとだけ、一緒に……いたいんです、けど」
ライナー「……」
サシャ「だめ、ですかね……?」
ライナー「……」
サシャ「……」
ライナー「……なあサシャ、本当に俺でいいのか?」
サシャ「……? はい? どういう意味です?」
ライナー「実質、今日が訓練所での最後の休みなんだぞ? 門限ギリギリに帰ったら、ミカサやクリスタと話をする時間もなくなるかもしれん。……それでもいいのか?」
サシャ「……今更何言ってるんですか。嫌なら、今日一日一緒に過ごしたりなんかしませんよ」
ライナー「……そうか、それもそうだな。ーーそれで、どこか行きたいところはあるのか? 今からじゃ大したところには行けねえが」
サシャ「! あります、ちょっとここからは歩くんですけどーー」
148 : ◆H4iwFNXQsw:2014/04/02(水) 21:33:36 ID:moLpM0wo
今日はここまで 遅くなって大変申し訳ありません 切ったり貼ったり削ったり伸ばしてたりしたらかなり時間が経ってました
次回も怒涛のイチャイチャタイム 次の投下で最後まで行く予定
149 :以下、名無しが深夜にお送りします:2014/04/02(水) 22:06:39 ID:fXWDl0Bg
一気に最後までだと!?
楽しみだ
150 :以下、名無しが深夜にお送りします:2014/04/02(水) 23:24:42 ID:Zc4wBJyE
さぁどこまで行けるのかライナー
151 :以下、名無しが深夜にお送りします:2014/04/03(木) 13:00:56 ID:7qr8FbeQ
最後まで、だと?ふおおおおお一気にいってしまえがんばれライナー!!
続き楽しみに待機しており待つ
152 :以下、名無しが深夜にお送りします:2014/04/03(木) 13:58:26 ID:jZdt1tHY
続きがとても待ち遠しい
162 : ◆H4iwFNXQsw:2014/04/14(月) 19:54:34 ID:JC6Ta6P2
ーー 森の中
ライナー「おいサシャ、どこまで行くんだ?」ガサガサ...
サシャ「もうちょっとです、もうちょっと」ザクザク
ライナー「こんな奥まで来て大丈夫なのか? 大分歩いたぞ?」
サシャ「大丈夫ですって、こっちこっち!」グイッ
ライナー「おわっ!? ーーこら、急に引っ張るんじゃない! 転んだらどうする!」
サシャ「ごめんなさ……あっ、着きましたよ!」ガサガサッ
ライナー「ここは……あの時の河原か? 秋に釣りをしにきたところだよな」キョロキョロ
サシャ「はい、そうですよ! ーーここの川、実は訓練所の中まで続いてるそうなんです。知ってました?」
ライナー「いや、知らなかった。わざわざ調べたのか?」
サシャ「調べたというか……訓練所から壁の上の固定砲までってかなり距離あるじゃないですか。だからこの前、地図を見て近道を探してたんです」
ライナー「そしたら偶然気づいた、と」
サシャ「そうですそうです! 街だと道が入り組んでて時間がかかりますけど、ここなら訓練所まで一本道ですからね。日が沈んでからゆっくり歩いても、門限には充分間に合いますよ」
163 : ◆H4iwFNXQsw:2014/04/14(月) 19:55:14 ID:JC6Ta6P2
ライナー「……ここは、地元の人間もよく来るところなのか?」
サシャ「いえ、流石にそこまではわかりませんけど……でもあまり来ないんじゃないですか? 私たちが釣りしている間だって誰も来なかったでしょう?」
ライナー「そういやそうだったな。……そうか、誰も来ないのか」
ライナー(つまり、ここでなら……誰かに話を聞かれる心配もないってことだよな)
ライナー「それにしても、この辺りはまだ雪が積もってるんだな。一面真っ白だ」
サシャ「誰もこんなところ雪かきしませんからねー……。いくらか解けたみたいですけど、深いところは膝まで隠れそうです」フミフミ
ライナー「裾汚れるぞ」
サシャ「平気ですって、これくらい。ーーほら見て下さいよ! 昨日の夜に降った雪がまだ残ってます、ふわふわです!」モッフモッフ
ライナー「ふわふわなのはわかったが……それで、ここに何の用なんだ?」
サシャ「? 用って何のことですか?」キョトン
164 : ◆H4iwFNXQsw:2014/04/14(月) 19:56:02 ID:JC6Ta6P2
ライナー「……あのなぁ、お前が『行きたいところがある』って言い出したからここまで来たんだぞ? 一体何をしたかったんだ? まさかただ単に連れて来たかったわけじゃないだろ?」
サシャ「えっ? ……連れて来たかっただけじゃダメなんでしょうか」
ライナー「いや、それは……………………どうなんだろうな?」
サシャ「私に聞かれてもーーあっ、そうだ! だったらこの前の雪合戦! 雪合戦の続きをしましょう!」グリグリ コネコネ
ライナー「はぁ? 雪合戦?」
サシャ「もうここまで来ちゃったんですから、どうせなら思いっきり遊びましょうよ! この河原なら広さも雪も充分あります、雪合戦には最適です!」コネコネ
ライナー「……よし、わかった。やるからには負けねえぞ」ザクッ
サシャ「おやおや、そんなこと言っちゃっていいんですか? 前回は私に一発も当てられなかったでしょう?」フフン
ライナー「転んだ相手を痛めつける趣味はないんでな。ーー今日は大丈夫なのか? さっきも地面と友だちになろうとしてたからな、こりゃ手加減してやらないと悲惨なことになりそうだ」
サシャ「……」
ライナー「……」
165 : ◆H4iwFNXQsw:2014/04/14(月) 19:56:45 ID:JC6Ta6P2
サシャ「とうっ!」ポイッ
ライナー「おっと、危ねえ危ねえ」ヒョイッ
サシャ「ああっ! もう、避けないでくださいよ! ちゃんと当たってください!」ポイポイポイポイ
ライナー「無茶言うな、だったらお前も当たれ!」ブンッ
サシャ「嫌ですよ冷たいですしーーふぎゃっ!?」ベシャッ
ライナー「おっ? ……当たったな」
サシャ「……」ポタポタ...
ライナー「それで……前回がなんだって?」ニヤニヤ
サシャ「……! ーーなんのこれしきぃっ! 負けませんよー!!」ニギニギ ギュッギュッ
ライナー「上等だかかってこい、相手になってやる! ーーよし、雪玉できた!」ニギニギ ポイッ
サシャ「えっ、もう!? 早くありませんか!?」
ライナー「お前が作るの遅いだけだ! ……さーて、どこに当ててやるかな」シュッシュッ
サシャ(ううっ、まだこっちは雪玉できてないのに……!)キョロキョロ
166 : ◆H4iwFNXQsw:2014/04/14(月) 19:57:25 ID:JC6Ta6P2
サシャ「えーっとえーっと……えいっ!」バフッ
ライナー「ぶわっ!? ーーおい、雪をそのままかけるのは反則だろ!」
サシャ「だってライナーが雪玉作るの早過ぎるんですもん! ちゃんとやってるんですか!?」
ライナー「やってるって。お前が遅いだけだろ」ギュッギュッギュッギュッ
サシャ「は、速い……!」ガーン
サシャ(このままじゃ一方的ですね、ここは一旦距離を取ってーー)スクッ
サシャ「逃げます!」ダッ
ライナー「あっ! こら待て逃げるな! おとなしく当たれ!」ダッ
サシャ「嫌ですってばライナーばっかり当てようとしてずるいです! 私だってぶつけーーわぁっ!?」ズルッ ビタンッ!!
ライナー「!? おい、大丈夫か!? また顔から倒れたんじゃーー」
サシャ「なんちゃって! ーー隙ありぃっ!」ヒュンッ
167 : ◆H4iwFNXQsw:2014/04/14(月) 19:58:07 ID:JC6Ta6P2
ライナー「……」ベッショリ
サシャ「ふっふーん、油断大敵ですよライナー!」ニギニギニギニギ
ライナー「…………」ボフッ
サシャ「ふあぁっ!? な、何するんですかぁっ! 雪玉じゃないものは反則ですよ反則!」
ライナー「何言ってんだ先にやったのはそっちだろ! 俺は悪くないっ!!」モッフモッフモッフモッフ
サシャ「ちょっ……! もうっ、だからってやりすぎですよ! なんでそんなに手が大きいんですか片方貸してくださいよ! 不公平です!」モッフモッフモッフモッフ
ライナー「貸せるわけねえだろ無茶言うな!」モッフモッフモッフモッフ
サシャ「やってもみないうちからそんなこと言わないでくださいよ、少しは試してからーーひゃあっ!? せ、背中に! 背中に雪が入ったぁっ!」ピョン
ライナー「あっ……悪い、そこまで考えてなかった」ピタッ
サシャ「うぅっ、裾からなんとか出ませんかね……! 冷たいぃぃ……!」バッサバッサ
ライナー「わかったわかった、取ってやるからあまり動き回るな。そっちは川がーー」
サシャ「へっ、川? ……あっ」ズルッ
ライナー「!」ガシッ
168 : ◆H4iwFNXQsw:2014/04/14(月) 19:58:57 ID:JC6Ta6P2
ライナー「あっぶねえー……」ホッ
サシャ「び、びっくりしましたぁ……」ドキドキ
ライナー「そりゃこっちの台詞だ。今日は地面だけじゃなくて、川とも友だちになるつもりか?」
サシャ「……できれば遠慮したいです」
ライナー「だよな。今の時期に川に落ちたら洒落になんねえぞ」
サシャ「ごめんなさい、はしゃぎすぎました……支えてもらうの、今日はこれで二回目ですね」
ライナー「ああ、こんな調子じゃおちおち目も離してられん。……困ったもんだ」ハァ
サシャ「……すみません」シュン
サシャ(こうやって落ち着きがないから、いつもライナーに世話焼かれてばかりなんですよね……しかも困らせちゃってますし、私全然いいところありません……)ショボーン...
ライナー「? どうした、急におとなしくなったな。腹でも減ったか?」
サシャ「……いえ、なんでもないです。それより離してくださいよ、まだ決着はついてないんですからね!」ジタバタ
ライナー「……」
169 : ◆H4iwFNXQsw:2014/04/14(月) 19:59:46 ID:JC6Ta6P2
サシャ「……? あのー、聞いてます? 離してくださいってばー」ツンツン
ライナー「……思えばこれまでずっと、お前には振り回されっぱなしだった気がするな」
サシャ「ええー……そうですか? 私は逆だと思うんですけど」
ライナー「いいや、そんなはずはない。十人に聞きゃ十人全員が俺の味方につくだろう。……というわけで、だ」グイッ
サシャ「わっ……ちょっと、何してるんです? 腕押さえちゃったら雪合戦できないじゃないですか!」ジタバタジタバタ
ライナー「まあ、そう固いことを言うな。ーーなあサシャ、たまには俺がお前を振り回すってのもいいと思わないか?」ニヤリ
サシャ「……へ?」キョトン
ライナー「ただし、お前とは違って物理的にだがな。ーーどりゃあっ!!」ブォンッ!!
サシャ「ぎゃーっ!? ななな、なんですかいきなりぃっ! ライナー、手は!? 手はー!?」ジタバタジタバタ
ライナー「黙ってろ、舌噛んでも知らねえぞ!」グルングルン
サシャ「だからって振り回すのはーーやっ、やめてくださいよー! 目が回るー!!」ジタバタジタバタ
170 : ◆H4iwFNXQsw:2014/04/14(月) 20:00:39 ID:JC6Ta6P2
ーー しばらく後
ライナー「……ど、どうだ、参ったか」ゼエハア
サシャ「は、はいぃ……目が、目がくるくるしますぅ……」クラクラ
ライナー「よし……なら、雪合戦は俺の勝ちでいいな。文句あるか?」
サシャ「はいはいわかりました、わかりましたよぅ……ライナーの勝ちでいいです。ーーはぁ、疲れました」バフッ
ライナー「……? おい、何してんだ」
サシャ「いえ、寮のベッドもこれくらいふかふかだったらなぁって思いまして」ゴロゴロ
ライナー「だからって雪の上に転がる奴があるか。……あーあ、上着に雪がついちまったぞ? どうすんだそれ」
サシャ「後でまとめてなんとかしますよー……あ、ライナー星ですよ星。見えます? あそこの辺り」
ライナー「星……? まだ日は沈みきってないぞ? 見えるのか?」ジーッ...
サシャ「今の時間帯でも結構見えるもんですよ? ……まあ、本当は真夜中に見るのが一番なんですけどね。お肉の脂身みたいですごく綺麗なんです!」
ライナー「……いい雰囲気が粉々に砕け散りそうな表現だな」
サシャ「何言ってるんですか、お肉は脂身がついてるとついてないとじゃ味わいが全く違ったものに」
ライナー「わかったわかった」
171 : ◆H4iwFNXQsw:2014/04/14(月) 20:01:24 ID:JC6Ta6P2
サシャ「それにしても、時間が短い割にかなり遊べましたねぇ。正直また雪合戦ができるとは思ってませんでした」パタパタ
ライナー「遊ぶのはいいがはしゃぎすぎだろ、お前……付き合わされるほうの身にもなれよ」
サシャ「でも、なんだかんだ言ってちゃんと付き合ってくれますよね。ライナーは」
ライナー「一人にさせておくと何をしでかすかわからんからな」ハハハ
サシャ「……」ムカッ
サシャ(むー……また、子ども扱いされてます……)
サシャ「……」ゴロンゴロン
ライナー「こら、やめろって言ってるだろ。……こっちこい、髪の毛についた雪取ってやるから」
サシャ「……いいですよ、別に。手鏡もありますし、後から自分で取ります」ムスッ...
ライナー「手鏡じゃ後頭部まで見えねえだろ? 意地張ってないでここ座れ」ポンポン
サシャ「だから、平気ですってば! 見えなくてもこうやって、手櫛でやればなんとか……なんとか…………あれ?」ガシガシ
ライナー「無理に引っ張るな、髪が抜けちまうだろ? せっかくミーナにやってもらったんだ、台無しにしちまうのはもったいねえぞ」
サシャ「……じゃあすみません、お願いします」ストンッ
ライナー「ああ、任せとけ。……とは言っても、大したことはできんがな」
172 : ◆H4iwFNXQsw:2014/04/14(月) 20:02:11 ID:JC6Ta6P2
サシャ「……」
ライナー「あー……上着の毛糸と髪と雪が絡まってるな。少し時間かかるぞこれ」チマチマ
サシャ「無理に今やらなくてもいいですよ? 寮に帰ればきっと雪も解けるでしょうし」
ライナー「いや駄目だ。さっきお前が手櫛を通したせいでややこしいことになっちまってる。このまま歩き回ったら髪が引きつれるぞ」チマチマ
サシャ「引きつれて抜けてもどうせ二、三本でしょう? 別に気にしませんよ、私」
ライナー「俺が気にする。……せっかく綺麗な髪なのに、もったいねえだろ」
サシャ「…………そ、そうですか。もったいないですか」ギクシャク
ライナー「ああそうだ。ーーそれに『抜けてもいい』って考えは感心しないな。世の中には抜けてほしくなくても髪が抜けてしまう人たちだっているんだぞ」
サシャ「……はぁ、そうですね」
サシャ(なーんだ……別に、特別私の髪を褒めてくれたってわけじゃないんですね)ションボリ
ライナー(毛糸に雪がくっついて玉になってるな……しばらくかかりそうだ)チマチマチマチマ
173 : ◆H4iwFNXQsw:2014/04/14(月) 20:03:09 ID:JC6Ta6P2
ライナー「そういやお前、兵団はどこに入るか決めたのか?」
サシャ「卒業した後のですか? 決めましたよ」
ライナー「憲兵団か?」
サシャ「……ライナーは、憲兵団なんですか?」
ライナー「いや、まだ決めてない。……憲兵団も候補には入ってるけどな」
サシャ「候補……ということは、他の兵団も」
ライナー「考えてはいる。まあ、ギリギリになってみないとわからんな。……お前は?」
サシャ「……あの、この前ここで川釣りしましたよね。ミカサとかコニーとか……みんなで一緒に」
ライナー「ん? ……ああ、そうだな」
サシャ「あの時は結局見られませんでしたけど……私の故郷の近くの川だと、秋には鮭が釣れるんですよ。ーー知ってます? 鮭って本当はウミの魚なんですって」
ライナー「……海?」
サシャ「あ、ウミって言うのは……ええっと、この世界の大半を覆ってる、山より高くて大きい湖のことで……塩の塊がその辺にゴロゴロ落ちてるところらしいんですが」
ライナー「……その話、誰から聞いた?」
サシャ「エレンからです。ーーだから、この川を下った先に……きっとウミがあるんですよね。見たことないですけど」
ライナー「まあ……そういうことになるだろうな」
174 : ◆H4iwFNXQsw:2014/04/14(月) 20:04:02 ID:JC6Ta6P2
サシャ「憲兵団の小奇麗な食卓に座って、豪華な食事を待っているのも悪くないとは思うんですが……それよりかは、自分の足で探しに行って食べるほうが性に合ってるんですよね。ーーだから私は、調査兵団に行こうと思ってます」
ライナー「……調査兵団に入っても、海に行けるとは限らねえぞ」
サシャ「そりゃあ可能性は低いでしょうけど……でも、壁の中でじっと待ってることなんかできませんよ。おいしいものは自分から迎えに行かないと!」
ライナー「……」
サシャ「……だから」
サシャ「もしライナーが、憲兵団や駐屯兵団に行くことになったら……お別れってことになりますね」
ライナー「……ああ、そうだな」
175 : ◆H4iwFNXQsw:2014/04/14(月) 20:05:12 ID:JC6Ta6P2
ライナー(……今日が終わったら、明日からは卒業試験だ)
ライナー(試験の後、すぐに解散式があってーーそれから俺たちが……いや、俺が壁を壊す)
ライナー(奪還作戦には、恐らく訓練兵も投入されるだろう。……サシャだって例外じゃない)
ライナー(たとえこの先、こいつの隣に俺がいられなくとも……どこかで生きていてさえくれればいいと、そう思っていた)
ライナー(だが、調査兵団に入っちまえば……その可能性はぐんと減る。最悪、俺の知らないところで死ぬかもしれない)
ライナー(それこそ、奪還作戦で命を落とすことだって充分ありうる。無事に生き延びられる保証なんて、この先どこにもないんだ。……そういう世界に、俺たちは生きている)
ライナー(あんな巨人どもに、サシャをやっちまうなんて真っ平だ。……渡してたまるか)
ライナー(このまま、サシャを見殺しにするくらいならーー)
ライナー(ーー俺が連れて行っても、いいよな?)
176 : ◆H4iwFNXQsw:2014/04/14(月) 20:06:18 ID:JC6Ta6P2
サシャ「……あはは、なんかしんみりした空気になっちゃいましたね、すみません。ーー雪取れました? ずっと話してましたけど」
ライナー「……」
サシャ「……? ライナー、聞いてます?」
ライナー「……取れたぞ。もういい」
サシャ「そうですか、ありがとうございます。……そろそろ、日が沈みますね」
ライナー「……ああ」
サシャ(帰りたくないな……ずっとこのまま、二人でいたい……)
サシャ(でも、そんなこと言ったらライナーが困っちゃいますよね。我慢しないとーー)
ライナー「おいサシャ見ろ、川の向こうに肉があるぞ」スッ
サシャ「えっ、お肉っ!? 本当ですか!?」クルンッ
ライナー「……」グイッ ーーギュッ
ライナー「取り敢えずは歩きながら考えるか。……座ってないでそろそろ行くぞ」スクッ
サシャ「はーい、わかりました…………あっ」
サシャ(そういえば、手は……怪我しちゃってるから繋げませんよね。でも、逆側に回りこむのもなんだか……)モンモン
ライナー「ほら」スッ
サシャ「……え? あの、これってどうしたらーー」
ライナー「どうしたらもこうしたらもないだろ? 腕に掴まれ」
サシャ「……いいんですか?」
ライナー「自由にさせておくと何をするかわかったもんじゃないからな。……早くしろ」
サシャ「は、はい……」ギュッ
サシャ(腕組みして、街の中を歩くなんて……なんだか、恋人同士みたいですよね……)
145 : ◆H4iwFNXQsw:2014/04/02(水) 21:30:21 ID:moLpM0wo
ライナー「……」チラッ
サシャ「……へへ」ギュー
ライナー「顔、緩んでるぞ」
サシャ「えっ、そうですか? ……それじゃあ気をつけますっ」キリッ
ライナー「……」
サシャ「……」キリリッ
ライナー「……」
サシャ(……へへへー)ニヘラ
ライナー(あーかわいい)ニヤニヤ
146 : ◆H4iwFNXQsw:2014/04/02(水) 21:31:06 ID:moLpM0wo
ーー 夕方 トロスト区 繁華街 アクセサリー店前
ライナー「……屋台、何軒回った?」
サシャ「ええっと、7つくらいですかね……5番目がプレッツェルでしたっけ?」
ライナー「いや、6番目だ。……まあ、回った屋台の数はいいか。今更」
サシャ「そうですね、もういいですよね」
ライナー「量もそれなりに食ったから腹に溜まったな。財布もほぼすっからかんだが」
サシャ「私もですよ。……しばらくお菓子買えないです」シュン
ライナー「それで、まあ、食い終わって店の前に来たはいいが……」
サシャ「……閉まってますね」
ライナー「休みだってのは考えてなかったなー……」
サシャ「しかも臨時ですもんね、こればっかりはどうしようもないですよ。ーーそれで、これからどうします? 門限まではまだ時間ありますけど……」
ライナー「時間も半端になっちまったからなー……。ここからまた屋台のある通りに出るのも面倒だ。ーー仕方がない、戻るか?」
サシャ「えっ? ……もう帰っちゃうんですか?」
ライナー「他にやることもないだろ? この辺りはぶらぶら歩くには少し治安が悪いし、今日のところはおとなしく訓練所に戻ってーー」
サシャ「! やっ……!」ギュッ
147 : ◆H4iwFNXQsw:2014/04/02(水) 21:32:12 ID:moLpM0wo
サシャ「あっ……! え、えっとすみません、しがみついたりして……」パッ
ライナー「ああ、いや……別に構わんが」
サシャ「あの、もうちょっとだけ……もうちょっとだけ、一緒に……いたいんです、けど」
ライナー「……」
サシャ「だめ、ですかね……?」
ライナー「……」
サシャ「……」
ライナー「……なあサシャ、本当に俺でいいのか?」
サシャ「……? はい? どういう意味です?」
ライナー「実質、今日が訓練所での最後の休みなんだぞ? 門限ギリギリに帰ったら、ミカサやクリスタと話をする時間もなくなるかもしれん。……それでもいいのか?」
サシャ「……今更何言ってるんですか。嫌なら、今日一日一緒に過ごしたりなんかしませんよ」
ライナー「……そうか、それもそうだな。ーーそれで、どこか行きたいところはあるのか? 今からじゃ大したところには行けねえが」
サシャ「! あります、ちょっとここからは歩くんですけどーー」
148 : ◆H4iwFNXQsw:2014/04/02(水) 21:33:36 ID:moLpM0wo
今日はここまで 遅くなって大変申し訳ありません 切ったり貼ったり削ったり伸ばしてたりしたらかなり時間が経ってました
次回も怒涛のイチャイチャタイム 次の投下で最後まで行く予定
一気に最後までだと!?
楽しみだ
150 :以下、名無しが深夜にお送りします:2014/04/02(水) 23:24:42 ID:Zc4wBJyE
さぁどこまで行けるのかライナー
151 :以下、名無しが深夜にお送りします:2014/04/03(木) 13:00:56 ID:7qr8FbeQ
最後まで、だと?ふおおおおお一気にいってしまえがんばれライナー!!
続き楽しみに待機しており待つ
152 :以下、名無しが深夜にお送りします:2014/04/03(木) 13:58:26 ID:jZdt1tHY
続きがとても待ち遠しい
162 : ◆H4iwFNXQsw:2014/04/14(月) 19:54:34 ID:JC6Ta6P2
ーー 森の中
ライナー「おいサシャ、どこまで行くんだ?」ガサガサ...
サシャ「もうちょっとです、もうちょっと」ザクザク
ライナー「こんな奥まで来て大丈夫なのか? 大分歩いたぞ?」
サシャ「大丈夫ですって、こっちこっち!」グイッ
ライナー「おわっ!? ーーこら、急に引っ張るんじゃない! 転んだらどうする!」
サシャ「ごめんなさ……あっ、着きましたよ!」ガサガサッ
ライナー「ここは……あの時の河原か? 秋に釣りをしにきたところだよな」キョロキョロ
サシャ「はい、そうですよ! ーーここの川、実は訓練所の中まで続いてるそうなんです。知ってました?」
ライナー「いや、知らなかった。わざわざ調べたのか?」
サシャ「調べたというか……訓練所から壁の上の固定砲までってかなり距離あるじゃないですか。だからこの前、地図を見て近道を探してたんです」
ライナー「そしたら偶然気づいた、と」
サシャ「そうですそうです! 街だと道が入り組んでて時間がかかりますけど、ここなら訓練所まで一本道ですからね。日が沈んでからゆっくり歩いても、門限には充分間に合いますよ」
163 : ◆H4iwFNXQsw:2014/04/14(月) 19:55:14 ID:JC6Ta6P2
ライナー「……ここは、地元の人間もよく来るところなのか?」
サシャ「いえ、流石にそこまではわかりませんけど……でもあまり来ないんじゃないですか? 私たちが釣りしている間だって誰も来なかったでしょう?」
ライナー「そういやそうだったな。……そうか、誰も来ないのか」
ライナー(つまり、ここでなら……誰かに話を聞かれる心配もないってことだよな)
ライナー「それにしても、この辺りはまだ雪が積もってるんだな。一面真っ白だ」
サシャ「誰もこんなところ雪かきしませんからねー……。いくらか解けたみたいですけど、深いところは膝まで隠れそうです」フミフミ
ライナー「裾汚れるぞ」
サシャ「平気ですって、これくらい。ーーほら見て下さいよ! 昨日の夜に降った雪がまだ残ってます、ふわふわです!」モッフモッフ
ライナー「ふわふわなのはわかったが……それで、ここに何の用なんだ?」
サシャ「? 用って何のことですか?」キョトン
164 : ◆H4iwFNXQsw:2014/04/14(月) 19:56:02 ID:JC6Ta6P2
ライナー「……あのなぁ、お前が『行きたいところがある』って言い出したからここまで来たんだぞ? 一体何をしたかったんだ? まさかただ単に連れて来たかったわけじゃないだろ?」
サシャ「えっ? ……連れて来たかっただけじゃダメなんでしょうか」
ライナー「いや、それは……………………どうなんだろうな?」
サシャ「私に聞かれてもーーあっ、そうだ! だったらこの前の雪合戦! 雪合戦の続きをしましょう!」グリグリ コネコネ
ライナー「はぁ? 雪合戦?」
サシャ「もうここまで来ちゃったんですから、どうせなら思いっきり遊びましょうよ! この河原なら広さも雪も充分あります、雪合戦には最適です!」コネコネ
ライナー「……よし、わかった。やるからには負けねえぞ」ザクッ
サシャ「おやおや、そんなこと言っちゃっていいんですか? 前回は私に一発も当てられなかったでしょう?」フフン
ライナー「転んだ相手を痛めつける趣味はないんでな。ーー今日は大丈夫なのか? さっきも地面と友だちになろうとしてたからな、こりゃ手加減してやらないと悲惨なことになりそうだ」
サシャ「……」
ライナー「……」
165 : ◆H4iwFNXQsw:2014/04/14(月) 19:56:45 ID:JC6Ta6P2
サシャ「とうっ!」ポイッ
ライナー「おっと、危ねえ危ねえ」ヒョイッ
サシャ「ああっ! もう、避けないでくださいよ! ちゃんと当たってください!」ポイポイポイポイ
ライナー「無茶言うな、だったらお前も当たれ!」ブンッ
サシャ「嫌ですよ冷たいですしーーふぎゃっ!?」ベシャッ
ライナー「おっ? ……当たったな」
サシャ「……」ポタポタ...
ライナー「それで……前回がなんだって?」ニヤニヤ
サシャ「……! ーーなんのこれしきぃっ! 負けませんよー!!」ニギニギ ギュッギュッ
ライナー「上等だかかってこい、相手になってやる! ーーよし、雪玉できた!」ニギニギ ポイッ
サシャ「えっ、もう!? 早くありませんか!?」
ライナー「お前が作るの遅いだけだ! ……さーて、どこに当ててやるかな」シュッシュッ
サシャ(ううっ、まだこっちは雪玉できてないのに……!)キョロキョロ
166 : ◆H4iwFNXQsw:2014/04/14(月) 19:57:25 ID:JC6Ta6P2
サシャ「えーっとえーっと……えいっ!」バフッ
ライナー「ぶわっ!? ーーおい、雪をそのままかけるのは反則だろ!」
サシャ「だってライナーが雪玉作るの早過ぎるんですもん! ちゃんとやってるんですか!?」
ライナー「やってるって。お前が遅いだけだろ」ギュッギュッギュッギュッ
サシャ「は、速い……!」ガーン
サシャ(このままじゃ一方的ですね、ここは一旦距離を取ってーー)スクッ
サシャ「逃げます!」ダッ
ライナー「あっ! こら待て逃げるな! おとなしく当たれ!」ダッ
サシャ「嫌ですってばライナーばっかり当てようとしてずるいです! 私だってぶつけーーわぁっ!?」ズルッ ビタンッ!!
ライナー「!? おい、大丈夫か!? また顔から倒れたんじゃーー」
サシャ「なんちゃって! ーー隙ありぃっ!」ヒュンッ
167 : ◆H4iwFNXQsw:2014/04/14(月) 19:58:07 ID:JC6Ta6P2
ライナー「……」ベッショリ
サシャ「ふっふーん、油断大敵ですよライナー!」ニギニギニギニギ
ライナー「…………」ボフッ
サシャ「ふあぁっ!? な、何するんですかぁっ! 雪玉じゃないものは反則ですよ反則!」
ライナー「何言ってんだ先にやったのはそっちだろ! 俺は悪くないっ!!」モッフモッフモッフモッフ
サシャ「ちょっ……! もうっ、だからってやりすぎですよ! なんでそんなに手が大きいんですか片方貸してくださいよ! 不公平です!」モッフモッフモッフモッフ
ライナー「貸せるわけねえだろ無茶言うな!」モッフモッフモッフモッフ
サシャ「やってもみないうちからそんなこと言わないでくださいよ、少しは試してからーーひゃあっ!? せ、背中に! 背中に雪が入ったぁっ!」ピョン
ライナー「あっ……悪い、そこまで考えてなかった」ピタッ
サシャ「うぅっ、裾からなんとか出ませんかね……! 冷たいぃぃ……!」バッサバッサ
ライナー「わかったわかった、取ってやるからあまり動き回るな。そっちは川がーー」
サシャ「へっ、川? ……あっ」ズルッ
ライナー「!」ガシッ
168 : ◆H4iwFNXQsw:2014/04/14(月) 19:58:57 ID:JC6Ta6P2
ライナー「あっぶねえー……」ホッ
サシャ「び、びっくりしましたぁ……」ドキドキ
ライナー「そりゃこっちの台詞だ。今日は地面だけじゃなくて、川とも友だちになるつもりか?」
サシャ「……できれば遠慮したいです」
ライナー「だよな。今の時期に川に落ちたら洒落になんねえぞ」
サシャ「ごめんなさい、はしゃぎすぎました……支えてもらうの、今日はこれで二回目ですね」
ライナー「ああ、こんな調子じゃおちおち目も離してられん。……困ったもんだ」ハァ
サシャ「……すみません」シュン
サシャ(こうやって落ち着きがないから、いつもライナーに世話焼かれてばかりなんですよね……しかも困らせちゃってますし、私全然いいところありません……)ショボーン...
ライナー「? どうした、急におとなしくなったな。腹でも減ったか?」
サシャ「……いえ、なんでもないです。それより離してくださいよ、まだ決着はついてないんですからね!」ジタバタ
ライナー「……」
169 : ◆H4iwFNXQsw:2014/04/14(月) 19:59:46 ID:JC6Ta6P2
サシャ「……? あのー、聞いてます? 離してくださいってばー」ツンツン
ライナー「……思えばこれまでずっと、お前には振り回されっぱなしだった気がするな」
サシャ「ええー……そうですか? 私は逆だと思うんですけど」
ライナー「いいや、そんなはずはない。十人に聞きゃ十人全員が俺の味方につくだろう。……というわけで、だ」グイッ
サシャ「わっ……ちょっと、何してるんです? 腕押さえちゃったら雪合戦できないじゃないですか!」ジタバタジタバタ
ライナー「まあ、そう固いことを言うな。ーーなあサシャ、たまには俺がお前を振り回すってのもいいと思わないか?」ニヤリ
サシャ「……へ?」キョトン
ライナー「ただし、お前とは違って物理的にだがな。ーーどりゃあっ!!」ブォンッ!!
サシャ「ぎゃーっ!? ななな、なんですかいきなりぃっ! ライナー、手は!? 手はー!?」ジタバタジタバタ
ライナー「黙ってろ、舌噛んでも知らねえぞ!」グルングルン
サシャ「だからって振り回すのはーーやっ、やめてくださいよー! 目が回るー!!」ジタバタジタバタ
170 : ◆H4iwFNXQsw:2014/04/14(月) 20:00:39 ID:JC6Ta6P2
ーー しばらく後
ライナー「……ど、どうだ、参ったか」ゼエハア
サシャ「は、はいぃ……目が、目がくるくるしますぅ……」クラクラ
ライナー「よし……なら、雪合戦は俺の勝ちでいいな。文句あるか?」
サシャ「はいはいわかりました、わかりましたよぅ……ライナーの勝ちでいいです。ーーはぁ、疲れました」バフッ
ライナー「……? おい、何してんだ」
サシャ「いえ、寮のベッドもこれくらいふかふかだったらなぁって思いまして」ゴロゴロ
ライナー「だからって雪の上に転がる奴があるか。……あーあ、上着に雪がついちまったぞ? どうすんだそれ」
サシャ「後でまとめてなんとかしますよー……あ、ライナー星ですよ星。見えます? あそこの辺り」
ライナー「星……? まだ日は沈みきってないぞ? 見えるのか?」ジーッ...
サシャ「今の時間帯でも結構見えるもんですよ? ……まあ、本当は真夜中に見るのが一番なんですけどね。お肉の脂身みたいですごく綺麗なんです!」
ライナー「……いい雰囲気が粉々に砕け散りそうな表現だな」
サシャ「何言ってるんですか、お肉は脂身がついてるとついてないとじゃ味わいが全く違ったものに」
ライナー「わかったわかった」
171 : ◆H4iwFNXQsw:2014/04/14(月) 20:01:24 ID:JC6Ta6P2
サシャ「それにしても、時間が短い割にかなり遊べましたねぇ。正直また雪合戦ができるとは思ってませんでした」パタパタ
ライナー「遊ぶのはいいがはしゃぎすぎだろ、お前……付き合わされるほうの身にもなれよ」
サシャ「でも、なんだかんだ言ってちゃんと付き合ってくれますよね。ライナーは」
ライナー「一人にさせておくと何をしでかすかわからんからな」ハハハ
サシャ「……」ムカッ
サシャ(むー……また、子ども扱いされてます……)
サシャ「……」ゴロンゴロン
ライナー「こら、やめろって言ってるだろ。……こっちこい、髪の毛についた雪取ってやるから」
サシャ「……いいですよ、別に。手鏡もありますし、後から自分で取ります」ムスッ...
ライナー「手鏡じゃ後頭部まで見えねえだろ? 意地張ってないでここ座れ」ポンポン
サシャ「だから、平気ですってば! 見えなくてもこうやって、手櫛でやればなんとか……なんとか…………あれ?」ガシガシ
ライナー「無理に引っ張るな、髪が抜けちまうだろ? せっかくミーナにやってもらったんだ、台無しにしちまうのはもったいねえぞ」
サシャ「……じゃあすみません、お願いします」ストンッ
ライナー「ああ、任せとけ。……とは言っても、大したことはできんがな」
172 : ◆H4iwFNXQsw:2014/04/14(月) 20:02:11 ID:JC6Ta6P2
サシャ「……」
ライナー「あー……上着の毛糸と髪と雪が絡まってるな。少し時間かかるぞこれ」チマチマ
サシャ「無理に今やらなくてもいいですよ? 寮に帰ればきっと雪も解けるでしょうし」
ライナー「いや駄目だ。さっきお前が手櫛を通したせいでややこしいことになっちまってる。このまま歩き回ったら髪が引きつれるぞ」チマチマ
サシャ「引きつれて抜けてもどうせ二、三本でしょう? 別に気にしませんよ、私」
ライナー「俺が気にする。……せっかく綺麗な髪なのに、もったいねえだろ」
サシャ「…………そ、そうですか。もったいないですか」ギクシャク
ライナー「ああそうだ。ーーそれに『抜けてもいい』って考えは感心しないな。世の中には抜けてほしくなくても髪が抜けてしまう人たちだっているんだぞ」
サシャ「……はぁ、そうですね」
サシャ(なーんだ……別に、特別私の髪を褒めてくれたってわけじゃないんですね)ションボリ
ライナー(毛糸に雪がくっついて玉になってるな……しばらくかかりそうだ)チマチマチマチマ
ライナー「そういやお前、兵団はどこに入るか決めたのか?」
サシャ「卒業した後のですか? 決めましたよ」
ライナー「憲兵団か?」
サシャ「……ライナーは、憲兵団なんですか?」
ライナー「いや、まだ決めてない。……憲兵団も候補には入ってるけどな」
サシャ「候補……ということは、他の兵団も」
ライナー「考えてはいる。まあ、ギリギリになってみないとわからんな。……お前は?」
サシャ「……あの、この前ここで川釣りしましたよね。ミカサとかコニーとか……みんなで一緒に」
ライナー「ん? ……ああ、そうだな」
サシャ「あの時は結局見られませんでしたけど……私の故郷の近くの川だと、秋には鮭が釣れるんですよ。ーー知ってます? 鮭って本当はウミの魚なんですって」
ライナー「……海?」
サシャ「あ、ウミって言うのは……ええっと、この世界の大半を覆ってる、山より高くて大きい湖のことで……塩の塊がその辺にゴロゴロ落ちてるところらしいんですが」
ライナー「……その話、誰から聞いた?」
サシャ「エレンからです。ーーだから、この川を下った先に……きっとウミがあるんですよね。見たことないですけど」
ライナー「まあ……そういうことになるだろうな」
174 : ◆H4iwFNXQsw:2014/04/14(月) 20:04:02 ID:JC6Ta6P2
サシャ「憲兵団の小奇麗な食卓に座って、豪華な食事を待っているのも悪くないとは思うんですが……それよりかは、自分の足で探しに行って食べるほうが性に合ってるんですよね。ーーだから私は、調査兵団に行こうと思ってます」
ライナー「……調査兵団に入っても、海に行けるとは限らねえぞ」
サシャ「そりゃあ可能性は低いでしょうけど……でも、壁の中でじっと待ってることなんかできませんよ。おいしいものは自分から迎えに行かないと!」
ライナー「……」
サシャ「……だから」
サシャ「もしライナーが、憲兵団や駐屯兵団に行くことになったら……お別れってことになりますね」
ライナー「……ああ、そうだな」
175 : ◆H4iwFNXQsw:2014/04/14(月) 20:05:12 ID:JC6Ta6P2
ライナー(……今日が終わったら、明日からは卒業試験だ)
ライナー(試験の後、すぐに解散式があってーーそれから俺たちが……いや、俺が壁を壊す)
ライナー(奪還作戦には、恐らく訓練兵も投入されるだろう。……サシャだって例外じゃない)
ライナー(たとえこの先、こいつの隣に俺がいられなくとも……どこかで生きていてさえくれればいいと、そう思っていた)
ライナー(だが、調査兵団に入っちまえば……その可能性はぐんと減る。最悪、俺の知らないところで死ぬかもしれない)
ライナー(それこそ、奪還作戦で命を落とすことだって充分ありうる。無事に生き延びられる保証なんて、この先どこにもないんだ。……そういう世界に、俺たちは生きている)
ライナー(あんな巨人どもに、サシャをやっちまうなんて真っ平だ。……渡してたまるか)
ライナー(このまま、サシャを見殺しにするくらいならーー)
ライナー(ーー俺が連れて行っても、いいよな?)
176 : ◆H4iwFNXQsw:2014/04/14(月) 20:06:18 ID:JC6Ta6P2
サシャ「……あはは、なんかしんみりした空気になっちゃいましたね、すみません。ーー雪取れました? ずっと話してましたけど」
ライナー「……」
サシャ「……? ライナー、聞いてます?」
ライナー「……取れたぞ。もういい」
サシャ「そうですか、ありがとうございます。……そろそろ、日が沈みますね」
ライナー「……ああ」
サシャ(帰りたくないな……ずっとこのまま、二人でいたい……)
サシャ(でも、そんなこと言ったらライナーが困っちゃいますよね。我慢しないとーー)
ライナー「おいサシャ見ろ、川の向こうに肉があるぞ」スッ
サシャ「えっ、お肉っ!? 本当ですか!?」クルンッ
ライナー「……」グイッ ーーギュッ
ショートストーリーの人気記事
神様「神様だっ!」 神使「神力ゼロですが・・・」
神様の秘密とは?神様が叶えたかったこととは?笑いあり、涙ありの神ss。日常系アニメが好きな方におすすめ!
→記事を読む
女「ハローハロー。誰かいませんか?どうぞ」
→記事を読む
キモオタ「我輩がおとぎ話の世界に行くですとwww」ティンカーベル「そう」
→記事を読む
魔王「世界の半分はやらぬが、淫魔の国をくれてやろう」
→記事を読む
男「少し不思議な話をしようか」女「いいよ」
→記事を読む
同僚女「おーい、おとこ。起きろ、起きろー」
→記事を読む
妹「マニュアルで恋します!」
→記事を読む
きのこの山「最後通牒だと……?」たけのこの里「……」
→記事を読む
月「で……であ…でぁー…TH…であのて……?」
→記事を読む
彡(゚)(゚)「お、居酒屋やんけ。入ったろ」
→記事を読む