サシャ「いつだって、あなたの味方です」
Part3
45 : ◆H4iwFNXQsw:2014/03/19(水) 21:57:27 ID:wUGBEG/A
ーー しばらく後 男子寮 エレンたちの部屋
アルミン「ライナー遅いねー」
ベルトルト「ねー」
アルミン「僕はてっきりベルトルトと一緒だと思ってたんだけどな。……お風呂どうする? そろそろ先に行ったエレンが帰ってくるはずだけど」
ベルトルト「そうだね……ギリギリまでは待とうかな。どうせ明日は休みだし」
アルミン「休みといえば、明日ベルトルトは何かするの? 予定は入れてる?」
ベルトルト「いや、明日は打ち合わせもあるし大して時間取れないだろ? だから敢えて予定は入れないで、余った時間で勉強してようかなって思ってるけど……アルミンは?」
アルミン「今のところ予定はないけど……昨日の夜辺りからミカサがそわそわしてるんだよね」
ベルトルト「……? それが?」
アルミン「明日の……そうだな、朝に突然『エレンも連れて午後から三人でどこかに行こう』って言われるんじゃないかな、って思ってるんだけど」
ベルトルト「急なお誘いだね」
アルミン「ミカサはほら、恥ずかしがり屋さんだからさ。……そういうところが放っておけないんだけどね」
46 : ◆H4iwFNXQsw:2014/03/19(水) 21:58:19 ID:wUGBEG/A
ライナー「……ただいま」ガチャッ バタンッ
アルミン「ああライナー、遅かった…………ね……?」
ベルトルト「……ライナー、もしかして雪の中を走ってきたの? びしょ濡れだけど」
ライナー「いや……雪の上に寝っ転がるとどんな気分なのか試してみたくてな、遊んできただけだ」グッショリ
アルミン「……遊んできたんだ」
ベルトルト「……」
ライナー(くっそ、巨人の力じゃ風邪は治らねえんだぞ……! アニの奴、今度覚えてろよ……!)プルプルプルプル...
ライナー「すまんが、先に風呂入ってきていいか? ……寒くてな」サスサス
アルミン「どうぞどうぞ」
ベルトルト「僕たちには構わないで行ってきなよ。……あ、エレンに会ったら早く戻ってくるようにって言っておいてくれるかな?」
ライナー「ああ、伝えておく。……悪いな、じゃあ行ってくる」ガチャッ バタンッ
47 : ◆H4iwFNXQsw:2014/03/19(水) 21:59:36 ID:wUGBEG/A
ーー しばらく後 男子寮 エレンたちの部屋
エレン「いっちにぃっ、さーんしぃっ」グイグイ
アルミン「エレン、お風呂あがりなのにストレッチなんかして大丈夫なの? また汗かくんじゃない?」
エレン「なんだアルミン、知らねえのか? こういう柔軟体操は風呂あがりにやったほうが効果的なんだぜ? ……って本に書いてあったぞ」
アルミン「でも汗が出るほどやるのはよくないよ。しかも髪の毛もろくに乾かしてないだろ? そのまま寝たら布団が湿っちゃうよ? 布団が湿ったらカビが繁殖して、カビが繁殖したらエレンはそのカビと一緒に寝ることになって、カビと一緒に寝たら体に様々な影響がーー」
エレン「わかったわかった、ちゃんと乾かすって。……ベルトルトが風呂から戻ってきたらな」
アルミン「もう……そんな言い訳使うなら、ベルトルトを待ってあがってきたらよかったよ」ハァ
エレン「……なあアルミン。ところでライナーはしかめっ面して何してんだ?」ヒソヒソ
アルミン「さあ? 瞑想でもしてるんじゃない? 腕組みと胡座ってのが少し気になるけど」ヒソヒソ
ライナー「…………」
ライナー(………………………………寝ちまいたい…………)ズーン...
48 : ◆H4iwFNXQsw:2014/03/19(水) 22:00:49 ID:wUGBEG/A
ライナー(……アニを問い詰めるつもりが、逆に説教されちまったな)
ライナー(それにしても、あいつがあんなことを言ってくるとは……正直驚いた)
ライナー(昔は「他人なんかどうでもいい」って態度を隠しもしなかったのに、今日は他人の関係に自分から首突っ込んできやがった)
ライナー(しかも……前より、よく笑うようになった気がするな。アニのああいう顔を見たのは、一体いつ以来になるんだ?)
ライナー(ベルトルトだってそうだ。以前は定期報告の時でも少ししか話そうとしなかったのに、自分の意見を言うようにまでなった)
ライナー(アニも、ベルトルトも……ここの、この訓練所に来て色々変わったんだな)
アルミン「……ほら見てエレン。ライナーが菩薩のような顔をしているよ」ヒソヒソ
エレン「ボザド?」
アルミン「違うよ、ボザドじゃなくて菩薩。東洋の神様のことさ。厳密に言うと違うんだけどね」
エレン「ふーん……確かに、何かしら悟りきった顔はしてるな」
49 : ◆H4iwFNXQsw:2014/03/19(水) 22:01:54 ID:wUGBEG/A
ライナー(まあ……なんだ。アニの言うことに従うわけじゃないが……予行練習くらいはしておいてもいいか)
ライナー(本人がいないと想像しにくいな。……何かないか?)ゴソゴソ...
ライナー(似顔絵でも描いて枕に貼り付けるか? だがベルトルトはまだしも、エレンやアルミンに見られたらまずいよな……ん?)
ライナー「……」ビローン
ライナー(サシャからもらった髪ゴムか。……待てよ、ここをこうしてーー)ギュッ
ライナー(これでよし。あいつの髪型に見えなくもないよな……さて、何から切り出すか)
アルミン「枕を縦にして壁に立てかけたね。新しい睡眠法かな?」ヒソヒソ
エレン「じゃあ枕の端っこをゴムで縛るのも睡眠法か? ……ていうかさっきから何やってんだ、ライナーは」ヒソヒソ
アルミン「気になるなら聞いてきたらどうかな。きっとライナーなら正直に答えてくれると思うよ」
エレン「よっしゃ、聞いてこよう」
50 : ◆H4iwFNXQsw:2014/03/19(水) 22:02:48 ID:wUGBEG/A
ライナー「………………」
ライナー(駄目だ、こうやって面と向かっても何も思い浮かばねえ……そもそも、諸々の事情をどう説明するかなんだよな……どうするか……)
エレン「よっ、ライナー!」ヒョコッ
ライナー「」ビクッ!!
エレン「さっきから百面相して何やってんだ? 新しい遊びか何かか?」
ライナー「……少し考えごとをしてるんだ。放っておいてくれ」
エレン「あっ、そうだったのか……悪いな。でもその前に一つだけいいか?」
ライナー「なんだ? さっきの柔軟体操の話か?」
エレン「違う違う。……それ、枕の端っこを縛って何してんだ?」
ライナー「……」ギクッ
エレン「アルミンは睡眠法の一つだって言ったけど、それだと壁に立てかけてあるから寝にくいよな。もしかして何か別のことやってんじゃねえの?」
ライナー「いや、これはだな…………サシャの……」モゴモゴ
エレン「? サシャのなんだって?」ズイッ
51 : ◆H4iwFNXQsw:2014/03/19(水) 22:03:40 ID:wUGBEG/A
ライナー「これは……これはその、あれだ、リラックスして寝るためのおまじないだ。サシャは全く関係ない」
エレン「そっか。でも寝てねえじゃん」
ライナー「……リラックスしていい夢を見るためのおまじないなんだ。ただし、寝る前にやらないと効果がない」
エレン「ふーん……変なおまじないもあったもんだな。ーー教えてくれてどうも。アルミンにも伝えておくよ」
ライナー「……待て。アルミンも見てたのか?」
エレン「並んで二人で見てたぞ」
ライナー「そうか……なあアルミン、少しいいか?」
アルミン「僕? 何か用かな、ライナー」ヒョコッ
ライナー「お前、手持ちの本は全部処分しちまったのか? もしそうじゃなかったら、今ものすごーく読みたい本があるから貸してほしいんだが」
52 : ◆H4iwFNXQsw:2014/03/19(水) 22:05:25 ID:wUGBEG/A
アルミン「何冊かは残ってるよ。何? 兵法の本? それともえっちぃお姉さんの本?」
ライナー「いや、恋愛小説だ」
アルミン「えっ」
エレン「……レンアイ?」
ライナー「少し参考にしたいんだ。ーーできれば純愛もので頼む」キリッ
アルミン「じゅんあい」
ライナー(恋愛小説なら、『何か特別な秘密を好きな相手に打ち明けるシーン』というものもあるかもしれんからな……我ながらいい考えだ)フッ
エレン(小説かぁ……ライナーはそういう本を読んで参考にしてたのか。効率的な筋トレの仕方でも載ってんのかな)
アルミン(ライナーって、実は特殊な趣味を持ってたんだろうか……? ーーううん、そういうことを見た目で決めつけちゃいけないよね。だめだめ)
アルミン「期待させて悪いけど、小説の類はこの前全部処分しちゃったんだ、ごめんね。……あ、でもミカサが何冊か残してた気がするな。明日でいいなら借りてこようか?」
ライナー「いや、そこまでしなくていい。……今日じゃなきゃ意味がないんでな」
アルミン(そんなに読みたかったの!? 今日じゃなきゃ意味がないって何!?)
エレン(『ライナーはレンアイ小説が好み』っと。俺も読んだほうがいいかな。ミカサも腹筋すげえし……腹筋にはレンアイが深く関わってるのかもしれねえ。明日借りてこよっと)メモメモ
53 : ◆H4iwFNXQsw:2014/03/19(水) 22:07:49 ID:wUGBEG/A
アルミン(あのライナーが、純愛系の恋愛小説貸してだなんて……いくらなんでも突拍子がなさすぎるよ。今まで興味がある素振りすらなかったのに)
アルミン(……もしかして)ハッ
アルミン「ねえライナー。……君、明日は何か予定があるの?」
ライナー「明日か? 明日は整備班の打ち合わせがあるだろ?」
アルミン「その後だよ、その後。ちなみにベルトルトは勉強するって言ってたけど、ライナーは? 一緒に勉強かな?」
ライナー「いや、街に出かける予定を入れてる」
アルミン「へえ……そっか。誰と? 何人で?」
ライナー「サシャと二人でだ。……なんでそんなことを聞くんだ?」
アルミン「ううん、別に? ところでさ……ライナー、もしかして今悩みごとを抱えてない? それも結構深刻な」
ライナー「! ……よくわかったな。態度に出てたか?」
アルミン「少しだけね。リラックスして寝たいとか、本を読みたいとか……何か迷ってる時ってさ、そういうのについ頼っちゃうよね」
54 : ◆H4iwFNXQsw:2014/03/19(水) 22:09:00 ID:wUGBEG/A
アルミン「そういう時はさ、もちろん逃げるのもいいんだけど……頭で考えてることを全部紙に書き出しちゃうっていう手もあるよ。悩みを目に見える形にすれば解決の糸口が掴めたりするし、何より書き出すことで頭の中がスッキリするからね」
ライナー「書き出す、か……なるほどな」
アルミン「まだ処分してないノートがあるから、紙が足りないなら何冊かあげるよ? いる?」
ライナー「いや、大丈夫だ。ーーありがとなアルミン、参考になった」
アルミン「どういたしまして。……ほらエレン、僕たちはもう寝よう? ライナーを考えごとに集中させてあげないと」
エレン「髪乾いてないけどいいか?」
アルミン「しっかり拭けばたぶん大丈夫だよ。ーーライナー、ランプは点けてていいからね。ベルトルトもまだ戻ってきてないし、僕らのことは気にしないで」
ライナー「何から何まで悪いな。……それじゃあおやすみ、エレン。アルミン」
アルミン「うん、おやすみライナー。……ほらエレン、髪拭いて」ゴシゴシ
エレン「自分でやるってそれくらい。ーーんじゃおやすみー」
55 : ◆H4iwFNXQsw:2014/03/19(水) 22:10:47 ID:wUGBEG/A
ーー しばらく後 消灯時間前 男子寮 エレンたちの部屋
ベルトルト「ただいまー……って、あれ?」ガチャッ バタンッ
ライナー「おうベルトルト、おかえり」カキカキ
ベルトルト「やあ、ライナー。……エレンとアルミンは? 寝ちゃった?」ヒソヒソ
ライナー「ああ、お前が帰ってくるちょっと前にな。……しかし随分と長風呂だったな。のぼせてないか?」
ベルトルト「いや、お風呂自体には長く浸かってないんだ。ちょっとモタモタしてたら掃除の時間になっちゃってさ、マルコが当番だったから手伝ってただけで……ところで何してるの? 勉強?」
ライナー「違う。頭の中を整理してるんだ。お前もやるか? 結構スッキリするぞこれ」
ベルトルト「ううん、やらない。頭の中を整理するのはいいけど、まずその周囲に散らかってる紙を整理しなよ……何なの? この紙の山」ガサガサ
ライナー「アルミンがな、考えごとを整理するときには紙に書きだすのが一番だと教えてくれたんだ。それで色々書き散らしてた」
ベルトルト「へえ、アルミンが…………あのさライナー、君酔ってないよね? お酒飲んだ?」
ライナー「はぁ? 飲んでねえよ、なんだ突然」
ベルトルト「ちょっと確認したかっただけ。ーーじゃあ、この辺りの紙に書いてあるのは君が全部素面で書いたものなんだね?」
ライナー「おう、そうだぞ」
56 : ◆H4iwFNXQsw:2014/03/19(水) 22:12:55 ID:wUGBEG/A
ベルトルト「サシャに好きって伝えるの?」
ライナー「……なんでわかった」
ベルトルト「うーん……このポエムみたいな文句を読んだから、かな。なんでこんなの書いてるんだ君は」ピラッ
ライナー「先に言っとくが、必ずやるって決めたわけじゃないからな? 検討してるだけだ」
ベルトルト「検討するだけでこんなに散らかる? しかもこんな枚数になる?」
ライナー「散らかるって……一応これでも片付けたんだがな。それにほら、こっちに残りがあるぞ。そこに散らかってる分だけじゃない」ドサッ
ベルトルト「わあ、すごいね。座学の宿題か何かかな?」
ライナー「……俺の人生の宿題だ」
ベルトルト「誰がうまいこと言えって言ったんだよ。あーあ、こんなにたくさん書いちゃって……文集でも作る気? 九割ほど人に見せられない内容だけど」ペラペラ
ライナー「そうか? そんな恥ずかしいことは書いてないはずなんだが……」
57 : ◆H4iwFNXQsw:2014/03/19(水) 22:14:09 ID:wUGBEG/A
ベルトルト「そうだね、残り一割はそういう感じだね。……ねえ、こっちの紙は途中からサシャに買ってあげるおやつリストになってるんだけど、これはどういう意図があるの?」
ライナー「やはり肉のほうがいいと思うか?」
ベルトルト「知らないよ。……なんていうか、君の愛重たいね。物理的に」ズシィッ...
ライナー「よせよ、照れるだろ?」ハハハ
ベルトルト「……それで、なんでこの数分間でこんな凄まじい黒歴史作っちゃったの? 若気の至り?」
ライナー「いや、最初はアルミンに恋愛小説を借りようと思ったんだけどな?」
ベルトルト「だからなんで?」
ライナー「『何か特別な秘密を好きな相手に打ち明けるシーン』があったら参考にしようと思ったんだ。……持ってないから借りられなかったんだけどな」
ベルトルト「真面目か」
ライナー「真面目で何が悪い。下調べは大事だろ?」
ベルトルト「……」
ベルトルト(告白だけでこの状態ってことは……もしラブレターを書くってことになったら、アルミンやマルコに推敲頼みそうだな。……よかった、そこまでの事態にならなくて)ホッ
58 : ◆H4iwFNXQsw:2014/03/19(水) 22:16:05 ID:wUGBEG/A
ベルトルト「とにかく、この産業廃棄物は明日全部燃やすからね。ライナーもちゃんと手伝ってよ? あと今日はもうさっさと寝てくれ頼むから」
ライナー「は? 別に燃やす必要ねえだろ? ただ頭の中身を書き出した紙なんだからよ。他の奴らに見られようが、特に困ったことにはーー」
ベルトルト「それじゃあここに書いてる文字読んでみて? 小声でね」
ライナー「……? なんで小声なんだ?」
ベルトルト「いいから早く」
ライナー「わかったわかった、ええっとな……『俺の正体は鎧の巨人です。壁の外からやってきました』」ボソボソ
ベルトルト「……」
ライナー「……」
ベルトルト「……」
ライナー「…………あっ」
ベルトルト「『あっ』じゃないだろ? 馬鹿なの? 君は馬鹿なのか? ーーわかったらさっさと寝なよ。明日は朝一番に焼却炉に走るからね」
ライナー「そんな……! 下調べも練習もしねえで本番に挑めってのか!?」オロオロ
ベルトルト「いいから寝ろ」ゴンッ
59 : ◆H4iwFNXQsw:2014/03/19(水) 22:17:34 ID:wUGBEG/A
ーー 翌日 朝 訓練所の食堂
アルミン「ライナーとベルトルトいなかったね。今日当番だったっけ?」スタスタ...
エレン「特に聞いてねえけどなー……おっ、いたいた。ーーミカサ、おはよう」スタスタ...
ミカサ「! おはよう。エレン、アルミン。席は取っておいた」
アルミン「おはようミカサ。ありがとね」
ミカサ「どういたしまして。……エレン、髪の毛がはねてる。昨日はちゃんとお風呂あがりに乾かしたの? 湿ったまま放置すると傷んでしまうから気をつけて」
エレン「あー乾かした乾かした、もうすっげえ乾かした。カサカサになっちまったくらいだぜ」
ミカサ「カサカサではだめ。それは髪の毛が傷んでる証拠。……朝ごはんを食べたら井戸に行ってトリートメントしよう。私も手伝う」
エレン「アルミン! ーー俺の今日の髪の毛の状態はどうだ?」
アルミン「すごくいいよ。ここ近年になかったほどサラサラしてる」
ミカサ「そうなの? ……まあ、アルミンが言うのなら本当なのだろう。信じる」
エレン『アルミン感謝。すごく感謝。たくさん感謝』シュッシュッ
アルミン『手信号がぎこちないよエレン、もうちょっと練習しようね』クルクル ブンブン
ミカサ「……」ソワソワ モジモジ
60 : ◆H4iwFNXQsw:2014/03/19(水) 22:18:34 ID:wUGBEG/A
ミカサ「あの……あの、二人とも、今日の予定は何かある? どこか出かけたりする?」
エレン「今日か? 今日は……整備班の打ち合わせだけだな。当番も今はねえし」
ミカサ「それしかない? 本当に?」
アルミン「うん。僕もエレンもものすごーく暇だよ、ミカサ」
ミカサ「そう、そうなの……」
エレン「今日はにんじんのスープか……おおっ! アルミン見てみろよ、俺のスープにゴロッとでかいにんじんが入ってるぞ! 今日は当たりだ! やったぜ!」ワーイ
アルミン「うん……うん、そうだね……」チラチラ
ミカサ「……」モジモジ
アルミン「……」
ミカサ「あのねエレン、アルミン。ーーこの前、街に……サシャたちと一緒に出かけた時に、その……お店のチラシをもらったのだけれど……」モジモジ ゴソゴソ...
エレン「ああーっ!!」ガタンッ
ミカサ「ひぇっ! ……え、エレン、食事中に立つのはよろしくない。ちゃんと座って」クイクイ
エレン「今思い出した! なあミカサ、お前に頼みがあるんだけどいいか?」ズイッ
ミカサ「私に……何? なんでも聞く。遠慮せず言ってほしい」
61 : ◆H4iwFNXQsw:2014/03/19(水) 22:19:31 ID:wUGBEG/A
エレン「お前が持ってるっていうレンアイ小説貸してくれねえか?」
ミカサ「……」ピクッ
アルミン「……」
エレン「なあ頼むよ、俺には(腹筋を手に入れるためにも)どうしてもレンアイ小説が必要なんだ!」
ミカサ「待って……待ってエレン、私が恋愛小説を持ってるって誰から聞いたの?」
エレン「決まってるだろ? アルミンだよ」
ミカサ「……アルミン?」ジロリ
アルミン「……」プイッ
エレン「いいだろ? お前(腹筋を鍛えるのが)趣味だって前にも言ってたじゃねえか。(腹筋を鍛えるのが)好きなんだろ?」
ミカサ「……」
ミカサ(前にも……? そんな話、エレンにした覚えはないのに……)
ミカサ(どうしよう……確かに恋愛小説は持っているけれど、エレンに読ませるのはちょっと……何より、私の好みを知られるのは恥ずかしい……///)
ミカサ(……心苦しいけれど、ここは誤魔化しておこう)
ミカサ「……違う、エレン。私はそんなの持ってないし、そもそも読んだことがない。そんなの知らない」
62 : ◆H4iwFNXQsw:2014/03/19(水) 22:20:40 ID:wUGBEG/A
エレン「はぁ? ……なんだよお前、レンアイ小説くらい貸してくれたっていいだろ? それとも今読んでるから貸せねえのか?」
ミカサ「だから、私は恋愛小説なんて知らなーー」
エレン「お前の趣味は!! レンアイ小説(を使って腹筋を鍛えること)だろうが!!」
ミカサ「!! え、エレン……やめて、大きい声で言わないで……! みんなに聞こえてしまう……!///」
エレン「何を恥ずかしがることがあるんだ!! (腹筋を鍛えることは)立派な趣味だろ!? お前の(腹筋への)情熱はそんなもんだったのかよ!?」
ミカサ「う、ううっ……///」モジモジ
ミカサ(どうしてエレンはこんなにしつこいの……? アルミンはエレンに一体何を吹き込んだのだろう……?)チラッ
アルミン(あちゃー、エレンってばこう来たかぁ……ちゃんと周りを見なよエレン、ミカサが真っ赤っ赤だよ? 君のせいで君の幼馴染がみんなの好奇の目に晒されてるよ? 「あのミカサが恋愛小説……だと……?」みたいな雰囲気になってるよ?)
ジャン(あのミカサが恋愛小説……だと……?)チラチラ
マルコ(へー、ミカサがね……)
ミーナ(そういえば部屋にあったなー……趣味だったんだ、あれ)
サシャ(今日の夕ごはんなんでしょうかねー)パクパク
63 : ◆H4iwFNXQsw:2014/03/19(水) 22:22:46 ID:wUGBEG/A
アルミン(まさかエレンがここまで暴走するなんて……ごめんよミカサ)
アルミン(今の僕にできるのは、この被害をこれ以上広げないことだ。ーーなんとか話は収めてみせる!)キリッ
アルミン「エレン、食堂で大声出しちゃだめだよ? 迷惑になるから静かにしよう?」ニッコリ
エレン「あっ……すまねえなアルミン、時と場所を考えずに叫んじまった」
アルミン「いいよいいよ、気にしないで。……ねっ、ミカサもごはん食べようよ。せっかくのスープが冷めちゃうし」
ミカサ「……わかった。食べる」
エレン「でもさぁ」
アルミン「エレン?」
エレン「食うよ、食うって。……だから睨むなよ、アルミン」シュン
アルミン(よーし、これで危機は脱したな。あとは穏便に朝ごはんを食べちゃえばーー)
ミカサ「……ところでエレン、どうして突然恋愛小説なんか読みたくなったの? いつもは普通の本でも避けて歩くのに」
エレン「ん? ……ああ、そりゃ昨日ライナーが読みたいって言ってたからだな!」
アルミン(わーお)
64 : ◆H4iwFNXQsw:2014/03/19(水) 22:24:24 ID:wUGBEG/A
ジャン(あのライナーが恋愛小説……だと……?)
マルコ(ミカサはまだしもなんでライナーが?)
アニ(あいつ、遂にトチ狂ってそんなものにまで手を……)
コニー(今日も雪かき当番かー……ちぇっ、面倒くせえなぁ)
アルミン(ああもうどうして君は次から次へと問題を持ち込むかな!! なんでかな!? そんなに僕の頭を使わせたいの!? 頭が良くなるわけだよ全く!)
ミカサ「……ライナーが?」
エレン「ああ! ……そうだミカサ、お前髪ゴム持ってたりしねえか? ライナーが昨日教えてくれたんだけどよ、リラックスして眠れるおまじないってのがーー」
アルミン「あー! あーっ! ああーっ!!」
65 : ◆H4iwFNXQsw:2014/03/19(水) 22:26:52 ID:wUGBEG/A
エレン「わっ!? ……なんだよアルミン、うるせえぞ」
アルミン「朝一番の発声練習って大事だよねぇー!! ミカサもそう思わない!?」
ミカサ「え? ……ええと、うん、思う」コクコク
エレン「でもこんなところで発声練習って迷惑になるだろ? 静かにしろよ」
アルミン「そうだねぇー! じゃあちょっと食堂の外に出ようかー!? ねっ、そうしようそうしよう!」ガタンッ グイッ
エレン「おわっ!? 待てよアルミン、俺の当たりのにんじんがー!」ズルズル...
アルミン(全く冗談じゃないよ! これ以上被害を拡散させてたまるか! ーーこうなったら物理的に排除させてもらうよエレン! 悪いと思わないでね!)グイグイ
ミカサ「アルミン待って、せめてパンだけでも持って行って!」タタタッ
ミーナ「……何だったの?」
アニ「さあね。知らない」
アニ(まあ、大体想像はつくけど……あいつ、本を参考にするつもりだったんだね。自分で考えなよそれくらい)ハァ
ミーナ(あのライナーが恋愛小説読みたがるなんて、ちょっと考えづらいなぁ……しかもただの小説じゃなくて「恋愛」小説なんだよね? ということはーー)チラッ
66 : ◆H4iwFNXQsw:2014/03/19(水) 22:28:20 ID:wUGBEG/A
コニー「やった! これでにんじん三個目だ!」ゴロンッ
サシャ「あーっ! いいなぁ、コニーばっかりずるいです……私のスープには何も入ってないのにぃ……」ションボリ
ミーナ「……ねえサシャ。今日の午後さ、暇だったらどこかに出かけない? 卒業試験前に行きたいところがあるんだよね」
サシャ「あっ……えっと、すみません。今日は予定が入ってるので無理です。他の人と出かける約束しちゃったので」
ミーナ「予定か……予定ねぇ。ちなみに誰と? 何人で?」
サシャ「ライナーとですよ。二人だけです。……あれ? ミーナには前に言いませんでしたっけ?」
ミーナ「聞いてない聞いてない。そっかそっかぁ、お出かけかぁ……」
ミーナ(……つまり、「恋愛小説を参考にしたいほどの何か」をするってことだよね)
ミーナ「ほーう……ほほうほうほう」ニヤニヤ ニマニマ
アニ「フクロウかあんたは」ペチンッ
67 : ◆H4iwFNXQsw:2014/03/19(水) 22:29:45 ID:wUGBEG/A
こっそり投下 今日はここまで 早くデートしたいけどもう少し前フリが続きます
68 :以下、名無しが深夜にお送りします:2014/03/20(木) 13:34:06 ID:lH64bTH2
わくわく
69 :以下、名無しが深夜にお送りします:2014/03/20(木) 19:45:23 ID:gGxgoOew
続き待機しております!!!!
ーー しばらく後 男子寮 エレンたちの部屋
アルミン「ライナー遅いねー」
ベルトルト「ねー」
アルミン「僕はてっきりベルトルトと一緒だと思ってたんだけどな。……お風呂どうする? そろそろ先に行ったエレンが帰ってくるはずだけど」
ベルトルト「そうだね……ギリギリまでは待とうかな。どうせ明日は休みだし」
アルミン「休みといえば、明日ベルトルトは何かするの? 予定は入れてる?」
ベルトルト「いや、明日は打ち合わせもあるし大して時間取れないだろ? だから敢えて予定は入れないで、余った時間で勉強してようかなって思ってるけど……アルミンは?」
アルミン「今のところ予定はないけど……昨日の夜辺りからミカサがそわそわしてるんだよね」
ベルトルト「……? それが?」
アルミン「明日の……そうだな、朝に突然『エレンも連れて午後から三人でどこかに行こう』って言われるんじゃないかな、って思ってるんだけど」
ベルトルト「急なお誘いだね」
アルミン「ミカサはほら、恥ずかしがり屋さんだからさ。……そういうところが放っておけないんだけどね」
46 : ◆H4iwFNXQsw:2014/03/19(水) 21:58:19 ID:wUGBEG/A
ライナー「……ただいま」ガチャッ バタンッ
アルミン「ああライナー、遅かった…………ね……?」
ベルトルト「……ライナー、もしかして雪の中を走ってきたの? びしょ濡れだけど」
ライナー「いや……雪の上に寝っ転がるとどんな気分なのか試してみたくてな、遊んできただけだ」グッショリ
アルミン「……遊んできたんだ」
ベルトルト「……」
ライナー(くっそ、巨人の力じゃ風邪は治らねえんだぞ……! アニの奴、今度覚えてろよ……!)プルプルプルプル...
ライナー「すまんが、先に風呂入ってきていいか? ……寒くてな」サスサス
アルミン「どうぞどうぞ」
ベルトルト「僕たちには構わないで行ってきなよ。……あ、エレンに会ったら早く戻ってくるようにって言っておいてくれるかな?」
ライナー「ああ、伝えておく。……悪いな、じゃあ行ってくる」ガチャッ バタンッ
47 : ◆H4iwFNXQsw:2014/03/19(水) 21:59:36 ID:wUGBEG/A
ーー しばらく後 男子寮 エレンたちの部屋
エレン「いっちにぃっ、さーんしぃっ」グイグイ
アルミン「エレン、お風呂あがりなのにストレッチなんかして大丈夫なの? また汗かくんじゃない?」
エレン「なんだアルミン、知らねえのか? こういう柔軟体操は風呂あがりにやったほうが効果的なんだぜ? ……って本に書いてあったぞ」
アルミン「でも汗が出るほどやるのはよくないよ。しかも髪の毛もろくに乾かしてないだろ? そのまま寝たら布団が湿っちゃうよ? 布団が湿ったらカビが繁殖して、カビが繁殖したらエレンはそのカビと一緒に寝ることになって、カビと一緒に寝たら体に様々な影響がーー」
エレン「わかったわかった、ちゃんと乾かすって。……ベルトルトが風呂から戻ってきたらな」
アルミン「もう……そんな言い訳使うなら、ベルトルトを待ってあがってきたらよかったよ」ハァ
エレン「……なあアルミン。ところでライナーはしかめっ面して何してんだ?」ヒソヒソ
アルミン「さあ? 瞑想でもしてるんじゃない? 腕組みと胡座ってのが少し気になるけど」ヒソヒソ
ライナー「…………」
ライナー(………………………………寝ちまいたい…………)ズーン...
48 : ◆H4iwFNXQsw:2014/03/19(水) 22:00:49 ID:wUGBEG/A
ライナー(……アニを問い詰めるつもりが、逆に説教されちまったな)
ライナー(それにしても、あいつがあんなことを言ってくるとは……正直驚いた)
ライナー(昔は「他人なんかどうでもいい」って態度を隠しもしなかったのに、今日は他人の関係に自分から首突っ込んできやがった)
ライナー(しかも……前より、よく笑うようになった気がするな。アニのああいう顔を見たのは、一体いつ以来になるんだ?)
ライナー(ベルトルトだってそうだ。以前は定期報告の時でも少ししか話そうとしなかったのに、自分の意見を言うようにまでなった)
ライナー(アニも、ベルトルトも……ここの、この訓練所に来て色々変わったんだな)
アルミン「……ほら見てエレン。ライナーが菩薩のような顔をしているよ」ヒソヒソ
エレン「ボザド?」
アルミン「違うよ、ボザドじゃなくて菩薩。東洋の神様のことさ。厳密に言うと違うんだけどね」
エレン「ふーん……確かに、何かしら悟りきった顔はしてるな」
49 : ◆H4iwFNXQsw:2014/03/19(水) 22:01:54 ID:wUGBEG/A
ライナー(まあ……なんだ。アニの言うことに従うわけじゃないが……予行練習くらいはしておいてもいいか)
ライナー(本人がいないと想像しにくいな。……何かないか?)ゴソゴソ...
ライナー(似顔絵でも描いて枕に貼り付けるか? だがベルトルトはまだしも、エレンやアルミンに見られたらまずいよな……ん?)
ライナー「……」ビローン
ライナー(サシャからもらった髪ゴムか。……待てよ、ここをこうしてーー)ギュッ
ライナー(これでよし。あいつの髪型に見えなくもないよな……さて、何から切り出すか)
アルミン「枕を縦にして壁に立てかけたね。新しい睡眠法かな?」ヒソヒソ
エレン「じゃあ枕の端っこをゴムで縛るのも睡眠法か? ……ていうかさっきから何やってんだ、ライナーは」ヒソヒソ
アルミン「気になるなら聞いてきたらどうかな。きっとライナーなら正直に答えてくれると思うよ」
エレン「よっしゃ、聞いてこよう」
ライナー「………………」
ライナー(駄目だ、こうやって面と向かっても何も思い浮かばねえ……そもそも、諸々の事情をどう説明するかなんだよな……どうするか……)
エレン「よっ、ライナー!」ヒョコッ
ライナー「」ビクッ!!
エレン「さっきから百面相して何やってんだ? 新しい遊びか何かか?」
ライナー「……少し考えごとをしてるんだ。放っておいてくれ」
エレン「あっ、そうだったのか……悪いな。でもその前に一つだけいいか?」
ライナー「なんだ? さっきの柔軟体操の話か?」
エレン「違う違う。……それ、枕の端っこを縛って何してんだ?」
ライナー「……」ギクッ
エレン「アルミンは睡眠法の一つだって言ったけど、それだと壁に立てかけてあるから寝にくいよな。もしかして何か別のことやってんじゃねえの?」
ライナー「いや、これはだな…………サシャの……」モゴモゴ
エレン「? サシャのなんだって?」ズイッ
51 : ◆H4iwFNXQsw:2014/03/19(水) 22:03:40 ID:wUGBEG/A
ライナー「これは……これはその、あれだ、リラックスして寝るためのおまじないだ。サシャは全く関係ない」
エレン「そっか。でも寝てねえじゃん」
ライナー「……リラックスしていい夢を見るためのおまじないなんだ。ただし、寝る前にやらないと効果がない」
エレン「ふーん……変なおまじないもあったもんだな。ーー教えてくれてどうも。アルミンにも伝えておくよ」
ライナー「……待て。アルミンも見てたのか?」
エレン「並んで二人で見てたぞ」
ライナー「そうか……なあアルミン、少しいいか?」
アルミン「僕? 何か用かな、ライナー」ヒョコッ
ライナー「お前、手持ちの本は全部処分しちまったのか? もしそうじゃなかったら、今ものすごーく読みたい本があるから貸してほしいんだが」
52 : ◆H4iwFNXQsw:2014/03/19(水) 22:05:25 ID:wUGBEG/A
アルミン「何冊かは残ってるよ。何? 兵法の本? それともえっちぃお姉さんの本?」
ライナー「いや、恋愛小説だ」
アルミン「えっ」
エレン「……レンアイ?」
ライナー「少し参考にしたいんだ。ーーできれば純愛もので頼む」キリッ
アルミン「じゅんあい」
ライナー(恋愛小説なら、『何か特別な秘密を好きな相手に打ち明けるシーン』というものもあるかもしれんからな……我ながらいい考えだ)フッ
エレン(小説かぁ……ライナーはそういう本を読んで参考にしてたのか。効率的な筋トレの仕方でも載ってんのかな)
アルミン(ライナーって、実は特殊な趣味を持ってたんだろうか……? ーーううん、そういうことを見た目で決めつけちゃいけないよね。だめだめ)
アルミン「期待させて悪いけど、小説の類はこの前全部処分しちゃったんだ、ごめんね。……あ、でもミカサが何冊か残してた気がするな。明日でいいなら借りてこようか?」
ライナー「いや、そこまでしなくていい。……今日じゃなきゃ意味がないんでな」
アルミン(そんなに読みたかったの!? 今日じゃなきゃ意味がないって何!?)
エレン(『ライナーはレンアイ小説が好み』っと。俺も読んだほうがいいかな。ミカサも腹筋すげえし……腹筋にはレンアイが深く関わってるのかもしれねえ。明日借りてこよっと)メモメモ
53 : ◆H4iwFNXQsw:2014/03/19(水) 22:07:49 ID:wUGBEG/A
アルミン(あのライナーが、純愛系の恋愛小説貸してだなんて……いくらなんでも突拍子がなさすぎるよ。今まで興味がある素振りすらなかったのに)
アルミン(……もしかして)ハッ
アルミン「ねえライナー。……君、明日は何か予定があるの?」
ライナー「明日か? 明日は整備班の打ち合わせがあるだろ?」
アルミン「その後だよ、その後。ちなみにベルトルトは勉強するって言ってたけど、ライナーは? 一緒に勉強かな?」
ライナー「いや、街に出かける予定を入れてる」
アルミン「へえ……そっか。誰と? 何人で?」
ライナー「サシャと二人でだ。……なんでそんなことを聞くんだ?」
アルミン「ううん、別に? ところでさ……ライナー、もしかして今悩みごとを抱えてない? それも結構深刻な」
ライナー「! ……よくわかったな。態度に出てたか?」
アルミン「少しだけね。リラックスして寝たいとか、本を読みたいとか……何か迷ってる時ってさ、そういうのについ頼っちゃうよね」
54 : ◆H4iwFNXQsw:2014/03/19(水) 22:09:00 ID:wUGBEG/A
アルミン「そういう時はさ、もちろん逃げるのもいいんだけど……頭で考えてることを全部紙に書き出しちゃうっていう手もあるよ。悩みを目に見える形にすれば解決の糸口が掴めたりするし、何より書き出すことで頭の中がスッキリするからね」
ライナー「書き出す、か……なるほどな」
アルミン「まだ処分してないノートがあるから、紙が足りないなら何冊かあげるよ? いる?」
ライナー「いや、大丈夫だ。ーーありがとなアルミン、参考になった」
アルミン「どういたしまして。……ほらエレン、僕たちはもう寝よう? ライナーを考えごとに集中させてあげないと」
エレン「髪乾いてないけどいいか?」
アルミン「しっかり拭けばたぶん大丈夫だよ。ーーライナー、ランプは点けてていいからね。ベルトルトもまだ戻ってきてないし、僕らのことは気にしないで」
ライナー「何から何まで悪いな。……それじゃあおやすみ、エレン。アルミン」
アルミン「うん、おやすみライナー。……ほらエレン、髪拭いて」ゴシゴシ
エレン「自分でやるってそれくらい。ーーんじゃおやすみー」
55 : ◆H4iwFNXQsw:2014/03/19(水) 22:10:47 ID:wUGBEG/A
ーー しばらく後 消灯時間前 男子寮 エレンたちの部屋
ベルトルト「ただいまー……って、あれ?」ガチャッ バタンッ
ライナー「おうベルトルト、おかえり」カキカキ
ベルトルト「やあ、ライナー。……エレンとアルミンは? 寝ちゃった?」ヒソヒソ
ライナー「ああ、お前が帰ってくるちょっと前にな。……しかし随分と長風呂だったな。のぼせてないか?」
ベルトルト「いや、お風呂自体には長く浸かってないんだ。ちょっとモタモタしてたら掃除の時間になっちゃってさ、マルコが当番だったから手伝ってただけで……ところで何してるの? 勉強?」
ライナー「違う。頭の中を整理してるんだ。お前もやるか? 結構スッキリするぞこれ」
ベルトルト「ううん、やらない。頭の中を整理するのはいいけど、まずその周囲に散らかってる紙を整理しなよ……何なの? この紙の山」ガサガサ
ライナー「アルミンがな、考えごとを整理するときには紙に書きだすのが一番だと教えてくれたんだ。それで色々書き散らしてた」
ベルトルト「へえ、アルミンが…………あのさライナー、君酔ってないよね? お酒飲んだ?」
ライナー「はぁ? 飲んでねえよ、なんだ突然」
ベルトルト「ちょっと確認したかっただけ。ーーじゃあ、この辺りの紙に書いてあるのは君が全部素面で書いたものなんだね?」
ライナー「おう、そうだぞ」
56 : ◆H4iwFNXQsw:2014/03/19(水) 22:12:55 ID:wUGBEG/A
ベルトルト「サシャに好きって伝えるの?」
ライナー「……なんでわかった」
ベルトルト「うーん……このポエムみたいな文句を読んだから、かな。なんでこんなの書いてるんだ君は」ピラッ
ライナー「先に言っとくが、必ずやるって決めたわけじゃないからな? 検討してるだけだ」
ベルトルト「検討するだけでこんなに散らかる? しかもこんな枚数になる?」
ライナー「散らかるって……一応これでも片付けたんだがな。それにほら、こっちに残りがあるぞ。そこに散らかってる分だけじゃない」ドサッ
ベルトルト「わあ、すごいね。座学の宿題か何かかな?」
ライナー「……俺の人生の宿題だ」
ベルトルト「誰がうまいこと言えって言ったんだよ。あーあ、こんなにたくさん書いちゃって……文集でも作る気? 九割ほど人に見せられない内容だけど」ペラペラ
ライナー「そうか? そんな恥ずかしいことは書いてないはずなんだが……」
57 : ◆H4iwFNXQsw:2014/03/19(水) 22:14:09 ID:wUGBEG/A
ベルトルト「そうだね、残り一割はそういう感じだね。……ねえ、こっちの紙は途中からサシャに買ってあげるおやつリストになってるんだけど、これはどういう意図があるの?」
ライナー「やはり肉のほうがいいと思うか?」
ベルトルト「知らないよ。……なんていうか、君の愛重たいね。物理的に」ズシィッ...
ライナー「よせよ、照れるだろ?」ハハハ
ベルトルト「……それで、なんでこの数分間でこんな凄まじい黒歴史作っちゃったの? 若気の至り?」
ライナー「いや、最初はアルミンに恋愛小説を借りようと思ったんだけどな?」
ベルトルト「だからなんで?」
ライナー「『何か特別な秘密を好きな相手に打ち明けるシーン』があったら参考にしようと思ったんだ。……持ってないから借りられなかったんだけどな」
ベルトルト「真面目か」
ライナー「真面目で何が悪い。下調べは大事だろ?」
ベルトルト「……」
ベルトルト(告白だけでこの状態ってことは……もしラブレターを書くってことになったら、アルミンやマルコに推敲頼みそうだな。……よかった、そこまでの事態にならなくて)ホッ
58 : ◆H4iwFNXQsw:2014/03/19(水) 22:16:05 ID:wUGBEG/A
ベルトルト「とにかく、この産業廃棄物は明日全部燃やすからね。ライナーもちゃんと手伝ってよ? あと今日はもうさっさと寝てくれ頼むから」
ライナー「は? 別に燃やす必要ねえだろ? ただ頭の中身を書き出した紙なんだからよ。他の奴らに見られようが、特に困ったことにはーー」
ベルトルト「それじゃあここに書いてる文字読んでみて? 小声でね」
ライナー「……? なんで小声なんだ?」
ベルトルト「いいから早く」
ライナー「わかったわかった、ええっとな……『俺の正体は鎧の巨人です。壁の外からやってきました』」ボソボソ
ベルトルト「……」
ライナー「……」
ベルトルト「……」
ライナー「…………あっ」
ベルトルト「『あっ』じゃないだろ? 馬鹿なの? 君は馬鹿なのか? ーーわかったらさっさと寝なよ。明日は朝一番に焼却炉に走るからね」
ライナー「そんな……! 下調べも練習もしねえで本番に挑めってのか!?」オロオロ
ベルトルト「いいから寝ろ」ゴンッ
59 : ◆H4iwFNXQsw:2014/03/19(水) 22:17:34 ID:wUGBEG/A
ーー 翌日 朝 訓練所の食堂
アルミン「ライナーとベルトルトいなかったね。今日当番だったっけ?」スタスタ...
エレン「特に聞いてねえけどなー……おっ、いたいた。ーーミカサ、おはよう」スタスタ...
ミカサ「! おはよう。エレン、アルミン。席は取っておいた」
アルミン「おはようミカサ。ありがとね」
ミカサ「どういたしまして。……エレン、髪の毛がはねてる。昨日はちゃんとお風呂あがりに乾かしたの? 湿ったまま放置すると傷んでしまうから気をつけて」
エレン「あー乾かした乾かした、もうすっげえ乾かした。カサカサになっちまったくらいだぜ」
ミカサ「カサカサではだめ。それは髪の毛が傷んでる証拠。……朝ごはんを食べたら井戸に行ってトリートメントしよう。私も手伝う」
エレン「アルミン! ーー俺の今日の髪の毛の状態はどうだ?」
アルミン「すごくいいよ。ここ近年になかったほどサラサラしてる」
ミカサ「そうなの? ……まあ、アルミンが言うのなら本当なのだろう。信じる」
エレン『アルミン感謝。すごく感謝。たくさん感謝』シュッシュッ
アルミン『手信号がぎこちないよエレン、もうちょっと練習しようね』クルクル ブンブン
ミカサ「……」ソワソワ モジモジ
60 : ◆H4iwFNXQsw:2014/03/19(水) 22:18:34 ID:wUGBEG/A
ミカサ「あの……あの、二人とも、今日の予定は何かある? どこか出かけたりする?」
エレン「今日か? 今日は……整備班の打ち合わせだけだな。当番も今はねえし」
ミカサ「それしかない? 本当に?」
アルミン「うん。僕もエレンもものすごーく暇だよ、ミカサ」
ミカサ「そう、そうなの……」
エレン「今日はにんじんのスープか……おおっ! アルミン見てみろよ、俺のスープにゴロッとでかいにんじんが入ってるぞ! 今日は当たりだ! やったぜ!」ワーイ
アルミン「うん……うん、そうだね……」チラチラ
ミカサ「……」モジモジ
アルミン「……」
ミカサ「あのねエレン、アルミン。ーーこの前、街に……サシャたちと一緒に出かけた時に、その……お店のチラシをもらったのだけれど……」モジモジ ゴソゴソ...
エレン「ああーっ!!」ガタンッ
ミカサ「ひぇっ! ……え、エレン、食事中に立つのはよろしくない。ちゃんと座って」クイクイ
エレン「今思い出した! なあミカサ、お前に頼みがあるんだけどいいか?」ズイッ
ミカサ「私に……何? なんでも聞く。遠慮せず言ってほしい」
61 : ◆H4iwFNXQsw:2014/03/19(水) 22:19:31 ID:wUGBEG/A
エレン「お前が持ってるっていうレンアイ小説貸してくれねえか?」
ミカサ「……」ピクッ
アルミン「……」
エレン「なあ頼むよ、俺には(腹筋を手に入れるためにも)どうしてもレンアイ小説が必要なんだ!」
ミカサ「待って……待ってエレン、私が恋愛小説を持ってるって誰から聞いたの?」
エレン「決まってるだろ? アルミンだよ」
ミカサ「……アルミン?」ジロリ
アルミン「……」プイッ
エレン「いいだろ? お前(腹筋を鍛えるのが)趣味だって前にも言ってたじゃねえか。(腹筋を鍛えるのが)好きなんだろ?」
ミカサ「……」
ミカサ(前にも……? そんな話、エレンにした覚えはないのに……)
ミカサ(どうしよう……確かに恋愛小説は持っているけれど、エレンに読ませるのはちょっと……何より、私の好みを知られるのは恥ずかしい……///)
ミカサ(……心苦しいけれど、ここは誤魔化しておこう)
ミカサ「……違う、エレン。私はそんなの持ってないし、そもそも読んだことがない。そんなの知らない」
62 : ◆H4iwFNXQsw:2014/03/19(水) 22:20:40 ID:wUGBEG/A
エレン「はぁ? ……なんだよお前、レンアイ小説くらい貸してくれたっていいだろ? それとも今読んでるから貸せねえのか?」
ミカサ「だから、私は恋愛小説なんて知らなーー」
エレン「お前の趣味は!! レンアイ小説(を使って腹筋を鍛えること)だろうが!!」
ミカサ「!! え、エレン……やめて、大きい声で言わないで……! みんなに聞こえてしまう……!///」
エレン「何を恥ずかしがることがあるんだ!! (腹筋を鍛えることは)立派な趣味だろ!? お前の(腹筋への)情熱はそんなもんだったのかよ!?」
ミカサ「う、ううっ……///」モジモジ
ミカサ(どうしてエレンはこんなにしつこいの……? アルミンはエレンに一体何を吹き込んだのだろう……?)チラッ
アルミン(あちゃー、エレンってばこう来たかぁ……ちゃんと周りを見なよエレン、ミカサが真っ赤っ赤だよ? 君のせいで君の幼馴染がみんなの好奇の目に晒されてるよ? 「あのミカサが恋愛小説……だと……?」みたいな雰囲気になってるよ?)
ジャン(あのミカサが恋愛小説……だと……?)チラチラ
マルコ(へー、ミカサがね……)
ミーナ(そういえば部屋にあったなー……趣味だったんだ、あれ)
サシャ(今日の夕ごはんなんでしょうかねー)パクパク
63 : ◆H4iwFNXQsw:2014/03/19(水) 22:22:46 ID:wUGBEG/A
アルミン(まさかエレンがここまで暴走するなんて……ごめんよミカサ)
アルミン(今の僕にできるのは、この被害をこれ以上広げないことだ。ーーなんとか話は収めてみせる!)キリッ
アルミン「エレン、食堂で大声出しちゃだめだよ? 迷惑になるから静かにしよう?」ニッコリ
エレン「あっ……すまねえなアルミン、時と場所を考えずに叫んじまった」
アルミン「いいよいいよ、気にしないで。……ねっ、ミカサもごはん食べようよ。せっかくのスープが冷めちゃうし」
ミカサ「……わかった。食べる」
エレン「でもさぁ」
アルミン「エレン?」
エレン「食うよ、食うって。……だから睨むなよ、アルミン」シュン
アルミン(よーし、これで危機は脱したな。あとは穏便に朝ごはんを食べちゃえばーー)
ミカサ「……ところでエレン、どうして突然恋愛小説なんか読みたくなったの? いつもは普通の本でも避けて歩くのに」
エレン「ん? ……ああ、そりゃ昨日ライナーが読みたいって言ってたからだな!」
アルミン(わーお)
64 : ◆H4iwFNXQsw:2014/03/19(水) 22:24:24 ID:wUGBEG/A
ジャン(あのライナーが恋愛小説……だと……?)
マルコ(ミカサはまだしもなんでライナーが?)
アニ(あいつ、遂にトチ狂ってそんなものにまで手を……)
コニー(今日も雪かき当番かー……ちぇっ、面倒くせえなぁ)
アルミン(ああもうどうして君は次から次へと問題を持ち込むかな!! なんでかな!? そんなに僕の頭を使わせたいの!? 頭が良くなるわけだよ全く!)
ミカサ「……ライナーが?」
エレン「ああ! ……そうだミカサ、お前髪ゴム持ってたりしねえか? ライナーが昨日教えてくれたんだけどよ、リラックスして眠れるおまじないってのがーー」
アルミン「あー! あーっ! ああーっ!!」
エレン「わっ!? ……なんだよアルミン、うるせえぞ」
アルミン「朝一番の発声練習って大事だよねぇー!! ミカサもそう思わない!?」
ミカサ「え? ……ええと、うん、思う」コクコク
エレン「でもこんなところで発声練習って迷惑になるだろ? 静かにしろよ」
アルミン「そうだねぇー! じゃあちょっと食堂の外に出ようかー!? ねっ、そうしようそうしよう!」ガタンッ グイッ
エレン「おわっ!? 待てよアルミン、俺の当たりのにんじんがー!」ズルズル...
アルミン(全く冗談じゃないよ! これ以上被害を拡散させてたまるか! ーーこうなったら物理的に排除させてもらうよエレン! 悪いと思わないでね!)グイグイ
ミカサ「アルミン待って、せめてパンだけでも持って行って!」タタタッ
ミーナ「……何だったの?」
アニ「さあね。知らない」
アニ(まあ、大体想像はつくけど……あいつ、本を参考にするつもりだったんだね。自分で考えなよそれくらい)ハァ
ミーナ(あのライナーが恋愛小説読みたがるなんて、ちょっと考えづらいなぁ……しかもただの小説じゃなくて「恋愛」小説なんだよね? ということはーー)チラッ
66 : ◆H4iwFNXQsw:2014/03/19(水) 22:28:20 ID:wUGBEG/A
コニー「やった! これでにんじん三個目だ!」ゴロンッ
サシャ「あーっ! いいなぁ、コニーばっかりずるいです……私のスープには何も入ってないのにぃ……」ションボリ
ミーナ「……ねえサシャ。今日の午後さ、暇だったらどこかに出かけない? 卒業試験前に行きたいところがあるんだよね」
サシャ「あっ……えっと、すみません。今日は予定が入ってるので無理です。他の人と出かける約束しちゃったので」
ミーナ「予定か……予定ねぇ。ちなみに誰と? 何人で?」
サシャ「ライナーとですよ。二人だけです。……あれ? ミーナには前に言いませんでしたっけ?」
ミーナ「聞いてない聞いてない。そっかそっかぁ、お出かけかぁ……」
ミーナ(……つまり、「恋愛小説を参考にしたいほどの何か」をするってことだよね)
ミーナ「ほーう……ほほうほうほう」ニヤニヤ ニマニマ
アニ「フクロウかあんたは」ペチンッ
67 : ◆H4iwFNXQsw:2014/03/19(水) 22:29:45 ID:wUGBEG/A
こっそり投下 今日はここまで 早くデートしたいけどもう少し前フリが続きます
68 :以下、名無しが深夜にお送りします:2014/03/20(木) 13:34:06 ID:lH64bTH2
わくわく
69 :以下、名無しが深夜にお送りします:2014/03/20(木) 19:45:23 ID:gGxgoOew
続き待機しております!!!!
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