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女「また混浴に来たんですか!!」

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Part8
120 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/02/18(土) 16:18:23.97 ID:FjDEx+7n0
親父「次の日、俺は痛い目に遭った」
親父「再びあの温泉に、同じ時間帯に来ていた。俺が訪れていたのは、早朝5時過ぎだった」
親父「俺は湯に浸かり続けた。誰か人の気配がするのを待った。まだバスが来るような時間帯じゃない。女が地元民ならば、観光客のこないこの時間帯に来ているんじゃないかと思った」
親父「隣の湯に人が来る気配がしたら、今日こそは声をかけようと思った。あの幻想的な天女の、落ち着いた声をもう一度聴きたいと願った」
親父「湯の中で待ち続けた。昨日は愛おしいと思った白鳥の声が、今日は耳障りだと感じた。あの女の気配を頼むから消さないでくれよとな」
親父「昨日と同じくらい、かなり長い時間が過ぎた頃。のぼせかけていた俺の耳に、女の笑い声が聞こえてきた」
親父「違うとは思っていたが、それでも少し期待してしまった。緊張しながら待ち続けていると、女の二人組が入ってきた。タオルをまいたまま、俺のいる湯にな」
親父「女たちは小さく悲鳴をあげた。俺は女たちが間違えてはいってきたんだと思った。そしたら、そいつらがなんて言ったと思う?」
親父「ここは女湯ですよ、だ」
親父「俺は今度は謝りもせずに、しかし急いで出た。じいさんが近くにいたので尋ねた。男湯はどっち側なんだと」
親父「昨日現れた天女が、俺に嘘のいたづらをしかけたことがわかった。じいさんは、こんな小さいスペースに岩が一枚あるだけだから、どっちも似たようなもんだろうと慰めてくれたけどな」
親父「それから、俺は雪国を出てこっちに戻ってきた。頭ではあの女に取り憑かれているのに、こっちで死ぬほど金を稼ぐことに力を注いだんだ」
親父「いいか、小僧。ひとつだけ教えてやろう」
親父「美しい女っていうのはなーー」

121 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/02/18(土) 16:23:59.93 ID:FjDEx+7n0
男「それから人の不幸で金を儲けて、俺と出会ったってわけだ」
女「……凄い人生ですね」
男「だろう?」
女「でもあなたの話じゃなかったですね」
男「俺はその温泉には行ったこともない」
女「伝聞ですか」
女「それでもなんだかとても印象に残るお話でしたね」
男「俺はのぼせて死にかけていたけどな。親父さんは湯の中でしか語ろうとしないんだ」
女「ふふっ、大変でしたね。ところで、その女性とは再会できたんでしょうか」
男「……それはできていないな」
女「そうですよね。お金で解決するのも難しそうですもんね」
女「それではそろそろあがりますね。今日はたくさん話してくださってありがとうございました」
男「こちらこそどうも。だが、もうちょっと浸かってからあがることにする」
女「ええ!?大丈夫ですか!?」
男「少し耐性がついたのかもしれないな」
女「無理しないでくださいね。寝ないでくださいね」
男「子供のように扱うな」
女「それでは、ご無事でしたらまた早朝」
男「無事だ。また早朝」

122 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/02/18(土) 16:31:20.19 ID:FjDEx+7n0
男「…………」
男「白鳥のように騒々しい女がいなくなったか」
男「親父さんの言う嘘つきの天女はまだどこかにいるんだろうか」
男「親父さんの見た女は幻覚ではなかったのか」
男「本当にそんな女がいるなら、見てみたいものだな」
「いいか小僧、一つだけ教えてやろう」
「美しい女っていうのはな」
「胸が、小さいんだ」
男「目のやり場に困るような胸部を持つあいつには到底言えなかったな」
男「親父さん。それでも、俺が早朝5時に出会った女の後ろ姿は、健康的で美しいものでしたよ」
男「顔は前髪に隠れて中々みえませんが、美しい雰囲気です。俺が人の目が苦手だから、あまり見てはいないんですが」
男「あんたにも、あの女にも、到底言えませんよ」
男「俺が、なにかしらの奇跡を求めて、無意識のうちにあんたの真似をしてしまっているんだと最近気づいだことなんて」

123 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/02/18(土) 16:46:16.94 ID:FjDEx+7n0
プリップリの食感。
外はサクサク、中はジューシー。
舌の上で蕩けるような味わい。
食べ物に関しては表現の定型とも言えるセリフがたくさんあるにもかかわらず。
温泉に関しては、感想のレパートリーがあまりない。
"ああ~"
"生き返る~"
"良い湯だ"
それらを言って終わり。
温泉のレポーターがコメントに困り、景色について感想を述べる場面は多い。
それは仕方のないことだ。
温泉は、生きている。
裸で訪れる人間がそうであるように、恥ずかしいという感情があり、いろんなものを隠している。
温泉の湯の感触はやわらかいかもしれない。
味はしょっぱいのではなく、酸っぱいのかもしれない。
底は硬いのかもしれないし、ヌルヌルしているのかもしれない。
湯の花は独特の味がするのかもしれない。
私は私なりの方法で、あなたに隠されたものを見てみたい。
そうすれば、もしかしたら。
私がさらけ出したいと思っているものを、あなたが見つけてくれるかもしれないと願って。
次回「風呂上がりの冬の脱衣場さえ、ちょっと楽しみになる魔法」
恋は、泡沫(うたかた)の様ね。

124 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/02/18(土) 16:49:22.32 ID:FjDEx+7n0
読んでくれてありがとうございます。
今日はここまでです。
参考文献
絶景混浴秘境温泉2017(MSムック) 大黒敬太 著


125 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/02/18(土) 17:12:30.34 ID:1jONawqro
地元が紹介されて俺歓喜

126 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/02/18(土) 21:11:59.63 ID:FjDEx+7n0
訂正
女「私、生まれてから、一度ものぼせたことがないです!!」

女「私、生まれてから、一度も朝風呂でのぼせたことがないです!!」

127 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/02/18(土) 21:23:25.98 ID:FjDEx+7n0
女「あら、おはようございます」
男「おはよう。今日は早いな」
女「今日もお仕事でしたか?」ザバァ
男「どうした、もうあがるのか」
女「定位置ですってば。はい、あなたは奥に行って」ザバァ
男「どこでも変わらんだろう」
女「どこでも変わらないならどこに行ってもいいじゃないですか」
男「哲学者みたいなことを言うんだな」
女「どこが哲学なんですか」
男「昔、生きていることと死んでいることは一緒だと主張していた哲学者がいたらしい」
男「そのことでからかおうとした市民が言った。生きているのと死んでいるのが同じだと言うのなら、今すぐ死んでみろとな」
男「哲学者は断った」
男「何故なら、それらは同じことだからと」
女「屁理屈ですか。意味がわからないんですけど」
男「同じことならする意味がない。だから同じことはしないというわけだ。たとえ同じだとしてもな」
女「余計わからなくなりました」
男「誤って女湯にはいってしまったら言ってみる価値があるかもな。男湯も女湯も同じだと」
女「そういう屁理屈を言う変態のために混浴が生まれたのかもしれません」
男「起源は混浴が先だろう。水に男と女の区別などなかったはずだ」
女「私たちは原点回帰しているんですかね」
男「源泉かけ流しの原点回帰か」

128 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/02/18(土) 21:40:14.06 ID:FjDEx+7n0
男「それにしても今日も暑いな」
女「気温ですか?水温ですか?」
男「どっちもだ」
女「寒いのは苦手ですか?」
男「むしろ得意だ」
女「どんなに寒くても半袖半ズボンを貫いた小学生時代でしたか?」
男「普通に長袖を着ていた。あいつらも別に寒さに強いわけではなかったと思う」
女「国は調査をするべきですね。小学生時代に真冬に半袖半ズボンを貫いた少年は、大人になったらどんな人物になっているか。きっと、なにかしら有意な結果が出るはずです」
男「追跡調査で厚めのコートを冬に着ていたら少し悲しい気持ちになるな」
女「寒いことに耐えなくてもいいんですからね」
男「俺もあついことには耐えないようにしてるからな」
女「北風と太陽なら、あなたに対しては太陽が有利ですね」
男「太陽がでていたら熱くて汗をかくから温泉に行って脱ぐ。北風が吹いていたら寒くて温まりたくなるから温泉に行って脱ぐ」
女「結局脱ぐんじゃないですか」
男「半袖半ズボンで気温に耐えた経験がないから、体温調整が苦手なんだろうな」
女「追跡調査の結果が出ました。半袖半ズボンで小学生時代を耐え抜いた少年は、暖房とクーラーを一般人より使わない傾向が見られました」
男「エコなやつらだな」
女「見習って下さい」
男「俺もどっちも使わんからな」
女「ええー」

129 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/02/18(土) 22:20:43.03 ID:FjDEx+7n0
女「北風が吹くのも太陽が照らすのも、哲学者が生きるのも死ぬのも結局は一緒なんですね」
男「違うだろ。混浴に女と入るのと、男が女湯に入るのと同じくらいに違う」
女「同じくらいに違いますか」
男「女が男湯に入るのは許されるけどな」
女「同じだけど違いますか」
男「男は女にとって許されざる存在になりやすいからな。混浴の数が減少しているのもこの前のワニみたいなやつらのせいだ」
女「この流れで聞きますけど、透明人間になったらどこに行きたいですか?」
男「女湯」
女「定番ですね。なんだかんだ言ってそこですか。でも、いいじゃないですか、混浴に麗しい女性とはいってるんですから」
男「女湯と混同を混浴するな」
女「混乱しないでください」
男「女はどうなんだ。透明人間になったらどうする?」
女「戻れるのか心配になります」
男「そんなこと心配している場合か」
女「女湯に行っている場合ですか」
男「男の夢をわかっていない。性欲を満たしにいくわけじゃないんだよ」
女「じゃあ……」
男「男は性欲を満たすためにアダルトな動画を見るか、アダルトな店に行くだろう」
女「知りません」
男「混浴という企画物も存在するが、それで性欲を発散させようというものは少ない。泡立つ湯に浸かる大人の店もあるが、やはり大多数の大人が行っているというわけではない」
女「知りません」
男「普通の性交動画で興奮している男たちも、透明人間になったときだけは、何かの使命に目覚めたように女湯に向かうんだ。普通の風俗店に行って普通の交尾を眺める奴などほとんどいないと言っていいだろう」
女「まだ時間余り経ってないですけど、のぼせましたか?」
男「小学生時代の少年が想像する好きな女の子が裸になる場所というのは、お風呂以外には存在しなかったんだ。だから、ベッドの上では少年の夢はかなわないんだ」
男「原点回帰だよ。湯気立ちのぼる温泉に浸り、都会の喧騒から避難しているとこう思わないか。透明人間になってから温泉に行くのではない。温泉に来たから透明人間になれるのだと!!」
女「きゃっ!」
男「はぁ……はぁ……もうあがる」ザバァ
女「やはりのぼせてましたか。昨日は長く入っていられたのに」
男「あのあと湯あたりした。まだ少し尾を引いている」
女「それではまた早朝……お大事に……」
男「うぅむ……」

130 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/02/19(日) 09:07:35.09 ID:bWXyEvtc0
男「…………」
女「…………」
男「お、おはよう」
女「おはようございます」
男「昨日はすまなかった……」
女「何がでしょう」
男「透明人間がどうのこうの」
女「別に気にしてません」
男「そうか……」
女「…………」
女「…………」
女「ぷぷっ……」
女「(あんなの女子大ならシモネタのうちに入らないんだけどな)」
女「(刺青入れた紳士だからなぁ。大人の店がどうのこうの言っていたのを反省してるんだろうなぁ)」
男「…………」
女「(俯いててよくわかんないけど、今どんな表情をしているのかな)」
女「(ちょっと覗き込んでみよ)」グィ
男「……わっ!」
男「な、なんだ」
女「そんなに驚かなくても」
男「俺を見るな!」
女「そ、そんな言い方しなくても……」
男「いや、その……」
女「…………」
男「…………」
女「ソープランド行ってるくせに」ボソ
男「行ってない!!!」
男「というか何故そんな言葉を!!」
女「あなたよりよっぽどマセガキですよ。知識面だけですが」

131 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/02/19(日) 09:38:12.16 ID:bWXyEvtc0
女「昔話の時もおっしゃってましたね。目を見られるのが苦手だって」
男「ああ。原因はわかってる」
女「お母様の教育?」
男「そうだ。物心付く前から、頭を両手で押さえつけて、俺の目を見ながら、"私は正しい"と言葉を植え付けていたらしいからな」
女「洗脳みたいですね」
男「青年に反抗期というものが存在していてよかった。親の呪縛から解き放たれる貴重な機会だからな」
男「それでも、未だに人の目を見るのが怖い。だからこうして前髪を伸ばしている」
男「さすがに女性のあんたのほうが長いけどな」
女「……それは女性という理由だけではないかもしれませんよ」ボソ
男「ん?」
女「お母様は今でもトラウマですか」
男「そうだな」
女「時々恋しくなったりしませんか?」
男「なるよ」
女「会いに行ったりには?」
男「三途の川を渡ってか?」
女「えっ」
男「死んだんだ」
女「…………」
男「なぁ」
男「母から頭を押さえつけられて、近くでじっと見つめられている時に、俺は幼いながらあることに気づいたんだ」
男「人の目は、同時に相手の両目を見れないということに」
男「右目を見ればいいのか、左目を見ればいいのか。眉間を見ればいいのか。どれが正解なのかわからなかったんだよ」
男「俺は、確かに正しいことについて教えてもらったんだ。日常の細かいところにまで口出しをされていた」
女「世間にとっての正しさではなく、お母様にとっての正しさでしょう?」
男「そうだな。教わらなくてもいいようなことをたくさん教わった。母が怒っている時のふるまいかた、悲しんでいる時の慰め方。俺は何一つ合格点を取れなかったんだがな」
男「目のやり場の位置でさえ、どこを見るのが母にとっての合格なのか考えさせられた」
男「正しさの押しつけは、人を自然な道から外す」
男「例えるなら、正しい呼吸法について教わったようなものだな。何秒間、どのくらい息を吸い込み、どのようなペースで吐くのが理想的なのか」
男「普通のやつらはそんなこと教えて貰っていないから、自然に呼吸をしている。俺は、教えられたとおりにやろうと、不自然に呼吸をしてしまっている」
男「そして人に目を見られると、焦燥感がとまらなくなってしまった」

132 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/02/19(日) 09:45:41.02 ID:bWXyEvtc0
女「そうでしたか」
男「だから俺の目を見るのはやめてくれ」
女「わかりました」
男「……別に、あんたに対してだけじゃないからな」
女「わかってますよ」
男「あんたの瞳は、なんというか」
女「はい」
男「綺麗だった。一瞬見ただけだけどな」
女「…………」
男「久々に人の瞳を見た気がする。こんな綺麗なものだったかと驚いた」
女「……どちらですか」
男「どちら?」
女「私のどちらの瞳ですか?」
男「あまり意識は……」
女「なんだ、もう自然に呼吸ができているじゃないですか。もうあがります」ザバァ
男「どうしたんだ急に」
女「それではまた今度」
男「左目」
女「…………」
男「右目は前髪に隠れててあまり見えなかった」
男「左目だ」
女「……正解です」
女「それではまた早朝」

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