サシャ「中味が大事なんですよ」
Part2
23 : ◆H4iwFNXQsw:2013/12/13(金) 19:22:51 ID:2E33IU4o
エレン「……なあ。アルミンは、ライナーとサシャのこと応援してんのか?」
アルミン「うーん……どっちかっていうと、あの二人っていうよりはサシャの応援かな」
エレン「サシャの? なんでだ?」
アルミン「サシャってさ、前と比べたら随分変わったと思わない?」
エレン「そんな気はしねえけど……背でも伸びたのか?」
アルミン「違うよ。外見じゃなくて中身の話。ーーミカサから聞いたんだけどね、サシャって女子寮に帰っても勉強してるらしいよ」
エレン「は? なんで寮で勉強してんだ? ってかどこでやるんだよ勉強なんか」
アルミン「……エレン、この部屋にある机は物置場じゃなくてね、本来は自習するところなんだよ? 知ってた?」
エレン「知らなかった……!」ガーン...
アルミン「……僕、何回か言ったんだけどなぁ」ハァ
24 : ◆H4iwFNXQsw:2013/12/13(金) 19:23:32 ID:2E33IU4o
アルミン「まあ、それだけじゃなくて他にも色々あるよ。僕のところに技巧や座学について聞きに来たのなんか一度や二度じゃないし、しょっちゅうライナーに勉強教えてもらってるし」
エレン「……そういえば、前にアニと対人格闘の特訓してたの見たことあるな」
アルミン「でしょ? ーーあんなに頑張ってるサシャを見てるとね、僕もやればできるんじゃないかって気がしてくるんだよね。だから、つい応援したくなっちゃうんだ」
エレン「……そんなもんか」
アルミン「そんなもんだよ。深い理由はないんだ。ーーねえ、エレンはどう思ってる? あの二人のこと」
エレン「俺か? ……うーん、よくわかんねえや」ポリポリ
アルミン「? わからないって?」
エレン「あの二人、春頃から妙に仲はいいなって思ってたけど……この前、き、き、ききき……」
アルミン「キス」
エレン「……をするところを見るまでは、普通の仲間同士だと思ってたんだよ。あいつらがくっつくことなんか考えたこともなかった」
25 : ◆H4iwFNXQsw:2013/12/13(金) 19:24:14 ID:2E33IU4o
エレン「ライナーは……すげえ奴だと思うよ。聞けば大抵は答えが返ってくるし、何より強ぇしな。できるならあいつみたいな男になりたいって考えたことも、一度や二度じゃない」
アルミン「サシャはどう?」
エレン「あそこまで食い意地張った奴にはなりたくねえな」キッパリ
アルミン「あはは、はっきり言うね」
エレン「なりたくないが……アニに特訓つけてもらってるサシャを見て、俺も頑張らないとなって思ったのは確かだ」
アルミン「じゃあ、ライナーだけじゃなくてサシャもエレンにいい影響を与えてくれたってことになるね」
エレン「あー……そういうことになるのか? よくわかんねえけど」
アルミン「うん、そういうことだよ。……仲間に恵まれてよかったよね、僕たち」
エレン「そうだな。……ここに来て、よかったよな」
エレン「……なんかウズウズしてきた。俺走ってくるわ」スクッ
アルミン「ダメだよ。エレンは熱中しちゃって帰る時間忘れるじゃないか。おとなしくここにいて」ガシッ
エレン「ちぇっ、つまんねえのー。……ところで、ベルトルトはいったいどこに行ったんだ? メシ食った後から姿が見えねえが」
26 : ◆H4iwFNXQsw:2013/12/13(金) 19:24:59 ID:2E33IU4o
ーー 営庭隅 とある林の中
アニ「ふぅん……あいつ、まだ悩んでるんだ」
ベルトルト「アニはどう思う?」
アニ「はっきりしないのは傍から見ててイライラするけどね。ーーでもまあ、あいつの好きにさせておけば? まだ時間はあるんだし」
ベルトルト「……もう、一ヶ月と少ししかないよ」
アニ「……そうだね。もう少しで、この兵士ごっこともお別れか」
ベルトルト「……」
アニ「ところで、その話題の本人は? 姿が見えないけど」キョロキョロ
ベルトルト「夕食の後すぐに、寮でエレンに捕まっちゃったんだ。山岳訓練について聞きたいことがあるんだって。僕はなんとか見つかる前に逃げ出してきたんだけど」
アニ「そんなことしていいの? 急にいなくなったら逆に怪しまれるんじゃない?」
ベルトルト「だって僕が来なかったら、アニはここで一人待ちぼうけじゃないか。こんなに寒いのに」
アニ「寒さで音をあげるような柔な鍛え方してないよ。馬鹿にしないで」ムッ
ベルトルト「でもアニは女の子じゃないか。無闇に体を冷やすのはよくないと思うよ」
27 : ◆H4iwFNXQsw:2013/12/13(金) 19:25:36 ID:2E33IU4o
アニ「……女の子?」
ベルトルト「? だってそうでしょ?」
アニ「……………………そうだけど、さ」
ベルトルト「こんなに寒いんだから、せめて手袋とマフラーだけでもつけてくればよかったのに。本当に寒くない? 僕の手袋貸そうか?」
アニ「寒くないよ。……それに手袋やマフラーつけてきたら、外に出かけてるってことバレちゃうでしょ。あんたも馬鹿正直に手袋つけてこないで、少しは考えなよ」
ベルトルト「それはそうかもしれないけど……どっちにしろ、僕らが外にいたのはバレちゃうと思うよ? 今のアニ、顔が真っ赤っかで火照ってるし。それって寒くてそうなってるんでしょ?」
28 : ◆H4iwFNXQsw:2013/12/13(金) 19:26:48 ID:2E33IU4o
アニ「……」
ベルトルト「? ねえ、本当に大丈夫? 僕のマフラー貸そうか?」
アニ「……も、もう帰るっ」クルッ ザクザク...
ベルトルト「えっ? ちょっ、ちょっと待ってよアニ! 僕何か変なことーー」
ーー ガサガサガサッ
アニ「!」
ベルトルト「! ーー誰?」サッ
29 : ◆H4iwFNXQsw:2013/12/13(金) 19:27:41 ID:2E33IU4o
ミカサ「こんばんは、ベルトルト。……と、後ろに隠れているアニ」ヒョコッ
アニ「隠れてるわけじゃないよ。……ベルトルト、邪魔。どいて」
ベルトルト「あっ……ご、ごめん」シュン
アニ「ミカサ、あんたこんなところに何しに来たの? エレンはここにいないよ?」
ミカサ「この森に何かいるような気配がした。……ので、来た」
アニ「野良犬かあんたは」
ミカサ「あなたたちこそ、こんなところで何してるの? 夜道は危険。暗殺し放題」ニンニン
ベルトルト「え? あっ、いや、僕たちはーー」アセアセ
アニ「山岳訓練の打ち合わせだよ」
ミカサ「そうなの? ……でも、一人足りないみたい」キョロキョロ
アニ「クリスタだね。あの子は体力が不安だから、どうフォローするか二人で考えてたんだ」
アニ「そういうのって、クリスタを前にする話じゃないだろ? 食堂や談話室でおおっぴらに相談できるものでもない。それくらいあんたにもわかるでしょ?」
ミカサ「それもそうかも。……邪魔してごめんなさい。私は帰るから、話し合いを続けて欲しい。それでは失礼する」ザクザク...
アニ「はいはい、また後でね」
30 : ◆H4iwFNXQsw:2013/12/13(金) 19:28:41 ID:2E33IU4o
ベルトルト「危なかったね……うまく誤魔化せてよかった」ホッ
アニ「誤魔化したのは私だけどね。……あとあんた、顔に出すぎ」
ベルトルト「えっ!? ……ごめん、今度からは気をつける」シュン
アニ「そもそもなんで私を隠そうとしたの? 足跡が残ってるんだから、ここに私たち二人がいるのはどうせバレるのに」
ベルトルト「それはそうなんだけど……ミカサはダメでも、他の人だったら騙せたかもしれないし」
アニ「まあ、コニー辺りなら騙せたかもね」
ベルトルト「それに……僕だって男なんだから、何かあったら前に立つよ」
アニ「……」
ベルトルト「……ライナーよりは、頼りなく見えるかもしれないけど」
アニ「……そんなことないよ」
ベルトルト「ははは、そう言ってもらえると嬉しいな」
アニ「……じゃあ、私帰るから。また定期報告の日に」ザクザク
ベルトルト「あっ……うん、おやすみ。いい夢見られるといいね」
31 : ◆H4iwFNXQsw:2013/12/13(金) 19:29:34 ID:2E33IU4o
ーー 女子寮裏手
アニ「……」ザクザク...
アニ「……」ピタッ
アニ「……」
アニ(……何、あれ)
アニ(いきなり女扱いして……変なの)
アニ「……」
アニ(……二人きりだと、ああいうことも言うんだ)
アニ(ベルトルトのくせに……)
アニ「……」
アニ(……明日の対人格闘で、ライナー投げてやる)ザクザクザクザク
32 : ◆H4iwFNXQsw:2013/12/13(金) 19:30:26 ID:2E33IU4o
ーー 男子寮 裏口
ライナー(雪下ろしって言ってたな……そろそろ終わってる頃だろうし、屋根下までまずは行ってみるか)チャプチャプ
ライナー(……よし、見回りはいないな。さっさと出よう)コソコソ
コニー「あれ? おーいライナー! こんな時間に出かけるのかー? ーーむぐっ!?」
ライナー「大声出すんじゃねえよ、裏口から出る意味ないだろうが……! 何かあるなら黙って喋れ……!」ヒソヒソ
コニー「」コクコク
ライナー「よし、離すぞ。ーーいきなり掴みかかって悪かったな、コニー」
コニー「……」ブンブン
ライナー「……小さい声でなら喋ってもいいぞ」
コニー「こんな時間にどっか行くのか? もうじき消灯だぞ?」ヒソヒソ
ライナー「ああ。ミカサたちに差し入れを届けに行くんだ」チャポン
コニー「そのヤカンが差し入れなのか? 変なの」
ライナー「正確にはヤカンの中身だけどな。……もういいか? 早く行かないと冷めちまう」
33 : ◆H4iwFNXQsw:2013/12/13(金) 19:31:17 ID:2E33IU4o
コニー「もしかして、その面子の中にサシャはいるか? いるならさ、ついでにこれやっといてくれよ」ポン
ライナー「これは……みかんか。まだ残ってたのか?」
コニー「ああ、それで正真正銘最後だよ。残りは俺が全部食う」ムシャムシャ
ライナー「歩きながら食べるなよ。廊下が汚れる」
コニー「むぉんむぁむぉむぉむぁむむぁむぁ」モグモグ
ライナー「食いながら喋るな。……もう俺は行くぞ。じゃあな」コソコソ
コニー「むぉう、行ってらっしゃーーっと、そうだ。そういやミーナもサシャのこと探してたんだよな。見かけたら声かけてやってくれよ」
ライナー「ミーナもか? ……わかった、そうする」
34 : ◆H4iwFNXQsw:2013/12/13(金) 19:32:03 ID:2E33IU4o
ーー 屋外 とある倉庫前
ライナー(ミーナミーナっと……おっ、いたな)
ライナー(だがあの格好はなんだ? かなり薄着じゃないか)スタスタ...
ライナー「おいミーナ、上着くらい着て外歩け」
ミーナ「あっ、ライナー……こんばんは、いい夜だね」
ライナー「おう、こんばんは。ーーじゃなくてだな、そんな薄着でどうしたんだ? 上着はどうした」
ミーナ「ああ、これね。すぐ部屋に戻る予定だったんだけど、サシャになかなか会えなくてさ」サスサス
ライナー「俺のでよければ上着を貸そうか? そのままじゃ冷えるだろ?」
ミーナ「ううん、もう戻るからいいよ。それに、ライナーから上着なんか借りたらサシャに怒られちゃうもの」
ライナー「いや、これくらいで怒ったりは………………………………するかもな、サシャは」
ミーナ「でしょ? ーーっていうか聞いてよ! サシャったら今日一日中追いかけたのにちっとも捕まらないんだよ? おかしくない?」ムー...
ライナー「あいつの動きは俺でもよくわからん時があるからな……まあ、今日は運が悪かったとでも思っとけ。怒るだけ損だぞ」
ミーナ「うーん……そうだね、そう思うことにする。ーーじゃあ、これよろしくね。サシャに渡しておいて」スッ
35 : ◆H4iwFNXQsw:2013/12/13(金) 19:33:03 ID:2E33IU4o
ライナー「……何故俺に渡す」
ミーナ「え? だってサシャのところに行くんでしょ?」
ライナー「…………まあ、行くけどよ。ていうか、あいつ女子寮の雪下ろし当番だろ? 今から俺も行くから、一緒に行けば手っ取り早いんじゃないか?」
ミーナ「はい、それではここで問題です。ーーこれなーんだ?」チャリンッ
ライナー「ここの倉庫の鍵だな」
ミーナ「正解! ーーさて、ではどうして私はこれを持ってるんでしょうか?」
ライナー「……? 何か関係があるのか?」
ミーナ「はい時間切れ! 正解は『サシャを探して外をうろちょろしてたら、教官に倉庫の片付けを押しつけられたから』でしたー!」
ライナー「……運がなかったな」ポン
ミーナ「まあ、もう終わったからいいんだけどさ……こういう時に限ってミカサもアニもいないしぃ……」ブツブツ
ライナー(あっ……そういや忘れてたが、アニからの定期報告終わったんだろうか)ハッ
ミーナ「ーーというわけで、私はこれから教官室にこの鍵を返しに行かなきゃいけないんだよね。帰る頃には消灯時間だろうから無理なの。渡せないの。……ねえちょっと、ライナー聞いてる?」
ライナー「え? ……あ、ああ、聞いてるぞ」
ライナー(後でアニに謝って、ベルトルトから話を聞かないとな)
36 : ◆H4iwFNXQsw:2013/12/13(金) 19:34:00 ID:2E33IU4o
ライナー「お前の事情はわかった。ーーだが、何も今日渡すことにこだわらなくたっていいだろ。明日以降に仕切り直したらどうだ?」
ミーナ「そうしたいのは山々なんだけど、明日から私当番続きなんだよね。暇な時間取れるのって今日だけだったんだ。ーーだから、明日以降ってのは無理」
ライナー「なら、寮の部屋に置いてくればいいじゃないか」
ミーナ「この瓶の中身お菓子だから、物だけ置いといたらすぐに食べられちゃうよ。それに私からだって伝わらないと意味ないし」
ライナー「置き手紙でも書いておけよ」
ミーナ「読むと思う?」
ライナー「……同室のユミルかクリスタに伝言頼めばいいだろ」
ミーナ「ユミルに頼んだら物を要求されそう。クリスタに何か頼む時はユミルを通さないと後で怒られるから無理」
ライナー「…………朝晩狙えば会えるんじゃないか? 同じ寮だろ?」
ミーナ「それも無理。最近サシャって消灯近くじゃないと部屋に戻ってないんだもん。朝は一番に食堂向かってるから全然会えないし」
ライナー「なんでそんな八方塞がりな状況になってんだ……? たかがお礼を渡すだけなのに……」ウーン...
ミーナ「女の子は色々あって大変なんだよ、ライナー」
37 : ◆H4iwFNXQsw:2013/12/13(金) 19:35:11 ID:2E33IU4o
ライナー「それなら仕方がないな。俺からでいいなら渡しておこう」
ミーナ「やったぁ、お願いね! ーーあっ、この前当番代わってもらったお礼って言えばわかると思うから、ちゃんと伝えといてね?」
ライナー「わかったわかった、伝えておく。ーーところで、この瓶の中身はなんだ? 砂か?」ザラザラ
ミーナ「違う違う。金平糖っていう砂糖のお菓子だよ。知らないの?」
ライナー「ああ、はじめて見たな。……第一、こんなに小さくて腹の足しになるのか?」ザラザラ
ミーナ「あはは、お腹の足しにはならないかな。こういうのって見た目や味を楽しむ物だからさ」
ライナー「……サシャはこういうもんが好きなのか?」
ミーナ「うーん、どうかな……もちろん、お肉が一番好きなんだろうけどね。だけどサシャだって女の子だもん、こういうのもよく食べてるよ?」
ライナー(……そういやあいつも女だったな。たまに忘れそうになるが)
38 : ◆H4iwFNXQsw:2013/12/13(金) 19:36:00 ID:2E33IU4o
ミーナ「でもよかったぁ、ライナーに預けておけば安心だよね」
ライナー「……? なんで俺に預ければ安心ってことになるんだ?」
ミーナ「え? だってライナーが呼べばサシャが出てくるんじゃないの?」
ライナー「エレンに呼ばれたミカサじゃあるまいし、サシャにはそんな芸当できんだろ」
ミーナ「ふーん……そうなんだ。サシャならできそうなのになぁ……っくしゅんっ」プルッ
ライナー「おい、大丈夫か?」
ミーナ「あはは、平気平気。……というわけで、後はよろしくね? 私は教官室に鍵返してから部屋に帰るよ。じゃあおやすみー」フリフリ
39 : ◆H4iwFNXQsw:2013/12/13(金) 19:37:01 ID:2E33IU4o
ーー 女子寮 屋外
クリスタ「……ミカサ、遅いね」
ユミル「班長のあいつが戻って来ねえと報告にも行けねえってのに、のんびりしてるなー……っと、向こう側から誰か歩いてきたぞ? ミカサか?」ジーッ...
クリスタ「ううん、ミカサにしては背が大きいし、がっしりしてるみたいだけど……って、あれライナーじゃない?」
ユミル「……ついに夜這いに来たか」ボソッ
クリスタ「夜這い?」キョトン
ライナー(預かった物が、見事に食うもんばっかりだな。まあ、サシャらしいか)
ライナー(女子寮の雪下ろしってことはこの辺か? ……ん? あそこにユミルとクリスタがいるな……二人だけか?)ウロウロ
40 : ◆H4iwFNXQsw:2013/12/13(金) 19:38:03 ID:2E33IU4o
クリスタ「ライナー、こんばんは!」
ライナー「ああ、こんばんはクリスタ、ユミル」
ユミル「お前、こんなところで何してんだよ。ここは女子寮だぞ? 夜這いでもしに来たか?」
ライナー「人聞きの悪いことを言うな。アルミンからの差し入れを持ってきたんだ」チャプン
ユミル「ほー……流石アルミン、気が利くな」
ライナー「……ところで、ミカサとサシャはいないのか?」チラチラ
クリスタ「ミカサは林のほうに散歩しに行っちゃったの。サシャは屋根の上にいるよ」
ユミル「お前が呼べば飛んでくるかもな」
ライナー「呼べば……」
ライナー(ミーナが言ったことを信じてるわけじゃないが……試してみるくらいならいいか)
41 : ◆H4iwFNXQsw:2013/12/13(金) 19:39:05 ID:2E33IU4o
ライナー「……よし。ーーおーいサシャ、食い物だぞー」ブンブン
クリスタ「……」
ユミル「……」
ライナー「……」
クリスタ「……来ないね」
ユミル「来ないな」
ユミル(ってか本当にやったよこいつ)チラッ
ライナー「……」シュン
クリスタ「え、えっと……ライナー、元気出して? きっと距離がありすぎて聞こえなかっただけだよ。ねっ?」オロオロ
ライナー「いや、別に……気にしてねえけど…………いや、ちょっと待てよ?」ハッ
ユミル「なんだよバナナでも落ちてたか?」
ライナー「もしかしてあいつ、上で腹減ってぶっ倒れてるんじゃないだろうな……!?」
ユミル「あーはいはい、そんなに心配なら行ってこい。梯子はあっちな」
42 : ◆H4iwFNXQsw:2013/12/13(金) 19:40:05 ID:2E33IU4o
ーー 女子寮 屋根の上
サシャ「……」ポケーッ...
ライナー「……」ヒョコッ
ライナー(あいつ、屋根の上で座って何やってんだ……? 考え事でもしてるのか?)ジーッ...
ライナー(……ちょっと見てるか)コソコソ
サシャ(そういえば、来週の山岳訓練って雪山でやるんですよね)
サシャ(……ということは、うさぎ獲れませんかね? もしかしたら、うまくいけば食堂に行く前にお肉食べられるんじゃないですか!?)ハッ
サシャ(でも、罠を仕掛けたりしてる余裕はないでしょうねー……今の時期って、雪のおかげで足跡が残って狩りがしやすいんですけど)
サシャ(ああ、うさぎ食べたいです……)
43 : ◆H4iwFNXQsw:2013/12/13(金) 19:41:16 ID:2E33IU4o
サシャ「……」
サシャ「……ふーんふふふーんふーんふーんふふふーん♪」ユラユラ
サシャ「うっさぎーうっさぎーうっさぎっさんー♪」
サシャ「うーさーぎーおーいしーぃゆーきーやーまー♪」
ライナー「…………………………」
ライナー(……今出て行ったらどうなるんだこれ)
ライナー(戻るか……? いや、梯子が軋む音でバレる可能性のほうが高い)
ライナー(……もう少し様子を見よう)コソコソ
44 : ◆H4iwFNXQsw:2013/12/13(金) 19:42:12 ID:2E33IU4o
サシャ(って、そうじゃなかった! ちゃんとライナーの隠し事について考えないと!)ブンブン
サシャ(でも、小難しいこと考えてたらお腹が空きました……今日の晩ご飯も、いつもより量が少なかったですし)グーキュルルルル...
サシャ(だいたい訓練兵団もケチですよね……いくら食糧難だからって言っても、あれじゃ何の足しにもなりませんよ)
サシャ(戦争なんておいしいもの食べてるほうが勝つに決まってるんですから、もったいぶらないでどかんと一発、うまい肉くらい出せばいいんですよ。燻製肉なら保存もききますしーー)
サシャ(……燻製肉、食べたいなぁ)
サシャ(もう、村を出てから三年近くになるんですね。ーーしばらく、帰ってないな……帰りたい……)
サシャ(ああっ……! 故郷の森に帰って、お父さんが作った燻製肉をお腹いっぱい食べたい……!)ジュルリ
サシャ(あそこを出たらおいしいものが食べられると思ったのに、全然そんなことありませんし……全く、どうなってるんですか)ハァ
サシャ「……」
サシャ(故郷、か……)
サシャ(ライナーも実は訛りとかがあったり……は、しませんよね。そういうこと、気にしなさそうですし)
ライナー(……静かになったな。今ならいいか?)ギシッ
45 : ◆H4iwFNXQsw:2013/12/13(金) 19:43:41 ID:2E33IU4o
サシャ(……ライナーが、私みたいに単純で素直な人なら楽だったのに)ハァ
サシャ(大体、ライナーもライナーですよ。好きな人がいたんなら、何が何でも嫌だって拒否してくれればよかったんです。そしたらこんなに悩まないで済んだのにーー)
サシャ(……違いますよね。ライナーは、嫌でも『やってほしい』って言ったらやってくれる人なんですもんね)
サシャ(……今も、私と一緒にいるのが嫌だったりするんでしょうか)
サシャ(でも……あの時ならまだしも、今はちゃんと言ってくれてもいいのに)
サシャ(言えないなら……そういう気持ちも、秘密も……もっと上手に隠してくれれば、気づかなかったのにな)
サシャ「そんな大事なもんなら、しまっておけばいいんに……」ボソッ
ーー ガタンッ!!
サシャ(ミカサ……? 迎えに来てくれたんですかね?)スクッ
エレン「……なあ。アルミンは、ライナーとサシャのこと応援してんのか?」
アルミン「うーん……どっちかっていうと、あの二人っていうよりはサシャの応援かな」
エレン「サシャの? なんでだ?」
アルミン「サシャってさ、前と比べたら随分変わったと思わない?」
エレン「そんな気はしねえけど……背でも伸びたのか?」
アルミン「違うよ。外見じゃなくて中身の話。ーーミカサから聞いたんだけどね、サシャって女子寮に帰っても勉強してるらしいよ」
エレン「は? なんで寮で勉強してんだ? ってかどこでやるんだよ勉強なんか」
アルミン「……エレン、この部屋にある机は物置場じゃなくてね、本来は自習するところなんだよ? 知ってた?」
エレン「知らなかった……!」ガーン...
アルミン「……僕、何回か言ったんだけどなぁ」ハァ
24 : ◆H4iwFNXQsw:2013/12/13(金) 19:23:32 ID:2E33IU4o
アルミン「まあ、それだけじゃなくて他にも色々あるよ。僕のところに技巧や座学について聞きに来たのなんか一度や二度じゃないし、しょっちゅうライナーに勉強教えてもらってるし」
エレン「……そういえば、前にアニと対人格闘の特訓してたの見たことあるな」
アルミン「でしょ? ーーあんなに頑張ってるサシャを見てるとね、僕もやればできるんじゃないかって気がしてくるんだよね。だから、つい応援したくなっちゃうんだ」
エレン「……そんなもんか」
アルミン「そんなもんだよ。深い理由はないんだ。ーーねえ、エレンはどう思ってる? あの二人のこと」
エレン「俺か? ……うーん、よくわかんねえや」ポリポリ
アルミン「? わからないって?」
エレン「あの二人、春頃から妙に仲はいいなって思ってたけど……この前、き、き、ききき……」
アルミン「キス」
エレン「……をするところを見るまでは、普通の仲間同士だと思ってたんだよ。あいつらがくっつくことなんか考えたこともなかった」
25 : ◆H4iwFNXQsw:2013/12/13(金) 19:24:14 ID:2E33IU4o
エレン「ライナーは……すげえ奴だと思うよ。聞けば大抵は答えが返ってくるし、何より強ぇしな。できるならあいつみたいな男になりたいって考えたことも、一度や二度じゃない」
アルミン「サシャはどう?」
エレン「あそこまで食い意地張った奴にはなりたくねえな」キッパリ
アルミン「あはは、はっきり言うね」
エレン「なりたくないが……アニに特訓つけてもらってるサシャを見て、俺も頑張らないとなって思ったのは確かだ」
アルミン「じゃあ、ライナーだけじゃなくてサシャもエレンにいい影響を与えてくれたってことになるね」
エレン「あー……そういうことになるのか? よくわかんねえけど」
アルミン「うん、そういうことだよ。……仲間に恵まれてよかったよね、僕たち」
エレン「そうだな。……ここに来て、よかったよな」
エレン「……なんかウズウズしてきた。俺走ってくるわ」スクッ
アルミン「ダメだよ。エレンは熱中しちゃって帰る時間忘れるじゃないか。おとなしくここにいて」ガシッ
エレン「ちぇっ、つまんねえのー。……ところで、ベルトルトはいったいどこに行ったんだ? メシ食った後から姿が見えねえが」
26 : ◆H4iwFNXQsw:2013/12/13(金) 19:24:59 ID:2E33IU4o
ーー 営庭隅 とある林の中
アニ「ふぅん……あいつ、まだ悩んでるんだ」
ベルトルト「アニはどう思う?」
アニ「はっきりしないのは傍から見ててイライラするけどね。ーーでもまあ、あいつの好きにさせておけば? まだ時間はあるんだし」
ベルトルト「……もう、一ヶ月と少ししかないよ」
アニ「……そうだね。もう少しで、この兵士ごっこともお別れか」
ベルトルト「……」
アニ「ところで、その話題の本人は? 姿が見えないけど」キョロキョロ
ベルトルト「夕食の後すぐに、寮でエレンに捕まっちゃったんだ。山岳訓練について聞きたいことがあるんだって。僕はなんとか見つかる前に逃げ出してきたんだけど」
アニ「そんなことしていいの? 急にいなくなったら逆に怪しまれるんじゃない?」
ベルトルト「だって僕が来なかったら、アニはここで一人待ちぼうけじゃないか。こんなに寒いのに」
アニ「寒さで音をあげるような柔な鍛え方してないよ。馬鹿にしないで」ムッ
ベルトルト「でもアニは女の子じゃないか。無闇に体を冷やすのはよくないと思うよ」
27 : ◆H4iwFNXQsw:2013/12/13(金) 19:25:36 ID:2E33IU4o
アニ「……女の子?」
ベルトルト「? だってそうでしょ?」
アニ「……………………そうだけど、さ」
ベルトルト「こんなに寒いんだから、せめて手袋とマフラーだけでもつけてくればよかったのに。本当に寒くない? 僕の手袋貸そうか?」
アニ「寒くないよ。……それに手袋やマフラーつけてきたら、外に出かけてるってことバレちゃうでしょ。あんたも馬鹿正直に手袋つけてこないで、少しは考えなよ」
ベルトルト「それはそうかもしれないけど……どっちにしろ、僕らが外にいたのはバレちゃうと思うよ? 今のアニ、顔が真っ赤っかで火照ってるし。それって寒くてそうなってるんでしょ?」
アニ「……」
ベルトルト「? ねえ、本当に大丈夫? 僕のマフラー貸そうか?」
アニ「……も、もう帰るっ」クルッ ザクザク...
ベルトルト「えっ? ちょっ、ちょっと待ってよアニ! 僕何か変なことーー」
ーー ガサガサガサッ
アニ「!」
ベルトルト「! ーー誰?」サッ
29 : ◆H4iwFNXQsw:2013/12/13(金) 19:27:41 ID:2E33IU4o
ミカサ「こんばんは、ベルトルト。……と、後ろに隠れているアニ」ヒョコッ
アニ「隠れてるわけじゃないよ。……ベルトルト、邪魔。どいて」
ベルトルト「あっ……ご、ごめん」シュン
アニ「ミカサ、あんたこんなところに何しに来たの? エレンはここにいないよ?」
ミカサ「この森に何かいるような気配がした。……ので、来た」
アニ「野良犬かあんたは」
ミカサ「あなたたちこそ、こんなところで何してるの? 夜道は危険。暗殺し放題」ニンニン
ベルトルト「え? あっ、いや、僕たちはーー」アセアセ
アニ「山岳訓練の打ち合わせだよ」
ミカサ「そうなの? ……でも、一人足りないみたい」キョロキョロ
アニ「クリスタだね。あの子は体力が不安だから、どうフォローするか二人で考えてたんだ」
アニ「そういうのって、クリスタを前にする話じゃないだろ? 食堂や談話室でおおっぴらに相談できるものでもない。それくらいあんたにもわかるでしょ?」
ミカサ「それもそうかも。……邪魔してごめんなさい。私は帰るから、話し合いを続けて欲しい。それでは失礼する」ザクザク...
アニ「はいはい、また後でね」
30 : ◆H4iwFNXQsw:2013/12/13(金) 19:28:41 ID:2E33IU4o
ベルトルト「危なかったね……うまく誤魔化せてよかった」ホッ
アニ「誤魔化したのは私だけどね。……あとあんた、顔に出すぎ」
ベルトルト「えっ!? ……ごめん、今度からは気をつける」シュン
アニ「そもそもなんで私を隠そうとしたの? 足跡が残ってるんだから、ここに私たち二人がいるのはどうせバレるのに」
ベルトルト「それはそうなんだけど……ミカサはダメでも、他の人だったら騙せたかもしれないし」
アニ「まあ、コニー辺りなら騙せたかもね」
ベルトルト「それに……僕だって男なんだから、何かあったら前に立つよ」
アニ「……」
ベルトルト「……ライナーよりは、頼りなく見えるかもしれないけど」
アニ「……そんなことないよ」
ベルトルト「ははは、そう言ってもらえると嬉しいな」
アニ「……じゃあ、私帰るから。また定期報告の日に」ザクザク
ベルトルト「あっ……うん、おやすみ。いい夢見られるといいね」
31 : ◆H4iwFNXQsw:2013/12/13(金) 19:29:34 ID:2E33IU4o
ーー 女子寮裏手
アニ「……」ザクザク...
アニ「……」ピタッ
アニ「……」
アニ(……何、あれ)
アニ(いきなり女扱いして……変なの)
アニ「……」
アニ(……二人きりだと、ああいうことも言うんだ)
アニ(ベルトルトのくせに……)
アニ「……」
アニ(……明日の対人格闘で、ライナー投げてやる)ザクザクザクザク
32 : ◆H4iwFNXQsw:2013/12/13(金) 19:30:26 ID:2E33IU4o
ーー 男子寮 裏口
ライナー(雪下ろしって言ってたな……そろそろ終わってる頃だろうし、屋根下までまずは行ってみるか)チャプチャプ
ライナー(……よし、見回りはいないな。さっさと出よう)コソコソ
コニー「あれ? おーいライナー! こんな時間に出かけるのかー? ーーむぐっ!?」
ライナー「大声出すんじゃねえよ、裏口から出る意味ないだろうが……! 何かあるなら黙って喋れ……!」ヒソヒソ
コニー「」コクコク
ライナー「よし、離すぞ。ーーいきなり掴みかかって悪かったな、コニー」
コニー「……」ブンブン
ライナー「……小さい声でなら喋ってもいいぞ」
コニー「こんな時間にどっか行くのか? もうじき消灯だぞ?」ヒソヒソ
ライナー「ああ。ミカサたちに差し入れを届けに行くんだ」チャポン
コニー「そのヤカンが差し入れなのか? 変なの」
ライナー「正確にはヤカンの中身だけどな。……もういいか? 早く行かないと冷めちまう」
33 : ◆H4iwFNXQsw:2013/12/13(金) 19:31:17 ID:2E33IU4o
コニー「もしかして、その面子の中にサシャはいるか? いるならさ、ついでにこれやっといてくれよ」ポン
ライナー「これは……みかんか。まだ残ってたのか?」
コニー「ああ、それで正真正銘最後だよ。残りは俺が全部食う」ムシャムシャ
ライナー「歩きながら食べるなよ。廊下が汚れる」
コニー「むぉんむぁむぉむぉむぁむむぁむぁ」モグモグ
ライナー「食いながら喋るな。……もう俺は行くぞ。じゃあな」コソコソ
コニー「むぉう、行ってらっしゃーーっと、そうだ。そういやミーナもサシャのこと探してたんだよな。見かけたら声かけてやってくれよ」
ライナー「ミーナもか? ……わかった、そうする」
34 : ◆H4iwFNXQsw:2013/12/13(金) 19:32:03 ID:2E33IU4o
ーー 屋外 とある倉庫前
ライナー(ミーナミーナっと……おっ、いたな)
ライナー(だがあの格好はなんだ? かなり薄着じゃないか)スタスタ...
ライナー「おいミーナ、上着くらい着て外歩け」
ミーナ「あっ、ライナー……こんばんは、いい夜だね」
ライナー「おう、こんばんは。ーーじゃなくてだな、そんな薄着でどうしたんだ? 上着はどうした」
ミーナ「ああ、これね。すぐ部屋に戻る予定だったんだけど、サシャになかなか会えなくてさ」サスサス
ライナー「俺のでよければ上着を貸そうか? そのままじゃ冷えるだろ?」
ミーナ「ううん、もう戻るからいいよ。それに、ライナーから上着なんか借りたらサシャに怒られちゃうもの」
ライナー「いや、これくらいで怒ったりは………………………………するかもな、サシャは」
ミーナ「でしょ? ーーっていうか聞いてよ! サシャったら今日一日中追いかけたのにちっとも捕まらないんだよ? おかしくない?」ムー...
ライナー「あいつの動きは俺でもよくわからん時があるからな……まあ、今日は運が悪かったとでも思っとけ。怒るだけ損だぞ」
ミーナ「うーん……そうだね、そう思うことにする。ーーじゃあ、これよろしくね。サシャに渡しておいて」スッ
35 : ◆H4iwFNXQsw:2013/12/13(金) 19:33:03 ID:2E33IU4o
ライナー「……何故俺に渡す」
ミーナ「え? だってサシャのところに行くんでしょ?」
ライナー「…………まあ、行くけどよ。ていうか、あいつ女子寮の雪下ろし当番だろ? 今から俺も行くから、一緒に行けば手っ取り早いんじゃないか?」
ミーナ「はい、それではここで問題です。ーーこれなーんだ?」チャリンッ
ライナー「ここの倉庫の鍵だな」
ミーナ「正解! ーーさて、ではどうして私はこれを持ってるんでしょうか?」
ライナー「……? 何か関係があるのか?」
ミーナ「はい時間切れ! 正解は『サシャを探して外をうろちょろしてたら、教官に倉庫の片付けを押しつけられたから』でしたー!」
ライナー「……運がなかったな」ポン
ミーナ「まあ、もう終わったからいいんだけどさ……こういう時に限ってミカサもアニもいないしぃ……」ブツブツ
ライナー(あっ……そういや忘れてたが、アニからの定期報告終わったんだろうか)ハッ
ミーナ「ーーというわけで、私はこれから教官室にこの鍵を返しに行かなきゃいけないんだよね。帰る頃には消灯時間だろうから無理なの。渡せないの。……ねえちょっと、ライナー聞いてる?」
ライナー「え? ……あ、ああ、聞いてるぞ」
ライナー(後でアニに謝って、ベルトルトから話を聞かないとな)
36 : ◆H4iwFNXQsw:2013/12/13(金) 19:34:00 ID:2E33IU4o
ライナー「お前の事情はわかった。ーーだが、何も今日渡すことにこだわらなくたっていいだろ。明日以降に仕切り直したらどうだ?」
ミーナ「そうしたいのは山々なんだけど、明日から私当番続きなんだよね。暇な時間取れるのって今日だけだったんだ。ーーだから、明日以降ってのは無理」
ライナー「なら、寮の部屋に置いてくればいいじゃないか」
ミーナ「この瓶の中身お菓子だから、物だけ置いといたらすぐに食べられちゃうよ。それに私からだって伝わらないと意味ないし」
ライナー「置き手紙でも書いておけよ」
ミーナ「読むと思う?」
ライナー「……同室のユミルかクリスタに伝言頼めばいいだろ」
ミーナ「ユミルに頼んだら物を要求されそう。クリスタに何か頼む時はユミルを通さないと後で怒られるから無理」
ライナー「…………朝晩狙えば会えるんじゃないか? 同じ寮だろ?」
ミーナ「それも無理。最近サシャって消灯近くじゃないと部屋に戻ってないんだもん。朝は一番に食堂向かってるから全然会えないし」
ライナー「なんでそんな八方塞がりな状況になってんだ……? たかがお礼を渡すだけなのに……」ウーン...
ミーナ「女の子は色々あって大変なんだよ、ライナー」
37 : ◆H4iwFNXQsw:2013/12/13(金) 19:35:11 ID:2E33IU4o
ライナー「それなら仕方がないな。俺からでいいなら渡しておこう」
ミーナ「やったぁ、お願いね! ーーあっ、この前当番代わってもらったお礼って言えばわかると思うから、ちゃんと伝えといてね?」
ライナー「わかったわかった、伝えておく。ーーところで、この瓶の中身はなんだ? 砂か?」ザラザラ
ミーナ「違う違う。金平糖っていう砂糖のお菓子だよ。知らないの?」
ライナー「ああ、はじめて見たな。……第一、こんなに小さくて腹の足しになるのか?」ザラザラ
ミーナ「あはは、お腹の足しにはならないかな。こういうのって見た目や味を楽しむ物だからさ」
ライナー「……サシャはこういうもんが好きなのか?」
ミーナ「うーん、どうかな……もちろん、お肉が一番好きなんだろうけどね。だけどサシャだって女の子だもん、こういうのもよく食べてるよ?」
ライナー(……そういやあいつも女だったな。たまに忘れそうになるが)
38 : ◆H4iwFNXQsw:2013/12/13(金) 19:36:00 ID:2E33IU4o
ミーナ「でもよかったぁ、ライナーに預けておけば安心だよね」
ライナー「……? なんで俺に預ければ安心ってことになるんだ?」
ミーナ「え? だってライナーが呼べばサシャが出てくるんじゃないの?」
ライナー「エレンに呼ばれたミカサじゃあるまいし、サシャにはそんな芸当できんだろ」
ミーナ「ふーん……そうなんだ。サシャならできそうなのになぁ……っくしゅんっ」プルッ
ライナー「おい、大丈夫か?」
ミーナ「あはは、平気平気。……というわけで、後はよろしくね? 私は教官室に鍵返してから部屋に帰るよ。じゃあおやすみー」フリフリ
39 : ◆H4iwFNXQsw:2013/12/13(金) 19:37:01 ID:2E33IU4o
ーー 女子寮 屋外
クリスタ「……ミカサ、遅いね」
ユミル「班長のあいつが戻って来ねえと報告にも行けねえってのに、のんびりしてるなー……っと、向こう側から誰か歩いてきたぞ? ミカサか?」ジーッ...
クリスタ「ううん、ミカサにしては背が大きいし、がっしりしてるみたいだけど……って、あれライナーじゃない?」
ユミル「……ついに夜這いに来たか」ボソッ
クリスタ「夜這い?」キョトン
ライナー(預かった物が、見事に食うもんばっかりだな。まあ、サシャらしいか)
ライナー(女子寮の雪下ろしってことはこの辺か? ……ん? あそこにユミルとクリスタがいるな……二人だけか?)ウロウロ
40 : ◆H4iwFNXQsw:2013/12/13(金) 19:38:03 ID:2E33IU4o
クリスタ「ライナー、こんばんは!」
ライナー「ああ、こんばんはクリスタ、ユミル」
ユミル「お前、こんなところで何してんだよ。ここは女子寮だぞ? 夜這いでもしに来たか?」
ライナー「人聞きの悪いことを言うな。アルミンからの差し入れを持ってきたんだ」チャプン
ユミル「ほー……流石アルミン、気が利くな」
ライナー「……ところで、ミカサとサシャはいないのか?」チラチラ
クリスタ「ミカサは林のほうに散歩しに行っちゃったの。サシャは屋根の上にいるよ」
ユミル「お前が呼べば飛んでくるかもな」
ライナー「呼べば……」
ライナー(ミーナが言ったことを信じてるわけじゃないが……試してみるくらいならいいか)
41 : ◆H4iwFNXQsw:2013/12/13(金) 19:39:05 ID:2E33IU4o
ライナー「……よし。ーーおーいサシャ、食い物だぞー」ブンブン
クリスタ「……」
ユミル「……」
ライナー「……」
クリスタ「……来ないね」
ユミル「来ないな」
ユミル(ってか本当にやったよこいつ)チラッ
ライナー「……」シュン
クリスタ「え、えっと……ライナー、元気出して? きっと距離がありすぎて聞こえなかっただけだよ。ねっ?」オロオロ
ライナー「いや、別に……気にしてねえけど…………いや、ちょっと待てよ?」ハッ
ユミル「なんだよバナナでも落ちてたか?」
ライナー「もしかしてあいつ、上で腹減ってぶっ倒れてるんじゃないだろうな……!?」
ユミル「あーはいはい、そんなに心配なら行ってこい。梯子はあっちな」
42 : ◆H4iwFNXQsw:2013/12/13(金) 19:40:05 ID:2E33IU4o
ーー 女子寮 屋根の上
サシャ「……」ポケーッ...
ライナー「……」ヒョコッ
ライナー(あいつ、屋根の上で座って何やってんだ……? 考え事でもしてるのか?)ジーッ...
ライナー(……ちょっと見てるか)コソコソ
サシャ(そういえば、来週の山岳訓練って雪山でやるんですよね)
サシャ(……ということは、うさぎ獲れませんかね? もしかしたら、うまくいけば食堂に行く前にお肉食べられるんじゃないですか!?)ハッ
サシャ(でも、罠を仕掛けたりしてる余裕はないでしょうねー……今の時期って、雪のおかげで足跡が残って狩りがしやすいんですけど)
サシャ(ああ、うさぎ食べたいです……)
サシャ「……」
サシャ「……ふーんふふふーんふーんふーんふふふーん♪」ユラユラ
サシャ「うっさぎーうっさぎーうっさぎっさんー♪」
サシャ「うーさーぎーおーいしーぃゆーきーやーまー♪」
ライナー「…………………………」
ライナー(……今出て行ったらどうなるんだこれ)
ライナー(戻るか……? いや、梯子が軋む音でバレる可能性のほうが高い)
ライナー(……もう少し様子を見よう)コソコソ
44 : ◆H4iwFNXQsw:2013/12/13(金) 19:42:12 ID:2E33IU4o
サシャ(って、そうじゃなかった! ちゃんとライナーの隠し事について考えないと!)ブンブン
サシャ(でも、小難しいこと考えてたらお腹が空きました……今日の晩ご飯も、いつもより量が少なかったですし)グーキュルルルル...
サシャ(だいたい訓練兵団もケチですよね……いくら食糧難だからって言っても、あれじゃ何の足しにもなりませんよ)
サシャ(戦争なんておいしいもの食べてるほうが勝つに決まってるんですから、もったいぶらないでどかんと一発、うまい肉くらい出せばいいんですよ。燻製肉なら保存もききますしーー)
サシャ(……燻製肉、食べたいなぁ)
サシャ(もう、村を出てから三年近くになるんですね。ーーしばらく、帰ってないな……帰りたい……)
サシャ(ああっ……! 故郷の森に帰って、お父さんが作った燻製肉をお腹いっぱい食べたい……!)ジュルリ
サシャ(あそこを出たらおいしいものが食べられると思ったのに、全然そんなことありませんし……全く、どうなってるんですか)ハァ
サシャ「……」
サシャ(故郷、か……)
サシャ(ライナーも実は訛りとかがあったり……は、しませんよね。そういうこと、気にしなさそうですし)
ライナー(……静かになったな。今ならいいか?)ギシッ
45 : ◆H4iwFNXQsw:2013/12/13(金) 19:43:41 ID:2E33IU4o
サシャ(……ライナーが、私みたいに単純で素直な人なら楽だったのに)ハァ
サシャ(大体、ライナーもライナーですよ。好きな人がいたんなら、何が何でも嫌だって拒否してくれればよかったんです。そしたらこんなに悩まないで済んだのにーー)
サシャ(……違いますよね。ライナーは、嫌でも『やってほしい』って言ったらやってくれる人なんですもんね)
サシャ(……今も、私と一緒にいるのが嫌だったりするんでしょうか)
サシャ(でも……あの時ならまだしも、今はちゃんと言ってくれてもいいのに)
サシャ(言えないなら……そういう気持ちも、秘密も……もっと上手に隠してくれれば、気づかなかったのにな)
サシャ「そんな大事なもんなら、しまっておけばいいんに……」ボソッ
ーー ガタンッ!!
サシャ(ミカサ……? 迎えに来てくれたんですかね?)スクッ
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